後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
テクニカル好転も慎重維持も求められる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27339.61;+433.57TOPIX;1971.55;+26.17[後場の投資戦略] 日経平均は半導体を中心とした米ハイテク株高と為替の円安進行という良好な外部環境に支えられ、大幅に続伸。マド空けを伴った上昇により、一気に上値抵抗線として集中する75日、200日の移動平均線を上抜いてきている。週足でも13週、52週線を超え、26週線も視野に捉える展開となっている。一方、日足一目均衡表では厚い雲に突入したばかりの形で、そろそろ戻り一服も意識されやすい頃合いか。 実際、前日の米SOX指数の急伸の背景にはアナリストの投資判断引き上げという支援材料があったほか、日本株については、先週の日本銀行の金融政策決定会合を無難に消化したばかりという短期的な安心感、さらには足元の円安進行に助けられているところが大きそうだ。 しかし、今週から日米の主力企業の10−12月期決算の発表が本格化していく中、ここからの一段の上値追いには慎重にならざるを得ない。今晩は米国でGAFAMの一角であるマイクロソフトのほか、ゼネラル・エレクトリック、スリーエム、テキサス・インスツルメンツななどの注目決算が予定されている。 マイクロソフトの10−12月期売上高は前年同期比で2%の増加と、四半期ベースとしては2017年度以来の低い伸びにとどまると予想されている。足元では米IT企業の大規模な雇用削減の動きが相次いでおり、急速に景況感が悪化している中、対照的な株式市場のリバウンドの強まりはやや違和感もある。 これまでの一連の米インフレ指標の大幅鈍化に加えて、先週末にかけては、米フィラデルフィア連銀・ハーカー総裁やウォラーFRB理事などが、米ボストン連銀・コリンズ総裁や米アトランタ連銀・ボスティック総裁などに続き、次回会合での0.25ポイントへの利上げ幅縮小を支持した。もちろん、こうした米国でのインフレ&金利のピークアウト期待の高まり、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での不透明感後退も株高の背景にはあるのだろう。 しかし、決算本格化と実際のFOMCの開催を前にしたこれまでのリバウンドにより、株式市場は楽観シナリオの多くの部分をすでに織り込んでしまったともいえる。今晩以降の決算シーズンの本格化と2月1日に結果公表を控えるFOMC後も、今の勢いを維持できるかについては慎重になった方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/24 12:19
後場の投資戦略
今週から日米主力企業決算本格化で注目集まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26852.85;+299.32TOPIX;1944.05;+17.18[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、上昇スタート後に高値圏でのもみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比385円高の26915円。本日の日経平均は、シカゴ先物にサヤ寄せする格好からギャップアップから取引を開始。18日の高値を奪還しており、節目の27000円を意識した動きに繋がるかに注目が集まっている。 新興市場でも堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタート。その後は、上げ幅をじりじりと広げる展開となった。日銀金融政策決定会合を無難に消化して米長期金利も低位安定しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けやすい地合いが続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が2.06%高、東証グロース市場Core指数が3.78%高となっており、時価総額上位銘柄中心に物色が向かっていることが窺える。 さて、今週からは日米主力企業の決算発表が本格化してくる。市場の焦点が金融政策から企業業績や景気全体へと移りつつあるなか、まずは米マイクロソフトが24日、米テスラが25日に決算を発表する。2月1日にはメタ、2月2日はアマゾンやアップルなどが控えており、各企業の経営陣がどのような先行きを示すかに注目が集まっている。また、マイクロソフトやアマゾンは人員削減に着手しており、グーグルの親会社アルファベットも従業員の削減を計画している。雇用統計などの指標に影響する各企業の人員削減計画にも注目が集まろう。 ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによれば、テクノロジー業界はS&P500種構成企業の昨年10-12月(第4四半期)利益の最も大きな重しになると予想されているようだ。BIのマイケル・キャスパー氏は、S&P500種全体で見られる業績リセッションの多くはハイテク企業に原因があるとした上で、「その多くが織り込み済みであるものの、リセッションの状況次第では同セクターには依然として確実に幾分ネガティブな修正のリスクがある」と指摘した。また、アナリストの予想は楽観的過ぎる可能性があると指摘しており、大企業の決算発表で市場の想定よりも大幅な下方修正が発表されるとネガティブな反応が大きくなりそうだ。 また、本日のブルームバーグでは、ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのテクニカル戦略責任者であるマーク・ニュートン氏が「S&P500種が10月半ばに底入れする公算が大きい」と予想していると報じられている。売り込まれたテクノロジー株を完全に償却するのは時期尚早だと述べており、やはり今週から始まるテクノロジー企業の決算発表に注目しているようだ。 そのほか、インフレが鈍化しつつあり、米長期金利が低水準で推移していることも追い風となり暗号資産ビットコインは16日から22日にかけて260万円台から300万円まで大きく上昇した。暗号資産全体の時価総額も昨年11月以降と比較して回復傾向にあり、リスク資産に資金が戻り始めている。Genesis Global Capitalの破産申請などがあく抜け感につながり急騰、アルトコインも大きく値上がりする銘柄が散見されてきている。 ただ、暗号資産及び米国株がともに好調に推移しているが、暗号資産業界で起きたFTXショック同様に、楽観的な動きが垣間見えるほど突発的なネガティブニュースが流れることもある。引き続き、企業決算や経営陣の発言、FRB高官の発言、地政学リスクの動向などには注目を続けざるを得ないだろう。筆者は前年と変わらず、今年に再度大きく下落する可能性があることを念頭に置いて相場を見守っている。さて、後場の日経平均は、本日高値圏でのもみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/01/23 12:26
後場の投資戦略
今後の決算への警戒感くすぶる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26411.94;+6.71TOPIX;1918.17;+2.55[後場の投資戦略] 本日の東京市場では、前日の米国株安の影響をさほど受けず、主要株価指数が揃って上昇。ただ、上昇率は全体的に控えめ。来週から本格化していく日米主力企業の10−12月期決算の発表や1月31日−2月1日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に全体的にやや手掛かり材料難のようだ。 前日は米国市場でいくつか決算発表があった。動画配信のネットフリックスは取引終了後に四半期決算を発表し、内容は予想を下回ったものも、新規契約者数が予想を上回ったほか、自社株買いの再開計画が好感され、時間外取引で株価は大きく上昇している。 一方、日用品大手のプロクター&ギャンブルは10−12月期の販売量が前年同期比6%の減少と、市場予想(2.6%減)を大幅に下回った。同社が扱う商品の大半は生活必需品ではあるが、景況感の悪化やくすぶるインフレを背景に消費者の支出動向がより慎重になっていることが窺える。 また、アルミニウム生産大手のアルコアの決算では、需要減退によるアルミ価格の下落と出荷量の減少、インフレによるコスト増加というネガティブな組み合わせにより、冴えない内容となった。2023年のアルミ出荷量見通しも市場予想に届かなかった。電気代の高騰などを背景に欧州企業がアルミ生産を削減しているほか、ウクライナ侵攻に伴い、世界2位の生産国であるロシアからの購入手控えが起こっており、構造的な供給不足が懸念されている中での低調な出荷見通しとあって、需要減退の深刻度が伝わってくる。 S&P500種株価指数全体を対象とした予想1株当たり利益(EPS)は10−12月期に前年同期比2.7%の減少が見込まれており、今年の1−3月期から4−6月期にかけては1.5−2.7%程度の減少が予想されている。このように、すでにある程度の景気後退と減益決算は織り込まれているものの、今のところの米企業決算と株価の反応は金融大手も含めてまちまちだ。事前に大きく悲観に傾き、実際に蓋を空けてみれば想定程には悪くないことで株価はあく抜け上昇するというのが、米企業決算シーズンにおけるよくあるパターンだが、今回はどうだろうか。 すでに米企業については全体として減益決算が予想されているが、依然としてアナリスト予想は高いとの指摘もあり、低調な実績と悲観的な見通しが示されれば、今後の目線がさらに切り下がる可能性があるため、注意が必要だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/20 12:13
後場の投資戦略
インフレ沈静化と景気後退懸念の強弱材料が混在
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26468.62;-322.50TOPIX;1920.22;-14.71[後場の投資戦略] 前日の米国市場では強弱材料が混在した。12月卸売物価指数(PPI)は前年比+6.2%と市場予想(+6.8%)を大幅に下回り、前月(+7.3%)から一段と鈍化。前月比では−0.5%と市場予想(−0.1%)を大幅に上回る減速となった。ただ、エネルギー価格の下落が寄与したところが大きく、中国経済の再開を背景に原油や鉄鋼、ニッケル、アルミニウムが足元大きく反発傾向にあることは考慮しておく必要があろう。それでも、エネルギー・食品を除いたコアでも前年比+5.5%、前月比+0.1%とそれぞれ前月(+6.2%、+0.2%)から大きく鈍化したことは評価できる。 また、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の決定に関して参考にする地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「多くの地区で、販売価格の上昇ペースが最近の報告期間から減速した」、「全ての地区において調査対象企業は今後1年に物価の伸びがさらに減速するとの見通しを示した」と記載された。米12月雇用統計での平均時給の伸び鈍化や米12月消費者物価指数(CPI)の結果に続き、インフレ沈静化期待が日に日に高まっていることは株式市場の支援要因となろう。 一方で、景気減速懸念が強まっていることは気がかりだ。前日に発表された米12月小売売上高(速報値)は前月比−1.1%と市場予想(−0.9%)を上回る減速となり、11月速報値は−0.6%から−1.0%へ下方修正された。自動車・ガソリンを除くベースでも前月比−0.7%と市場予想(+0.0%)を大幅に下回り、11月速報値は−0.2%から−0.5%へと下方修正された。米国の国内総生産(GDP)の約7割と最大構成比を占める個人消費の動向を示す指標として小売売上高の重要度は高い。大寒波の影響などもあるだろうが、2カ月連続での大幅減速は先行きの警戒感を強める。 また、米12月鉱工業生産も前月比−0.7%と市場予想(−0.1%)を上回る減速となり、11月速報値は−0.2%から−0.6%へと下方修正された。小売売上高と並んで2カ月連続での前月比マイナスとなり、17日に発表された1月ニューヨーク連銀製造業景気指数が2020年5月以来の低水準にまで落ち込んだことと合わせて考えると、個人消費だけでなく、企業活動の低迷もかなり速いペースで進んでいるようだ。 経済指標の落ち込みに加えて、先んじて発表された米金融大手の決算では、貸倒引当金の積み増しが顕著に確認された。全体的に景気後退懸念が強まる中、来週から本格化していく日米の主力企業の決算での10−12月期実績と見通しに対する警戒感は強まっている。 日本については、為替の円高リスクも意識される。前日の日銀金融政策決定会合では緩和縮小が見送られたが、先延ばしにされただけで、政策の追加修正は時間の問題と見ている投資家が海外投資家を中心に多い。2月に入ってからは、日銀新体制の人事も明らかになる予定で、今後も日銀の政策修正を見込んだ投機筋によるトレードは続くとみられる。このため、トレンドとしては為替の円高基調が続きやすいと考えられる。日本の製造業の想定為替レートは1ドル=135円前後のところが多いため、日本の輸出企業の業績下振れリスクへの警戒感はくすぶる。 一方で、景気後退懸念を反映して、米国債利回りが幅広い年限で大きく低下しており、米10年債利回りは18日、3.37%と終値ベースでは昨年12月7日安値を更新、9月半ば以来の水準にまで低下した。 前日は米セントルイス連銀・ブラード総裁が次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ポイントの利上げを支持したほか、クリーブランド連銀・メスター総裁もブラード総裁と同様にターミナルレート(政策金利の最終到達点)を、5%を優に上回る水準にまで引き上げるべきとタカ派な発言が相次いだことで、米ナスダック総合指数は8日ぶりに反落した。しかし、安値更新で米長期金利の低下基調が強まる中、景気敏感株に対する内需系グロ−ス株の相対優位性は増してきたと考えられる。 実際、本日の東京市場では、日経平均と東証株価指数(TOPIX)が下落している中、マザーズ指数は朝方の売りから上昇に転じて底堅さを見せている。2月1日に結果公表を控えるFOMCが近づく場面では注意が必要だろうが、日銀金融政策決定会合を無難通過した直後ということもあり、景気や為替の動向との連動性の低い中小型の内需系グロース株には目先投資妙味が高いと判断する。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/19 12:20
後場の投資戦略
金融政策決定会合後は円安・株高か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26301.86;+163.18TOPIX;1909.87;+6.98[後場の投資戦略] 東京市場では主要株価指数が揃って上昇。日銀金融政策決定会合の結果を昼頃に控えてはいるが、現状維持の公算が大きいとの見方に傾きつつある中、前日に続き買い戻しが優勢となっているようだ。 JPモルガン証券のクオンツストラテジストの分析によると、足元で、モメンタムに沿った順張り戦略を主体とする商品投資顧問(CTA)のショート(売り持ち)は大幅に積み上がっている可能性が高いとのこと。CTAの既存持ち高の損益分岐点は26550円と試算されており、金融政策決定会合後に日経平均が26500円台を回復すれば、CTAによる買い戻しが誘発され、27000円まで上値を伸ばす展開があると予想している。一方、ネガティブサプライズがあれば、CTAの既存持ち高から推察される短期ターゲットである25220円までの下落があると予想している。 金利スワップの1種であるOIS(Overnight Index Swap)フォワード金利によると、今年4月には日銀がマイナス金利を解除することが織り込まれている。今会合では現状維持が大方の予想だが、仮に2会合連続での政策修正があったとしても、まずはイールドカーブコントロール(YCC)における長期金利上限の引き上げか、もしくはYCCの撤廃にとどまると予想される。マイナス金利の解除についても、円OISが示唆するように新体制に切り替わってすぐの4月に即座に実施されるとは想定しにくい。 市場は日銀の政策修正について前のめりで織り込み過ぎていると考えられる。このため、今会合で予想通り現状維持となれば為替の円安と株高が実現する可能性が高いことはもちろん、仮に政策修正があったとしても想定内にとどまり、目先の材料出尽くし感から短期的にはやはり円安と株高で反応するのではないかと考えられる。もしくは、黒田日銀総裁の会見を見極めたいとの思惑から、午後も方向感が定まらない展開なども考えられる。 ただ、いずれにせよ、今後日米の決算シーズンが本格化する中、あえてこのタイミングで大きなリスクを取りにいく必要はないだろう。前日に発表された1月ニューヨーク連銀製造業景気指数は−32.9と前月から22ポイント低下、市場予想(−8.6)を大幅に下回り、新型コロナパンデミックに伴い経済封鎖が行われた2020年5月来で最低に落ち込んだ。景気後退懸念が強まる中、今後の決算内容に対する警戒感は根強い。決算シーズンを終えて業績精査が終わってからでも投資は十分に間に合うだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/18 12:05
後場の投資戦略
銀行株も崩れ買えるものはゼロ?ではない
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26140.51;+318.19TOPIX;1900.95;+14.64[後場の投資戦略] 前日の米国市場が休場だったことに加えて、日本銀行の金融政策決定会合や黒田日銀総裁の記者会見を明日に控える中、本日は手掛かり材料難と見られたが、東京市場では買いが優勢で、日経平均は1%を超える上昇率となっている。 為替の円高進行が一服していることで、短期筋の買い戻しが進んでいると推察されるほか、中国の経済指標が予想よりも遥かに良好だったことが安心感を誘っているようだ。中国ではゼロコロナ政策の緩和後の感染爆発の影響から、12月の指標に対しては警戒感が高かったため、今回の結果はポジティブサプライズであり、今後の同国の経済再開に伴う景気回復への期待が高まったといえよう。 先週の読売新聞の報道をきっかけに、日銀による2会合連続での政策修正への警戒感がにわかに高まった株式市場ではあるが、明日に結果を控える今会合に限っては現状維持を予想する市場関係者が多いもよう。今回、市場は急速に政策修正を織り込みはじめ、一時はマイナス金利の解除までを織り込む形となった。こうした中、中身はどうであれ、2会合連続での政策修正で応えてしまえば、市場に誤ったメッセージを発することになり、催促相場の様相を強めてしまう恐れがある可能性などが指摘されている。 また、日銀の金融市場局市場企画課が3月1日に公表する債券市場サーベイが2月に実施される。日銀は昨年12月会合での政策修正の要因として、債券市場の健全な機能の回復を挙げていた。12月の政策対応を受けて市場参加者の考えにどのような変化があったのか、こうした点を2月のサーベイ調査で確認するまでは直ちに追加の政策修正を決定することは考えにくい、ということも理由として挙げられている。 以上の観点から、明日の日銀金融政策決定会合は現状維持で終わる公算が大きそうだ。しかし、4月に日銀新体制を控える中、思惑は当面くすぶり続けることになるだろう。世界経済の景気後退入りや為替の円高進行が懸念要素となる自動車関連株などはしばらく上値の重い展開が続くと考えておいた方がよいだろう。金利上昇による債務負担増が意識されやすい不動産セクターもしかりだ。 一方、日銀の追加政策修正を本当に株式市場が嫌がっているのかについては、やや見方を変えるべき点もあると考える。それはグロース株の動向だ。前回の12月会合の政策修正の際には、為替との連動性が小さい中小型の内需系グロース株も大きく売られ、マザーズ指数が特に大きな下落を強いられた。サプライズ的な出来事だったため、流動性リスクの大きい中小型株が売られやすかったという背景もあるだろうが、国内の金利上昇への警戒感も要因として大きかったと思われる。 しかし、先週の読売新聞の報道を契機に追加政策修正への警戒感が高まった今局面はやや様相が異なる。真っ先に自動車関連株や不動産株が売られ、銀行株が買われた初動反応は似たようなものだったが、内需系グロース株はさほど売られていない。Sansan<4443>やマネーフォワード<3994>のように決算に対する反応が良好なものも多い印象だ。これらグロース株に関しては、日銀金融政策決定会合に対する懸念よりも、米国での雇用統計や消費者物価指数を受けたインフレピークアウト期待を好感する動きの方が勝っているのかもしれない。 株式市場では、日銀リスクが台頭してきたことで、製造業関連株が買えず、また唯一買い安心感のあった銀行・保険株も早々に利益確定売りに押されはじめたことで、買うものが何もないといった声も聞かれる。しかし、目を凝らすと、上述の内需系グロース株のように、意外と下値を固めてリバウンド基調を強めているものも多い。今後、決算シーズンが本格化していくため、あえて今のタイミングから積極的に買い攻勢で臨む必要もないだろうが、買えるものは存在していると前向きに捉えていきたい。 なお、今晩の米国市場では1月ニューヨーク連銀製造業景気指数のほか、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの金融大手や航空大手ユナイテッド・エアラインズの決算が予定されている。金融決算では先行きの景気後退懸念を強めるものとなるかが注目される。一方、ユナイテッドの決算では旅行需要の回復が改めて確認されれば、東京市場の航空関連株にもポジティブな波及が期待される。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/17 12:18
後場の投資戦略
市場の注目は日銀の金融政策決定会合に
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25855.38;-264.14TOPIX;1892.33;-10.75[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、下落スタート後にマイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物は大阪比290円安の25790円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均は売りが先行。17-18日に控えている日銀金融政策決定会合で追加の政策修正が決定される可能性について報道があり、本日も国内金利上昇への警戒感から利益確定売りが広がっている。香港市場や中国市場の指数はプラス圏で推移、ナスダック100先物は上値の重い展開が続いている。 新興市場でも軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、下げ幅を縮小する動きを見せるもマイナス圏で推移した。ただ、日経平均よりも下落率は小さく、為替の円高影響が小さい新興株に幕間つなぎの物色が向かっている可能性がある。また、インフレピークアウト期待は引き続き新興株のサポート要因として機能している。そのほか、新興市場でも決算発表を行った個別材料株中心に物色が向かっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.78%安、東証グロース市場Core指数が0.44%安。 さて、前週末に発表された米1月ミシガン大学消費者信頼感指数の1年先期待インフレ率は4.0%と市場予想4.3%を大幅に下回り、昨年12月の4.4%から大きく低下した。2021年4月以来の低水準となり、米消費者が今後1年で物価上昇圧力が大幅に緩和するという確信を強めている様子が浮き彫りとなった。米10年債利回りは3.49%と昨年12月以降のレンジ下限まで低下、インフレピークアウト期待は個人投資家心理にポジティブに働こう。 ただ、米国のインフレピークアウトに楽観的な意見が見られてきたなか、今週は日銀の金融政策決定会合が17-18日に開催される。追加の政策修正が決定される可能性について一部メディアが報じており、市場参加者の注目度が急速に高まっている。ブルームバーグ調査によると、ほぼすべてのエコノミストが今回の政策据え置きを予想。ただ、日銀が長期金利の許容変動幅を上下0.25%から同0.5%に拡大した理由である市場機能について、変更後も改善はみられず、市場は早くも変動幅の再拡大やYCC撤廃の可能性を想定し始めている。 年明けの段階では、12月会合の際に決めたYCC運用見直しの影響と効果を見極めるため、さらなる修正は急がない意向とも伝えられていた。2会合連続での政策修正があれば、ネガティブサプライズになろう。同会合が終了するまでは、日経平均は上値の重い展開が続きそうだ。 そのほか、株式デリバティブトレーダーは昨年市場を駆け巡った混乱が中断すると想定しているという。今後数カ月間の価格変動の激しさの予想を示すいわゆるボラティリティ・カーブは、どの点でも1年前より低下。カーソン・グループのチーフ市場ストラテジストであるライアン・デトリック氏は「昨年がどれだけひどい1年だったかを考えれば、市場には すでに多くの悪いニュースが織り込まれている可能性が高い」と述べた、とブルームバーグで報じられている。 また、ネッド・デービス・リサーチによる米商品先物取引委員会(CFTC)のデータ分析によれば、機関投資家は過去数週間、株式のショートポジションをカバーし、今月初めにはネットロングポジションを2022年5月以来の水準に高めたという。ネッド・デービスの米国担当チーフストラテジストは「良好なインフレデータが続き、企業業績がかなり良ければ、ヘッジファンドがショートポジションのカバーを続け、それが相場上昇を持続させるかなり良い材料になると言えるだろう」とブルームバーグに語ったようだ。 インフレが鈍化しつつあり、米金融当局が利上げペースを緩めるとの楽観的観測を受けて暗号資産ビットコインも連日大きく上昇している。暗号資産全体の時価総額も昨年11月以降と比較して回復傾向にあり、リスク資産に資金が戻り始めている。トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズの創業者のマイケル・パーブス氏は、短期的に強気の値動きを意味していると分析したようだ。ただ、暗号資産、米国株が好調に推移してはいるが、引き続きインフレ指標やFRB高官の発言、地政学リスクの動向などには注目を続けたい。さて、後場の日経平均は軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、日経平均が下げ幅を縮小する動きを見せるか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/01/16 12:21
後場の投資戦略
米CPI鈍化も過度な楽観は禁物
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26143.41;-306.41TOPIX;1905.15;-3.03[後場の投資戦略] 米12月CPIは前年同月比+6.5%と市場予想に一致し、11月(+7.1%)から大きく鈍化。前月比では−0.1%と減速に転じた。食品・エネルギーを除いたコア指数でも前年同月比+5.7%と市場予想に一致し、11月(+6.0%)から鈍化。一方、前月比では+0.3%と市場予想に一致も、11月(+0.2%)からはやや伸びが加速した。 前月比ベースでは、エネルギーが−4.5%と大きく減速し、11月の−1.6%から下げが加速。食品・エネルギーを除いたコア・財も−0.3%と、11月の−0.5%からは下げが鈍化したが、3カ月連続での減速となった。一方、食品・エネルギーを除いたコア・サービスが+0.5%となり、11月の+0.4%から伸びが加速。家賃など住居費の加速が影響した。食品は+0.3%と11月の+0.5%からは鈍化したものの、加速傾向が続いた。 CPIにおける家賃などの住居費に対して1年から1年半ほど先行する住宅価格指数が昨年4月にピークアウトしていることから、サービス・コア指数のピークアウトもあと数カ月と予想される。一方、中国経済再開への期待から銅先物価格の上昇が続くなど、ここに来て商品・エネルギー市況の下落トレンドに底入れ感が出てきている。商品市況の代表的な指数であるCRB指数も足元で上昇が続いている。 サービス・コアのインフレがピークアウトして減速に転じるまでには年央までかかるとみられ、その間に、商品市況の高騰を通じて再びモノに関するインフレが再燃すると厄介なことになる。インフレ再燃とまではいかなくても、これまでの減速傾向が止むだけでも、今後のCPIの低下スピードが減速することにつながるため、注意が必要だ。 こうした中、スワップ市場では今後2会合での米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ幅が0.5ポイント未満になるとの予想が織り込まれつつあるという。これは、確率としてはかなり低いものの、2月に0.25ポイントでなく0.5ポイントの利上げが行われた場合、そこで打ち止めになる可能性がゼロではないことを示唆している。 ただ、インフレピークアウトは明確であるものの、水準としては依然としてFRBの目標である2%を大幅に上回っており、今後の鈍化ペースも減速していく可能性を踏まえると、やや楽観的な印象を受ける。「モメンタム(伸び)」の減速を重視する市場と、「水準」を重視するFRBとの乖離は依然として大きい。今後の景気後退のスピードが遅く、度合いも浅ければ、市場の楽観がFRB寄りに修正を迫られる可能性があるし、景気後退のスピードが想定以上に速く、かつ深刻なものとなれば、FRBが折れる形で市場の利下げ転換に沿う展開も予想される。 しかし、FRBが年内の利上げは有り得ないとする現在の頑な姿勢を曲げて利下げに転じるというのであれば、それは相当に深刻な景気後退であり、この場合、株式市場は単純にFRBの利下げを歓迎できるわけではなく、深刻な景気後退を織り込む必要性、すなわち一株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価下落に直面せざるを得ないといえる。つまり、年内のFRBの利下げ転換がないと分かり、利下げ期待が剥落する場合でも、FRBが折れて利下げに転じる場合でも、どちらにしても、株式市場には厳しい現実が待ち構えている可能性があるといえる。FRBの利下げ転換後には買い場が来ると思われるが、その前にはもう一段の下落に備えておきたい。 なお、今晩は米1月ミシガン大学消費者信頼感指数のほか、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティ・グループの金融大手の決算が控える。米12月ISM非製造業(サービス業)景気指数の予想外の50割れへの急低下によって景気後退懸念が強まっている最中でもあるため、消費者マインドの具合や、金融大手の経営陣による景気の見通しに対する発言に注目したい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/13 12:19
後場の投資戦略
米CPIに過度な期待は避けよう
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26455.06;+9.06TOPIX;1907.73;+6.48[後場の投資戦略] 本日の東京市場では主要株価指数がまちまちの展開。前日の米国市場では、米ボストン連銀のコリンズ総裁が次回のFOMCで利上げ幅を0.25ポイントへと縮小する可能性について言及し、金利低下・ハイテク株高につながり、ナスダック総合指数は大幅に4日続伸となった。 一方、東京市場では、日銀が次回会合で大規模金融緩和の副作用を点検すると伝わり、為替の円高が進んでいることで上値が抑えられているもよう。ただ、ナスダック総合指数の4日続伸からも窺えるように、今晩の米12月CPIでインフレピークアウトが再強調されるとの期待感が事前にかなり高まっており、仮に予想通り、インフレ鈍化が確認されても、大幅に予想を下回らない限り、市場のポジティブな反応が一段と強まるかはやや不透明。 また、明晩は米1月ミシガン大学消費者信頼感指数のほか、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティ・グループの金融大手の決算が控える。米12月ISM非製造業(サービス業)景気指数の予想外の50割れへの急低下によって景気後退懸念が強まっている最中でもあるため、消費者マインドの落ち込み具合や、金融大手の経営陣による景気の見通しに対する発言は注目度が高い。 金融決算を皮切りに今後本格化する決算発表も踏まえれば、米CPI後に上値追いが長期化するとまでは考えにくい。国内製造業決算の先行指標とされる安川電機<6506>の決算後の株価反応はひとまず上昇だったが、ACサーボモーターの受注調整は想定以上で、全体の印象はややネガティブと捉える調査機関が多い。足元のハイテク株高も米CPIや決算前の買い戻しに過ぎないと考えれば、一段の上値追いには慎重になりたいところ。こうした中、1月、2月は3月末の配当権利取りの動きが表面化しやすい季節でもあることから、銀行や保険、商社といった高配当利回り銘柄に着目すべきと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/12 12:15
後場の投資戦略
チキンレースにFRBが負ける可能性
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26457.56;+282.00TOPIX;1900.36;+19.48[後場の投資戦略] 本日の東京市場では主要株価指数が揃って上昇。前日の海外市場において、パウエルFRB議長の講演を無難に通過したことや、米長期金利が上昇する中でも米ナスダック指数が3日続伸したことが安心感を誘い、明日の米12月消費者物価指数(CPI)の発表を前に買い戻しが優勢となっているもよう。安川電機の決算を材料にハイテク関連に買い戻しが入っていることも指数を押し上げている。 一方、日経平均は大幅に4日続伸しているが、依然として下向きの25日移動平均線を大きく下回っており、買い戻しの域を出ていない。マザーズ指数は大幅高で、一気に100日、75日、25日の各移動平均線を捉えてきているが、ちょうど日足一目均衡表での厚い雲の下限付近のところまで戻していて、そろそろ戻り待ちの売りが出やすい水準ともみられる。 他方、懸念される材料は日々相次ぐ。昨日は、世界銀行が2023年の世界成長率見通しを1.7%と予想し、昨年6月時点の見通しからほぼ半減させた。これはリーマンショックの影響があった2009、10の両年の縮小に次ぎ過去30年ほどで3番目の低成長に値するという。 また、ボウマンFRB理事が追加の利上げの必要性を主張したことに加え、米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、政策金利が6%まで引き上げられる確率が50%あるなどと発言した。 こうした中でも、市場は依然として年後半からの利下げ転換を予想しており、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の織り込みも依然として5%未満にとどまっている。こうした状況を受け、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、投資家は楽観的であり、市場の予想とFRBの見通しとの間の乖離について、これをチキンレースであるとした上で、市場はチキンゲームの敗者になるなどと語ったという。 ただ、こうした頑なFRB高官らの姿勢はあくまでポーズに過ぎないと考えられる。米国の物価水準は依然として高いとはいえ、CPIや平均時給の伸びには明確なピークアウトが見られてきている。一方で、米12月ISM非製造業(サービス業)景気指数が景況感縮小の50割れの水準に一気に下降してくるなど景況感・景気の変調も著しい。 ISMサービス業景気指数の50割れは大寒波の影響による一過性要因の可能性もあるが、個人消費の減退が主因である可能性もある。米国ではすでにコロナ禍での財政給付によって貯めた資金が使い果たされ、貯蓄率はコロナ前の水準を下回るまでに落ち込んでいる。一方でリボルビング支払いなど消費者信用残高が急速に増えている。ここから、米ISMサービス業景気指数の50割れは景況感悪化による個人消費の腰折れによる可能性もゼロではないと推察される。 今後も、米国でのCPIと雇用統計での平均時給の伸びの減速が続く一方で、ISMサービス業景気指数の50割れが続くようであれば、米雇用者数の割合で製造業の4−5倍程も占めるサービス業の悪化は深刻と思われ、FRBもいつまでもタカ派なポーズを取っていられなくなるだろう。今後出てくる指標次第ではあるが、チキンレースにFRBが負ける可能性もあり、その場合は株式市場の底入れが期待されてくる。ただ、短期的にはここから1カ月程度は、経済指標よりも、今後本格化する企業決算に対する見極めが重要と思われ、チキンレースに負けたFRBの利上げ停止・利下げ転換による相場底入れにはもう少し時間がかかろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/11 12:13
後場の投資戦略
上昇スタート後は上値の重い展開
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26199.25;+225.40TOPIX;1884.80;+9.04[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、上昇スタート後にプラス圏での堅調もみ合い展開が続いている。連休中に米株式市場で主要指数が上昇したことが東京市場の株価の支えとなった。中でも、ナスダック総合指数が2日間合計で3.21%上昇、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が6.68%上昇となり、東京市場でハイテク株やグロース(成長)株、半導体関連株の株価支援要因となった。国内要因では、「全国旅行支援」が本日再開されることもあり、経済の本格回復への期待感が高まったことも市場の雰囲気を明るくした。一方、外為市場で円高・ドル安に振れたことは東京市場で輸出株などの重しとなった。 新興市場でも堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタート。その後は、上げ幅をじりじりと広げており、日経平均よりも上昇率は大きい。賃金上昇圧力に緩和の兆しが見られて米国株が上昇したことは国内の個人投資家心理の改善につながった。また、米長期金利が低下しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとっては追い風となっている。前引け時点で東証マザーズ指数が1.23%高、東証グロース市場Core指数が2.06%高と時価総額上位銘柄が上昇をけん引している。 さて、6日に発表された米雇用統計の結果を再度確認しておく。非農業部門雇用者数の伸びが22.3万人と市場予想(20.5万人)をやや上回った。失業率は3.5%と11月の3.6%から改善。一方で、平均時給は前年比+4.6%と市場予想(+5.0%)を下回り、11月(+4.8%)から減速した。雇用者数及び平均時給の伸びは共にまだ水準としては高く、米労働市場の逼迫継続を示唆している。 10日のブルームバーグでは、アトランタ連銀のボスティック総裁が「われわれは決意を固く持ち続ける必要がある」と発言し、政策金利を5-5.25%に引き上げることが正当化されると述べた。また、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、政策金利は5%を幾分上回る水準まで引き上げられるとの見方を示したようだ。ただ、両氏とも利上げ終着点の具体的な水準は今後発表されるインフレ統計次第としている。今後は、12月CPIの結果と、1月31日-2月1日開催のFOMCで2会合連続となる0.5ポイント利上げか、0.25ポイントへの利上げ減速か、市場の注目が集まるだろう。 そのほか、弱気派として知られるモルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、「リセッション(景気後退)不安の中で米国株は悲観論者の多くが想定する以上の大きな下げに見舞われ、年間では金融危機以降で最大の下落率となる公算が大きい」と予想しているという。また、「市場のコンセンサスは方向としては正しいかもしれないが、程度を見誤っている」と述べ、S&P500指数は現水準より約22%低い3000前後で底打ちする可能性があるとの見方を示した。 また、前週5日のブルームバーグ記事で恐縮だが、「2022年の株式市場では痛い目に遭ったが新しい年には一息付けるのではないかと期待している投資家は落胆する公算が大きい」とパイパー・サンドラーのストラテジストであるマイケル・カントロウィッツ氏が指摘した。FRBががむしゃらにインフレ抑制に動いており、市場は幾分か普通ではない状況と闘っていると説明したうえで、S&P500指数が16%下落し3225になると見込んでいる。 昨年末の同欄でも示唆したように、筆者や多くの市場関係者が今年初めにかけて株式市場が更に下落するというシナリオを警戒している。引き続き、インフレ指標やFRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。昨年から何度も言っているが、世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。何が起こるかわからない市場環境であるからこそ、今年前半は警戒心を忘れずに相場を見守っていきたい。さて、後場の日経平均は堅調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、日経平均がプラス圏を維持できるかに注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/01/10 12:21
後場の投資戦略
久々に相対的な底堅さ発揮、ただ調整余地は残されている?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25975.14;+154.34TOPIX;1875.24;+6.34[後場の投資戦略] 本日の東京市場では主要株価指数が揃って反発。前日の米株式市場において主要株価3指数が揃って1%を超える下落率になったのとは対照的に久々に相対的な底堅さを見せている。前日に発表された米12月ADP雇用リポートや週間新規失業保険申請件数・継続受給者数らが軒並み労働市場の逼迫を裏付ける内容となったことを背景に、ドルが対円で上昇(ドル高・円安)していることが理由として挙げられよう。 一方、米労働市場の逼迫継続が示唆されたことは、4日に発表された米11月雇用動態調査(JOLTS)での求人件数に続き、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め長期化を裏付ける材料となり、ネガティブに捉えられる。反面、雇用が堅調なことは米国の国内総生産(GDP)の7割程も占める個人消費の堅調さにつながるものであり、リセッション(景気後退)をマイルドなものにする可能性があるという点でネガティブ一辺倒でもない。しばらくは、米国での雇用と消費を巡るデータに神経質な展開が予想される。 ただ、前日の米カンザスシティー連銀・ジョージ総裁による発言はやはりネガティブだろう。同氏は政策金利について5%超にまで引き上げた後は、インフレが2%目標に向かって説得力ある形で鈍化し始めているという兆候が得られるまでは、当面その水準にとどまるべきと主張した。また、現時点では、今年だけでなく2024年になっても政策金利は5%超の水準を維持することが適切との見解を示した。5%超もの高水準の金利が今後、1年近く、もしくはそれ以上の長い期間にわたって維持される可能性があることは、株式などリスク資産にとって明らかにネガティブだろう。 また、米国の代表的な株価指数であるS&P500種株価指数を対象とした株価収益率(PER)にはまだ調整余地が残されているとも考えられる。PERについては、すでにコロナショック直後の大規模金融緩和の局面で上昇した分は全て吐き出しているため、バリュエーション調整は済んだと考える向きもいる。しかし、2000年以降の長期の視点でみた場合、米国の10年債利回りから期待インフレ率を差し引いた10年物の実質金利との比較でいうと、現在のPERにはまだ割高感がある。 現在、米国の10年物実質金利は1.5%近辺で推移しているが、前回この水準にあったとき、具体的には2010年3月頃におけるS&P500指数の当時の予想PERはおよそ14.5倍だった。これに対し、現在の予想PERは約16.8倍であり、株価バリュエーションにはまだ調整余地が残されていると考えられる。 加えて、今後の景気後退の進展を踏まえると、アナリストによる業績予想もまだ楽観的と思われ、下方修正が進む余地はまだ残されているだろう。この先、10−12月期決算が発表される2月中旬頃にかけては業績悪化を先取りする動きがさらに出てくる可能性もあり、注意したい。 中国については、ゼロコロナ政策が緩和され、経済再開が進められていて、明るい話も出てきている。しかし、有効性の高い海外製のワクチン接種率が低いこともあり、感染者の拡大は続いている。政府は正式な統計を発表していないが、火葬場に運び込まれる死体の数から死者が急増しているとの指摘もあり、社会的な混乱は続いているようだ。 こうした中、中国では今月1月下旬からは旧正月に当たる春節の時期がはじまる。人の移動が増加することで短期的にはさらに感染者が拡大する可能性が高く、最悪の場合、製造業のサプライチェーンの混乱などを通じて実体経済の落ち込みなども懸念される。 今後、集団免疫が獲得されて感染者数もピークアウトしていくことで、3月頃からは中国経済は回復していくとも予想されているが、短期的には、中国経済は1月下旬から2月上旬にかけて最悪期が来ると予想される。上述してきたように、米国と中国の動向を理由に、株式市場は2月中旬にかけて下値を模索する展開になると予想している。それまでは打診買いにとどめ、本格的な押し目買いはこの時期まで待った方がよいと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/06 12:21
後場の投資戦略
景気後退・金融引き締め長期化の悪い組み合わせが重荷
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25804.12;+87.26TOPIX;1867.21;-0.94[後場の投資戦略] 日経平均は反発しているものの、下向きの5日移動平均線すらも回復できておらず、25日線からの下方乖離率は5.5%と依然として大幅な水準だ。自律反発の域を出ておらず、心理的な節目の26000円も回復できていない現状では、騰勢の弱さは否めない。また、為替の円高進行が一服し、前日の東京時間と比べて1円程度、円安に傾いている支援要因があった上でのこの上昇幅であることを踏まえると、軟弱さが鮮明だ。 前日に発表された12月ISM製造業景気指数は48.4と景況感の拡大と縮小の境界値である50を2カ月連続で割り込み、前回11月(49.0)よりも悪化、市場予想(48.5)も小幅に下回った。項目別では、新規受注が45.2と11月(47.2)から大きく悪化。また、生産や新規輸出など多くの項目で50割れとなり、景気後退に対する懸念を強める内容となった。 一方で、米労働省が発表した11月雇用動態調査(JOLTS)では、求人件数が1046万件と市場予想を40万件ほど上回り、前回10月分も上方修正された。依然として労働市場の需給が非常にタイトで、賃金上昇圧力が強く残り、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを継続していくとの方針を裏付ける内容だったといえる。 加えて、昨年12月に開催されたFOMC議事録が公表された。参加者の大半が景気後退リスクよりもインフレリスクをより強く警戒していることが示されたほか、2023年内の利下げを予想する参加者は一人もいなかったもようだ。また、正当な理由なき時期尚早の利下げへの転換には危険が伴うことを改めて指摘しており、今年後半に0.25ポイントの利下げを2回程織り込む市場に対してけん制する内容となった。 さらに、前日は米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が、当面の政策金利の到達点として5.4%まで引き上げるべきなどと発言した。今の政策金利の誘導目標レンジは4.25−4.5%であるため、これは0.25ポイントの利上げがあと4回分実施されることを意味する。12月FOMCの際に公表された政策金利見通し(ドットチャート)での予測中央値は5.1%であるため、同氏の見解はかなりタカ派だ。 一方で、前日に発表された欧州連合(EU)圏の12月消費者物価指数(CPI)はEU基準で前年比+6.7%と11月(+7.1%)から大きく減速し、市場予想(+7.3%)も大幅に下回った。予想外の暖冬などを背景に天然ガスの在庫水準が高いまま推移し、エネルギー価格が大きく下落していることなどが主な要因のようだ。米12月ISM製造業景気指数の項目で価格が39.4(11月:43.0)、入荷遅延は45.1(同:47.2)と、それぞれ50を大幅に下回っていることもあり、モノのインフレに限って言えば、収束を通り越して足元ではデフレーションに向かいそうな勢いともいえる。 ただ、逼迫した米労働市場が継続していることなどから、サービス分野のインフレは根強いことが予想され、上述したように、FRBの姿勢転換も容易ではなさそうだ。年は明けたが、当面は金融引き締め長期化と過剰な引き締めが景気後退を招き得るとの警戒感が株価の上値を抑える、昨年同様の展開が続くこととなりそうだ。 こうした中、年末年始の先物手口では興味深い動きが確認された。ゴールドマン・サックス証券(GS)は12月29日に約2100枚、30日に約1800枚、1月4日に約6700枚とそれぞれTOPIX先物を大きく売り越していた(日中立ち会いのみ)。グローバルマクロ系のファンドなどによる、年明け以降の世界景気後退を織り込む動きと推察される。GSの手口は一度大きく傾くとなかなか反転しない傾向があり、相場の方向感を左右する影響力もあると思われ、今後の動向には要注意だ。 なお、今晩は米12月ADP雇用リポート、明晩は米12月雇用統計が発表される。労働市場の逼迫が改めて確認されれば、株式市場は再び下値模索の展開となる可能性があることに留意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/05 12:20
後場の投資戦略
26000円割れも一段安に注意
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25724.66;-369.84TOPIX;1872.43;-19.28[後場の投資戦略] 年明け、大発会を迎えた日経平均は大幅下落でスタート。心理的な節目の26000円を大きく下回り、下向きの5日移動平均線からも下放れている。10月3日の安値25621.96円はかろうじて割り込まずに推移しているが、12月20日の急落以降に形成してきた保ち合いを下放れており、トレンドは一段と悪化している。 引き続き世界経済の景気後退に対する警戒感が相場の上値を抑えている。米国ではスマートフォン大手のアップルや電気自動車のテスラの株価が大幅に下落していて投資家心理を悪化させている。アップルは「iPhone(アイフォーン)」の供給混乱を巡る懸念に加えて、需要鈍化を受けて同社が複数のサプライヤーに対し、一部製品の部品生産を減らすよう指示したなどと一部メディアで報じられていることが嫌気された。テスラは、2022年10−12月の世界納車台数が、値下げなどのインセンティブ提供を実施した中でも市場予想を下振れたことがネガティブに捉えられた。 日本株については為替の円高も重荷となっている。昨日の米国時間においては一時1ドル=120円台を付ける場面も見られた。日本銀行の次期総裁の最有力候補として元日銀副総裁の山口広秀氏を指摘する報道があり、「他の候補者よりもタカ派的な選択肢だ」とする声も聞かれる。米国経済の景気後退懸念に加えて、日銀のさらなる政策修正への思惑が日米の実質金利差の縮小を想起させているようだ。 米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋の円のポジションは昨年12月27日時点で約3万8000枚の売り越しとなっている。一時10万枚を超えていた売り越し幅からは大分買い戻されたが、依然として売り越しの状態にあり、今後のさらなる買い戻しやその後の買い越しへの余地を踏まえると、一段の円高進行はなお懸念される。自動車など輸送用機器だけでなく、電子部品などハイテク関連も含めて日本上場企業には円高がデメリットとなる企業が多い。 円高については、海外投資家から見ればドル建て日経平均のパフォーマンス改善につながるとの見方もある。しかし、昨年は記録的な円安進行による日本企業の業績改善が、世界株に対する日本株の相対的な底堅さに寄与していたことを踏まえれば、世界景気の後退懸念に加えて為替リスクも加わった日本株のパフォーマンスはむしろ相対的に厳しいものとなる可能性があろう。 年明けのアジア市況では、中国でのゼロコロナ政策の緩和を好感し、上海総合指数や香港ハンセン指数が3、4日と続伸している。しかし、一方で12月31日に中国国家統計局が発表した12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.0と11月(48.0)から悪化、市場予想(47.8)も下振れた。また、非製造業PMIは41.6と11月実績(46.7)及び市場予想(45.0)を大幅に下回った。中国では旧正月に当たる春節入りに伴い、1月下旬から人々の移動がさらに活発化する見込みで、一段の感染拡大を受けたサプライチェーン(供給網)の混乱などのリスクに警戒が必要だ。1−3月期の間に感染がピークアウトし、中国人の間で集団免疫が獲得されることを理由に、今後の中国経済に対する回復を予想する声も多いが、目先は一段の下振れリスクに注意したい。 今晩の米国市場では、米供給管理協会(ISM)による12月製造業景気指数のほか、米労働省による雇用動態調査(JOLTS)や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(12月開催分)の公表が予定されている。米国経済の景気動向と米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の詳細を確認する重要な手掛かりとされ、注目度は高い。結果を受けて一段とリスク回避の動きが強まる可能性もあるだけに、午後の東京市場は様子見ムードが広がりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/04 12:22
後場の投資戦略
2023年のメインシナリオとリスクシナリオ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26168.45;+74.78TOPIX;1900.46;+5.19[後場の投資戦略] 前日のナスダック指数が2%超、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3%超も反発したものの、日経平均は寄り天井で何とも冴えない展開。来年の景気後退が懸念される中、今年は「掉尾の一振」は起こらず、市場の陰鬱なムードが年末最後まで続く形となった。さて、当コンテンツも今年は本日が最後ということで、今日は少し中長期的な視点から、来年、2023年の見通しについてまとめてみたいと思う。メインシナリオとそれが外れた場合のリスクシナリオについて順に説明していく。 まず、今の株式市場が考えているメインシナリオは、来年前半は厳しくても、年後半は明るい展望が描けるのではないかというものだ。具体的には、年前半は、各国中央銀行による金融引き締めの継続や世界経済の景気後退に伴い、企業業績の悪化を通じて株価が下値模索になるという予想。一方、年半ば頃から、具体的には全国人民代表大会が開催される3月以降には、中国での新型コロナ感染も沈静化し、ゼロコロナ政策のさらなる緩和と景気対策により、中国経済が本格回復に向かうことが予想されている。 また、米国経済も、年後半には、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ沈静化と景気後退を理由に利下げに転じることで、景気が底入れしていくことが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場からは見て取れる。つまり、スタグフレーション(インフレと景気後退の併存)色が強まる欧州は一年を通じて厳しいものの、米中2大国の景気が年央から底入れすることで、株式市場も上昇に転じていくというシナリオだ。 これに対してリスクシナリオとしては、インフレが想定以上に長期化して、各国中央銀行による金融引き締めも長期化、市場が現在予想している来年後半のFRBの利下げ転換も実現されず、景気も底入れするどころか、むしろ一段と悪化していくというものだ。それでは、このリスクシナリオの前提となっている、インフレが想定以上に長期化する可能性について説明していきたい。 米国ではすでにモノのインフレは沈静化して、残る問題はサービス分野のインフレのみと言われている。しかし、そのサービス分野のインフレを左右する労働市場の逼迫は続いたままで、収束する兆しがまだ見られていない。この労働市場の逼迫の背景としては低い労働参加率が指摘されている。コロナ禍当初は感染を恐れて一時的に働くことをやめている人、学校が休校のために育児で休業を強いられている人のほか、大規模な財政政策に支えられ当面働かなくても食べていけるために仕事に就いていない人たちなどが多くいた。これが低い労働参加率に繋がっているとされ、あくまで一時的な要因として考えられていた。 しかし、新型コロナの感染が収まり、財政政策によって一時蓄えられた貯金が消費され尽くしてからも、労働参加率は低いままである。こうした事態を受けて、どうやら本当の理由はもっと構造的なものなのではないかということが指摘されるようになってきた。そこで、いま指摘されているのが、従来から言われているコロナを契機に早期退職した人たちに加え、コロナによって亡くなった人の数と移民の不足だ。具体的には、米国ではコロナ感染により100万人以上の人が亡くなったが、そのうち半分の50万人は労働者だったと言われている。また、コロナ以降、移民の数が減少していて、レモンド米商務長官は移民が100万人足りないと言及しているという。 つまり、これまで一時的と考えられていた低い労働参加率は実はもっと構造的なもので、時間が解決するといった単純なものではないのではないかということが懸念されてきている。また、来年は年半ば頃から中国経済が回復に向かう可能性があると先述したが、世界経済の要である中国経済が回復するとなれば、エネルギーや非鉄金属などの資源価格が再び高騰する可能性があり、すでに沈静化したとされているモノのインフレまでもが再び問題に発展する可能性がある。 話しをまとめると、米国での労働市場の構造的な需給逼迫によりサービス分野のインフレが長期化する可能性があること、また、中国経済の回復により、すでに沈静化したとされているモノのインフレも再燃する可能性があること、これらが実際に起こった場合には、いま市場が期待しているようなFRBの利下げは当然期待できないし、景気減速下で高水準の金利が据え置かれることで景気も底入れするどころか、景気後退がより深刻に、より長期化する可能性すらあるということになる。これがリスクシナリオの全貌であり、この場合、株価は年後半も下値模索の展開を強いられることになるだろう。 もっとも、暗い事ばかり言っていては、株式投資は始まらない。夜明け前が最も暗いとも言われ、誰もが買いたくないような時こそ買い場であったということもよくある話だ。全体相場観については、個人的には夜明けにはまだ時間がかかると見ているが、個別で言えば、景気動向と連動性の低い内需系グロース株などはすでに中長期目線で買い場が訪れていると考える。2023年、年明けは米国でISM製造業・サービス業景気指数や米連邦公開市場委員会(FOMC議事録)(12月開催分)、雇用統計など重要イベントが目白押しだ。スケジュール的にも目先は強気になりにくいだろうが、年末特有の節税対策の損出し売りなども一巡したこともあり、リオープン・インバウンド関連などの手堅いところと合わせて内需系グロース株などを一考してもよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/30 12:19
後場の投資戦略
26000円割れも買いたい意欲は湧き上がらず・・・
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25998.76;-341.74TOPIX;1889.52;-19.50[後場の投資戦略] 日経平均は大幅続落で心理的な節目の26000円も割り込んでいる。米株式市場では、電気自動車のテスラや大型IT「GAFAM」の一角であるアップル、アマゾン・ドットコムなどが年初来安値を更新しており、アルファベットも11月に付けた年初来安値にほぼ並んでいる。年末休暇に入っている投資家が多く、市場参加者が少ないとはいえ、株式市場の軟弱さがあまりに際立つ。 前日の先物手口では、薄商いながら、JPモルガン証券が日経225先物を差し引き1000枚、TOPIX先物では1500枚とそれぞれ売り越していた(日中立ち会いのみ)。来年の景気後退を織り込む形で、投資家は粛々とリスク資産の持ち高を圧縮しているようだ。 また、米長期金利の上昇が続いており、米10年債利回りは28日、3.88%まで上昇してきた。景気後退を反映する形で期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が低下してきていることもあり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた10年物実質金利は1.6%と、直近の安値1.06%(12月2日)から大きく上昇してきている。これが株価の下押し圧力として効いているようだ。 米株式市場については、株価収益率(PER)がコロナ禍で上昇した分をすべて吐き出したことから、バリュエーション調整は済んだと考える向きもいる。しかし、当コンテンツではチャートをお見せできず申し訳ないが、2000年以降の動向を振り返ると、米長期金利の現在の水準を考慮すると、バリュエーション調整はまだ十分とはいえない。また、S&P500種株価指数の構成企業を対象とした予想配当利回りと米長期金利の対比でみたイールドスプレッドの観点からみても、やはりバリュエーション調整にはまだ余地が残されているとみえる。 アナリストの12カ月予想一株当たり利益(EPS)も下方修正されてきているが、まだ織り込みが不十分にもみえる。中国の経済再開など明るい材料も出てきてはいるが、株式市場が本格回復を辿るにはまだ時間がかかりそうだ。こうした中、引き続き、インバウンド需要の回復で今後の業績インパクトが期待できそうなリオープン・インバウンド関連などに投資対象を絞りたい。一方、米実質金利が上昇するなかでのグロース株投資には勇気が必要だが、今年の8月から10月にかけて米実質金利が大幅上昇した際にも株価が上昇したグロース株は意外にも多く存在する。同期間に堅調な株価推移を見せた銘柄には固有の成長力が秘められていると推察され、こうしたグロース株を長期目線で仕込むのも良いだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/29 12:18
後場の投資戦略
景気後退とインフレの板挟み脱却には時間がかかろう
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26290.96;-156.91TOPIX;1904.73;-5.42[後場の投資戦略] 前日堅調な値動きだった日経平均は一転して本日は再び値幅を伴った下落で軟調な展開となっている。前日+2.2%と大幅に上昇したマザーズ指数も本日は反落、朝方は下落率も大きかった。マザーズ指数は前日に一時200日移動平均線を超えたものの、その後伸び悩んだ。直後の本日の下落とあって、同線が上値抵抗線として意識されてしまい、チャートでは嫌な形となっている。 物色動向を見ていても市場の陰鬱なムードが伝わってくる。前日は中国での新型コロナ規制の緩和を好感し、インバウンド関連株が賑わっていたが、ハイテクや自動車などの輸送用機器を中心に景気敏感株は全般軟調だった。本日も、半導体関連などハイテクは続落しており、また、為替はむしろ円安に傾いているものの、自動車関連でも続落している銘柄が多い。 さらに、本日は米ナスダック指数の下落もあり、グロース株までもが冴えない。12月に入って一時3.4%台前半にまで低下していた米10年債利回りが27日、3.85%まで上昇、再び4%台乗せが視野に入ってきたことがグロース株の軟調さにつながっていると考えられる。 この金利上昇の背景としては、米国でくすぶるサービス分野のインフレや、それに伴う米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続方針が一つ大きな要因としてあろう。ただ、その他にも、多方面の市況解説や調査レポートによると、中国での経済再開の動きが資源価格の高騰を通じて世界のインフレを再燃させる可能性も指摘されている。27日の中国政府による入国者への隔離措置の撤廃を受けて、前日の債券市場で米長期金利が大きく上昇した背景には、こうした中国発のインフレ懸念もあるという指摘だ。 28日付けの日本経済新聞朝刊の一面記事「世界景気『悪化』4割迫る」によると、国内主要企業145社の社長(会長などを含む)を対象に12月2−16日に実施したアンケートでは、世界景気の現状認識は「悪化」「緩やかに悪化」の合計が36.5%と9月時点調査(31.1%)から約5ポイント増加した。また、悪化と答えた経営者に要因(複数回答)を聞いたところ、「資源や原材料価格の上昇・高止まり」が69.8%で最多になったという。 以上の話をまとめると、話しはやや複雑だ。つまり、景気後退懸念が強まる中、中国経済の正常化は本来歓迎すべきことだが、インフレ再燃を通じて企業コストの高止まりないしは増加、また各国中央銀行による金融引き締めの長期化の可能性が高くなるということで、中国経済の再開には大きな副作用が伴うということになる。株式市場は景気後退懸念とインフレ懸念の板挟み状態にあるということだ。 こうした懸念を払拭するには時間がかかると思われ、株式市場が底入れして本格的な上昇トレンドを描くまでには我慢の時間を長く強いられそうだ。当面は引き続き国内経済の回復の恩恵を享受できるリオープン・インバウンド関連や、高配当のディフェンシブ銘柄などに相対的な妙味があると考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/28 12:12
後場の投資戦略
中国のコロナ規制緩和も強気に転じ切れない投資家心理
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26543.47;+137.60TOPIX;1914.40;+11.88[後場の投資戦略] 海外市場が休場の中にもかかわらず、日経平均はしっかり続伸し、26500円を回復してきている。中国でのゼロコロナ政策の緩和が大きな支援要因になったもようだ。一方、先週までの大幅下落を踏まえれば、戻りとしてはまだ動きが弱く、買い戻しの機運が強いとはいえない。 中国のコロナ規制緩和についても手放しでは喜べない。有効性の高いワクチンの接種率が低い中国では、規制緩和の代償として感染者が拡大しており、医療機関の需給が逼迫しているほか、各地の薬局で在庫不足が発生、学校の休校が相次ぐなど社会的な混乱が起きている。暗いトンネルの出口に向けた動きを歓迎しつつも、まだ予断を許さないだろう。東京市場が休場の間の31日には中国国家統計局がまとめる製造業・非製造業の購買担当者景気指数(PMI)が、1月2日には民間版の財新製造業PMIがそれぞれ発表される。数字としては低調な結果が予想され、年明けの東京市場への影響などにも注意しておきたい。 また、中国発の明るいニュースでインバウンド関連銘柄が賑わっている中、主力のハイテク株などは冴えないものが多い。自動車関連も為替の円高進行が一服しているにもかかわらず、本日は下落しているものが多い。こうした辺りに、強気に転じ切れていない慎重な投資家心理が透けて見える。世界経済の景気後退に対する懸念を完全に織り込み切ったというにはまだ早く、今後も慎重なスタンスで臨みたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/27 12:28
後場の投資戦略
更なる下落シナリオは現実味を帯びている?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26369.77;+134.52TOPIX;1900.06;+2.12[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、プラス圏での堅調もみ合い展開が続いている。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はやや買いが先行。先週の大幅な下落に対する自律反発といったところで寄り付き後に上げ幅を3桁に広げた。ただ、26日は米国のほか主要な株式市場がクリスマスの振替で休場となることから、海外勢のフローは限られ薄商いになると見込まれている。 一方、新興市場では軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、マザーズ指数が軟調もみ合い展開に、東証グロース市場Core指数は前週末終値付近まで下げ幅を縮小して、プラス圏に浮上する場面も見られた。年末特有の個人投資家の損出し売りもすでに一巡してきたと推察され、需給面での重荷は大分和らいでいる。ただ、米長期金利は上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株は手掛けにくい展開が続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.35%安、東証グロース市場Core指数が0.09%安。 さて、前週は世界的に様々なリスクが散見されるなか、日銀金融政策決定会合は想定外のネガティブサプライズとなった。前週はこの話題で持ちきりだったため、詳細は前週の当欄を見てほしいため詳細な解説は控える。ここで注目しておきたいことは、従来の月曜日当欄で述べてきたように市場が動揺する材料がいきなり飛び込んできた事実である。 引き続き、雇用統計やインフレ指標、FRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。上記材料の中で、今後市場にとってネガティブな材料が出てくる可能性もあろう。また、何度も言うように、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTX破綻と似たことが、株式市場でもいきなり起きる可能性は0ではない。 FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は、11月の総合指数が前年同月比で1年強ぶりの低い伸びとなった。ただ、パウエル議長率いるFRBにとって、賃金は急ペースでの上昇が続いている。利上げサイクルの終盤に近づいているものの、物価上昇圧力が持続的な減速トレンドになるまで、金利は長期にわたり高水準に据え置かれる見通しとなっている。 前週の記事で恐縮だが、22日には「米モルガン・スタンレーやJPモルガンなどの有力ストラテジストは、来年上期に株はまたも下落すると警戒感を示す。」とブルームバーグが報じている。経済成長の鈍化や高インフレが企業利益に影響を及ぼすだけでなく、中央銀行がタカ派姿勢を維持していることが背景となる。弱気派として知られるモルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、「来年1-3月期にS&P500はさらに最大21%落ち込む可能性もある。」と示唆している。 また、電気自動車(EV)メーカー米テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は株式市場で「集団パニック」が起きるリスクがあると警鐘を鳴らしている。マスク氏はポッドキャストで、景気後退が間近で2009年のような規模の景気悪化になるとの自らの見解をあらためて示したようだ。「下降相場では、かなり極端なことが起こり得る」と主張したうえで、「不安定な株式市場で証拠金負債を持たないようにアドバイスしたい。」と語ったとブルームバーグで報じている。 筆者や多くの市場関係者が従来から警戒するように、来年初めにかけて更に下落するというシナリオが現実味を帯びてきたといっても過言ではない。本日は海外勢の多くがすでにクリスマス休暇などに入って全体的に商いが薄く、年末ということもあり今年最終週となる今週にさらに大きく動くことは考えにくい。筆者は、今週の動きを注視しつつも、来年どのように株式市場が推移していくかじっくり考える時間としたい。さて、後場の日経平均はもみ合い展開が続くか。年末で取引参加者の減少が続くなか、日経平均がプラス圏を維持できるかに注目しておきたい。
<AK>
2022/12/26 12:25
後場の投資戦略
個人の買い支え期待も次第に薄れる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26210.69;-297.18TOPIX;1895.30;-12.87[後場の投資戦略] 米国株の大幅下落を受けて、週末の東京市場は売り優勢。日経平均は大幅に下落し、心理的な節目の26000円が一時視野に入った。また、日本銀行のサプライズ政策修正を機に、新興株の崩れ方が悪化しており、本日もマザーズ指数は大幅安。日経平均に続き、マザーズ指数も週足だけでなく日足でも主要な移動平均線をすべて下回ってきている。新興株については、新規株式公開(IPO)ラッシュによる需給面の重荷という特殊要因があるが、それを差し引いても厳しい地合いだ。 IPO銘柄も、初値は公開価格を上回るものが多いが、その後の株価推移は苦戦を強いられているものが多い。地合いが悪化している中、IPO当選者は早々に換金売りを実行しているようだ。また、連日の日経平均の大幅下落が個人投資家の含み損益を悪化させ、新興株の下落に拍車をかけているもよう。日経レバETF<1570>の純資産や信用買い残の水準を見ると、どちらも10月下旬以来の高水準となっている。下落局面で押し目買いをしている個人投資家の多くが、連日の日経平均の下落で痛みを強いられている。 一方、海外投資家はクリスマス休暇入りしているところが多いだろうが、先物手口の動向をみると、日銀のサプライズ政策修正があった20日から連日で海外勢の売り越しが観測されている。特にゴールドマン・サックス(GS)は22日まで3日連続でTOPIX先物を大きく売り越している。 これまで、海外勢が売り越す局面では、個人投資家の買い越しや企業の自社株買いが下支えする構図が見られていた。しかし、足元では、個人投資家の買い越し余力も限られてきた様子。今後、個人投資家の手仕舞い売りが膨らんだ場合には、下落に拍車がかかる恐れもある。日経平均の26000円処での踏ん張りに期待したいところだが、目先は慎重に臨んだ方がよさそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/23 12:11
後場の投資戦略
追加政策変更や一段の円高への警戒から上値重い
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26492.66;+104.94TOPIX;1903.74;+10.42[後場の投資戦略] 前日の米主要株価指数は揃って大幅に続伸したが、本日の日経平均は寄り天井の形で伸び悩んでいる。米国では警戒されていたナイキとフェデックスの決算が想定程には悪くなかったことで安心感が台頭。消費者信頼感指数が予想以上に改善した一方、期待インフレ率が低下したことも投資家心理の回復につながったもよう。 一方、日本株の上値は重い。日銀金融政策決定会合の後に急速に進んだ円高・ドル安は、1ドル=130円台を維持する形で一服しているが、今後のさらなる政策変更への思惑が強まる中、一段の円高進行への警戒感が日本株の上値を抑えている可能性が高い。すでに輸出企業の平均想定為替レートである1ドル=134−135円を割り込んでいるため、一段の円高は外需企業の業績悪化懸念を強めることになる。 また、米国市場の引け後に発表された半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーの決算は市場予想を下回り、時間外取引で同社株価は軟調に推移している。最高経営責任者(CEO)は会見で、業界の需給バランスは直近13年で最悪の状態にあると指摘。通期の設備投資計画を70億−75億ドルと、従来目標の最大120億ドルから下方修正した。同社の設備投資計画は四半期決算の度に下方修正される傾向にあり、業界の先行きは依然として厳しい様子。在庫については、2023年半ばごろまでに健全な水準に移行し、下期には同社売上高も改善するとの見通しを示しているが、東京市場の関連企業の株価反応を見ても、あく抜け感は高まっていないようだ。 日経平均は本日を含め、5日連続での陰線となっており、下値模索の展開が続いている。一方、25日移動平均線からの下方乖離率は5%近くにまで達しており、突っ込み警戒感は強い。目先の自律反発に期待したいところだが、米国株の大幅続伸という追い風がある中での今日の弱い動きを見る限り、むしろ、一段の下落には注意したいところだ。すでに日足と週足ともに、主要移動平均線のすべてを下抜けてしまっており、サポートになりそうな水準が見当たらない点も懸念される。 こうした中、日本政府観光局(JNTO)が21日に発表した11月の訪日外国人旅行者数が93万4500人と、10月(49万8600人)から2倍近く増加したことが伝わっている。新型コロナ感染拡大前の2019年の同月と比べると6割を超える水準にまで回復してきている。為替の円高進行が懸念される中、以前ほどには円安メリットが強調されることはなくなってきたが、主要各国との物価上昇率の差なども考慮すれば、依然として日本のモノ・サービスに対する割安感は強い。今後も持続的なインバウンド需要の回復が期待され、外部環境の不透明感が強まる中、リオープン・インバウンド関連の銘柄に引き続き焦点を当てたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/22 12:21
後場の投資戦略
日経平均は5日続落、景気と為替の両面からダブルパンチ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26508.73;-59.30TOPIX;1905.39;-0.20[後場の投資戦略] 前日の日銀金融政策決定会合は想定外のネガティブサプライズとなった。日経平均は下値支持線とみられた200日移動平均線を大幅に下抜け、ドル円も200日線を下抜けた。一方、本日の日経平均は短期的な戻りを狙った押し目買いや突っ込み警戒感からの買い戻しで、一時プラス圏に浮上するなど底堅い展開となっている。 しかし、200日線を下抜けたことで下方向に弾みがついたドル円は今後さらに下落(ドル安・円高)する可能性が高い。この場合、海外投資家から見たドル建ての日経平均のパフォーマンスが改善する一方、輸出企業の円安メリットの剥落がこれを相殺する形が考えられる。輸出企業の想定為替レートの平均値は1ドル=134円台とされており、足元のドル円がこれを大幅に下回り、今後120円台への突入も予想される中、円高進行は指数ベースでみれば全体的にややネガティブと捉えられる。 今回の日銀の政策決定はこれまでの黒田総裁の発言内容からみて整合性があるとは言いにくく、唐突な印象が強い。今回、長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度へと拡大させた一方、金利の急上昇を防ぐために、長期国債の購入額を従来の毎月7.3兆円から毎月9兆円程度へと増額した。黒田総裁も緩和的な政策を引き締め方向に転じる意味を持つものではないとした。しかし、政策レジームの変更を見込んで金利の上昇を予想し、日本国債を売っていた海外投資家からすれば、今回の一件は実質的に「日銀に勝った」とも言える出来事で、味を占めてしまったと言える。今後も仕掛け的な国債売りを続けていくことが予想され、来年4月から新体制を迎える日銀の政策動向への影響が懸念される。 米商品先物取引委員会(CFTC)が公表しているデータによると、投機筋の円ポジションは12月13日時点で、ネットで5万3188枚の売り越し。一時10万枚を超えていた売り越しからは半減しているが、依然として円売りポジションは大きい。今後、円買いに傾ける余地が多分に残されているといえ、投機筋による仕掛け的な売りでドル円が120円台へと突入する可能性もあろう。輸出企業にとっては今後の世界景気の減速に加えてのダブルパンチとなる。一方、今年前半に資源価格の高騰と歴史的な円安進行により打撃を受けていた内需企業にとってはコスト高圧力の緩和につながる。外部環境の不透明感が強まる中、ディフェンシブ性の高さからも内需企業は選好されやすいため、追い風が吹いてきた内需企業に今後はさらに注目していきたい。(仲村幸浩)
<NH>
2022/12/21 12:15
後場の投資戦略
200日線が下支えも下放れ懸念が拭えない
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27315.54;+77.90TOPIX;1943.21;+7.80[後場の投資戦略] 前日の米株式市場はハイテク株を中心に下落し、主要株価指数は4日続落となったが、本日の日経平均は反発し、底堅い展開となっている。前日も大きく下落したものの、200日移動平均線が下値支持線としてしっかり機能し、本日も同線がサポートしている。 一方、景気減速のスピードが加速してきている中、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が必要以上に金融引き締めを長期化し、過度な景気後退につながりかねないとの懸念は根強い。米国株が下値模索の展開となれば、日本株も無傷ではいられないだろう。 こうした中、懸念要素は景気や企業業績といったファンダメンタルズだけでなく、需給面でもある。先週、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのクロスアセットストラテジストが、S&P500種株価指数が15日に3895.75で引けた中、同指数が3933を下回って推移を続けた場合、商品投資顧問業者(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドが売りに転じる可能性が高いと指摘していた。実際、13日の一時200日移動平均線超えをピークに、綺麗に再び下落基調に転じているS&P500は、週明けも下落が続いている。 先週の間に、各国中央銀行の金融政策イベントを終え、海外では機関投資家が徐々にクリスマス休暇に入り始めている。実需筋の売買が減少することで株式市場の流動性は低下し、薄商いでボラティリティーが高くなりやすい中、CTAなど短期筋の売りが膨らめば、米国株の下値模索の展開は十分に考えられる。 今晩は物流大手フェデックス、スポーツアパレルブランドのナイキの決算が予定されている。フェデックスは9月に、世界的な輸送需要の低下を背景に収益見通しを下方修正し、景気後退懸念を強めた経緯がある。ナイキは供給網のひっ迫による商品納入の遅延を要因に、在庫が積み上がり、値引き販売を強いられる形で粗利益率の悪化が懸念されている。これら企業の決算は相当程度警戒されているとはいえ、内容が悪ければ、来年の景気後退を織り込む動きが売りを促し、そこにCTAの売りが加わることで下落が加速する展開も想定され、注意したい。 昼頃には日銀金融政策決定会合の結果公表がある。緩和政策の現状維持はほぼ確実だろうが、来年4月からの総裁交代を前に、政策変更に対する思惑は根強い。黒田東彦総裁の記者会見で発言のニュアンスに微妙な変化があるかなども注目されよう。日本株の米国株に対する相対パフォーマンスは為替動向と連動性が高いため、これら結果を受けた後の為替も注視する必要があろう。ドル円はちょうど25日線と200日線の間に挟まれたレンジ推移となっており、イベント後に25日線を上放れる、もしくは200日線を下放れた場合には、トレンドが出る可能性もありそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/20 12:16
後場の投資戦略
連日の米株安受けて軟調な展開続く
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27221.29;-305.83TOPIX;1937.10;-13.11[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比190円安の27280円。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均は売りが先行。FOMCの結果発表以降に米国株の下げが続いていることは、個人投資家心理の悪化に繋がった。本日の下落により日経平均は75日移動平均線を明確に下回ってきたため、センチメントの悪化を警戒した様子見ムードも強まりやすいとの指摘が一部市場関係者からは聞かれている。 一方、新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、マザーズ指数が軟調もみ合い展開に、東証グロース市場Core指数は下げ幅を縮小した。長期金利の低下自体は株式の支援要因と考えられるが、全面的なリスクオフの地合いとなっており新興株も厳しい地合いが続いている。そのほか、本日東証グロース市場に新規上場したトリドリ<9337>は買い気配が続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.94%安、東証グロース市場Core指数が0.21%安。 さて、前週の当欄でも述べたが直近で多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始め、買いのチャンスをうかがっている印象を受ける。具体的には、日経平均株価は米国経済失速懸念で来年前半に調整する場面があるが、その後は好調な内需や業績の回復期待、大統領選挙の前年というところもあり上値を試すと予想している。また、CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は「リセッションに向かっているが、それは来年の2つの話のうちの半分で後半は株式市場が回復する可能性が高い」と指摘している。 複数の世界最大級ファンドが年内に合わせて最大1000億ドル(約13兆6700億円)相当の株式を売る見通しとも、ブルームバーグで報じられている。株式相場は10-12月(第4四半期)ではプラス圏を維持しているため、他の資産クラスと比べた株式のバリューが高まっており、資産配分ルールに厳密に従う運用者は目標を満たすため株売りを余儀なくされる。つまり、資産配分の長期目標を満たすため、株式を売り債券保有増やす可能性があるようだ。 前述の売り材料には注視しておきたいが、相場はすでに底入れしている可能性も示唆した。ブルームバーグでは、ルーソルド・グループの最高投資ストラテジストであるジム・ポールセン氏が「底入れしており、新たな強気相場が始まりつつあると思う」と発言したことを報じている。行き過ぎた悲観論、はポジティブなサプライズの扉を開くと予想し、米金融政策や利上げの影響に投資家は集中し過ぎており景気は減速していると付け加えたようだ。現在の株式相場は弱い状況にあるが、筆者はこのような回復シナリオも想定して相場を見守っている。 ただ、筆者も多くの市場関係者と同様に、更なる下落シナリオを念頭に置いている。引き続き、雇用統計やインフレ指標、FRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。いまだに世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、軟調な展開が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/12/19 12:17
後場の投資戦略
景気減速下での高金利継続シナリオが重荷
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27620.66;-431.04TOPIX;1959.39;-14.51[後場の投資戦略] 日経平均は大幅に下落し、心理的な節目の28000円や25日移動平均線を明確に下放れた。一方、27500円や75日線、26週線、13週線が下値支持帯として意識され、下げ渋る動きも見せている。しかし、米S&P500種株価指数は13日の一時200日超えをピークに、綺麗に再び下落基調にあり、テクニカル面では今後も売りが続く可能性が高い。米国株が下値模索の展開となった場合、日経平均も上記のサポート水準を下抜ける可能性があろう。日経平均27300−27500円のレンジには日足、週足の主要移動平均線が集中しているため、ここを下抜けてしまうと、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが膨らむ可能性があり、注意したい。 15日、欧州中央銀行(ECB)も米連邦準備制度理事会(FRB)に続き、0.5ptへと幅を縮小した上で追加利上げを決定した。ただ、ラガルド総裁はインフレの水準は依然高すぎるとし、沈静化に向けて同様の利上げがしばらく続くと投資家に警告。今回の利上げ幅の縮小を「ECBの政策転換だと考えるのは誤りだ」とタカ派な姿勢を強調した。 一方、米11月小売売上高は前月比−0.6%と市場予想(−0.2%)を大幅に下回り、10月(+1.3%)から大幅に減速。自動車とガソリンを除いた基準でも−0.2%と市場予想(+0.0%)と10月(+0.8%)を大きく下回った。また、米11月鉱工業生産も前月比−0.2%と市場予想(+0.0%)を下振れた。さらに、企業のセンチメントを示すニューヨーク連銀製造業景気指数は−11.2と予想(−1.0)を大幅に下振れ、フィラデルフィア連銀景況指数も−13.8と予想(−10.0)を下振れた。 インフレは既に伸び率ではピークアウトしているものの、水準としては依然として各国中央銀行の目標を大幅に上回っている。世界的な金融引き締めが長期化する公算が大きくなっている一方で、経済指標には減速の兆しが見られはじめていて、今後は来年前半にかけて、景気後退・企業業績悪化を織り込む動きが加速していきそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/16 12:21
後場の投資戦略
FOMCショックはないが時間差でじわじわ来る?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28081.55;-74.66TOPIX;1975.13;-2.29[後場の投資戦略] 前日の米株式市場は上昇推移が続いていたが、総じてタカ派な米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見を受けて、一気に下落に転じた。注目された政策金利見通し(ドットチャート)では、2023年末の政策金利中央値が前回9月時点の4.6%から5.1%へと引き上げられ、24年末の中央値は4.1%とされた。 FOMCの直前にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込んでいた政策金利水準は来年5月頃をピークに4.8%程度で、23年末では4.3%程度となっていた。来年後半には0.25ptの利下げが2回行われると予想していたと考えられ、今回、FRBが示した見通しと大きな乖離がある。また、ドットチャートが示す23年末の政策金利中央値5.1%は事前の予想を上回っているが、さらに、5.4%以上を望むメンバーが7人もいたことから、FRBのタカ派姿勢の鮮明化は著しいといえる。 パウエル議長の会見内容も全体的にタカ派的だった。今回の0.5ptの利上げにより、政策金利の誘導目標レンジは4.25−4.50%へと引き上げられたにもかかわらず、パウエル議長は「いまだ十分に景気抑制的な政策スタンスではない」としたほか、「インフレを目標の2%に戻すことに強くコミットする」、「インフレが2%に向かうとの確信が持てるまでは利下げは有り得ない」などと発言し、市場の利下げ期待をけん制した。 一方で、今回のFOMCを受けても、FF金利先物市場が織り込む金利水準は前日からほとんど変化していない。前日の米国市場での10年債利回りは一時急上昇した後に戻して、結局むしろ低下した。市場は依然として来年後半に利下げが行われると考えているようだ。 13日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)では、食品・エネルギーを除いたコア指数が前年比+6.0%にまで低下してきた。しかし、パウエル議長が主張するように、FRBがこの先、インフレが2%にまで低下することに自信が持てるまで利下げに転じないとすれば、来年は景気が減速する中での利上げの継続、そして高水準の金利据え置きが行われることになり、必要以上に引き締めすぎるオーバーキルのリスクが高まると考えられる。来年後半の利下げを信じ続けている市場はまだこのリスクを十分に織り込み切れていないだろう。 株価は一株当たり利益(EPS)と株価バリュエーション、市場の期待値ともされる株価収益率(PER)で決まる。来年は予想通りであれば、3月、早ければ2月には利上げが停止となるため、金利上昇を通じた株価バリュエーションへの下押し圧力はなくなるが、景気後退懸念が強まる中、今後はEPSの低下圧力が株価を下押ししていくと考えられる。 すでにアナリストによる米国企業の業績予想は来年4−6月期にかけて下方修正が進んでいるが、S&P500種株価指数を構成する企業から算出される株価バリュエーションのPERは過去の水準からみて依然として割高感が否めないため、さらなる株価下落余地はあると考えられる。 今晩は米国で重要指標が多く発表される。年末商戦での駆け込み需要から米11月小売売上高は堅調が予想されるものの、NY連銀とフィラデルフィア連銀が公表する製造業景気指数など企業のセンチメントを表す指数は低調が予想され、結果次第では、年末にかけて来年の景気後退を織り込む動きが加速するかもしれない。投資対象としては、引き続きディフェンシブセクターやリオープン関連などを選好したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/15 12:15
後場の投資戦略
「FRBに逆らうな」に従うならば・・・
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28141.41;+186.56TOPIX;1974.79;+9.11[後場の投資戦略] 日経平均は徐々に上値を伸ばす展開で、心理的な節目の28000円を優に回復。12月2日に割り込んだ25日移動平均線上への復帰も果たしている。一時75日線割れとなった8日に長い下ヒゲを伸ばしてからは、チャートの形状が大きく改善してきている。 前日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除いたコア指数で前年同月比+6.0%と市場予想(+6.1%)を下回り、10月(+6.3%)から減速。モメンタムを示す前月比でも+0.2%となり、市場予想(+0.3%)と10月(+0.3%)から減速した。また、エネルギー価格の下落を要因に、総合では前年同月比+7.1%と10月(+7.7%)から大きく減速、市場予想(+7.3%)も下回った。 インフレ減速期待が高まる中、米金利は全般低下しており、株式市場への影響力の大きい米10年債利回りは3.51%(−0.1pt)まで低下した。一方、日米の株式市場での好反応は控え目となっている。日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に、さすがに買い上がる向きは限定的のようだ。 今回のFOMCでは四半期に一度の政策金利見通しや経済成長見通しが公表される予定だが、ブルームバーグ通信などは、見通しは米CPI発表前に既にまとめられている可能性が高いとしている。これまでの各連銀総裁の一連の発言からしても、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は9月時点の4.6%から5%をやや超える水準にまで引き上げられる可能性が高いとみる。 一方、米CPIの2カ月連続での予想以上の減速を受けて、市場でのインフレ・金利引き上げのピークアウト観測はさらに強まっており、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは来年5月前後を目安に4.85%まで低下している。また、来年末の政策金利水準の織り込みは4.17%まで低下してきた。ここから、市場は来年後半に0.25ptの利下げが2回以上行われると予想していると解釈できる。 米CPIの明確な減速傾向は歓迎すべきことではある。しかし、改めて8月のジャクソンホール会合以降のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の主張を振り返ると、ウィリアム・ミラー議長時代の早期利下げ転換によるインフレ再発に対する警戒感を完全には解いていないとみられる。このため、来年2−3回の利下げを織り込んでいる市場はやや先走っている印象が否めない。明日公表される政策金利見通し(ドットチャート)で高水準の金利が長く据え置かれることが示され、さらに、パウエル議長の会見で利下げ転換は時期尚早とのスタンスが再表明された場合のリスクには注意が必要だろう。 株式市場の焦点もすでにインフレや金利動向そのものよりも、高水準の金利が長く据え置かれた場合にもたらされる実体経済へのダメージに移っている。米CPIの明確な減速傾向は確かに明るい材料だが、インフレのモメンタムが減速しても水準は依然としてFRBの目標より非常に高い状況だ。市場が常に先読みして動くことは道理ではあるが、FRBが利上げ幅の縮小からさらにもう一歩踏み込んで利上げ停止の明確な時期を示唆するなどスタンスをもう一段ハト派化しない限りは、株式市場が本格的に戻り基調に復帰するには時期尚早だと考える。筆者が過度に弱気派なだけかもしれないが、今一度、市場の格言として有名な「FRBに逆らうな」の意味を再考したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/14 12:17
後場の投資戦略
引き続き物色の選別が重要
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27946.09;+103.76TOPIX;1967.48;+10.15[後場の投資戦略] 今晩の米11月消費者物価指数(CPI)の発表や、日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、東京市場は様子見ムードが広がっている。前日の米株式市場では買い戻しが活発化し、主要株価指数が揃って大幅反発したのに比べて、東京市場は上値の重い展開で、日経平均と東証株価指数(TOPIX)はともに25日移動平均線前後の水準で動意に乏しい。 今晩のCPIが予想を下回れば、インフレ減速期待は強まり、米株式市場ではFOMC前にさらに買い戻しが強まりそうだが、日本株は本日のように膠着感の強い展開が続きそうだ。理由は為替動向だ。CPIの下振れを受けて米長期金利が低下した場合、為替は再び円高・ドル安方向に振れる可能性が高い。日本株の米国株に対する相対パフォーマンスは為替との連動性が高いため、円高が進行した場合、輸出企業の採算改善期待が後退する形で日本株の上値は重くなるだろう。本日は自動車関連の株価などは堅調だが、指数の米国相対比での上値の重さにはこうした背景があるのかもしれない。 また、インフレ減速期待が高まっても、直後のFOMCにおいて利下げ転換には程遠いなどと米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンスが再強調されれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)への警戒感が強まり、来期の業績下振れリスクを織り込む動きが加速する可能性もある。このケースでも、世界の景気敏感株と称される日本株には厳しい展開が予想される。 今回のCPIとFOMC後の株価反応を予想するのは非常に困難だが、事前の織り込み度合いからは、過度に楽観にも悲観にも傾いていない印象だ。イベント通過後のあく抜けに期待する声も聞かれるが、年明け以降の明るいニュースが見えてこない中、株価上昇の持続性にも疑問符が付く。世界が怯える景気後退リスクに加えて為替リスクが加わる日本株の先行きに楽観視は禁物だろう。引き続き景気や為替の動向と連動性の低い、内需系ディフェンシブやリオープン関連、内需系グロースなどのセクター・テーマへの投資に徹するべきと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/13 12:17
後場の投資戦略
今週はインフレ指標の結果やパウエル氏の発言に注目
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27821.12;-79.89TOPIX;1958.91;-2.65[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はやや売りが先行。先週でメジャーSQは通過したものの、13日に発表される米11月CPIへの警戒感も高まるなか、ひとまずは先週末の上昇に対する反動安が意識されやすいところとなっている。 一方、新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、じりじりと下げ幅を縮小する展開となっている。米国でインフレ鎮静化への期待がやや後退したことは、国内の個人投資家心理にもネガティブに働いている。また、13日に米11月消費者物価指数(CPI)、14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見などを控えて、様子見ムードも広がっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.30%安、東証グロース市場Core指数が0.60%安。 さて、11月の米卸売物価指数は前年比、前月比ともに上昇率が市場予想を若干上回った。11月米PPIは前月比0.3%上昇、前年比7.4%上昇で10月の8.1%から鈍化している。サービス価格が前月比0.4%上昇と全体の上昇の大半を占め、財(モノ)の価格は0.1%上昇となり、食品価格が3.3%上昇した一方、エネルギー価格が3.3%下落した。根強いインフレ圧力が再度浮き彫りとなり、投資家心理にネガティブに働いている。 明日13日には米11月消費者物価指数(CPI)が発表される。食品・エネルギーを除いたコアCPIでは前月比+0.3%と10月から横ばいが予想されているが、前年同月比では+6.1%と10月(+6.3%)から減速する見込みだ。総合指数は前年同月比7.3%上昇(前月7.7%上昇)の見込み。前回のように市場予想を下回る伸びとなれば、インフレ減速期待を高めることになり投資家心理を下支えする展開となろう。 ただ、米11月PPIのように予想を上振れると地合いは悪化しそうだ。財のコア・インフレが落ち着きつつある中、注目はサービス分野の価格の伸びに移りつつあるという。住宅分野はいずれ方向を転じると予想されており、インフレの最終的な軌道は賃金が鍵を握るとみられている。これらの分野の数値にもしっかりと注目しておきたい。 14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見なども重要。FOMCは0.5ポイントの利上げを決めると広く予想されているため、投資家はパウエル議長の記者会見での発言に注目している。ブルームバーグでは、「FOMCの米経済見通しと金利予測の変化の有無も焦点。」と報じている。 毎週月曜日の当欄では、来年に大きな下落を想定して相場を見守っていることを都度発信していた。ただ、直近で多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始め、買いのチャンスをうかがっている印象を受ける。株式市場は予想が傾きすぎると、大方の予想に反して動くため、筆者は相場の展望を再考している。前週では「タックスロス・セリング」を例に挙げて、12月中旬から年末にかけて大きな下落を見せる可能性を示唆した。あまり現実的ではないが、このような動きをする可能性も頭の片隅に置いている。 一方で、相場はすでに底入れしている可能性もあるという。ブルームバーグでは、ルーソルド・グループの最高投資ストラテジストであるジム・ポールセン氏が「底入れしており、新たな強気相場が始まりつつあると思う」と発言したことを報じている。行き過ぎた悲観論、はポジティブなサプライズの扉を開くと予想し、米金融政策や利上げの影響に投資家は集中し過ぎており景気は減速していると付け加えたようだ。また、別の記事で「金融引き締め策は新型コロナ禍で膨張した資産バブルの縮小に大きな効果を発揮している。」と報じた上で、「現在の資産デフレは、FRB議長らが求める経済のソフトランディング実現に寄与する可能性がある」と示唆している。このような視点も持って相場を見守っていきたい。 今後の株式市場の動向を予想するうえで、現段階ではやはり米11月CPIやFOMCの結果公表、パウエル議長の記者会見に最大の注目をしておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、上値の重い展開が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/12/12 12:26
後場の投資戦略
SQ値上回るも本番は今晩から
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27946.21;+371.78TOPIX;1964.30;+22.80[後場の投資戦略] 日経平均は大幅反発し、再び75日移動平均線上に復帰。前日は27500円を割り込む場面もあったが、本日は心理的な節目の28000円を窺う位置にまで戻してきている。SQ値も大きく上回る水準で前場を終えている。直近の売られ過ぎ感から前日の米株式市場でハイテク・グロース株が買い戻されたことが、東京市場にも好影響を及ぼしているようだ。ただ、イベント前のポジション調整的な域を出ていないといえ、今後の動向は今晩からの海外市場睨みとなろう。 今晩は米11月卸売物価指数(PPI)のほか、12月ミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比で+0.2%と10月(+0.0%)から加速する見込みだが、前年比では+5.9%と10月(+6.7%)から大きく減速する見込みとなっている。予想通りとなれば、インフレ減速・利上げペース減速への期待が高まり、相場の支援要因となろう。 12月ミシガン大学消費者信頼感指数での1年先期待インフレ率は4.9%と11月(4.9%)から横ばい、5−10年先長期期待インフレ率も3.0%と11月(3.0%)から横ばいが予想されている。期待インフレ率は、消費者心理への影響が大きいガソリン価格に左右されやすいとされるが、軟調な原油市況を背景にガソリン価格も低水準におさまっているため、期待インフレ率が予想よりも低下すれば、長期金利のさらなる低下を通じて相場を下支えしそうだ。 一方で、前日の当欄での主張の繰り返しになるが、年内最後のビッグイベントとなる13−14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではまだリスクが残る。政策金利見通し(ドットチャート)が公表される予定だが、現在のフェデラルファンド(FF)金利先物市場はターミナルレート(政策金利の最終到達点)として5%を下回る水準までしか織り込んでいないうえに、来年半ば以降の利下げ転換まで予想している。しかし、5%を大きく上回るターミナルレートが示される可能性は十分にある。また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、これまで明らかにしているように利上げの累積効果を見極めるために利上げペースの減速が適切との見解は繰り返し主張するだろうが、インフレ沈静化のために利上げ停止は時期尚早との主張も同時に再表明する可能性がある。 利下げ転換まで織り込んでいる市場はやや先走り過ぎている印象が否めない。また、今後、米国経済の景気後退が不可避とされ、予想一株当たり利益(EPS)の低下が予想されている中、足元のS&P500種株価指数を構成する企業から成る予想株価収益率(PER)はヒストリカルで見て割安感に乏しく、むしろ割高感すらある。日本株についてはバリュエーションの割高感はないが、3月期本決算企業の上半期決算を終え、輸出企業の想定ドル円レートの平均値が1ドル=138円とされる中、今後の円高リスクも想定すると、割安感だけでは投資妙味に乏しいだろう。 これも日々、当コンテンツ内で繰り返している主張になるが、金利や景気、為替などの動向に不透明感が強い中、これらファクターに左右されやすい企業の投資妙味は乏しいと考えられる。強いて言えば、景気後退懸念で長期金利の上昇圧力が抑えられる中、金利動向に左右されやすいグロース株のうち、内需系セクターの銘柄には投資妙味があるといえる。 その他では、やはり不透明感の強い外部ファクターの影響がもっとも小さいと思われるリオープン関連が望ましいだろう。中国でのコロナ規制がさらに緩和されない限り、インバウンド需要の本格回復は見込みにくいが、中国を除いたインバウンド需要は非常に速いペースで回復している。また、全国旅行支援の延長が決まっている中、国内の旅行需要の旺盛さも続くことが予想される。ホテルや旅行予約サイト、鉄道などの関連株には物色余地がまだあると考えたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/09 12:22