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中国共産党中央委員会第3回全体会議の見通し(1)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2024/06/20 10:24
配信元:FISCO
*10:24JST 中国共産党中央委員会第3回全体会議の見通し(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)陳建甫博士の考察を2回に渡ってお届けする。
中国共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)はこれまで、経済・政策方針の大々的な転換を打ち出す中国現代史の転機の場となってきた。1978年のトウ小平氏による画期的な改革から、2013年の習近平氏による野心的なアジェンダまで、どの会議も同国の発展の軌跡に消えることのない痕跡を残している。7月初旬に予定されている3中全会の開催を間近に控えるなか、中国は今後の方向性を決める多くの複雑な課題とチャンスに直面している。
これまでの3中全会を見れば、今回の全体会議は中国が続ける改革と発展の取り組みにとって極めて重要な意味を持つことが分かる。世界情勢の急速な変化と国内圧力を背景に、今回の会議で下される決定は、過去の方針・政策を振り返って評価するだけでなく、今後の方向性を示すものともなる。
そのため今回のコラムでは、間もなく開催される第20期3中全会の見通しと意義の検証を主なテーマとする。中国が現在直面する経済・政治・社会面の課題に加え、全体会議で打ち出されるであろう改革案や政策案について考察し、中国の発展の軌跡と、それが国際社会に与える影響について知見を述べたいと考えている。こうした分析を通して、3中全会で下される決定が、今後の近代化と安定、繁栄に向けた中国の道筋をどのように方向付けるのかを探る。
第20回党大会後の経時・環境的背景
習近平氏が共産党第20回全国代表大会で権力基盤の強化を図ったにもかかわらず、中国は激動のなかにあり、「平和と繁栄」には程遠い。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて講じられたゼロコロナ政策は、厳格なロックダウン措置と暮らしへの悪影響が反発を招き、複数の都市で激しい抗議行動を引き起こした。最も抗議行動が目立った武漢や広州などの主要な都市部では、抗議行動が激化した期間、経済活動と消費者マインドが著しく低下したことがデータから分かっている。
そのうえ、パンデミックに伴う景気低迷からの急速な回復への期待は、一連の構造的課題にくじかれた。政府の消費刺激策にもかかわらず、経済の先行きと雇用の見通しに対する消費者の根強い懸念を反映して、サービスセクターを中心に消費不振が長期化している。中国の成長をここ数年、主にけん引してきた不動産市場が信用危機に直面しており、不動産開発業者はかさむ負債と規制環境の強化への対処を余儀なくされている。こうした状況が不動産投資の減速と一部主要都市での不動産価格の下落を招き、金融安定への懸念が一段と高まった。
さらに、人件費の上昇やサプライチェーンの混乱、地政学的緊張の高まりなどを要因とした外資企業の中国離れも、同国が直面する経済面の新たな課題となっている。なかでも注目すべきは、多国籍企業による製造拠点の東南アジア・南アジア諸国への移転、海外金融機関やIT企業の対中国投資の縮小などである。
時を同じくして、米中関係の悪化が地政学的緊張をさらに高め、紛争が起きるのではないかとの懸念が高まっている。2018年に勃発したトランプ政権の対中貿易戦争は、人権や台湾、南シナ海などの問題を包含する幅広い戦略的競争へと姿を変えた。バイデン政権は中国に対してより多面的なアプローチを取っているものの、強まる中国の影響力と自己主張に対処する必要があるという党派を超えた共通認識を反映し、経済制裁や輸出規制などの措置を通して中国政府に圧力をかけ続けてきた。
こうした外的課題を抱えるなか、中国共産党内と軍内での権力基盤を強化する習近平氏の取り組みは内部の問題に直面している。習氏の側近だった秦剛外相が公の場から姿を消し、その後、彼の所在についての情報がなかったことから、党内の派閥争いと権力闘争に関する憶測に拍車がかかった。同じく、汚職・背信行為の疑惑が原因と報道されている李尚福国防相の解任により、軍に対する習氏の統制の範囲に疑問が投げかけられ、軍人の反発を生む可能性も出てきた。
こうした内的問題を受けて、習氏は不忠分子を粛清し、自らの権力基盤を強化する取り組みを進めている。習氏が10年前に新設したロケット軍を中心とする軍内の大粛清の対象は、背信行為や汚職の疑いがある高官である。軍の戦略支援部隊の改称や解散は、表面上は指揮系統の合理化と軍事行動の効率化を目的としているが、これにより国軍に対する習氏の統制力がさらに強まり、中国の最高指導者としてその権限がさらに強化された。
経済面の課題と構造改革
かつては急成長と工業化を特徴としていた中国の経済軌道が今、一連の厄介な課題に直面している。中国は過去に例を見ない数十年にも及ぶ経済成長を享受してきたが、ここ数年は成長率が鈍化し、構造的不均衡・非効率性が表面化してきた。コロナ禍がこうした脆弱性を高め、中国の医療システムとサプライチェーン、社会的セーフティネットの弱点を露わにした。
中国経済が直面する喫緊の課題の1つは、消費の不振である。ポストコロナを中心に消費支出の増大を目的とした幅広い消費刺激策を政府が打ってきたにもかかわらず、国内消費者は経済の先行きに慎重な見方を崩していない。こうした買い渋りは、所得格差や雇用保障、住宅と医療の価格に対する懸念の広がりを反映している。
もう1つの大きな課題は、中国の経済の先行きに暗い影を落とす不動産危機である。中国の成長の柱を長く担ってきた不動産市場は今や、売れ残り住宅のだぶつき、開発事業者の負債水準の上昇、規制強化への対処を余儀なくされている。住宅価格の上昇で国民の不満が高まり、不動産バブルの懸念が生じており、政府は投機の過熱を抑え、市場を安定させる措置の導入を迫られている。
こうした国内の課題に加え、中国の経済改革アジェンダは米国など主要貿易相手国との関係悪化に起因する外部圧力にも直面している。トランプ政権が始めた貿易戦争と、知的財産権や市場アクセス、技術移転などの問題をめぐるその後の紛争が2国間関係を損ね、経済のグローバル化の今後に対する懸念を招いている。
著名なリベラル派経済学者との座談会を5月23日に広東省で開催した習近平氏の決断は、経済政策決定に対する中国のアプローチの注目すべき転換を示唆している。市場志向型改革を唱え、経済への政府の介入縮減を重視することで知られるこれら経済学者を交えたことは、経済政策の方向付けに多様な視点を取り込む必要性を習氏が認識していることを如実に物語る。
1970年代後半のトウ小平氏の改革開放時代以降、周基仁氏などのリベラル派経済学者は、中国の経済政策の方向付けに大きな役割を果たしてきた。市場志向型改革と外国からの投資の開放促進を唱えるこれら経済学者は、経済運営に国家中心型アプローチを取ることを好む党内の保守派とたびたび衝突してきた。
間もなく開催される3中全会へのリベラル派経済学者の参加は、中国の経済開発アジェンダにとって大きな意味を持つ。これは、習近平政権側が従来に代わる観点も考慮しつつ、経済面の課題への対処に新たなアプローチを模索する意向であることを示唆している。これら経済学者を招き、その知見と提言を聞くことで、習氏はより市場主導・改革重視型の経済戦略にシフトする可能性があるとのシグナルを発しているのである。
中国共産党内の改革派を代表する周氏の知見と提言は、中国の経済改革と経済発展をめぐって続いている議論に貴重な視点を提供する。
市場志向型改革の提唱者という周基仁氏の長年にわたる評判と、経済政策の方向付けに関与したという過去の実績が、議論におけるその発言に説得力を与える。北京大学国家発展研究院の教授として、周氏は先頭に立って自由経済の原則を唱え、政府による介入を減らし、より開放され、競争的な市場環境を醸成する重要性を強調してきた。
座談会で周基仁氏が強調したのは、制度的障壁を縮減し、一般市民が経済的変化の恩恵を受けられるようにする全面的な改革の必要性である。中国社会における富と機会の不平等な配分に懸念が広まるなか、一般大衆の「獲得感」を重視するという彼の提案は多くの共感を呼んだ。
周基仁氏の発言について、フィナンシャル・タイムズ紙は、間もなく開催される3中全会のシグナルの1つであると指摘した。制度的障壁を縮減し、改革で一般大衆の獲得感を高めるという周氏の主張からは、習近平氏が行った演説の主旨に沿って市場志向型改革を続けていくという中国の決意が明確に読み取れる。
さらに、周基仁氏が座談会に参加したことで、中国共産党内での政策協議の性格が変わってきていることが浮き彫りとなった。周氏の参加は、より市場主導・改革志向型の経済戦略へとシフトする可能性があることを示唆している。彼の知見と提言が、3中全会の議題と審議の参考となり、中国の経済改革と経済発展に向けた道筋に貴重な視点を提供する可能性が高い。
ただし、リベラル派経済学者を座談会に加えたといっても、中国共産党首脳部が必ずしもその見解を全面的に支持しているわけではないと認識しておく必要がある。中国の経済政策決定プロセスの特徴は、複雑な政治・イデオロギー的ダイナミクスであり、さまざまな派閥が影響力・権力争いを繰り広げている。習氏は、リベラル派経済学者が提案する考えの一部を進んで取り入れようとするかもしれないが、政治の安定と社会の連帯、党統制の維持といった重点事項とのバランスを取る可能性が高い。
加えて、3中全会の審議にリベラル派経済学者が加わることで、中国共産党内で幅広い政治・イデオロギー的討論が活発化するものと考えられる。経済改革と、政治的支配やイデオロギー的一貫性の維持という党の重要な目標のバランスをいかに取るか。これが、論争の最大の焦点になる可能性が高い。党内には自由化を進め、もっと市場メカニズムに任せることを主張する者がいる一方、安定と社会の調和を優先する、より慎重なアプローチを提唱する者もいる。
「中国共産党中央委員会第3回全体会議の見通し(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: 中国共産党第19期中央委員会第3回全体会議(3中全会)
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
中国共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)はこれまで、経済・政策方針の大々的な転換を打ち出す中国現代史の転機の場となってきた。1978年のトウ小平氏による画期的な改革から、2013年の習近平氏による野心的なアジェンダまで、どの会議も同国の発展の軌跡に消えることのない痕跡を残している。7月初旬に予定されている3中全会の開催を間近に控えるなか、中国は今後の方向性を決める多くの複雑な課題とチャンスに直面している。
これまでの3中全会を見れば、今回の全体会議は中国が続ける改革と発展の取り組みにとって極めて重要な意味を持つことが分かる。世界情勢の急速な変化と国内圧力を背景に、今回の会議で下される決定は、過去の方針・政策を振り返って評価するだけでなく、今後の方向性を示すものともなる。
そのため今回のコラムでは、間もなく開催される第20期3中全会の見通しと意義の検証を主なテーマとする。中国が現在直面する経済・政治・社会面の課題に加え、全体会議で打ち出されるであろう改革案や政策案について考察し、中国の発展の軌跡と、それが国際社会に与える影響について知見を述べたいと考えている。こうした分析を通して、3中全会で下される決定が、今後の近代化と安定、繁栄に向けた中国の道筋をどのように方向付けるのかを探る。
第20回党大会後の経時・環境的背景
習近平氏が共産党第20回全国代表大会で権力基盤の強化を図ったにもかかわらず、中国は激動のなかにあり、「平和と繁栄」には程遠い。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて講じられたゼロコロナ政策は、厳格なロックダウン措置と暮らしへの悪影響が反発を招き、複数の都市で激しい抗議行動を引き起こした。最も抗議行動が目立った武漢や広州などの主要な都市部では、抗議行動が激化した期間、経済活動と消費者マインドが著しく低下したことがデータから分かっている。
そのうえ、パンデミックに伴う景気低迷からの急速な回復への期待は、一連の構造的課題にくじかれた。政府の消費刺激策にもかかわらず、経済の先行きと雇用の見通しに対する消費者の根強い懸念を反映して、サービスセクターを中心に消費不振が長期化している。中国の成長をここ数年、主にけん引してきた不動産市場が信用危機に直面しており、不動産開発業者はかさむ負債と規制環境の強化への対処を余儀なくされている。こうした状況が不動産投資の減速と一部主要都市での不動産価格の下落を招き、金融安定への懸念が一段と高まった。
さらに、人件費の上昇やサプライチェーンの混乱、地政学的緊張の高まりなどを要因とした外資企業の中国離れも、同国が直面する経済面の新たな課題となっている。なかでも注目すべきは、多国籍企業による製造拠点の東南アジア・南アジア諸国への移転、海外金融機関やIT企業の対中国投資の縮小などである。
時を同じくして、米中関係の悪化が地政学的緊張をさらに高め、紛争が起きるのではないかとの懸念が高まっている。2018年に勃発したトランプ政権の対中貿易戦争は、人権や台湾、南シナ海などの問題を包含する幅広い戦略的競争へと姿を変えた。バイデン政権は中国に対してより多面的なアプローチを取っているものの、強まる中国の影響力と自己主張に対処する必要があるという党派を超えた共通認識を反映し、経済制裁や輸出規制などの措置を通して中国政府に圧力をかけ続けてきた。
こうした外的課題を抱えるなか、中国共産党内と軍内での権力基盤を強化する習近平氏の取り組みは内部の問題に直面している。習氏の側近だった秦剛外相が公の場から姿を消し、その後、彼の所在についての情報がなかったことから、党内の派閥争いと権力闘争に関する憶測に拍車がかかった。同じく、汚職・背信行為の疑惑が原因と報道されている李尚福国防相の解任により、軍に対する習氏の統制の範囲に疑問が投げかけられ、軍人の反発を生む可能性も出てきた。
こうした内的問題を受けて、習氏は不忠分子を粛清し、自らの権力基盤を強化する取り組みを進めている。習氏が10年前に新設したロケット軍を中心とする軍内の大粛清の対象は、背信行為や汚職の疑いがある高官である。軍の戦略支援部隊の改称や解散は、表面上は指揮系統の合理化と軍事行動の効率化を目的としているが、これにより国軍に対する習氏の統制力がさらに強まり、中国の最高指導者としてその権限がさらに強化された。
経済面の課題と構造改革
かつては急成長と工業化を特徴としていた中国の経済軌道が今、一連の厄介な課題に直面している。中国は過去に例を見ない数十年にも及ぶ経済成長を享受してきたが、ここ数年は成長率が鈍化し、構造的不均衡・非効率性が表面化してきた。コロナ禍がこうした脆弱性を高め、中国の医療システムとサプライチェーン、社会的セーフティネットの弱点を露わにした。
中国経済が直面する喫緊の課題の1つは、消費の不振である。ポストコロナを中心に消費支出の増大を目的とした幅広い消費刺激策を政府が打ってきたにもかかわらず、国内消費者は経済の先行きに慎重な見方を崩していない。こうした買い渋りは、所得格差や雇用保障、住宅と医療の価格に対する懸念の広がりを反映している。
もう1つの大きな課題は、中国の経済の先行きに暗い影を落とす不動産危機である。中国の成長の柱を長く担ってきた不動産市場は今や、売れ残り住宅のだぶつき、開発事業者の負債水準の上昇、規制強化への対処を余儀なくされている。住宅価格の上昇で国民の不満が高まり、不動産バブルの懸念が生じており、政府は投機の過熱を抑え、市場を安定させる措置の導入を迫られている。
こうした国内の課題に加え、中国の経済改革アジェンダは米国など主要貿易相手国との関係悪化に起因する外部圧力にも直面している。トランプ政権が始めた貿易戦争と、知的財産権や市場アクセス、技術移転などの問題をめぐるその後の紛争が2国間関係を損ね、経済のグローバル化の今後に対する懸念を招いている。
著名なリベラル派経済学者との座談会を5月23日に広東省で開催した習近平氏の決断は、経済政策決定に対する中国のアプローチの注目すべき転換を示唆している。市場志向型改革を唱え、経済への政府の介入縮減を重視することで知られるこれら経済学者を交えたことは、経済政策の方向付けに多様な視点を取り込む必要性を習氏が認識していることを如実に物語る。
1970年代後半のトウ小平氏の改革開放時代以降、周基仁氏などのリベラル派経済学者は、中国の経済政策の方向付けに大きな役割を果たしてきた。市場志向型改革と外国からの投資の開放促進を唱えるこれら経済学者は、経済運営に国家中心型アプローチを取ることを好む党内の保守派とたびたび衝突してきた。
間もなく開催される3中全会へのリベラル派経済学者の参加は、中国の経済開発アジェンダにとって大きな意味を持つ。これは、習近平政権側が従来に代わる観点も考慮しつつ、経済面の課題への対処に新たなアプローチを模索する意向であることを示唆している。これら経済学者を招き、その知見と提言を聞くことで、習氏はより市場主導・改革重視型の経済戦略にシフトする可能性があるとのシグナルを発しているのである。
中国共産党内の改革派を代表する周氏の知見と提言は、中国の経済改革と経済発展をめぐって続いている議論に貴重な視点を提供する。
市場志向型改革の提唱者という周基仁氏の長年にわたる評判と、経済政策の方向付けに関与したという過去の実績が、議論におけるその発言に説得力を与える。北京大学国家発展研究院の教授として、周氏は先頭に立って自由経済の原則を唱え、政府による介入を減らし、より開放され、競争的な市場環境を醸成する重要性を強調してきた。
座談会で周基仁氏が強調したのは、制度的障壁を縮減し、一般市民が経済的変化の恩恵を受けられるようにする全面的な改革の必要性である。中国社会における富と機会の不平等な配分に懸念が広まるなか、一般大衆の「獲得感」を重視するという彼の提案は多くの共感を呼んだ。
周基仁氏の発言について、フィナンシャル・タイムズ紙は、間もなく開催される3中全会のシグナルの1つであると指摘した。制度的障壁を縮減し、改革で一般大衆の獲得感を高めるという周氏の主張からは、習近平氏が行った演説の主旨に沿って市場志向型改革を続けていくという中国の決意が明確に読み取れる。
さらに、周基仁氏が座談会に参加したことで、中国共産党内での政策協議の性格が変わってきていることが浮き彫りとなった。周氏の参加は、より市場主導・改革志向型の経済戦略へとシフトする可能性があることを示唆している。彼の知見と提言が、3中全会の議題と審議の参考となり、中国の経済改革と経済発展に向けた道筋に貴重な視点を提供する可能性が高い。
ただし、リベラル派経済学者を座談会に加えたといっても、中国共産党首脳部が必ずしもその見解を全面的に支持しているわけではないと認識しておく必要がある。中国の経済政策決定プロセスの特徴は、複雑な政治・イデオロギー的ダイナミクスであり、さまざまな派閥が影響力・権力争いを繰り広げている。習氏は、リベラル派経済学者が提案する考えの一部を進んで取り入れようとするかもしれないが、政治の安定と社会の連帯、党統制の維持といった重点事項とのバランスを取る可能性が高い。
加えて、3中全会の審議にリベラル派経済学者が加わることで、中国共産党内で幅広い政治・イデオロギー的討論が活発化するものと考えられる。経済改革と、政治的支配やイデオロギー的一貫性の維持という党の重要な目標のバランスをいかに取るか。これが、論争の最大の焦点になる可能性が高い。党内には自由化を進め、もっと市場メカニズムに任せることを主張する者がいる一方、安定と社会の調和を優先する、より慎重なアプローチを提唱する者もいる。
「中国共産党中央委員会第3回全体会議の見通し(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: 中国共産党第19期中央委員会第3回全体会議(3中全会)
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