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Jオイル Research Memo(6):スペシャリティフード事業は順調も、ミール価格の下落で油脂事業が大幅減益
配信日時:2025/12/24 11:26
配信元:FISCO
*11:26JST Jオイル Research Memo(6):スペシャリティフード事業は順調も、ミール価格の下落で油脂事業が大幅減益
■業績動向
2. セグメント別の業績動向
J-オイルミルズ<2613>のセグメント別の業績は、油脂事業で、業務用油脂の販売が堅調に推移した一方、家庭用油脂の需要は減少した。加えて、ミール類の販売価格の下落により油脂コストが大きく圧迫され、価格改定や高付加価値品の拡販などにより収益性改善を目指したもののコスト上昇を補填するには至らず、減収減益となった。スペシャリティフード事業は構造改革の成果が大きく表れ、売上高は減少したものの、セグメント利益は大幅に改善した。
(1) 原料・為替相場の動向と価格改定の状況
油脂事業の主原料である大豆相場は、南米での豊作期待や米中通商摩擦の激化を背景に、一時1ブッシェル当たり9米ドル台まで下落した。その後、2025年6月には、米国における再生可能燃料の混合義務量引き上げや米中関税協議の進展期待などを受けて上昇に転じ、10米ドル台後半まで上昇した。同年7月には、米国産地での生育状況がおおむね良好であったことから再び9米ドル台まで下落したが、8月以降は生育期後半における米国産地での乾燥した天候を背景に10米ドル台を回復した。
菜種相場は、米国における米国における再生可能燃料の混合義務量引き上げやカナダ産地の乾燥懸念などを背景に、2025年7月には1トン当たり700加ドル台中盤まで上昇した。その後、カナダ産地の天候回復による豊作期待の高まりや、中国によるカナダ産菜種へのアンチダンピング課税導入の影響を受けて軟調に推移し、9月には600加ドル付近まで下落した。
一方、為替相場は、米国の関税政策に伴う世界経済減速懸念から、一時1米ドル140円を下回る円高ドル安が進行した。その後は、米国の物価、雇用などの経済指標や日米関税交渉の状況、日銀の利上げ先送り観測などを背景に円売り米ドル買いが進み、1米ドル140円台中盤から後半の水準での推移となった。
このような背景の下、シカゴ相場に左右されがちなミールバリューは、米国におけるバイオ燃料需要拡大により油脂の需要が増した反面、大きく下落した。これは、大豆を搾油すると、油脂(約2割)とともにミール(約8割)が生産されるという特性にある。バイオ燃料需要拡大による油脂増産によってミール供給が急増した結果、飼料用などの需要が供給の急増に追い付かない状況が生じている。特に日本ではミール価格が国際価格に追随するため、販売下落に拍車がかかった。ミール供給量の過剰な状態については、少なくとも2026年3月期も続くと見られる。このため、同社は中長期的に、ミールや飼料など一次産業向け素材のさらなる付加価値化を検討している。
同社は、原料価格の上昇に加え、輸送費や人件費の増加を踏まえ、2025年に入り2回の価格改定を実施した。しかし、十分な効果は得られず、利益への反映が遅れたことで、今回の通期業績予想を下方修正する結果となった。こうした状況を受け、2025年11月に3回目の価格改定を発表した。本価格改定の利益への寄与は第4四半期に一部見込まれるものの、大半は2026年春以降に顕在化する見込みであり、2027年3月期の利益押し上げにつながることが期待される。
(2) 油脂事業の販売動向
油脂部門では、家庭用油脂で小売の価格戦略を背景に販売数量がやや増加したものの、消費者の物価高騰に対する防衛意識と原料コストの軟化に伴うオリーブオイルの販売価格下落が影響し、売上高は前年同期をわずかに下回った。この状況を踏まえ、環境負荷の低減と利便性を特長とする「スマートグリーンパック(R)」のラインナップ拡充、各種トライアル施策を通じて拡販に努めた。
業務用油脂は、実質賃金の伸び悩みによる節約志向が見られたものの、インバウンド需要の拡大や国内の人流活性化に伴う外食市場の回復を背景に、販売数量・売上高ともに堅調に推移した。食材コストの上昇や深刻化する人手不足などの課題に対しては、品質劣化を抑えつつ長期間使用できる「長徳」シリーズや作業負荷を軽減する「調味油」「調理油」など、機能性を高めた高付加価値品の拡販に努めたが、家庭用・業務用ともに価格改定の遅れによりコストを十分吸収できなかった。
油糧部門では、大豆ミールは搾油量の増加により販売数量が好調に推移し、菜種ミールは搾油量がわずかに減少したものの、ミール歩留りが良化したため販売数量は前年並みとなった。しかし、シカゴ大豆ミール相場が下落したことから、販売価格はともに前年同期を大きく下回った。
(3) スペシャリティフード事業の販売動向
乳系PBF部門は、構造改革を進めたことで収益が大幅に改善した。業務用油脂加工品においては、インバウンド需要や国内人流の活性化により土産菓子向けが底堅く推移したものの、原材料価格の高騰を背景とした価格改定を進めたため、販売数量は低調に推移した。粉末油脂は、受注の変動により販売数量がわずかに減少したが、原料・為替相場の変動を販売価格に適切に反映したことで、売上高は大幅な増収となった。
食品素材部門は、付加価値の高い機能性スターチに特化して拡販した結果、収益力が大きく向上した。テクスチャーデザインは、段ボール用途などの汎用スターチ終売の影響により、販売数量・売上高ともに前年同期を大きく下回った一方で、油脂事業と協働して食品用澱粉で「おいしさデザイン」によるソリューション提案を推進した。ファインは、全体の販売数量は堅調に推移したものの、ビタミンK2の販売数量が前年同期を大きく下回ったため、減収となった。大豆たん白をベースとした大豆シート食品「まめのりさん」は、主要販売先である北米向けに出荷が伸びたことに加え、欧州や中東への取り組みを強化したことで、販売数量・売上高ともに前年同期を大きく上回った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2. セグメント別の業績動向
J-オイルミルズ<2613>のセグメント別の業績は、油脂事業で、業務用油脂の販売が堅調に推移した一方、家庭用油脂の需要は減少した。加えて、ミール類の販売価格の下落により油脂コストが大きく圧迫され、価格改定や高付加価値品の拡販などにより収益性改善を目指したもののコスト上昇を補填するには至らず、減収減益となった。スペシャリティフード事業は構造改革の成果が大きく表れ、売上高は減少したものの、セグメント利益は大幅に改善した。
(1) 原料・為替相場の動向と価格改定の状況
油脂事業の主原料である大豆相場は、南米での豊作期待や米中通商摩擦の激化を背景に、一時1ブッシェル当たり9米ドル台まで下落した。その後、2025年6月には、米国における再生可能燃料の混合義務量引き上げや米中関税協議の進展期待などを受けて上昇に転じ、10米ドル台後半まで上昇した。同年7月には、米国産地での生育状況がおおむね良好であったことから再び9米ドル台まで下落したが、8月以降は生育期後半における米国産地での乾燥した天候を背景に10米ドル台を回復した。
菜種相場は、米国における米国における再生可能燃料の混合義務量引き上げやカナダ産地の乾燥懸念などを背景に、2025年7月には1トン当たり700加ドル台中盤まで上昇した。その後、カナダ産地の天候回復による豊作期待の高まりや、中国によるカナダ産菜種へのアンチダンピング課税導入の影響を受けて軟調に推移し、9月には600加ドル付近まで下落した。
一方、為替相場は、米国の関税政策に伴う世界経済減速懸念から、一時1米ドル140円を下回る円高ドル安が進行した。その後は、米国の物価、雇用などの経済指標や日米関税交渉の状況、日銀の利上げ先送り観測などを背景に円売り米ドル買いが進み、1米ドル140円台中盤から後半の水準での推移となった。
このような背景の下、シカゴ相場に左右されがちなミールバリューは、米国におけるバイオ燃料需要拡大により油脂の需要が増した反面、大きく下落した。これは、大豆を搾油すると、油脂(約2割)とともにミール(約8割)が生産されるという特性にある。バイオ燃料需要拡大による油脂増産によってミール供給が急増した結果、飼料用などの需要が供給の急増に追い付かない状況が生じている。特に日本ではミール価格が国際価格に追随するため、販売下落に拍車がかかった。ミール供給量の過剰な状態については、少なくとも2026年3月期も続くと見られる。このため、同社は中長期的に、ミールや飼料など一次産業向け素材のさらなる付加価値化を検討している。
同社は、原料価格の上昇に加え、輸送費や人件費の増加を踏まえ、2025年に入り2回の価格改定を実施した。しかし、十分な効果は得られず、利益への反映が遅れたことで、今回の通期業績予想を下方修正する結果となった。こうした状況を受け、2025年11月に3回目の価格改定を発表した。本価格改定の利益への寄与は第4四半期に一部見込まれるものの、大半は2026年春以降に顕在化する見込みであり、2027年3月期の利益押し上げにつながることが期待される。
(2) 油脂事業の販売動向
油脂部門では、家庭用油脂で小売の価格戦略を背景に販売数量がやや増加したものの、消費者の物価高騰に対する防衛意識と原料コストの軟化に伴うオリーブオイルの販売価格下落が影響し、売上高は前年同期をわずかに下回った。この状況を踏まえ、環境負荷の低減と利便性を特長とする「スマートグリーンパック(R)」のラインナップ拡充、各種トライアル施策を通じて拡販に努めた。
業務用油脂は、実質賃金の伸び悩みによる節約志向が見られたものの、インバウンド需要の拡大や国内の人流活性化に伴う外食市場の回復を背景に、販売数量・売上高ともに堅調に推移した。食材コストの上昇や深刻化する人手不足などの課題に対しては、品質劣化を抑えつつ長期間使用できる「長徳」シリーズや作業負荷を軽減する「調味油」「調理油」など、機能性を高めた高付加価値品の拡販に努めたが、家庭用・業務用ともに価格改定の遅れによりコストを十分吸収できなかった。
油糧部門では、大豆ミールは搾油量の増加により販売数量が好調に推移し、菜種ミールは搾油量がわずかに減少したものの、ミール歩留りが良化したため販売数量は前年並みとなった。しかし、シカゴ大豆ミール相場が下落したことから、販売価格はともに前年同期を大きく下回った。
(3) スペシャリティフード事業の販売動向
乳系PBF部門は、構造改革を進めたことで収益が大幅に改善した。業務用油脂加工品においては、インバウンド需要や国内人流の活性化により土産菓子向けが底堅く推移したものの、原材料価格の高騰を背景とした価格改定を進めたため、販売数量は低調に推移した。粉末油脂は、受注の変動により販売数量がわずかに減少したが、原料・為替相場の変動を販売価格に適切に反映したことで、売上高は大幅な増収となった。
食品素材部門は、付加価値の高い機能性スターチに特化して拡販した結果、収益力が大きく向上した。テクスチャーデザインは、段ボール用途などの汎用スターチ終売の影響により、販売数量・売上高ともに前年同期を大きく下回った一方で、油脂事業と協働して食品用澱粉で「おいしさデザイン」によるソリューション提案を推進した。ファインは、全体の販売数量は堅調に推移したものの、ビタミンK2の販売数量が前年同期を大きく下回ったため、減収となった。大豆たん白をベースとした大豆シート食品「まめのりさん」は、主要販売先である北米向けに出荷が伸びたことに加え、欧州や中東への取り組みを強化したことで、販売数量・売上高ともに前年同期を大きく上回った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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