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中国の台湾優遇政策の現状と課題【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2024/06/27 15:56
配信元:FISCO
*15:56JST 中国の台湾優遇政策の現状と課題【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している陳建甫博士の考察をお届けする。
2024年の海峡フォーラムでは、中国が新しい台湾優遇措置を発表せず失望が広がった。国民党(KMT)の連勝文副主席は、「両岸間の状況は現在悪化しており、かかる措置が示されなかったことは自然の流れである。しかし、今年の台湾の選挙結果から、国民の少なくとも60%が台湾現指導部の独立派寄りの立場や施策を支持していないことは明らかである。ほとんどの台湾人は、中国の同胞との平和な共存を望んでいる。政治的な違いがあっても、平和的な関係の継続を求める声が多い」と指摘し、「これが、無視できない大衆の意見である」と強調した。
この8年間は両岸関係にとって激動の時期であり、中国の台湾優遇措置は、中国市場への依存度が高い石油化学製品や機械、農業などのセクターを中心に、政治的タイミングと密接に結びついていることが少なくない。中国は選挙の直前に、台湾の選挙や経済に影響を及ぼす目的で、特定の台湾優遇政策を導入したり、中断したりする傾向にある。
しかし実際のところ、そうした措置の影響は限定的である。例えば、両岸の経済・文化交流推進を目的に中国が2019年に導入した台湾優遇措置は26項目に上るが、それらの措置は最小限の効果しか発揮していない。2024年の総統選の前には、中国は海峡両岸経済協力枠組み協定(Economic Cooperation Framework Agreement、以下ECFA)に基づいて行っている134品目の関税引き下げ措置を停止すると発表した。
ECFAの歴史的意義と現状
20年前を振り返ると、ECFAは当時、重要な経済措置であった。ECFAに基づく関税優遇措置は、関税引き下げにより台湾の特定の産業に恩恵をもたらす台湾優遇政策とみなされた。だが、台湾産業界はその後、中国市場への依存を大幅に減らすようになり、その多くがもはやこうした政策に頼っていない。今でも中国の台湾優遇措置を望んでいるセクターは観光業のみと言える。こうした台湾経済の変化は、単一市場への過度の依存を減らし、国外の経済的圧力に対するレジリエンスを高める方向への戦略的シフトを反映するものである。
台湾経済研究院が発表したデータによると、台湾の中国向け輸出の年間増加率は2010年のECFA調印後3年間で15%に達したものの、直近5年間では5%を割り込んだ。この大幅な減少は、両岸間貿易のダイナミクスの変化と、台湾の経済パートナーシップの多角化への必要性を如実に物語っている。台湾が今後、経済成長を維持していくためには、イノベーションとハイテク産業、世界市場への進出に注力することが不可欠となる。研究開発への投資と起業家精神の醸成、他国との貿易関係の強化で、台湾は今後の経済のさらなる安定と繁栄を確保できる。
観光産業の現状と課題
中国のアウトバウンド観光政策は、外交戦略と緊密に足並みをそろえ、友好国の旅行の割当枠を拡大する一方、非友好国の枠を縮小することが少なくない。台湾の観光産業もこの戦略の影響を受ける。台湾の観光事業者と大陸委員会は中国が団体旅行の制限を撤廃することを望んでいるが、これは非現実的な期待である。これまで、中国の団体旅行は独占的な「ワンストップ」旅行モデルで運営する中国企業に管理されていたため、台湾は長期的なメリットを得られなかった。例えば、中国が2019年に台湾への個人旅行を制限したことで、台湾の観光産業は約300億ニュー台湾ドルの損失を被った。このことから、中国の観光政策は台湾経済に大きな影響を及ぼす可能性があり、台湾が観光市場の多角化を図り、中国人観光客への依存度を低下させる必要があることは明らかである。
こうした政策の悪影響を軽減するため、台湾の観光産業は新規市場を開拓するとともに、より持続可能でレジリエンスの高いビジネスモデルを発案しなければならない。東南アジアや欧州、北米など、中国以外の地域の観光客誘致に取り組む必要がある。加えて、デジタルマーケティングへの投資やサービスの質の向上、台湾独自の文化的スポットや自然景観などのPRが大きな効果を発揮する可能性がある。そうした対策を講じることで、台湾はより強固で、多様性に富んだ観光セクターを構築することができ、中国の政策の影響を受けることなく、長期的な成長と安定も確保しやすくなる。
アモイの台湾優遇政策の影響
今回のフォーラムではアモイ市の張啟芮副市長が、台湾の人々は、台湾の同胞を対象とした「コンビニエントサービス」セクションにアクセスし、滞在しているホテルで、モバイル機器を使ってオンサイト決済ができると述べた。同副市長はまた、「台湾同胞証」と「居住証」、「一時入国者運転免許証(Temporary Entry Motor Vehicle Driving Permits)」もこのサービスセクションで発行可能で、台湾同胞証の発行に要する時間は3営業日に短縮されると発表した。
とはいえ、これらの政策は金門居住者や福建省の台湾人ビジネスパーソンには効果があるかもしれないが、台湾本島に住んでいる人たちにとってはほとんど魅力がない。アモイ市政府のデータによると、2019年にアモイ市で居住証の申請をした台湾のビジネスパーソンと学生は約2,000人であるが、これは台湾の総人口のわずか0.01%にすぎない。
中国の政治的立場と台湾の対応
観光以外に目を向けると、中国の人民政治協商会議の王滬寧主席の海峡フォーラムにおける発言は、台湾に懸念をもたらした。同主席が「歴史的に見て台湾は中国の一部である」と強調し、多くの台湾人を失望させたのである。これは両岸関係が血縁あるいは国家主義にしか根差していないことを意味する。このような歴史的認識は、台湾社会では受け入れられない。
王滬寧の発言は、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」を原則とする両岸関係における中国共産党の立場を反映したものである。このような歴史認識は、特に1949年の中華人民共和国の成立以降、台湾では広く受け入れられておらず、中国の歴史や王朝のすべてを代表あるいは継承するものではありえない。台湾民意基金会が2023年に実施した世論調査の結果によると、台湾人の70%以上が「一国二制度」モデルに反対している。
加えて、頼清徳総統が2024年5月20日の就任演説の中で「中華民国(台湾)と中華人民共和国は互いに従属しない」と表明したことに対して、20歳以上の74%が同意し、同意しないと答えた人は16%にとどまった。この世論調査の報告書では、「中華民国と中華人民共和国は互いに従属しない」は台湾社会で広く合意を得た見解であると結論付けている。同時期に大陸委員会も、回答者の75%以上が「台湾は中国の一部である」に同意せず、88%が「台湾の未来は、台湾に住むすべての人々が決めるべきである」に賛成しているとする世論調査の結果を発表した。
台湾の産業変革とリスク分散
両岸が互いに従属しないという頼総統の提案は、両岸関係の現在の状況と、異なるガバナンスという実態に即したものである。台湾産業の発展は、もはや中国市場に全面的に左右されているわけではない。対中貿易依存率は30%未満に低下した。台湾ではリスクの分散を図り始めた企業も多く、仮に中国がECFAの関税引き下げ措置を全面的に停止しても、台湾経済は中国以外の海外市場の開拓にシフトすることができる。台湾経済部が発表したデータによると、2022年の台湾の輸出シェアは、中国向けが28.9%にとどまったのに対して、東南アジア向けと北米向けではそれぞれ12ポイントと15ポイント増加した。
中国の台湾優遇政策と両岸統一の課題
中国は引き続き、両岸統一を推し進めるために台湾優遇政策を提案しているが、そうした政策の実効性と持続可能性には疑問符が付く。市場調査会社IC Insightsによると、台湾半導体産業は2023年の市場シェアが65%に上る一方、中国向け輸出は台湾の全輸出量の40%であった。
将来的には、半導体などハイテク産業を中心に、台湾も「親中」政策を提案するかもしれない。例えば、中国と台湾が互いに従属しないことを条件に、台湾は中国半導体産業が台湾からミッド・ハイエンドチップを購入することを認める特別なインセンティブ施策を打ち出す可能性もある。
経済互恵と政治情勢
中華経済研究院がまとめた報告書によると、高レベルの両岸経済協力が、双方のGDP成長率を年間1ポイント押し上げる一助となる可能性がある。経済協力は両国の繁栄と安定を促す可能性があり、両岸の共通の目標とすべきである。だが、「台湾優遇政策」は実際には上下関係を示唆することが多く、これは不均衡を生むものであり、両岸間のギャップを真に埋めることにはならない。この不均衡は不信感と疑念を招くことが多く、真の経済統一と相互利益の実現を難しくする。
互恵メカニズムを強化するには、協力の対象を経済・技術産業だけでなく、互いの価値観の相互尊重にも拡大する必要がある。異なる政治制度での文化的な違いに対する寛容と理解を深めることが欠かせない。これは、文化交流と教育プログラム、そして環境保護や公衆衛生など世界的な課題に対処する共同イニシアチブを拡大することで実現できる。相互尊重・理解の環境を醸成することで、両岸はより包摂的かつ協調的な関係の構築に向けて協力し、同地域の長期的な平和と繁栄への道を切り開くことができる。
まとめ
両岸関係の発展は、複数の課題と機会に直面しており、相互協力が長期的な安定と繁栄の実現の鍵を握る。両国には歴史・イデオロギー的違いがあるものの、相互尊重と平等な対話、双方にとって有益な協力によってのみ、両岸関係の健全な発展を真に実現できる。
双方がよりオープンで包摂的な信頼メカニズムを構築し、歴史的な誤解を明確にし、現代の国際システムの中で共に繫栄する方法を共に模索すべきである。例えば、文化交流の拡大や環境保護の強化、グローバルな課題への共同での対処などにより、両岸の住民間で相互理解・信頼を醸成できる。
アジア太平洋地域の重要な経済の中心である台湾は、豊富な人材を誇り、数々のイノベーションを生み出している。台湾は今後、市場をさらに開拓しアジア諸国や北米との経済協力を促進するとともに、ハイテクやグリーンエネルギー、バイオテクノロジーなどの新興分野を中心に、中国と協力してそのポテンシャルを生かすことができる。
台湾側も中国側も力を合わせて、平和的な発展を原則とした両岸関係を進展させるべきである。それは、双方の住民のためになるだけでなく、地域、ひいては世界の安定と繁栄にも資する。こうしたビジョンの実現には、長期的な安定と平和、繁栄の共有をもたらすべく、両政府と社会の全セクターが共同で取り組む必要がある。
第16回海峡フォーラム大会 写真: 新華社
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
2024年の海峡フォーラムでは、中国が新しい台湾優遇措置を発表せず失望が広がった。国民党(KMT)の連勝文副主席は、「両岸間の状況は現在悪化しており、かかる措置が示されなかったことは自然の流れである。しかし、今年の台湾の選挙結果から、国民の少なくとも60%が台湾現指導部の独立派寄りの立場や施策を支持していないことは明らかである。ほとんどの台湾人は、中国の同胞との平和な共存を望んでいる。政治的な違いがあっても、平和的な関係の継続を求める声が多い」と指摘し、「これが、無視できない大衆の意見である」と強調した。
この8年間は両岸関係にとって激動の時期であり、中国の台湾優遇措置は、中国市場への依存度が高い石油化学製品や機械、農業などのセクターを中心に、政治的タイミングと密接に結びついていることが少なくない。中国は選挙の直前に、台湾の選挙や経済に影響を及ぼす目的で、特定の台湾優遇政策を導入したり、中断したりする傾向にある。
しかし実際のところ、そうした措置の影響は限定的である。例えば、両岸の経済・文化交流推進を目的に中国が2019年に導入した台湾優遇措置は26項目に上るが、それらの措置は最小限の効果しか発揮していない。2024年の総統選の前には、中国は海峡両岸経済協力枠組み協定(Economic Cooperation Framework Agreement、以下ECFA)に基づいて行っている134品目の関税引き下げ措置を停止すると発表した。
ECFAの歴史的意義と現状
20年前を振り返ると、ECFAは当時、重要な経済措置であった。ECFAに基づく関税優遇措置は、関税引き下げにより台湾の特定の産業に恩恵をもたらす台湾優遇政策とみなされた。だが、台湾産業界はその後、中国市場への依存を大幅に減らすようになり、その多くがもはやこうした政策に頼っていない。今でも中国の台湾優遇措置を望んでいるセクターは観光業のみと言える。こうした台湾経済の変化は、単一市場への過度の依存を減らし、国外の経済的圧力に対するレジリエンスを高める方向への戦略的シフトを反映するものである。
台湾経済研究院が発表したデータによると、台湾の中国向け輸出の年間増加率は2010年のECFA調印後3年間で15%に達したものの、直近5年間では5%を割り込んだ。この大幅な減少は、両岸間貿易のダイナミクスの変化と、台湾の経済パートナーシップの多角化への必要性を如実に物語っている。台湾が今後、経済成長を維持していくためには、イノベーションとハイテク産業、世界市場への進出に注力することが不可欠となる。研究開発への投資と起業家精神の醸成、他国との貿易関係の強化で、台湾は今後の経済のさらなる安定と繁栄を確保できる。
観光産業の現状と課題
中国のアウトバウンド観光政策は、外交戦略と緊密に足並みをそろえ、友好国の旅行の割当枠を拡大する一方、非友好国の枠を縮小することが少なくない。台湾の観光産業もこの戦略の影響を受ける。台湾の観光事業者と大陸委員会は中国が団体旅行の制限を撤廃することを望んでいるが、これは非現実的な期待である。これまで、中国の団体旅行は独占的な「ワンストップ」旅行モデルで運営する中国企業に管理されていたため、台湾は長期的なメリットを得られなかった。例えば、中国が2019年に台湾への個人旅行を制限したことで、台湾の観光産業は約300億ニュー台湾ドルの損失を被った。このことから、中国の観光政策は台湾経済に大きな影響を及ぼす可能性があり、台湾が観光市場の多角化を図り、中国人観光客への依存度を低下させる必要があることは明らかである。
こうした政策の悪影響を軽減するため、台湾の観光産業は新規市場を開拓するとともに、より持続可能でレジリエンスの高いビジネスモデルを発案しなければならない。東南アジアや欧州、北米など、中国以外の地域の観光客誘致に取り組む必要がある。加えて、デジタルマーケティングへの投資やサービスの質の向上、台湾独自の文化的スポットや自然景観などのPRが大きな効果を発揮する可能性がある。そうした対策を講じることで、台湾はより強固で、多様性に富んだ観光セクターを構築することができ、中国の政策の影響を受けることなく、長期的な成長と安定も確保しやすくなる。
アモイの台湾優遇政策の影響
今回のフォーラムではアモイ市の張啟芮副市長が、台湾の人々は、台湾の同胞を対象とした「コンビニエントサービス」セクションにアクセスし、滞在しているホテルで、モバイル機器を使ってオンサイト決済ができると述べた。同副市長はまた、「台湾同胞証」と「居住証」、「一時入国者運転免許証(Temporary Entry Motor Vehicle Driving Permits)」もこのサービスセクションで発行可能で、台湾同胞証の発行に要する時間は3営業日に短縮されると発表した。
とはいえ、これらの政策は金門居住者や福建省の台湾人ビジネスパーソンには効果があるかもしれないが、台湾本島に住んでいる人たちにとってはほとんど魅力がない。アモイ市政府のデータによると、2019年にアモイ市で居住証の申請をした台湾のビジネスパーソンと学生は約2,000人であるが、これは台湾の総人口のわずか0.01%にすぎない。
中国の政治的立場と台湾の対応
観光以外に目を向けると、中国の人民政治協商会議の王滬寧主席の海峡フォーラムにおける発言は、台湾に懸念をもたらした。同主席が「歴史的に見て台湾は中国の一部である」と強調し、多くの台湾人を失望させたのである。これは両岸関係が血縁あるいは国家主義にしか根差していないことを意味する。このような歴史的認識は、台湾社会では受け入れられない。
王滬寧の発言は、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」を原則とする両岸関係における中国共産党の立場を反映したものである。このような歴史認識は、特に1949年の中華人民共和国の成立以降、台湾では広く受け入れられておらず、中国の歴史や王朝のすべてを代表あるいは継承するものではありえない。台湾民意基金会が2023年に実施した世論調査の結果によると、台湾人の70%以上が「一国二制度」モデルに反対している。
加えて、頼清徳総統が2024年5月20日の就任演説の中で「中華民国(台湾)と中華人民共和国は互いに従属しない」と表明したことに対して、20歳以上の74%が同意し、同意しないと答えた人は16%にとどまった。この世論調査の報告書では、「中華民国と中華人民共和国は互いに従属しない」は台湾社会で広く合意を得た見解であると結論付けている。同時期に大陸委員会も、回答者の75%以上が「台湾は中国の一部である」に同意せず、88%が「台湾の未来は、台湾に住むすべての人々が決めるべきである」に賛成しているとする世論調査の結果を発表した。
台湾の産業変革とリスク分散
両岸が互いに従属しないという頼総統の提案は、両岸関係の現在の状況と、異なるガバナンスという実態に即したものである。台湾産業の発展は、もはや中国市場に全面的に左右されているわけではない。対中貿易依存率は30%未満に低下した。台湾ではリスクの分散を図り始めた企業も多く、仮に中国がECFAの関税引き下げ措置を全面的に停止しても、台湾経済は中国以外の海外市場の開拓にシフトすることができる。台湾経済部が発表したデータによると、2022年の台湾の輸出シェアは、中国向けが28.9%にとどまったのに対して、東南アジア向けと北米向けではそれぞれ12ポイントと15ポイント増加した。
中国の台湾優遇政策と両岸統一の課題
中国は引き続き、両岸統一を推し進めるために台湾優遇政策を提案しているが、そうした政策の実効性と持続可能性には疑問符が付く。市場調査会社IC Insightsによると、台湾半導体産業は2023年の市場シェアが65%に上る一方、中国向け輸出は台湾の全輸出量の40%であった。
将来的には、半導体などハイテク産業を中心に、台湾も「親中」政策を提案するかもしれない。例えば、中国と台湾が互いに従属しないことを条件に、台湾は中国半導体産業が台湾からミッド・ハイエンドチップを購入することを認める特別なインセンティブ施策を打ち出す可能性もある。
経済互恵と政治情勢
中華経済研究院がまとめた報告書によると、高レベルの両岸経済協力が、双方のGDP成長率を年間1ポイント押し上げる一助となる可能性がある。経済協力は両国の繁栄と安定を促す可能性があり、両岸の共通の目標とすべきである。だが、「台湾優遇政策」は実際には上下関係を示唆することが多く、これは不均衡を生むものであり、両岸間のギャップを真に埋めることにはならない。この不均衡は不信感と疑念を招くことが多く、真の経済統一と相互利益の実現を難しくする。
互恵メカニズムを強化するには、協力の対象を経済・技術産業だけでなく、互いの価値観の相互尊重にも拡大する必要がある。異なる政治制度での文化的な違いに対する寛容と理解を深めることが欠かせない。これは、文化交流と教育プログラム、そして環境保護や公衆衛生など世界的な課題に対処する共同イニシアチブを拡大することで実現できる。相互尊重・理解の環境を醸成することで、両岸はより包摂的かつ協調的な関係の構築に向けて協力し、同地域の長期的な平和と繁栄への道を切り開くことができる。
まとめ
両岸関係の発展は、複数の課題と機会に直面しており、相互協力が長期的な安定と繁栄の実現の鍵を握る。両国には歴史・イデオロギー的違いがあるものの、相互尊重と平等な対話、双方にとって有益な協力によってのみ、両岸関係の健全な発展を真に実現できる。
双方がよりオープンで包摂的な信頼メカニズムを構築し、歴史的な誤解を明確にし、現代の国際システムの中で共に繫栄する方法を共に模索すべきである。例えば、文化交流の拡大や環境保護の強化、グローバルな課題への共同での対処などにより、両岸の住民間で相互理解・信頼を醸成できる。
アジア太平洋地域の重要な経済の中心である台湾は、豊富な人材を誇り、数々のイノベーションを生み出している。台湾は今後、市場をさらに開拓しアジア諸国や北米との経済協力を促進するとともに、ハイテクやグリーンエネルギー、バイオテクノロジーなどの新興分野を中心に、中国と協力してそのポテンシャルを生かすことができる。
台湾側も中国側も力を合わせて、平和的な発展を原則とした両岸関係を進展させるべきである。それは、双方の住民のためになるだけでなく、地域、ひいては世界の安定と繁栄にも資する。こうしたビジョンの実現には、長期的な安定と平和、繁栄の共有をもたらすべく、両政府と社会の全セクターが共同で取り組む必要がある。
第16回海峡フォーラム大会 写真: 新華社
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