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NYの視点:米10月ISM製造業:受注16カ月来の低水準、価格は上昇、スタグフレーションリスクを示唆
米供給管理協会(ISM)が発表した10月ISM製造業景況指数は60.8と、9月61.1から低下したものの予想は上回った。活動と縮小の境目となる50は16カ月連続で上回り活動の拡大を示した。しかし、主要項目の新規受注は昨年6月来の60割れと16カ月ぶり低水準に落ち込んだ。一方で、支払い価格は85.7と、9月81.2から予想以上に上昇。7月来の高水準となり、スタグフレーションリスクが示された。入荷遅延が75.6に急伸したことが全体指数を押し上げたが、サプライチェーンの混乱というマイナス材料が要因となっている。製造業の雇用は52.0と、9月50.2に続き2カ月連続で活動の拡大を示す50を上回り7月来の高水準となったことは安心感に繋がる。サプライチェーンの混乱やインフレ懸念から、生産予想は12カ月ぶりの低水準に落ち込み、見通しも暗い。■10月ISM製造業景況指数:60.8(9月61.1)仕入れ価格:85.7(71.2)生産:59.3(59.4)新規受注:59.8(66.7)受注残:63.6(64.8)入荷遅延:75.6(73.4)在庫:57.0(55.6)顧客在庫:31.7(31.7)雇用:52.0(50.2)輸出:54.6(53.4)輸入:49.1(54.9)マークイットが発表した10月製造業PMI改定値は58.4と、速報値59.2から予想外に下方修正され年初来最低となった。企業は引き続き一部のコストを商品価格に反映させている。マークイットのエコノミストはサプライチェーンの混乱が引き続き製造業に影響を与えていると指摘。部品不足で生産の伸びは7月来で最低となった。ほぼ半分の企業が供給不足で生産減を報告している。10分の1は人材不足。さらに、4分の1が需要の鈍化に言及した。需要鈍化の要因として、価格の高騰で注文が差し控えられる、または、他の部品不足で生産が進まないことなどが挙げられている。生産の伸びはパンデミック依然の長期平均を下回った。一方で、需要はまだ、潜在的な水準を上回っている。従って、製品価格の上昇に繋がりインフレ圧力が続き、速やかに弱まるとは考えにくいと、同氏は警告している。
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2021/11/02 07:44
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(中国)上海総合指数は0.48%安でスタート、景況感の悪化を嫌気
1日の上海総合指数は売り先行。前日比0.48%安の3530.39ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時45分現在、0.31%安の3536.18ptで推移している。景況感の悪化が嫌気されている。9月の製造業購買担当者景気指数(PMI、政府版)は49.2となり、前月の49.6と予想の49.7を下回った。また、新型コロナウイルス感染の拡大に伴う一連の行動制限も引き続き足かせとなっている。
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2021/11/01 10:52
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JTを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(1日10:21時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つAGC<5201>コール120回 11月 6,700円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 12月 1.0米ドル、日経平均 プラス5倍トラッカー78回 月 25,000円、野村日経225レバレッジETF プラス5倍トラッカー31回 月 12,000円、村田製作所<6981>コール214回 月 9,100円などが見られる。上昇率上位はJT<2914>コール198回 11月 2,450円(+89.3%)、野村ホールディングス<8604>プット294回 11月 525円(+83.6%)、野村ホールディングスプット293回 11月 450円(+62.5%)、JTコール202回 12月 2,900円(+59.1%)、JTコール197回 11月 2,150円(+58.9%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/11/01 10:40
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NYの視点【来週の注目イベント】:FOMC、BOE、米10月雇用統計、10月ISM製造業・非製造業景況指数、VA州知事選
今週は連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を開催するほか、英国中銀やオーストラリア準備銀が金融政策を開催する予定で結果に注目が集まる。FRBはこの会合で、政策金利を過去最低水準で維持すると同時に、経済が一段と著しくFRBの目標に近づいたため昨年パンデミック対策として実施した資産購入策の縮小開始を発表する公算でドルを支援する可能性がある。ただ、FRBが資産購入縮小を開始したとしても、市場はほぼ織り込み済みと見られ、テーパータントラムは回避することが可能と見られる。さらに、来年半ばまでは、購入が続く見通し。米国の経済指標では10月雇用統計や全米の製造業やサービス業活動動向を示す10月ISM製造業・非製造業景況指数に注目。雇用統計は8月、9月に予想外に低調な伸びにとどまったのち、増加ペースが加速する見込み。新型コロナウイルスの変異株流行に収束する兆候が見られ、経済活動再開が一段と進み企業は強い需要に対応するため、新規雇用を拡大している。一方で、ワクチン義務化やコロナへの警戒感もくすぶり労働市場参加者が減少していることは米国労働市場にとりマイナス材料になる。FRBの労働市場の見通しも不透明となり、2022年の利上げの可能性を弱める。サプライチェーンの混乱は2022年まで続く公算で、インフレもしばらく高止まりする可能性が出てきた。金利先物市場はFRBが資産購入縮小を終了したのち、速やかに最初の利上げに踏み切ることを織り込みつつある。来年6月の利上げを7割織り込んだ。しかし、政策委員は依然来年の利上げ確率は5割と見ている。11月のFOMCでは最新予測が出されないため、声明やパウエル議長の会見で、来年の利上げの可能性を探る。一方、英中銀は、ベイリー総裁がインフレ抑制に向け行動する必要があると指摘したため利上げ観測が強まった。今回の会合で政策金利を過去最低の0.1%から0.25%まで政策金利を引き上げると見られている。万が一、利上げが見送られた場合はポンド売りに拍車がかかることになる。そのほかG20サミットがイタリアローマで開催されるほか、日本は総選挙が実施される。さらに米国では、ニュージャージー州、バージニア州で知事選、ニューヨーク、ボストン、バッファロー、アトランタ、シアトル、ミネアポリスで市長選が実施予定で、来年の中間選挙に向けた動向を探る上でも結果に注目される。■今週の主な注目イベント●COP2610月31日—11月12日●米国1日:9月建設支出、10月ISM製造業景況指数、10月製造業PMI2日:ニュージャージー州、バージニア州で知事選、ニューヨーク、ボストン、バッファロー、アトランタ、シアトル、ミネアポリスでは市長選が実施FOMC(3日まで)3日:10月ADP雇用統計、10月ISM非製造業景況指数、9月製造業受注、9月耐久財受注、10月サービス業PMI、パウエルFRB議長会見4日:週次新規失業保険申請件数、7-9月期非農業部門労働生産性、9月貿易収支5日:10月雇用統計●英国1日:PMI4日:英中銀金融政策決定会合●欧州1日:ユーロ圏、仏、独PMI3日:ユーロ圏サービスPMI、失業率4日:ECBラガルド総裁あいさつ5日:ユーロ圏小売売上高、仏、独、鉱工業生産●中国1日:財新製造業PMI●豪州2日:オーストラリア準備銀金融政策会合●カナダ5日:失業率
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2021/11/01 07:36
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欧米の注目経済指標:米FOMC会合で量的緩和策縮小を正式決定か
11月1日-5日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■1日(月)午後11時発表予定○(米)10月ISM製造業景況指数-予想は60.3参考となる9月実績は市場予想を上回る61.1。17業種が活動拡大を報告している。新規受注指数は66.7と、前月と同水準。在庫指数は上昇。10月については、新規受注が高水準を維持する見込みであること、在庫指数も下げ渋る可能性があることら、9月実績と大きな差はないと予想される。■3日(水)午後7時発表予定○(欧)9月ユーロ圏失業率-8月実績は7.5%参考となる8月実績は7.5%。イタリアとポルトガルでは失業者数が減少しており、他のユーロ圏諸国も似たような傾向となっている。失業者数は2019年の水準を下回っており、若年層の失業率は多少改善している。これらの点を考慮すると、9月の失業率は8月実績と同水準か下回る可能性がある。■3日(水)日本時間4日午前3時結果発表○(米)連邦公開市場委員会(FOMC)会合-予想は量的緩和策の段階的縮小を正式決定米連邦準備制度理事会(FRB)が10月13日公表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月開催分)によると、多くの参加者が想定より高いインフレが続くことに懸念を示しており、量的緩和の縮小に着手できるとの考えが示されていた。今回の会合で12月半ばまでに量的緩和の段階的縮小に着手することが正式に決定される可能性がある。完了時期については、現時点で来年半ば頃になると予想される。■5日(金)午後9時30分発表予定○(米)10月雇用統計-予想は非農業部門雇用者数は前月比+40万人、失業率は4.7%非農業部門雇用者数の伸びは2カ月連続で予想を大幅に下回っているが、10月については、9月実績を上回る雇用増となる可能性が高いとみられる。民間部門の雇用者数は9月実績(+31.7万人)をやや上回る増加が見込まれている。製造業部門の雇用者数は9月実績の+2.6万人をやや上回る可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・1日(月):(中)10月財新製造業PMI・2日(火):(豪)豪準備銀行政策金利発表・3日(水):(NZ)7-9月期失業率、(中)10月財新サービス業PMI、(米)10月ADP雇用統計・4日(木):(欧)9月ユーロ圏生産者物価指数、(英)英中央銀行金融政策発表・5日(金)(独)9月鉱工業生産、(欧)9月ユーロ圏小売売上高
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2021/10/30 14:17
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ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(3)【実業之日本フォーラム】
本稿は、「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(2)」の続きである。プライバシーと利便性の交換白井:ダークウェブのサイトで違法薬物などの売買などにビットコインが使われる事例が多発したため、ビットコインのイメージが著しく毀損させられましたが、実際には完全なトレーサビリティを有しており、完全な誤解からくる批判のようです。当時は技術的な知識が普及しておらず、送金や所持の匿名性を利用した犯罪であったことから、反対派の人たちには格好の攻撃のチャンスとなりました。しかし、イギリスの財務省が「現金よりマネーロンダリングのリスクは低い」というレポートを発表している通り、ビットコインを利用した違法売買サイトや犯罪資金のマネーロンダリングは摘発されていることが多いようです。CBDCの送金データや個人資産情報に、テック企業が保有する位置情報やチャットの内容、消費行動などの個人情報や公的機関のデジタルデータと重ね合わせれば、国民一人ひとりの全てをリアルタイムで捕捉することが可能となります。これらは、マネーロンダリングのような不正行為を防ぐ目的を達成できるものの、超監視社会を作ってしまう可能性もあります。また、国民から、これらの監視という権力を保持する大手企業や政府へ、パワーシフトが起こるということでもあります。さらに、悪意を持った組織がコントロールする事態ともなれば、ターゲットになる個人の財産や生活は破壊されることになりかねません。あちこちにカメラがある中国は、監視社会に一直線です。乗車アプリもSNSも、基本的には政府が関与していく。社会的な生活とお金のデータが結びつけば、完全にプライバシーがなくなってしまいます。自分よりも政府のほうが自分を知っているという社会になるかもしれませんし、将来、自分が何をするのかさえも予測されてしまう。中国のような国にCBDCをつくれば、そういう社会になってしまうのは必然ではないでしょうか。橋本:実際にそういう社会になるのかは、政府の運用指針などに依拠するでしょう。中国はそういうモチベーションが強い国ですので、ご指摘の通りかもしれません。日本は少し違う気もします。文化的な違いや、技術をうまく使いこなす能力の違いなどがありますから。ただ、お金の流れがわかることで、あらゆる企業や組織は、そのデータを使って自らの事業をより効率化することはできるでしょう。そういったお金の流れのデータは、ある程度、適切に加工された上で、販売、配付され、ますます有効活用されていくと思います。アンチマネーロンダリングのためにお金の流れを捕捉したいという流れがある一方、プライバシーが大事という流れも並行しています。これは特にユーロ圏で強いです。従来よりもプライバシー性が非常に強いデータをどのように扱っていくかは、そういう世界にもう少し近づいていく過程で、ますます議論されていくでしょう。白井:ユーザー側から見た場合、非公開ブロックチェーンの管理者が信用できるかどうか、仮に信用できなくともそれを超える利便性があるかどうか、この2点が大きいほど普及が加速していく可能性が高いと思います。ブロックチェーンはビットコインでつくられた技術でしたが、そもそものビットコインの構想は、金融緩和が続く法定通貨へのアンチテーゼでした。数十年にわたる、止め処もない金融緩和で、世界のマネーは膨張し続けています。このような状況に対して、一定数の人々は、貨幣が複式簿記誕生以前の施政者の権力維持の道具に戻ってしまったのではないかと懸念しています。ビットコイン黎明期には、完全なトレーサビリティを保持しつつ、管理者不在で発行量が決まっているビットコインの理念は、そのような人々によって「デジタルゴールド」と称され、熱狂的に受け入れられ、自国通貨を信用できない国々での利用を中心に広まりました。金融緩和の道具である法定通貨にブロックチェーンが利用されつつあり、管理社会にも使いやすい技術というのは、非常に皮肉な気もします。当初のビットコイン原理主義者のような人たちは、現状をどのように見ているのでしょうか。橋本:ビットコインの一番重要な点は、価値が備わっている、すなわち十分な時価総額と十分な流動性が備わっているということです。歴史的に見ても、これだけの時価総額、流動性が備わり、いったんその地位を確立してしまうと、簡単には廃れません。金(ゴールド)のようなものに近い意味合いを持っています。ビットコインを持っている人たちは、原理主義者であるかどうかにかかわらず、金(ゴールド)を持っている感覚の人が多いと思います。デジタル人民元、もしくはCBDCが広がった世界でも、金(ゴールド)の価値が損なわれることはないでしょう。同様にビットコインの価値も損なわれないだろうと考える人は非常に多いと思います。これだけの市場ができてしまいましたので、ビットコインの取引が完全に禁止されるという世界は恐らく訪れないでしょう。技術的にも難しいです。そうであれば、お金の流れがほぼ透明化し、ほとんどのお金がデジタルでやりとりされる中で、プライバシーの観点からも安全に取引できる数少ないアセットとしてビットコインが生き残るというのは想像しやすい未来ではないでしょうか。ビットコインはプライバシーが欠如したブロックチェーンです。先ほどお話した通り、お金の流れを追いやすいという性質があります。高いプライバシー性を持つモネロ(XMR)、ジーキャッシュ(ZEC)なども作られましたが、どういうわけか広まらない。結局、価値がついているのは、誰もが知っているビットコインなのです。ある種の自由、ある種のプライバシー、相当程度の自由が保証されたというビットコインの性質を、多くの人が気に入り、盛り上げてきました。ツイッター、PayPalでも使っていこうといったように、ユースケースもますます増えています。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/29 16:41
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ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(2)【実業之日本フォーラム】
本稿は、「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(1)」の続きである。「電子マネー」と「デジタルマネー」の違い白井:ビットコインなどの非中央集権型のコインは「パブリック型」ブロックチェーンと呼ばれ、不特定多数の参加者によって管理されている一方、デジタル人民元などのCBDCは、「コンソーシアム型」のブロックチェーンという分類になり、システムはある程度分散されているものの、政府が決めた特定の参加者によって管理されている中央集権的であるところが、これらの大きな違いになりますね。つまるところ、コンソーシアム型は利用者が管理者を信用できるかどうかにかかっています。また、LINE Payのような現在の電子マネーとデジタル人民元のようなブロックチェーンによるデジタルマネーを比較いただきましたが、ユーザーの立場からすると、スマホの中での送金や管理といった部分では使い勝手はほとんど変わらないように思います。技術以外の部分では、何が違うのでしょうか。橋本:まず、法律的な区分が違います。電子マネー、例えばLINE Payであれば、LINE社が、帳簿上で日本円を預かり、それを担保、保証とすることで、デジタル円、LINE Payというお金を実現しています。LINE Payで使われているお金の裏側には、日本政府が発行した円が存在しています。政府は国債を発行したり、日本円を刷ったりして、紙の紙幣や銀行の残高が増えるような、法定通貨の流通量をコントロールするオペレーションをしています。それは、日銀ネットや全銀ネットの上にある、ある種の電子的なお金です。仮に、これがブロックチェーンを使ったデジタル円になったとしても、ユーザー体験としては、LINE Payと変わらない感覚でしょう。政府のオフィシャルなアプリケーションがスマホに入っており、それで友達に送ったり、支払いに使ったりすることができる。ユーザー体験としては何も変わりません。ただ、それはLINE Payのように同等の金額の円が担保されて発行されているわけではなく、政府の信用そのものによって直接的にデジタルマネーが発行されているというだけです。一般ユーザーには、LINE Payとの違いを感じることができないでしょう。白井:LINE Payなどのサーバで管理していたような今までの電子的な貨幣は、専用のアプリやウォレットでなければやり取りできません。しかし、ブロックチェーンによるトークン形式では、ウォレットの仕様を開放すれば、それに基づいて無数の参加者がアプリを開発することができるため、世界のあらゆるところで貨幣の受け取りができるようになります。橋本:そうですね。スマートフォンに円が入っている場合、例えば、LINE Payであれば、LINE社のサーバ上に、誰々のアカウントに幾ら分のLINE Payの円が入っているという形で管理されます。一方、ブロックチェーンでデジタル円を実現した場合、政府のサーバ上に私の残高が直接保管されているわけではなく、スマートフォンの中に私しか知らない秘密鍵があり、その秘密鍵を使うことでその円を動かすことができます。秘密鍵で署名をした人が、その秘密鍵をベースにした個人のアドレス、ビットコインのアドレスに近いものですが、そのアドレスに送ることができます。受け取るだけであれば、単純にその会社のアドレスを書いておけば、アプリから誰でも簡単にそこに送ることができます。アドレスを提示するだけでいいのです。アプリケーションを作る側としては、日本政府のサーバの規格に合わせる必要はなく、暗号学的な規格に合わせて実装すればほとんどのアプリケーションに入れることが可能です。残高を管理する方法が、どこかのサーバ上にある帳簿ではなく、鍵を持っているということがその資産の証明になることで、サードパーティー(第三者)のアプリケーションを増やすことも簡単です。その反面、どこかに私の資産が記帳されているのであれば、銀行送金で間違えた場合にも返ってくる。振り込み詐欺だったら返ってこないかもしれませんが。管理されているのであれば、犯罪目的の利用は抑えることもできる。しかし、秘密鍵で管理するのであれば、全て自己責任となります。鍵を持っていることが私の資産であるという証明ですので、裏を返すと、この鍵をほかの人に渡してしまえば、私の資産は全部なくなってしまう。バックアップを取らずにこのスマートフォンをなくしたら、私の資産はなくなってしまいます。LINE Payであれば、メールアドレスとパスワードさえ覚えていれば、あるいはパスワードを忘れてしまった場合でも、別のスマートフォンやパソコンにLINEのアプリを再ダウンロードすれば、私の資産を再現することができます。しかし、秘密鍵の世界では、いったんなくしてしまったらどうしようもありません。これが基本的な性質です。監視社会は到来するのか白井:1960、1970年代ぐらいから始まった第3次産業革命時代の中央集権型であるマネーの電子化と、これから始まる第4次産業革命でのブロックチェーンによって創られるデジタル金融の世界とは、大きく変わるように思います。デジタル人民元のブロックチェーン化は、マネーの世界にどのような影響を与えるのでしょうか。橋本:第一に、お金の流れが大きく変わります。従来であれば、給料でもらった円は銀行に預けられ、銀行はそれをいろいろなビジネスに貸し出し、それで世の中が回っていく。そのお金もさらにまた銀行に預けられ、貸し出されていく。経済学の教科書に載っている言葉で言えば信用創造です。例えば100兆円のお金が出回っていたとすると、それが貸し出されたり、預けられたりと繰り返され、500兆円、1000兆円といった規模に拡大してお金が回っていく。これが銀行を中心とした従来の金融の仕組みにおけるお金の流れで、現在の経済学の教科書に書かれていることです。しかし、仮に、個人が銀行ではなく、自分のスマートフォン上のウォレットでお金を管理することになると、これまで想定されていた循環が果たして継続するのかわかりません。デジタル化だけではなく、お金を通じた総合的なつながりが変わることが、長期的に経済にどのような影響を与えるのかは未知数です。日銀の検討レポートにもそういった懸念、問題意識が見て取れます。第二に、お金の流れが一元的に管理される世界になります。いま、お金の流れをトレースしようとしても、お店で支払った紙幣がどう流れていくのか、誰も捕捉することはできません。だからこそ、いわゆるマネーロンダリングはアタッシェケースに入った大量の一万円札で行われるのでしょう。しかし、全てのお金のやりとりがウォレットを通じた電子的なやりとりで一元化されると、お金の流れは相当程度クリアになります。実装次第ではありますが、その世界では不透明なお金の流れが非常に発生しづらくなるでしょうし、発生したとしても、たどっていけばある程度捕捉することができます。現金にあったプライバシー、匿名性は、どんどん失われることになるでしょう。まさにこれは、デジタル人民元が意図していることのひとつでしょう。中国政府の課題として、国民のお金が海外のよくわからない口座に流れ、海外に現金で、あるいは金(ゴールド)で持ち出されてしまうことがあります。金(ゴールド)にして持ち出すのは避けられないとしても、これまで捕捉できなかったお金の流れは全て一元的に把握することができます。政府の体制が管理社会に近いものであれば、デジタル化やCBDCはまさに好都合でしょう。白井:特定のものを除けば、ビットコインのような非中央集権型のパブリック型ブロックチェーンはソースコードが公開されており、基本的に丸見えでしょう。自然発生的にさまざまなアプリケーションが開発されて、利便性が飛躍的に高まると同時に、世界中の人々が安心して自由に取引ができます。他方、ソースコードは公開せずにウォレットの仕様だけを公開するというパターンであれば、特定の管理者のみがシステムを管理しながら、コインの普及を進めることができるため、中央集権的な組織が発行する場合は親和性が高いでしょう。しかし、このような非公開のブロックチェーンは、外部から中身を判断できないというデメリットがあるため、「何かが仕込まれている可能性」が否定できません。自分の端末に入れて動作させることは敬遠されやすい面があります。将来的に各国政府がつくるCBDCやブロックチェーンは、システムの柔軟性保持、セキュリティ上の観点からも、ソースコードは公開されないようにも思います。全世界の政府の力がかなり強くなり、監視社会に進んでいくというイメージなのでしょうか。橋本:根底にあるイメージはそのようなものです。実は、ビットコインのトレースはほぼ可能です。1回でもビットコインを送ったことがある相手がビットコインを使えば、何時何分何秒に、どこにどれだけ送ったというお金の流れは、概ね見えてしまいます。ビットコイン的なブロックチェーンをそのまま使うという発想は、あまりにもプライバシーが欠如した世界です。他方、アンチマネーロンダリングのために、お金の流れをある程度捕捉したいという流れがあります。その塩梅を取ろうとすると、政府で特殊な権限を持っている人だけがすべてのお金の流れを捕捉することができるという実装が、基本的な流れではないでしょうか。「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(3)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/29 16:39
注目トピックス 経済総合
ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(1)【実業之日本フォーラム】
ゲスト橋本欣典(チューリンガム株式会社 COO)東京大学大学院経済学研究科金融システム専攻。日本取引所グループでは日本証券クリアリング機構にてクオンツとしてIRS、CDS、上場デリバティブ、現物株の証拠金アルゴリズムの高度化に従事。その後bitFlyerの経営戦略部にて、デリバティブ商品設計、仮想通貨AML 体制構築などに関わったのち、BUIDLにてリサーチャーとして交換業向けコンサルティング、アドレストラッキングツールのアルゴリズムを開発。また、Scaling Bitcoin 2019 にて論文を発表。聞き手白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)白井:暗号資産やブロックチェーンに興味をお持ちの方であれば、橋本欣典さんのお名前は知らなくても、「カナゴールド」というハンドルネームは皆さんよくご存じでしょう。ブロックチェーン企業「チューリンガム」の創業者のひとりで、COOをつとめている橋本さんは、ブロックチェーン界隈ではつとに有名な論客です。2014年に東京大学大学院経済学研究科金融システム専攻を修了後、大学院を出られたあと新卒として株式会社日本証券クリアリング機構に入社され、1年目にして金利スワップ取引のモデリングを構築されたそうです。その後、暗号資産交換業大手のビットフライヤーを経て、ブロックチェーン企業のチューリンガムを創業されています。金融工学とプログラミング、ブロックチェーンに深い知識をお持ちのうえ、金融市場の獰猛さを熟知されている稀有な存在です。趣味は数学とポーカーに加えて、社員やブロックチェーンエンジニアとサバイバルゲームで汗を流すことだそうです。橋本:ご紹介ありがとうございます。きょうは対談ということで、改めてどうぞよろしくお願いします。ブロックチェーン技術を応用したデジタルマネーの出現白井:インターネットの普及によって、情報やコンテンツの限界費用がゼロになり、情報産業の破壊的創造をもたらしたのが「情報革命」ですが、ブロックチェーンの出現で引き起こされる破壊的創造は「価値革命」ではないかと考えています。ブロックチェーンによって作り出されるトークン、たとえばビットコインが価値を持つことで、理論的には、極小の価値を世界のどこへでもほぼゼロコストで瞬時に移転できるようになりました。また、ブロックチェーンによるスマートコントラクトは、予め決められた契約の自動執行であり、トークンを使うことで相手の信用(カウンターパーティーリスク)にかかわらず価値の交換を可能にしています。第4次産業革命によって達成されるサイバーフィジカルシステム(現実社会のあらゆる情報を取得し、人工知能がそれを解析し、現実社会を操作することで社会の最適化を図る枠組み)においても、スマートコントラクトが活用されると考えられています。中国政府が進めるデジタル人民元もスマートコントラクトの実装を2021年7月に発表しました。スマートコントラクトは、人間社会での価値の移転が高効率化されるだけでなく、管理者不在で分散管理された自律的なプログラム集合体組織をつくることが理論的には可能となります。実際に、数年前からDeFi(ディファイ=Decentralized Finance:分散型金融)と呼ばれるものが数多く誕生しており、すべてのソースコードがオープンであるため、手数料課金をはじめ、あらゆるトランザクションがステークホルダー全員に対して公正に運用されています。このブロックチェーン技術によって、現在の不透明なプライシングの金融業界や金融商品を代替することが期待されます。現在、このような社会実装を見据えた試みが全世界的に進行しており、ブロックチェーン時代の幕開けと言っても過言ではありません。ブロックチェーンによるデジタル金融は、第4次産業革命に対応する金融市場と捉えることができます。金融市場の高度化による資本の有効活用で、過去の産業革命が推進してきた構図に近くなると思われます。世界中で稼働している「中央集権」的な思想で構築されているシステムは、ブロックチェーンによって大きく変わりつつあります。ブロックチェーンは「P2P(ピア・トゥ・ピア、サーバを介さずに、端末同士で直接データファイルを共有することができる通信技術)で取引ができ、中央の管理者がいない通貨を支える台帳(分散型台帳)」として発表されました。すなわち、ネットワークに参加する世界中のコンピューターに過去データを記録し、相互に検証させることで正確性を保っている分散された台帳システムです。これまでの中央集権的な思想によるシステムは、特定のサーバに存在する「台帳」にデータが管理されており、システム管理者がシステム全体を運営しているという集中管理方式でした。リスク回避のため、物理的距離が離れた複数のサーバにデータの複製をしたり、二重のシステムを構築したりするなど、莫大な費用をかけてデータの安全性が保持されてきました。これと対極にある思想が「ブロックチェーン」です。こちらはオープンソースであり、商用、非商用の目的を問わずソースコード(プログラム)を利用、修正、頒布することが許容されています。データの保存や変更は世界中に分散化、分権化されているため、改竄耐性、高可用性、透明性、正確性、恒久性、低コストが特徴です。大量の取引処理が苦手で取引の処理スピードも遅いという問題も、技術的進化で改善してきました。橋本:2008年にナカモトサトシと名乗る人物が論文を発表し、2009年から動き始めたビットコインが、ブロックチェーン、暗号資産などの流れの発端です。すぐに着目されたわけではありませんでしたが、いわゆる中央管理者がいない形でデジタルマネーを実現するという試みは非常に斬新でした。そのアイデアの革新性に惹かれた人たちがどんどん集まり、世の中に広がっていきました。それと並行して、その流れを見たビジネスサイドの人たちは、単なる暗号資産、単なるビットコインではなく、ブロックチェーンと呼ばれる技術を応用することでさまざまなビジネスユースケースがあると想像しました。それを受けて、2016年から2017年にかけて、実際にいろいろなユースケースが考案されました。昨今の潮流は、ブロックチェーンの技術そのものの応用のみならず、オリジナルのビットコインそのものをより広範に使っていこうというものです。ブロックチェーン技術の応用という流れが、昨今注目されているデジタル人民元につながっています。デジタル人民元がビットコインと似ているのは、ブロックチェーン技術を使ってデジタルマネーを実現しようという点です。ビットコインのブロックチェーンは特定の管理者がいない形でデジタルマネーを実現していますが、デジタル人民元は名前に「元」とついているように、実態としては、中国政府が管理します。しかし、技術的には、LINE Payや、PayPayのように、中国政府の特定の場所に1台のサーバがあり、1カ所でデータが管理されているわけではありません。複数の、いわゆるノードと呼ばれるアプリケーションがいろいろな場所に散らばっており、これらがお互いに同期しあって、同じ残高の帳簿をシェアしあう。ある種の分散型データベースのようなものです。このデジタル人民元は、ビットコイン的な要素も兼ね備えた形で、半ば中央集権的に、半ば分散的に実現される。これが昨今のCBDC(中央銀行デジタル通貨)の流れです。いわゆる法定通貨をブロックチェーン的に、オフィシャルな電子マネーとして扱っているのです。一方、オリジナルのビットコインの普及、例えばビットコインを使った決済サービスなどもますます広がっています。少し前にPayPalがビットコインの取扱いを始めましたし、もっと最近ではツイッター社がビットコインを使ったサービスを始めました。「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/29 16:37
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(中国)上海総合指数は0.03%高でスタート、行動制限の強化を警戒
29日の上海総合指数は買い先行。前日比0.03%高の3519.33ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時3分現在、0.29%安の3508.04ptで推移している。新型コロナウイルス感染拡大が引き続き懸念材料。各地での行動制限が強化されているなか、景気回復ペースの遅れ観測が強まっている。また、不動産業をめぐる不透明感が解消されていないことも引き続き警戒されている。
<AN>
2021/10/29 11:09
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パナソニックのコール型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(29日10:03時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つキーエンス<6861>コール139回 11月 66,000円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては村田製作所<6981>コール218回 12月 11,000円、野村日経225レバレッジETF プラス5倍トラッカー31回 月 12,000円、ビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 月 1.0米ドル、キーエンスコール139回 月 66,000円などが見られる。上昇率上位はパナソニック<6752>プット224回 11月 1,250円(前日比2.1倍)、パナソニックプット223回 11月 1,050円(前日比2倍)、キーエンスコール141回 11月 86,000円(+66.7%)、キーエンスコール140回 11月 76,000円(+65.2%)、アルプスアルパイン<6770>プット56回 11月 1,100円(+55.7%)などとなっている。(eワラント証券)
<FA>
2021/10/29 10:25
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NYの視点:主要各国中銀の緩和解除方針が分かれる、ECBはマイナス金利維持VS商品通貨国中銀はタカ派色強める
主要各国のパンデミックを受けた金融緩和策の解除方針に違いが見られる。供給不足で商品価格の上昇が見込まれる中、商品価格動向が景気動向を大きく左右する傾向があるカナダや豪州などの中銀は特に、回復ペースの加速を鑑み、速やかな金融緩和の解除姿勢を強めつつある。カナダ中銀は27日に開催した金融政策決定会合で、市場の利上げ観測を否定しなかったばかりか、来年の4回の利上げ観測をさらに強めるタカ派方針を示した。中銀の利上げ条件達成の時期を年後半から早くて、4月に前倒し。一方で欧州中央銀行(ECB)は市場の利上げ観測がガイダンスに一致しないとし、速やかな利上げの可能性を否定。マイナス金利を当面維持する方針を再表明した。また、日銀も黒田総裁が「日本のインフレ高進するリスクは極めて限定的」としており、当面金融緩和を継続すると見られる。米連邦準備制度理事会(FRB)や英国中銀は来週、FOMCや金融政策決定会合を予定している。FRBはパンデミック対処の緊急対策として実施している資産購入策の縮小を開始する見込み。ただ、労働市場の最大雇用はまだ先で、2022年の利上げは50/50と金融政策者は見ている。英国中銀は年内の利上げが金利先物市場で100%織り込まれた。
<FA>
2021/10/29 07:41
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NY金は1800ドルを軸にしたレンジへ浮上 サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『NY金は1800ドルを軸にしたレンジへ浮上』と述べています。先週のNY金については、『米長期金利の上昇が重石になっていたが、週後半からドル安とインフレ懸念が支援要因となって、週末22日には一時1815.50ドルに上昇した。週明け25日には、原油相場の一段高に連れて、 9月中旬以来約1カ月半ぶりに終値は1800ドルの節目を回復した。1806.80ドル(+10.50)』と伝えています。続けて、『パウエルFRB議長は来年には高インフレが弱まる見通しを維持しているが、市場はインフレ高進を懸念しており、インフレヘッジとして金が注目されている。国際商品の代表的な指数であるロイター/ジェフリーCRB指数は240ポイント台に上昇し、7年ぶりの高値水準に上昇した』と言及しています。28日に発表される米7~9月期国内総生産(GDP、速報値)については、『夏場に感染が急拡大した新型コロナウイルスのデルタ型が影を落とし、実質GDP成長率は前期の年率6.7%増から大幅に減速し、年率3.0%増と予想されている。予想通りの結果であればドル売りが強まり、金相場を押し上げそうだ』と述べています。また、『金ETFの保有高は、25日時点で978トンと年初から17.7%減少。投資資金が金市場から流出しているわけだが、CFTC建玉を見ると先物市場では、ファンドの買いは19万3000枚に増加。強気見通しに傾いてきたようだ』と考察しています。こうしたことから、NY金について、『1800ドルを軸としたレンジでの値固めになりそうだ』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の10月27日付「NY金は1800ドルを軸にしたレンジへ浮上」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
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2021/10/28 17:43
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デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(1)【実業之日本フォーラム】
【ゲスト】須賀千鶴(前・世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)2003年に経済産業省に入省。2016年より「経産省次官・若手プロジェクト」に参画し、150万DLを記録した「不安な個人、立ちすくむ国家」を発表。2017年より商務・サービスグループ政策企画委員として、提言にあわせて新設された部局にて教育改革等に携わる。2018年7月より、デジタル時代のイノベーションと法、社会のあり方を検討し、グローバルなルールメイキングに貢献するため、世界経済フォーラム、経済産業省、アジア・パシフィック・イニシアティブによるJV組織の初代センター長に就任。国際機関のネットワークを活用しながら、データガバナンス、ヘルスケア、スマートシティ、モビリティ、アジャイルガバナンスなど多様な国際プロジェクトを率いる。2021年7月より経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)白井:いままでのお話を伺い、スマートシティの知見をいち早く学び、自分たちの文化に合った形で仕組みづくりをおこない、素早く実践に移さないと、国際的なデジタル社会のリセットには取り残されてしまうということがよく理解できました。今後の日本人及び日本に不足しているものは何だと考えておられるでしょうか。須賀:日本人として、もう少し頑張ってもらいたい、頑張らなければならないと思うのは、試行錯誤を恐れてはいけないという点です。発展途上での段階で試行錯誤をしていることそのものが大事です。世界もうまくいったことを自慢してもらうことを期待しているわけではありません。「こうやってみたけどダメだった」、「ここで落とし穴に気づかなかった」というようなことを含めて、その知的貢献というものを大いに多とする人たちがイノベーションの先端にいます。その人たちが、一番先端でルール作りをしているのです。日本にはそこに入るようなメンタリティを持つ人が非常に少なく、どうしても、そのグループに入ることができません。とりあえず、アーリーアダプターがやっているのを眺めて、失敗したところは、「ああいうところで失敗する」というふうにメモって、なるべく失敗しないように後からついていくという行動をしてしまうのです。そうすると、時代が進み、イノベーションが同時多発的に大量に起こり、ものすごい規模でリセットが起きているときに、一番面白い先頭集団にいることはできません。私たちの第四次産業革命センターは、各国のセンターの中で2番目に設立されました。スピードにこだわって急いで設立した背景には、常に、生煮えかもしれない、あるいは甘いかもしれないが、アイディアのイノベーション、知的なイノベーションが起きているところに身を置いておこう、首をそこへ出していこうと考えたものです。日頃のセンターの運営も、そのことを念頭に置いています。白井:いま、須賀さんが指摘された日本人の感覚、失敗を恐れるという感覚が問題であるということは、多くの人も同じように指摘されています。答えにくいかもしれませんが、須賀さんはどのあたりに原因があると考えていますか。須賀:私は、他国センターの人たちと話をし、立ち居振る舞いをみて思ったことが二つあります。その一つは、日本人はアンビギュイテイ・マネージメントが苦手な人が多いということです。アンビギュイティというのは不確実性ですので、足元が定まらないような状態で、不安になり過ぎない、失敗するかもしれないがそこに立ってみようというようなメンタリティというか、そのような状態でも精神的に不安定になり過ぎないという力が欠けているように思います。私たちのセンターには、各企業だとか役所から非常に優秀な若い人達がフェローとして来ていただいています。来ていただいているフェローさん達は、周りから、あのセンターは、何をやろうとしているのか、あまり方針が明確ではないが大丈夫なのかと言われるそうです。このアンビギュイティ、周りも不安、その不安が自分に投げかけられてくるという状況をマネージできるようになりましょう、これがイノベーションの近道ですということを、ずっとフェローさんとも認識を共有するようにしていました。それから、日本人の特徴のもう一つは、アンビギュイティと並んで多様性を持つ集団のマネージメントが苦手であるということです。日本は同じような環境にいた人たちの集団のマネージメントしかできない人が多いので、女性を含めて、人とは違う、同じロジックや阿吽の呼吸では動いてくれない人のマネージメントがすごく苦手ではないかと思います。私たちのセンターでは、意識して、留学生ですとか、外国人ですとか、そういう人をチームに入れています。そのような人たちとのコミュニケーションをつうじて、グループをマネージメントする能力をつけていかないと、イノベーションの最先端領域にはいられないと思っています。白井:日本人が、須賀さんが言われるような、不確実性と多様性を受け入れることができるようにするためには、どのような方法があると思われますか。須賀:言葉にすると、とても陳腐になってしまいますが、「不確実性も、多様性も当たり前」という感覚を持つことでしょうか。やってみると相当難しいと思います。たとえば、「オープンイノベーション」という言葉があります。「オープンイノベーションをやりましょうと」言われて、これに反対する人はほとんどいません。でも、この「オープンイノベーション」というのは相当面倒くさい作業です。自分たちの組織であれば「あれをやっておいて」で通じるものが、世の中がこうなっていて、私たちはこうこうこういうふうにする人だから、こういうときにこういうふうにやってほしい、それを私たちは「あれ」と呼んでいるというふうに、いちいち定義して説明していかなければなりません。それを少しでも間違えたり、誤解が生じていたりすると全く違う方向に行ってしまいます。このように、自分の組織の中のロジックが通じない相手とコラボレーションして成果を出していこうとすると、自分でやったほうが早いというふうに誰もが思います。そのときに、でも、なぜ私たちはマルチステイクホルダーのコラボレーションをやりましょう、それが正解ですというふうに自信を持って申し上げているかというと、クオリティにちゃんとこだわると、自分たちで全部内製化できるものなどデジタル時代には一つもないということなんです。このことを虚心坦懐に受け入れないと、縮小均衡するばかりで、自分たちだけにしか通用しない製品を作り上げ、結果として国際市場で負けてしまうということです。従って、オープンイノベーションのスキルを、日本の組織が組織として持つ、それは楽でもなければ楽しいことでもない、苦行であるということを覚悟し、やろうとすることが必要かなと思います。「デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(2)【実業之日本フォーラム】」へ続く(本文敬称略)■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/28 13:00
注目トピックス 経済総合
デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(2)【実業之日本フォーラム】
【ゲスト】須賀千鶴(前・世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)2003年に経済産業省に入省。2016年より「経産省次官・若手プロジェクト」に参画し、150万DLを記録した「不安な個人、立ちすくむ国家」を発表。2017年より商務・サービスグループ政策企画委員として、提言にあわせて新設された部局にて教育改革等に携わる。2018年7月より、デジタル時代のイノベーションと法、社会のあり方を検討し、グローバルなルールメイキングに貢献するため、世界経済フォーラム、経済産業省、アジア・パシフィック・イニシアティブによるJV組織の初代センター長に就任。国際機関のネットワークを活用しながら、データガバナンス、ヘルスケア、スマートシティ、モビリティ、アジャイルガバナンスなど多様な国際プロジェクトを率いる。2021年7月より経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)本稿は、「デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(1)【実業之日本フォーラム】」の続きとなる。白井:須賀さんは2021年7月には出向元の経済産業省に戻られるとお聞きしています。いまお教えいただいた形で、民間の方は組織としてオープンイノベーションのマインドを作り上げるように努力するということとなると思いますが、行政側として、どういう形でイノベーションの萌芽を拾い上げて育てていくのか、どういう形でアジャイルガバナンスを実践するのか、どういう形でデジタル社会に向き合ったら良いのかというような点についてお伺いできるでしょうか。須賀:国家に勤務する人間は、特別視され、なかなかフラットにプレーヤーとして受け入れられないという側面が、日本に限らずどの国でもあります。他方国家のほうも、自分達だけはなぜか特別で、ルールは作るが、それを守るべき一員とは考えていないという面があります。たとえばデータ・ガバナンスのルールとか、コーポレートガバナンスのデータ版みたいなものを考えたとき、それを企業に「こういうガイドラインを守ってください」と簡単に言いますが、それを自分たちも守ることにした場合、そのような体制を組めるのか、組めているのかというようなことを考えてもいない。常に、規制とかルールといったものは、自分たち以外の誰かに投げかけるものというように、無意識に思っているところがあります。これはよくも悪くもルールメイキングを、過去、国家が独占してきたことの帰結だと思います。今後のデジタル社会で一番面白いところは、国家であろうが、企業であろうが、自治体や個人であっても、それぞれ一つのノードにしか過ぎないという点にあります。もちろん、それぞれが出来ることの違いはあります。政府は、ルールを作るだけではなく、コンプライアンスも求められます。たとえば、データ漏洩の防止に関しては、企業が行うことばかり議論していますが、国民のDNA情報を、お金が足りなくて売ってしまった国が実際に存在します。これは当然やってはいけないことですが、国家を縛るルールがないためやってしまった。しかしながら、今後デジタル社会では、国家も企業も同様に、同じ基準で法令を遵守する必要があります。同等の主体同士であるという感覚が必要です。私はこのセンターでそのような感覚を教えていただいたと思っていますので、政府に戻ってもそれを実践したいと考えています。白井:アメリカの競争力の源泉は、政府と民間とのリボルビングドア(回転ドア)にあると言われています。新たに設置された日本のデジタル庁も民間からの登用が多いと聞きます。そう考えますと須賀さんは、経済産業省から第四次産業革命センターに出向され、世界を相手に活躍され、そして経済産業省に戻るという、まさにその先駆けであったように思います。昔は、天下りはありましたが、その逆はほとんどありませんでした。デジタル時代の日本の回転ドアについて、その理想論、ビジョンというものをお聞かせ願えるでしょうか。須賀:現在デジタル庁、平井大臣が情報漏洩で大変な状況となっていますが、あれも個人の問題ではなく、日本政府全体として、民間の人に中に入っていただき、一緒のチームとしてコラボレーションすることが具体的にはどういこうことなのかについて整理が不十分であったことに起因しているように思います。たとえば、利益相反を含めて、どういったルールが最低限必要なのかというような、インフラが整わないままに、時間を優先して先頭を走っていただいている結果、起きた問題ではないかと思います。これは、個人に帰着する問題ではなく、日本政府がこれまであまりにも、国家公務員試験に合格して公務員となった人間は、当然秘密は守る、当然利益誘導はしないと思い込んでいることに問題があると思います。非常に同質性の高い集団であることを前提に運営しているルールや文化を転換する、書き換えていくという作業が、まさに起きていると思います。デジタル庁に関しては、長い目で、温かい目で見ていく必要があると思います。将来的には、リボルビングドアがいいのかどうかということではなくて、そのときに最善の、最高品質の政策を作り、よりベストな意思決定をしていくためにはどのような布陣でなければならないのかということが優先されると思います。その結果として、霞が関の中の人ではできないということで役所の中で納得が得られれば、外部の人をお願いするといったプロセスがこれから起こるのかなと思っています。白井:非常に楽しく、かつ有益なお話を聞かせて頂きました。ありがとうございました。須賀:どうもありがとうございました。(本文敬称略)■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<RS>
2021/10/28 13:00
注目トピックス 経済総合
軍拡競争を繰り広げる朝鮮半島【実業之日本フォーラム】
2021年10月21日、韓国は初の国産ロケット「ヌリ」号を打ち上げた。打ち上げを視察した文在寅大統領は「目標を完璧に達することはできなかったが、最初の打ち上げで非常に立派な成果を収めた」、と高く評価した。ロケット開発は、ICBM開発と共通点が多く、ロケット打ち上げ成功は、ICBM保有能力の獲得と同等に語られる。北朝鮮の度重なる弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射に加え、韓国も弾道ミサイル開発を積極的に進めており、朝鮮半島は、まさに軍拡競争の渦中にある。文在寅大統領は、「国防改革2.0」を推進中であり、2022年までに61.8万人の兵力を50万人に削減する計画である。韓国統計庁による韓国の特殊出生率は2020年0.84であり、3年連続1を下回り、OECD加盟国の中で最も低い。少子高齢化が進む日本でも2020年の出生率は1.34であり、韓国の少子化は日本より深刻と言える。韓国の総人口は約5,130万人と、日本の半分以下であり、日本の自衛隊約24.7万人の倍以上の常備兵力を維持することは、徴兵制度下とは言え継続困難であろう。「国防改革2.0」に示される軍事構造分野の改革は、兵力削減に伴う抑止力の低下をいかに補うかが焦点となっている。その中で、前政権から継続されている、北朝鮮の核及びミサイルを無力化する「3軸体系戦力」の構築は踏襲されている。2021年5月の米韓首脳会談で、文大統領が、韓国のミサイル開発を制限していた米韓ミサイル指針からの離脱を宣言したことは、韓国の対北抑止力強化への強い意志を感じさせるものであった。9月15日に実施した韓国初の潜水艦搭載弾道ミサイル(SLBM)の発射試験は、3軸体系の一つである「大量反撃報復」の具現化を目指すものである。韓国は、この他に射程80kmとされる弾道ミサイル玄II及びIVの発射試験を行っている。韓国の一連の弾道ミサイル等の発射試験に加え、国産ロケットの打ち上げは、北朝鮮にとっては脅威の増大としか見えないであろう。2021年10月に、米軍情報局(DIA : Defense Intelligence Agency)は北朝鮮軍事力に関する報告書を公開している。報告書によると、北朝鮮はGDPの20~30%を軍に投資しており、その額は70~110億ドル(8,000億~1兆2,000億円)と推定されている。約150万人とされる兵力にしては少ない予算であり、頻繁に行われれるミサイルの発射実験から、その多くが核及びミサイル開発に使用されていると推定できる。DIAは、北朝鮮の国家戦略を「政権の生き残り」と「朝鮮半島の統一」と見積もっている。金正日政権時は「先軍政治」を掲げ、軍の非対称戦能力の向上として、特殊部隊、生物化学兵器、長距離砲撃能力及び核能力が重視された。金正恩は軍に過度に依存する体制から、経済と軍事の「両輪戦略」に転換し、核、ミサイルに加え、空軍力を中心に通常戦力の強化を図っていると分析している。そして、北朝鮮はもはや1950年代のように朝鮮半島を席巻するような地上戦力を保有していないが、核からゲリラ戦に至るまで、広い範囲で非対称戦力を向上させ、抑止力を強化し、いかなる紛争にも対応できる体制をとっていると結論付けている。2021年10月11に開催された「国防発展展覧会2021」における金正恩の記念演説にはDIAの分析に関連し注目点すべき点が確認できる。それは、韓国が弾道ミサイルを含む先端技術の開発、導入を北朝鮮に対する抑止力強化の名目で行っていることを強く非難、北朝鮮の自衛的権利まで損なおうとした場合、これを容認せず、強力な行動を持って立ち上がるとしている点である。自国の核、ミサイル開発はあくまでも韓国、米国の圧力に対抗するものであり、これを放棄する意思が無いことを明確に示すものである。9月21日、文在寅大統領は国連総会の一般討論演説で、関係国が朝鮮戦争の終戦宣言を行うことを提案した。文大統領は「平壌共同宣言合意書」に署名しており、南北融和は政権のレガシーとしてさらに進めたい事業である。一方で、9月15日に実施した韓国のSLBM発射に際しては、「韓国のミサイル戦力を増強してこそ、北朝鮮の挑発に対する確実な抑止力になる」と発言し、金正恩の妹である金与正から「愚か極まりない」と非難されている。南北融和を目指し対話を求める発言と北朝鮮抑止のためミサイル戦力の増強を進めるという発言を、日を置かずに行ったという事は、文大統領がこれらに何の矛盾も感じていないことを意味する。微妙な舵取りが必要な北朝鮮問題を考えると、韓国がどの方向を目指そうとしているのか国際的理解を求めるのは難しい。文政権は、中・長期的戦略に基づいて、外交・安全保障政策を推進しているのか疑わしいと言わざるを得ない。一方、この文在寅大統領の姿勢は、思わぬ効果を果たす可能性がある。それは、朝鮮半島の軍拡競争が、北朝鮮経済を疲弊させ、政権崩壊の道を歩む可能性である。旧ソ連崩壊の一因に、アメリカとの軍拡競争に旧ソ連経済が耐えられなかったことが挙げられている。10月11日の演説で、金正恩は「周囲の脅威に応じて北朝鮮の軍事力を絶えず強化することは朝鮮革命の時代の要請である」と述べている。それを実践するかのように、韓国のSLBM発射試験の同日に北朝鮮は列車に搭載した短距離弾道ミサイルの発射を行い、1か月後にSLBM試験を行っている。今回の韓国のロケット発射に対し、北朝鮮がロケット発射を試みる可能性もある。国防発展展覧会において、「米韓に対し強力な抑止力を持つ」と言っている以上、韓国が新たな装備の試験や導入を進めるたびに、それと同等またはそれ以上の能力を持つ装備の開発をしていることを国民に見せる必要に迫られる。韓国の半分以下の軍事費の北朝鮮が、新装備の開発を進めることは、必然的に軍の他の予算を圧迫するであろうし、ひいては経済制裁を受けて疲弊した国内経済に大きなインパクトを与えるであろう。このことは金正恩が進める「両輪戦略」の破綻を意味する。韓国の国防力整備に関しては、いかなる脅威を想定し、いかなる軍事戦略の下で運用することを考えているのか分からないものが多い。海軍の装備で言えば、空母やSLBMそして原子力潜水艦がその代表例である。それらの多くは、戦略上よりも、国家としての威信を示す所要のほうが大きい。しかしながら、北朝鮮を軍拡競争に誘い込み、自壊を促す効果があるという側面があることも否定できない。1991年冬、世界の超大国の一国であったソ連が崩壊した。当時ソ連の崩壊を正確に予測した人間はほとんど存在しなかった。北朝鮮の崩壊は、核及びミサイルに対するコントロール、大量に発生すると見られる難民対策等日本の安全保障に大きな影響を与える。北朝鮮問題は核・ミサイルだけではないことを認識し、各種対応策について、少なくとも頭の体操はしておく必要がある。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
2021/10/28 11:03
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.38%安でスタート、新型コロナ感染の再拡大を警戒
28日の上海総合指数は売り先行。前日比0.38%安の3548.70ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時45分現在、0.46%安の3546.07ptで推移している。国内での新型コロナウイルス感染の再拡大が引き続き警戒されている。また、不動産業をめぐる不透明感が払しょくされていないことも足かせに。一方、企業業績への期待などが引き続き指数をサポートしている。
<AN>
2021/10/28 10:54
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野村総合研究所のコール型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(28日10:16時点のeワラント取引動向)
新規買いはソニーグループ<6758>コール404回 12月 12,500円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはイーサリアム先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 11月 1.0米ドル、イーサリアム2021年11月 プラス5倍トラッカー2回 月 2,300米ドル、リクルートホールディングス<6098>コール98回 月 7,400円、サイバーエージェント<4751>コール186回 月 2,450円などが見られる。上昇率上位は野村総合研究所<4307>コール39回 11月 5,200円(前日比3倍)、富士通<6702>プット203回 11月 16,500円(前日比2.6倍)、富士通プット204回 11月 19,500円(前日比2.5倍)、野村総合研究所コール38回 11月 4,600円(前日比2.3倍)、富士通プット202回 11月 13,500円(前日比2.3倍)などとなっている。(eワラント証券)
<FA>
2021/10/28 10:43
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NYの視点:カナダ中銀が先導、主要中銀の政策設定へ、インフレへの懸念強める
パンデミックが起因する世界のサプライチェーンの混乱が終息する様相が見られず主要各国の中銀がインフレへの懸念を強め始めている。先進諸国の中で最も早く量的緩和(QE)縮小を開始したカナダ中銀は政策金利据え置きを決定したが、QEの終了を発表。マクレム総裁は会合後の会見で、経済が完全な回復に近づいており、QEは必要ないとした。回復が完了するまで、低金利を維持するとしながらも、サプライチェーンの混乱がインフレを押し上げることから、想定より利上げが早まる可能性を示唆。市場が来年4回の利上げを織り込んでいることに関して、意図的にハト派色と強めたり、特に言及することはなかった。利上げ条件達成を、2022年後半から、2022年の真ん中に前倒し。逆に、利上げ観測を強めるような内容となった。早くて、4月13日に予定されている会合での利上げの可能性もある。インフレの上昇で豪州や英国でも早期利上げ観測が強まっている。ただ、英中銀は来週開催される会合では利上げを見送る見通し。また、特に原油価格動向で景気が左右されやすいカナダや豪州などでは、他国に比べ早い景気回復、インフレ過熱感も強いと考えられるため、早期の利上げ観測は理に適う。今まで、利上げに言及するのさえ時期尚早としていた連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も高インフレが一過性との見方は維持しているものの、サプライチェーンの混乱が2022年まで続くとし、高インフレが想定以上に長引く可能性に言及。インフレリスクは明らかに上方と示し、タカ派姿勢を強めつつある。FRBは来週予定している連邦公開市場委員会(FOMC)で資産購入縮小を開始し、2022年半ばに終了。一方で、労働市場の最大雇用達成には時間がかかると見ており、FRB高官の2022年の利上げ見通しは5分5分。ただ、米金利市場では6月の利上げを7割織り込んだほか、2022年後の2回の利上げを織り込んだ。ドルも底堅い展開が続くと同時に、他国も同様に緩和解消に動くため、上昇も限定的にとどまる可能性がある。ただ、日銀や欧州中央銀行(ECB)は回復が遅れ、緩和縮小もまだ先になる可能性があるため、円やユーロに対してはドルの上昇が予想される。
<FA>
2021/10/28 07:36
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南アフリカランド円は利上げ見通しと資源価格上昇を背景に堅調に推移しそう サンワード貿易陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、南アフリカランド円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『今週の南アフリカランド円は、利上げ見通しと資源価格の上昇を背景に堅調に推移しそうだ』と述べています。20日に発表された9月の消費者物価指数(CPI)について、『前年同月比5.0%上昇した。ガソリンなど燃料の値上がりが背景にある。伸び率は前月の4.9%から加速し、5カ月連続で中央銀行の政策目標(3~6%)の中間値(4.5%)を上回った。現在の政策金利は3.5%なので、実質金利=名目金利−インフレ率=3.5−5.0=−1.5%と実質金利はさらに落ち込んだことになる』と伝えています。続けて、『今週は28日に9月生産者物価指数(PPI)が発表される。予想は前年比+7.3%で前回の+7.2%より若干上昇する見込み。年末に向けて原油や天然ガス等のエネルギー価格が北半球の冬季需要を受けて上昇する可能性が高いことから、インフレ率は、これからも加速する可能性が高い』と言及しています。南アフリカ中銀については、『11月18日の今年最後の会合で、利上げをする可能性が高いだろう。南アフリカ中央銀行は9月23日の政策委員会で、主要政策金利を3.5%に据え置いたが、ハニャホ中銀総裁は声明で、11月の次回会合で利上げを開始する可能性を示唆した。2021年の南アフリカの経済は想定以上に好調として、経済成長率の予測を従来の4.2%から5.3%に上方修正した。今年の消費者物価上昇率の予測は4.4%と0.1ポイント引き上げた』と解説しています。また、『中国不動産開発大手の中国恒大集団が23日に利払いの猶予期限が切れる米ドル建て社債の利息を支払うと報じられ、デフォルト(債務不履行)がいったん回避される見通しとなったことは、新興国通貨には支援要因だろう』と考察しています。こうしたことから、陳さんは、南アフリカランド円の今週のレンジについて、『7.65円~8.05円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の10月26日付「南アフリカランド円今週の予想(10月25日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
<FA>
2021/10/27 17:45
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(中国)上海総合指数は0.22%安でスタート、不動産業の不透明感を警戒
27日午前の東京市場でドル・円は引き続き114円10銭近辺で推移。米政策金利の先高観などを意識したドル買い・円売りは一服しつつある。日経平均の下落を意識したドル・円は上げ渋っているが、新たなドル売り材料が多く提供されているわけではないため、ドル・円は114円近辺で下げ渋る可能性も残されている。ここまでの取引レンジは、ドル・円は114円05銭から114円22銭、ユーロ・ドルは、1.1590ドルから1.1604ドル、ユーロ・円は、132円30銭から132円53銭で推移。
<AN>
2021/10/27 11:00
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日東電工のコール型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(27日10:41時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価下落が目立つ日本郵船<9101>コール138回 12月 9,500円を逆張り、ソフトバンクグループ<9984>コール592回 12月 7,700円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては日本電産<6594>コール199回 11月 14,500円、日本電産コール196回 月 14,500円、キヤノン<7751>コール235回 月 3,350円、WTI原油先物リンク債_2021年12月限プット15回 月 70米ドルなどが見られる。上昇率上位は日東電工<6988>コール172回 11月 11,000円(前日比3倍)、日東電工コール171回 11月 9,700円(前日比2.5倍)、日立建機<6305>コール88回 11月 4,000円(前日比2.1倍)、キヤノンプット214回 11月 2,150円(+83.3%)、キヤノンプット215回 11月 2,550円(+81.3%)などとなっている。(eワラント証券)
<FA>
2021/10/27 10:53
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コラム【新潮流2.0】:ミス(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)
◆スポーツの秋たけなわである。アメリカの大リーグも日本のプロ野球、Jリーグも佳境を迎えている。プロゴルフも男子、女子ともに日本オープンを終え、これから大きな試合が続く。先週は日本で開催されるPGAツアートーナメントのZOZOチャンピオンシップが行われ、マスターズ・チャンピオンの松山英樹選手が制した。最終18番ホールのPAR5。松山が5番ウッドで放った第2打はピンにかぶって真上から落ちてきた。鳥肌が立った。イーグルで優勝を決めた圧巻の凱旋勝利だった。◆女子ゴルフも黄金世代、プラチナ世代と言われる若手選手が活躍してツアーを盛り上げる。そのプラチナ世代の代表が古江彩佳選手だ。先々週の富士通レディース、先週のマスターズGCレディースと2週連続優勝を果たした。実は東京五輪の代表争いを最後まで戦い抜いて敗れるなど不調が続いていたが、ここにきて完全復活。富士通レディースの優勝コメントに成長の跡が伺える。「ミスがつきもののゴルフなのにミスを許せなくなっていた。ミスしたら悔しいけれど、悔やんじゃいけない」。◆投資に関するお薦め書籍で決まって挙げられるチャールズ・エリス『敗者のゲーム』。プロのテニスの試合はエースを取り合ってポイントが入るが、アマチュアはダブル・フォールトやネットに引っ掛けるなどのミスでポイントが入る。 エリスは言う。プロのテニスは勝つためのプレーで結果が決まる「勝者のゲーム」、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることで決まる「敗者のゲーム」だと。そしてトミー・アーマーの言葉を引く。「ゴルフで勝つための最善の方法は、ミス・ショットをできるだけ少なくすることだ」。◆ゴルフでも投資でもミスはしたくないが、つきものである。東大卒のプロ・ポーカープレーヤーの木原直哉さんは、ミスをしたからといって後悔する必要などまったくないという。同じミスをするな、と言われても、やはりひとは同じミスを繰り返しがち。 それでも「同じ間違いをしやすいところを発見した」くらいの気持ちでいいという。後悔などせずただ検証し、学び終えたら次に進むだけ。それが上達のコツだろう、ゴルフでも投資でも。レオス・キャピタルの藤野英人さんは常々こう述べている。「投資は勝つか負けるか、ではなく、勝つか学ぶか」であると。マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆(出所:10/25配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)
<FA>
2021/10/27 09:31
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NYの視点:米10月消費者信頼感指数が予想外に改善、Q4GDPの伸び回復を支援
米コンファレンスボードが発表した10月消費者信頼感指数は113.8と、9月109.8から低下予想に反し上昇した。4カ月ぶりの上昇となった。一方、今後12カ月のインフレ期待は7.0%と、9月6.5%から上昇。ただ、物価の上昇にかかわらず、労働市場の改善や新型コロナ感染が一段落したことが消費者信頼感の回復に繋がった。現況は147.4と、期待は91.3で、それぞれ9月144.3、86.7から上昇。国内総生産(GDP)の成長は第3四半期に鈍化後、第4四半期に伸びが加速する可能性が期待できる。このため、ドルも底堅い展開が予想される。第3四半期には新型コロナウイルス変異株の再流行で消費が著しく滞り、エコノミストはGDP成長が2%前後に鈍化したと見ている。■10月消費者信頼感:113.8(予想108.0、9月109.3)現況:147.4(144.3)期待:91.3(86.7)インフレ今後12カ月のインフレ期待7.0%(9月6.5%、2020年5.6%)今後6カ月の賃金7.4(9月5.5、3.3)雇用十分:55.6(56.5、26.7)不十分:33.8(30.5、53.7)困難:10.6(13.0、19.6)6カ月後増加:25.4(21.3、32.0)減少:18.3(19.9、19.8)不変:56.3(58.8、48.2)所得増加:18.7(16.9、17.5)減少:11.3(11.4、14.2)不変:70.0(71.7、68.3)
<FA>
2021/10/27 07:43
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水中覇権と安全−米原子力潜水艦の事故−【実業之日本フォーラム】
2021年10月7日、米海軍協会(USNI)ニュースは、10月2日に米海軍シーフルフ級攻撃型原子力潜水艦コネチカット(SSN-22)が南シナ海において、水中を航行中に、何らかの物体に衝突したと伝えた。乗員11名が負傷したが原子炉及び周辺区画に損傷はなく、水上航走でグアムに向かうとしている。10月8日にグアムに到着したことが報道されており、今後事故調査及び修理が実施される予定である。中国解放軍報は10月12日、事故の場所、核燃料漏洩の有無及び航行安全や漁業に与える影響について速やかに情報公開すべきであると論評している。事故を起こした米海軍攻撃型原子力潜水艦コネチカットは、シーフルフ級2番艦である。同級潜水艦は、冷戦時代の高性能ソ連潜水艦に対応するため、静粛性、潜航深度、高性能センサーの装備等極めて能力の高い原子力潜水艦として計画され、従来のロサンジェルス級の後継として20隻以上の建造が予定されていた。しかしながら、冷戦の終結と、高性能が故の建造費高騰も相まって、3隻で建造が打ち切られた。1番艦が就役してから20年が経過するが、依然として高性能潜水艦の地位を保っている。USNI紙によれば、コネチカットは、5月に母港である米国西岸のワシントン州、ブレマートンを出港、西太平洋に展開中であり、少なくとも2回日本に入港したとしている。在日米海軍司令部は7月31日に横須賀の米軍基地に入港する同艦の写真を公開している。水中排水量9,000トンを超える潜水艦で、11人が怪我をしたという事は、比較的大きな衝撃があったと推測される。従って、衝突した相手は、船舶等ではなく、海山又は海底に設置された人工物の可能性が有る。米原子力潜水艦が海山に接触した例は過去にもある。2005年1月、グアムを出港しオーストラリアに向かったロサンジェルス級攻撃型原子力潜水艦サンフランシスコは海山に正面衝突し、1名死亡、23名負傷、船首部が大きく破損するという事故を起こしている。当時の報道によれば、サンフランシスコは深度525フィート(約140m)を30ノット(時速約55Km)で航行していたとされている。海山への衝突原因は、米海軍が広大な太平洋の海底地形を十分に把握せず、サンフランシスコも不十分な情報しかないにも関わらず、高速航行したことがあげられている。潜水艦は通常航行時、パッシブ・ソーナーしか使用しないため、海山や海底構造物といった自ら音を出さない目標の存在を感知することはできない。従って、浅海域や複雑な海底地形の海域を航行する場合は、低速力で、水深を測定しながら航行する。サンフランシスコは、航行海域にそのような海山があるとは全く予想していなかったのであろう。一方、今回コネチカットが損傷したのは南シナ海である。島嶼が点在し、海中の音響特性も複雑である。米軍は南シナ海の海洋調査を積極的に実施している。2009年3月及び5月には米海軍音響測定艦の行動を中国漁船が妨害しており、2016年12月には米海軍海洋観測艦の無人潜水機を中国海軍艦艇が捕獲する事件も生起している。米軍は太平洋に比較すると詳細な海底地図を保有していると見られるが、航行船舶も多く、漫然と航行できる海域ではない。被害状況や原因は今後明らかにされると思われるが、少なくとも潜水艦乗員の注意不足は否めない。コネチカットは南シナ海からグアムまで6日間水上航走していることから、潜没航行ができない何らかの原因、例えば船体に亀裂が入っている可能性もある。今回の事故は、図らずも南シナ海において激しく水中覇権が争われていることを白日の下にさらしたと言えるであろう。攻撃型原子力潜水艦は、その能力から次のような任務が割り当てられる。その一つは、情報収集である。長期間潜没航行が可能な原子力潜水艦は、隠密裏に相手国沿岸に接近し、各種情報を収集するのに最も適した兵力である。状況が悪化し、攻撃が命ぜられたならば、巡航ミサイル等による陸地攻撃や魚雷等により空母等の重要艦艇を沈めることも可能である。次の任務は弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)の追尾又は護衛である。SSBNは核抑止戦略において、第二撃能力(相手の先制攻撃で地上核兵器が無力化された場合、反撃の核攻撃が可能な体制を構築することにより、相手の先制攻撃を抑止する考え方)の役割を果たす。これを無力化すること、あるいは相手の無力化の試みを阻止することは重要な任務である。冷戦時代、外洋展開中のソ連SSBNには常時米原子力潜水艦が張り付いていたと言われている。最後に、空母等重要船舶の護衛である。強大な攻撃能力を持つ米海軍原子力空母であっても、潜水艦からの攻撃には脆弱である。対潜兵力として、対潜哨戒機、水上艦艇等が存在するが、海中という同じ環境で行動する潜水艦が相手を探知する能力が最も優れている。更に運動性能の優れた攻撃型原子力潜水艦は、空母等の周辺を自由に行動し、待ち伏せ攻撃が主流の通常型潜水艦を牽制できる。防衛省の公表によれば、10月2日~3日に米空母「ロナルド・レーガン」及び「カール・ビンソン」は、日本の護衛艦「いせ」及び英空母「クイーン・エリザベス」とフィリピン海において訓練を実施している。コネチカットが事故を起こした10月2日には、南シナ海に米空母は存在しない。従って、コネチカットの任務は、南シナ海における情報収集又は中国が海南島に配備している「晋」級SSBNの追尾と推定できる。南シナ海において潜水艦を運用する国は米中だけではない。シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナムが潜水艦を保有しており、タイも中国から潜水艦を購入すると伝えられている。2018年9月には、海上自衛隊の潜水艦「くろしお」がベトナムのカムラン湾を訪問しており、日本もこれに加わる。正に南シナ海は、各国潜水艦が入り乱れる海域となっており、それに伴い、事故の危険性が高まる。幸いコネチカットは自力でグアムまで航行することが可能であったが、潜水艦事故は多数の死者を出す大事故につながる可能性が高い。今年4月には、インドネシア潜水艦がバリ島沖で沈没、53人の乗員総員の死亡が認定されている。沈没した潜水艦の救助は時間との勝負であるが、隠密性が命の潜水艦は、いつ、どこに沈没しているのかを特定することが難しい。インドネシア潜水艦の場合、沈没位置が判明したのは消息を絶ってから3日後であった。多くの国の権益の主張が重なり合う南シナ海では、潜水艦救難には、国際的な協力体制が必要である。秘匿性の高い潜水艦の行動に関し、各国が情報共有を図ることは困難と思われるが、少なくとも遭難したという情報を速やかに共有し、救難に関し協力するネットワークを作る必要がある。1963年の米海軍原子力潜水艦スレッシャー、2000年のロシア原子力潜水艦クルスクは双方ともに乗員の全てが死亡認定されている。南シナ海において、今後とも激しい水中覇権争いが行われると推定される。潜水艦が事故で沈没した場合、多くの人命が失われることに思いをいたし、安全対策にも十分な配慮が望まれる。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:YONHAP NEWS/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/26 17:09
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(中国)上海総合指数は0.08%高でスタート、企業決算に対する期待感が高まる
26日の上海総合指数は買い先行。前日比0.08%高の3612.83ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時51分現在、0.18%高の3616.21ptで推移している。企業決算に対する期待感が高まっていることが支援材料。一方、不動産引き締めや新型コロナウイルス感染拡大などが引き続き不安材料となっている。
<AN>
2021/10/26 10:55
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日本電信電話のコール型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(26日10:20時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つ日本電信電話<9432>コール154回 11月 2,900円を順張り、イビデン<4062>コール111回 12月 8,100円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはイーサリアム先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 11月 1.0米ドル、ファーストリテイリング<9983>コール337回 月 73,000円、銀リンク債プット69回 月 25米ドル、富士フイルムホールディングス<4901>コール115回 月 10,200円などが見られる。上昇率上位は日本電信電話コール156回 11月 3,800円(前日比2.4倍)、日本電信電話コール155回 11月 3,350円(+93.0%)、フェイスブックコール142回 11月 420米ドル(+80.0%)、パナソニック<6752>コール258回 11月 1,650円(+67.5%)、日本電信電話コール159回 12月 4,000円(+54.3%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/10/26 10:51
注目トピックス 経済総合
日本海の単独呼称の正当性を拡散せよ【実業之日本フォーラム】
2021年10月22日、磯崎仁彦官房副長官は記者会見で、「日本海」の呼称の正当性を解説する外務省のホームページの動画について「国際社会の正しい理解を促進するため、韓国語を含む9言語版を公開する。『日本海』の呼称は国際的に確立した唯一の呼称であり、国連や米国をはじめとする国際社会において正式に使用されている」と発表した。2004年3月10日、国連本部事務局は、日本政府の照会に対し「日本海」が標準的な地名であり、国連公式文書では標準的地名として「日本海」が使用されなければならないとの方針である旨、公式に回答している。また、米国において、米国地名委員会の決定に基づき、米国すべての連邦政府機関は、「日本海」の使用を義務付けている。米国に加え、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国なども「日本海」の呼称を使用している。ところが韓国は、1992年、「第6回国連地名標準化会議」において、「日本海の呼称が普及したのは、日本の拡張主義や植民地支配の結果である」と主張し、「日本海(Japan Sea)」の呼称に異議を唱え始めた。また、1997年から「国際水路機関」(IHO : International Hydrographic Organization)の場でも、「大洋と海の境界」(各国の水路機関による海図作製の便宜を図る目的で,IHOが海洋の境界を示すガイドラインとして編纂している図誌)が定める日本海の呼称に「東海(East Sea)を併記すべき」と主張し始めた。2002年、国際水路機関事務局は、韓国の主張を受け、日本関連ページを一時白紙とし、賛否を問うたが、わが国は本草案に強く抗議し、国際水路機関事務局は草案を撤回している。韓国は、2012年の「第18回国際水路会議」でも同様の主張を繰り返している。その後、2020年11月の「第2回国際水路機関総会」において、「日本海(Japan Sea)」が単独で表記されている「大洋と海の境界」第3版が、引き続き公に利用可能な国際水路機関出版物として承認されている。歴史的に見れば、イタリアのマテオリッチによる「World Atlas」(1602年)が「日本海(Japan Sea)」という呼称の初出であり、1704年パリで製作された地図、1798年ロンドンで製作された地図には「日本海Japan Sea」が記述されており、ヨーロッパにおいて既に確立された呼称であったと思われる。その後も安定的に使用されており、欧州の文書(History of the name Sea of Japan, the technical document E3-1 of Geospatial information Authority of Japan)によると、世界主要各国の90%以上の地図が「日本海」という呼称のみを使用しており、広く国際的に定着していると言える。また、海域の命名方式は、海域を隔絶する列島弧や半島の名前に由来することが多く、「日本海」は「日本列島」によって「北太平洋」から切り離されたという地理的特徴に基づき命名されており、広く一般に受け入れられているのであろう。一方、「東海」という海域名は、日本海以外の海域でも複数存在している。中国は国内では「東シナ海」を「東海:トンハイ」と表記し、ベトナムも「東海」を意味する「ビェンドン」を使用し、ドイツとスウェーデンは「バルト海」について「東海」を意味する「オストゼー」、「ウステルヒョーン」と呼称している。因みに韓国では、朝鮮半島を取り巻く海を、自国を中心に、その方角に応じ「西海」「南海」「東海」と呼んでいるが、改称を主張しているのは、「日本海」に関してだけで、黄海、東シナ海の変更は主張していない。外務省の動画でインタビューに応じたドイツのフランツ・ヨーゼフ・ユング元国防相は、「ヨーロッパ人は日本海が日本海であることを知っている。韓国の主張は、国際慣行を一方的に変更し、ルールに基づく国際秩序を乱すものであり、到底受け入れられるものではない」と断言しており、ナレーションでは「日本海は、過去も、現在も、そして今後も国際社会に認められた唯一の呼称である」と結論付けている。2020年11月、国際水路機関は、「大洋と海の境界」の海図「S23」を改正せず、デジタルを基盤として「S-130」を新規に導入し、地名の代わりに固有識別番号を付与することを決定している。韓国の要求した「東海併記」は実現しなかったが、引き続き「日本海」は公に利用可能である。今回の外務省の9カ国語の動画を公開した理由は、日本海の呼称に関する問題が解決したことを国際的にアピールする目的があったものと考えられる。韓国は、このほかにも旭日旗に対する反感を国際社会に訴えている。国際社会においては、相手の国内事情を忖度した「大人の対応」は、自らに弱みがあることを認めたと捉えられる。面倒であっても、それぞれ丁寧に反論していかなければ、慰安婦問題のように、一方的主張が定着化しかねない。今回の外務省の動画配信が国際社会でどのように受け取られるか、継続した調査が必要であろう。サンタフェ総研上席研究員 將司 覚防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。写真:YONHAP NEWS/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/26 10:34
注目トピックス 経済総合
豪英米(AUKUS)協定と日本の立ち位置(元統合幕僚長の岩崎氏)【実業之日本フォーラム】
2021年9月15日、突如、オーストラリア、イギリス、アメリカ合衆国が軍事協定を結んだことを公表した。この三ヶ国の頭文字をとって、AUKUS(オーカス)と呼ばれる協定である。AはAustralia、UKはUnited Kingdom、USはUnited Statesである。何故、豪・英・米の順なのかは知る由もないが、中国を意識した安全保障上の協力の枠組みである。2021年9月中旬に、豪が仏との潜水艦開発計画契約を破棄し、米や英が支援する原子力潜水艦を導入する事が報道された。この際に、新しい枠組みのAUKUSも報道されたために、AUKUS協定は豪への原子力潜水艦支援の為の協定であるかの様に受け止められているが、AUKUSの内容を見れば、原子力潜水艦の支援協力は、全体の中の一部分である。基本的には安全保障協力の協定であるが、その中心は、先進技術に関する開発から維持整備等に至る防衛協力体制の構築にある。先ずは、豪の新潜水艦開発に関する説明をしたい。豪は、コリンズ級の潜水艦を保有しているものの、導入からかなりの年数が経過しており、部品供給や維持・補修に苦労しており、何より既に陳腐化が始まっている。このため豪は、2010年代初頭から新潜水艦の導入の検討を開始し、2015年2月にアンドリューズ国防相が新潜水艦開発構想を公表し、新潜水艦を豪国内で第三国との協力の下、開発する旨の計画を発表した。この豪の開発計画に手を挙げたのが仏・独・日の三ヶ国であった。この新潜水艦開発計画には、前提事項(既定路線)があり、潜水艦に搭載される内部機器は、米国製にすることが決定されていた。即ち、この開発計画の競争に勝った国は、潜水艦の所謂、ドンガラ(胴体)を設計・製造を請け負うことになる入札であった。この三ヶ国の競争が開始された当時、日豪関係は、これまでになく緊密であり、特に安倍首相とアボット首相との関係は特別であった。この様なこともあり、我が国は入札参加こそ遅れたものの、この競争に勝てるのではとの楽観的な見方が強かった。しかし、その後、豪はターンブル首相となり、この潜水艦開発プロジェクトは、最終的に仏が契約を勝ち取った。その開発契約が、今回破棄されたのである。国際的に大きな契約が、双方の合意無くして破棄されることは極めて珍しいケースである。2018年8月、豪はターンブル首相からモリソン首相に交代となり、必ずしも仏と契約したプログラムが予定通り進んでいなかったことや、将来の脅威予測が変化し始めていたこと等から、同プロジェクトを白紙的に見直し、結果的に仏との契約を反故にすることを決意した様である。そして、2021年初頭から、モリソン首相は、米国や英国と水面下で何度も調整し、今回の英断に至ったとの事である。この様な外国を巻き込む超大規模な開発計画が白紙撤回されたことは前代未聞であり、世界に衝撃を与えている。仏は怒り心頭であり、豪や米の駐在大使を召還した。当然の事であろう。これで、仏豪関係及び米仏関係が険悪な状態となっている。米国は、豪・NZ(新)とのANZUS(Australia, New Zealand, US)安全保障条約を維持している。しかし、この条約は1951年に締結された後1987年にNZが「非核法」を制定し、以降、米国の原子力潜水艦等、核を搭載しているとみられる艦船や航空機がNZに立ち寄ることが出来なくなっている。また、米国は、英・加・豪・新の五ヶ国による秘密保護協定であるFive Eyesも維持しているが、NZを維持すべきかという議論が出てきていることも事実である。この様な中、AUKUSが発表された。米国には、ANZUSに代わる協定とみる節もあるが、全く別であろう。今回のAUKUSは軍事同盟であるが、締結内容をよく見れば、報道の潜水艦のみならず、この三ヶ国の技術協力協定的な内容である。この協定には、各分野の先進技術や自立型無人潜水艦、長距離攻撃能力(敵基地攻撃能力)の技術開発協力、そしてサイバー・セキュリティ、人工知能(AI)、量子コンピュータ、暗号化技術、宇宙に関する研究協力等々、かなり幅広い協力を進めていく事が盛り込まれている。この協定を発表した時に説明していないものの、恰も中国の千人計画に対抗する様な内容である。しかし、私には大きな疑問がある。それは、何故「ジャーカス(JAUKUS)」ではなかったのかである。世界の最先端技術は、当然のことながら、未だ米国がダントツである。しかし、その米国も以前に比べれば陰りが見えてきている。オバマ大統領は、「最早、米国は世界の警察官でない」との発言を繰り返した。トランプ大統領は、同盟国へ応分の負担を強く要求した。米国の相対的な力の低下を物語っている。これは先進技術には巨額な資金が必要な事と、中国の台頭である。将来を見据えたときに米国とて安穏としておられない状況である。各分野の最先端の技術を語る時に、我が国を抜きに出来ようか。答えは否である。確かに我が国は、一時期よりも技術開発分野への投資が減り、世界の第一線から退いた感があるものの、まだまだ世界に誇る分野も多くある。この様な事から私は、今回のオーカス(AUKUS)は、本来はジャーカス(JAUKUS)であるべきだったと考えている。この三ヶ国に、我が国を入れる事によって、他を寄せ付けない確固たる技術協力が確立されていくものと確信している。私は、以上の様な考え方に基づき、先日、米国の方々との意見交換の機会に、ジャーカス(JAUKUS)を提案したところ、米国の友人は「今回は仏との関係悪化が見込まれたため、極めて秘密裏に行う必要があったのではないか」と言われた。その際、私は、それは確かに理解できる理由とは思いつつ「それって、ますます良くないのではないか。もしそうであるとすれば、日本が秘密を守れないと思われているからだろうか」と言い返した。私は、我が国の秘密保持に関しては、必ずしも十分でないと認識しながら、やや置いてきぼりを食ったこともあり、反論したのであるが、今回は、いろいろな観点から考えれば、妥当なスタートだったかもしれないと思う点もある。それは、核問題である。今回の原子力潜水艦に核弾頭搭載ミサイルを装備するか否かについては明確にされていない。何より、原子力潜水艦は原子炉を搭載している。我が国には、原子力を忌避する傾向がある。また、核爆弾に関しては、三原則を維持しており、今回の豪の原子力潜水艦に関与してない方が良かったかもしれない。しかし、将来においては、このAUKUSに我が国も積極的に関与すべきと考えている。(令和3.10.18)岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/26 10:12
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岸田新総理で漸く始まる我が国の戦略(NSS)見直し(元統合幕僚長の岩崎氏)【実業之日本フォーラム】
岸田新総理大臣は国会での所信表明演説で、2013年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略(NSS; National Security Strategy)」の見直しに着手する旨を述べられた。私は7年前の統幕長時代に、我が国が初めて成文化したNSS策定に係る事が出来た。これまで我が国には、安全保障に係る戦略がある様で無かった。ある様で無かったとは、安全保障に関係する人たちの中で、ある種の共通概念があったことから、あると言えばあるとも言えた。ただし、総論で一致していても、各論になれば違っている事は多々あった。安倍総理は、このことを大変気にされ、強いリーダーシップのもとで策定作業を命じ、一年で策定した。この第1回目のNSSは、大変素晴らしい内容であったと考えている。私は、この種の戦略は、その時々の戦略環境に鑑み、随時見直しをしていくべきものと考えている。この世の中に「不磨の大典」はない。時代の変化に適応できるよう変化させていくべきものである。私は、何も過去のものを全て変えるべきと言っているわけではない。引き続き守るべきことも多くあろうし、将来の繁栄の為には、私たち自身が過去から脱却しないといけないことも多々ある。私はNSS策定以降の国際環境や我が国の国内事情等を常に見ていて、NSS策定当時の環境と明確な変化が見られ場合、NSSは見直すべきと考えていた。特に我が国が2015年「平和安全法制」制定以降、このNSSの見直しが必要と考え、至る所で主張してきた。このNSSや大綱には明確な見直しの期限や見直しの条件が明記されていない。しかし、これまでの策定経緯から、概ね10年程度の将来を見据えて策定されている。米国をはじめとする各国も、所謂、「国家安全保障戦略体系」を保持している。米国も見直しに関して明確な定義等がなく、毎年見直しをしていた時代もあったし、大統領の交代時期にのみ見直しを行っていたりした。私が考える大きな変化とは、先ず中国の変化である。中国は2013年末迄、東シナ海(特に尖閣列島付近)に出てくることは度々であったものの、南シナ海では中国大陸縁辺部での海空軍の行動はあっても、大陸から離れた海洋や公海上空での活動は稀であった。それが2014年以降、東シナ海での海空軍の活動が活発化するとともに、南シナ海でも同様な行動に出て、ベトナム沖の近海でオイルの試掘を行い、東南アジア諸国が領有権を争っている南シナ海の岩礁や浅瀬等を埋め立て始めた。そしていつの間にか滑走路を建設し、駐機場を整備し、対空警戒レーダー等を配備し始めた。2014年4月にフィリピンが領有権を主張し実行支配してきていたスカボロー環礁からフィリピン漁船等を追い出し、実効支配をし始めたことは、皆さまもご存じだと思う。そして、空母遼寧の東シナ海や南シナ海での遊弋が観測されるようになり、海軍・空軍の航空機の両海域での活動が頻繁となり、我が国の対中国機に対するスクランブルも急激に増加してきている。また、最近では、東シナ海のみならず、台湾周辺での航空活動が極めて活発に行われおり、気を抜けない状況が続いている。次に北朝鮮である。我が国のNSS策定当時は、北朝鮮が数年に一度程度で長距離弾道弾の発射実験を行っていたものの、弾道弾能力は限られたものであった。また、核に関しては三度の核実験が行われていたものの、米国の各研究等の見方は、核能力保有までにまだ時間が必要との認識であった。その後、特に2014年以降、頻繁な弾道弾発射、4回目~6回目の核実験が行われ、現在に至って北朝鮮は、米大陸本土まで届く長射程弾道弾を保有していること、極超音速飛翔が可能な弾道弾や不規則飛翔が可能な弾道弾の保有を疑う人はほぼいない。また、潜水艦発射ミサイル、最近に至っては巡航ミサイルの発射実験にも成功したとの報道を行っており、我が国とっては直接的な脅威となっている。そして、ロシアである。プーチン大統領は、軍に莫大な資源配分を行い、極超音速弾道弾を世界で初めて実戦配備する等、軍の近代化に取り組んできている。第二次世界大戦以降、不当に占拠している北方四島に着々と軍部隊を配備し、最近では、中距離・短距離地対艦ミサイルも配備、かつて目論んでいたオホーツク海の聖域化を進めている。最近では、極超音速ミサイル「ジルコン」発射に成功したとの報道もあった。このミサイルは音速の8~9倍とも言われ、この様なミサイルが実践配備されれば、既存のIAMD(BMD)体制では発見が遅れ、迎撃がほぼ困難である。この様な外的要因の大きな変化とともに、国内での「平和安全法制」制定や「新日米防衛ガイドライン」締結等、国内事情も変化しており、環境変化に適合する様な新戦略が必要になってきている。グレーゾーンやハイブリッド戦等を考慮すれば、純軍事的なこともさることながら、国家としての重要インフラ整備、サイバーや電磁波対策、宇宙に関する機能・能力等に至るまで考慮した新戦略が必要であろう。岸田新総理は、強い決意のもとで、この戦略見直しを宣言された。大変時宜を得たものである。早速、これまでの戦略環境を分析・評価し、今後の世界を予測し、新NSS策定に取り組んでいく事を望んでいる。そしてその際、新戦略を策定後、主として防衛省が管理している「大綱」、「中期防」の見直しのみならず、今回の新政権の目玉とされている「経済安保」に係る新戦略、エネルギー戦略、食糧戦略、宇宙戦略など各分野の戦略を策定していくべきと考えている。また、今年の「2+2」、「日米首脳会談」、「G7首脳サミット」等で「台湾海峡の両岸の平和的解決」等が指摘された。台湾有事は、我が国有事に直結するという議論が各所で行われている。この様な観点からすれば、新NSSには何らかの形で台湾に関する記述が必要と考える。また、出来れば、将来的には我が国も、米国の「台湾関係法」的な法律・規則又は考え方を明示すべきと考えている。そして、NSS策定後に「大綱」、「中期防」の見直しを早急に行い、菅前総理が米国で約束された「我が国の防衛力強化」を具現化すべき計画を内外に示すべきである。我が国のこの様な覚悟を示すことが、相手方への大きな警鐘となり、抑止になり得る唯一の手段である。(令和3.10.11)岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:代表撮影/ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/10/26 10:10
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NYの視点:市場の中銀の利上げ観測行き過ぎとの見方も
市場は過去の実績から中央銀行の利上げを過剰に織り込む傾向にある。インフレを巡り慎重姿勢を維持していた連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はここにきてインフレリスクに言及。サプライチェーン混乱が想定以上に長期化し、高インフレも2022年まで継続するリスクを指摘した。インフレ期待が高まる深刻なリスクが見られれば利上げも辞さない構えを見せたため、利上げの時期が早まるとの市場の観測も強まった。ただ、パウエル議長は経済が資産購入策縮小を開始し2022年中旬に終了する軌道にあるとしながらも、利上げの可能性は否定した。現在のところFRBの高官は、2022年に利上げを開始する確率はほぼ5分5分と見ている。一方、市場はすでに2回の利上げを織り込みつつある。NY原油先物は2014年以降で初めて85ドル台となるなど、燃料価格の上昇がインフレを押し上げると警戒されている。特に原油価格の動向が経済に反映しやすいカナダの中銀の金融政策においては、市場はすでに2022年に4回近くの利上げを織り込んだ。カナダ中銀は27日に金融政策決定会合を実施する。中銀はこの会合で、過去最低金利を据え置く見通しだが、市場の積極的な利上げ観測に対し、肯定的かまたは、行き過ぎとの見方に利上げ観測を緩和させるため声明などを意図的にハト派に傾斜させるかどうかに焦点が集まる。今週理事会を控える欧州中央銀行(ECB)、また、連邦準備制度理事会(FRB)など他の中銀の基調を定めていくと注目材料となっている。
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2021/10/26 07:39