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日空調 Research Memo(2):建築設備の設計・施工管理の大手、原子力や産業向け空調設備に強み
配信日時:2025/12/24 11:52
配信元:FISCO
*11:52JST 日空調 Research Memo(2):建築設備の設計・施工管理の大手、原子力や産業向け空調設備に強み
■会社概要
新日本空調<1952>の主要事業は、空調設備を主とした建築設備の設計・施工管理であり、1930年に米国Carrier Global Corporationと提携、東洋キヤリア工業(株)として設立されたのが起源である。戦前には、南満州鉄道の特急「あじあ号」に世界初の全列車空調を施工、また関釜連絡船「興安丸」に世界初の全船空調の施工などの実績がある。
戦後は、1957年に日本原子力研究所(茨城県東海村)(現 (国研)日本原子力研究開発機構)に日本初の原子炉空調を施工し、1968年には日本初の超高層ビルである「霞が関ビルディング」の空調設備を施工した。1969年に東洋キヤリア工業の工事事業部が分離独立し、新日本空調(株)(SNK)となった。
その後も国内の建設需要の高まりにより業績を伸ばすと同時に2003年には中国に現地法人 新日本空調工程(上海)有限公司」(現 新日空(中国)建設有限公司)を、2008年にはスリランカに現地法人SHIN NIPPON LANKA (PRIVATE) LIMITEDを、2010年にはシンガポールに現地法人SHIN NIPPON AIRTECH (SINGAPORE) PTE. LTDを設立、2024年には香港に新日空(香港)建設有限公司を設立して海外展開も加速させている。
株式については1990年に東京証券取引所(以下、東証)市場第2部に、1993年には同第1部に上場し、現在は東証プライム市場に上場している。
■事業概要
主な事業分野は5つ、特に原子力関連空調に強み
1. 分野別の概要
同社の主要事業は、空調設備を主とした建築設備の設計・施工管理の単一事業であることから、「セグメント別」は開示されていないが、同社では「分野別売上高・受注高」を開示している。
分野別の大分類として「個別(親会社)」と「関係会社」に分けられている。さらに中分類として個別は「国内一般(新築)」「国内一般(リニューアル)」「原子力」に分けられ、関係会社は「国内」と「海外」に分けられている。
受注金額は案件ごとに大きく異なり、数百万円から数十億円と幅が広い。工期(受注から完工・売上計上まで)も数ヶ月から長いものは数年に及ぶ。利益率も案件ごとに異なるが、労務費や資材コスト、工程管理等の影響により、売上計上時の利益率が当初の計画から変動する場合もある。
(1) 国内一般(新築):2025年3月期完成工事高構成比30.4%
一般的なビル・工場・公共施設等の新築物件の空調設備工事を行うもの。新築のため、大手ゼネコンの下請けとして入る場合が多い。また空調関係以外に給排水工事なども行っているが、構成比が低いため特に区分けはしていない。
(2) 国内一般(リニューアル):同45.1%
対象は新築と同じだが、リニューアル(更新)工事を請け負うもの。元請けとして施主から直接受注するケースが多いため、相対的に利益率は高い。
(3) 原子力:同5.1%
原子力発電所や関連施設への空調工事を行うもの。日本初の原子炉空調を施工した長い歴史があることから信頼も厚く、同分野でのシェアは40%ほどと推定されており、国内ではトップクラスである。ただし、市場が限られていることもあり、受注工事高は期によって変動する場合が多い。
(4) 関係会社(国内):同8.3%
国内の関係会社が行う工事高。
(5) 関係会社(海外):同11.1%
海外の関係会社が行う工事高。
同社では、半導体関連を含む電気・電子、自動車、機械などの産業向けの完成工事高(及び構成比)を「産業」、それ以外を「保健」として開示しているが、2025年3月期の産業は78,712百万円(構成比57.2%)、保健は58,971百万円(同42.8%)であった。また、新築とリニューアルの完成工事高(全社ベース)はそれぞれ55,704百万円(同40.5%)、81,980百万円(同59.5%)であった。
2. 特色と強み
(1) 原子力関連に強い
国内に同社と同様の空調設備の工事・監理を提供する企業は無数にある。そのような業界の中で、同社の強みの1つはやはり長い歴史を有する「原子力関連」だろう。既述のように、日本原子力研究所に日本初の原子炉空調を施工した実績と、その後の信頼は現在も続いており、これは同社の強みだ。
(2) 半導体向けに強い
同社は比較的「産業向け」の売上比率が高いが、そのなかでも特に半導体関連に強い。これは、古くから(株)東芝との関係が深かったことによる。これもまた同社の「信頼と実績」に基づいており、特色であり強みと言えるだろう。
(3) トップクラスの技術力と優良な顧客基盤
戦前から培われた高い技術力は同社の強みであり、国内トップクラスの水準と言える。磨かれた技術力は幅広い分野に及ぶ。また、長い歴史のなかで積み重ねた実績が信頼につながっており、この信頼関係に基づいた豊富で優良な顧客基盤も同社の強みだろう。戦前の南満州鉄道の特急「あじあ号」や関釜連絡船「興安丸」の実績は言うに及ばず、戦後の高度成長期に日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」の空調施工を行ったことなど、数多くの実績が近年の大型再開発プロジェクトの受注につながったとも言える。
3. 主な競合企業
同社のような空調設備工事を手掛ける企業は、大小合わせれば全国に無数にある。その意味では、競合する企業は無数にあると言えるが、超高層ビルや大規模工場・設備などの空調を手掛けられる企業は少ない。正確な市場シェアなどの算出はできないが、同社によれば「東京証券取引所プライム市場に上場している空調工事大手7社の中で、当社は5番目になる」とのことである。
主な競合企業は、高砂熱学工業<1969>、三機工業<1961>、朝日工業社<1975>、日比谷総合設備<1982>、ダイダン<1980>、大気社<1979>などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<MY>
新日本空調<1952>の主要事業は、空調設備を主とした建築設備の設計・施工管理であり、1930年に米国Carrier Global Corporationと提携、東洋キヤリア工業(株)として設立されたのが起源である。戦前には、南満州鉄道の特急「あじあ号」に世界初の全列車空調を施工、また関釜連絡船「興安丸」に世界初の全船空調の施工などの実績がある。
戦後は、1957年に日本原子力研究所(茨城県東海村)(現 (国研)日本原子力研究開発機構)に日本初の原子炉空調を施工し、1968年には日本初の超高層ビルである「霞が関ビルディング」の空調設備を施工した。1969年に東洋キヤリア工業の工事事業部が分離独立し、新日本空調(株)(SNK)となった。
その後も国内の建設需要の高まりにより業績を伸ばすと同時に2003年には中国に現地法人 新日本空調工程(上海)有限公司」(現 新日空(中国)建設有限公司)を、2008年にはスリランカに現地法人SHIN NIPPON LANKA (PRIVATE) LIMITEDを、2010年にはシンガポールに現地法人SHIN NIPPON AIRTECH (SINGAPORE) PTE. LTDを設立、2024年には香港に新日空(香港)建設有限公司を設立して海外展開も加速させている。
株式については1990年に東京証券取引所(以下、東証)市場第2部に、1993年には同第1部に上場し、現在は東証プライム市場に上場している。
■事業概要
主な事業分野は5つ、特に原子力関連空調に強み
1. 分野別の概要
同社の主要事業は、空調設備を主とした建築設備の設計・施工管理の単一事業であることから、「セグメント別」は開示されていないが、同社では「分野別売上高・受注高」を開示している。
分野別の大分類として「個別(親会社)」と「関係会社」に分けられている。さらに中分類として個別は「国内一般(新築)」「国内一般(リニューアル)」「原子力」に分けられ、関係会社は「国内」と「海外」に分けられている。
受注金額は案件ごとに大きく異なり、数百万円から数十億円と幅が広い。工期(受注から完工・売上計上まで)も数ヶ月から長いものは数年に及ぶ。利益率も案件ごとに異なるが、労務費や資材コスト、工程管理等の影響により、売上計上時の利益率が当初の計画から変動する場合もある。
(1) 国内一般(新築):2025年3月期完成工事高構成比30.4%
一般的なビル・工場・公共施設等の新築物件の空調設備工事を行うもの。新築のため、大手ゼネコンの下請けとして入る場合が多い。また空調関係以外に給排水工事なども行っているが、構成比が低いため特に区分けはしていない。
(2) 国内一般(リニューアル):同45.1%
対象は新築と同じだが、リニューアル(更新)工事を請け負うもの。元請けとして施主から直接受注するケースが多いため、相対的に利益率は高い。
(3) 原子力:同5.1%
原子力発電所や関連施設への空調工事を行うもの。日本初の原子炉空調を施工した長い歴史があることから信頼も厚く、同分野でのシェアは40%ほどと推定されており、国内ではトップクラスである。ただし、市場が限られていることもあり、受注工事高は期によって変動する場合が多い。
(4) 関係会社(国内):同8.3%
国内の関係会社が行う工事高。
(5) 関係会社(海外):同11.1%
海外の関係会社が行う工事高。
同社では、半導体関連を含む電気・電子、自動車、機械などの産業向けの完成工事高(及び構成比)を「産業」、それ以外を「保健」として開示しているが、2025年3月期の産業は78,712百万円(構成比57.2%)、保健は58,971百万円(同42.8%)であった。また、新築とリニューアルの完成工事高(全社ベース)はそれぞれ55,704百万円(同40.5%)、81,980百万円(同59.5%)であった。
2. 特色と強み
(1) 原子力関連に強い
国内に同社と同様の空調設備の工事・監理を提供する企業は無数にある。そのような業界の中で、同社の強みの1つはやはり長い歴史を有する「原子力関連」だろう。既述のように、日本原子力研究所に日本初の原子炉空調を施工した実績と、その後の信頼は現在も続いており、これは同社の強みだ。
(2) 半導体向けに強い
同社は比較的「産業向け」の売上比率が高いが、そのなかでも特に半導体関連に強い。これは、古くから(株)東芝との関係が深かったことによる。これもまた同社の「信頼と実績」に基づいており、特色であり強みと言えるだろう。
(3) トップクラスの技術力と優良な顧客基盤
戦前から培われた高い技術力は同社の強みであり、国内トップクラスの水準と言える。磨かれた技術力は幅広い分野に及ぶ。また、長い歴史のなかで積み重ねた実績が信頼につながっており、この信頼関係に基づいた豊富で優良な顧客基盤も同社の強みだろう。戦前の南満州鉄道の特急「あじあ号」や関釜連絡船「興安丸」の実績は言うに及ばず、戦後の高度成長期に日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」の空調施工を行ったことなど、数多くの実績が近年の大型再開発プロジェクトの受注につながったとも言える。
3. 主な競合企業
同社のような空調設備工事を手掛ける企業は、大小合わせれば全国に無数にある。その意味では、競合する企業は無数にあると言えるが、超高層ビルや大規模工場・設備などの空調を手掛けられる企業は少ない。正確な市場シェアなどの算出はできないが、同社によれば「東京証券取引所プライム市場に上場している空調工事大手7社の中で、当社は5番目になる」とのことである。
主な競合企業は、高砂熱学工業<1969>、三機工業<1961>、朝日工業社<1975>、日比谷総合設備<1982>、ダイダン<1980>、大気社<1979>などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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