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ランチタイムコメント
日経平均は続伸、パウエル会見と市場反応のギャップから感じること
日経平均は続伸。88.46円高の27804.21円(出来高概算5億8787万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は436.05ドル高(+1.37%)と大幅反発。主要ハイテク企業の決算が警戒された程には悪化せず、投資家心理が改善し、上昇して始まった。議会上院が半導体産業支援法案を可決したことも寄与。その後、連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.75ptの利上げが決定。あく抜け感が台頭したほか、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が消費や雇用の減速を認識し、今後の利上げペースについて慎重な姿勢を示したため、引けにかけて買い戻しに拍車がかかった。ナスダック総合指数は+4.06%だった。日経平均は193.40円高からスタートし、寄り付き直後に28015.68円まで上昇。しかし、そこからはすぐに伸び悩み失速。前場中ごろにはマイナスに転換し、一時27651.99円(63.76円安)まで下げた。ただ、前引けにかけては下げ渋って再びプラスに転じた。 個別では、決算が好感された信越化<4063>とファナック<6954>が買われ、三菱自<7211>とエムスリー<2413>、ビーグリー<3981>はそれぞれ急伸し、揃って東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。中部電力<9502>も好決算を手掛かりに急伸し、東京電力HD<9501>、レノバ<9519>、イーレックス<9517>など電気・ガスセクターが連れ高。原油先物相場の上昇を背景にINPEX<1605>も上昇。ほか、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>、メルカリ<4385>などグロース(成長)株が高い。Sansan<4443>はレーティング格上げ観測で大幅に上昇。 一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、アドバンテスト<6857>、新光電工<6967>、三井ハイテック<6966>などが米ハイテク・グロース株高に乗り切れず下落。Vコマース<2491>、小糸製作所<7276>、サイバー<4751>は決算を受けて急落。ほか、太平洋工業<7250>、カゴメ<2811>、JCRファーマ<4552>なども決算が売り材料視された。 セクターでは電気・ガス、鉱業、サービスが上昇率上位となった一方、保険、医薬品、建設が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体38%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 本日の日経平均は朝方28000円突破後に失速して一時マイナス転換。ここ最近の朝安後に切り返す底堅い動きとは対照的な動きとなっている。直近の株価上昇は、決算シーズン前の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型の短期筋による追随買いが演出したわけだが、日経平均で28000円を超えてまで買い上がる向きは少ないようだ。本日の動きを見る限り、CTAなどは既に買い余力をほとんど残しておらず、むしろ28000円達成を機に利益確定売りに転じている様子。 一方、前場の日経平均はその後プラス圏に再浮上し、依然200日移動平均線上での推移になっているほか、一応上値と下値を切り上げているため、まだ基調が大きく崩れたわけではない。しかし、前日のナスダックを中心とした米ハイテク・グロース株の大幅高に素直に乗り切れないあたり、相場の脆弱性を再認識する形になった。 米株市場も、前日は非常に大幅な上昇となったが、この勢いがこのまま続くとは言い切れない。実際、今年はFOMC直後に上昇しても、翌日以降に下落基調に転じることが度々あったため、市場関係者の間でも、昨晩の米株高を素直に受け止めているものは少ない。 昨日の米国株の上昇自体もいいとこ取りの気がしてならない。パウエルFRB議長は会見で、足元の米経済状況の軟化を認め、利上げペースが鈍化する可能性を示唆した。相場はこれを受けてポジティブに反応したわけだが、パウエル議長は今後のデータ次第では0.75ptの大幅利上げが続くともはっきりと言っている。 また、パウエル議長はインフレ圧力の抑制が最優先課題と強調している。目標の達成を妨げ得るようなリスクが出現した場合には政策を調整するとも言及(利上げ幅拡大?)。そして、米経済が景気後退に陥っているとは考えていないとし、「非常に力強い労働市場」をその証拠に挙げたほか、「需要はなお力強く、経済は年内成長を続ける軌道に依然としてある」とも述べた。 つまり、今後の消費者物価指数(CPI)や雇用統計での平均賃金の伸びなど、データ次第では、下手をしたら先日の欧州中央銀行(ECB)のように利上げ幅拡大のタカ派サプライズが待ち構えている可能性もあるわけだ。次回の9月会合の利上げ幅としては0.25~1.00ptまで幅広く可能性があり、政策動向を巡る不確実性は解消されていないといえる。市場の「景気後退に伴う利上げ鈍化・年内利上げ停止・来年利下げ」というシナリオはあまりに楽観的な印象を拭えず、パウエル議長の会見内容とはギャップを感じる。 ネガティブな要素を無視した足元の株価上昇に持続性があるとは考えにくく、8月に入ってから出てくるCPIや雇用統計のデータ発表が近づくタイミングでは、再び売りが強まってくる可能性に留意したい。 後場の東京市場はもみ合いか。FOMC直後の米株高が持続的なものなのかを見極めたいとの思惑は強く、今晩以降の米国市場を確認するまでは動きづらい展開が続く。また、今晩の米国市場ではアップルとアマゾン・ドット・コムの注目決算も控えている。後場は様子見ムードが広がりやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/28 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小幅反発、FOMC結果とその後の株価動向を推察
日経平均は3日ぶり小幅反発。37.68円高の27692.89円(出来高概算4億3521万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でダウ平均は228.50ドル安(-0.71%)と反落。小売のウォルマートによる業績下方修正を受けて小売セクターが大きく売られ、寄り付き後下落。国際通貨基金(IMF)が成長率見通しを引き下げたことに加え、7月消費者信頼感指数や6月新築住宅販売件数が軒並み予想を下回ったため、成長減速懸念が更なる売り圧力となり、終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-1.86%と3日続落。米株安を受けて日経平均は80.05円安からスタート。一時27525.09円まで下げたが、アルファベットとマイクロソフトの決算が想定程に悪くなかったことで、ナスダック100先物が大きく上昇している中、序盤に切り返すと前場後半にはプラスに転じる展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>の半導体関連株が大幅高。村田製<6981>、TDK<6762>、SMC<6273>などハイテク株も堅調で、三井ハイテック<6966>、新光電工<6967>は大きく上昇。商船三井<9104>、郵船<9101>もしっかり。業績予想を上方修正したタムロン<7740>が急伸し、決算が手掛かりとなった栄研化学<4549>、信越ポリマー<7970>が大幅高。ファイズHD<9325>はアマゾンジャパンの配送拠点増設を手掛かりに急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップとなった。一方、韓国子会社の上場延期に関する思惑が一部で広がり、ダブル・スコープ<6619>が急落。決算発表銘柄ではマキタ<6586>、トプコン<7732>、シマノ<7309>が大きく売られ、東証プライム市場の値下がり率上位に並んだ。ほか、キヤノン<7751>、日東電工<6988>、オムロン<6645>なども決算を受けて売り優勢。 セクターでは陸運、医薬品、海運が上昇率上位となった一方、水産・農林、輸送用機器、パルプ・紙が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体34%、対して値下がり銘柄は60%となっている。 前日の米株式市場の取引時間中、夜間取引の日経平均先物は一時27400円まで下げる場面があったが、本日の日経平均は27600円台と前日終値とほぼ変わらない水準で引き続き底堅い推移。200日移動平均線も依然として割り込んでおらず、同線上での動きは20日以降で6日目となる。同線を下値支持線に変えてきているあたり、テクニカル面では良い兆しを感じさせてくれる動きだ。 注目されたGAFAM決算の第一陣であるアルファベットとマイクロソフトの決算は、売上高と一株当たり利益が揃って市場予想を下回ったものの、下振れ幅が限定的だったため、過度な警戒感が後退する形で、株価は時間外取引で大きく上昇した。これに伴い、ナスダック100先物が堅調に推移していることが東京市場の底堅さの背景になっている。マザーズ先物も心理的な節目の700を超えた状態での推移となり、FOMC前にしてはかなり堅調な印象。 ただ、指数は日経平均だけでなく、東証株価指数(TOPIX)、マザーズ指数まで揃って前日終値とほぼ同水準にある。明日午前3時に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、売り方も買い方もどちらも持ち高を大きく動かしたくないのだろう。明日の結果次第では、様相は一変する可能性もあり、今の底堅さをそのまま素直に受け取るのは難しい。 今回のFOMCでは0.75ptの利上げが8割程の確率でほぼ織り込まれており、事前の高官発言からしても、この予想通りの結果になるだろう。焦点は次の9月会合以降の利上げ幅に対する言及だ。米国での企業の景況感、個人消費者センチメントを巡る経済指標の相次ぐ下振れを受けて、投資家は9月からの利上げ幅の鈍化、来年からの利下げ、早いところでは12月の利上げ打ち止めまでを織り込む動きとなっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が記者会見で、市場の期待通り、利上げ幅の鈍化を示唆すれば、相場はポジティブな反応を示すとみられ、日経平均でいえば、短期的には28500円くらいまでのオーバーシュートはあり得そうだ。一方、足元で資源価格が下落していてインフレピークアウト期待が根強いとはいえ、消費者物価指数(CPI)などの指標結果はピークアウトどころかまだ加速中だ。インフレ対応にあたってかなり後手に回り、一時、政策運営の信頼を失いかけた経緯を踏まえると、FRBは慎重な対応を取ると推察される。 つまるところ、「データ次第で利上げ幅は変化しうる」といったどうにでも解釈できる当たり障りのない言及にとどまると考えている。ただでさえ、後手に回ったインフレ抑制にあたって、早々に利上げ幅の鈍化・打ち止めを示唆したうえ、最終的にやはりインフレ抑制に失敗したなどという最悪の事態は、FRBとしては絶対に避けたいはずだ。そうした背景を踏まえると、自ら政策運営のフリーハンドを無くすような、手枷足枷をはめるような発言をするとは考えにくい。そのため、市場が期待しているような利上げ幅の鈍化といったメッセージを明確に送ることは考えにくいだろう。 となると、今後の相場動向を占う上では現在本格化してきている企業決算ということになる。特に米国では事前の警戒感がかなり高まっていたこともあり、日米ともにこれまでに発表済みの決算については無難なものが多い印象。米国については「想定より底堅い」、日本については「そこまで悪くない、まずまず」といったところか。 しかし、仮に今後もこうした無難な決算が大半を占めた場合に、相場は今のリバウンド基調を維持し続けるだろうか。先日紹介したバンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネージャー調査によると、歴史的にみて機関投資家の現金比率は非常に高い一方、株式の組み入れ比率は非常に低い水準にあることが分かった。しかし、これから欧米諸国が景気後退を迎えようとするなか、思ったほどには悪くない程度の決算を確認したところで、果たして機関投資家が「よし、やっと買える」となるだろうか。せっせと現金化してきたキャッシュをそんな早々に再び買いに投じるだろうか。 国内企業の決算反応をみても、安川電機<6506>、日本電産<6594>、日東電工あたりの反応を見ていると、内容は悪くないものの、株価の反応は冴えない。日東電工については4-6月期実績および上方修正後の通期計画はともに市場予想を上回ったが、本日の株価は下落している。上振れ要因のほとんどが為替の円安だが、円安については既に周知の事実といったところで、むしろ為替効果を除いた実質ベースで伸びていないと評価されないようだ。 このように、今後の株式市場の動向については、足元で強気な見方が徐々に増えてきてはいるが、依然として軟調継続を想定するに値する根拠も多くあるように見受けられる。こうした中、今晩の米国市場ではFOMCの結果だけでなく、スナップチャットやツイッターの決算を受けて警戒感が高まっているメタ・プラットフォームズの決算などもある。足元の日経平均の日足チャートは非常に堅調な形だが、明確に強気に転じるには依然として材料不足ということを認識しておきたい。 後場の東京市場は引き続きもみ合いだろう。今晩のイベントを前に完全に様子見ムードといったところで、持ち高を大きく動かす向きは限られるとみる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/27 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、インフレと金融政策巡る論争、どちらに分があるか
日経平均は小幅続落。17.52円安の27681.73円(出来高概算4億4605万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でダウ平均は90.75ドル高(+0.28%)と反発。6月シカゴ連銀全米活動指数や7月ダラス連銀製造業活動指数が予想を下回り2カ月連続のマイナスに落ち込んだことで、景気後退懸念が強まるなか寄り付き後下落。連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を28日午前3時頃と直前に控えるなか、終日持ち高調整の売り買いが交錯。方向感に欠けるなかダウ平均はプラス圏を維持したが、ハイテク株は主要企業決算の発表を控えた警戒感から売られ、ナスダック総合指数は-0.43%と続落。ダウ平均先物が軟調な中、日経平均は17.05円安からスタート。小売の米ウォルマートが業績予想の下方修正を発表し、時間外取引で売られていたことが影響した。前半は売り優勢が続き、朝方に一時27538.39円まで下げた。ただ、心理的な節目を手前に下げ渋ると、前引けかけては前日終値近くまで戻した。 個別では、郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>が大きく下落。任天堂<7974>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>のグロース(成長)株も冴えない。ほか、オムロン<6645>、テルモ<4543>、ニトリHD<9843>が軟調。日本電産<6594>は決算発表後に4日続落。米国民事訴訟での和解金として特別損失の計上を発表した日本ケミコン<6997>、第1四半期経常利益が2ケタ減となったコーエーテクモ<3635>は大きく下落。 一方、中国アリババグループが香港取引所でのプライマリー上場を申請すると発表したことを受けてソフトバンクG<9984>が大幅高。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働率が低下したことなどを背景に原油先物相場が上昇したことで、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大きく上昇し、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>など資源関連が全般強い動き。米長期金利の上昇を背景に第一生命HD<8750>、三菱UFJ<8306>など金融が堅調で、月次販売動向を手掛かりに神戸物産<3038>が大幅に上昇。好決算や業績予想の上方修正を発表したKOA<6999>、ダブル・スコープ<6619>、インソース<6200>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。 セクターでは海運、その他製品、精密機器が下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体34%、対して値上がり銘柄は60%となっている。 ウォルマートの業績下方修正を背景としたダウ平均先物の軟化を受けて、前場の日経平均は一時150円超下落したが、その後は前日終値近くまで戻し、200日移動平均線線上での底堅い動きを維持している。先週までの短期間での上昇幅や飛び込んできたウォルマートのネガティブな報道から、神経質に反応することを想定していたため、個人的にはかなり底堅い印象を抱く。 一方、28日未明に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表に加え、今晩のアルファベットとマイクロソフトを皮切りに始まるGAFAMの大型テック決算など、今週に集中する注目イベントを前に持ち高を大きく動かしたくない表れとも捉えられる。 実際、日経平均は13日から先週末まで7日続伸し、この間の上げ幅は1500円を超えたが、東証プライム市場の売買代金は一度も3兆円を超える日がなく、2兆円台半ば前後にとどまっていた。前日にいたっては、かろうじて2兆円台に乗せる程度で商いはかなり薄く、本日も前引け時点での売買代金は1兆1000億円程度だ。溜まっているエネルギーが各種イベント通過後に大きく動きだす可能性を考慮すると、今週後半の相場のボラティリティーは大きくなりそうだ。 一方、気掛かりなのは米国の景況感の悪化ペースだ。2~3カ月程前から経済指標の下振れが目立ち始めたが、足元では悪化ペースが加速している。直近の指標を確認すると、まず7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-12.3と予想(+1.5)を大幅に下回った。下振れは4カ月連続で下振れ幅も拡大傾向にある。6月、7月分にいたっては2カ月連続で予想のプラスに反してのマイナスだった。その前に発表されていた7月NY連銀製造業景気指数は+11.1と予想(-2)を上回ったが、6カ月先の景況指数は前月から20pt余りも低下し、-6.2と急低下した。 さらに、米国の製造業・サービス業合わせた7月総合購買担当者指数(PMI)速報値は前月比4.8pt低下の47.5だった。拡大と縮小の境界値である50を約2年ぶりに下回り、新型コロナパンデミックの発生直後である2020年5月以来の低水準となった。前日に発表された6月シカゴ連銀全米活動指数、7月ダラス連銀製造業活動指数も予想を下回って2カ月連続のマイナスに落ち込んでおり、経済指標の悪化ペースや下振れ傾向が強まっている印象が否めない。 こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースを巡っての市場関係者の見方が分かれている。モルガン・スタンレーのストラテジストは景気後退懸念が強まるなかでも、FRBが金融引き締めをやめると想定するのは時期尚早だと指摘している一方、JPモルガン・チェースのストラテジストはインフレがピークに達したとの見方から、FRBは政策転換に踏み切り、株式市場の状況も今年後半には改善すると分析している。 さらに、市場では、早ければ今年12月には利上げが打ち止められるとの期待まで織り込まれつつあるようだ。しかし、筆者としては、JPモルガンの今年後半における市場環境の改善には一部賛同しつつも、12月の利上げ打ち止めはさすがに時期尚早で、個人的にはモルガン・スタンレー側の見方に近い考えだ。 今週末に発表される米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータは前年比+4.7%が予想されているが、これはFRBの目標である+2.0%を依然として大幅に上回っている。仮に目標値を3%に引き上げたとしても、乖離幅はやはり大きい。物価指標の伸びはピークアウトしつつあるとはいえ、FRBが、インフレが目標値を上回っているなか利上げ停止を示唆するとは考えにくい。 雇用統計での平均賃金の伸びは最新6月分時点でもまだ前年比+5.1%と高い水準にある。12月時点で利上げ打ち止めに踏み切れるほどに、ここから大幅な物価指標の伸びの減速が期待できるとは考えにくく、FRBの目標値までインフレが低下するにはかなり時間がかかると推察される。 足元では日米ともに株価指数の底入れ期待が強まりつつ。実際、今週の大型イベントをすべて無難に通過できるのであれば、こうした見方はより一層強まるのだろう。しかし、インフレとFRBの金融政策を巡るやや楽観に傾いた見方は、来月の物価指標が発表されるタイミングなど、どこかで再び修正を迫られる可能性があると意識しておきたい。 後場の日経平均は前日終値を挟んだもみ合いが続きそうだ。アジア市況は堅調だが、ウォルマートの業績下方修正を受けた今晩の米株市場の反応を確認したいほか、スナップチャットやツイッターの決算を機に警戒感が高まっている、明日未明に発表予定のアルファベットの決算を見極めたいとの思惑が強く、積極的な売買は手控えられよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/26 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は8日ぶり反落、イベント前に利食い売り及びリスク回避の売り広がる
日経平均は8日ぶり反落。203.94円安の27710.72円(出来高概算4億4018万株)で前場の取引を終えている。 前週末22日の米株式市場のNYダウは137.61ドル安(-0.43%)と反落。主要ハイテク企業の先陣をきって写真・動画共有アプリのスナップ(SNAP)が発表した四半期決算がデジタル広告需要の低迷で売上高が予想を下回る低調な結果となったためハイテクセクターが売られ相場全体を押し下げ、下落に転じた。さらに、7月製造業・サービス業総合のPMI速報値が予想外に2年ぶり活動縮小を示し景気後退懸念がさらなる売り圧力となり、主要株式指数は下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は大幅反落、軟調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前日比216.89円安からスタート。その後は、軟調もみ合い展開となった。 個別では、エーザイ<4523>、信越化<4063>、リクルートHD<6098>、日本電産<6594>などが軟調。トヨタ自<7203>やキーエンス<6861>なども下落、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などのハイテク株も冴えない動きが続いている。前週末大幅に上昇していたサーバーワークス<4434>が利食い売り優勢から値下がり率トップに、材料価格低下で上方修正も出尽くし感が優勢となっている東製鉄<5423>が大幅に下落、ギフティ<4449>なども大きく下落している。ほか、ラクーンHD<3031>や、イオンファンタジー<4343>、イーソル<4420>が値下がり率上位に顔を出した。 一方、レノバ<9519>が大幅高、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株が上昇している。引き続き豪州アントンパール社の株式大量取得を手掛かりとしてオーバル<7727>が大きく上昇、2024年から国内で初めて中古EVの電池査定を開始すると報じられたオークネット<3964>、サル痘予防に天然痘ワクチン活用へとの報道を材料視された明治HD<2269>なども上昇した。ほか、トレファク<3093>、ソラスト<6197>、ジェイリース<7187>が値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは電気機器、機械、鉄鋼が下落率上位となった一方、陸運、電気・ガス、食料品が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の29%、対して値下がり銘柄は66%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後朝方に下げ幅を縮小した。その後は、アジア市況が冴えない展開となったことを横目に軟調もみ合い展開に、前引けにかけては下げ幅をやや広げた。前週末に米ハイテク株安となったことが個人投資家心理にネガティブに働き、東京市場では前週に大幅に上昇した分の利食い売りが優勢となっている。ただ、テクニカル面では、200日移動平均線付近より上方に位置しており、調整の範囲内として捉えられよう。 新興市場も本日は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数も、下落してスタートしたあと軟調もみ合い展開となっている。日経平均よりもやや値幅を伴った下落となっている。新興市場でも前週に大幅に上昇した分の利食い売りが優勢。また、26~27日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。大型イベントを控えるなかバリュエーション面での割高感が意識されやすい東証グロース市場の中小型株はリスク回避の売りも重なっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.11%安、東証マザーズ指数が1.88%安となった。 さて、米国では26~27日にFOMCが開催、26日にマイクロソフト、アルファベット、27日にメタ・プラットフォームズ、28日にアップル、アマゾンなど大型テック企業の決算を控えている。先週決算を発表したネットフリックスやテスラは市場予想を上回る決算で株価は大きく上昇している。FOMCを無難に通過し、GAFAMの決算が堅調に推移していることが確認されると、個人投資家心理にポジティブに働くだろう。 CME FedWatch Toolでは、FF金利を1.00%利上げするとの見方が21.3%まで減少している。市場では0.75ptの利上げが完全に織り込まれており、米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上振れたことで一時1.00ptという超大幅な利上げが警戒されたことから、今回のFOMCでは大きなサプライズは起こりにくいと想定している投資家が多いだろう。 ブルームバーグでは、パウエル議長率いる金融当局はFOMCで2会合連続の0.75ポイント利上げを決めた後、金利引き上げのペースを落とす公算が大きいとみているようだ。ブルームバーグがエコノミスト44人を対象に15−20日に実施した最新調査で、9月20、21両日の会合では利上げ幅を0.5ポイントとし、11月1、2両日および12月13、14両日の年内残りの2会合はいずれも0.25ポイントずつ利上げすると見込まれている。 ただ、今回のパウエル議長の会見などで次回9月会合でも0.75pt以上の利上げに含みを残すような見解が示されると、足元で利上げに対してやや楽観的に傾いてきている分、売りが膨らみそうだ。ひとまず、7月FOMCの動向及びパウエル議長の発言に注視する必要がある。 さて、後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に軟調な展開が続くか。また、大型イベントを控えるなか、リスク回避の売りも重なることを想定しておきたい。テクニカル面では、200日線上方での推移を維持できるか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/25 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は7日続伸、上昇基調一段と強まるが、来週は最大の山場
日経平均は7日続伸。67.33円高の27870.33円(出来高概算4億6068万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は162.06ドル高(+0.50%)と3日続伸。7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数などが予想外に悪化したため、景気減速を懸念した売りが先行。バイデン大統領が新型コロナ検査で陽性症状との報道も一時売りに拍車をかけた。ただ、報道官が会見で大統領の病状が深刻化するリスクは低いと表明したことで安心感が台頭。欧州中央銀行(ECB)は予想外に0.5ptの大幅利上げを行ったものの、これに対する反応も限定的で、予想を上回る企業決算やハイテク株の買い戻しを背景に引けにかけて主要株価指数は上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+1.36%と3日続伸。日経平均は連日の上昇の反動で29.86円安からスタートしたが、すぐに切り返してプラス転換。その後も堅調に上値を伸ばす展開が続き、午前中ごろには27900円を回復。 個別では、キーエンス<6861>が大きく上昇し、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>、富士通<6702>、ルネサス<6723>、SMC<6273>などが高い。カプコン<9697>、バンナムHD<7832>、スクエニHD<9684>などゲーム関連も総じて強い。原油先物価格が下落するなかニトリHD<9843>が大幅高。業績予想を揃って大幅に上方修正した郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>は急伸。事前の観測報道を上回る決算となったオービック<4684>、堅調な決算と合わせて中間配当の増配を発表したディスコ<6146>も買われている。 一方、日本電産<6594>が前日に続き大きく下落。電気代が燃料費転嫁の制度上限に達するとの報道を警戒し、東京電力HD<9501>が大幅安となっており、レノバ<9519>など他の電気・ガスセクターの銘柄も連れ安している。資源価格や米長期金利の下落を受けて、石油資源開発<1662>、大阪チタ<5726>、住友鉱<5713>などの資源関連や、東京海上<8766>、第一生命HD<8750>の保険株が軟調。国内の新型コロナ感染再拡大により、JR東<9020>、JAL<9201>などの旅行関連も安い。OBC<4733>は決算を受けて大きく売られている。 セクターでは海運、その他製品、サービスが上昇率上位となった一方、電気・ガス、空運、保険が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体48%、対して値下がり銘柄は45%となっている。 日経平均は先週から負けなしの7日続伸で、本日は節目の28000円も視野に入るような動きも見られた。今週は総じて強い動きが続いているが、今日も寄り付き直後から切り返すとほぼ一本調子で上げ幅を広げてきている。日足チャートでは、20日の窓アケを伴った急伸から3本連続で陽線を引き、上値と下値を同時に切り上げる「赤三兵」を示現。200日移動平均線上での推移も3日目となり、基調の転換を窺わせるかのようなチャートに見える。 また、特筆すべきは昨日の海外市場からの動き。ECB定例理事会では事前の予想を上回る0.5ptの大幅利上げに踏み切り、タカ派サプライズとなった。足元のグロース(成長)株のリバウンドに水を差すかと思いきや、欧州でも米国でもネガティブな反応は限られ、米国に至ってはナスダックが大幅に3日続伸するなど逆に強い動きを見せた。 来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)やアップル、アマゾン・ドット・コムなどのGAFAMの注目決算などイベントが目白押しだが、これらを直前にしてもなお強い動きを見せているのには目を見張るものがある。むろん、これまで過度に悲観に傾きすぎていたため、決算発表が本格化する前にポジションを中立に戻しておきたいとする機関投資家による買い戻しに過ぎないといった見方も強い。実際、東証プライム市場の売買代金の推移をみると、日経平均が700円以上も上昇した20日ですら売買代金は3兆円に届いていない。その他の上昇している日もほとんどが2兆円台半ばにとどまっており、7日続伸劇、この間の上昇幅などと比して活況とは言い難い。 しかし、本日は写真・動画共有アプリの米スナップチャットが市場予想を下回る失望的な決算を発表し、ソーシャルメディア関連株が時間外取引で軒並み大幅に下落するという事態が発生していた。時間外取引のナスダック100先物も軟調だったにもかかわらず、そうした中でも、今日の東京市場が全般しっかりしているというのは、単なる買い戻しだけではないのかと疑いたくもなる。 来週、GAFAMの決算で同様の失望的な決算が出ると、さすがにムードが一変しかねないが、無難に通過することができた場合には、相場の底打ち感がより強まったという見方が優勢になってきそうだ。 後場の日経平均は堅調もみ合いか。売り方の買い戻しはいつ止んでもおかしくないが、今日前場までの動きを見る限り、到底後場に崩れるとは考えにくい。香港ハンセン指数なども堅調に推移しており、後場は一段高となる可能性もあろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/22 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は小幅反落、200日線挟んだ一進一退で今晩にはECB定例理事会
日経平均は小幅反落。22.73円安の27657.53円(出来高概算4億7287万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は47.79ドル高(+0.15%)と小幅続伸。先週分の住宅ローン需要が22年ぶりの低水準に落ち込んだほか、6月中古住宅販売件数が2年ぶりの低水準となり、景気減速を警戒した売りから寄り付き後下落。イタリアのドラギ首相率いる政権の崩壊リスクが高まったとの報道も投資家心理を悪化させた。一方で旅行関連株の買いやハイテク株の買い戻し継続が支援要因となり、主要株価指数はプラス圏で終了。ナスダック総合指数は+1.57%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は+2.49%と続伸。一方、前日に700円高と急伸していた日経平均は52.38円安からスタート。一時上昇に転じる場面もあったが、短期的な過熱感を冷ます売りが優勢で、もみ合いが継続。それでも、27500円より上での底堅い動きが続いた。 個別では、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>が前日の急伸の反動で下落。任天堂<7974>も安い。三井物産<8031>や伊藤忠<8001>の商社や、野村<8604>、SOMPO<8630>の金融、ホンダ<7267>、日産自<7201>の自動車なども軟調。1対3の株式分割を発表した東京海上<8766>も失速して下落。日本製鉄<5401>やJFE<5411>はレーティング格下げで大きく売られた。日本電産<6594>は市場予想並みの決算だったが、前日にかけて上昇していたこともあり利益確定売りが優勢。塩野義製薬<4507>は新型コロナ治療薬の承認が見送られ、継続審議となったことで失望感から急落。ほか、ベイカレント<6532>が大幅に反落。 一方、川崎汽船<9107>商船三井<9104>など海運が底堅い動き。ダイキン<6367>、ファナック<6954>、TDK<6762>、富士通<6702>などが堅調。メルカリ<4385>、マネーフォワード<3994>、Sansan<4443>などグロース(成長)株が総じて強く、ラクスル<4384>、ギフティ<4449>、メドピア<6095>、サイボウズ<4776>などが東証プライム市場の値上がり率上位に入っている。業績予想を上方修正したフィックスターズ<3687>、インフォマート<2492>は急伸し、値上がり率上位に並んだ。 セクターでは鉄鋼、証券・商品先物、保険が下落率上位となった一方、パルプ・紙、金属製品、精密機器が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体42%、対して値上がり銘柄は52%となっている。 日経平均は前日の急伸直後とあって伸び悩んでいるが、安値でも27500円を割らず底堅い動きを見せている。日足チャートでは、200日移動平均線を挟んだ水準で一進一退となっている。戻り待ちの売りが根強い一方、同線突破後の一段高を期待する買いも入っているようで、売り買い拮抗といった様相だ。 動画配信サービスのネットフリックスに続いて注目されていた電気自動車メーカーのテスラの決算は、調整後の1株利益が予想を上回った。また、上海での生産拡大を明らかにしたことで、同社株価は時間外取引で上昇した。ただ、バリュエーションの割高感が強く、一時大幅に上昇した後は1%高程度に伸び悩んでいる。 ここまでの米国の主要企業の決算を見る限り、事前の想定よりは良好なものが多い印象だ。来週からはアルファベット、マイクロソフト、アップル、アマゾン・ドットコムなどのいわゆるGAFAMと呼ばれる大型テック企業の決算が予定されており、これらの結果次第ではムードが様変わりする恐れもあるが、事前の警戒感が高かった分、ネガティブショックの可能性は低くなっていそうだ。 日本電産の決算も、外部環境の悪化で利益率は悪化したが、ほとんど想定線で、むしろ、E-Axle(イーアスクル)の出荷台数の引き上げなど好材料があったことがポジティブに捉えられる。株価は前日までに上昇していた反動で売り優勢とはなっているが、2%程度の下落で投資家心理を悪化させるほどでもない。 さて、日経平均はテクニカル面では、下向きの200日線を挟んだ一進一退となっており、このまま下落トレンド脱出の初動を辿るのか、それとも下落トレンドが延長されるのか、短期的な勝負所を迎えているといえる。こうした中、今晩には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が予定されている。もともと今会合では0.25ptの利上げがコンセンサスとして予想されていたが、今週に入ってから急遽、事情に詳しい関係者からの情報として、0.5ptの利上げ実施の可能性が台頭してきた。仮に0.5ptの利上げが実施されるとなるとタカ派サプライズとなり、足元の株式市場のリバウンドに水を差すことになる。今晩のECB定例理事会は今週最大の注目イベントといってもよく、後場の東京市場は様子見ムードが広がりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/21 12:07
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日経平均は大幅に5日続伸、悪材料耐性や需給状況から28000円窺う展開か
日経平均は大幅に5日続伸。637.84円高の27599.52円(出来高概算5億3287万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でダウ平均は754.44ドル高(+2.42%)と大幅反発。各企業の予想を上回る好決算を背景に買いが先行。ロシア国営ガス会社がパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州への天然ガスの輸出を再開するとの報道で世界経済への悲観的な見方も後退し、相場の上昇をさらに支援、引けにかけて主要株価指数は一段高となった。ナスダック総合指数は+3.10%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+4.61%となった。米国株高を受けて日経平均は334.27円高からスタート。その後も順調に上値を伸ばす展開が続き、前引け間際に27604.27円(642.59円高)まで上げ幅を広げた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が軒並み急伸。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、SMC<6273>、信越化<4063>など値がさ株も全般強い動き。ベイカレント<6532>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も総じて強い。レーティングを材料にジェイリース<7187>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップに躍り出ている。日立パワーソリューションズと国内陸上風力発電設備の解体工事において解体特許技術の実施許諾契約を締結したベステラ<1433>も急伸し、値上がり率上位にランクイン。ほか、北の達人<2930>、マネックスG<8698>、寿スピリッツ<2222>などが上位に並んでいる。 一方、外資証券のレーティング格下げを受けて7&I-HD<3382>、IHI<7013>が売り優勢。ほか、ダブル・スコープ<6619>、レノバ<9519>などが下落している。 セクターでは精密機器、電気機器、サービスを筆頭に全面高。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の93%、対して値下がり銘柄は5%となっている。 日経平均は久々の大幅高で一気に27500円台を回復してきている。日足チャートでは200日移動平均線が位置する27600円台まで一時戻した格好だ。上げ幅は軽く600円を超えており、非常に強い動きとも言える一方、27500円を回復したことで、水準的には戻り一服感が今まで以上に強まってくる。また、下向きの200日線手前まで上昇したところからも、ここからは一段と戻り待ちの売りが強く出てくることが意識される。この先は、今日から本格化していく日米主要企業の決算次第だろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネジャー調査によると、ポートフォリオに占める株式比率は2008年10月以来の最低水準となった一方、現金の比率は2001年以来の最高水準になったという。また、景気後退を予想する割合は新型コロナ・パンデミックの発生直後である2020年5月以来の最高水準にまで達したという。 完全に総悲観に傾くなか、需給状況は軽く、わずかな好材料をきっかけに大きく上昇しやすい状況といえる。足元で新たに確認された好材料としては、ロシアが天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州へのガス輸出を21日に再開する見通しと伝わったことのほか、警戒されていた動画配信サービスのネットフリックスの決算が想定程は悪くなく、同社株が時間外取引で大きく上昇していることなどだろう。 ただ、ロシアによる揺さぶりがこれで終わったとは到底考えづらい。また、ネットフリックスの決算では、サブスクリプション会員数が97万人の減少と、予想の200万人の減少より小幅にとどまったことが好感されたわけだが、普通に考えて2四半期連続での会員数減少はグロース株として失格の内容だろう。期待値がすでに低い分、今後出てくる決算に対しても同様の反応が想定されるが、決算内容にポジティブな要素は見出しづらい場面が続きそうだ。 需給状況が軽いことや、来週に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)については1.00ptという最悪のシナリオを既にいったん織り込んだ経緯もあり、日経平均については28000円に向かう展開もあるだろう。ただ、そこからのアップサイドにはさすがに材料不足といえ、現在の株価水準からの上昇幅はせいぜい500円程に限られる可能性が高いことを考えると、上値追いには慎重になりたい。 後場の日経平均は堅調か。ナスダック100先物が堅調で、香港ハンセン指数も大幅に上昇しているなか、高値圏で底堅い展開が想定される。一方、本日の引け後に決算を発表する日本電産<6594>や、今晩の米国市場で決算発表予定の米電気自動車テスラの結果を見極めたいとの思惑から、上値追いは限られるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/20 12:07
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日経平均は4日続伸、長期期待インフレ率の低下で買い戻しも懸念要素もちらほら
日経平均は4日続伸。188.90円高の26977.37円(出来高概算4億9691万株)で前場の取引を終えている。 15、18日の米株式市場でダウ平均は658.09ドル高(+2.15%)、215.65ドル安(-0.68%)、ナスダック総合指数は+1.79%、-0.80%だった。15日は銀行のシティグループや管理医療会社のユナイテッドヘルスの好決算のほか、6月小売売上高のプラス転換が寄与。7月ミシガン大消費者信頼感指数の長期期待インフレ率が1年ぶりの低水準となったことで、7月における1.00ptの超大幅利上げ観測が後退したことも投資家心理を改善させた。18日は金融のゴールドマン・サックスや銀行のバンク・オブ・アメリカの好決算を受けて買い先行となったが、7月NAHB住宅市場指数の予想以上の悪化や、スマホ・IT大手アップルの一部新規採用縮小・支出減速が報じられ、引けにかけて売りに転じた。 連休明けの日経平均は215.36円高で27000円を回復してスタートすると、寄り付き直後に失速し、一時先週末終値近くまで水準を切り下げた。ただ、半導体などの一部値がさハイテク・グロース(成長)株に買いが入るなか切り返すと、再び27000円を回復。しかし、その後は再び戻り待ちの売りから同水準を割り込む動きとなり、方向感に欠ける展開となった。 個別では、郵船<9101>や川崎汽船<9107>の海運、INPEX<1605>や石油資源開発<1662>の鉱業関連が大きく上昇。住友鉱<5713>、三井物産<8031>、日本製鉄<5401>など資源関連・市況関連株が全般強い。一方、レーザーテック<6920>やアドバンテスト<6857>の半導体関連、JMDC<4483>、SHIFT<3697>のグロース株も堅調。ファーストリテ<9983>は引き続き好決算を評価する動きで続伸。電気自動車(EV)向け省電力センサーの開発報道を手掛かりにソニーG<6758>が買われた。北の達人<2930>、ベクトル<6058>は決算が好感されて急伸。日本国土開発<1887>は高水準の自社株買いと中期経営計画の発表を手掛かりに大幅上昇。Gunosy<6047>は減益決算ながらもあく抜け感で一時急伸するなど買い優勢。 一方、レノバ<9519>、東京電力HD<9501>など電気・ガス関連が全般軟調。米シージェンの特許有効性審査を巡る不透明感から第一三共<4568>が大きく下落。武田薬<4502>、中外製薬<4519>なども安い。ほか、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>など中小型グロース株の一角が弱い動き。テモナ<3985>、日置電機<6866>、三益半導<8155>、サーバーワークス<4434>、RPAホールディングス<6572>は決算を材料に大幅に下落。サインポスト<3996>は、NTTグループが無人店舗システムの提供を開始すると伝わったことで競争激化が懸念され、急落。 セクターでは鉱業、海運業、非鉄金属が上昇率上位となった一方、医薬品、電気・ガス、その他製品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は39%となっている。 連休明けの日経平均は素直に堅調とは言い難い動きとなっている。度々27000円台に乗せて強さを見せたかと思いきや、乗せた直後には必ず失速してすぐに同水準を割り込む動きを繰り返しており、むしろ、上値の重さが目立つような印象だ。日足チャートでは上値抵抗線だった75日移動平均線を上回ってきており、テクニカル面では需給の好転が意識されやすいものの、6月28日に付けた高値27062.31円には届いておらず、上値切り下げ形状を明確に脱したとは言いにくい。 本日の一部ハイテク・グロース株の堅調さの背景にあるのは、やはり先週末の米7月ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の低下が大きいか。5-10年先期待インフレ率は2.8%と前月の3.1%から1年ぶりの低水準にまで低下した。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った要因の一つがこの期待インフレ率だっただけに、インフレ懸念を和らげる内容で、目先の安心感を誘っていると推察される。 しかし、同調査によると、ガソリン価格の低下を背景に現況指数が57.1へと大きく改善した一方、先行きを示す期待指数は47.3と1980年以来の低水準にまで低下。インフレ・大幅利上げに対する懸念の後退が示唆される一方、景気後退懸念はむしろ強まったと言える内容だった。 また、現況指数の改善に繋がったガソリン価格についても油断はできない。先週末、バイデン米大統領はサウジアラビアでサルマン国王らと会談し、原油の増産を要請した。ただ、今会談では具体的な増産方針は明らかにされておらず、再び原油先物価格が上昇に転じる可能性が残されている。 さらに、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止められているが、この定期検査の期限は21日とされており、供給が再開されるか否かが注目されている。そうした中、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが欧州の買い手数社に対して不可抗力条項を宣言したと伝わっている。 通常、不可抗力条項は自然災害などの予期せぬ事態が発生した場合に宣言されるもので、不可抗力条項を過去にさかのぼって発動するのは異例だという。今回のガスプロムの行動は、ガス供給の制限を継続するシグナルを送っている可能性があるともされており、早くも警戒感が高まっている。 そのほか、米ゴールドマン・サックスやアップルが採用計画の縮小を発表していることも気掛かり。直近、アルファベットやメタ・プラットフォームズなども採用ペースを減速させているほか、マイクロソフトやテスラに至っては人員削減にも乗り出している。これまで堅調とされてきた米国経済を支えてきた労働市場には引き続き黄色信号が灯っているといえよう。 景気後退懸念が強まる一方、インフレ・大幅利上げへの警戒感が後退しているなか、ハイテク・グロース株が相対的に強い足元の物色動向はある意味で合点がいくが、しかし、こちらもリスク要素はある。今晩は動画配信サービスの米ネットフリックスが決算発表を予定している。同社は前回決算の際に会員数の減少を発表。成長期待のはく落により株価が急落し、投資家心理を大いに冷やした。今回も同様に低調な決算となれば、足元で台頭しているグロース株の復調に冷や水を浴びせることになりかねない。 後場の日経平均は上値の重い展開か。米ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の注目度は高かっただけに、前場はイベン通過によるあく抜け感で買い戻しが優勢になったとみられる。しかし、引き続き27000円を明確に上抜けるには材料不足であるほか、買い戻しが一巡してくれば再び売りが優勢になる可能性がある。明日以降の日米注目企業の決算も前に、積極的な買いは手控えられるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/19 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、インフレピークアウト期待の背景とそのリスク
日経平均は3日続伸。154.08円高の26797.47円(出来高概算5億6905万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でダウ平均は142.62ドル安(-0.46%)と5日続落。銀行決算が低調で失望感が広がったほか、6月生産者物価指数(PPI)が予想を上回ったことで7月の1.00ptの利上げ確率が上昇し、警戒感から売りが先行した。また、JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)が複数の深刻な問題があると警告したことも売り材料となった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が市場の1.00ptの利上げ観測は時期尚早との見解を示したことで警戒感が後退し、取引後半はハイテク中心に買戻しが広がった。ナスダック総合指数は+0.03%と小幅ながら4日ぶりの反発。 底堅い米株市場の動きが好感されたほか、好決算を受けて大幅高となったファーストリテ<9983>の上昇にけん引される形で日経平均は92.69円高からスタート。一方、大幅利上げへの警戒感も残るなか、買いは続かず失速すると前場中ごろはマイナス圏で推移。その後前引けにかけては再び上昇に転じ上げ幅を広げるなど方向感に欠ける展開となった。 個別では、SHIFT<3697>やラクス<3923>などグロース(成長)株の一角が大きく上昇。任天堂<7974>、武田薬<4502>、レノバ<9519>など景気に左右されにくい銘柄が堅調。業績予想を上方修正し、増配も発表したファーストリテは急伸し年初来高値を更新。コロナ飲み薬で「BA.5」への効果が確認された塩野義製薬<4507>が買われ、岸田首相による原発再稼働の表明を受けて関西電力<9503>などが買い優勢。Sansan<4443>はサプライズに乏しい見通しながらもガイダンスリスクを通過した安心感から急騰。日本電産<6594>は、4月にCEOに復帰した永守会長の後継者への経営引き継ぎを巡る報道が手掛かりとなり、買われた。シスメックス<6869>は目標株価引き上げを受けて大幅に上昇。 一方、東エレク<8035>など半導体関連株が朝高後に失速し上値の重い展開。台湾積体電路製造(TSMC)は好決算を発表したが、設備投資計画を実質的に下方修正しており、これがネガティブに捉えられているもよう。第1四半期が堅調な決算だったIDOM<7599>は同業の好決算を背景に期待が高まっていたとみられ、通期計画の据え置きで出尽くし感が先行し大きく下落。業績予想を下方修正したセラク<6199>も急落し、揃って東証プライム市場の値下がり率上位に並んでいる。ほか、JMDC<4483>やスノーピーク<7816>などグロース株の一角が大きく下落している。 セクターではその他製品、精密機器、電気・ガスが上昇率上位となった一方、保険、銀行、鉱業が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 前日の米株市場は大きく下げて始まった後にFRBのウォラー理事とセントルイス連銀のブラード総裁の1.00ptの利上げは時期尚早との見解を受けて、大幅利上げへの過度な警戒感が後退する形で、急速に下げ渋った。しかし、ウォラー理事はデータ次第で1.00ptの利上げにオープンな姿勢も見せており、今晩発表される米7月ミシガン大学消費者マインド指数の期待インフレ率や、小売売上高などの結果次第では再び1.00ptの利上げ確率が高まる可能性がある。 一昨日から昨日にかけて発表された米国の消費者物価指数(CPI)とPPIはともに市場予想を大幅に上回った。それでも、相場が大きく下落していないのは、今回の発表分である6月分がピークとの期待が根強いからだろう。実際、エネルギー・穀物などの幅広いコモディティ価格が明確な下落基調を辿っている。CPI6月分の上振れの主要因の一つでもある米国のガソリン価格も、原油先物価格の下落や需要鈍化への思惑から足元で小幅ながら低下に転じてきている。 米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数の項目の一つである入荷遅延は一時拡大と縮小の境界値である50を大幅に上回る80近い水準にあったが、6月分では57と大幅に低下してきた。また、物流網の逼迫で高騰していたコンテナ船運賃についても、北米を結ぶ主要8つのコンテナ航路の運賃を示す総合指数「World Container Index」が明確に下落基調にあり、昨年秋に付けた高値から足元では3割以上も下落している。 こうした背景から、インフレピークアウト期待が根強いのも頷けるところがある。一方で、注意しなければならない点もいつくかある。まず、足元でようやく下落してきている原油先物価格だが、再び上昇に転じる可能性は拭い切れない。「脱炭素」などの機運が高まるなか、石油業界ではここ数年、新規の設備投資が抑えられてきた。また、6月に開催された石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国の主要産油国で構成する「OPECプラス」では増産幅の拡大が決定されたが、供給不足を解消するには“焼け石に水”に過ぎない。 さらに、現状、増産はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の2国に依存しており、他の多くの産油国は生産設備のキャパシティーの問題や政治上の問題から、むしろ、生産計画の未達が目立っている。このため、景気後退による需要鈍化が供給不足を解消するに至らないことがクローズアップされてくれば、原油先物価格が再び上昇する恐れがある。 もう一つは米CPIの構成比で3分の1と最大の割合を占める住居費の動向だ。帰属家賃などで構成されるこの項目は住宅ローン金利や住宅価格に遅れて動く傾向がある。米国では30年物の住宅ローン固定金利が昨年末から今年6月までの間に87%も上昇した。この住宅ローン金利の上昇が効く形で、6月下旬に発表された4月分の指標から、上昇が続いていた米国住宅価格にも減速の兆しが見られはじめた。 しかし、帰属家賃などから構成されるCPIの住居費は住宅価格の指標から約1年程遅れて動く傾向があり、CPIの最大構成項目である住居費が減速するには来年前半まで待つ必要がありそうだ。この間に、ガソリンなどの他の生活必需品の価格が大きく減速をしてくれれば、CPI全体では伸びの鈍化が期待できるが、そうならなければ、遅行性のある住居費の上昇と相まってCPIの高止まりが長期化するリスクがある。 このため、CPIのピークアウト説が実現するには原油先物価格の動向が大きな鍵を握っているといえる。そうした意味では、現在、中東各国を歴訪しているバイデン米大統領のサウジアラビアとの交渉が注目される。また、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止めているが、この定期検査の期限は7月21日とされている。デッドラインを迎える来週のこの日に、仮に供給停止が続けられるとなると、欧州のエネルギー価格の高騰に繋がり、世界的なインフレ懸念の再燃や一層の景気後退懸念に繋がりかねない。 今月26~27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までは神経質な場面が多数あり、インフレピークアウト期待のもとグロース株の買いなどに転じたい気持ちもあるかもしれないが、今はまだ焦る気持ちを抑える場面だと考える。少なくとも、FOMCを通過し、日米主要企業の4-6月期決算が一巡する8月上旬頃までは様子見に徹するのが肝要だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/15 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、米CPI強い結果も買い優勢の展開に
日経平均は続伸。185.43円高の26664.20円(出来高概算4億9572万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場ではNYダウが208.54ドル安と続落。6月消費者物価指数(CPI)が前年比で41年ぶりの高水準に加速したため7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で1.0%利上げ観測も浮上したため売りが先行し、寄り付き後、下落。金利高が重しとなり、終日軟調推移となったが、景気後退観測が強まると、同時に引き締めも想定された程進まないとの見方も広がり長期金利が低下に転じると売り圧力も後退した。ナスダック総合指数も続落、下落スタートも下げ幅を縮小した米株市場を受けて、日経平均は前日比121.45円安からスタート。その後は、買い優勢の展開となりプラス圏に浮上する展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、スクリン<7735>などのハイテク株が大幅高。川崎汽船<9107>や日本郵船<9101>、商船三井<9104>などの海運株も堅調に推移、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>なども上昇した。第1四半期は想定以上の大幅増益決算となったウイングアーク<4432>が急伸。ほか、22年5月期決算を発表して今期も増益見通しとなったサカタのタネ<1377>、23年2月期業績予想を上方修正したトレファク<3093>が大きく上昇した。 一方、東京電力HD<9501>を筆頭に関西電力<9503>や中部電力<9502>など電力株が軟調。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、東京海上<8766>やMS&AD<8725>なども下落している。大幅な業績下方修正や期末無配転落を嫌気されたJINSHD<3046>、先行投資負担による赤字決算をマイナス視されたマネーフォワード<3994>が大きく下落している。ほか、第3四半期決算サプライズ限定的で出尽くし感が優勢のコシダカHD<2157>や、TSI HD<3608>、アステナHD<8095>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは水産・農林、海運、電気機器が上昇率上位となった一方、電気・ガス、保険、銀行が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後下げ幅を縮小して、前場中ごろから買いが広がりプラス圏に浮上した。その後は、アジア市況が軟調に推移したことを横目に、上値の重い展開となった。米6月CPIは強い結果だったが、前日までにある程度織り込んでいたことに加えて、米国株が下落後に値を戻したことで国内の投資家心理の安心材料となった。また、景気後退が意識されて米長期金利が低下し、ナスダックが一時プラス圏に浮上する場面があったこともポジティブに捉えられた可能性がある。テクニカル面では、25日移動平均線付近で売り買いが交錯していることが窺える。 新興市場も前場中ごろから買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数も、下落してスタートしたあとプラス圏に浮上して上げ幅を拡げた。日経平均よりもやや値幅を伴った上昇となっている。こちらもナスダックが一時プラス圏に浮上する場面があったことがグロース(成長)株を中心とする新興市場にとってポジティブに捉えられ、長期金利の低下も追い風となっている。時価総額上位銘柄は強弱まちまちで、個別に材料が出た銘柄に旺盛な物色が向かっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.66%高、東証マザーズ指数が1.49%高となった。 さて、前日に発表された米6月CPIは前年同月比で9.1%上昇と市場予想の8.8%上昇を超え、5月の8.6%上昇から加速し、前年同月比で約40年半ぶりの高い伸びとなった。前月比では1.3%上昇と、こちらも市場予想の1.1%上昇を超えた。ガソリン価格は前月比11.2%上昇、電気や天然ガスを含むエネルギーサービスの価格は3.5%上昇で、やはりガソリン価格の高騰が背景となっている。ただ、食品価格は前月比1%上昇で、5月の前月比1.2%上昇からやや鈍化している。 前日の米株式市場や本日の日経平均の動きを見ると、前日の米株式市場でCPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて大きく下落していたことから、多少の上振れに対する耐性はついていた。11月に中間選挙を控えるバイデン大統領は6月CPIについて「受け入れ難いほど高水準」とした一方、7月のガソリン価格の下落を考慮すると過去の数値だと述べている。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 ただ、米金融当局はCPIの結果を受けて積極的な政策方針を維持する見通しである。米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は、「7月のFOMCで100ベーシスポイント(bp)の利上げを検討する可能性がある」との見方を示している。市場では7月FOMCでの0.75ptの利上げを完全に織り込んでいたが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 実際に、株式市場は1.00ptの利上げまでは織り込めていないはずで、買い優勢の展開は長続きしないだろう。また、今週末は7月ミシガン大学消費者マインド指数が発表される予定で、米中の経済指標の発表も多く、これらの結果を見極めるまでは様子見姿勢を強めたほうがよさそうだ。後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続き新興市場を中心とする個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/14 12:14
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日経平均は反発、CPI通過後のあく抜け期待は程々に
日経平均は反発。86.45円高の26423.11円(出来高概算4億3051万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は192.51ドル安(-0.61%)と3日続落。新型コロナ感染拡大を受けた中国上海市の都市封鎖入りや消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感から売りが優勢だった。飲料メーカーのペプシコなどの好決算で投資家心理が改善し、一時上昇に転じたが、引けにかけてはCPIの悪化を示す偽造のリーク報道を材料に売りが加速し、下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は-0.94%と続落。ただ、ナスダック100先物が堅調に推移していたこともあり、前日に大きく下落していた日経平均は67.13円高からスタート。朝方は買い戻しが先行し、一時26500円を回復したが、今晩に控える米6月CPIの発表を前に上値は重く、その後は戻り待ちの売りから失速した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、キーエンス<6861>、リクルートHD<6098>、信越化<4063>など、前日に大きく下落した主力株が反発。第1四半期好決算及び業績予想の上方修正を発表した竹内製作所<6432>、パルグル−プHD<2726>がそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。第1四半期が好決算だった東宝<9602>や、今期見通しが好感された三協立山<5932>、三光合成<7888>も大幅に上昇。米航空機メーカーのボーイングが6月の納入機数が2019年3月来の高水準になったと発表したことで、ジャムコ<7408>が急伸。上半期業績予想を引き上げたAGC<5201>は堅調ながらも上値の重い展開。 一方、原油先物価格の下落を背景にINPEX<1605>などが売り優勢。日揮HD<1963>、大阪チタ<5726>、住友鉱<5713>などその他資源関連も軟調。米CPIを前にベイカレント<6532>、MonotaRO<3064>、ラクス<3923>、SREHD<2980>などグロース(成長)株が冴えない。 セクターでは空運、パルプ・紙、サービスが上昇率上位となった一方、鉱業、保険、水産・農林が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 前場の東証プライム市場の出来高は4億株台の前半、売買代金は1兆円をわずかに上回る程度にとどまり、今晩の米6月CPIを前に東京市場は全般模様眺めムードが漂っている。前日の米株式市場では、CPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて終盤に下げ幅を広げていたことから、多少の上振れに対する耐性はついているだろう。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 一方で、インフレの背景が供給サイドから需要サイドへと移りつつあることや、CPIの構成比で3割を占める住居費が、遅行性もあってまだ伸びが続くと考えられることから、インフレピークアウトに疑念をもつ向きも多い。また、前日に石油輸出国機構(OPEC)が発表した市場見通しによれば、来年の世界石油需要の伸びは供給の拡大分を日量100万バレル上回る予測となっており、需給逼迫が緩和されることはないもよう。欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給が止まっており、検査終了後も供給停止が続けられる可能性も指摘されている。今後、多方面での原材料のもととなる原油価格が再び急騰する可能性も拭い切れないだろう。 一部の金融機関では、CPIが下振れれば素直に好感、上振れてもインフレ頭打ちへの期待が高まるとの見立てから、いずれにしても発表直後はあく抜けするだろうと予想しているところもあるようだ。しかし、CPIの上振れ度合いや構成項目の内容次第では、ピークアウト期待が再び縮小する可能性もある。あく抜けの確度はそこまで高くないと思われ、今はまだ様子見に徹することが肝要だろう。後場も、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は前日終値近辺でのもみ合いが続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/13 12:06
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日経平均は4日ぶり大幅反落、CPI前に神経質な展開、あく抜け感は高まりづらいか
日経平均は4日ぶり大幅反落。449.54円安の26362.76円(出来高概算5億2051万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でダウ平均は164.31ドル安(-0.52%)と続落。新型コロナ感染拡大で中国地域の一部が再び都市封鎖入りし、世界経済の後退懸念が再燃。今週発表されるインフレ指標や企業決算シーズンを前に警戒感からの売りも強く、終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-2.25%と6日ぶりに大幅反落。米国株安を引き継いで日経平均は111.30円安からスタート。朝方から売りが先行し、前場中ごろには下げ幅を500円近くにまで広げた。その後は下げ渋ったものの、アジア市況やダウ平均先物が軟調ななか戻りは鈍く、安値圏での底這いが続いた。 個別では、米ハイテク株安を受けてソフトバンクG<9984>のほか、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>などの半導体関連株、村田製<6981>、TDK<6762>の電子部品株が総じて売り優勢。中国経済の減速懸念からキーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>、安川電機<6506>などのFA関連が大きく下落。エムスリー<2413>、ZHD<4689>のグロース(成長)株も軒並み安い。コマツ<6301>、ナブテスコ<6268>、住友鉱<5713>などの景気敏感株も全般下落。決算を発表したところではライク<2462>、リソー教育<4714>、ローツェ<6323>、技研製作所<6289>、東京個別<4745>などが大幅に下落している。 一方、7&IーHD<3382>、NTT<9432>、武田薬<4502>のディフェンシブ銘柄、コナミG<9766>、任天堂<7974>のゲーム関連が堅調。東証プライム市場の値上がり率上位には、第1四半期営業利益が市場予想を上回ったローソン<2651>、前期実績下振れで今期計画が市場予想をやや下振れもあく抜け感が先行したコスモス薬品<3349>、通期計画を上方修正した進和<7607>などがランクインしている。 セクターでは機械、電気機器、非鉄金属を筆頭にほぼ全面安。水産・農林、電気・ガス、保険の3業種のみが上昇となっている。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。 先週5日続伸と負けなしで強い動きを見せたナスダックは、週明けは一転して6日ぶりに大幅反落。東京市場でも、先週まで強いリバウンドを見せていたグロース株の多くが週明けから2日連続で大きく下落している。 米10年債利回りは依然として落ち着いた動きを続けているが、13日に発表が予定されている、40年ぶりに過去最高を更新する見通しの米6月消費者物価指数(CPI)を前にさすがに騰勢一服の展開を強いられている。指標発表前の買い戻しは先週の間に一巡していたようだ。 その米CPIについては、米政府から「高い数値になるだろう」とのコメントが出ている。市場予想ではエネルギー・食料品を含む総合で前年比+8.8%と前月(+8.6%)から加速する見通しで、すでにある程度は織り込まれているだろう。また、米政府は同時に「7月に入りエネルギー価格は顕著に下落し」、「(今後も下落継続が想定されるなか)CPIはもはや現状を反映していない」との認識も示したという。 中国では新型コロナ感染が再拡大するなか、先週頃から国内初のオミクロン株「BA.5」が確認され、更なる感染の拡大および厳しい行動制限の再実施への懸念が強まっている。世界景気の後退懸念が強まるなか、深刻な供給不足が続く原油先物を除けば資源価格の下落基調は続く可能性が高い。こうした背景を踏まえれば、米政府の認識は正しいともいえ、CPIが予想を大幅に上回ることがない限り、市場は高い数字をバックミラーとして捉え、ネガティブな反応は限られるだろう。 また、昨日ニューヨーク連銀が発表した調査によると、1年先期待インフレ率は5月の6.6%から6.8%に上昇した一方、3年先期待インフレ率は3.9%から3.6%へ、5年先期待インフレ率は2.9%から2.8%へとそれぞれ低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)は消費者のインフレ期待を制御できなくなることを懸念しており、長期の期待インフレ率が低下したことは安心材料となる。 一方で、FRBのパウエル議長は利上げを緩めるには、エネルギー・食料品を含むCPI、いわゆる「ヘッドラインCPI」の鈍化傾向を確認することが必要だとしており、CPIが2~3カ月連続で減速しない限りは、利上げペースの鈍化を確実視することは難しいだろう。そのため、明日のCPIを通過してもあく抜け感が台頭するかは分からず、市場反応は極めて読みづらい。 既に力強い雇用統計の結果などを受けて、市場では7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げを完全に織り込んでいる。しかし、アトランタ連銀のボスティック総裁は7月会合での0.75ptの利上げを支持すると同時に、仮にインフレ指標が想定以上に悪化した場合には、1.00ptの利上げも選択肢になると言及したという。投資家は7月:0.75pt、9月:0.5pt、11月以降:0.25ptという利上げペースを想定しているが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと、利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 また、期待インフレ率については、FRBが6月FOMCで0.75ptの利上げを決めた要因の一つとなったミシガン大学消費者マインド指数の7月分が今週末に発表される予定だ。ここでニューヨーク連銀調査に続いて長期期待インフレ率の低下が確認されないとまだ安心できない背景もある。週末にかけて米中の経済指標の発表が多いこともあり、今週は慎重なスタンスが求められそうだ。 後場の日経平均は軟調が続きそうだ。CPIを前にした警戒感がくすぶるなか、今晩の米株市場も続落となる可能性が想定される。また、景気底入れ期待が高まっていた中国経済の再悪化懸念が高まっており、リセッション(景気後退)懸念も再燃。さらに、国内でも新型コロナ感染が再拡大しており、リオープン(経済再開)への期待が萎んできている。ハイテク・グロース株から景気敏感株、リオープンまでほぼ全面安となるなか、けん引役が不在となっており、イベントも前に積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/12 12:07
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日経平均は続伸、買い一巡後は上げ幅を縮小する展開
日経平均は続伸。269.81円高の26787.00円(出来高概算5億8665万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場ではNYダウが46.40ドル安と反落。6月雇用統計が労働市場の強さを証明し、7月連邦公開市場委員会(FOMC)で6月に続き2会合連続の0.75%の利上げを織り込む金利上昇を警戒した売りに、寄り付き後、下落。押し目からは景気後退を回避できるとの楽観的な見通しで買い意欲も強く、一時上昇に転じた。しかし、FRBの過剰な引き締めや金利高を警戒した売り圧力に押され、ダウは結局下落で終了。ナスダック総合指数はかろうじてプラス圏を維持した。まちまちとなった米株市場を横目に、日経平均は前週末比375.54円高からスタート。買い一巡後は前場後半にかけて上げ幅を縮小する展開となった。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>などが大幅高。トヨタ自<7203>や日産自<7201>、ホンダ<7267>などの自動車関連株も堅調に推移、KDDI<9433>やNTT<9432>、ソフトバンク<9434>などの通信株も大幅に上昇した。花王<4452>、塩野義製薬<4507>、味の素<2802>、ヤクルト<2267>などディフェンシブ銘柄は総じて高い。通期業績・配当計画を上方修正したマニー<7730>が急伸。ほか、電動化が成長機会になる可能性とし国内証券で買い推奨に格上げされたNOK<7240>が大きく上昇した。 一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>など半導体関連株が軟調。SHIFT<3697>、ベイカレント<6532>、JMDC<4483>などグロース(成長)株の一角も大幅安となっている。第1四半期利益水準は想定比低調との見方が優勢となっている安川電機<6506>が大きく下落しているほか、一部メディアで新たな品質不正と報じられた東レ<3402>、8日に第1四半期決算を発表したワキタ<8125>や、メドピア<6095>、MonotaRO<3064>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは精密機器、鉱業、医薬品が上昇率上位となった一方、繊維製品、海運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の84%、対して値下がり銘柄は13%となっている。 本日の日経平均株価は、米6月雇用統計の結果が強く景気後退への懸念が和らいだこと、参院選で自民党が単独過半数を獲得して大勝し政局安定化が期待されたことが投資家心理にポジティブに働き、上昇してスタートした。ただ、中国の一部地域で新型コロナウイルス新規感染の増加が引き続き警戒され、アジア市況が軟調に推移すると、前場後半にかけて上げ幅を縮小した。日足チャートでは、75日移動平均線付近での売り買いが交錯している状況が窺える。 一方で、新興市場は売り優勢の展開となった。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたものの朝方を高値に上げ幅をじりじりと縮小、前場後半にかけて日経平均の連れ安となりマイナス圏に転落した。前週に米長期金利の安定推移でグロース株の見直し機運が高まり大幅に上昇、本日はリバウンドが一服して利食い売り優勢となっているようだ。また、13日には米6月消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、積極的に買い進む動きにはなりにくい。時価総額上位銘柄中心に軟調に推移、前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.13%安、東証マザーズ指数が0.17%安となった。 さて、米6月雇用統計では雇用者数と平均賃金が揃って予想を上回ったが、8日の米長期金利の上昇は限定的だった。今週は13日の米6月CPIに加えて週末に米国で各種経済指標の発表が控えている。財・モノに関しては6月ISM製造業景気指数、ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数のピークアウト感から、インフレ沈静化の兆しが見られてきている。サービス分野についてはまだインフレ沈静化の兆しが見られておらず油断はならないが、6月CPIが予想の前年同月比8.8%上昇並みにとどまれば、投資家心理が一段と改善しそうだ。そのほか、週末に集中する米中の6月鉱工業生産や小売売上高などの経済指標も注目される。 国内では10日に参議院議員選挙の投開票が実施された。自民党が単独過半数を獲得して大勝し、この先3年間は国政選挙がないため、長期安定政権の誕生に繋がった。参院選後には新たな補正予算の編成なども期待されてもおり、政策期待が内需系銘柄の押し上げに寄与することが見込まれている。今後の政権の動向には注目が集まりそうだ。 後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続きグロース株を手掛けにくい展開が続きそうで、手掛かり材料難のなか個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/11 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、相場一段高に必要なシナリオとは?
日経平均は大幅続伸。379.29円高の26869.82円(出来高概算6億3235万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は346.87ドル高(+1.11%)と続伸。中国が景気対策を検討しているとの報道を受け、世界経済への悲観的見方が後退。韓国の半導体メーカー、サムスン電子の好調な決算を受けてハイテク機器の需要鈍化懸念が後退したことも相場を支援。加えて、連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事やセントルイス連銀のブラード総裁が7月連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75ptの利上げを支持すると同時に経済の強さを強調し、ソフトランディングを基本シナリオと主張したことも投資家心理を改善させた。主要株価指数は引けにかけて一段と上昇し、ナスダック総合指数は+2.28%と大幅に4日続伸した。 米株高を受けて日経平均は133.32円高からスタート。朝方は上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う売りが意識され、こう着感の強い状態が続いていた。しかし、26600円前後での底堅さが確認されると、需給イベント通過後のあく抜けを意識してか売り方の買い戻しが入ったとみられ、断続的にレンジを切り上げる展開となった。なお、7月限オプション取引に係る特別清算指数(SQ)は概算値で 26659.58円だった。 個別では、商船三井<9104>を筆頭に海運株が急伸。大阪チタ<5726>は急騰。原油価格の反発でINPEX<1605>が大幅に上昇し、住友鉱<5713>は急反発。三菱商事<8058>、日本製鉄<5401>などの商社、鉄鋼も総じて強い。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+4.48%となったことでアドバンテスト<6857>などの半導体関連のほか、新光電工<6967>、村田製<6981>、TDK<6762>などの電子部品株も高い。上半期上振れ決算や自社株買いが好感された大有機化<4187>は連日で急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップとなった。ほか、決算が評価されたところでUSENNEX<9418>が急伸、OSG<6136>が大幅高。デンソー<6902>はレーティング格上げが観測され上伸。ほか、マネーフォワード<3994>やSansan<4443>など中小型グロース(成長)株も高い。 一方、エムスリー<2413>、メドピア<6095>などグロース株の一角が下落。ヤクルト<2267>、第一三共<4568>、花王<4452>、山崎パン<2212>などディフェンシブ系の銘柄が軟調。SHIFT<3697>は計画通りの順調な決算ながらも3-5月期の増益率鈍化が嫌気されたか、利益確定売りが膨らみ急落。第1四半期が低調なスタートと捉えられた4℃ HD<8008>、第1四半期好決算も6月月次動向が嫌気されたオンワードHD<8016>は大幅下落。ほか、キユーピー<2809>、久光製薬<4530>が決算を受けて売られている。 セクターでは海運、非鉄金属、鉱業を筆頭にほぼ全面高。食料品のみが下落となっている。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の86%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 前日の欧米株式市場が大きく上昇し、国内でも需給イベントへの警戒感が後退するなか、買いに弾みがつき、日経平均は午前からレンジを断続的に切り上げる強い展開となった。 今晩の米6月雇用統計を前に様子見ムードも広がりやすいところだが、米10年債利回りの落ち着いた動きやナスダックの4日続伸劇を追い風に、短期的に傾き過ぎた悲観の揺り戻しが起きているようだ。雇用統計については、雇用者数が予想を大幅に下回るようなことがなく、平均賃金の伸びが予想並みにとどまれば、景気後退懸念とインフレ懸念が同時に緩和することとなり、その場合には相場は一段と上値を試すことになりそうだ。 先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数では新規受注の50割れがネガティブな事として話題になった。ただ一方で、60台後半で続いていた入荷遅延は57.3までに大きく低下し、価格も依然として高い水準とはいえ、80台半ばでの推移から70台後半にまで低下した。ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数にもピークアウト感が見られつつあり、少なくとも財・モノに関するインフレ圧力はかなり後退してきている様子。 モノから移行してきた新たなインフレ主要因されるサービス分野については、まだインフレ沈静化の兆しが見られておらず、油断はならない。しかし、雇用統計で平均賃金の伸びが予想を下回れば、サービス分野でのインフレ抑制の目処も見えてくると捉えられ、足元でリバウンドを強めている相場が一段と上値を試す展開はあり得よう。 いま、市場が期待しているのは上述した話が実現したうえで、7月のFOMCでは最後の0.75ptの利上げが行われ、同時に9月は0.5pt、その後は0.25ptが有力とする利上げ幅のペースの鈍化、そうしたFRBの超タカ派からタカ派への移行シナリオだろう。 すでに高官発言などを受けて上述した利上げペースのシナリオは織り込まれているため、7月のFOMCでこうした道筋が示されれば、相場の底入れはより確実なものになってきそうだ。 ただ、その前にはいくつかの関門が立ちはだかっている。今晩の米6月雇用統計もそうだが、来週13日に発表される米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上回るようなことがあると、上述した期待シナリオは消失してしまう。また、来週からは米国で金融大手を皮切りに4-6月期決算が始まる。今回の企業決算シーズンが景気後退懸念をより強めてしまうのか、それとも大きく後退させてくれるものになるのかという点も大きく相場を左右してこよう。 後場の日経平均はアジア市況がしっかりとした動きのなか、堅調推移が続きそうだ。雇用統計前に持ち高調整が入ることも想定されるが、中国では財政省が地方政府に対して7-12月に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債発行を許可する方針と伝わるなど、景気浮揚策に関する報道が相次いでいる。中国での新型コロナ感染再拡大は懸念材料としてくすぶるものの、同国での景況感回復期待が相場の下支え要因として働くことに期待したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/08 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は反発、ボラティリティーの高さは投資チャンスと表裏一体
日経平均は反発。191.01円高の26298.66円(出来高概算5億9791万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は69.86ドル高(+0.22%)と反発。ISM非製造業景気指数やJOLT求人件数が予想を上回ったことで景気後退懸念が緩和。買いスタート後は一進一退が続いたが、6月連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で労働市場や消費について楽観的な見解が示され、利上げを計画通り継続していく想定内の方針が示されると買いが再開、引けにかけて上げ幅を拡大した。金利が安定して推移するなかハイテクの見直し買いが続き、ナスダック総合指数は+0.34%と3日続伸。米株高を引き継いで日経平均は173.29円高からスタート。ただ、寄り付き直後から失速すると、ダウ平均先物が下げ幅を広げ、アジア市況も軟調な出足となると午前中ごろから上げ幅を縮小、一時前日終値近辺まで値を戻した。しかし、前引けにかけては再び買いが勢いづき、朝方に付けた高値を更新した。 個別では、原油価格の続落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が大幅続落。大阪チタ<5726>は続急落となり、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>、大平洋金属<5541>、大紀アルミ<5702>などの資源関連、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社株が軒並み売り優勢。郵船<9101>、川崎汽船<9107>も売られている。国内での新型コロナ感染再拡大を受けて政府が「全国旅行支援」を延期する調整に入ったとの報道を受けてJR東海<9022>、JAL<9201>、OLC<4661>、エアトリ<6191>が下落。T&Gニーズ<4331>、ラウンドワン<4680>は急落し、ほかリオープン(経済再開)関連銘柄が東証プライム市場の値下がり率上位にずらりと並んだ。第1四半期個別売上高が計画を下振れたディスコ<6146>も下落した。 一方、SHIFT<3697>、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が堅調。キーエンス<6861>、ファナック<6954>、日本電産<6594>は大きく上昇。花王<4452>、塩野義製薬<4507>、味の素<2802>、ヤクルト<2267>などディフェンシブ銘柄は総じて高い。決算が手掛かりとなったイオン<8267>、わらべ日洋<2918>はそれぞれ急伸。EV充電サービス事業などを手掛けるシンガポール企業に出資したと発表したブイキューブ<3681>も急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入った。 セクターでは鉱業、石油・石炭、陸運が下落率上位となった一方、ゴム製品、食料品、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 6月のFOMC議事録は、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先するという、これまでのパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言などで既に確認済みの内容にとどまった。また、6月FOMC以降、米国で堅調されてきた個人消費を巡る指標が軒並み大きく悪化してきていることから、情報が古いと指摘する声も多く、特別材料視されなかったもよう。タカ派色を強める内容でもなかったことから、前日の米国市場では公表後に安心感から株価がやや上昇した。 米6月ISM非製造業景気指数は55.3と前月の55.9から小幅な低下にとどまり、市場予想の54を上回り、安心材料となった。項目をみると、景況感は56.1と前回の54.5から上昇。一方、雇用が47.4と前回の50.2から低下し、拡大と縮小の境目である50を割った。また、在庫も47.5と前回から低下して50を割り込んだほか、受注残は60.5と前回の52.0から大きく拡大。入荷遅延も小幅ながら前月から上昇し、61.9と高止まりした。 これらのことから、企業は人材確保に難儀していると推察され、こうした状況がリードタイム(発注から納品までにかかる時間)や受注残の増加に繋がっていると推察される。製造業では供給網(サプライチェーン)混乱の影響が緩和されてきたが、非製造業ではまだこうした影響が根強いようだ。財消費と異なり、サービス消費は金融政策の影響が及びにくいため、非製造業分野でのこうした傾向は、インフレ高止まりを示唆する内容ともいえそうだ。 前日の米国市場では金利が上昇したとはいえ、米10年債利回りは依然として3.0%を下回る推移となっており、ハイテク・グロース株の見直し買いが続いた。本日の東京市場でも、前日に大きく買われたSHIFTやベイカレントが続伸している。しかし、一方でマネーフォワード<3994>やSansan<4443>などは下落しており、前日まで3日続伸で相対的な強さを見せていたマザーズ指数も、本日はその他の主要株価指数とは対照的に下落している。明日の米6月雇用統計、来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)を前にリバウンドが一服してきているようだ。 また、景気後退懸念が強く、原油をはじめとしたコモディティ価格の下落が続くなか、資源関連の売りも収まる気配がない。ただ、他のコモディティと異なり、原油については深刻な供給不足が解消されてない状態が続いている。一昨日急落したWTI原油先物価格は昨日も下落したものの、NY時間の終盤にかけては押し目買いも入っていたことから、鉱業関連にはそろそろ売りが一巡してくる可能性があるとみている。それでも、原油先物市場での投機マネーの割合は高い分、短期的には需給主導で下げが続く可能性も残されている。個人的には1バレル=90ドル割れが近づいてくる局面では妙味が出てくると考えている。 ほか、本日は国内での新型コロナ感染拡大、「全国旅行支援」の延期調整入りなどの報道を背景にリオープン関連が軒並み売られているが、旅行のように直接的な影響が大きい分野とは異なる、ラウンドワンのような安価なレジャー関連分野も一緒くたに売られている。今の感染状況については重症化率が低く、新型コロナについても、もはや他のウイルスとの特別な違いがなくなってきていることもあり、旅行支援が延期になったとしても、厳しい経済活動の制限が再び実施されるリスクは低いように考えられる。このため、リオープン関連の中では、短期的には見直し余地のある銘柄が多いように見受けられる。日々の相場のボラティリティーが高いのは落ち着かないかもしれないが、その分、市場にノイズ・歪みが発生しやすく、投資チャンスが発生しやすいと前向きに捉えたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/07 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり大幅反落、グロース株の復調心強くも割り切り必要
日経平均は3日ぶり大幅反落。333.61円安の26089.86円(出来高概算7億1393万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は129.44ドル安(-0.41%)と反落。深刻な景気後退懸念から欧州株安を引き継いで大幅下落でスタート。5月製造業受注や耐久財受注が予想外に改善したことで売りの勢いは弱まったが、原油価格の急落もあり、ダウ平均は終日軟調に推移。米長期金利が大幅に低下するなか、引けにかけてはハイテクの上昇で下げ幅を縮小した。金利低下を追い風にナスダック総合指数は+1.74%と続伸。欧州株の急落やダウ平均の下落を引き継いで日経平均は233.07円安からスタート。午前中ごろにかけて下げ渋る動きも見られたが、ダウ平均先物が下落に転じたことで再び売りが膨らみ、アジア市況も軟調な中、一時26000円割れを窺う水準まで下落した。 個別では、原油価格の急落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が急落。コモディティ価格も全般下落しており、住友鉱<5713>、日本製鉄<5401>の市況関連株のほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社株も軒並み大幅安。前日急伸していた大阪チタ<5726>も急反落。三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連も揃って急落。トヨタ自<7203>、マツダ<7261>の自動車関連も総じて売り優勢。米長期金利の大幅低下で三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>も厳しい下げ。連日急伸していた東京電力HD<9501>も利食い売りから急落。3-5月期業績の増益率鈍化などから出尽くし感が先行したエスプール<2471>は急落し、東証プライム市場の値下がり率上位にランクイン。ソニーG<6758>は外資証券のレーティング格下げが観測されている。 一方、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>が逆行高。米金利低下やナスダック高を追い風にベイカレント<6532>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株が総じて強い動き。東証プライム市場の値上がり率上位にはラクス<3923>、Sansan<4443>、SREHD<2980>の中小型グロース株が多く入っている。業績予想を上方修正したラクト・ジャパン<3139>が急伸し、値上がり率トップとなった。記念配当の実施を発表したキューブシステム<2335>も急伸。決算が好感されたところではウエルシアHD<3141>、ハニーズHD<2792>が大幅に上昇した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、電気・ガスを筆頭に全般売り優勢。一方、精密機器、医薬品、情報・通信の3業種が上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の74%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 本日の東京市場では景気敏感株を中心に値幅を伴った厳しい下げに見舞われている。米10年債利回りは前日に一時2.7%台を付けるなど、5月下旬以来の水準にまで大幅に低下。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.30%(-0.04pt)と、昨年8月以来、約1年ぶりとなる水準にまで低下。4月21日に付けた3.02%からの下落っぷりが凄まじい。 金利や期待インフレ率の急落ぶりからも窺えるように、景気後退(リセッション)を織り込む動きに歯止めがかからない。鉱業や鉄鋼、商社などのチャートの崩れ方が酷く、自律反発がいつ入ってもおかしくない水準とも言えるが、ここまで来ると、どこまで突っ込むのかを見極めるのはもはや困難。 一方、金利低下を追い風にグロース株の復調が目覚ましい。グロース株の代表格とも言えるJMDC<4483>は本日一時200日移動平均線を回復するところまで上昇した。その他でも、多くのグロース株のチャートで底入れ感が見られるものが多い。実際、日経平均やTOPIX(東証株価指数)が大幅に下落しているなか、マザーズ指数は大幅に上昇している。 こうなってくると、景気敏感株売り・グロース株買いのリセッショントレードの妙味が一段と増してきそうだ。ただ、グロース株がこのままずっと強いかと問われば疑問符が付く。景気後退懸念から金利が大幅低下していることが足元のグロース株の復調の大きな要因だが、忘れてはならないのは金利動向の背景にあるインフレだ。市場は景気後退懸念が加速するにつれ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ打ち止めや利下げ転換の時期が早まると見ているが、筆者としてはこうした考え方はやや危なっかしいと感じる。 米5月消費者物価指数(CPI)の結果を受けて、FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて一気に0.75ptの利上げに踏み切ったことで、インフレピークアウト期待は一度完全に後退した。ちなみに、米5月CPIは前年比+8.6%だ。FRBが目標とする2%からは著しい乖離である。確かに、足元の個人消費の減退やコモディティ価格の下落を受けてインフレピークアウト期待が再び高まっているのは間違いないし、実際、ピークアウトの確率は高まってきていると考える。しかし、現在の高水準のインフレと当局の目標値との乖離幅を踏まえると、いくら相場が1年以上先を見据えて動くとしても、利下げ期待まで織り込むのはやや時期尚早な気がしてならない。 特に、米国では財消費が大きく減退してきたことでモノに関するインフレは確実に沈静化する方向にあるが、ペントアップデマンド(繰越需要)も背景に、今度はサービス消費がインフレの主要因になってきている。そして、財消費と異なり、サービス消費は利上げなど金融政策による影響が小さく、簡単にはインフレは沈静化しないと考えられる。 スケジュール的にも、今晩には米6月ISM非製造業景気指数、6月FOMC議事録の公表が控えており、また今週末には米6月雇用統計が控えている。雇用統計では平均賃金の伸びなどが注目され、さすがに週末にかけては足元勢いづいているグロース株が小休止してもおかしくない。加えて、来週13日には米6月CPIが控える。パウエルFRB議長はインフレ期待を制御するにあたってはヘッドラインインフレが重要と述べており、CPIが近づくタイミングでは逆に、グロース株には再びヘッジ売りが入る可能性も想定されよう。 日米ともに株式市場が全面安とならずに、グロース株に活況ぶりが見られることは心強い反面、こうした動きに後追いで乗じるには大きなリスクが伴うことを肝に銘じておきたい。 後場の東京市場は引き続き軟調か。前場のTOPIXの下落率が2%未満のため、日銀による上場投資信託(ETF)買いは期待できない。また上述したように、今晩から米国市場では材料が多く控えていることもあり、積極的な押し目買いは入りにくいだろう。日経平均は26000円を維持できるかが焦点となり、短期筋の26000円割れを狙った仕掛け売りなどには注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/06 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、株価水準的にもスケジュール的にも戻りはそろそろ一服?
日経平均は続伸。215.43円高の26369.24円(出来高概算5億1716万株)で前場の取引を終えている。 前日の米株式市場は独立記念日で休場。欧州株式市場では英FTSE100や仏CAC40などが上昇した一方、独DAXは軟調。欧州市場はまちまちだったが、時間外取引のナスダック100先物が大きく上昇していたことを支えに日経平均は232.42円高からスタート。早ければ今週にも、米国が課している中国消費財に対する関税の一部適用除外が発表される可能性があると伝わったことが背景にあるもよう。ただ、日経平均は朝方に26532.51円(378.70円高)まで上昇した後は、節目の26500円を回復した目先の戻り達成感から騰勢一服となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>が自律反発狙いの買いから上昇。東京海上<8766>、第一生命HD<8750>は米金利上昇を受けて反発。原油先物価格の上昇を背景にINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が買い優勢で、大阪チタ<5726>と東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>は大幅高。エムスリー<2413>、MonotaRO<3064>、SHIFT<3697>、JMDC<4483>などのグロース(成長)株が全般強い動き。 6月既存店売上がセール前倒し影響を除けば前年比プラスで、客単価の上昇傾向も確認されたファーストリテ<9983>は大きく上昇。上半期決算の上振れと共に通期計画を上方修正したネクステージ<3186>も買い優勢。楽天銀行の上場申請が好感された楽天グループ<4755>も一時大きく上昇した。4-6月期が前年比15%営業増益との観測報道が伝わったオービック<4684>も買われた。決算が買い手掛かりとなったところではハイデイ日高<7611>、アークランドサカモト<9842>がそれぞれ大きく上昇した。 一方、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の大手海運が揃って下落。6月既存店売上が前年比マイナスとなった良品計画<7453>が軟調で、既存店売上がプラスながらも5月からの鈍化が嫌気されたユナイテッドアローズ<7606>、アダストリア<2685>は大きく下落。6月既存店売上が3カ月ぶりにマイナスとなったF&LC<3563>も大幅安。前期実績が会社計画を下振れ、今期見通しが市場予想を下回ったクスリのアオキ<3549>は大きく売られた。 セクターでは保険、鉱業、石油・石炭が上昇率上位となった一方、海運、不動産、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は39%となっている。 日経平均はナスダック100先物の大幅高を手掛かりに一時26500円を回復するも、その後は上値の重い展開となっている。米国の対中関税の一部適用除外に関する報道が好感されたようだが、まだ最終決定には至っておらず、インフレ抑制への寄与度もあまり期待できるものではないとみられる。また一方で、中国政府の産業補助金に対する新たな調査も明らかにする可能性があるとも伝わっており、総じてポジティブ一色のニュースでもない。 市場の関心がインフレから景気後退へと移ってきているなか、先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数は53.0と、前月(56.1)から大幅に低下し、市場予想(54.9)も大きく下回った。構成項目では先行性の高い新規受注が2年ぶりに拡大・縮小の境目である50を下回ったことで、全体の50割れもかなり近づいている印象。 産業分野の中でも先行性の高い半導体を中心とした電子部品の需要減少、在庫調整に関する報道も相次いでおり、今後の生産動向でまだ伸びが期待できるのは自動車くらいだ。ただ、その自動車もグローバルな景気後退懸念から需要鈍化が見込まれており、関連企業の株価も冴えない。 また、きな臭さが漂っているのが中国。欧米諸国がこれから景気後退へと向かう一方、中国は「ゼロコロナ」政策の緩和や景気浮揚策を背景に緩やかながらも回復方向にあることが、世界のマクロ景況感の下支えとして期待されてきた。しかし、同国では再び東部・安徽省などで感染拡大が目立ってきているという。浙江省や上海市でも感染が報告されており、中国経済の重要地域である長江デルタ地域での影響拡大を防ぐために、当局が再びロックダウン(都市封鎖)を強化する懸念も強まっている。 現在、市場の関心事項は第一に「景気後退」、第二に「インフレ」だと思われるが、第一の「景気後退」を巡っては先週末から懸念が緩和されるようなポジティブな報道はほとんどないどころか、ネガティブなニュースの方が目立っている。こうした中でも、日経平均は週明けから2日連続で上昇し、500円程の回復を見せているが、明日から週末にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、米6月ISM非製造業景気指数、米6月雇用統計、国内上場投資信託(ETF)の配当金支払い集中日などイベントが相次ぐなか、戻りはそろそろ一服する頃合いと見ておいた方がよさそうだ。 一方で、グロース株全般に強い動きが2日続けて確認されていることは明るい材料だ。インフレ懸念と景気後退懸念の綱引きにより、米10年債利回りが今後も落ち着いた動きを続けてくれれば、今後はコモディティや景気敏感株が冴えない中でも、グロース株が代わりにけん引役を担ってくれることで、市場内での資金循環が利くことが期待される。来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)が近づいてくる場面では手仕舞い売りに注意したいが、目先はグロース株の続伸劇に期待したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/05 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は反発、米金利低下で投資家心理改善
日経平均は反発。149.45円高の26085.07円(出来高概算5億5498万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場ではNYダウが321.83ドル高と反発。第3四半期、下半期入りで新たな投資資金流入を期待した買いに寄り付き後、上昇。その後、6月ISM製造業景況指数が予想以上に悪化し2年ぶり低水準に落ち込んだため景気後退懸念が再燃し売りが加速、一時下落に転じた。しかし、同時に、連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げの思惑が後退、金利が低下すると安心感も広がり下げ止まった。連休を控えた買戻しに再び上昇し、引けにかけて上げ幅を拡大。ナスダック総合指数も反発した。米株高を引き継いで日経平均は前週末比151.16円高からスタート。買い一巡後は上げ幅を縮小して前週末終値付近まで値を下げたが、再度上げ幅を拡げたあと上値の重い展開となった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>などが大幅高。電力需給逼迫と原発再稼働に絡む思惑錯綜して東京電力HD<9501>を筆頭に関西電力<9503>や九州電力<9508>などの電力株が大幅に上昇、レノバ<9519>や東京エネシス<1945>などの再生可能エネルギー関連銘柄にも注目が集まっている。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も強い動き。上半期決算を発表した象印マホービン<7965>が急反発。ほか、第1四半期は市場想定比上振れで安心感が先行したニトリHD<9843>、22年5月期決算を発表したアスクル<2678>が大きく上昇。 一方、東エレク<8035>やファーストリテ<9983>などが軟調。大規模通信障害を嫌気した売りが流入したKDDI<9433>が売り優勢の展開となっているほか、三越伊勢丹<3099>、H2Oリテイル<8242>、Jフロント<3086>などの百貨店関連銘柄が利食い売り優勢となっている。前週末から売り優勢の展開が続いているダブル・スコープ<6619>が大きく下落。大阪チタ<5726>やビジョン<9416>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは電気・ガス、卸売業、サービス業が上昇率上位となった一方、保険、石油・石炭が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の75%、対して値下がり銘柄は22%となっている。 本日の日経平均株価は上昇してスタートした後、アジア市況が軟調に推移したことを横目に前場中ごろに上げ幅を縮小して前週末終値付近まで値を下げた。その後再度買いが集まり上げ幅を拡げるも上げ幅は限定的、上値の重い展開となった。米国株の上昇に加えて米長期金利が低下したことが、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いているようだ。日足チャートでは、上下に長い髭を伴うを陰線を形成しており売り買いが交錯している状況が窺える。 新興市場も買い優勢の展開が続いているものの上値は重いか。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.42%高、東証マザーズ指数が1.37%高となっており、日経平均株価よりもやや値幅を伴って上昇している。時価総額上位銘柄中心に物色が向かっているようだ。冴えない動きだった米株市場が上昇に転じたことに加えて米長期金利が2.89%と1カ月ぶりの水準まで大幅に低下しており、バリュエーション面での割高感が気になりやすい東証グロース市場の中小型株には支援要因となっている。 ただ、日経平均株価が上げ幅を縮小している場面では、東証グロース市場の指数も同様に上げ幅を縮小していた。グロース株にとって金利の低下は支援要因にはなるが、7月以降もFRBが0.75ptの大幅利上げを実施する可能性が残るなか、グロース株を積極的に買い進むことは難しい。個人投資家主体の短期資金の逃げ足が速くなり、上値の重い展開となっている可能性がある。 さて、今週は米国で多くの経済指標の結果が発表される。6日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表、米6月ISM非製造業景気指数、7日に米6月ADP雇用統計や米5月貿易収支、8日に米6月雇用統計及び米5月消費者信用残高などが発表される。FOMC議事録が新たにサプライズになることはないと考えられているが、米雇用統計など各種経済指標の結果を見極めるまでは積極的に買い進む動きは限定的になりそうだ。 後場の日経平均は上値の重い展開が続くか。中国で新型コロナウイルス感染が再び増加していることを嫌気したアジア株下落に加えて、時間外で米株先物が下落していることが投資家心理を悪化させる要因となりそうだ。また、本日は米国の独立記念日で米株市場が休場、買い手掛かり材料に欠けるなか、東証グロース市場中心に投資家の目線が向かう可能性を想定しておきたい。
<AK>
2022/07/04 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は3日続落、需給もファンダも悪化でけん引役不在
日経平均は3日続落。233.51円安の26159.53円(出来高概算6億0973万株)で前場の取引を終えている。 6月30日の米株式市場でダウ平均は253.88ドル安と反落。消費や製造業の減速を示す経済指標を受けて下落スタート。インフレ調整後の5月個人消費支出(PCE)がマイナスに落ち込んだことや、高級家具販売RHの再三にわたる見通し引き下げも景気後退懸念を一段と強めた。一方、PCEコアデフレーターが予想を下回り、金利が大幅に低下したことが下支えし、主要株価指数は引けにかけては下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は-1.33%と4日続落。前日のダウ平均先物の下落を通じて米株安を織り込んでいた日経平均は67.67円高からスタート。しかし、景気後退懸念が強まるなか買いは続かず失速。その後下落に転じてからも売りが止まらず、前引けまで下げ幅を広げる流れとなった。 個別では、原油先物価格の下落を背景にINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大幅安。川崎汽船<9107>や郵船<9101>、住友鉱<5713>など市況関連株も軟調。米半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算が嫌気され東エレク<8035>やレーザーテック<6920>が軒並み下落。新光電工<6967>、太陽誘電<6976>、ローム<6963>などのハイテク株も安い。為替の円安進行の一服感から日産自<7201>、ブリヂストン<5108>の輸出関連も下落が目立つ。景気後退による消費鈍化懸念からエアトリ<6191>、オープンドア<3926>、ラウンドワン<4680>などリオープン(経済再開)関連も軟調。 ロシアのプーチン大統領が、石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、事業主体を新たに設立するロシア企業に変更するよう命じたと伝わったことで、同プロジェクトに出資している三井物産<8031>、三菱商事<8058>が大幅に下落。業績予想の下方修正を発表したダイセキ<9793>、良品計画<7453>は急落し、東証プライム市場の値下がり率上位に並んでいる。 一方、東京電力HD<9501>が大幅に反発。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連が揃って買い優勢。信越化<4063>、HOYA<7741>、ダイキン<6367>、ファナック<6954>の値がさ株の一角も堅調。東レ<3402>は連日で年初来高値を更新。米長期金利の低下を支援要因にベイカレント<6532>、NRI<4307>などグロース(成長)株の一角もしっかり。第1四半期が好決算となった高島屋<8233>は急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入り、Jフロント<3086>も好決算を手掛かりに大幅高。今期も2ケタ営業増益見通しとなったウェザーニューズ<4825>も急伸。ブイキューブ<3681>はメタバース関連のリリースで急伸した。 セクターでは鉱業、ゴム製品、電気・ガスが下落率上位となった一方、石油・石炭、保険、銀行が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の68%、対して値上がり銘柄は28%となっている。 前日発表された米5月PCEコアデフレーターは前年比の伸びが3カ月連続で鈍化し、市場予想も下回った。また、前月比の伸びも予想を下回り、インフレ懸念は鈍化した。しかし、投資家の関心は既にインフレから景気後退へと大きく移っており、物価指標の伸び鈍化よりも、個人消費支出がインフレ調整後の実質ベースで今年初となるマイナスに落ち込んだことの方が注目された。インフレ調整後の個人消費支出は前月分も+0.3%と速報値の+0.7%から大幅に下方修正されており、インフレ調整後の可処分所得も前月比-0.1%とマイナスになった。 株式市場で景気後退を織り込む動きは2週間ほど前から強まっているが、アナリストによる企業業績の下方修正が十分に進んでいないなか、こうした動きはまだ序盤ともいえる。7月中旬以降、日米で4-6月期の企業決算の発表が本格化していくが、ここでの業績下方修正などを見据えて、むしろ、こうした動きが更に加速化していくことに注意したい。 米半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算もネガティブな材料だった。コンピューターやスマートフォン向け需要が弱くなっているとし、6-8月期の見通しは売上高および一株当たり利益ともに市場予想を大きく下回った。各半導体メーカーの経営陣コメントから、既にPCやスマホなど民生向けで需要の減少が始まっていることは示唆されていたが、改めて需要の減速が確認された。 半導体業界では後工程において先んじて在庫調整が始まっていたが、今後は前工程でもこうした在庫調整を織り込む動きが一段と強まることが予想される。需要が減速してきている民生向け対して車載向けや産業向けの需要は旺盛とされているが、これまで堅調とされてきたデータセンターのサーバー向けも変調してきている。市場では、景気の先行き不安から米国企業などがサーバーへの設備投資を抑制し始めたとの指摘も聞かれる。 東エレクが連日で年初来安値を更新していることからも、投資家の先行きに対する不安の強さが感じられる。車載向けや産業向けの好調で相対的に強いとされてきたルネサス<6723>も連日の急落で、年初来安値を窺う位置にまで下落してきている。 景気後退懸念が強まるなか、海運株や商社株など、これまでグロース株が弱い局面でも相場をけん引してきた市況関連株も、6月以降は厳しい売られ方だ。また、歴史的な為替の円安進行が支援要因となってきた自動車関連株も最近は弱さが目立つ。今週は6月30日に一時1ドル=137円台に乗せるなど、円安が一段と進んだにも関わらず、株価の好反応は乏しく、むしろ、景気後退に伴うグローバルな自動車需要の鈍化を警戒した売りから株価の下落が続いた。円安進行に一服感も台頭しつつあるなか、今後は円高方向に振れた際の株価下落が気掛かりにもなる。暗号資産(仮想通貨)ビットコインも再び急落しており、相場は債券を除けばほぼ全部売りの様相だ。 年金基金によるリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景とした6月の月末にかけての需給改善期待がはく落し、相場のけん引役も不在な状態なまま7月入りとなった。不安定ななか、今月は8日に国内の主要上場投資信託(ETF)の分配金捻出が集中しているほか、米6月雇用統計が控え、13日には米6月消費者物価指数(CPI)が予定されている。需給改善から需給悪化へと意識が向かうなか、指標の結果次第では、26~27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた下値模索の展開も想定されよう。 より手前の話で言えば、今晩には米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する6月製造業景気指数が発表され、6日には非製造業の景気指数も発表される。インフレよりも景気後退の方に目線が移ってきているなか、むしろこちらの方が注目度は高いともいえる。既に前月からの悪化が想定されているが、予想を下回ると景気敏感株を中心に一段と買い持ち高を縮小する動きに拍車がかかりそうで注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/01 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は続落、需給下支えから需給悪を意識する頃合い、オーバーキル懸念も一段と
日経平均は続落。243.55円安の26561.05円(出来高概算5億5440万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場ではNYダウが82.32ドル高と3日ぶり反発。個人消費の大幅な引き下げを要因に1-3月期国内総生産(GDP)の確定値が予想外に下方修正されたことで、序盤は景気後退懸念が強まった。ただ、欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が企業や家計の財務状況の強さを強調すると警戒感が後退。加えて、ドイツの6月消費者物価指数(CPI)の伸びが予想外に鈍化し、米長期金利が低下したことも投資家心理を改善させた。ナスダック総合指数は-0.03%とほぼ横ばい。方向感に欠ける展開だった米株市場を引き継いで、日経平均は51.32円安と小甘くスタート。ただ、ダウ平均先物が軟調に推移するなか下げ幅を広げる動きが続き、前場後半には一時300円近く下落した。 個別では、米半導体大手AMDのレーティング格下げを背景にフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-2.2%と大幅に下落したことを嫌気し、スクリン<7735>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が大幅安。ソニーG<6758>、村田製<6981>、ファナック<6954>、ローム<6963>などのハイテク株も大きく下落。景気後退懸念から川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運のほか、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、日本製鉄<5401>、信越化<4063>なども安い。外資証券によるレーティング格下げを受けてトレンド<4704>も売られた。 一方、ダブル・スコープ<6619>が大幅に続伸し年初来高値を更新。OLC<4661>、JR東<9020>、第一三共<4568>、パンパシHD<7532>などの内需・ディフェンシブ銘柄の一角が高い。主力処では東レ<3402>が大幅高で年初来高値を更新。子会社のアリババグループ会社とのマスターライセンス契約締結が好感されたサンリオ<8136>や、業績予想の上方修正と自社株買いが手掛かりとなったサニーサイド<2180>はそれぞれ急伸し、東証プライム市場値上がり率上位に並んだ。オイシックス・ラ・大地<3182>との業務提携が好感されたシダックス<4837>はストップ高買い気配で終えており、オイシックスも買われた。自社株買いを発表したDeNA<2432>が大きく上昇し、国内証券によるレーティング格上げを受けてPI<4290>が急伸している。 セクターでは鉱業、その他金融、石油・石炭が下落率上位となった一方、繊維製品、陸運、建設が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の60%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 日経平均は心理的な節目の26500円を前に下げ渋っているが、27000円前後に並ぶ主要移動平均線に上値を抑えられる形で大きく失速する展開となっている。前日の米株市場は今晩に発表される6月個人消費支出(PCE)コアデフレーターを前に様子見ムードが強かったとはいえ、終日動意に乏しい展開。年金基金によるリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景とした月末にかけての上昇期待も萎んでしまいかねない程の弱さに見えた。国内でも、今日が需給面ではピークとの指摘も聞かれている。 今晩に発表予定の米6月PCEコアデフレーターは前年比での伸びが3カ月連続で鈍化することが予想されている。予想通りとなれば、前日の6月ドイツCPIの結果に続く形で、インフレピークアウト期待が一時的に高まり、短期的には買いに弾みがつく可能性もある。 しかし、月替わりで7月に入れば、需給面での下支えがなくなるうえ、7月8日には国内の株価指数に連動するパッシブ型の上場投資信託(ETF)の配当金支払いが集中している。分配金捻出に伴う換金売りで現物株・先物を併せて1兆円程の売りが出ると想定されている。8日には米6月雇用統計が控えており、ただでさえ神経質になりやすい。この需給悪化のイベントを見据えて来週前半からは早くも売りが強まってくる可能性に注意したい。 前日のECBの年次フォーラムでは、パウエルFRB議長は米経済について家計と企業の財務状況は力強い状態にあり、堅調な労働市場を維持しながらインフレを2%に低下させる経済の軟着陸(ソフトランディング)は可能だとの見解を繰り返した。ただ、一方で同時にその達成はかなり厳しいとも認めた。また、積極的な利上げが経済を過度に減速させるリスクはあるものの、高インフレが持続し、消費者のインフレ期待を制御できなくなるリスクの方が大きいとも指摘しており、景気よりもインフレ抑制を重視する姿勢を改めて示した。 さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も同様の見解を示したうえ、政策金利を年内に3.0~3.5%へ引き上げ、来年には「4%を若干上回る」水準が望ましいとも述べたという。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された政策金利見通しでは、2023年末の政策金利は3月時点での2.8%から3.8%へと大幅に引き上げられていたが、メスター総裁の言及した4%はこれを更に上回る水準。FRBは積極的な利上げを通じて需要を抑え込み、何がなんでもインフレを抑えたいと考えているようだ。オーバーキルへの懸念はますます強まるばかりで、相場の不安定な状況は長期化しそうだ。 後場の日経平均は冴えない展開か。今晩の米株市場では米6月PCEコアデフレーターに加え、半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算も予定されている。これらの結果の影響力はかなり大きいと想定され、イベント前に押し目買いは入りにくいと推察する。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/30 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反落、景気後退懸念強まる中での実質金利上昇は嫌な組み合わせ
日経平均は5日ぶり反落。289.48円安の26759.99円(出来高概算6億1319万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場ではNYダウが491.27ドル安と大幅続落。中国が新型コロナ規制を緩和したことが好感されて買い先行。NY連銀のウィリアムズ総裁が「経済が強く、景気後退は基本シナリオではない」と発言したことも買いを後押し。しかし、その後発表された6月の消費者信頼感指数が予想以上に悪化し、景気後退懸念が強まると次第に売り圧力が強まり下落転換。引けにかけて売りが加速し、主要株価指数は大幅に下落した。ナスダック総合指数は-2.97%と大幅続落。米株安を引き継いで日経平均は235.24円安からスタート。朝方は売りが先行し、下げ幅は一時350円を超えた。アジア市況が軟調ななか、その後は安値圏でのもみ合いとなった。 個別では、ルネサス<6723>、東エレク<8035>の半導体関連、村田製<6981>、ローム<6963>、日本電産<6594>のハイテクのほか、SHIFT<3697>、メルカリ<4385>のグロース(成長)株が全般大きく下落。川崎汽船<9107>、郵船<9101>、INPEX<1605>、SMC<6273>、ブリヂストン<5108>、AGC<5201>など景気敏感株でも弱いものが目立つ。第1四半期の大幅減益決算が嫌気されたピックルス<2925>は急落し、東証プライム市場の値下がり率トップとなっている。 一方、大阪チタ<5726>が大幅に続伸。三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社のほか、三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連が堅調。JAL<9201>やJR東<9020>、資生堂<4911>、イオン<8267>など内需系がしっかり。しまむら<8227>は好決算を評価する動きが継続。原発再稼働機運の高まりを追い風に東京電力HD<9501>が大幅高、電力スポット価格の恩恵銘柄として電源開発<9513>も高い。6月の月次売上動向が手掛かりとなったアスクル<2678>、自社株買いが好感されたスギHD<7649>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入った。レーティング格上げが観測されたヤマハ<7951>、ビックカメラ<3048>も上昇。 セクターではゴム製品、ガラス・土石、海運が下落率上位となった一方、電気・ガス、石油・石炭、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 前日の日経平均は後場に盛り返して終値で27000円を回復。日経平均先物については、夜間取引に序盤の米株高を映して一時27220円まで上値を伸ばしていた。しかし、その後の経済指標の悪化を受けた急速な基調転換もあり、本日の日経平均は1%を超える下落率で前場を終えている。 前日も指摘したが、27000円は心理的な節目として目先の戻り達成感が台頭しやすいうえ、この水準には25日、75日、13週、26週の主要移動平均線が集中しており、強力な上値抵抗帯として意識されやすい。前日の27000円回復で懸念が払拭されたかとも思ったが、今日の下落で改めてこうしたネガティブな捉え方が優勢となりそうだ。 前日、コンファレンス・ボード(CB)が発表した6月の米消費者信頼感指数は98.7と、前月から4.5pt低下し、2021年2月以来の低水準となった。インフレ圧力による景気後退懸念が消費者センチメントの重荷になっている。また、今後6カ月の見通しを映す期待指数は66.4と、約10年ぶりの水準にまで低下。さらに、雇用が「十分にある」との回答比率は小幅ながら低下し、今後6カ月の間に所得が減少するとの回答比率は2020年8月以来の高さとなった。米連邦準備制度理事会(FRB)は深刻な景気後退を避けられる理由として労働市場の堅調さを挙げているが、こうした見方に徐々に黄色信号が灯り始めている。 また、気掛かりなのは原油先物価格と米10年債利回りの動き。CB消費者信頼感指数の結果を受けて景気後退懸念が強まった中でも、前日の原油先物価格は深刻な供給不足に対する懸念から上昇、米10年債利回りも低下したとはいえ小幅にとどまり、先週後半の一時3%割れを窺う水準からは大きく上昇した位置にある。一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.48%(-0.07pt)と大きく低下。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は+0.70%と、再びじわり上昇基調にある。 先週は景気後退懸念が強まるなかでも、金利の低下がハイテク・グロース株を押し上げ、全体の底上げに寄与した。しかし、本日は景気後退懸念が再燃するなかでも実質金利が上昇し、景気敏感株だけでなくハイテク・グロース株も弱いという構図になっている。月末にかけては、年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いから上昇に期待する向きも多いが、こうした需給要因が剥落した月替わりの7月以降は、上述した背景から改めて相場の下落に警戒が必要だろう。 後場の日経平均については軟調継続を予想。アジア市況が総じて下落しているうえ、今晩は、欧州中央銀行(ECB)主催の経済フォーラムでパウエルFRB議長やラガルドECB総裁など要人らが討論会で発言する予定。金融政策の動向に加えて、景気やインフレの先行きについての見方が注目され、イベント前に買い戻しは期待しにくいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/29 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり反落、月末リバウンド期待にはや一服感?
日経平均は4日ぶり反落。40.58円安の26830.69円(出来高概算5億8363万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場ではNYダウが62.42ドル安と小幅反落。5月耐久財受注速報値や5月中古住宅販売成約指数の良好な結果を受けて買い先行スタート。ただ、2年債や5年債入札の低調な結果を受けて金利が上昇するとハイテク中心に売られ、主要株価指数は下落に転じた。ナスダック総合指数は-0.71%と3日ぶり反落。米株安を引き継いで日経平均は75.59円安からスタート。時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移するなか、すぐに切り返してプラスに転換すると、その後はじりじりと水準を切り上げ、前場中ごろには一時27000円を回復した。しかし、戻り待ちの売りから失速すると売りが膨らみ、前引けにかけて再び下落に転じた。 個別では、原油先物価格の上昇を背景にINPEX<1605>や石油資源開発<1662>が大幅に上昇。大阪チタ<5726>や東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>などの資源関連のほか、三井物産<8031>や双日<2768>の商社株も高い。三菱重<7011>やIHI<7013>の防衛関連も堅調。第1四半期が2ケタ営業増益の好発進となったしまむら<8227>や、外資証券のレーティング格上げが観測されたベイカレント<6532>はそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位にランクイン。国内証券の買い推奨を受けてクミアイ化学<4996>も大幅高。モデル改良を伴わない値上げを発表したSUBARU<7270>が買われ、三菱自<7211>、日産自<7201>も大きく上昇。 一方、米長期金利の上昇やナスダックの下落を背景に、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>の半導体関連が大きく下落。日本電産<6594>、村田製<6981>、新光電工<6967>のハイテクのほか、エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>のグロース(成長)株が大幅安となっている。第1四半期の減益決算が嫌気された壱番屋<7630>、あさひ<3333>も大きく下落。東証プライム値下がり率上位にはSREHD<2980>、ギフティ<4449>などの中小型グロース株が散見される。 セクターでは精密機器、空運、サービスが下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の39%、対して値上がり銘柄は55%となっている。 日経平均は朝安後に切り返して一時27000円を回復するなど、強い動きを見せたかと思いきや、心理的な節目を回復した目先の戻り達成感が台頭したか、その後急失速する展開となった。27000円前後にはちょうど25日、75日、13週、26週など主要な移動平均線が集中しており、戻り待ちの売りが意識されやすい水準ではあった。今日の前場の動きでこうした見方が裏付けられるような形となってしまい、やや印象が悪い。 先週末に非常に強い動きを見せたマザーズ指数も前日は上昇したとはいえ、控えめな動きだったうえ、今日は前引け時点で反落している。株価水準としては75日線が上値抵抗線として意識される位置にあり、6月9日の大幅高の際には同線を超えられずに失速して下落基調に再突入していたことから、リバウンドに乗ってきた投資家もそろそろ手仕舞いに動き出す可能性がある。 本日、午前の相場では大阪チタニウムやレノバ<9519>など、個人投資家人気の高そうな銘柄が一時急伸して賑わいを見せていたが、前引けにかけては大きく失速していた。一見、地合いが改善して物色も旺盛のような印象を受けるが、物色の主体はあくまで短期の値幅取りなど逃げ足の速い資金に限られるのだろう。前日の米耐久財受注速報値の結果を受けて景気後退懸念はやや緩和しているが、こうした懸念が根強くくすぶるなか、長期目線の投資家などは依然として様子見を決め込んでいる向きが多いだろう。 米国市場では月末にかけて年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景に、リバウンド基調の継続に期待する声も聞かれるが、先週後半からの上昇の一部には、こうした動きを先取りしているところもあろう。ここからの上値追いには慎重になった方がよいと考える。 後場の日経平均は軟調か。前場の間に心理的な節目の27000円を回復して目先の達成感が強まっているなか、新規の手掛かり材料難でもあり、再び27000円に向けて上昇していくイメージは持ちづらい。どちらかと言えば、短期的には26500円近辺に向けて調整する可能性に留意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/28 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、米株高受け幅広い銘柄に物色向かう
日経平均は大幅続伸。276.80円高の26768.77円(出来高概算5億6717万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場ではNYダウが823.32ドル高と大幅続伸。連邦準備制度理事会(FRB)のストレステストの結果を受けて金融セクターに買戻しが広がり、相場の上昇をけん引した。また、6月ミシガン大消費者信頼感指数確定値の長期期待インフレ率が14年ぶり高水準から下方修正され、インフレがピークに達した兆候が示されたため投資家心理が一段と改善。大幅な利上げが回避されるとの期待も買い材料となり、引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も+3.34%と大幅続伸となった。米株高を引き継いで日経平均は前週末比249.83円高からスタート。アジア市況の上昇を追い風に買いが続き、前引け直前に26840.66円(348.69円高)まで上昇した。 個別では、信越化<4063>、ファナック<6954>、三菱重工業<7011>が大幅高。郵船<9101>、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>の海運、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>のハイテク株も大きく上昇。エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も全般強い動き。電力需給逼迫に伴うスポット価格上昇期待で東京電力HD<9501>や関西電力<9503>などの電力株も大幅に上昇。高水準の自社株買いによる需給改善期待の動きが優勢となった第一工業製薬<4461>が急伸。ほか、2024年末に国内で燃料電池の基幹部品をつくる新工場を建設すると報じられた日清紡HD<3105>、26日朝のTBSテレビ系情報番組に取り上げられた第一稀元素化学工業<4082>が大きく上昇。 一方、NTT<9432>、KDDI<9433>など通信株が軟調。ホンダ<7267>、マツダ<7261>など自動車関連も冴えない動きとなっている。24日に急伸したレノバ<9519>は利食い売り優勢から大きく下落。先週末に22年5月期の決算を発表した日本オラクル<4716>は実績値・ガイダンスともにサプライズ限定的で下落したほか、日東電工<6988>はレーティング格下げで売られた。 セクターでは海運、鉱業、パルプ・紙が上昇率上位となった一方、不動産、ゴム製品、陸運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後前場中ごろに上げ幅をやや縮小した。ただ、前場中ごろにかけて再度買いが集まり上げ幅を拡げる展開となった。米国株の強い上昇に加えてインフレや利上げに対する過度な懸念はやや緩和していることが、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いているようだ。日足チャートでは、75日移動平均線に迫る勢いとなっている。 一転して新興市場はもみ合い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、前週末24日の大引け時点で東証グロース市場Core指数は8.19%高、東証マザーズ指数は5.68%高となっており、直近では一番の上げ幅となった。パウエル議長の会見及び米長期金利が低下したことで投資家心理が改善、バリュエーション面での割高感が意識されやすく直近手掛けにくかった新興株に物色の矛先が向いていた。両指数とも25日移動平均線を上回った。 ただ、本日は米長期金利が再度上昇したことが重しとなっているほか、買い一巡感が台頭しているもよう。また、東証プライム市場の主力株物色が中心となっており、新興市場はやや蚊帳の外状態でもある。ただ、戻り売りが優勢とならず前週末高値付近でのもみ合い展開となっていることはポジティブに捉えられよう。 直近IPO銘柄の動きも好調。本日上場のイーディーピー<7794>の初値は公開価格を64.0%上回る8200円、サンウェルズ<9229>初値は18.6%上回る2300円となった。24日に上場したマイクロ波化学<9227>は初値が公開価格を下回ったものの一転して買い優勢の展開となっている。直近IPO銘柄は指数にはまだ組み入れられていないため、指数のパフォーマンスには寄与しない点には留意したいが、個別に材料が出た銘柄や直近IPO銘柄にまずまずの物色が向かっており、個人投資家の物色意欲は後退していないことが窺える。 さて、ミシガン大学消費者マインド指数確報値では短期・長期の期待インフレ率が揃って速報値から下方修正された。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った理由の一つであっただけに、過度なインフレ懸念が緩和し、先週末の米株高を演出した。ただ、インフレピークアウト期待が剥落したままという大前提を踏まえれば、リバウンドは短期的なものにとどまる可能性があることは頭に入れておきたい。インフレ懸念とリセッション懸念の間を揺れ動く不安定な相場となり、物色動向も定まりにくいため、このまま買い戻しが続いていくことは想定しにくい。 後場の日経平均は上値の重い展開か。75日移動平均線を上抜けられるかに注目したいが、時間外取引のNYダウ先物やナスダック100先物を横目に推移していくだろう。引き続き東証プライム市場中心に投資家の目線が向かいそうで、新興市場を中心とする中小型株への物色は限定的となりそうだ。
<AK>
2022/06/27 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、久々にグロ−ス株急伸も本格復調を期待するには時期尚早
日経平均は続伸。190.99円高の26362.24円(出来高概算6億2905万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場ではNYダウが194.23ドル高と反発。下院での議会証言における、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長のインフレ対応を最優先する姿勢が当局の信頼回復に繋がるものとして好感された。一方、インフレ抑制に「無条件」で取り組むとしたタカ派な姿勢や6月製造業PMIの悪化を受けて一段と強まる景気後退懸念が上値を抑えた。ただ、議長が景気後退は必然ではないと言及したほか、金利の低下を受けたハイテク株の買いが相場を支え、主要株価指数は引けにかけて上げ幅を拡大、ナスダック総合指数は+1.62%と大幅反発となった。米株高を引き継いで日経平均は57.17円高からスタート。ナスダック100先物やアジア市況の上昇を追い風に買いが続き、前引け直前に26391.11円(219.86円高)まで上昇した。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、日本電産<6594>が大幅高。郵船<9101>、商船三井<9104>の海運や、信越化<4063>やダイキン<6367>の値がさ株も大きく上昇。エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も全般強い動き。値上げの発表で味の素<2802>も大幅に上昇。神戸物産<3038>、花王<4452>、第一三共<4568>などディフェンシブ銘柄も高い。韓国子会社の上場が承認されたダブル・スコープ<6619>、洋上風力発電の新たな公募ルール案が手掛かりとなったレノバ<9519>はそれぞれ急伸。ほか、自社株買いを発表した塩野義<4507>、MSOL<7033>のほか、業績予想の下方修正が悪材料出尽くしと捉えられたサイボウズ<4776>が大きく上昇。レーティング格上げが観測されたディスコ<6146>も大幅高。 一方、景気後退懸念が強まるなか、三菱重<7011>やIHI<7013>、三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>、住友鉱<5713>、コマツ<6301>、ENEOS<5020>などが大きく下落。為替の円高・ドル安への揺り戻しを受けて三菱自<7211>、マツダ<7261>など自動車関連が軒並み下落。新型EVの販売停止が嫌気され、SUBARU<7270>とトヨタ自<7203>も売られた。3-5月期の大幅減益が嫌気されたオプトエレクトロニクス<6664>は大きく下落。ほか、NTT<9432>、KDDI<9433>など通信株が軟調。みずほFG<8411>はレーティング格下げで売られた。 セクターでは海運、サービス、精密機器が上昇率上位となった一方、空運、保険、石油石炭が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 前日の米株高を追い風に、本日の東京市場は概ねしっかりの展開。ただ、景気後退懸念を織り込む動きには歯止めがかからず、資源関連株を中心に景気敏感株の軟調が続いている。 前日の下院での議会証言では、パウエルFRB議長がインフレ抑制に「無条件」で取り組むとし、景気を犠牲にしてでもインフレ抑制に最優先で取り組む姿勢を示したことが話題となった。これにより、一段と景気後退(リセッション)は避けられないとの見方が強まり、資源関連株などの売りに繋がった。 リセッションを織り込む動きが加速するなか、将来の景気動向をも映す米10年債利回りは23日に3.08%と、6月14日に付けた高値3.48%から大幅に低下している。また、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も、リセッションに伴うインフレ減速を織り込む動きから、同日に2.50%まで低下し、4月21日の最高値3.02%からの下落率は大きなものとなっている。 こうした中、にわかに動意づいているのが、グロ−ス株だ。前日のナスダックが大きく上昇したのに倣い、本日の東京市場でもマザーズ指数が前引け時点で+4.80%と急伸している。東証プライム市場でもグロ−ス株が久々に強い動きを見せている。これは、リセッションを急速に織り込む傍ら、FRBが想定よりも早い段階で利上げの打ち止め、再緩和を強いられる可能性があると捉える動きを表していると推察される。 ただ、直近の高官発言から、FRBは7月以降も0.75ptの大幅利上げを続ける可能性が高まっている。また、6月から始まった量的引き締め(QT)は9月からは2倍のスピードに加速する。数十年ぶりの大幅利上げの連続実施に加えて、過去にない急速なペースで進めるQTという異例の組み合わせによる引き締め策の進行を踏まえると、グロ−ス株の本格復調を期待するのはまだ気が早いだろう。今日のマザーズ指数の急伸をもってグロ−ス株に強気のスタンスで臨むのは時期尚早と思われ、依然として投資家には慎重な行動を求めたい。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いか。米長期金利の低下などは値がさ株の支援要因とみられ、相場にポジティブだが、日経平均は今週、26500円が近づく場面では度々押し戻されている。前引け時点で既にこの水準に近いところまで上昇してきており、午後は上値が重くなる可能性もあろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/24 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、イベント無難通過も失速、信越化学から窺う景気後退懸念の根深さ
日経平均は小幅続落。2.84円安の26146.71円(出来高概算5億3388万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場ではNYダウが47.12ドル安と小幅反落。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は上院銀行委員会証言でインフレ抑制を強く公約すると同時に景気後退の可能性を否定しなかった。これにより、利上げが想定程には急速に進まないとの思惑から買い戻しが強まる場面があった。バイデン大統領がインフレ対策としてガソリン税免除を議会に提案したことも支援要因となった。しかし、根強い景気後退懸念が上値を抑制し、結局小幅安で終了。ナスダック総合指数も-0.14%と小幅反落。日経平均は14.66円安からスタートも、前日にNYダウ先物の下落を受けて米株安を織り込んでいたこともあり、イベントの無難通過による安心感から上昇転換。朝方には26401.97円(252.42円高)まで上昇した。しかし上値も重く、その後失速すると前引けにかけて再び下落に転じた。 個別では、郵船<9101>や商船三井<9104>の海運株が大きく下落しており、住友鉱<5713>、大阪チタ<5726>、INPEX<1605>など市況関連株が大幅安。三菱商事<8058>や丸紅<8002>など商社株、日本製鉄<5401>、三菱重<7011>、コマツ<6301>、クボタ<6326>などの景気敏感株も軟調。信越化<4063>、キーエンス<6861>など値がさ株の一角も大幅に下落。東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>などの半導体関連や、新光電工<6967>、村田製<6981>などのハイテク株は朝高後に失速して下落転換。新型コロナ治療薬の継続審議が嫌気された塩野義<4507>は大きく下落している。 一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>が堅調。東京海上<8766>が大きく上昇しており、中外製薬<4519>やアステラス製薬<4503>などの医薬品、JR西<9021>、JAL<9201>などの旅行関連、花王<4452>や資生堂<4911>などの内需系がしっかりとした動き。非公開化を巡る買収価格に関する報道が材料視された東芝<6502>のほか、中国での合弁会社設立を発表したロート製薬<4527>、今期大幅増益見通しを公表したサツドラホールディングス<3544>がそれぞれ急伸。また、レーティング格上げが観測されたMonotaRO<3064>、カルビー<2229>、鴻池運輸<9025>、ミクニ<7247>なども大幅に上昇。 セクターでは海運、鉱業、非鉄金属が下落率上位となった一方、空運、保険、陸運が上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の34%、対して値上がり銘柄は60%となっている。 本日は、朝方一時250円程上げた日経平均が結局、前場は下落して終えるなど方向感に乏しい展開となっている。前日、NYダウ先物やナスダック100先物が1%以上下げていたことを受けて既に軟化していたため、パウエル議長の議会証言がサプライズ無く終わり、米株市場も軽微な下げにとどまったことから、本日は買い戻しが優勢になると考えていた。 しかし、一昨日と同様、日経平均は一時26500円近くまで上昇した後、大きく失速する展開となっており、この水準ではかなり戻り待ちの売りが強い様子。個別株でも、年初来安値圏にある東エレクなど半導体関連株が朝方の上昇を維持できずに下落に転じているあたり、上値の重さはかなり強い印象を抱く。 また、気掛かりなのは信越化学の動き。高い市場シェアと高収益率を誇り、化学セクターの中では多くの機関投資家がトップピックとしてあげる同社株が、本日4%を超える下落となっており、連日で年初来安値を更新している。日足チャートでは7日連続での陰線形成となり、週足で見ても、チャート形状の悪化が著しい。 財務健全・高収益のクオリティ株として代表的な同社株がこれだけ売られているのは注目に値する。住宅市場との連動性が高い塩ビ樹脂のほか半導体シリコンなどで世界トップシェアを誇る同社の株価急落は、やはり先週から一段と加速している景気後退を織り込む動きを表していると推察される。ファンダメンタルズに基づく長期目線の実需筋によるこうした景気後退を織り込む動きはまだ続く可能性が高く、当面は押し目買いのチャンスと見るべきでなく、しばらくは売りが一巡するのを待つのが賢明だろう。 後場の日経平均はもみ合いか。上値の重さが強く意識される一方、心理的な節目の26000円が近づく場面では買いも入りやすく、26000~26500円を意識したレンジ推移が続きそうだ。また、サプライズはないだろうが、今晩は下院にてパウエル議長の議会証言が予定されている。新味な発言があるとは思われないが、内容を確認したいとの思惑が一層動きを乏しくさせると考えられる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/23 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続伸、米株高を追い風にできず相場の軟弱さ伝わる
日経平均は小幅続伸。9.64円高の26255.95円(出来高概算5億7216万株)で前場の取引を終えている。 3連休明け21日の米株式市場ではNYダウが641.47ドル高と3日ぶり大幅反発。値ごろ感からの買いや海外市場の流れを受けて、寄り付きから上昇。バイデン大統領が「景気後退は避けられる」との考えを示したことで過度な懸念が緩和したこともあり、終日堅調に推移。ハイテク株には自律反発狙いの買いが強めに入り、ナスダック総合指数は+2.50%と大幅に続伸。米株高を受けて日経平均は195.41円高からスタート。しかし、寄り付きと同時に付けた26462.83円(216.52円高)をこの日の高値に失速すると、時間外取引のナスダック100先物などが軟調ななか、前場中ごろには26157.09円(89.22円安)まで下落。その後持ち直したが、戻りは鈍く、前日終値を挟んだもみ合いとなった。 個別では、東エレク<8035>やルネサス<6723>など半導体関連が全般大きく下落し、三井ハイテック<6966>、新光電工<6967>、太陽誘電<6976>などのハイテク株も売り優勢。豪州での石炭ロイヤリティ率引き上げを受けて収益性悪化への懸念から三菱商事<8058>が急落し、原料炭事業への依存度が大きい双日<2768>も大幅安。川崎汽船<9107>や郵船<9101>、INPEX<1605>、大阪チタ<5726>などの市況関連株も全般安い。6月既存店売上高の動向が嫌気された西松屋チェ<7545>も軟調。 一方、ダブル・スコープ<6619>が上値追い。円安進行を追い風にSUBARU<7270>やマツダ<7261>、三菱自<7211>などの自動車関連が大幅高。ソフトバンクG<9984>やリクルートHD<6098>のほか、キーエンス<6861>、ファナック<6954>などのFA関連など、ハイテク株の一角が逆行高。アステラス製薬<4503>や第一三共<4568>の医薬品も高い。レーティングの格上げ観測でニッパツ<5991>、武蔵精密<7220>、アダストリア<2685>は大きく上昇。今期見通しが好感されたツルハHD<3391>は急伸。三井住友<8316>の出資報道を手掛かりにSBI<8473>も大幅高。 セクターでは医薬品、ゴム製品、輸送用機器が上昇率上位となった一方、鉱業、海運、卸売が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の44%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 前日に大きく上昇した日経平均は、本日はもみ合い、マザーズ指数にいたっては大きく下落している。前日の東京時間に、時間外取引のナスダック100先物などが大きく上昇していたことから、米株高はある程度は織り込み済みと思われたが、日経平均は一時マイナスに転じるなど、想定以上に弱い印象を受ける。 前日の日経平均は後場も一段高となって、16日と17日に空けたマドを早々に埋めたが、その直後から急失速する展開となった。そして、本日は米株高の追い風がありながらも乗り切れないといった嫌な流れになっている。マド埋めを果たしたことで早くもリバウンドに一服感が漂っている。 前日の米株市場の上昇についても、先週までの大幅下落を踏まえれば、自律反発の域を出ず、弱気相場下における一時的な反発に過ぎないと捉えている市場関係者がほとんど。本格的なリバウンドを期待するには、前日くらいの上昇率が3日以上は連続して起こり、より売り方の買い戻しを誘う必要があるだろう。 週明けに10%近く急落した後、前日には4%超反発したINPEXは再び3%超と大幅下落を強いられており、景気後退入りへの懸念も根深い様子。三菱重<7011>や川崎重<7012>などの防衛関連株も割り込んだ25日移動平均線を下回った推移が続き、本日も戻りが鈍い。 インフレ高進・利上げ加速や景気後退に対する懸念という根本的な不安要素がくすぶる中、リバウンドを期待する向きも少なく、日経平均でいえば26500円が近づいてくる水準では戻り待ちの売りが優勢となるのも頷ける。 また、今晩以降、2日間にわたって米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、上下院において議会証言に臨む。米連邦公開市場委員会(FOMC)通過直後のため、サプライズとなる可能性はほとんどないが、インフレ抑制に対してなりふり構わない積極的な姿勢を見せると、投資家心理が弱まっているなか、売り材料視される可能性があり、油断はできないだろう。 パウエル議長の議会証言を見極めたいとの思惑から、後場も日経平均は動意薄で、もみ合いが続きそうだ。前日とは対照的に、時間外取引のNYダウ先物やナスダック100先物が下げ幅を広げてきており、香港ハンセン指数も下落しているなか、東京市場でも売りが優勢となる可能性もあろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/22 12:07
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日経平均は3日ぶり大幅反発、買い戻し優勢も自律反発の域出ず
日経平均は3日ぶり大幅反発。453.93円高の26225.15円(出来高概算5億2060万株)で前場の取引を終えている。 前日の米株式市場は奴隷解放記念日(ジューンティーンス)の振替休日で休場。一方、欧州市場ではイギリスFTSE100やドイツDAXなどが上昇し全般堅調。前日の欧州株高を受けて日経平均は299.70円高と26000円を回復してスタート。1ドル=135円台に再び乗せた為替の円安進行に加えて、時間外取引の米株価指数先物が全般大きく上昇しているなか、買い戻しが続いた。前場中ごろに一時騰勢が鈍化する場面もあったが、アジア市況が堅調な出足を切ったことで再び買いが強まると、26265.35円(494.13円高)まで買われる場面があった。 個別では、東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>のハイテク株のほか、三菱重<7011>やINPEX<1605>、郵船<9101>、クボタ<6326>などの市況関連株に買い戻しが入っている。エムスリー<2413>、SHIFT<3697>といったグロ−ス(成長)株も全般大きく上昇。ダイフク<6383>はレーティング格上げもあり大幅高。東証プライム市場値上がり率上位には、洋上風力発電に関する一部での特集記事が材料視され、レノバ<9519>やイーレックス<9517>など再生可能エネルギー関連がランクイン。ほか、SREHD<2980>、インソース<6200>、ギフティ<4449>などの中小型グロース株も散見され、個人投資家人気の高いダブル・スコープ<6619>もランクイン。三井松島HD<1518>はドイツ政府の石炭火力発電への回帰が手掛かりとされているもよう。一方、KDDI<9433>、山崎パン<2212>などディフェンシブ系が軟調。 セクターでは鉱業、空運、石油・石炭を筆頭に全面高。東証プライムの値上がり銘柄は全体の90%、対して値下がり銘柄は8%となっている。 前日の米株市場が休場で、手掛かり材料難のなかではあるが、本日は先週からの急落の揺り戻しといった様相で全般買い優勢の展開。市況関連株もハイテク・グロース株もどちらも足元売られすぎてきた銘柄に買い戻しが入っている。ただ、前日までの下落率を考慮すると、自律反発の域を出ていないといえる。 日経平均は短期的には16日と17日に空けたマド埋めに相当する26431.20円までの戻り余地がありそうで、今晩の米国市場が大幅反発でもすれば可能性はあるだろう。ただ、本稿執筆時点(21日午前11時前)において既に時間外取引のナスダック100先物が1.5%超上昇しており、今晩の米国株高はある程度織り込み済みと推察される。日経平均が明日も続伸し、マドを埋めるためには米株市場がより大きく上昇する必要があろう。 投資家の最大の関心事である世界的な利上げペースの加速や景気後退入り懸念は払拭できていない。景気の再減速が懸念される中国では、政府が原材料コスト上昇によって打撃を受けている川下企業を支援するために、新たな「桁外れ」の政策を計画していると、現地メディアが20日伝えた。中国景況感の底入れに期待したいところだが、米国のバーンズ駐中国大使が「中国のゼロコロナ政策は23年に入っても続く公算が大きい」と発言するなど、なお先行きは不透明だ。 また、英イングランド銀行(中央銀行)はインフレを押し上げるポンドの下落を抑制するため、より積極的に金利を引き上げる必要があると、金融政策委員会(MPC)のマン委員は主張したという。政府の景気支援策や力強い雇用、消費者の積み上がった貯蓄などを背景に国内の価格上昇圧力は従来想定よりも強い公算が大きいと指摘している。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、インフレ抑制に動く姿勢は金融市場の動向に左右されないとし、7、9月の利上げを改めて支持した。 さらに、20日、サマーズ元米財務長官は40年ぶりの高インフレを抑制するには米国で5%を超える失業率が5年間続く必要があると指摘。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)が示した失業率見通しは今年5月の3.6%から24年までに4.1%への上昇となっており、大きな乖離がある。サマーズ氏は、FRBの金融政策の舵取りになお不信感があるとの姿勢だ。 利上げ加速や景気後退、これらに伴う企業業績の悪化、そして業績下方修正による株価バリュエーションの更なる調整といった悲観シナリオを払しょくすることは難しく、当面は弱気相場の延長戦となろう。投資家は自律反発狙いの買いもいいが、小まめな利食い売りを欠かさないようにするべきだろう。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いか。アジア市況や時間外取引の米株価指数先物が上昇しており、外部環境が良好なことが引き続き支援要因となる一方、連休明けの米株市場の動向を見極めたいとの思惑も働き、次第に様子見ムードが広がりそうだ。引けにかけてはもみ合いの様相が強まりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/21 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、実需筋は粛々と持ち高調整進める
日経平均は大幅続落。428.32円安の25534.68円(出来高概算6億1328万株)で前場の取引を終えている。 先週末17日の米株式市場でNYダウは38.29ドル安と続落。連日の急落を受けた下げ過ぎ感から買い戻しが先行。ただ、景気後退懸念に伴う原油価格の急落などが警戒され重しとなった。また、株価指数先物、オプション、個別株オプションの3つのデリバティブ取引の決済が重なるトリプルウィッチングに伴うテクニカルな取引を背景に終日上下に振れ、結局NYダウは小幅安で終了。一方でハイテク株には買い戻しが入り相場を下支え、ナスダック総合指数は+1.43%と反発した。週明けの日経平均は193.62円高と26000円を回復してスタート。しかし、寄り付きをこの日の高値に失速すると、間もなくして26000円を再び割り込んだ。朝方大きく上昇していた時間外取引のナスダック100先物が上げ幅を縮めると、その後はじりじりと下げ幅を広げる展開が続き、下げ幅は400円を超えた。 個別では、原油先物価格の下落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>などが急落。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連も軒並み急落している。大阪チタ<5726>や三井松島HD<1518>などの中小型の資源関連株も大きく下落。三井物産<8031>、丸紅<8002>などの商社株も大幅安。ほか、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>など半導体関連、新光電工<6967>や三井ハイテック<6966>などのハイテク株も全般きつい下落率に見舞われている。 一方、ソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ダイキン<6367>が逆行高で、トヨタ自<7203>などの自動車関連は円安進行を支援要因に上昇。三菱自動車<7211>は値上げ実施も伝わっており、大きく上昇している。ほか、KDDI<9433>、武田薬<4502>などのディフェンシブ銘柄や、原油安でコスト増懸念が和らいだJAL<9201>、ANA<9202>の空運株が買われている。高水準の自社株買いを発表した新光商事<8141>は急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位にランクイン。NTT<9432>のテレワークへの取り組みから思惑が向かったブイキューブ<3681>も大幅に上昇している。 セクターでは鉱業、石油・石炭製品、卸売を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、空運、医薬品、輸送用機器の3業種が上昇した。東証プライムの値下がり銘柄は全体の85%、対して値上がり銘柄は13%となっている。 週明けの東京市場は自律反発もむなしく、日経平均は寄り付き天井の形で大きく失速。先週末の米株市場ではナスダックが反発したとはいえ、連日の急落を踏まえれば上昇率はあまりに小幅。また、NYダウにいたっては自律反発どころか続落となった。連日の急落後でもほとんど反発が見られないあたり、足元の相場の状況はかなり重症のようだ。 また、東京市場は先週末と同様、これまでけん引役だった資源関連株や防衛関連株に厳しい売りが目立っている。INPEXは昨年9月以来となる13週移動平均線割れとなっており、三菱重<7011>などの防衛関連株も長らく下値支持線となってきた25日線を大幅に割り込んできている。東エレクなどの半導体関連株も連日で急落し、年初来安値の更新が続いている。 先週末からの繰り返しにはなるが、相場はいよいよ世界的な金融引き締めが景気後退を招くオーバーキルを本格的に織り込み始めていると思われる。今晩の米国市場は祝日で休場なため海外勢の資金フローは限られるとの指摘も聞かれるが、東証プライム市場の売買代金は先週末の4兆円超えに続き、本日も前引け時点で1兆円4億円程とそれなりに膨らんでいる。東証グロース市場の新興株の下落率が軽微なのに対して、東証プライム市場の主力大型株の下落率がかなり厳しい点からも、個人投資家が粘っている一方、実需筋が持ち高調整の売りを加速してきている印象を受ける。 先物市場では、先週は東証株価指数(TOPIX)の先物手口において、週を通じてゴールドマン・サックス(GS)証券の大幅な売り越しが目立った。商品投資顧問(CTA)などの短期筋が手掛けることの多い日経平均先物に比べて、TOPIX先物でのGSによる大量売り越しは世界の景気動向をもとに投資戦略を立案するグローバルマクロ系のヘッジファンドが売りに傾いていることを示唆している。中国での都市封鎖(ロックダウン)の再拡大懸念や米国での相次ぐ経済指標の下振れ、景気よりもインフレ抑制を優先する中央銀行の姿勢などを背景に、マクロ系ファンドも本格的に景気後退を織り込み始めたと推察される。 週末にかけては米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が7月会合でも0.75ptの大幅利上げを支持する姿勢を明らかにしたほか、アトランタ連銀のボスティック総裁もインフレ抑制のためには何でもするとの鬼気迫る姿勢を見せた。 世界的な利上げ加速ペースの拡大や景気後退の度合いが計りきれず、株価への織り込みも十分とはいえないという指摘も多く聞かれるなか、当面は粛々と持ち高を調整する動きが続きそうだ。今年に入って最も厳しい売りに見舞われている半導体が代表するハイテクセクターに加えて、これまでけん引役だった資源関連、防衛関連の銘柄も相次いで急落している動きからもそうした様子が窺える。 後場の日経平均は下値模索の展開が続きそうだ。上述した通り、米株市場で自律反発がほとんど見られず、足元の相場はかなり弱気な状態。また、今の下落相場においては短期筋だけでなく実需筋による持ち高調整も出ていると推察される。買い戻す理由が当面見当たらないなか、後場の買い戻しも期待できそうにないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/20 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、オーバーキル懸念強まり調整は長期化か
日経平均は大幅反落。572.70円安の25858.50円(出来高概算7億1001万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でNYダウは741.46ドル安と大幅反落。スイス国立銀行(中央銀行)が予想外に2007年以来の利上げに踏み切ったほか、英イングランド銀行(同)も5会合連続での利上げを実施し、世界的な金融引き締めの加速が警戒された。また、米国の住宅着工件数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数が軒並み予想を下回ったことも投資家心理を悪化させた。連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げによる景気後退懸念も強まり、終日軟調に推移。ナスダック総合指数も-4.08%と大幅反落。欧米株の急落を受けて日経平均は443円安と26000円割れからスタート。寄り付き直後に25720.80円(710.40円安)とこの日の安値を付けた後は下げ渋ったが、自律反発はむなしく、その後は安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、リクルートHD<6098>などの主力ハイテク・グロース(成長)株が軒並み急落。ルネサス<6723>やアドバンテスト<6857>、SUMCO<3436>など半導体関連の下落が特に目立つ。為替の円高への揺り戻しに加えて6月の生産計画の下方修正が伝わったトヨタ自<7203>が大きく下落し、日産自<7201>、デンソー<6902>などの自動車関連も大幅安。INPEX<1605>や三井物産<8031>などの資源関連、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連、信越化<4063>、日本製鉄<5401>などの景気敏感株も総じて下落。東証プライム市場値下がり率上位にはギフティ<4449>、MSOL<7033>といった中小型グロース株の一角のほか、富士通ゼネラル<6755>、アルバック<6728>、スタンレー電気<6923>、新光電工<6967>、昭和電工<4004>など入った。 一方、東証プライム売買代金上位ではファナック<6954>、ベイカレント<6532>、東レ<3402>、ダブル・スコープ<6619>などが逆行高。レーティング格上げが観測された京王電鉄<9008>やデサント<8114>、eスポーツ事業への参入を発表したソルクシーズ<4284>などが値上がり率上位にランクイン。業績予想を上方修正したエアトリ<6191>も高い。ほか、神戸物産<3038>、山崎パン<2212>、カルビー<2229>などの内需系ディフェンシブ銘柄が堅調。 セクターでは鉄鋼、輸送用機器、鉱業を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、繊維製品、食料品の2業種が上昇した。東証プライムの値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は12%となっている。 日経平均は海外市場の急落を受けて大幅安を強いられ、5月13日以来となる26000円割れとなっている。寄り付きから急落した後はもみ合い状態で下値模索の展開とはなっていないが、自律反発の動きはほとんど見られず、26000円を割れても下げ達成感が台頭している様子はない。 また、興味深いのは、前日の米株市場ではナスダックの下落率がとりわけ大きかったにもかかわらず、本日の東京市場ではベイカレントやJMDC<4483>といったグロ−ス株の一角が逆行高となっているほか、エムスリー<2413>などのグロ−ス株の下落率があまり大きくない。一方で、今まで全体相場が軟調ななかでも強い動きを続けてきたINPEXや三菱重工、大阪チタ<5726>といった景気敏感株の下落率の方が大きい。こうした点から、今日の下落相場においては、短期筋主導の先物売りも出ているだろうが、実需筋の売りもそれなりに出ていると推察される。実際、前引け時点での東証プライムの売買代金は1兆6000億円あまりと、15日、16日に比べてまずまず膨らんでいる。 世界経済の中心である米国において経済指標の大幅な下振れが相次ぐなか、FRBだけでなく、世界各国の中央銀行がインフレ抑制のために相次いで利上げを急いでいる。それでも、インフレのピークアウトが未だ見通せないなか、今後さらに利上げペースが加速する可能性もあり、投資家はいよいよ当局による積極的な引き締めが景気後退を招くオーバーキルへの警戒感を本格的に織り込み始めたと考えられる。原油先物価格が反発している中でも、INPEXが急落していることや、上値追いが続いていた防衛関連株の急落は、こうした背景に基づく実需筋の売りを表していると考えられる。 短期筋による先物主導の下げであれば、状況次第ですぐに買い戻し、相場の反発なども想定されるが、実需筋が売り始めたとなると、相場の反発は当面期待しにくく、調整局面は長引きそうだ。当面は我慢強く相場の基調転換を待つべき局面とみられ、安易な押し目買いは避けた方がよいだろう。 後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの思惑が下値を支えることも考えられるが、世界的な金融引き締め懸念が重くのしかかる。また、本日午後には日銀金融政策決定会合の結果公表と黒田総裁の記者会見が予定されている。為替動向への影響力が大きいだけに、総裁の発言内容などは注目度が高い。模様眺めムードが広がりやすいなか、積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/17 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反発、FOMC無難通過も底打ちの確信深まらず
日経平均は5日ぶり反発。367.89円高の26694.05円(出来高概算5億6517万株)で前場の取引を終えている。15日の米株式市場でNYダウは303.70ドル高と6日ぶり反発。イタリア国債利回りの急騰を受けて欧州中央銀行(ECB)が緊急会合を開き、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した債券の償還金再投資に柔軟性を適用する方針を示したことが安心感をもたらした。一方、6月小売売上高やNY連銀製造業景気指数が予想外のマイナスに落ち込んだものの、金利が低下したことでハイテク株の買いに繋がった。その後、連邦準備制度理事会(FRB)が市場の予想通り連邦公開市場委員会(FOMC)で1994年以降最大となる0.75ptの利上げを決定し、インフレ抑制に努める強い姿勢を見せると一段と買いが広がった。また、パウエル議長が0.75ptの利上げが異例であることを強調し金利がさらに低下すると終盤にかけてハイテク株の買いが強まった。ナスダック総合指数は+2.50%と大幅続伸した。欧米株高を受けて、日経平均は389.36円高と大幅上昇でスタート。朝方は買い戻しが先行し、午前中ごろには26947.70円(621.54円高)まで上昇した。しかし、アジア市況の軟調推移や、朝方大きく上昇していた時間外取引のナスダック100先物が上げ幅を縮めるに伴い、日経平均も前引けにかけては騰勢を弱めた。個別では、レーティングの格上げがあったファーストリテ<9983>が大きく上昇し、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>など値がさ株の上昇が大きめ。トヨタ自<7203>や三菱自<7211>など自動車株が大幅高で、三菱重工<7011>や川崎重工<7012>の防衛関連、三菱商事<8058>、三井物産<8031>の商社株、日本製鉄<5401>、住友鉱山<5713>など資源関連の一角も高い。中国南方航空が737マックス機のテスト飛行を実施したとの報道を受けて米ボーイングが買われたことで、東レ<3402>が急伸。岸田首相が「県民割」について7月前半から対象の旅行先を全国に広げると表明したことを好感し、エイチ・アイ・エス<9603>、エアトリ<6191>など旅行関連の一角が強い動き。今期見通しが好感されたコーセル<6905>、中計目標を引き上げたキョウデン<6881>もそれぞれ大きく上昇。一方、ソフトバンクG<9984>や東エレク<8035>は高く始まったものの、その後失速し、小幅な上昇にとどまっている。リクルートHD<6098>、信越化学<4063>は朝高後に下落に転換。また、SHIFT<3697>やラクス<3923>、Sansan<4443>などグロ−ス株で寄り天井のものが多い。ほか、川崎汽船<9107>が大きく下落し、郵船<9101>、商船三井<9104>も軟調。メルカリ<4385>も冴えない動きで、レノバ<9519>は大きめに下落。ハイテク株では新光電工<6967>が大幅に下落。MSOL<7033>は決算を受けた前日の急落に続き大幅続落。レーティングの格下げがあったKLab<3656>も大きく下落している。セクターでは水産・農林、輸送用機器、精密機器を筆頭にほぼ全面高の展開。一方、海運のみが下落となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の83%、対して値下がり銘柄は14%となっている。FOMCでは約27年ぶりとなる0.75ptの利上げが決定された。FRBは先週までは6月会合では0.5ptの利上げを行う可能性が高いとし、5月のFOMC時点では0.75ptの利上げについては「積極的に議論していない」としてきたが、今回は事前のアナウンスを破る形で0.75ptの利上げに踏み切った。ウォール・ストリート・ジャーナル紙による事前の報道もあり、市場は0.75ptの利上げを織り込んでいたため、FOMCの結果公表直後の米国市場の反応は一時的に上下に振れたものの大きなものではなかった。ただ、その後、パウエル議長が記者会見で「次の7月会合では0.5ptか0.75ptの利上げに動く可能性が高い」としたうえで、「今回の0.75ptの利上げ幅は異例であり、この幅が普通になるとは見込んでいない」と説明した後から、株式市場は大きく上昇した。市場は7月以降も0.75ptの利上げが行われる可能性が高いと警戒していたため、0.75ptの利上げは異例としたパウエル議長の説明を想定程にはタカ派でないと捉え、売り方の買い戻しが進んだようだ。今会合では四半期に一度の政策金利・経済見通しが公表された。政策金利見通しの中央値は2022年末が3.4%と3月時点の1.9%から大幅に引き上げられ、23年末も2.8から3.8%へと大きく引き上げられた。一方、22年の経済成長率は3月時点の2.8%からトレンドとされる1.8%をも下回る1.7%にまで大きく下方修正され、23年の成長率も2.2%から1.7%へと引き下げられた。ただ、22年比で横ばいであるほか、一部では1.5%まで下方修正されて、景気後退を伴うハードランディングが示唆されるのではないかという懸念もあったため、やや安心感を誘ったようだ。しかし、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先する姿勢が示唆されたという意味で、内容的にはタカ派色が濃い。それでも市場はFRBのインフレ抑制への決意を評価したとみられるが、結局、インフレのピークアウトが見通せないなか、今後の物価指標次第では再び利上げペースの引き上げの可能性があるわけで、不透明感が払しょくされたわけではない。株式市場も売り方の買い戻し以上に買いが入るとは考えづらく、相場が底を打ったと判断するには時期早々だろう。実際、本日の東京市場ではハイテク・グロース株で朝高後に失速しているものが多く見受けられ、投資家の疑念は根強い様子。また、FOMCに隠れてあまり話題になっていないが、前日に発表された米5月小売売上高は前月比-0.3%と予想(+0.3%)に反して5カ月ぶりにマイナスとなったほか、前回、市場予想を大幅に下回った6月NY連銀製造業景気指数も前月からは改善したとはいえ、-1.2と市場予想(+2.3)を下回った。FRBの経済見通しと合わせて考慮すれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)のリスクは更に高まったと考えられる。市場の見方はまだ覚束ないところがあり、先行きについては不安定さが伴う。また、今年はFOMC直後に上昇してもその後に安値を更新する展開が多いため、今回も同様な展開にならないか注視する必要がある。投資家はイベント通過後の上昇に油断することなく慎重な対応が引き続き求められよう。午後の日経平均は外部環境が不透明ななか、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑もあり、前引けにかけて失速した流れが続きそうだ。今晩には英国で金融政策委員会が予定されているほか、明日には黒田日銀総裁の記者会見もある。総裁から円安をけん制するような発言が出るか注目され、イベント前に上値も重くならざるを得ないだろう。(仲村幸浩)
<NH>
2022/06/16 12:15