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欧州が抱える中国問題(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2025/12/11 10:30
配信元:FISCO
*10:30JST 欧州が抱える中国問題(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「欧州が抱える中国問題(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
※この論考は11月30日の<Europe’s China Problem>(※2)の翻訳です。
打つ手がないわけではない
EUにとって有意義かつ効果的な対中政策を策定するのは難しい。EU各国のGDPを単純に合計すれば大きな数字になるが、米国や中国がその経済規模を利用するような方式では、EUは容易に経済的影響力を発揮できない。意思決定には妥協が必要で、時間もかかる。中国が最近発表したレアアース輸出規制は、EUにとって警鐘になる。EUは中国のレアアース関連輸出に大きく依存しており、輸出許可制度による中国の過剰な介入は、中国政府が欧州の製造業に直接入り込もうとしていることを示している。EUはこれまで、中国との関係は経済に限ったものだと思い込もうとしてきたが、全体主義体制との関係が経済だけで済むはずはなく、そこには常に政治と支配が絡んでいる。レアアース輸出規制とその関連措置は、中国共産党がEUに対して効果的に展開している非物理的戦争の一環だ。EUはこれが単なる貿易紛争ではないことを認識し、危機感を高める必要がある。EUは「経済的威圧への対抗措置」という極めて強力な手段が存在するが、これまで一度も使用されたことがない。これは、国家間で課される通常の報復的貿易措置を超えたものである。EUは、企業や個人による商品・サービス・金融・知的財産(IP)の利用をすべて制限できる。加えて忘れてならないのは、特に航空業界で、欧州が極めて高度な精密機械を中国に大量に供給しており、中国はそれに依存していることだ。これらの輸出を停止するか、少なくとも停止を示唆するだけで、中国はすぐに交渉の席に着くだろう。
誰もEUに米国のような役割を期待できないし、単一国家のように機能することも期待できない。そもそもそのような体制になっていないからだが、EUは強力な交渉者として中国の重商主義を抑制できる可能性を秘めている。英国や米国の両国と連携できればはるかに効果的だが、一部の人々にとって不快に思われることかもしれない。米国がEUに対して抱く不満の根底には、EUが米国の善意にただ乗りしてきたという認識がある。それは事実だが、今後はそれができなくなるため、EUは自らの防衛費を負担することなく主導権を振りかざすのを止め、中国への対抗措置を真剣に考える必要がある。中国の指導部は外国投資を単なる経済問題と見たことはなく、常に政治的な側面を伴っている。EUは経済だけの対中関係などすでに過去のものだと認識しなければならない。より広範な地政学的アプローチで中国と対峙することによってのみ、EUはこの困難を乗り切れるだろう。
欧州委員会委員長フォン・デア・ライエン(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/6979
<CS>
※この論考は11月30日の<Europe’s China Problem>(※2)の翻訳です。
打つ手がないわけではない
EUにとって有意義かつ効果的な対中政策を策定するのは難しい。EU各国のGDPを単純に合計すれば大きな数字になるが、米国や中国がその経済規模を利用するような方式では、EUは容易に経済的影響力を発揮できない。意思決定には妥協が必要で、時間もかかる。中国が最近発表したレアアース輸出規制は、EUにとって警鐘になる。EUは中国のレアアース関連輸出に大きく依存しており、輸出許可制度による中国の過剰な介入は、中国政府が欧州の製造業に直接入り込もうとしていることを示している。EUはこれまで、中国との関係は経済に限ったものだと思い込もうとしてきたが、全体主義体制との関係が経済だけで済むはずはなく、そこには常に政治と支配が絡んでいる。レアアース輸出規制とその関連措置は、中国共産党がEUに対して効果的に展開している非物理的戦争の一環だ。EUはこれが単なる貿易紛争ではないことを認識し、危機感を高める必要がある。EUは「経済的威圧への対抗措置」という極めて強力な手段が存在するが、これまで一度も使用されたことがない。これは、国家間で課される通常の報復的貿易措置を超えたものである。EUは、企業や個人による商品・サービス・金融・知的財産(IP)の利用をすべて制限できる。加えて忘れてならないのは、特に航空業界で、欧州が極めて高度な精密機械を中国に大量に供給しており、中国はそれに依存していることだ。これらの輸出を停止するか、少なくとも停止を示唆するだけで、中国はすぐに交渉の席に着くだろう。
誰もEUに米国のような役割を期待できないし、単一国家のように機能することも期待できない。そもそもそのような体制になっていないからだが、EUは強力な交渉者として中国の重商主義を抑制できる可能性を秘めている。英国や米国の両国と連携できればはるかに効果的だが、一部の人々にとって不快に思われることかもしれない。米国がEUに対して抱く不満の根底には、EUが米国の善意にただ乗りしてきたという認識がある。それは事実だが、今後はそれができなくなるため、EUは自らの防衛費を負担することなく主導権を振りかざすのを止め、中国への対抗措置を真剣に考える必要がある。中国の指導部は外国投資を単なる経済問題と見たことはなく、常に政治的な側面を伴っている。EUは経済だけの対中関係などすでに過去のものだと認識しなければならない。より広範な地政学的アプローチで中国と対峙することによってのみ、EUはこの困難を乗り切れるだろう。
欧州委員会委員長フォン・デア・ライエン(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/6979
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