後場の投資戦略
堅調だが上値追いは慎重に
配信日時:2023/06/29 12:22
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;33348.49;+154.50TOPIX;2299.22;+0.62
[後場の投資戦略]
日経平均は前日の後場から力強い展開となり早々に33000円を回復。本日も前日の米株高を受けて値幅を伴って続伸している。前日は権利付き最終売買日だったため、権利取りを狙った売買が活発したもよう。また、3月末に権利確定した配当金の支払いも概ね一巡してきたとみられ、配当金を受け取った投資家の再投資の動きなども支えになったと考えられる。また、日経平均をはじめ日米ともに主要株価指数が25日移動平均線まで下落したことで、テクニカル要因でも押し目買いが入りやすかったとみられる。こうした背景が、四半期末に伴う年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りが意識されるなかでの株式の意外高につながったと思われる。
一方、本日は四半期末にかけての需給悪化を狙って空売りしていた向きが買い戻しを迫られていると想定されるほか、イベントの無難消化による安心感なども株高に寄与していそうだ。前日は欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムにて各国中央銀行の総裁らが討論会に参加した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長ら欧米中銀の総裁らの発言は、金融政策決定会合や先週の米議会証言を通過したばかりということもあり、新味に乏しかった。それでも目先のイベント通過があく抜け感を生んでいると思われる。
ただ、パウエル議長の「食品とエネルギーを除くコアインフレについて2025年まで当局目標の2%に戻ることはない」とした発言は金融引き締め長期化を示唆しており、来年からの利下げ転換を織り込む市場予想との乖離を感じさせた。また、引き続きインフレ抑制を最優先に年内2回の利上げを示唆するFRBに対して、市場は7月会合での追加利上げ1回が最後とみている。この乖離にも変化は見られておらず、今後このギャップがどう解消されるかについて先行きに不透明感を残す形となった。
ほか、ECBフォーラムで注目されたのは日本銀行の植田和男総裁の発言だ。植田総裁は「2024年に入ってもインフレ2%以上の伸びが実体化するとの確信が持てれば、政策を変更する良い理由になる」と述べた。一方で、「日本ではいまのところは基調的なインフレが2%を下回っている」とし、金融緩和継続の正当性を主張。これが改めて日本と世界との間の金融政策のスタンス、政策金利の差を意識させ、為替の円安基調を強めている。これも一つ足元の日本株高に寄与しているといえそうだ。
さらに、28日の米株式市場の取引終了後に発表した半導体メモリーチップ製造大手のマイクロン・テクノロジーの決算も足元の株高に一役買っている。同社の最高経営責任者(CEO)は「メモリー業界の売上高は底入れしたとみている」「業界の需給バランスが徐々に回復するにつれ利益率も改善すると予想している」などと説明。在庫調整が着実に進展していること、6-8月(第4四半期)についても堅調な見通しを示した。同社の株価は時間外取引で3%上昇し、本日の東京市場での半導体株高に寄与している、
ただ、まず為替の円安についてだが、最近は財務省など当局の要人から円安をけん制する発言が増えており、円安に対する警戒感は日を追うごとに高まっている。また、足元では政府のガソリン代や電気代の上昇を抑える物価抑制策の効果が発現していることに加え、日経平均に代表される歴史的な株高によって円安のマイナス影響が緩和されている。
しかし、今後、物価抑制策の効果が剥落してくれば、徐々に再び円安を否定的に捉える世論が強まってくる可能性がある。そうした事態は、新しい植田日銀総裁を選んだ岸田文雄首相からすれば容認しがたいことで、足元で内閣支持率が低下していることも踏まえれば尚更だろう。今後は岸田政権から日銀や財務省に対して暗黙のプレッシャーがかかることが想定され、この先は金融緩和策の修正が再び意識されてくる場面もあると思われる。
次にマイクロン・テクノロジーの決算についてだが、同社は米政府による対中国の安全保障政策上のリスクについて「見通しに影響を与え、回復を遅らせる大きな逆風だ」と指摘している。また、市況の在庫調整については進展しているものの、年後半から実需が急速に回復することは見込んでいない。最悪期は過ぎても本格的な回復がまだ先となれば、回復を先取りして上昇してきた足元の半導体企業の株価にはバリュエーションの調整リスクがあると考えられる。
6月が終わり、四半期末に伴うリバランスが終わったとしても、7月には日米の金融政策決定会合があり、その前には重要なインフレ・雇用関連の指標も控える。また、さらにその先には日米主力企業の4-6月期決算が控えている。製造業を中心に経済指標の減速が続くなかで欧米中銀の利上げは続いており、こうした影響が今後、時間差を伴って実体経済に表れてくる可能性もある。こうした中、上記イベントを確認・消化する前に、新しい四半期末に入ったからといって早々に再び積極的に株式の持ち高を積み上げてくるとは考えにくいだろう。投資戦略としては、引き続き景気敏感株やハイテク株は避け、景気・為替の影響を受けにくい内需系企業を選好すべきと考える。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;33348.49;+154.50TOPIX;2299.22;+0.62
[後場の投資戦略]
日経平均は前日の後場から力強い展開となり早々に33000円を回復。本日も前日の米株高を受けて値幅を伴って続伸している。前日は権利付き最終売買日だったため、権利取りを狙った売買が活発したもよう。また、3月末に権利確定した配当金の支払いも概ね一巡してきたとみられ、配当金を受け取った投資家の再投資の動きなども支えになったと考えられる。また、日経平均をはじめ日米ともに主要株価指数が25日移動平均線まで下落したことで、テクニカル要因でも押し目買いが入りやすかったとみられる。こうした背景が、四半期末に伴う年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りが意識されるなかでの株式の意外高につながったと思われる。
一方、本日は四半期末にかけての需給悪化を狙って空売りしていた向きが買い戻しを迫られていると想定されるほか、イベントの無難消化による安心感なども株高に寄与していそうだ。前日は欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムにて各国中央銀行の総裁らが討論会に参加した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長ら欧米中銀の総裁らの発言は、金融政策決定会合や先週の米議会証言を通過したばかりということもあり、新味に乏しかった。それでも目先のイベント通過があく抜け感を生んでいると思われる。
ただ、パウエル議長の「食品とエネルギーを除くコアインフレについて2025年まで当局目標の2%に戻ることはない」とした発言は金融引き締め長期化を示唆しており、来年からの利下げ転換を織り込む市場予想との乖離を感じさせた。また、引き続きインフレ抑制を最優先に年内2回の利上げを示唆するFRBに対して、市場は7月会合での追加利上げ1回が最後とみている。この乖離にも変化は見られておらず、今後このギャップがどう解消されるかについて先行きに不透明感を残す形となった。
ほか、ECBフォーラムで注目されたのは日本銀行の植田和男総裁の発言だ。植田総裁は「2024年に入ってもインフレ2%以上の伸びが実体化するとの確信が持てれば、政策を変更する良い理由になる」と述べた。一方で、「日本ではいまのところは基調的なインフレが2%を下回っている」とし、金融緩和継続の正当性を主張。これが改めて日本と世界との間の金融政策のスタンス、政策金利の差を意識させ、為替の円安基調を強めている。これも一つ足元の日本株高に寄与しているといえそうだ。
さらに、28日の米株式市場の取引終了後に発表した半導体メモリーチップ製造大手のマイクロン・テクノロジーの決算も足元の株高に一役買っている。同社の最高経営責任者(CEO)は「メモリー業界の売上高は底入れしたとみている」「業界の需給バランスが徐々に回復するにつれ利益率も改善すると予想している」などと説明。在庫調整が着実に進展していること、6-8月(第4四半期)についても堅調な見通しを示した。同社の株価は時間外取引で3%上昇し、本日の東京市場での半導体株高に寄与している、
ただ、まず為替の円安についてだが、最近は財務省など当局の要人から円安をけん制する発言が増えており、円安に対する警戒感は日を追うごとに高まっている。また、足元では政府のガソリン代や電気代の上昇を抑える物価抑制策の効果が発現していることに加え、日経平均に代表される歴史的な株高によって円安のマイナス影響が緩和されている。
しかし、今後、物価抑制策の効果が剥落してくれば、徐々に再び円安を否定的に捉える世論が強まってくる可能性がある。そうした事態は、新しい植田日銀総裁を選んだ岸田文雄首相からすれば容認しがたいことで、足元で内閣支持率が低下していることも踏まえれば尚更だろう。今後は岸田政権から日銀や財務省に対して暗黙のプレッシャーがかかることが想定され、この先は金融緩和策の修正が再び意識されてくる場面もあると思われる。
次にマイクロン・テクノロジーの決算についてだが、同社は米政府による対中国の安全保障政策上のリスクについて「見通しに影響を与え、回復を遅らせる大きな逆風だ」と指摘している。また、市況の在庫調整については進展しているものの、年後半から実需が急速に回復することは見込んでいない。最悪期は過ぎても本格的な回復がまだ先となれば、回復を先取りして上昇してきた足元の半導体企業の株価にはバリュエーションの調整リスクがあると考えられる。
6月が終わり、四半期末に伴うリバランスが終わったとしても、7月には日米の金融政策決定会合があり、その前には重要なインフレ・雇用関連の指標も控える。また、さらにその先には日米主力企業の4-6月期決算が控えている。製造業を中心に経済指標の減速が続くなかで欧米中銀の利上げは続いており、こうした影響が今後、時間差を伴って実体経済に表れてくる可能性もある。こうした中、上記イベントを確認・消化する前に、新しい四半期末に入ったからといって早々に再び積極的に株式の持ち高を積み上げてくるとは考えにくいだろう。投資戦略としては、引き続き景気敏感株やハイテク株は避け、景気・為替の影響を受けにくい内需系企業を選好すべきと考える。
(仲村幸浩)
<AK>
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