注目トピックス 日本株
ステップ Research Memo(7):2026年9月期も生徒数の増加により増収増益が続く見通し(1)
配信日時:2025/12/25 10:07
配信元:FISCO
*10:07JST ステップ Research Memo(7):2026年9月期も生徒数の増加により増収増益が続く見通し(1)
■ステップ<9795>の今後の見通し
1. 2026年9月期の業績見通し
2026年9月期の業績は売上高で前期比4.1%増の16,494百万円、営業利益で同4.3%増の3,942百万円、経常利益で同4.0%増の4,022百万円、当期純利益で同2.4%増の2,754百万円を見込んでいる。2026年9月期も引き続き内部体制の充実に取り組むため、新規開校は2校程度に抑制する方針で、既存スクールの充席率アップと満席学年の空席待ち解消、また空席の少なくなっているスクールについては移転増床を進め、期中平均生徒数で前期比3~4%の増加を見込む。なお、現在開校が決まっているのは、「高校受験STEP」の川崎スクールで2026年3月に開校する。
売上高を半期ベースで見ると中間期の前年同期比2.9%増に対して、下期は同5.3%増と増収率がやや拡大する計画となっている。2026年春の合格実績を受けて下期に生徒数のさらなる増加を見込んでいるほか、物価上昇を受けて授業料の改定効果を若干程度、織り込んでいることが要因だ。同社はここ数年、物価や人件費の上昇を理由に他塾が授業料の値上げを実施するなかでも、顧客に寄り添い極力値上げをせずに踏みとどまってきたが、見直す時期がきたと判断し、内容も含めて2025年末までに方針を決定する。若干程度の値上げであれば、生徒数の募集状況にもほとんど影響は出ないものと考えられる。
費用面では、人件費や教材費の増加が継続するほか、2026年夏頃に次期基幹システムが稼働開始することを前提に、システム関連費用(減価償却費含む)88百万円の費用計上を織り込んでいる。新システムが稼働すると、本社と各校舎のデータ連携をリアルタイムで行えるようになり、会計等も含めて事務業務の効率化が進むものと期待される。さらに、2026年1月より「奨学金返還支援(代理返還)制度」を新たに導入することを発表した。支援対象となる従業員の経済的・心理的負担を軽減することが目的で、福利厚生制度の一環として導入し、今後の採用活動においても前向きな人材の確保につながるものと期待している。具体的な支援内容は、日本学生支援機構の奨学金の残額がある正社員を対象として、毎月2万円、60回、上限120万円相当の支援を行うというもの。在籍社員で100人程度が同制度の利用を希望しており、最大で18百万円程度の費用増要因となる。これらの費用増については増収効果で吸収し、営業利益率で前期並みの23.9%を計画している。なお、当期純利益の増益率が経常利益よりも若干低くなるのは、賃上げ促進税制の適用を見込んでいないためだ(前期は31百万円の減税効果)。
(1) 小中学生部門
新規開校予定は2校の予定だ。川崎スクールは決定済みで、もう1校も近々契約の模様である。生徒数は前期比3~4%増を見込んでおり、既存スクールの充席率(募集定員に対する生徒数の割合)アップや、満席学年の空席待ち解消、空席率の少ないスクールにおいては移転増床を進めることで生徒数の増加を図る。2025年10月末時点の生徒数は前年同月比3.3%増と順調に推移している。内訳は小学生が同10.0%増、中学生が同1.7%増と小学生が好調を持続しており、2026年9月期もほぼ同様の基調が続くものと予想される。
小学生の伸び率が高い要因として、私立中学受験が過熱化するなかで、それに対抗するような形で「楽しく学ぶ」「勉強が好きになる」ということを大切にしようとする小学生のニーズが増しており、それを取り込めていることが背景にある。また、一部のスクールでは中学生のクラスがすぐに満席で埋まってしまうため、席を確保するため小学生から通塾するケースもある。中学生については、全学年とも1~2%台の増加ペースとなっているが、地域によってまだら模様となっている。全体の傾向としては、横浜・川崎エリアで順調に生徒数が伸びており、少子化の進行が目立つ県西・横須賀エリアのスクールで停滞感が出ているようで、今後もこうした傾向は続くと予想される。
なお、2026年度から高校の授業料無償化が決定し、公立トップ校の志望生徒が多いSTEPへの影響が注目されたが、2025年10月末時点の中学3年生の生徒数は前年同月比2.3%増と増加基調が続いており、伸び率も前年10月の1.4%増から拡大している。今後は授業料無償化で先行した大阪府や東京都と同じく、公立高校の入試倍率低下による一部通塾控えや、私立高校への進学者増加による早期(11月末~12月末)退塾者数※の増加、といったマイナス影響が神奈川県内全体の動きとして顕在化すると予想される。とはいえ、神奈川県内では横浜翠嵐高校や湘南高校など偏差値の高い公立進学校が多く、「STEP」に通塾する生徒の多くはこうした公立進学校を目指す生徒が圧倒的に多いことから、マイナスの影響は限定的であると弊社では見ている。
※ 神奈川県では11月時点の内申点で合格を出す私立校があるため。ただ、内申点対策として入塾する生徒が増える可能性もある。
(2) 高校生部門
高校生部門の10月末時点の生徒数は前年同月比3.1%増と堅調に推移している。伸び率が前年10月の6.3%増から鈍化したが、これは各校舎の充席率が高水準となっており、受入れ余地が少なくなっているためだ。入塾希望は多いが定員に達しているため他塾に流れている割合が一定程度あり、成長機会を最大限に生かしきれない状況になっていると弊社では見ている。とりわけ、全教科全学年満席となっている横浜校については、キャパシティの拡大が喫緊の課題となっている。通塾範囲内の横浜翠嵐校の生徒を獲得することで、STEP生の難関大学合格者実績もさらに拡大することが期待できるためだ。2025年9月時点で全教科満席となっている校舎は、15校舎のうち各学年とも3校舎あり、教科別で見れば満席となっている校舎数はさらに多い。
こうした状況を受け、2026年春にセンター南校を移転増床する予定だ。現在は自社ビルのなかに高校受験STEPと併設する格好で展開していたが、高校2年生で全教科満席となるなど、定員数の限界に近付いてきたことから近隣のビルに移転増床し、収容能力を400名から500名に拡大する。大学受験STEPが抜けたスペースの一部は高校受験STEPで活用するほか、将来的にはSTEPキッズを開設することも視野に入れている。
そのほか新規校舎の進出候補地として、川崎市内の溝ノ口、横浜市内では二俣川エリアでの物件を探索しているが、賃料などの条件に見合う物件が見当たらないため、2026年9月期中の進出の可能性は低い。また、新規校舎を開校するためには、優秀な教師の採用・育成も課題となる。そうした人材は学習塾以外の業界に就職するケースも多いため、教師のさらなる処遇向上も必要になると考えられる。これら課題を解消するためにも、授業料の改定は今後必要だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2026年9月期の業績見通し
2026年9月期の業績は売上高で前期比4.1%増の16,494百万円、営業利益で同4.3%増の3,942百万円、経常利益で同4.0%増の4,022百万円、当期純利益で同2.4%増の2,754百万円を見込んでいる。2026年9月期も引き続き内部体制の充実に取り組むため、新規開校は2校程度に抑制する方針で、既存スクールの充席率アップと満席学年の空席待ち解消、また空席の少なくなっているスクールについては移転増床を進め、期中平均生徒数で前期比3~4%の増加を見込む。なお、現在開校が決まっているのは、「高校受験STEP」の川崎スクールで2026年3月に開校する。
売上高を半期ベースで見ると中間期の前年同期比2.9%増に対して、下期は同5.3%増と増収率がやや拡大する計画となっている。2026年春の合格実績を受けて下期に生徒数のさらなる増加を見込んでいるほか、物価上昇を受けて授業料の改定効果を若干程度、織り込んでいることが要因だ。同社はここ数年、物価や人件費の上昇を理由に他塾が授業料の値上げを実施するなかでも、顧客に寄り添い極力値上げをせずに踏みとどまってきたが、見直す時期がきたと判断し、内容も含めて2025年末までに方針を決定する。若干程度の値上げであれば、生徒数の募集状況にもほとんど影響は出ないものと考えられる。
費用面では、人件費や教材費の増加が継続するほか、2026年夏頃に次期基幹システムが稼働開始することを前提に、システム関連費用(減価償却費含む)88百万円の費用計上を織り込んでいる。新システムが稼働すると、本社と各校舎のデータ連携をリアルタイムで行えるようになり、会計等も含めて事務業務の効率化が進むものと期待される。さらに、2026年1月より「奨学金返還支援(代理返還)制度」を新たに導入することを発表した。支援対象となる従業員の経済的・心理的負担を軽減することが目的で、福利厚生制度の一環として導入し、今後の採用活動においても前向きな人材の確保につながるものと期待している。具体的な支援内容は、日本学生支援機構の奨学金の残額がある正社員を対象として、毎月2万円、60回、上限120万円相当の支援を行うというもの。在籍社員で100人程度が同制度の利用を希望しており、最大で18百万円程度の費用増要因となる。これらの費用増については増収効果で吸収し、営業利益率で前期並みの23.9%を計画している。なお、当期純利益の増益率が経常利益よりも若干低くなるのは、賃上げ促進税制の適用を見込んでいないためだ(前期は31百万円の減税効果)。
(1) 小中学生部門
新規開校予定は2校の予定だ。川崎スクールは決定済みで、もう1校も近々契約の模様である。生徒数は前期比3~4%増を見込んでおり、既存スクールの充席率(募集定員に対する生徒数の割合)アップや、満席学年の空席待ち解消、空席率の少ないスクールにおいては移転増床を進めることで生徒数の増加を図る。2025年10月末時点の生徒数は前年同月比3.3%増と順調に推移している。内訳は小学生が同10.0%増、中学生が同1.7%増と小学生が好調を持続しており、2026年9月期もほぼ同様の基調が続くものと予想される。
小学生の伸び率が高い要因として、私立中学受験が過熱化するなかで、それに対抗するような形で「楽しく学ぶ」「勉強が好きになる」ということを大切にしようとする小学生のニーズが増しており、それを取り込めていることが背景にある。また、一部のスクールでは中学生のクラスがすぐに満席で埋まってしまうため、席を確保するため小学生から通塾するケースもある。中学生については、全学年とも1~2%台の増加ペースとなっているが、地域によってまだら模様となっている。全体の傾向としては、横浜・川崎エリアで順調に生徒数が伸びており、少子化の進行が目立つ県西・横須賀エリアのスクールで停滞感が出ているようで、今後もこうした傾向は続くと予想される。
なお、2026年度から高校の授業料無償化が決定し、公立トップ校の志望生徒が多いSTEPへの影響が注目されたが、2025年10月末時点の中学3年生の生徒数は前年同月比2.3%増と増加基調が続いており、伸び率も前年10月の1.4%増から拡大している。今後は授業料無償化で先行した大阪府や東京都と同じく、公立高校の入試倍率低下による一部通塾控えや、私立高校への進学者増加による早期(11月末~12月末)退塾者数※の増加、といったマイナス影響が神奈川県内全体の動きとして顕在化すると予想される。とはいえ、神奈川県内では横浜翠嵐高校や湘南高校など偏差値の高い公立進学校が多く、「STEP」に通塾する生徒の多くはこうした公立進学校を目指す生徒が圧倒的に多いことから、マイナスの影響は限定的であると弊社では見ている。
※ 神奈川県では11月時点の内申点で合格を出す私立校があるため。ただ、内申点対策として入塾する生徒が増える可能性もある。
(2) 高校生部門
高校生部門の10月末時点の生徒数は前年同月比3.1%増と堅調に推移している。伸び率が前年10月の6.3%増から鈍化したが、これは各校舎の充席率が高水準となっており、受入れ余地が少なくなっているためだ。入塾希望は多いが定員に達しているため他塾に流れている割合が一定程度あり、成長機会を最大限に生かしきれない状況になっていると弊社では見ている。とりわけ、全教科全学年満席となっている横浜校については、キャパシティの拡大が喫緊の課題となっている。通塾範囲内の横浜翠嵐校の生徒を獲得することで、STEP生の難関大学合格者実績もさらに拡大することが期待できるためだ。2025年9月時点で全教科満席となっている校舎は、15校舎のうち各学年とも3校舎あり、教科別で見れば満席となっている校舎数はさらに多い。
こうした状況を受け、2026年春にセンター南校を移転増床する予定だ。現在は自社ビルのなかに高校受験STEPと併設する格好で展開していたが、高校2年生で全教科満席となるなど、定員数の限界に近付いてきたことから近隣のビルに移転増床し、収容能力を400名から500名に拡大する。大学受験STEPが抜けたスペースの一部は高校受験STEPで活用するほか、将来的にはSTEPキッズを開設することも視野に入れている。
そのほか新規校舎の進出候補地として、川崎市内の溝ノ口、横浜市内では二俣川エリアでの物件を探索しているが、賃料などの条件に見合う物件が見当たらないため、2026年9月期中の進出の可能性は低い。また、新規校舎を開校するためには、優秀な教師の採用・育成も課題となる。そうした人材は学習塾以外の業界に就職するケースも多いため、教師のさらなる処遇向上も必要になると考えられる。これら課題を解消するためにも、授業料の改定は今後必要だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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