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NYの視点:賃金上昇を伴う2%レベルの物価上昇は実現可能か?

配信日時:2023/06/05 07:42 配信元:FISCO
*07:42JST NYの視点:賃金上昇を伴う2%レベルの物価上昇は実現可能か? 複数の政府関係筋が2日までに明らかにしたところによると、日本政府は、今月中に閣議決定する経済財政運営の指針(骨太方針)で、日本銀行が掲げる2%の物価安定目標について、新たに「賃金の上昇を伴う形で」と追記する方向で調整に入ったようだ。

岸田政権は発足後初となる骨太方針の方針を昨年発表しているが、日銀に対する要望として「経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」と伝えていた。今回発表される骨太の方針の原案では、物価安定目標の実現を追求することは変わらないが、「賃金上昇を伴う形で」と明記されるようだ。

市場参加者の間からは「現行の金融緩和策を続けることで賃金の上昇を伴う物価上昇が起こり得る保証はなく、政府がどの程度の賃金上昇を想定しているのかわからないため、日銀の金融政策の柔軟性は失われる可能性がある」との声が聞かれている。関係筋によると、政府と日銀は緊密に連携し、両者が経済・物価・金融情勢に応じて機動的な政策運営を行っていく姿をアピールしたい狙いが政府側にあるようだ。

なお、賃金上昇について、日本政府は、輸入物価上昇を起点とした外生的な物価上昇から、賃金上昇やコストの適切な価格転嫁を伴う「賃金と物価の好循環」を目指す方針のようだ。ただ、賃金上昇の実現は主に企業努力によるものであり、骨太の方針に強制力はない。賃金上昇を伴った2%の物価目標が実現されることは簡単なことではないとの見方が多く、日銀は現行の金融緩和策を長期間維持することを余儀なくされる可能性が高い。
(小瀬正毅)

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