ランチタイムコメントニュース一覧

ランチタイムコメント 日経平均は続伸、市場の関心は金融政策よりも実体経済へ  日経平均は続伸。154.42円高の28219.70円(出来高概算7億4456万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は193.24ドル高(+0.61%)と続伸。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がインフレを目標値に引き下げるまで力強く行動すると公約し金利が上昇したことで売りが先行。欧州中央銀行(ECB)が0.75ptの大幅利上げを実施したほか、追加利上げの可能性が指摘されたため警戒感も重石になった。一方、FRBの利上げについてはほぼ織り込まれたほか、米経済の景気後退入り回避への期待も根強く、一進一退の末に後半からは買い戻しが優勢となった。ナスダック総合指数は+0.59%と続伸。 日経平均は139.43円高からスタートすると、寄り付き直後に28286.02円(220.74円高)まで上昇。ただ、株価指数先物・オプション9月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)に伴う売買も絡み、その後は一進一退で方向感に欠ける動きが続いた。なお、SQ概算値は28253.40円だった。 個別では、ダブル・スコープ<6619>、レノバ<9519>が物色活発で売買代金上位で大幅高。塩野義<4507>、中外製薬<4519>など医薬品のほか、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、京セラ<6971>、日東電工<6988>、イビデン<4062>など電子部品の一角が高い。ギフティ<4449>、SREHD<2980>、ラクスル<4384>など中小型グロース株が全般強い動き。新日本科学<2395>、ISID<4812>はレーティングを材料に急伸。一方、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、HOYA<7741>、ダイキン<6367>など日経平均への寄与度の大きい銘柄で軟調なものが多い。グロース株高のなかメルカリ<4385>は下落。8月既存店売上高がやや軟調だったラウンドワン<4680>、レーティング格下げが観測されたIIJ<3774>なども売られた。 セクターではサービス、海運、医薬品が上昇率上位となった一方、ゴム製品、空運、精密機器が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体67%、対して値下がり銘柄は28%となっている。 日経平均は続伸するも伸び悩み。一時は25日移動平均線を超える場面があったが、結局、同線が上値抵抗線として作用する形となっている。小幅ではあるがSQ値を下回った推移の時間が続いていることもあり、今後の株価はやや冴えない展開が想起されやすいか。 一方、米国を含め、株式市場においては下値では押し目買い意欲も見られており、ずるずると下げ続けるような展開にはなっていない。前日はECBが0.75ptの過去最大の利上げに踏み切り、今後も0.75ptの利上げの可能性が示唆されたことで、グローバルに金利が上昇した。米10年債利回りも8日、3.32%(+0.06pt)と再び上昇に転じた。また、パウエルFRB議長の討論会での発言は新味に欠けるものではあったが、ジャクソンホール会議でのタカ派的な主張を改めて強調するものだった。そうした中でも、前日の米株式市場は主要株価3指数が揃って続伸し、方向感に欠ける動きながらも堅調さを見せた。 20日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)については、0.75ptの利上げがほぼ完全に織り込まれた。これにより、来週13日に発表される米8月消費者物価指数(CPI)での警戒感もやや薄れてきた様子。大幅に上振れでもしない限り、市場の反応は乏しいものに終わりそうだ。9月FOMCについては、政策金利見通し(ドットチャート)でターミナルレート(利上げの最終到達点)が4%超えの水準にまで引き上げられるのかが、もう一つの注目点になる。金利先物市場を見る限り、2023年3月~5月頃の3.9%台が政策金利の最高水準とされており、ターミナルレートについてはまだ織り込み不足とみられる点は一つ気掛かりではある。 しかし、総じて金融政策そのものが市場に与える影響力は小さくなってきている印象を受ける。市場はもはや各国中央銀行による政策動向そのものよりも、今後も当面続くだろう金融引き締めが実体経済、企業業績にどの程度影響を与えるのかという点に移ってきているようだ。この点は、7-9月期決算が発表される11月中旬頃までは明確になってこない。それまでは他の条件を所与のものと捉えるならば株式市場はレンジ相場が続きそうか。 むろん、その頃までに、欧州のエネルギー問題の一段の悪化などを通じて市場に動揺が走る可能性はある。また、米10年債利回りが6月に付けた高値を超えてくれば、株式の売り圧力は強まるだろう。他にも、足元の米国の実質金利の上昇ペースに対して、米国企業の予想PER(株価収益率)の下落ペースが追い付いておらず、バリュエーション調整が不十分な点も気掛かりで、こうした不整合がどこかで一気に修正される可能性もある。 しかし、それでも、良い意味で言えば底堅い株式市場の動きを見ていると、やはり、まだまだ大規模緩和相場時代に生まれた溢れたマネーが溜まっているのかと考えざるを得ない。量的引き締め(QT)が今月から倍速では行われているが、効果が表れるには時間がかかるだろう。当面はボラタイルながらも、カネ余り相場の余韻に支えられるような時期を過ごすことになりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/09/09 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、一転しての急反発も安心には至らず  日経平均は大幅反発。561.95円高の27992.25円(出来高概算5億6374万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は435.98ドル高(+1.39%)と3日ぶり大幅反発。9月連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ確率上昇を受けて売りが先行。その後、NY原油先物価格が1月来の安値を更新し、長期金利も低下すると、インフレ懸念の緩和に伴い買い戻しが強まり上昇に転換。連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長が過剰な利上げリスクに言及したほか、地区連銀経済報告(ベージュブック)で物価上昇ペースの鈍化が報告されたため金利がさらに低下すると相場を一段と押し上げた。ナスダック総合指数は+2.13%と8日ぶりの大幅反発。日経平均は302.38円高と大幅反発でスタート。朝方から買い戻しが先行し、前引けまで一本調子で上げ幅を広げる動きが継続。一時28006.09円(575.79円高)まで上昇した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>の主力ハイテク株のほか、OLC<4661>、ダイキン<6367>、ファナック<6954>など値がさ株が総じて高い。東エレク<8035>、ルネサス<6723>など半導体関連も大幅高。米アップルの新製品発表もあり、イビデン<4062>、ローム<6963>の関連株も大きく上昇。インフォマート<2492>、サイボウズ<4776>、レノバ<9519>など中小型グロース株が急伸。原油安によるコスト減を好感しユニ・チャーム<8113>、花王<4452>、レンゴー<3941>なども強い動き。インバウンド需要回復への期待が続きJAL<9201>、ANA<9202>の空運も高い。NTT<9432>、バンナムHD<7832>、NTN<6472>はレーティングを材料に大幅に上昇。 一方、JMDC<4483>がグロース株高のなか逆行安。パーク24<4666>は東京五輪のスポンサー選定を巡る一件での幹部への調査が伝わり大幅に下落。アイモバイル<6535>は今期見通しが物足りないとの評価から大きく売られた。原油先物価格の急落を受けてINPEX<1605>などエネルギー関連が冴えない。 セクターでは空運、医薬品、パルプ・紙を筆頭にほぼ全面高となった。一方、鉱業のみが下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体94%、対して値下がり銘柄は5%となっている。 日経平均は前日の下落が嘘かのような一転しての大幅反発で一時28000円台にも乗せた。結果として、チャートでは75日、200日移動平均線が下値支持線として機能した形になり、底堅さを見せた。一方、上方に位置する25日線との乖離はまだあり、短期的なリバウンドに過ぎないとも言える。目先はイベントスケジュール的にも振れ幅が激しい展開が続きそうだ。 米国では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドやヘッジファンドのポジションが極端にショート(売り)に傾いており、需給面では買い戻しが入りやすい局面で、前日の戻りもそうした動きとの指摘が多い。一方、日本株については、これまでの海外投資家の7月20日以降の先物買いのボリュームや裁定残の推移からは、むしろロング(買い)の解消余地の方がありそうな状況で、やや状況は異なる。ただ、東京証券取引所が発表する空売り比率が7日時点で合計47.7と高水準に達していたため、ある程度の買い戻し余地はあったと推察される。 しかし、日経平均で600円近くもの上昇幅を説明するには買い戻しだけではやや説明不足な印象を受ける。買い戻しに加えて、原油先物価格の急落や米長期金利の上昇一服を背景にしたインフレ懸念の緩和が投資家心理を改善させていることが、もう一つ相場の押し上げ要因として働いていそうだ。 前日、原油先物価格は景気後退による需要減少への懸念や在庫増加を受けて急落。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)は1バレル=81ドル台と、今年1月来の安値水準まで下落した。これが、インフレ懸念の緩和に大きく寄与したと思われる。 また、前日は米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長の発言があった。FOMC前に下手に投資家に期待を持たせるようなことはないとの考えから、タカ派な発言内容を想定していたが、相対的にはややハト派寄りのような内容だった。ブレイナード氏は金融引き締めの必要性を主張しながらも、同時に引き締め過ぎるリスクにも言及。また、ドル高がインフレ沈静化に影響する可能性などに触れていた。 さらに、前日は、6月FOMCの直前に0.75pt利上げのリーク報道役を担ったウォールストリート・ジャーナル紙のニック・ティミラオス記者が9月20~21日に開催されるFOMCでの0.75pt利上げの可能性を報じた。こうした報道があったにもかかわらず、米長期金利が低下に転じたことで、大幅利上げは相当に織り込まれ、目先の金利上昇はピークアウトしたとの見方が優勢になったことも安心感をもたらしたと考えられる。 ただ、今晩には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会やパウエルFRB議長の討論会での発言が控えるほか、来週には米8月消費者物価指数(CPI)など重要イベントを多く迎える。また、モルガン・スタンレーのほか、ゴールドマン・サックス、ジェフリーズなどのストラテジストが今後の米国株について悲観的な見方を示していることも気掛かり。連日の激しいアップダウンに個人投資家も付いていけているとは考えられず、取引主体は依然として短期筋が中心だろう。日経平均も横ばいの25日線を超えるまでは強気に転じることは難しく、当面は慎重なスタンスが求められよう。(仲村幸浩) <AK> 2022/09/08 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は反落、レイバーデー明けもムード変わらず、CTAの反転に注意  日経平均は反落。263.68円安の27362.83円(出来高概算5億6577万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は173.14ドル安(-0.55%)と続落。連休明けの買戻しが先行し上昇して始まった。その後、8月サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数が予想外に2カ月連続で改善し、連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げが警戒されると、金利が急伸して株式は下落に転じた。長期債利回りが6月来の高水準に達したほか、中国の都市封鎖の拡大、ノルドストリームを巡る欧州のエネルギー問題が世界経済へのリスクになるとの懸念に繋がり、終日軟調推移となった。米株安を受けて日経平均は80.5円安からスタート。寄り付き直後は27500円を下値支持として意識する動きが見られたが、同水準を割ると売りが膨らみ、早い時間帯で27300円割れを見た。安いところでは27268.70円(357.81円安)まで下げ、その後は前引けまで27300円を挟んだもみ合いが続いた。 個別では、社長インタビューでのコンテナ船市況の沈静化への言及が嫌気された郵船<9101>が急落し、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>も大幅に下落。米長期金利の上昇を背景にレーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連のほか、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>のハイテク株、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、メルカリ<4385>のグロース株が軒並み安。三菱商事<8058>、IHI<7013>、日本製鉄<5401>、住友鉱<5713>など市況関連株も全般下落。Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>、インソース<6200>など中小型グロース株が東証プライム市場の下落率上位に散見される。業績予想を下方修正したくら寿司<2695>、レーティング格下げが観測されたPHCHD<6523>は急落し、下落率上位に並んだ。 一方、主力株では任天堂<7974>が堅調。昨日から2円以上も円安・ドル高が進んだことでマツダ<7261>、SUBARU<7270>、三菱自<7211>など自動車株は大幅に上昇。米10年債利回りが6月来の高水準まで上昇したことを受けて、東京海上<8766>、第一生命HD<8750>などの保険株も高い。今期2ケタ増益見通しや中期計画が評価されたウェルネット<2428>は急伸し、東証プライム市場の上昇率トップに踊り出た。ほか、ヨコオ<6800>、プレミアグループ<7199>などが上昇率上位に入った。 セクターでは海運、鉱業、石油・石炭を筆頭にほぼ全面安となった。一方、保険、その他製品、不動産、輸送用機器の4業種が上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体82%、対して値上がり銘柄は15%となっている。 日経平均は値幅を伴った下げで、7月19日来の安値水準まで下落。心理的な節目としてこれまでサポートしてきた27500円を大きく割り込み、下値支持線として見られてきた200日、75日、13週の主要移動平均線をも一気に割り込んできた。節目とサポートラインを同時に割り込んできたことで、日経平均を8月半ばに29000円台まで押し上げてきた商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドによる売り持ち高の積み上げが警戒されてくる。 レイバーデー明け、海外投資家の多くが夏休みから戻ってくるという観点から注目された前日の米国市場は、長期金利が急伸し、主要株価指数は揃って下落となるなど、連休前と同様の嫌なムードを引きずる形となった。米8月ISM非製造業景況指数が予想(55.3)に反して7月(56.7)から改善して56.9となったことで、底堅さを見せた米景気がFRBによる金融引き締め強化をさらに警戒させる形となった。 レイバーデー明けは起債シーズンで、マクドナルド、ウォルマートなどの大手企業が相次いで資金調達に動いたことも金利上昇の要因だろうが、いずれにせよ、米10年債利回りが6月14日付けた3.5%水準を突破していくとなると、株式市場には一段の重石となる。名目金利から期待インフレ率の指標である10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は6日、0.87%と、既に6月14日に付けた新型コロナパンデミック後の高値である0.88%に並ぶ水準まで上昇してきている。今後、名目金利が6月高値を超えてくるとなると、実質金利の一段の上昇を通じた株価下落にも注意が必要だ。 ISM非製造業景況指数を項目別にみると、支払価格が低下したことでインフレ沈静化への明るい兆しと捉える向きもいるようだが、支払価格の項目は71.5と7月(72.3)から小幅に低下したにすぎない。6月(80.1)から7月までの低下に比べると低下幅は大きく縮小した。拡大と縮小の境界値である50を大幅に上回ったままであることも問題だろう。 日経平均が718円高と急伸し、急速リバウンドへの起点となった7月20日を含む週から8月第4週(8/22~26)までの間、海外投資家は日経平均先物(ミニを除く)を1兆2200億円買い越していた。先週までの下落分だけではまだ買い持ち高の解消は十分でなかったため、レイバーデー明けで戻ってきた海外投資家が売りに傾いていることも、本日の日経平均の27500円割れの背景にはあるのかもしれない。 日本株を巡る需給の悪化傾向、米国での金利先高観・株式先安観、欧州でのエネルギー危機問題、中国でのロックダウン(都市封鎖)延長など世界のマーケットを巡る環境はかなり厳しいものになっている。こうした中、今月は20~21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、そしてその手前16日には米国版メジャーSQとも呼ばれるトリプルウィッチング(株式先物取引、株価指数オプション取引、個別株オプション取引の3つの取引期限満了日が重なる日)が控えている。これだけでも既に波乱の予感しかないが、今週はFOMC前のブラックアウト期間入りを直前に、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からの発言も相次ぐ。今晩はFRBブレイナード副議長、クリーブランド連銀のメスター総裁などの発言が予定されている。FOMC前に市場にとって甘い言葉を発する可能性は低く、タカ派発言が警戒されよう。 さらに、今晩は米地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表予定のほか、明日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会、パウエルFRB議長の発言が予定されている。重要イベントを前に後場の東京市場も引き続き軟調な展開が予想される。(仲村幸浩) <AK> 2022/09/07 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり小反発、今晩からの米株市場が本番、懸念要素は多い  日経平均は5日ぶり小反発。5.35円高の27624.96円(出来高概算4億2499万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場はレイバーデーで休場。欧州株式市場ではロシアの天然ガスパイプライン、ノルドストリームを巡るエネルギー危機への懸念から独DAXが-2.21%、仏CAC40が-1.20%と大幅安。一方、英FTSE100は+0.08%と横ばい。与党・保守党の党首選挙ではトラス外相が選出された。概ね予想通りの結果ではあったが、不透明感の後退や政策期待から引けにかけて下げ幅を縮小した。時間外取引の米株価指数先物が上昇するなか、日経平均は30.54円高からスタート。特にナスダック100先物が上げ幅を広げていたことで、祝日明けの今晩の米株市場での上昇を期待した買いが入ったもよう。前場中ごろには一時27813.78円(194.17円高)まで上昇した。しかし、その後は一転して失速する流れが続き、前引け直前には前日比マイナス圏まで落ち込む場面があった。 個別では、レーザーテック<6920>、ディスコ<6146>、SUMCO<3436>など半導体関連株が上昇。任天堂<7974>、ファナック<6954>、キーエンス<6861>などの値がさ株も堅調。石油輸出国機構(OPEC)プラスでの減産合意を受けて石油資源開発<1662>が買われ、三井物産<8031>、日本製鉄<5401>、DOWA<5714>など資源関連株がしっかり。マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>のグロース株の一角が堅調。日経平均への採用が決まったHOYA<7741>は大幅高。業績・配当予想を上方修正したトーホー<8142>、好決算が評価された日本ハウスHD<1873>はそれぞれ急伸。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運が下落。グロース株ではメルカリ<4385>、ギフティ<4449>が大幅安。原油価格の高騰を嫌気して東京電力HD<9501>も大きく下落。ダイキン<6367>、ニトリHD<9843>、楽天グループ<4755>、クボタ<6326>の下落も目立つ。ほか、日経平均への採用期待が剥落したOLC<4661>、公募増資を発表したJMDC<4483>が大幅に下落している。 セクターでは精密機器、鉄鋼、非鉄金属が上昇率上位となった一方、海運、サービス、空運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体48%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 前場の日経平均は中盤までは時間外取引のナスダック100先物の動きに連動する形で上げ幅を広げていたが、後半は連動が崩れ、日経平均だけが失速する形となった。引き続き心理的な節目の27500円や200日移動平均線を下値支持として意識した動きは続いているが、機関投資家の多くが夏休みから戻ってくるレイバーデー明け、今晩以降の米株式市場の動向次第では、あっさりと下抜けする可能性もあるだろう。 前日、OPECプラスは10月の生産量を日量10万バレル削減することで合意。バイデン米大統領の中東訪問による要請を受けて9月分は10万バレル増産していたが、その臨時措置はわずか1カ月で解消した格好。OPECプラスは2021年初から段階的な増産を続けてきたが、今回は初の減産となる意味で象徴的な会合となった。 原油市場については、都市封鎖(ロックダウン)の長期化で中国経済の回復が想定以上に遅れているなか、欧州や米国の景気後退入りも近づいており、需要の減速が警戒されている。一方、供給面では、イランの核合意を巡る米国との協議はまだ続いており、先行きは不透明だが、イラン産原油が市場に復帰するとなると、供給へのインパクトは大きいため、一段と需給が緩む可能性がある。今回の減産の動きはこうした需給の緩みに対して原油価格を注視していくとの牽制だろう。日量10万バレルは、世界需要の0.1%にすぎないが、投機筋による取引量が大きい先物市場でのショート(空売り)の動きを封じるという点では、価格の下支え効果は大きいだろう。 他方、欧州での天然ガス価格高騰の長期化も深刻だ。先週末、ロシアの天然ガスパイプライン、ノルドストリームからの供給停止が無期限で延長されると伝わった。そして昨日は、ロシア政府が、西側諸国による経済制裁が解除されるまで供給停止を継続する可能性を示唆。一時低下に転じていた欧州の天然ガス先物価格は再び急騰した。 世界のインフレを巡っては、モノ・財のインフレは既にほとんど沈静化しており、今後の焦点は粘着性のあるサービス分野を中心としたインフレ動向に移っている。しかし、これまでCPIの減速に寄与してきたエネルギー価格について改めて先行き不透明感が増していることは、インフレを更に長期化させる可能性を有する点から軽視できないだろう。 13日は米8月消費者物価指数(CPI)が発表予定だが、ここで仮にエネルギー価格を含めた総合の伸びが市場予想を下回ったとしても、その後のエネルギー価格の下げ止まり・反発を踏まえれば、バックミラーとして捉えられる可能性が高い。一方で、焦点となる粘着性分野では恐らく8月分ではまだほとんど減速の兆しは見られないはず。米月雇用統計で前年比+5%を上回る平均賃金の伸びが続いていること等も踏まえると、今後の米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め路線の軟化は当面見込めないだろう。 金融引き締め強化と実体経済の悪化傾向から、世界の企業業績は7-9月期決算から下振れが警戒されている。日本企業については円安進行を背景に対照的に上振れ、業績予想の上方修正ラッシュが期待されている。これが日本株の相対的な好パフォーマンスに繋がるとの指摘が聞かれるが、個人的にはこの見方にやや懐疑的だ。 まず、世界の景気敏感株とも称される日本株が、米・中・欧の3大経済圏の停滞・悪化が続くなか、一強状態を続けるとは考えにくい。そして、もう一つ思い出して欲しいのは、4-6月期決算時の日本企業の株価反応だ。円安要因で多くの企業が上振れ着地、第1四半期段階からの業績上方修正を果たしたが、それらの多くの株価がその後伸び悩んだ。当時の市況解説では筆者も含め、「円安要因だけの上方修正だけでは好感されず、本業による実質的な上振れがないと持続的な株価上昇は見込めない」と書いていた。そうであれば、ドル円が1ドル=140円を突破して更なる為替要因での上振れが見込めたところで、日本株だけが上値追いになるということは考え難い。せいぜい、下げ幅が相対的に小さいくらいだろう。 詰まる所、何が言いたいかと問われれば、レイバーデー明け、今晩の米株式市場からがようやく本番であること。そして、残る年末までの株式市場の動向としては、基調は下方向なのではないかということだ。むろん、9月分以降の米CPIで、連続で大幅な減速が確認されて、FRBの政策スタンスに変化の余地が生まれる期待が高まるなど劇的な変化があれば、年末株高というシナリオもあり得るだろうが、現状はそうした見込みは薄いと考えている。 前引けにかけておおきく失速した流れから、後場は日経平均の27500円割れへの動きも念のため視野に入れておきたい。先行き不透明感が強まるなか相対的に選好されるのは、医薬・食料品などの内需系ディフェンシブのほか、リオープン関連などに絞られるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/09/06 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、米株先物などの動きを横目に一進一退の攻防  日経平均は続落。40.09円安の27610.75円(出来高概算3億9996万株)で前場の取引を終えている。 前週末2日の米株式市場のNYダウは337.98ドル安(-1.07%)と大幅反落。8月雇用統計の結果を受けて、ハードランディング回避を期待した買いが優勢に。ただ、後場からロシアのガスプロムがノルドストリーム稼働停止を継続すると発表すると欧州発の燃料危機を警戒した売りに下落に転じた。連休前の手仕舞い売りも目立ち下げ幅を拡大。ナスダック総合指数も大幅続落、後場から軟調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比83.55円安の27567.29円と4日続落でスタート。その後は、マイナス圏での軟調もみ合い展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連株の一角が下落、商船三井<9104>や日本郵船<9101>などの海運株も軟調。ファーストリテ<9983>やトヨタ自<7203>、デンソー<6902>なども大幅安、レノバ<9519>やソニーG<6758>、任天堂<7974>などのグロース株なども冴えなかった。ほか、第1四半期決算はコンセンサス下振れとなったアインHD<9627>、第1四半期大幅減益決算を嫌気されたロックフィールド<2910>などが急落、LITALICO<7366>、ジャムコ<7408>などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、ネクソン<3659>やリクルートHD<6098>、ダブル・スコープ<6619>が大幅上昇、INPEX<1605>やENEOS<5020>なども上昇。日本電産<6594>や信越化<4063>、三菱重工業<7011>なども堅調に推移した。国内証券では業績上方修正で目標株価引き上げとなった日揮HD<1963>、投資有価証券売却益の計上を発表した凸版印刷<7911>などが大幅高となった。第一稀元素化学工業<4082>、セグエグループ<3968>などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは海運、陸運、輸送用機器が下落率上位となった一方、石油・石炭、鉱業、鉄鋼が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の35%、対して値下がり銘柄は60%となっている。 本日の日経平均株価は、続落してスタートした後マイナス圏での軟調もみ合い展開となった。雇用統計の内容自体は好感されたが米国株が下げ止まらなかったことで個人投資家心理が悪化、節目の27500円が下値抵抗線として意識されている。また、アジア市況や米株先物がやや軟調に推移するなか、日経平均株価は一進一退の動き。そのほか、米国市場は本日レーバー・デーで休場、連休明けの米国市場の動向を見極めたい動きが広がっており積極的な売買は限られている。 一方、新興市場では押し目買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたものの即座に買いが広がりプラス圏に浮上。再度マイナス圏に転落したが、前引けにかけて買い気が強まり再びプラス圏に浮上して上げ幅を拡げた。1日に一時3.3%近くまで急伸していた米10年債利回りがいったん低下しており、目先は新興株への逆風が小休止。前引け時点で東証マザーズ指数が1.16%高、東証グロース市場Core指数が1.81%高で時価総額上位銘柄中心に買いが集まっている。 さて、2日に発表された米8月雇用統計では雇用者数の伸びが31.5万人と予想(29.8万人)を上回ったものの、平均賃金の伸びは前年比+5.2%と予想(+5.3%)を下回り、失業率は3.7%と予想(3.5%)を上回った。8月の労働参加率は62.4%に上昇して2020年3月以来の高水準と一致、労働市場の逼迫の緩和を示唆するものとなった。平均時給も前月比0.3%増加(前月は0.5%増)。ここにきて需給が均衡しつつある兆しが出てきたようだ。 ブルームバーグによると、トレーダーの間では統計発表後に9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で3回続けて0.75ポイントの利上げが決まるとの織り込みが若干後退したという。ブルームバーグ・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「より多くの人が労働力に加わった8月統計は、ソフトランディング(景気の軟着陸)を目指す金融当局にとって、いくつかの好材料を含む」と指摘しているようだ。 ただ、雇用者数の増加ペースは7月に比べて鈍化したもののなお底堅く、FRBがタカ派姿勢を和らげることはないだろう。9月からは量的引き締め(QT)が2倍のスピードに引き上げられていく。市場の関心は今後、FOMC前に発表される消費者物価指数(CPI)に移る。 そのほか、欧州中央銀行(ECB)は8日に75ベーシスポイントの利上げという前例のない金融引き締めを発表すると予想されている。7日には、カナダ銀行(中銀)も同規模の利上げを決定する見通しで、オーストラリアとチリの中銀は6日に0.5ポイントの利上げを決定すると見込まれている。 世界各国で今までにない利上げが実施されればグローバルな金利上昇に繋がる可能性があり、今月が世界的に重要な局面となる。20、21両日の米FOMCでは少なくとも0.5ポイントの追加利上げが決定される公算が大きい。FOMCを前にFRB高官らの発言には依然として注目しておきたい。 さて、今週も米国や中国で景気指標や経済指標など、多くの重要な指標が発表される。これらの動向が明らかになるまでは積極的に売買する動きは限られるだろう。後場の日経平均は、米株先物などの動きを横目に一進一退の攻防が続くか。米国市場は本日レーバー・デーで休場、連休明けの米国市場の動向を見極めたい動きが広がると積極的な売買は限られそうだ。 <AK> 2022/09/05 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は3日続落、日本株は需給的にも厳しい状況  日経平均は3日続落。57.10円安の27604.37円(出来高概算5億735万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でダウ平均は145.99ドル高(+0.46%)と5日ぶりに反発。新規失業保険申請件数が予想外に前回から減少し労働市場の逼迫が確認されたほか、8月ISM製造業景況指数も予想を上回ったため、連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め強化への警戒感から中盤まで大きく下落。一方、引けにかけては雇用統計前の買戻しが強まり、ダウ平均は上昇に転じて終えた。長期金利の急伸でハイテク株は売られ、ナスダック総合指数は-0.26%と5日続落。 前日に時間外取引の米株価指数先物の下落を受けて先んじて下げていた日経平均は94.13円高からスタート。しかし、寄り付き直後を高値にすぐに失速するとマイナスに転じ、早い時間帯に27570.74円(90.73円安)まで下げ幅を広げた。24年ぶりの円安・ドル高を支えにその後は下げ渋ったが、戻りは鈍く、安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ルネサス<6723>など半導体関連のほか、ソニーG<6758>、新光電工<6967>のハイテク株が軟調。INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業、三井物産<8031>、住友商事<8053>の商社、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼、住友鉱<5713>、三井金<5706>の鉱業など市況関連株が全般下落。三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛・原発関連も安い。JMDC<4483>、ベイカレント<6532>、ラクス<3923>などグロース株も全般冴えない。東証プライム市場の下落率上位にもMSOL<7033>、サイボウズ<4776>など中小型グロース株が散見される。 一方、ファーストリテ<9983>、ダイキン<6367>の値がさ株の一角が堅調。市況関連株では郵船<9101>、商船三井<9104>の海運がしっかり。グロース株ではメルカリ<4385>が大幅高で、リクルートHD<6098>も堅調。1ドル=140円台と24年ぶりの円安水準を記録したことでホンダ<7267>、三菱自<7211>、スズキ<7269>など自動車の一角が買い優勢。中外製薬<4519>、塩野義<4507>の医薬品もしっかり。百貨店各社の既存店売上高が好調だったことで三越伊勢丹<3099>、高島屋<8233>が年初来高値を更新し、Jフロント<3086>、H2Oリテイル<8242>、松屋<8237>なども大幅に上昇した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、鉄鋼が下落率上位となった一方、保険、パルプ・紙、海運が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体71%、対して値上がり銘柄は25%となっている。 日経平均は高く寄り付いた直後から失速して下落に転じるなど、弱い動きが印象強い。昨日は、米国の中国に対する半導体輸出規制というネガティブな報道を受けて、時間外取引のナスダック100先物が大きく下落するなか売りが膨らんだ。ただ、前日の米株式市場は中盤までは大幅下落も、終盤にかけては持ち高調整の買い戻しで一気に下げ幅を縮小し、ダウ平均やS&P500指数はプラスに転じた。東京市場でも、米国に倣って、今晩の米8月雇用統計を前に買い戻しが入る可能性も意識されたが、実際は軟調となっている。今の相場の脆弱性と、今晩の米雇用統計に対する警戒感の強さが窺える。 8月31日に発表された米8月ADP雇用統計は13万2000人の増加と市場予想(30万人増)を下回った。ただ、もともとADP雇用統計と米雇用統計の結果の整合性は高くないうえ、8月分からはADP雇用統計の方が新たな統計手法を採用しているため、これをもって労働市場が軟化してきたとは言い切れない。今晩の米8月雇用統計では雇用者数の伸びは30万人の増加と予想されている。ちなみに7月は52万8000人と大幅な増加だった。平均賃金の伸びを含め、少しでも市場予想を上回れば、労働市場の逼迫感が意識され、株式の売りに繋がる可能性がある。 仮に、雇用者数も賃金も予想を下回ったとしても、米連邦準備制度理事会(FRB)は単月のデータではインフレ沈静化の根拠としては不十分として認識するため、株式の買い戻しも短命に終わる可能性が高い。また、日本株を巡る需給状況の悪さも気掛かりだ。 日本取引所グループが公表している投資部門別売買状況によると、日経平均が718円高と急伸し、その後の急ピッチでのリバウンドへと繋がった7月20日を含む週から8月第4週(8/22~26)までの間、海外投資家は現物株を2100億円程売り越した一方、日経平均先物(ミニを除く)を1超2200億円買い越し、TOPIX先物は4600円買い越した。 特徴としては、現物株は売り越しの一方、先物のみが買い越しで、中長期目線の資金はほとんど入っていないということ。そして、先物の買い越しの中でも大半が日経平均先物によるものだということ。現物よりも先物の方が足の速い資金と考えられるが、特にTOPIX先物よりも日経平均先物の方が商品投資顧問(CTA)などの短期筋の資金が多い傾向にある。そのため、これまでの上昇のほとんどは非常に足の速い資金によるもので、情勢次第では下げ足も速いということだ。 実際、今週だけで日経平均は1000円程も下落している。心理的な節目となる27500円近辺に200日移動平均線、75日線が並んでいるが、週明けこれらを割ってしまうと、短期筋は今度買い持ち高の解消だけでなく、新たに売り持ち高の積み上げに回るとみられるため、警戒が必要だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/09/02 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、FRBのタカ派織り込みは未だ不十分?  日経平均は大幅続落。418.39円安の27673.14円(出来高概算5億3857万株)で前場の取引を終えている。 8月31日の米株式市場でダウ平均は280.44ドル安(-0.88%)と4日続落。8月ADP雇用統計が予想を下回る伸びにとどまったため、大幅利上げ観測が後退し、寄り付き後は一時上昇。しかし、クリーブランド連銀のメスター総裁が2023年の早い時期に政策金利を4%以上に引き上げるべきとタカ派姿勢を表明したことで長期金利が上昇すると、下落に転じた。ナスダック総合指数は-0.56%と4日続落。日経平均は294.53円安と大きく28000円を割り込んでスタート。エヌビディアやAMDに対して人工知能(AI)向け半導体の中国輸出を停止するよう米当局から通知があったとの報道を受け、時間外取引のナスダック100先物が下げ幅を広げるなか、ハイテク株を中心に売りが広がった。香港ハンセン指数も下落する中、下値模索の展開が続き、一時27606.22円(485.31円安)まで下落した。 個別では、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>などの半導体関連株や、村田製<6981>、イビデン<4062>、TDK<6762>などのハイテク株が全般大きく下落。ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、ダイキン<6367>といった値がさ株も大幅安。景気後退懸念から三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社株や、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運、住友鉱<5713>、DOWA<5714>の非鉄金属などが安い。三井金<5706>はレーティング格下げもあり大幅安。ACCESS<4813>は赤字決算が嫌気されて急落し、ラクーンHD<3031>は順調な第1四半期決算ながらも地合いの悪化から利益確定売りが優勢となり、急落。鋼材値上げの受け入れが伝わっているトヨタ自<7203>はEV電池生産への投資報道もあったが、コスト増への懸念から大幅安。 一方、鋼材値上げが好感されて日本製鉄<5401>が上昇。業績予想を上方修正した菱洋エレクトロ<8068>、ゲーム子会社の中国テンセント子会社などへの第三者割当増資実施が材料視されたKADOKAWA<9468>はそれぞれ急伸。レーティング格上げが観測された日本ゼオン<4205>も大幅高。積水ハウス<1928>は外資証券の目標株価引き上げを受けて急伸。円安進行を支援要因にスズキ<7269>、三菱自<7211>の自動車株の一角が堅調。第一三共<4568>、アステラス薬<4503>の医薬品、コナミG<9766>など景気動向に左右されにくいセクターの一角もしっかり。 セクターでは鉱業、海運、卸売を筆頭にほぼ全面安で、建設、鉄鋼の2業種のみが上昇。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体86%、対して値上がり銘柄は12%となっている。 日経平均は寄り付きから300円近い下落幅でギャップダウンでのスタート。その後も下げ幅を広げ、弱い動きが続いたが、27500円近辺に位置する200日移動平均線を手前に下げ止まっている。200日線の下には75日線、100日線が距離を詰めて並んでおり、これらを下回ってしまうと売りに拍車がかかりやすいため、注意が必要なタイミングだ。 前日、米10年債利回りは3.19%(+0.08pt)まで上昇。米クリーブランド連銀のメスター総裁が、インフレ沈静化のため、来年の早い時期までに政策金利を4%超の水準にまで引き上げ、当面高水準を維持する必要性を示し、2023年中の利下げはないとの見解を示した。経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演以降、FRBのタカ派シフトがより鮮明になり、市場のムードが一変していたが、今週に入ってからのFRB高官らの発言が拍車をかけている。 景気後退懸念が米長期金利を幾分低下させるとはいえ、来年からの利下げ転換期待が覆えされ、今月からは量的引き締め(QT)も2倍のスピードに引き上げられていく中、金利のじわり上昇圧力は否めないだろう。一方で、FRBがインフレ抑制への決意を改めて強調したことで、期待インフレ率の指標である米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は8月24日を直近高値に低下基調にある。これに伴い、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は9月1日、0.71%(+0.15pt)と前の日から大幅に上昇した。 金利先物市場では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートについて、2023年の5月前後にはFRBが利下げに転じるとまだ予想している。今後の景気の減速ペース次第ではあるが、当面、高金利を維持すると主張しているFRBの姿勢と比して、まだ市場の織り込みは十分でないともみられる。FRBのインフレ抑制決意と景気後退懸念から期待インフレ率に低下圧力がかかりやすい一方、FRBのタカ派姿勢の織り込み余地から名目金利に上昇圧力がかかりやすいことを踏まえると、実質金利は今後も上昇しやすいだろう。実質金利の上昇を通じた株価収益率(PER)低下主導の下げ相場には注意したい。 後場の東京市場は軟調が続きそうだ。日経平均は200日線が位置する27500円が心理的な節目とも意識されるため、目先は売り一巡感が台頭しやすいが、明日の米8月雇用統計を前に積極的な買い戻しは期待しにくい。今晩の米8月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数を見極めたいとの思惑もあり、もみ合いが続きやすいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/09/01 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は反落、想定以上の底堅さ見せるも基調は明確に下方向  日経平均は反落。155.67円安の28039.91円(出来高概算4億9092万株)で前場の取引を終えている。 30日の米株式市場でダウ平均は308.12ドル安(-0.95%)と3日続落。値ごろ感の買いで上昇して始まったが、8月消費者信頼感指数や7月JOLT求人件数が予想を上回ると大幅利上げ観測が強まり、長期金利の上昇を嫌気して大幅下落に転じた。さらに、台湾が中国のものとされるドローンに初の威嚇射撃を行ったとの報道を受け、地政学的リスクを警戒した売りに押され一段安となった。ナスダック総合指数は-1.11%と3日続落。米株安を受けて、日経平均は267.49円安と28000円割れからスタート。ただ、時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移するなか、すぐに切り返すと下げ幅を縮める動きが続き、午前中ごろには28104.80円(90.78円安)まで値を戻す場面があった。 なお、午前に発表された中国の8月購買担当者景気指数(PMI、国家統計局)は製造業が49.4と7月(49.0)から改善し、予想(49.2)も上回った。一方、非製造業は52.6と7月(53.8)から悪化したが、予想(52.3)は小幅に上回った。 個別では、ソニーG<6758>、信越化<4063>、キーエンス<6861>の値がさ株が大きく下落。原油先物価格の急落を受けて前日から一転、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、ENEOS<5020>などが大幅安。郵船<9101>、川崎汽船<9107>など海運のほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>などの商社、DOWA<5714>、JFE<5411>など市況関連株が全般売られている。F&LC<3563>は国内外の証券会社による目標株価引き下げや「マグロ偽装」疑惑の一部報道を受けて大幅安。 一方、前日に創業者である稲盛和夫氏の死去が伝わっている京セラ<6971>が高い。ダブル・スコープ<6619>は大幅反発。ノルウェーのフレイヤー・バッテリーと合弁契約を締結した日本電産<6594>も堅調。足元の円安基調や国内メーカーの7月世界生産台数が前年比プラスとなったことを手掛かりに日産自<7201>、三菱自<7211>、SUBARU<7270>など自動車各社が高い。ローム<6963>、新光電工<6967>などハイテク株の一角も堅調。JAL<9201>は大幅高で連日の年初来高値。JR西<9021>など陸運各社も前日に続き堅調。IRJHD<6035>は、元役員のインサイダー取引疑惑を巡る調査報告書を受領し、不正に対する会社組織の関与が否定されたことで警戒感が後退して急伸。東証プライム市場の上昇率上位にはギフティ<4449>、オロ<3983>など中小型グロース株が並んでいる。 セクターでは鉱業、石油・石炭、海運が下落率上位となった一方、空運、陸運、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体72%、対して値上がり銘柄は26%となっている。 日経平均は朝方が安く始まった後は下げ渋る動きが続き、28000円を回復。一時は28100円超えの水準まで値を戻すなど、米国株に比してかなり底堅い動きとなっている。前日から年金基金が買っているのではという声も聞かれるが、先物手口を見る限りは、そうした動きは明確には確認できていない。商品投資顧問(CTA)の動きを表すことの多いドイツ証券やクレディ・スイス証券(CS)も、週明けからの手口では売り目線に転じている。日経レバETF<1570>の売り残や日経ダブルイン<1357>の買い残が減少しているあたり、個人の買い戻しが下値を支えていると推察される。 ただ、基調は明らかに下方向だろう。ナスダック総合指数が先週末から3日連続で大幅に下落しており、投資家心理が悪化していることには疑いがない。米10年債利回りの上昇も続いており、前日は一時3.15%まで上昇した。米8月消費者信頼感指数は103.2と前月(95.7)から改善し、市場予想(97.7)も大幅に上回った。また、米7月JOLT求人件数は1123.9万件と予想(1047.5万件)に反して6月(1069.8万件)から増加し、懸念されている労働市場の逼迫には緩和の兆しが見られなかった。週末の米8月雇用統計を前に、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅拡大への警戒感は一段と高まっている。 経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエルFRB議長の講演以降も、FRB高官からはタカ派な発言が相次いでいる。前日、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は金融引き締めが来年まで続くとしたほか、実質金利をプラスにする必要性に言及。また、しばらくは景気抑制的な政策が必要になるとし、こうした政策スタンスは短期間だけ実行して軌道修正するようなものではないとも述べている。その前には、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁がパウエル議長講演後の株式市場の大幅下落について「喜ばしい」などと発言している。インフレ抑制にあたって資産効果による消費拡大は避けたいため、株価の過度な上昇が望ましくないことは言わずもがなだが、下落を望んでいるようなことを明確に発現するのは、やや異例のことに感じる。相場の格言「FRBに逆らうな」に倣うならば、今は果敢に押し目買いに動く場面ではないだろう。 米10年債利回りから期待インフレ率の指標である米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年実質金利は30日、+0.56%まで上昇した。ただ、6月に付けた+0.88%からはまだ乖離がある。当然、ウィリアムズ総裁も現状の実質金利のプラス幅では満足していないだろう。実質金利には今後も上昇圧力が働くと想定され、株価収益率(PER)主導の相場上昇は期待できない。米・欧・中の景気指標の低迷が続くなか、一株当たり利益(EPS)の拡大も見込めないだろう。今後、何が株価を左右するのか、今一度投資家には現状を見極める必要があろう。 後場の東京市場は、午前中ごろからのもみ合いが続きそうだ。今晩は米8月ADP雇用リポートが発表予定で、明日は米8月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が発表予定だ。週末にかけて続く重要指標を前に様子見ムードが強まりやすいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/31 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は反発、今年の押し目買いは時間分散すべし  日経平均は反発。283.56円高の28162.52円(出来高概算4億6091万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でダウ平均は184.41ドル安(-0.57%)と続落。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャクソンホール会議でのタカ派発言を受けて、利上げペースの加速を警戒した売りが継続。値ごろ感からの買いでダウ平均は一時上昇に転じる場面もあったが、長期金利の上昇を受けたハイテク株の売りが相場の重石になった。ナスダック総合指数は-1.02%と続落。日経平均は自律反発狙いの買いから207.76円高と28000円を回復してスタート。戻り待ちの売りも強く、一時は27944.25円まで上げ幅を縮小したが、切り返すと前場中ごろには28177.19円まで上げ幅を広げた。その後は25日移動平均線を手前にした一進一退が続いた。 個別では、原油先物価格の上昇を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、ENEOS<5020>が大幅高。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の原発・防衛関連も軒並み高。三井物産<8031>、双日<2768>など商社株も総じて上昇。郵船<9101>、日本製鉄<5401>などその他の市況関連株も全般高い。JAL<9201>が年初来高値を更新し、JR東<9020>、JR西<9021>など陸運各社が堅調。NEC<6701>は初の自社株買いを発表して大幅高。レーティング格上げが観測された三井不動産<8801>、あいHD<3076>も大きく上昇。 一方、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、ダブル・スコープ<6619>、ベイカレント<6532>、ZHD<4689>などのグロース(成長)株で軟調なものが散見される。森永乳業<2264>、カシオ<6952>、SUMCO<3436>はレーティング格下げ観測で売り優勢。新株予約権の発行が嫌気されたダイヤHD<6699>は急落している。 セクターでは鉱業、石油・石炭、陸運を筆頭に全面高となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体82%、対して値下がり銘柄は15%となっている。 米株式市場は続落だったが、前日の東京時間における時間外取引の米株価指数先物の下落から既に織り込み済みで、本日の日経平均は反発。為替の円安基調も背景に日本株の相対的な底堅さが続いている。日経平均は28000円を回復して寄り付いた後に27000円台に押し戻される場面があったが、再度28000円を回復するなど底堅い動きが見られている。ただ、前日に割り込んだ25日移動平均線に頭を抑えられた状態が続いており、依然として戻り待ちの売りが優位な状況とみられる。前引け時点での東証プライム市場の売買高も4億株台と低調で、押し目買いが活発とは言えない。 米10年債利回りは前日、再び3.1%台まで上昇。先週末の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエルFRB議長の講演以降、来年からの利下げ転換期待が剥落し、利上げの織り込み修正を強いられている。FRB高官の中には4%を超えるFF(フェデラルファンド)政策金利の設定を求めている声も複数あり、景気後退懸念が上値を抑制するとはいえ、米長期金利にはしばらく上昇圧力が働きそうだ。 これまで、米長期金利は6月に付けた3.5%で既にピークを打ったと捉える向きが多かった。ただ、FRBが金利を「より高く、より長い期間据え置く」ことを決意していることが判明したいま、投資家の見方は修正を迫られている。また、9月からは量的引き締め(QT)のペースがこれまでから2倍に引き上がる。債券市場の需給が緩むことも踏まえれば、金利の上昇圧力はより強いものと想定される。金利の上昇による株価収益率(PER)の下押し圧力には今後注意が必要だろう。 また、原油先物価格の上昇という警戒要素も強まっている。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)原油先物価格は前日の米国時間に一時1バレル=97ドル台に乗せ、再び100ドルを窺う水準まで上昇してきた。商品市況の代表的な総合指数であるCRB指数もここ1カ月半ほどは上昇基調を継続している。米7月消費者物価指数(CPI)の低下に寄与したガソリン価格については下落がまだ続いているが、その後の原油先物価格の下げ止まり、足元の上昇で、今後のCPI低下への寄与分は次第に減少していくことが推察される。米7月CPIは総合で前年比+8.5%と異常な高水準が続いているが、この段階ですでに指標の高止まりを想定させる要素が見られていることは懸念すべきだろう。 FRBはインフレ抑制のために需要を押し下げる覚悟で、潜在成長率を下回る経済成長と労働市場の軟化が「ある程度持続する」必要があると述べている。今週、9月1日には米8月ISM製造業景気指数が発表される。予想は52.0と、まだ活動の拡大と縮小の境界を示す50を上回る状態が続く見込みだが、今後、50を下回ってきても、FRBはすぐには景気に配慮して利下げに転じないということだ。QT加速で金利上昇圧力が続くなかPERの低下が想定され、景気が悪化してもFRBの利下げ転換は当面期待できない。そして、インフレの高止まりが想定以上に長引きそうな材料が足元で揃いつつある。PER以外で株価上昇に必要な一株当たり利益(EPS)の上昇も見込みにくいわけだ。 9月は投資信託の節税売りという季節性要因があることに加え、今年については米中間選挙があり、中間選挙の年は9月にかけて下がりやすいというアノマリーもある。一方で、年末にかけては株高になりやすいという傾向があるため、今年も9月の下げが押し目買いチャンスという声が聞かれる。しかし、上述の状況を考えると、7-9月期決算が発表される10、11月以降にも下げやすい可能性が高いと考えられ、押し目買いは分散した方がよいだろう。 後場の東京市場は前場終値の水準からはもみ合いとなりそうだ。今晩は米国でCB消費者信頼感指数が発表予定で、31日以降も、中国購買担当者景気指数(PMI)や米ISM製造業景気指数、そして週末の米雇用統計と重要指標が目白押しだ。これらの指標を見極めたいとの思惑が働きやすいだろう。また、来週5日のレイバー・デー明け以降、投資家が戻ってくる米国市場の動向を注視する必要もあるだろう。当面、様子見ムードが強まりやすいと考える。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/30 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、パウエル氏講演のタカ派内容受けて投資家心理悪化  日経平均は大幅反落。789.70円安の27851.68円(出来高概算5億7491万株)で前場の取引を終えている。 前週末26日の米株式市場のNYダウは1008.38ドル安(-3.03%)と大幅反落。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言が想定以上にタカ派的となったため、金利高警戒感に投資家心理が悪化し売りが加速した。同時に景気後退懸念を受けた売りも再燃、ナスダック総合指数も3.94%安と大幅に反落、主要株価指数がそろって大幅に下落した米株市場を受けて、日経平均は前週末比480.32円安からスタート。その後は、下げ幅をじりじりと拡げる展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が大幅下落、商船三井<9104>や日本郵船<9101>などの海運株も軟調。ファーストリテ<9983>やソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>なども大幅安、メルカリ<4385>やベイカレント<6532>、リクルートHD<6098>などの主力グロース株も大幅に下落、ソニーG<6758>やダイキン<6367>なども冴えなかった。ほか、株式売出による需給悪化を嫌気されたプロネクサス<7893>、大規模売出による需給悪化を警戒されたカーバイド<4064>などが急落、サーバーワークス<4434>、SREホールディングス<2980>などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、INPEX<1605>やENEOS<5020>などが前週末比で均衡状態。SBIHDが株式追加取得を発表してこれを好感されたチェンジ<3962>、株式分割実施を発表した日鉄鉱<1515>などが大幅高となった。クロスキャット<2307>、新田ゼラチン<4977>、FIG<4392>などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは精密機器、機械、サービスが下落率上位となった一方、石油・石炭、鉱業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の6%、対して値下がり銘柄は92%となっている。 本日の日経平均株価は、大きく下落してスタートした後じりじりと下げ幅を拡げる展開となった。パウエル議長の発言が想定以上にタカ派的となったことや米株大幅安の流れを受けて国内でも投資家心理が悪化、寄り付きで25日移動平均線を割り込んだ。アジア市況や米株先物が軟調に推移するなか、日経平均株価も軟調な展開が続いた。 新興市場も売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、大きく下落してスタートしたあとマイナス圏で軟調もみ合い展開となった。ハト派寄りの見解が想定されていたジャクソンホール会議でのパウエル氏の講演がタカ派な内容となったことで個人投資家心理が悪化。前引け時点で東証マザーズ指数が2.50%安、東証グロース市場Core指数が4.28%安で時価総額上位銘柄中心に軟調な展開となっていることが窺えた。 さて、ジャクソンホール会議でのパウエル議長は「7月のインフレ指標が低下したことは歓迎すべきこと」だとしつつも、FRBが目指しているものには「程遠い」と話し、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での3会合連続となる0.75ポイント利上げの可能性を示唆した。インフレ抑制のために高金利を維持する方針を示し、早急な金融緩和への転換にはリスクが伴うと指摘。インフレ抑制策が短期的には景気に悪影響を及ぼしても、長期的な経済成長には必要なことだと痛みを受け入れる姿勢も見せている。 ジャクソンホール会議開催前のFRB高官発言にも注目したい。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は25日に高インフレは多くが予想している以上に持続するとの見方を示し、政策金利を年末までに3.75%-4.00%に引き上げたいとの認識を改めて示している。米カンザスシティー連銀のジョージ総裁もFRBは政策金利を景気抑制的な水準まで引き上げておらず、当面は4%を上回る地点にもっていく必要があるかもしれないと語っていた。今週末は米8月雇用統計の発表が控えているが、これらの結果次第では9月FOMCでの利上げ幅拡大への警戒感がより一層高まりそうで、最大の注目が集まるだろう。 また、ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツのグレッグ・ジェンセン共同最高投資責任者(CIO)はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「資産市場の価値は全体として20-25%下落するだろう」と予想している。同氏の予想によれば、量的引き締めと利上げはインフレと経済成長の両方を押し下げるが、インフレのほうがしぶとく、結果的に長期債を中心にあらゆる金利が上昇するとみている。金融経済と実体経済の間には大幅な乖離があると指摘。25%程度の下落は、ナスダック100指数で9600pt付近となっており2020年のコロナショック前の水準、現段階では筆者も今後同水準まで下落する可能性があることを念頭に置いて相場を見守っている。 さて、今週は米国や中国で景気指標や経済指標など、多くの重要な指標が発表される。これらの動向が明らかになるまでは積極的に売買する動きは限られるだろう。金融引き締め長期化で主力グロース株やバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株に向かい風となるなか、インフレ抑制策による景気後退懸念も強まっており景気敏感株も手掛けにくい。後場の日経平均は、下げ幅をさらに広げる展開が続くか。前場に続いてアジア市況や米株先物の動向に注目しつつ日経平均株価の動きを見守っていきたい。 <AK> 2022/08/29 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、無風通過がコンセンサスも楽観視できない状況  日経平均は続伸。266.41円高の28745.42円(出来高概算4億5656万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でダウ平均は322.55ドル高(+0.97%)と続伸。ジャクソンホール会議を控えた警戒感がくすぶる中ではあったが、週次の失業保険申請件数が予想外に減少し労働市場の強さが確認されたほか、4-6月期国内総生産(GDP)改定値も予想外に上方修正されたことで、景気後退懸念が緩和した。長期金利の低下でハイテク株も買われ、引けにかけて一段高に。ナスダック総合指数は+1.67%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+3.66%となった。米株高を引き継いで日経平均は160.46円高からスタート。順調に買い戻しが進み、午前中ごろには上げ幅は300円を超えた。その後は騰勢一服となったが、アジア市況の上昇を支援要因に堅調な値動きが続いた。 個別では、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、SUMCO<3436>の半導体関連や、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>などの主力株が全般堅調。三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社株が大幅に続伸し、日本製鉄<5401>、コマツ<6301>、住友鉱<5713>などの市況関連株も高い。ほか、京セラ<6971>、新光電工<6967>の上昇が目立つ。東レ<3402>はレーティング格上げが観測され、年初来高値を更新。大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>は連日の大幅上昇。中国会社の連結子会社化を発表したイワキポンプ<6237>、三井住友海上と包括連携協定を締結したシンクロフード<3963>などが東証プライム市場の上昇率上位に入っている。 一方、東証プライム市場の売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>、リクルートHD<6098>、レノバ<9519>などが軟調。ベイカレント<6532>、マネーフォワード<3994>のグロース(成長)株の一角も下落。レーティング格下げが観測された中国電力<9504>は大幅安。上半期は一転して2ケタ営業減益となったタカショー<7590>は東証プライム市場の下落率トップとなっている。ほか、投資ファンドの保有比率低下が判明したジャフコG<8595>、子会社株式売却で最終益予想を下方修正した大崎電<6644>などが下落率上位に並んだ。 セクターでは繊維製品、機械、卸売が上昇率上位となった一方、石油・石炭、サービス、倉庫・運輸が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体62%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 日経平均は、前日の25日移動平均線をサポートとしたリバウンドから綺麗に続伸し、5日線も上回ってきている。今晩のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による講演の無風通過、その後のあく抜け相場を期待した動きが強まっているようだ。テクニカル面でも強気派を勢いづかせそうな形となっている。 前日の米株式市場では、ハイテク・グロース株を中心に大幅に上昇。8-10月見通しが市場予想を下回り、株価下落が懸念された半導体大手エヌビディアは+4%と想定に反して上昇し、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も+3.66%となった。エヌビディアは世界景気の減速でパソコンやゲーム向けの需要が低迷する見通しを示したが、モルガン・スタンレー証券では「ゲーム部門は8-10月が業績の底になる」と指摘しているという。こうした見方や、タカ派発言を警戒して上昇してきた米金利が、パウエル議長講演後には低下に転じるとの期待が、前日の株価上昇の背景にあるようだ。 しかし、半導体市場の先行きについては見方が分かれており、クレディ・スイス(CS)などはメモリから始まった在庫調整が今後、現在は好調なロジック分野にも秋口からは波及し始めるとし、最終需要の弱さを前提とした深刻な半導体在庫調整サイクルの見解を維持している。 金利も、ジャクソンホール会議後は再び低下することを見込む向きがいるようだが、果たしてどうだろうか。来週末には米8月雇用統計を控えており、前回7月が予想を大幅に上振れた経緯を踏まえれば、事前の警戒はそれなりに高いだろう。雇用統計前に金利が再びハイテク・グロース株の追い風になる程に大きく低下するとはやや想定しにくいのではないだろうか。 今晩のパウエル議長の講演は無風通過が予想されている。むしろ、当初はタカ派を警戒する声が多かっただけに、イベント通過後はあく抜けで短期的には上昇の可能性が高いとすら考えられている。連日で、複数の米連銀総裁からタカ派発言が相次いでいる中、株式市場はほとんど意に介さず、結局利下げに転じるのではないかという期待を持ったままでいるようだ。ブルームバーグが算出している米国での金融緩和の度合いを示す金融状況指数(US financial conditions)は、利上げが開始された今年の3月よりも緩和的な状況に転じていることが示されている。 こうした中、中央銀行としてのインフレ抑制の決意を示し、市場の楽観を修正するためにパウエル議長がよりタカ派な発言を行う可能性も捨てきれない。仮に無風通過となっても、今後控える米雇用統計をはじめとした経済指標を前に、あく抜け相場の持続性は短いものと想定される。今はまだ買いの攻勢に出る時でないと考える。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/26 12:04 ランチタイムコメント 日経平均は6日ぶり反発、需給面での追い風は止みつつある  日経平均は6日ぶり反発。158.14円高の28471.61円(出来高概算4億7683万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でダウ平均は59.64ドル高(+0.18%)と4日ぶりに小幅反発。7月耐久財受注でコア資本財の受注や出荷が予想を上回る伸びとなったため景気減速懸念が後退。7月中古住宅販売成約指数も予想を上回ったほか、バイデン大統領が発表した学生ローン減免による個人消費の下支えへの期待が広がり、主要株価指数は上昇に転じて終了した。ナスダック総合指数は+0.40%と反発。米国株の反発を追い風に日経平均は101.64円高からスタート。時間外取引のナスダック100先物の堅調推移を支援要因に緩やかに上昇を続け、前場中ごろ過ぎには28486.01円(172.54円高)まで上げ幅を広げた。 個別では、東京電力HD<9501>、東北電力<9506>、三菱重<7011>、IHI<7013>など原発関連銘柄が前日同様に大幅高。三菱商事<8058>、三井物産<8031>の商社株も全般堅調。ナスダックが4日ぶりに反発したことで、メルカリ<4385>、エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>などグロース(成長)株が高い。東証プライム市場の上昇率上位にはマネーフォワード<3994>、サイボウズ<4776>など中小型株グロース株が散見される。証券会社の目標株価引き上げを受けて日本電波工業<6779>は急伸して上昇率トップ。第一三共<4568>も目標株価引き上げで大幅高。ほか、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>が急伸し、自社株買いを発表したステラケミファ<4109>も大幅に上昇。 一方、10月から新経営体制に移行し、関社長は退社する方向と伝わっている日本電産<6594>は大幅安。月次動向が利食い売りに繋がった神戸物産<3038>も大きく下落。主力処ではSMC<6273>、イビデン<4062>の下落が目立つ。レーティング格下げが観測されたニトリHD<9843>は小幅安。東証プライム市場の下落率上位にはトレジャー・ファクトリー<3093>、ノムラシステム<3940>、KeePer技研<6036>などが入っている。 セクターでは医薬品、金属製品、保険が上昇率上位となった一方、証券・商品先物、鉱業、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体68%、対して値下がり銘柄は27%となっている。 日経平均は6日ぶりに反発。25日移動平均線が綺麗にサポートしており、テクニカル的には先行き強気派を勢いづかせそうな形だ。米株式市場の引け後に発表されたエヌビディアとセールスフォースの決算では見通しが市場予想を下回り、両者ともに時間外取引で株価が下落していることを踏まえると、かなり底堅い動きと評価できる。経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」に対する事前の警戒感が高いだけに、イベント通過後にはあく抜け感から一旦は上方向とみている向きも多いようで、そうした思惑が下値を支えているとも推察される。 一方、今後の上値余地は乏しいとも考えられる。前日、東京証券取引所が公表した裁定取引に係わる現物ポジションでは、8月19日時点での買い残から売り残を差し引いたネットの裁定買い残は1兆1895億円と、前週から1338億円増加、2021年9月27日以来の高水準を記録した。買い残のみでは1兆4617億円で、2021年3月22日及び9月20日の水準を上回り、2019年以降では最高水準となる。日経平均は、買い残がピークを付けた上述の昨年3月と9月以降、下落傾向となっており、経験則からすると、これまでのような需給面での押し上げ効果を今後期待することは難しいだろう。日経ダブルイン<1357>の買い残が高水準にあるほか、日経レバETF<1570>の売り長が続いており、下値では個人投資家による買い戻しが支えそうだが、全体的には目線は下方向に傾きつつあると言える。 日経平均は、目先は28500円に上値を抑えられた状況が続きそうだ。現在、時間外取引でナスダック100先物が堅調に推移していることもあり、東京時間では株価が下支えられているが、エヌビディアとセールスフォースの冴えない決算を受けて、今晩の米株式市場がどのような動きになるかは不透明。明日の夜には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がジャクソンホール会議で講演する予定で、模様眺めムードも一段と強まりやすい。あく抜け期待も高いが、翌週末の9月2日には米8月雇用統計の発表も控えており、持続性は疑わしい。いまは静観に徹する場面だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/25 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は5日続落、投資家と実体の間にあるギャップとは  日経平均は5日続落。93.65円安の28359.10円(出来高概算5億2709万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場でダウ平均は154.02ドル安(-0.46%)と3日続落。8月製造業・サービス業PMIが予想以上に悪化したことで景気後退懸念から売り優勢でスタート。7月新築住宅販売件数も2016年来で最低となる低調な結果に終わると更なる売り圧力となった。金利が横ばいの中、ジャクソンホール会合を控えた警戒感からハイテク株の序盤の買いも続かず、終日軟調に推移。ナスダック総合指数は0.27ドル安(-0.00%)とほぼ横ばいだった。前日に大きく下落していた日経平均は自律反発狙いの買いから28.59円高からスタート。序盤に28515.61円(62.86円高)まで上昇したが、買いが続かず失速。午前中ごろからは売りが広がり、28282.21円(170.54円安)まで下落する場面があった。ただ、その後は引けにかけて緩やかに持ち直す動きとなった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、HOYA<7741>などの半導体関連株が軒並み下落。任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、OLC<4661>、ダイキン<6367>の値がさ株が安い。メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>などグロース(成長)株は大きく下落。花王<4452>、資生堂<4911>のディフェンシブ系のほか、武田薬<4502>、エーザイ<4523>などの医薬品、ほか、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>の下落が目立つ。 一方、原油先物価格の上昇を支援要因に連日でINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大幅高で、富士石油<5017>は急伸。来年夏以降に柏崎刈羽原子力発電所など国内の原発計7基の再稼働を目指す方針と伝わり、東京電力HD<9501>が大幅高。三井物産<8031>、丸紅<8002>などの商社株や、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>、日揮HD<1963>など重厚長大産業関連も軒並み高い。科学事業の売却交渉において、米投資ファンドのベインキャピタルを軸に調整に入ったと伝わっているオリンパス<7733>は年初来高値を更新。中期業績計画のローリングを発表したエンビプロHD<5698>も買われた。 セクターではその他製品、陸運、サービスが下落率上位となった一方、鉱業、電気・ガス、ゴム製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体40%、対して値上がり銘柄は55%となっている。 日経平均は前日に続き、本日も冴えない展開で弱い動きが目立つ。前日の米株式市場ではダウ平均が下落したとはいえ、ナスダック総合指数はほぼ横ばい、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)にいたっては+0.74%の上昇だったが、本日の東京市場では、半導体を中心にハイテク・グロース株が全般弱い。一方、日経平均もTOPIX(東証株価指数)も揃って本日の下落で25日移動平均線近くまで調整しており、同線からの大幅な上方乖離率が縮小、テクニカル面での過熱感は解消された。ここで踏みとどまれば、短期的な調整の範囲内ともいえそうで、まだ過度に弱気に傾いたとまでは言えない。 しかし、経済指標を中心に悪いニュースが一向に途絶えない。前日に発表された8月購買担当者指数(PMI、速報値)の総合は、ユーロ圏が49.2と7月の49.9から低下し、米国も45と7月の47.7から大きく低下。ともに活動の拡大・縮小の境界を示す50を連続して割り込んだ。特に、米国ではサービス業PMIが44.1と、上昇予想に反して7月(47.3)から大幅に低下、20年5月来で最低を記録した。明らかに記録的な水準で高止まりするインフレが消費者や企業の活動の下押し圧力として働いていることが窺える。 企業決算でもネガティブなニュースが相次いでいる。米百貨店ノードストロムが通期の売上高・利益見通しを下方修正し、時間外取引で13%超と急落している。6月下旬から需要が大きく減速し、在庫の積み上がりなどが重石になった。経営幹部は低所得の顧客層を中心に需要の鈍化が明確に表れたと述べている。一方で興味深いのが、米高級住宅建設のトール・ブラザーズも四半期受注の急減を理由に売上見通しを下方修正したことだ。年初からの住宅ローン金利の大幅な上昇や住宅価格の記録的な高騰で、住宅需要が急速に鈍化していることは経済指標からすでに判明していることだが、高所得者層を対象とした企業でも影響は免れないということだ。PMIの50割れと相まって、景気後退の可能性は日に日に高まっていると考えるべきだろう。 一方で、日米ともに企業業績については、未だに7-9月期以降は増益と堅調さが見込まれている。しかし、米7月消費者物価指数(CPI)の減速の主要因となったエネルギー・資源価格はその後全体的に下げ止まり、底入れ感を強めている。ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)原油先物価格は23日、1バレル=93.74ドル(+3.89%)と大幅に上昇した。イラン核合意の再建協議が妥結して制裁解除後の同国生産量が回復する場合には、サウジアラビアでは生産量を調整する可能性があると、減産が示唆されているようだ。 資源価格が再び上昇基調にあるなか、欧米の景気減速は著しく、中国も一向に回復ペースを速めてこないばかりか、むしろ足を引っ張りそうな勢い。マージン悪化の継続と需要減速が相まってしまえば、自ずと企業業績は悪化の道を辿ることにならざるを得ない。足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)と市場の利上げスケジュールを巡るギャップの話が多いが、それはさることながら、市場は企業業績の見通しについても実体からかなりギャップを持っている気がしてならない。 目先はジャクソンホール会合が焦点だが、これを通過したところで、あく抜け感から再び相場が上昇基調に戻るとは考えない方がよいだろう。個人的にはここから先、何をもって株式市場が持続的に上昇していくと考えられるのかが分からない。筆者が悲観的過ぎるのかもしれないが、米国のコアCPIが年内に+3%くらいまで下がってこない限り、持続的な上昇基調を取り戻していくシナリオが現時点ではほとんど描けない(むろん、行き過ぎた楽観の揺り戻しなどから強烈なリバウンドは随所にあるだろうが)。空売りでなく、個別株を買うのであれば、4-6月決算で価格転嫁と需要の底堅さが同時に確認された、安心感のある内需ディフェンシブ銘柄くらいしか今は投資したいと思えない。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/24 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に4日続落、トレンド転換を示唆する金利・VIXの上昇  日経平均は大幅に4日続落。337.58円安の28456.92円(出来高概算4億9534万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場でダウ平均は643.13ドル安(-1.90%)と大幅続落。ジャクソンホール会合を控えるなか連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢を警戒した売りが継続し、寄り付きから大幅下落。長期金利が1カ月ぶりの高値を更新したことでハイテク株主体に売られ、相場の下押し圧力となった。引けにかけ主要株価指数は下げ幅を拡大し、ナスダック総合指数は-2.54%と大幅続落。日経平均は214.30円安からスタート。朝方から売りが広がり、前場中ごろには一時28395.30円(399.20円安)まで下落した。その後は下げ止まったが、戻りは鈍く、この日の安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>など主力ハイテク株が大幅安。エムスリー<2413>やメルカリ<4385>のグロース(成長)株も大きく下落。東証プライム市場の下落率上位にはマネーフォワード<3994>、SREHD<2980>、ラクス<3923>などの中小型グロース株が多く並んでいる。為替の円安基調は続いているが、トヨタ自<7203>やデンソー<6902>、ホンダ<7267>なども大きく売られた。エンジン不正問題の拡大を嫌気し、日野自<7205>が前日に続き急落。 一方、原油先物価格の上昇を支援要因にINPEX<1605>、出光興産<5019>が大幅高となり、石油資源開発<1662>は年初来高値を更新。政府が水際対策の緩和を検討しているとの報道を好感し、JAL<9201>、エアトリ<6191>、オープンドア<3926>が軒並み高。持ち株会社体制への移行を検討すると発表したラウンドワン<4680>も高い。ほか、ダブル・スコープ<6619>、三井松島HD<1518>といった個人投資家人気の高い銘柄が大きく上昇。 セクターでは輸送用機器、電気機器、ゴム製品が下落率上位となった一方、鉱業、空運、海運が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体73%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 日経平均は米株安を引き継いで大幅に下落。前日は朝方に安値を付けた後は急速に下げ渋っていたが、本日は買い戻しが鈍く、底這い状態が続いている。25日移動平均線や52週移動平均線などよりもまだ上方での推移となっているが、28500円を下回ってきたことで、28000円近辺までは一両日中に下げてきそうか。 もともと、売り目線の機関投資家が夏休み入りで不在だったなか、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドやVIX指数の低下を背景としたリスクパリティ型ファンドによる機械的な買いで吊り上げられたような相場だったため、下げるのも速そうだ。下げても買いが入る異次元のような強い動きを見せていた米株式市場は、先週末のSQ(特別清算指数)算出を境に極端に弱い動きに変わった。これまでもSQがトレンド転換のきっかになることが多かったが、今回もご多分に漏れずといった形だ。リバウンドが始まってから1カ月以上が過ぎ、S&P500種株価指数が200日線目前まで上昇していたことで、日柄的にも指数の水準的にも戻りは目一杯のところまで来ていたのだろう。 足元では、セントルイス連銀のブラード総裁が7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ支持に傾いていると表明したほか、リッチモンド連銀のバーキン総裁が「インフレ抑制のためには何でもする」と発言するなど高官のタカ派姿勢が目立っている。25日から開催される経済シンポジウム、ジャクソンホール会合では来年の利下げを期待する投資家とのギャップを埋めるために、パウエル議長からけん制発言で出るとの警戒も強い。 こうした中、米10年債利回りが22日、1カ月ぶりに3%を超えてきた。8月1日に付けた安値2.57%から0.5pt近くも上昇しており、ペースが速い。ちょうど1カ月程前の時点では、機関投資家の中では3%水準では債券を買いたいという声が多く聞かれていたが、今晩以降の米国市場での動きはどうだろうか。ここで金利が低下することなく、一段と上昇するようだと、これまで金利の低位安定を背景に楽観ムードが広がっていた分、神経質な相場展開が予想され、注目したい。 足元で、世界経済の構造変化を背景に、インフレは、投資家が想像する以上に長期化するとの専門家の指摘がいくつか散見されているほか、ヘッジファンドがジャクソンホール会合前後の金利上昇を狙って債券の空売りを増やしているとの指摘が聞かれている。ちなみに、米商品先物取引委員会(CFTC)が週1回発表している投機筋の持ち高情報によると、8月16日時点で、ヘッジファンドは10年債をネットで36万3000枚以上売り越している。直近3年間では、2022年3月29日時点での47万6000枚超が最も高い水準で、まだ売り持ち高を増やす余地はありそうだ。 ほか、CFTC の発表によると、8月16日時点でのVIXを対象としたヘッジファンドの持ち高はネットで10万2000枚超の売り越しだ。前回、ネットの売り越し幅が10万枚を超えたのは2021年11月2日で、この時はその後買い戻しが進み、VIX指数の上昇に繋がった。これまでの株高を支えてきた金利とVIX指数が足元で急速に上昇してきている点はやはりトレンドの転換を示唆していると考えられ、安易な押し目買いは避けた方が無難だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/23 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は続落、FRB高官の発言や3カ月債・10年債利回りの動きに注目  日経平均は続落。124.81円安の28805.52円(出来高概算4億7729万株)で前場の取引を終えている。 前週末19日の米株式市場のNYダウは292.30ドル安(-0.86%)と反落。連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派発言受けて大幅利上げを警戒する売りが再燃した。また、長期金利の上昇でハイテク株も売られて終日軟調に推移。ナスダック総合指数は大幅に反落、主要株価指数がそろって下落した米株市場を受けて、日経平均は前週末比276.26円安からスタート。その後は、下げ幅を縮小する展開となった。 個別では、東エレク<8035>やアドバンテ<6857>などの半導体関連株の一角が軟調、商船三井<9104>や日本郵船<9101>などの海運株の一部が軟調。メルカリ<4385>や信越化<4063>、リクルートHD<6098>、レノバ<9519>が大幅に下落、ファーストリテ<9983>やソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>なども下落、ソニーG<6758>やダイキン<6367>なども冴えなかった。ほか、シティインデックスの保有比率が低下した富士石油<5017>、前週末まで大幅に上昇していたエフオン<9514>が利食い売り優勢に、FFJ<7092>、リブセンス<6054>、などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、INPEX<1605>、HOYA<7741>、アイスタイル<3660>などが大幅に上昇、エムスリー<2413>、任天堂<7974>、などが上昇した。前期配当金上振れや今期増配計画を好感されたあいHD<3076>、自社株買い発表による需給改善期待が高まったいちご<2337>、などが大幅高となった。ビーロット<3452>、共和電業<6853>、サンコール<5985>などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターではサービス、非鉄金属、電気機器が下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、医薬品が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の39%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後じりじりと下げ幅を縮小する展開となった。米長期金利上昇を受けて半導体関連株が軟化、東京市場でもFRB高官のタカ派発言を受けて大幅利上げを警戒する売りが再燃している。ただ、上海総合指数が売り先行もプラス圏を回復すると、日経平均株価もやや持ち直す動きを見せた。 新興市場は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと下げ幅を縮小する動きは乏しくマイナス圏で軟調推移となった。FRB高官のタカ派発言は国内の個人投資家心理にもネガティブに働き、米長期金利は2.97%台と3%付近まで上昇しておりバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興市場の中小型株にとって向かい風となっている。前週末まで値幅を伴って上昇していた銘柄や短期的な物色が向かっていた個別材料株は利益確定売りに押し込まれる展開。前引け時点で東証マザーズ指数が2.04%安、東証グロース市場Core指数が3.46%安で時価総額上位銘柄中心に軟調な展開となっていることが窺えた。 さて、FRB高官の発言にはやはり注目が集まっている。ブルームバーグでは、セントルイス連銀のブラード総裁が0.75ポイントの追加利上げを主張したのに対し、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は急激な引き締めにはより慎重な姿勢を促している、と報道。米リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「インフレを制御する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」との認識を示した。ただ、9月会合での利上げ幅の判断については、米経済の力強さとインフレ鈍化の傾向がデータでどう示されるかに左右されると述べた。 25日からは「ジャクソンホール会議」が開かれる。FRBは今後の金融政策の動向は「データ次第」としているため、市場では会議での結果が市場に大きなインパクトは与える可能性は低いとみられている。ロイターでも、パウエル議長は恐らくジャクソンホール会議で政策金利の経路について今よりずっと大きなヒントを市場には提供しないだろう、と報じている。つまり、9月に発表される失業率やインフレ率を見て、それから方針を確定させる可能性が高く、ジャクソンホール会議の影響は軽微となろう。ただ、9月に発表される米経済指標は多くの注目を集めることになるだろう。 そのほか、3カ月債と10年債利回りの差にも注目しておきたい。ブルームバーグでは1986年のキャンベル・ハーベイ教授の論文をもとに、3カ月債利回りが10年債利回りを下から上に突き抜けると非常事態が発生して災難が降りかかるかもしれない、と述べている。 また、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のクオンツアナリストによると、米国株の行方を完璧に予測してきたある指標をもとにすると株価はまだ底値を付けていないという。  完璧な指標とは、S&P500種株価指数の実績PERと米消費者物価指数を組み合わせたもので、1950年代以降のあらゆる相場の谷において同指標は20を割り込んできたようだ。ただ、今年は相場に打撃を与えてきた一連の売り圧力の中でも、まだ27までしか下がっていないという。3カ月債と10年債利回りの差や上記の指標の行方は、筆者を含めて今後再度大きく下落すると想定している投資家にとっては注目しておかなければならないだろう。 さて、後場の日経平均は、下げ幅をさらに縮小する展開が続くか。前場に続いてアジア市況や米株先物の動向に注目しつつ日経平均株価の動きを見守っていきたい。 <AK> 2022/08/22 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は小反発、今晩の米SQ前に基調転換を示唆するようなミーム株急落  日経平均は小反発。25.80円高の28967.94円(出来高概算5億3530万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でダウ平均は18.72ドル高(+0.05%)と小反発。利益確定売りが先行し下落して始まった。ただ、週次失業保険申請が予想外に減少したほか、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が予想外のプラスに改善するなど良好な経済指標を好感して買い戻しが強まった。ハイテク株も主要企業の良好な決算や長期金利の低下を受けて買い戻され、相場を後押し。引けにかけて主要株価指数は上昇に転じた。ナスダック総合指数は+0.21%と反発。日経平均は153.57円高と29000円を回復してスタート。しかし、寄り付き直後に29150.80円まで上昇した後はすぐに失速。29000円台で踏ん張る動きも見られたが、午前中ごろには同水準を割り込み、一時28900円近くまで下落する場面があった。その後は下げ渋ったが、戻りは鈍く、この日の安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、引け後に発表された米アプライド・マテリアルズの決算が予想を上回り、強気の見通しも示されたことで東エレク<8035>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>などが大幅高。ハイテクでは他にローム<6963>、新光電工<6967>が強い。郵船<9101>や商船三井<9104>の大手海運も高い。NY原油先物価格の上昇を手掛かりに石油資源開発<1662>が大きく上昇し、富士石油<5017>、丸紅<8002>、大平洋金属<5541>なども大幅に上昇。主力処ではソニーG<6758>、キーエンス<6861>、日立<6501>が堅調。グロース(成長)株はまちまちな中、メルカリ<4385>、SREHD<2980>が強い動き。フジクラ<5803>は証券会社の目標株価引き上げを受けて急伸。アシックス<7936>は日テレHD<9404>と共同でスポーツメディア事業などを手掛けるアールビーズの株式を取得すると発表し、業容拡大への期待感から買われた。 一方、レーザーテック<6920>が半導体関連の中で逆行安となり大幅に下落。ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、OLC<4661>など値がさ株の一角が軟調。第一三共<4568>、武田薬<4502>など医薬品の一角も大きく下落。東証プライム市場の下落率上位にはマネーフォワード<3994>、ギフティ<4449>、インソース<6200>、インフォマート<2492>など中小型グロース株が多く見られる。 セクターでは石油・石炭、鉱業、パルプ・紙が上昇率上位となった一方、医薬品、倉庫・運輸、その他製品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体64%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 前日の米株式市場では主要株価指数がともに小幅ながら上昇して終了。セントルイス連銀のブラード総裁が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ支持に傾くなど、タカ派寄りの発言が相次いだ中でも、米10年債利回りは小幅に低下し、落ち着いた動きだったことで、ハイテク・グロース株も底堅い動きだった。 しかし、前日の当欄(「来週以降の基調転換を示唆する材料観測」)においても述べたが、明らかに株式市場の騰勢は弱まっている。一昨日、前日のナスダック総合指数が特にそうだったが、これまでのように押したら買いが湧いてくるような動きが見られなくなった。日経平均も前日は一度も29000円を上回れなかったうえ、本日も寄り付き直後から早々に29000円を割り込み、寄り天井という、ここ1カ月の間ほとんど見られなかった動きを見せた。7月半ばからのリバウンド局面の特徴として、押しても買いが入り続け、これでもかと言わんばかりの力強い動きが見られていたが、明らかにそれとは対照的な動きに変化してきている。 これもまた当欄でのコメントの繰り返しにはなるが、今晩の米国版SQ(特別清算指数)算出を境にした需給の転換には注意したい。奇しくも前日の米株式市場では、今回のリバウンド局面において再び盛り上がっていたミーム銘柄が軒並み安になるという、まるでリバウンド局面の終了を示唆するかのような出来事が起きた。。小売チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンドの株価は前日20%安と急落。物言う投資家のライアン・コーエン氏率いるRCベンチャーが、保有していた同社株を全て売却したことが明らかになったことで売りが膨らんだ。ミーム銘柄の代表であるAMCエンターテインメント・ホールディングスも10%安となった。 SQを境にした基調の転換とは、あまりに分かりやす過ぎるとも思われるが、リバウンドが始まってからちょうど1カ月が過ぎたタイミングでもあり、日柄的には十分と思われる。また、上述した出来事も、リバウンドをけん引してきた個人投資家の投資余力を左右しかねないという観点から、基調の転換に繋がり得ると考えられる。ここまでの株式市場の上昇ペースがかなり速く、強烈な印象を残した分、そんな簡単に下がるとは考えにくいかもしれないが、今回のリバウンド局面は決算シーズンを挟んでいたにも関わらず、現物・先物ともに売買高が少なかった。つまり、指数の上昇幅から窺える見た目ほどには実体は強くないと考えられ、その分、下げる時も足の速いことが考えられるだろう。 来週はカンザスシティー連銀が主催する年に一度の経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれる。また、半導体大手エヌビディアの決算もある。注目イベントを前に買いの手が限られてくるとも考えられ、ここからの押し目買いは慎重になるべきだろう。後場の日経平均は29000円を回復できるかが焦点となる。このまま回復できないようであれば、来週以降の基調の転換にはより注意した方がよいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/19 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は反落、来週以降の基調転換を示唆する材料観測  日経平均は反落。238.21円安の28984.56円(出来高概算5億1099万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でダウ平均は171.69ドル安(-0.50%)と6日ぶりに反落。英国のインフレ率が40年ぶりの高水準となったほか、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えた金利上昇を嫌気し、下落して始まった。米小売ターゲットの決算を受けた株価下落も重石となった。公表されたFOMC議事要旨では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及したことが明らかになり、金利が伸び悩んだことで、主要株価指数は終盤からやや下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は-1.25%と続落。金利高・米株安を受けて日経平均は265.37円安の28957.40円からスタート。朝方は売りが先行し、一時28846.52円(376.25円安)まで下落。ただ、ナスダック100先物の下げが限定的なこともあり、その後は下げ渋り、前引けにかけては29000円を窺う水準まで戻した。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、信越化<4063>など値がさ株のほか、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株などの下落が大きめ。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が崩れており、ラクス<3923>、マネーフォワード<3994>などの中小型株グロース株の下落がきつい。米アナログ・デバイセズの決算を受けたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅安を嫌気し、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>などの半導体関連も軒並み安。配当権利落ちの西松屋チェ<7545>も大きく売られた。 一方、レーザーテック<6920>、外資証券が目標株価を引き上げた新光電工<6967>が逆行高。郵船<9101>を筆頭に海運がしっかり。任天堂<7974>は大幅高。米エネルギー情報局(EIA)の統計で、原油の週間在庫統計の減少や原油輸出の増加が確認されたことで、INPEX<1605>、ENEOS<5020>のほか、住友鉱<5713>など資源関連が小じっかり。連日でストップ高となっていたアイスタイル<3660>は急伸。エンビプロHD<5698>、光通信<9435>、イリソ電子<6908>などが東証プライム市場の上昇率上位に入った。 セクターでは精密機器、空運、輸送用機器が下落率上位となった一方、鉱業、その他製品、繊維製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体73%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 前日の米国市場で注目すべき点は2つあった。一つは米10年債利回りの動き、2つ目は7月開催分のFOMC議事録の公表とそれを受けた米ハイテク株の動き。一つ目の10年債利回りについては、前日、約1カ月ぶりに一時2.9%台に乗せる場面があった。8月1日の2.57%をボトムにした上昇基調への転換がより鮮明になってきており、実質金利の低下による株価収益率(PER)主導のリバウンド相場については、一服の兆候が強まってきたと思われる。 2つ目については特に印象的だった。前日のナスダック総合指数は1.25%の下落。序盤には一時1.7%以上も下落する場面があり、リバウンド相場が始まった7月半ばからの直近1カ月間では特に弱い動きだった。FOMC議事録では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及していたほか、利上げペースについては、いずれは減速させる必要性があるとの認識で合意していたことが明らかになった。市場ではこれをややハト派寄りと受け止める向きが多かったもよう。これを受け、議事録公表後にナスダックの下落率は0.4%台まで縮める場面があったが、引けにかけて再び大きく下げ幅を広げた。 ここ1カ月の米株式市場では、相場上昇に乗り遅れることを嫌った投資家の押し目買いが強く、下げてもすぐに持ち直すという動きが多かった。引けにかけては強い動きを見せる日が大半だったため、一度持ち直した指数が引けにかけて再び弱く動いたのは印象的で、リバウンドが最終局面にあることを示唆しているのではないかと考えられる。 SOX指数の下落率が2.48%と大きかったことも注目される。米アナログ・デバイセズが発表した5-7月実績及び8-10月見通しは共に市場予想を上回った。ただ、同社の最高経営責任者(CEO)は「経済的な不確実性が受注に影響し始めている」と言及。同社は半導体メーカーの中でも広範な種類の半導体を手掛けているだけに、業界の先行きを占う上で注目されていた。エヌビディアやマイクロン・テクノロジーに続く同社のネガティブなコメントを受け、改めて半導体業界の先行きに対する警戒感が高まった。 米国、中国、欧州の3大経済圏の景気減速が気掛かりな中、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の様相を一段と強める欧州経済を中心とした世界経済の後退も更に心配になってきた。前日に発表された英国の7月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と、6月の+9.4%から一段と伸びが加速し、市場予想の+9.8%も上回った。7月CPIの減速を受けてインフレ懸念がやや後退している米国とは対照的だ。 全体的に資源価格は下落しているが、欧州では天然ガス価格の急騰が続いており、足元では、ロシア軍のウクライナ侵攻後に付けた2月高値も上回る勢いとなっている。欧州の複数の地域では猛烈な熱波が襲っており、冷房需要が急速に高まっている。そのうえ、ドイツでは、発電のために使っている石油を運ぶライン川の水位が低下して石炭を運ぶことができず、天然ガスの需要が一段と高まるという負の連鎖が起きている。 景気回復が期待された中国も想定以上に回復ペースが鈍く、世界経済のけん引役は期待できない。足元でファナック、キーエンス、SMCといったFA関連株が弱含んできていることもその証左と言えそうで、気掛かりだ。 前日の当欄(「売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄」)での繰り返しにはなるが、今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えており、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意した方がよいと考える。来週25日からは経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」も開催される。イベントとしては注目度が高く、これを前に、1カ月にわたって続いてきた需給主導のリバウンド相場が転換し始めてもおかしくはないだろう。 なお、今晩の米国市場では、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数のほか、半導体大手アプライド・マテリアルズの決算が予定されている。どちらも注目度は高く、結果は事前にはやや警戒されている。そのため、後場の東京市場では積極的な押し目買いは期待しにくいとみている。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/18 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は反発で29000円回復、売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄  日経平均は反発。232.42円高の29101.33円(出来高概算5億7926万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でダウ平均は239.57ドル高(+0.70%)と5日続伸。大手小売企業の決算が軒並み予想を上回ったことで、高インフレ下での消費の強さを確認し安心感が台頭。バイデン大統領の署名によりインフレ抑制法案が成立したことも支援材料となり、引けにかけてダウ平均は上げ幅を拡大。一方、金利の上昇でハイテク株は伸び悩み、ナスダック総合指数は-0.19%と3日ぶりの小反落。ダウ平均の上昇を引き継いで日経平均は83.74円高の28952.65円からスタート。寄り付きから買いが先行し、すぐに29000円を超えると序盤の時間帯に29153.05円まで上げ幅を広げた。その後は騰勢一服となったが、円安進行なども支えに高値圏での堅調推移が続いた。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>などの値がさ株が高い。為替の円安進行を追い風にトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、デンソー<6902>などが軒並み上昇。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、マネーフォワード<3994>、JMDC<4483>のグロース(成長)株も全般大きく上昇している。原子力規制委員会が柏崎刈羽原発6、7号機のテロ対策設置計画を許可したと伝わったことで東京電力HD<9501>が大幅高となった。自社株の消却を発表したシュッピン<3179>も堅調。東証プライム市場の上昇率上位には、リブセンス<6054>、クロスマーケ<3675>、大阪チタ<5726>など直近、好決算を発表した銘柄が散見される。 一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けてレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が軟調。ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株の一角も冴えない。下落率上位にはKeePer技研<6036>、サーバーワークス<4434>、メンバーズ<2130>などが並んでいる。 セクターではその他製品、海運、非鉄金属が上昇率上位となった一方、鉱業、医薬品、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は7カ月ぶりに29000円台を回復している。警戒されていた米小売大手企業の決算では、ウォルマートとホーム・デポが揃って市場予想を上回る内容を発表し、株価が大幅高となったことで安心感が台頭。金利上昇でこれまでけん引役だったナスダック総合指数が小休止する一方、主役交代でダウ平均が相場全体をけん引した。これを好感し、東京市場でも買い戻しの流れに更に弾みが付いた格好だ。 足元では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの先物買いが相場上昇を演出してきたが、ここにきて個人投資家による買い戻しも加わっているもよう。日経ダブルイン<1357>の買い残は、日経平均が30795円の高値を付けた昨年9月以来の高水準まで大きく積み上がり、買い長になっている。一方で、日経レバETF<1570>は8月に入ってから売り長の状態が続いている。売り目線の個人投資家が増えるなか、相場の上昇が想定以上に続いてきたことで、個人投資家の踏み上げが相場上昇に拍車をかけているようだ。 しかし、ファンダメンタルズを無視した需給主導の上昇にもさすがに過熱感が出てきている印象。米・中・欧の3大経済圏で経済指標の予想以上の悪化が続き、景気後退懸念が強まるなか、企業業績は7-9月期以降の悪化が懸念されている。こうした悪材料はまだアナリストの業績予想などには反映し切れておらず、今後の業績悪化が想定される。一方、米10年債利回りは8月1日に付けた2.57%をボトムに足元では2.8%台まで回復。金利の低下トレンドは一服したとみられ、再度、金利上昇による株価バリュエーションの下押し圧力なども警戒される。こうした中、既に29000円を回復してしまった日経平均にどのような一段の上昇材料があるのか、需給要因以外ではなかなか思いつかない。 頼みの綱の需給要因についても、リバウンドが始まった7月半ばから1カ月が経ち、日柄的にはそろそろ一服してきてもおかしくないだろう。今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えているが、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意し始めた方がよいだろう。日米ともに株価指数が大きく水準を切り上げてきた中でも、半導体関連だけは取り残されているのも気掛かりだ。産業のコメとも呼ばれる半導体は製造業としての先導性が高く、関連株の軟調が続くなかでの需給主体の相場はいずれ転換せざるを得ないと考える。個人投資家の踏み上げについても、日経平均が29000円を回復した現状水準からの一段の上昇を見込む投資家は少なく、実際に買い戻しに転じる向きは限られるのではないだろうか。 後場の日経平均は29000円台でのもみ合いか。昨日は現物株も先物も共に売買高がかなり少なく、直近の指数の値幅程には商いは膨らんでいない。需給要因以外で相場上昇を期待できる材料も見当たらず、積極的な売買は引き続き手控えられるだろう。今晩の米国市場では7月小売売上高、ターゲットなどの小売企業決算、連邦公開市場委員会(7月26-27日開催)議事録の公表などが予定されており、様子見ムードも広がりやすいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/17 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり小反落、悪材料織り込み済みでない株価上昇に不安  日経平均は3日ぶり小反落。10.02円安の28861.76円(出来高概算5億1656万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は151.39ドル高(+0.44%)と4日続伸。8月NY連銀製造業景気指数や8月NAHB住宅市場指数が大きく落ち込んだことで、景気減速懸念から売りが先行。ゼロコロナ政策に伴う中国の低調な経済指標や中国人民銀行による予想外の利下げなども世界経済への懸念を強めた。ただ、取引後半に入ると、金利低下に伴うハイテク株の上昇が相場を支援し、主要株価指数は揃って上昇に転じて終了した。ナスダック総合指数は+0.61%と続伸。 一方、先週末から昨日までの2日間で1000円超も上昇していた日経平均は短期的な過熱感もあり42.25円安からスタート。朝方は売りが先行し、28752.88円(118.9円安)まで下落したが、前日の米株高も支えに持ち直すと、アジア市況が堅調な中、前場中ごろには一時プラスに転換。ただ、上値も重く、その後は前日終値を挟んだ一進一退となった。 個別では、米中経済指標の下振れで景気後退懸念が強まるなか、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の大手海運が揃って大幅安。NY原油先物価格が1バレル=90ドルを割り込んだことでINPEX<1605>、コスモエネHD<5021>が下落。資源価格も全般下落しており、三菱マテリアル<5711>、大紀アルミ<5702>なども安い。ホンダ<7267>、マツダ<7261>、日産自<7201>などの自動車関連のほか、川崎重工業<7012>、IHI<7013>の機械・防衛関連、村田製<6981>、TDK<6762>の電子部品関連の一角も軟調。今期減益見通し及び中計目標の物足りなさが嫌気されたテスHD<5074>が急落したほか、第1四半期が大幅減益となったUMCエレ<6615>も大きく売られ、東証プライム市場の下落率上位に並んだ。 一方、東証プライム市場の売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>、レノバ<9519>、エムスリー<2413>、ギフティ<4449>が大幅に上昇。SHIFT<3697>、ラクス<3923>、JMDC<4483>などのグロース(成長)株も全般高い。ほか、バンナムHD<7832>、コナミG<9766>といったゲーム関連も総じて強い動き。前日に決算を発表したレアジョブ<6096>、リブセンス<6054>は揃って急伸し、東証プライム市場の上昇率上位に並んだ。高水準の自社株買いが好感された日機装<6376>、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンス等による株式の大量買い付けで思惑が高まっているジャフコG<8595>なども急伸した。 セクターでは海運、鉱業、石油・石炭が下落率上位となった一方、その他製品、空運、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体51%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は小休止といった様子。7月15日以降、ちょうど1カ月の間に2000円超も上昇してきただけにさすがに一服感が見られている。4-6月決算も一巡したことで、心理的な節目の29000円を手前に材料難でもあろう。一方、マザーズ指数が大幅高で、8月5日の戻り高値を大きく突破、節目の750を窺う動きとなっている。材料不足のなか、直近好決算を発表したばかりの銘柄を中心に、値動きの軽い中小型株の物色が活発化している。 ただ、全体としてはやはり買い疲れ感が出てきている様子。昨日は日経平均が300円を超す上昇で、29000円を窺う強い動きだったが、東証プライム市場の銘柄では半数以上が下落していた。本日も同様に半数以上が下落している。東証プライム市場の売買代金からも、指数の値幅程には売買が活発していない様子が窺える。8月物オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出が絡んだ先週末12日は3兆円台後半と見かけ上の売買代金は膨らんだ。一方、昨日15日は2兆5000億円台にとどまり、先週末の決算発表が500件近くもあった割には、物色は低調だったように見受けられる。本日も前引け時点で1兆2800億円台とさほど膨らんでいない。 足元の株式市場の上昇に対して懐疑的な見方を持っている機関投資家の多くが夏休みに入っており、売り手不在のなか、個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの機械的な買いで相場上昇が続いているが、ファンダメンタルズなどの実体を伴っていない印象は拭えない。 昨日に発表された8月NY連銀製造業指数は-31.3と、前月の+11.1から大幅に悪化。市場予想の+5も大きく下振れ、2001年以降で2番目に大幅な低下となった。前回7月も3カ月ぶりのプラスだったとはいえ、6カ月先の見通しを示す景況指数はマイナスと内容は悪かった。NY連銀製造業景気指数は結果のブレが大きい特徴があるとも言われているが、ここ4カ月は連続して悪い結果・内容だ。18日に発表予定のフィラデルフィア連銀製造業景気指数も悪い結果が続いている。前回7月までの間、4カ月連続で結果が予想を下振れているほか、その下振れ度合いも拡大傾向にある。また、6月からはこちらもマイナス圏に低下している。 前日に発表された中国の経済指標も株式市場にはほとんど影響を与えなかったが、内容はネガティブで、今後じわりと効いてきそうだ。7月の小売売上高は前年比+2.7%と予想(+4.9%)を大きく下回り、6月(+3.1%)からも悪化した。鉱工業生産も同+3.8%と予想(+4.3%)及び6月(+3.9%)を下振れた。 米国の景気の基調は明らかに下方向であり、その下振れ度合いも予想を超えるものが多くなっている。景気循環が良い意味で欧米など他の先進諸国とずれている中国については、4月をボトムに景気回復に向かい、世界経済のけん引役になってくれることが期待されていたが、その期待も剥落してきている。むしろ、住宅ローン未払い問題など不動産業界の悪化が著しく、世界経済の足枷になる恐れの方が強まっているくらいだ。 こうした中でも、前日の米株式市場では主要株価指数が揃ってプラス転換で終えた。景気後退懸念に伴う金利低下を追い風にハイテク株が下支えしてくれているようだが、これも、インフレ抑制を最優先にし、来年までの利上げ継続を方針としている米連邦準備制度理事会(FRB)とのギャップが大きすぎて、いつまで金利低下を理由にしてハイテク・グロース株買いに付いていけばよいか分からない。 国内の企業業績も、アナリスト予想の平均値は営業利益の伸び率でみて4-6月がボトムという見通しになっているようだが、米・中・欧の世界3大地域の経済が減速しているなか、7-9月期以降の方がむしろ業績の悪化懸念が強いのではないだろうか。一株当たり利益(EPS)の悪化を、金利低下による株価バリュエーション(PER)の拡大で相殺しようにも、金利低下には景気後退を織り込んでもさすがに低下余地が乏しいだろう。日経平均でいえば、29000円を超えてまで買ってくる理由があるのだろうか。9月以降は29000円突破よりも27000円割れなど下方向のリスクの方が高い気がしてならない。 後場の日経平均はもみ合い継続を予想。手掛かり材料難のなか、今晩には米国で7月の住宅着工件数や鉱工業生産のほか、ホームデポ、ウォルマートなどの注目小売企業の決算が予定されており、これらを見極めたいとの思惑から積極的な売買は手控えられやすいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/16 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、米株高好感して28800円台に到達  日経平均は続伸。283.92円高の28830.90円(出来高概算5億3303万株)で前場の取引を終えている。 前週末12日の米株式市場のNYダウは424.38ドル高(+1.27%)と大幅続伸。インフレ減速を期待した買いに、寄り付き後、上昇。8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想以上に改善し、経済への悲観的見方が後退したため終日堅調に推移した。インフレ抑制法案の成立期待も相場を支援し、引けにかけて上げ幅を拡大した。長期金利の低下でハイテク株も買われてナスダック総合指数は大幅に反発。堅調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比76.80円高からスタート。その後は、上げ幅を拡げる展開となった。 個別では、ADC技術に関する紛争で相手側の主張を全面的に否定する判断が下された第一三共<4568>、前期実績及び今期予想は共に市場予想を上振れたパンパシHD<7532>、上期経常損益が黒字浮上で着地したダブル・スコープ<6619>が大幅高となった。ソフトバンクG<9984>、ダイキン<6367>、信越化<4063>、メルカリ<4385>、任天堂<7974>などが大幅に上昇、ファーストリテ<9983>や東エレク<8035>なども堅調に推移した。キャリアリンク<6070>、ギフティ<4449>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、日本郵船<9101>などの海運株が軟調。三井松島HD<1518>や楽天グループ<4755>、リクルートHD<6098>が大幅に下落、富士通<6702>やトヨタ自<7203>なども軟調、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も冴えなかった。ほか、22年12月期業績予想を下方修正したスノーピーク<7816>、ダイレクトマーケティングミックス<7354>やネットプロHD<7383>、マーケットエンタープライズ<3135>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは医薬品、ゴム製品、小売が上昇率上位となった一方、海運、鉱業、陸運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を拡げる展開となった。アジア市況や米株先物がもみ合い展開となっているが、日経平均は前週末の米株高を好感する動きに加えて、決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっている。 新興市場は上値の重い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたあとじりじりと上げ幅を縮小した。米国でインフレピークアウト期待が高まり堅調な展開が続くなか、国内の個人投資家もこうした流れを好感する動きが優勢となった。また、新興市場でも決算発表が本格化しており、米株高の流れを引き継いで12日に決算を発表した銘柄など個別材料株もポジティブな反応をみせている。ただ、米長期金利が2.8%台と高水準で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株を積極的に買い進む動きは乏しい様子。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.77%高、東証マザーズ指数が0.71%高となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移、本日は28800円台まで上昇している。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていること、リセッション材料が出尽くしていることなどが挙げられている。物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、やはり順調な持ち直しは長続きしないと感じている投資家も少なくない。米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まっているが、米7月のCPIとPPIの減速要因の大半はエネルギー価格で、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの分野もほとんど減速していない。 ブルームバーグが実施した最新の月間調査でエコノミストらは、インフレ予測を2023年の各四半期で引き上げたという。米金融当局がインフレ目標の基準値としている個人消費支出(PCE)総合価格指数は、来年末に平均で年率2.5%上昇と予想されており、7月時点の予想2.3%上昇から上方修正となるもようだ。インフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。また、FRB高官からけん制発言が相次いでいることは見逃してはならない。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にはある程度の注目が集まるだろう。 そのほか、マーキー米上院議員(民主党)率いる米議員団が14日、台湾に到着した。2日間の日程で滞在するようだが、ペロシ下院議長による今月初旬の訪台以降高まっている中国との緊張が続く恐れがある。このような米中問題も見逃してはならず、ロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。筆者も中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に現在のリバウンド基調を見守っている。 さて、後場の日経平均は、上げ幅をさらに広げる展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/08/15 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、諸要素考慮して28500円が目一杯か  日経平均は大幅反発。660.66円高の28479.99円(出来高概算7億9957万株)で前場の取引を終えている。 東京市場が祝日だった間の10、11日の米株式市場では、ダウ平均が535.10ドル高、27.16ドル高と上昇。10日は米7月消費者物価指数(CPI)が予想以上に減速したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース減速への期待が高まり、大幅に上昇。一方、11日は、米7月生産者物価指数(PPI)も予想以上に減速したものの、FRB高官らの発言を受けて長期金利が大きく上昇したことで、買い先行で始まったが大きく失速した。ナスダック総合指数はそれぞれ+2.89%、-0.58%だった。重要インフレ指標を無難に通過した目先の安心感から売り方の買い戻しなども入り、日経平均は432.41円高とギャップアップでスタート。朝方から買いが先行した後はこう着感を強めたが、高値圏での推移が続き、前引け直前には一時28500円を超える場面があった。 なお、8月オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出値は28525.62円だった。 個別では、東エレク<8035>、ファナック<6954>、キーエンス<6861>、信越化<4063>、ダイキン<6367>などのハイテク株や値がさ株が大幅高。アリババ株の一部売却を発表したソフトバンクG<9984>は急伸。村田製<6981>、安川電機<6506>、京セラ<6971>も高い。エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>、JMDC<4483>、メルカリ<4385>のほか、ラクス<3923>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>などグロース(成長)株は全般強い動き。三菱商事<8058>、住友鉱<5713>、ENEOS<5020>など資源関連株も堅調。業績予想を上方修正し、自社株買いも発表したホンダ<7267>や、4-6月期営業利益が市場予想を上回った住友不動産<8830>、SMC<6273>、パーソルHD<2181>が大きく上昇。業績予想を下方修正も、市場予想を上回る水準にとどまったコーセー<4922>はあく抜け感から買われた。 一方、業績予想を、市場予想を下回る水準にまで下方修正したブリヂストン<5108>、資生堂<4911>、7月既存店売上高が冴えない結果となった良品計画<7453>は軟調。業績予想を上方修正した富士フイルム<4901>は買い先行も失速して下落。ガンホー<3765>、ブレインP<3655>、PHCホールディングス<6523>、ディー・エヌ・エー<2432>などが決算を材料に大きく売られ、東証プライム市場の下落率上位に並んでいる。 セクターでは電気機器、精密機器、石油・石炭を筆頭にほぼ全面高。一方、ゴム製品が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体87%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 祝日明けの日経平均は600円を超える大幅反発で6月9日に付けた28389.75円を超えてきた。日足チャートでは7月20日以降のもみ合いから上放れる形となっており、商品投資顧問(CTA)など短期筋の追随買いを一段と誘い込みやすい状況だ。一方で、28500円を意識した上値の重さも見られている。 米7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は共に予想を下回り、市場ではインフレピークアウト期待が高まっている。しかし、指標の減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。 一時1バレル=90ドルを割り込んでいたNY原油先物価格は足元で90ドル半ばまで回復している。代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数も7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。また、7月雇用統計では平均賃金の伸びは予想に反してむしろ加速していた。「インフレピークアウト→利下げ減速」までを織り込むのは時期尚早といえよう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の高官からもけん制発言が相次いでいる。インフレ指標の発表後、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「インフレとの闘いで勝利を宣言するには非常に程遠い」と指摘。「政策金利は更に引き上げられた後、インフレが2%に低下するまでは維持される」とも発言し、来年の利下げを織り込む市場を強くけん制した。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想にもかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。 ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、前日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は8月に入ってからの上昇基調をやや加速させている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。 市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないとみている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続いている。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、CTAなどの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。来週末に控える米国版SQ(特別清算指数)までは売り方の買い戻しが相場を下支えしそうだ。 一方、4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、行動制限が長期化している中国の景気回復が遅れていることで、7-9月期決算に対する懸念が早くも台頭してきている。こうした状況において、株式の持ち高を「アンダー」から「ニュートラル」に修正することはあっても、「オーバー」にまで引き上げることは考えにくいだろう。今は夏休み入りしている多くの機関投資家が、休暇明けに積極的に株式を買ってくることは想定しにくく、日経平均は今の28500円が上限とも考えられよう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/12 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続落、 機関夏休み入りのなか逆張り個人が下支え?  日経平均は続落。232.89円安の27767.07円(出来高概算5億5338万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でダウ平均は58.13ドル安(-0.17%)と3日ぶり小幅反落。消費者物価指数(CPI)の発表を控えた持ち高調整から終日売り優勢。半導体メーカーのエヌビディアに続きマイクロン・テクノロジーも弱い見通しを示したため、同セクターが大きく売られ相場の重しとなった。ナスダック総合指数は-1.19%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-4.57%と揃って3日続落。米株安を受けて日経平均は44.85円安からスタート。半導体関連など値がさ株を中心に朝方は売りが先行し、寄り付き直後に27729.46円(270.5円安)まで下落した。一方、今晩に発表される米7月CPIを前に売り方の買い戻しなども入り、その後は下げ渋った。しかし、戻りは鈍く、前引けにかけては再び弱含みとなった。 個別では、SOXの急落を受けてレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連が大幅下落。ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、SMC<6273>、富士通<6702>などの値がさ株や、エムスリー<2413>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>のグロース(成長)株も総じて軟調。カナミックN<3939>、JMDC<4483>、ペプチドリーム<4587>、アカツキ<3932>、じげん<3679>、やまみ<2820>、藤田観光<9722>などの決算発表銘柄が東証プライム市場の下落率上位に並んだ。 一方、レノバ<9519>が見直し買いで急反発。決算発表銘柄では、住友林業<1911>、マツダ<7261>、三菱マテリアル<5711>、出光興産<5019>が大幅に上昇。ほか、ロート製薬<4527>、セグエグループ<3968>、理研計器<7734>、新日本製薬<4931>、日本マイクロニクス<6871>などが決算を手掛かりに急伸し、東証プライム市場の上昇率上位に並んだ。マクロミル<3978>は好決算を材料にストップ高まで買い進まれた。 セクターではゴム製品、電気機器、精密機器が下落率上位になった一方、石油・石炭、電気・ガス、パルプ・紙が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体55%、対して値上がり銘柄は40%となっている。 前日に終値で僅かに28000円を割り込んだ日経平均は、本日も指数寄与度の大きい半導体関連株の下落に押される形で、値幅を伴った下落となっており、28000円回復が遠のく形となっている。半導体業界では、一昨日のエヌビディアの市場予想を大幅に下回る決算に続き、昨日はマイクロン・テクノロジーによる業績見通しの引き下げというネガティブなニュースが続いた。 マイクロンは顧客の在庫削減を理由に、6-8月の売上高見通しを従来の会社予想レンジの下限、ないしそれを下回る可能性があると示した。前回の弱気な見通しを示したのは僅か1カ月前のことだ。また、先んじて需要が減速していた民生向け市場だけでなく、データセンター用や産業用、車載向け用など、これまで堅調とされてきた市場でも調整が広がっており、需要の一段の減少の可能性も示唆された。東エレクも一昨日の決算において、市場見通しを期初に提示した水準から下方修正した。業界の急速な冷え込みがひしひしと伝わっており、一時後退していた景気後退懸念が再び頭をもたげている。 一方、今晩には米7月消費者物価指数(CPI)、明日には米7月生産者物価指数(CPI)と重要インフレ指標の発表を控えている。東京市場は明日が祝日で休場となるため、これら両インフレ指標の結果を受けた2日分の米株式市場の動きを祝日明けに反映することになる。結果を受けた相場のボラティリティの高まりを警戒する投資家が多く、イベント前に持ち高を大きく傾ける向きは限られ、指数の下落率はさほど大きくなっていない。ただ、指標結果がネガティブなものとなれば、一段の下落は否定できないだろう。 また、機関投資家の多くが夏休み入りしている。市場参加者が少なくなっている中、逆張り志向の強い個人投資家の存在感が相対的に増している。これら個人投資家が、昨日からの下落局面において、日経レバETF<1570>の空売りや日経ダブルイン<1357>の買い持ち高を手仕舞っていることも、指数の底堅さに繋がっていると考えられる。ただ、裏を返せば、機関投資家が戻ってくる8月後半から9月以降には相場の波乱が待ち構えているとも言える。 前日の当欄「インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい」において述べた通り、インフレを巡る環境はほとんど改善していないと考えられ、仮に、今夜から明日にかけての米インフレ指標が前月から予想以上に減速したとしても、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換期待を高めるには依然として材料不足であることには変わりはない。利上げペースの減速ですら、期待値を高めるには時期尚早と思われ、指標結果を受けた初動がポジティブなものであったとしても、現在の株価指数の水準を踏まえれば、ここからの上値追いには慎重になった方がよいだろう。 後場の東京市場は軟調もみ合いか。国内の祝日、米重要インフレ指標を前に持ち高を動かしにくく、様子見ムードが支配的となりそうだ。一方、香港ハンセン指数が大きく下げ幅を広げてきており、外部環境の悪化次第では、イベント前に一段と手仕舞い売りが広がる可能性もあるため、注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/10 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり反落、インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい  日経平均は5日ぶり反落。239.89円安の28009.35円(出来高概算5億8451万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は29.07ドル高(+0.08%)と小幅続伸。強い7月雇用統計を受けた景気後退懸念の緩和に伴う買い戻しが続き、買い先行。ただ、今週半ばに発表が予定されている重要インフレ指標を警戒した売りから次第に失速した。上院がインフレ削減法案を可決し成立する見込みとなったことが一部プラス材料となり、ダウ平均はかろうじてプラス圏を維持したが、ナスダック総合指数は、半導体メーカーのエヌビディアの決算を受けた下落に押され、-0.1%と小幅続落。日経平均は12.4円安からスタートすると、低調な決算を発表した東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>の急落が重石となる形で徐々に下げ幅を拡大。午前中ごろには28000円を割り込む場面もあったが、引けにかけては下げ渋った。 個別では、予想外に減益決算となった東エレクが8%を超える下落率で急落。4-6月期の最終赤字額としては日本企業で過去最大を記録したソフトバンクGは4%強の下落。流通取引総額の伸び悩みが嫌気されたメルカリ<4385>は9%超と大幅安。東エレクや米エヌビディアの株価急落が波及する形でアドバンテスト<6857>やスクリン<7735>などの半導体関連が総じて軟調。業績予想を下方修正したダイフク<6383>と住友ゴム<5110>は揃って急落。第1四半期が大幅減益となった日製鋼<5631>も大幅安となった。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株の一角が堅調。業績上方修正や増配、高水準の自社株買いを発表したINPEX<1605>は大幅高。三井松島HD<1518>は商いを伴った連日の大幅高で、東証プライム市場売買代金上位に顔を出した。ラウンドワン<4680>も連日で急伸。ほか、デサント<8114>、NISSHA<7915>、チャームケア<6062>、日産化学<4021>、ニチコン<6996>が好決算を手掛かりに大幅高。トレンド<4704>は、アクティビストとして有名な米バリューアクト・キャピタルが大株主に浮上したことで急伸した。 セクターではゴム製品、電気機器、輸送用機器が下落率上位になった一方、鉱業、海運、石油・石炭が上昇率上位になった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 日経平均は指数寄与度の高い主力株の下落に押され、値幅を伴った下げとなっている。ただ、心理的な節目である28000円割れの水準では買い戻しが入って下げ渋っている。前日のナスダックの下落率も0.1%と、エヌビディアの急落があった割には底堅い印象。 10日の米7月消費者物価指数(CPI)と11日の米7月生産者物価指数(PPI)を前に様子見ムードが広がっており、持ち高を大きく動かしたくない向きが多いというのが指数の底堅さの背景だろう。ただ、筆者としては、足元の株式市場は楽観の修正が足りないと考えている。 7月半ばからの株式市場のリバウンドは、米連邦公開市場委員会(FOMC)や主要企業の4-6月期決算を前にした買い戻しから始まった。その後、FOMC後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を受けて高まった利下げ転換期待や、資源価格の下落を背景にしたインフレピークアウト期待、主要企業の決算が想定程には悪くなかったことなどから買い戻しに拍車がかかった。 しかし、先週末に発表された米7月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが予想を2倍以上回ったほか、平均賃金の伸びは前年比と前月比のどちらでみても、減速の予想とは対照的に加速した。この強すぎる雇用統計は上述した7月半ばからのリバウンドの根拠とされてきた「インフレピークアウト→FRB利下げ転換」の期待を打ち消すものだ。市場でも、雇用統計を受け、0.5ptの利上げが有力視されていた9月会合での利上げ幅としては急速に0.75ptの確率が高まってきた。 それにも関わらず、週明けの株式市場は日米ともに底堅い。CPIは総合で前年比+8.8%と、6月の+9.1%から減速する見込みで、投資家はインフレピークアウト→利下げ転換への期待をまだ持っているのかもしれない。また、前日に発表されたニューヨーク連銀の調査で、3年先の期待インフレ率が3.2%と、6月の3.6%から大きく低下したことも、こうした期待を支えているのかもしれない。 しかし、CPIは減速したところで依然8%強と歴史的な高水準。また、資源価格の下落傾向には一服感が出てきており、今後の減速ペースはかなり緩やかになるとも考えられる。さらに、FRBが重要視する食品・燃料を除いたコアCPIは前年比+6.1%と6月の+5.9%から拡大する見込み。全体の3分の1を占めるCPIの最大構成項目である住居費は住宅価格から1年程遅れて動く傾向がある。このため、米国で住宅価格は今年4月に伸びとしてはピークを打っているが、CPIの伸びは対照的に今後も加速する公算となる。コアCPIはFRBの目標値である2%を3倍以上上回る状態が今後も続く可能性が高いといえる。 加えて、上述したように労働市場では平均賃金の伸びが加速している。賃金はインフレ項目の中でも下方硬直性があり、FRBのインフレ退治にあたっては特にやっかいな分野。サプライチェーン(供給網)制約の解消などが進んでいるのは確かだが、いま言えることは、それでも、なお需要が供給を上回っているということだ。需要が供給を上回っている限り、価格上昇圧力は消えず、FRBは金融引き締めを止めることはできない。 FRBも市場よりは慎重ながら、今後のデータ次第では0.5ptへと利上げ幅の減速も可能という見方が出ているのは心配だ。昨年8月のジャクソンホール会合で、パウエル議長は、インフレは一過性という主張を繰り返していた。しかし、その僅か3カ月後に同氏は「一過性」という表現を使うべきでないと姿勢を急転換。その後、FRBは自らの過ちを認める形で、急速な金融引き締めへと舵を切った。 僅か1年前に過度な楽観論から大きな過ちを犯したにもかかわらず、ここにきて再び利上げペースの減速もあり得ると市場に期待を抱かせるような楽観的な見方を一部持ち始めているのは非常に危うい。そもそも、これだけインフレが高いにもかかわらず、政策金利が未だに2.25-2.50%という物価指標の伸びを大きく下回る水準にあることに疑問府がつく。個人的には1ptの利上げを連続実施するくらいのショック療法が必要と考える。 いま市場が抱いている楽観論が正しいかどうかの答え合わせは近く行われる。早ければ、今週の米物価指標の発表、そこで行われなければ、来週17日のFOMC議事録公表か、今月25~27日開催予定のジャクソンホール会合までに修正される可能性があるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/09 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、不安要素多くリバウンドの長期化は期待薄  日経平均は続伸。65.22円高の28241.09円(出来高概算5億9463万株)で前場の取引を終えている。 前週末5日の米株式市場のNYダウは76.65ドル高(+0.23%)と反発。7月雇用統計の強い結果を受けて連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ観測が再燃し、金利高を警戒した売りが広がった。ただ、景気後退懸念も緩和したため、徐々に買い戻しが強まり、下げ幅を縮小。ダウは上昇に転じ終了、ナスダック総合指数は下落した。まちまちとなった米株市場を横目に、日経平均は前週末比125.78円安からスタート。その後は、プラス圏に浮上する場面も見られたが前週末終値を挟んでのもみ合い展開となった。 個別では、好調な受注動向を評価されたレーザーテック<6920>、自社株買いの実施を発表したキヤノン<7751>、業績・配当予想上方修正や株式分割を好感されたラウンドワン<4680>が大幅高となった。丸紅<8002>や三井物産<8031>、住友商事<8053>などの商社株が上昇しているほか、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、第一三共<4568>、INPEX<1605>、などが堅調、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの銀行株も上昇した。冶金工<5480>、三井松島HD<1518>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、日本郵船<9101>などの海運株が軟調。東京海上<8766>や任天堂<7974>、リクルートHD<6098>が大幅に下落、ソニーG<6758>やトヨタ自<7203>、キーエンス<6861>なども下落した。ほか、メディアスHD<3154>やクオールHD<3034>、ソリトンシステムズ<3040>、ジャムコ<7408>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、金属製品が上昇率上位となった一方、保険、パルプ・紙、海運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の42%、対して値下がり銘柄は52%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。アジア市況や米株先物が軟調な展開となっているが、日経平均は小幅なレンジでの推移となっている。週末に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの加速が確認されたため売りが先行したが、決算発表を終えた主力株への物色が中心となり下支えをしているようだ。 新興市場は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方に下げ幅を大きく拡げた。新興市場でも週末に発表された米7月雇用統計の結果でインフレの加速が確認されたことは、インフレの減速を予想していた分個人投資家心理にネガティブに働いた。また、米長期金利が2.8%台まで急伸しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株にとっては逆風となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.35%安、東証マザーズ指数が1.80%安となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていることは前回の当欄で述べている。 ほかにも、米国のリセッション入り確率が急低下してきているとブルームバーグでは述べられている。JPモルガン・チェースのストラテジストが考案したリセッション確率の指標によると、株式市場の視点では米景気下降はますます起こりそうにないという。また、株式とクレジット、金利市場が全体として織り込む米国のリセッション確率は40%と、6月段階の50%から低下したようだ。つまり、昨年11月から今年6月までの長期的な下落はリセッションを織り込むためで、現在はリセッション材料が出尽くしているとも捉えられている。さらに、物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、「株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしない」とゴールドマン・サックス・グループとバーンスタインのストラテジストが警告しているともブルームバーグで述べられている。マクロ経済データの悪化が続き、企業業績見通しが下方修正されていることを理由に挙げられている。4日に発表した1週間の新規失業保険申請件数は前週比6000件増加し、26万件だったことも気がかりである。 また、5日に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの減速予想とは対照的にインフレの加速が確認された。インフレ高進が確認されるとインフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。やはり、10日に発表される米7月消費者物価指数(CPI)の結果、これに伴うFRB高官ら発言には注目が集まろう。 さらに、ロシアのウクライナ侵攻や米中問題など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。これだけ不安材料が重なってくると、現在のリバウンドが長く続くことは筆者も想定していない。中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に株式市場を注視していくことが重要であろう。さて、後場の日経平均は、こう着感の強い展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/08/08 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、ベアマーケットラリー第2弾?いつまで乗車すべきか  日経平均は続伸。199.67円高の28131.87円(出来高概算6億1278万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でダウ平均は85.68ドル安(-0.26%)と反落。週次失業保険申請件数の増加により、雇用減速を警戒した売りが先行。さらに、ペロシ下院議長の台湾訪問を受け、台湾を包囲した中国軍の軍事演習に関する報道で地政学リスクへの警戒感も重石になった。ダウ平均は終日軟調に推移、一方、金利の低下でナスダック総合指数は底堅く推移し、+0.41%と続伸。日経平均は17.14円安からスタートも、寄り付き直後から買い優勢で切り返してプラスに転じると、午前中ごろには28000円を回復。その後も一本調子で上げ幅を広げ、一時28167.04円(234.84円高)まで上昇した。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が大幅続伸。任天堂<7974>が大幅高で、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>など主力の値がさ株が総じて堅調。ベイカレント<6532>やSHIFT<3697>のグロース(成長)株の一角も高い。好決算を手掛かりにSUMCO<3436>、HOYA<7741>が大幅に上昇し、大阪チタ<5726>は急伸、東邦チタニウム<5727>は連れ高に。主力処では日本製鉄<5401>、キッコーマン<2801>、スクエニHD<9684>も良好な決算を受けて急伸。そのほか、UACJ<5741>、アイロムG<2372>、中山製鋼所<5408>、有沢製作所<5208>、加賀電子<8154>などが決算を材料に急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。前場に決算を発表した丸紅<8002>も大幅高に転換した。 一方、原油先物価格や米長期金利の低下を背景にINPEX<1605>、コスモエネHD<5021>、三菱UFJ<8306>が軟調。円高・ドル安進行を受けてホンダ<7267>、SUBARU<7270>などが下落。東証プライム市場の売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>、メルカリ<4385>が大きく下落。ほか、IHI<7013>、三菱重<7011>、テルモ<4543>、オリンパス<7733>などが軟調。BEENOS<3328>とシスメックス<6869>は決算が嫌気されて急落。シュッピン<3179>、GMOペパボ<3633>、保土谷化<4112>、コナミグループ<9766>なども決算を受けて大幅に下落した。 セクターでは鉄鋼、その他製品、卸売が上昇率上位になった一方、鉱業、石油・石炭、電気・ガスが下落率上位になった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は想定外の強さで、これまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破。前日の米株式市場でハイテク・グロース株が続伸したほか、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%近く上昇し、国内でも半導体関連で好決算が相次いだこともあり、関連の値がさハイテク株が指数を押し上げている。今晩の米7月雇用統計を前に本日は様子見ムード一色で、動意薄の展開を想定していたため、意外感のある上昇だ。 7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いている。それまで悲観的な見方が多かっただけに、過度な悲観の修正が長期化しているようだ。機関投資家の株式組み入れ比率が歴史的にかなり低い状況にあった中、想定以上に上昇が続いていることを受けて、慌てて買い戻しに転じている投資家が多いのかもしれない。今晩の米7月雇用統計では、雇用者数の伸びと平均賃金の伸びで共に減速が見込まれている。予想通りとなれば「インフレピークアウト・利上げ減速」への期待に拍車がかかり、相場の上昇に一段と弾みがつく可能性がある。そうしたシナリオを想定し、イベント前に急いで買い戻している背景もありそうだ。 ただ、依然として足元の上昇についてはベアマーケットラリーに過ぎないとの見方が多い。ブルームバーグの報道によると、株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしないと、ゴールドマン・サックス・グループとサンフォード・C・バーンスタインのストラテジストが警告したという。また、「世紀の空売り」で有名になった投資家のマイケル・バーリ氏が、市場に「愚かさ」が戻ってきたとツイートしたことも話題になっている。 前日の英国金融政策委員会では、27年ぶりとなる0.5ptの利上げがほぼ満場一致で決定された。イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は、次回9月以降の会合ではあらゆる選択肢を検討するとし、「インフレを2%の目標に回帰させることが引き続き絶対的な優先事項であり、問答無用だ」と強いコメントを発した。さらに驚くべきは、インフレと景気の見通しだ。6月時点で前年比+9.4%と40年ぶりの高い伸びにまで加速している同国の消費者物価指数(CPI)について、中銀は前回6月の政策発表時にはインフレのピークは今年10月頃で、11%強と予想していた。しかし、今回は、ピークが13.3%になる見通しと大幅に引き上げ。また、今年10-12月期には景気後退(リセッション)に入り、来年末まで5四半期連続でリセッションが続くという。 このように欧州では完全にスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が現実ものとして台頭してきた。米国では7月ISM非製造業景気指数の改善などもあり、足元で景気後退を避けつつインフレ抑制に成功するのではという、ソフトランディング(軟着陸)への期待が俄かに高まっているが、先行き不透明感は依然としてかなり強い。今晩の米雇用統計後には、更なる買い戻し加速によるベアマーケットラリー第2弾が待っているのかもしれないが、いつまでこの上昇相場に乗っているべきか、気をもんでいる投資家は多いだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/05 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、7月半ばからの上昇相場いつまで続く?  日経平均は続伸。150.78円高の27892.68円(出来高概算6億5214万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でダウ平均は416.33ドル高(+1.28%)と3日ぶり大幅反発。セントルイス連銀のブラード総裁が米経済は景気後退に陥ってはいないとしたため、懸念緩和に伴う買い戻しが先行。さらに、7月ISM非製造業景気指数が予想外に改善し4月以来の高水準となったことも後押し。金利動向も安定し、ハイテク株の買いが続いたことも相場をけん引した。ナスダック総合指数は+2.58%と3日ぶり大幅反発。米株高を引き継いで日経平均は189.04円高からスタート。ただ、朝方に一時28000円を超えた後は失速し、前引けまでじりじりと水準を切り下げる展開となった。 個別では、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ディスコ<6146>の半導体関連が大幅高。ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>、リクルートHD<6098>のハイテク・グロース(成長)株も総じて高い。川崎汽船<9107>が大幅に反発し、郵船<9101>、商船三井<9104>も上昇。ほか、サイバー<4751>、ベイカレント<6532>、マネーフォワード<3994>、TDK<6762>、イビデン<4062>、SUMCO<3436>などが強い動き。日東紡績<3110>、静岡ガス<9543>、BIPROGY<8056>は決算を手掛かりに急伸。マネックスG<8698>、カシオ<6952>、住友電工<5802>、寿スピリッツ<2222>も決算が好感され大幅高。タツモ<6266>は業績予想を上方修正して物色を集めた。 一方、原油先物価格の下落を受けてINPEX<1605>、ENEOS<5020>が下落、コマツ<6301>、三井物産<8031>の資源関連や東京電力HD<9501>、レノバ<9519>の電気・ガスセクターなどが安い。米金利低下により三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>など金融も総じて軟調。決算を発表したZHD<4689>が急落しているほか、太陽誘電<6976>、クボタ<6326>、オリックス<8591>、JFE<5411>なども決算を材料に大きく下落している。 セクターでは海運、非鉄金属、倉庫・運輸が上昇率上位になった一方、鉱業、その他金融、保険が下落率上位になった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体46%、対して値下がり銘柄は49%となっている。 前日のハイテク・グロース株を中心とした米株式市場の大幅続伸を好感して日経平均は反発。ただ、ナスダックが上値抵抗線だった100日移動平均線を明確に突破し、7月半ばからの戻り高値を更新し続けているのに対して、日経平均は本日も28000円手前で伸び悩んでおり、相対的な鈍さが意識される。 他方、前日の海外市場を振り返ると、好材料が相次いで相場を後押ししたのは間違いない。米国の7月ISM非製造業景気指数や6月製造業新規受注が予想を大きく上回ったことで景気後退懸念が和らいだ一方、ISMの構成項目である「価格」が72.3と6月の80.1から大幅に低下した。1日に発表されたISM製造業景気指数でも価格の項目は78.5から60.0へと大幅に低下していたため、インフレピークアウト期待が高まった。 また、原油先物価格の大幅下落もこうしたインフレピークアウト期待を更に高めることに寄与した。前日、石油輸出国機構(OPEC)プラスが開かれたが、9月の原油生産量については一日当たり10万バレル増やすことが決定された。7月と8月の増産幅は日量64万8000バレルだったため、今回の増産幅はかなり小幅なものとなった。この結果を受け、需給逼迫が意識される形でWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月限)原油先物価格は米国時間に一時1バレル=96ドル台まで上昇する場面があった。 しかし、米エネルギー情報局(EIA)が発表した在庫統計で、原油在庫の増加のほかガソリン需要の減少が明らかになると、需要減少を意識した価格低下圧力の方が勝り、結局、原油先物価格は3日、1バレル=90.66ドル(前日比-3.98%)と大幅に下落。ISM景気指数の価格項目の低下と原油先物価格の下落を背景に、7月半ばから再び高まっているインフレピークアウト期待と米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待に一段と拍車がかかり、相場を押し上げた格好だ。 一方、7月半ば頃からナスダックを中心に株式市場の力強い上昇が続いているが、ここからの上値追いには慎重になるべきと考える。足元のグロース株を中心とした株価上昇の要因は「行き過ぎた悲観の修正」だったと考えられる。7月は米連邦公開市場委員会(FOMC)やGAFAMをはじめとする主要企業決算など大きなイベントが多かっただけに、これらイベントを前に、機関投資家の間では売りに傾き過ぎた持ち高を修正する動きが強まっていた。FOMCやGAFAM決算を過ぎ、8月に入ってからもこうした基調が続いているが、この背景としては2つ理由が考えられる。 一つは、7月FOMC後のパウエル議長の記者会見を受けて、市場が先走ってFRBの来年からの利下げ転換を織り込みにいっていること。二つ目に、先行きに悲観的な見方が多かったなか、相場が想定外にも上昇を長く続けていることで、決められた期間の中でパフォーマンスを上げることを求められるヘッジファンドなどが、乗り遅れることを嫌って焦って買い戻しを加速させていることが考えられる。しかし、こうした動きは長期化しないだろう。 株価は、一株当たり利益(EPS)と投資家の期待値を表す株価バリュエーションであるPERの掛け算で決まる。これまで発表済みの日米主要企業の決算は想定以上に底堅いものの、外部環境の悪化を背景にアナリストによる今後の業績予想は徐々に切り下がっている。EPSが低下する中でも株価が上昇してきているのは、米国の実質金利の低下を背景としたPERの上昇が要因だ。 ただ、米10年債利回りは8月1日に2.57%と約4カ月ぶりの水準にまで低下した後は複数のFRB高官のタカ派発言もあって下げ止まっている。米10年物の実質金利も、一時再びマイナス圏入りを窺うところまで低下していたが、インフレ抑制を最優先課題とするFRBがこうした緩和的な状況を許容することは考えにくく、今後は、これまでの実質金利低下を背景としたPERの上昇余地も限られるだろう。 来年末の政策金利水準を巡っては、早くも利下げを織り込み始めている市場と、来年も利上げを続ける方針を維持しているFRBとの間でかなり乖離が出てきているため、むしろ、今後は楽観に傾いている市場の期待値がFRB寄りに修正されることを警戒するべきとも言える。今週末の米7月雇用統計での平均賃金の伸びや、来週に控えるアメリカ7月消費者物価指数(CPI)の結果次第では、こうした修正を迫られる可能性があろう。 後場の東京市場はトヨタ自<7203>の決算を睨んだ動きとなりそうだ。デンソー<6902>の業績下方修正などで既に期待値は低下していると思われるが、裾野の広い産業分野だけに、日本株全体へのインパクトも大きく、結果を受けた株価反応が全体のセンチメントを左右しそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/04 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は反発、金利急伸もグロース株強く、リバーサル長期化か  日経平均は反発。146.24円高の27740.97円(出来高概算6億1279万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でダウ平均は402.23ドル安(-1.22%)と大幅続落。ペロシ下院議長の台湾訪問を巡る中国の警告を受け、米中摩擦リスクを警戒した売りが先行。また、数名の連邦準備制度理事会(FRB)高官が米経済は景気後退には陥っておらず、高インフレの抑制が依然必要とし、9月の0.75ptの利上げも除外しなかったことで金利が急伸したことも重石になった。ナスダック総合指数は-0.16%と小幅続落。米中摩擦を意識した売りで前日に先んじて大きく下げていた日経平均は、78.27円高から反発スタート。一時1ドル=130円台まで進んでいた円高・ドル安が一服し、133円台まで戻していたことも支援要因に堅調推移が続き、朝方に一時250円近くまで上げ幅を広げた。その後に一時急速に上げ幅を縮める動きも見られたが、すぐに切り返してその後は堅調もみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、日本電産<6594>など主力ハイテク株が総じて堅調。エムスリー<2413>、ZHD<4689>、SHIFT<3697>、Sansan<4443>などのグロース(成長)株が全般高い。本日決算を控える川崎汽船<9107>、郵船<9101>の海運株のほか、前日に好決算を発表した三菱商事<8058>も強い。ファーストリテ<9983>は堅調な7月既存店売上高も支援要因に大幅に上昇。ダイキン<6367>、JR西<9021>、イビデン<4062>は決算を手掛かりに大幅高。イリソ電子<6908>、イマジカG<6879>、サンリオ<8136>も決算リリースを受けてそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。 一方、任天堂<7974>、三菱UFJ<8306>、OLC<4661>、リクルートHD<6098>、信越化<4063>が軟調。AGC<5201>は通期計画を上方修正も出尽くし感から大幅安。東京電力HD<9501>は第1四半期経常損益の赤字転落が嫌気され下落。F&LC<3563>は冴えない月次動向が失望されて急落。ユー・エス・エス<4732>、ケーズHD<8282>、ダイヘン<6622>、NOK<7240>などは決算を受けて急落し、東証プライム市場の値下がり率上位に並んだ。 セクターでは精密機器、海運、機械が上昇率上位になった一方、電気・ガス、不動産、建設が下落率上位になった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体32%、対して値下がり銘柄は63%となっている。 日経平均は前日に先んじて米中摩擦リスクを織り込んでいたため、本日はしっかりとした動きになっている。昨日サポートとなった200日移動平均線上での推移が続いており、全体的な基調の強さは維持されている様子。 前日は、7月26~27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後に行き過ぎた市場の利下げ期待を修正する高官発言がいくつかあった。まず、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁はインフレ目標の達成には「程遠い」「長い道のりがある」とし、景気の減速を受けてFRBが来年には利下げに転じるとの観測が市場で出ていることについて、自分自身はそのように考えていないと時期尚早との見解を示した。また、シカゴ連銀のエバンス総裁は同日、9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について「0.50ptが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、0.75ptでも問題ないかもしれない」と述べた。 前日に発表された米6月JOLT求人件数は市場予想を下回り、労働市場の減速が示唆された。しかし、クリーブランド連銀のメスター総裁は、労働市場は依然ひっ迫が続いており、物価安定を目指した利上げを続けるべきとの考えを示した。7月31日にはハト派とされるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁でさえも「7月FOMC後の市場の反応に驚いている」と述べており、2%のインフレ率に戻すことを達成するのは「ずっと遠い先」と発言している。 これらの発言を受けて前日の米債券市場では幅広い年限の利回りが急伸。ただ、依然として今年に付けた高値から低水準にあるということもあり、前日の米株式市場では、ハイテク・グロース株への影響は限定的で、むしろ、ナスダックについては底堅さが感じられる程だった。 7月に相場をけん引した米グロース株の力強い動きが8月に入ってからも続いていることは目を見張る。東京市場でもグロース株の強い動きが継続して見られており、本日の東証プライム市場の値上がり率上位もグロース株が多くを占めている。エムスリーの決算後の堅調推移からも、グロース株を巡る環境は相対的に良好のようだ。一方で、資源関連や景気敏感株は軟調なものが多く、今年前半の「資源関連買い・グロース売り」のリバーサル(株価の反転)はしばらく続くことが予想される。 後場の日経平均は堅調もみ合いか。200日移動平均線上での底堅さが継続して見られる一方、28000円を明確に超えられない状況が続いており、材料不足のなか、こうした状況はこの先も続きそうだ。グロース株を中心に投資家心理は改善しつつも、指数については完全に強気になりきれない部分もある。今週末の米雇用統計や来週の米消費者物価指数(CPI)を前に様子見ムードも強まりやすく、当面は足元で株価モメンタムが強い銘柄に乗るような需給メインのトレードが主体となりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/03 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、利食い売り材料続出、米中巡るきな臭さ増す  日経平均は大幅反落。443.94円安の27549.41円(出来高概算5億9650万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でダウ平均は46.73ドル安(-0.14%)と4日ぶりに小幅反落。予想を下回った中国7月の財新製造業購買担当者景気指数(PMI)やペロシ下院議長の台湾訪問計画報道を受けた地政学的リスクへの警戒感から売りが先行。月初で売り買いが交錯するなか、7月製造業PMI改定値が予想外に下方修正されたほか、7月ISM製造業景気指数が小幅ながら2年ぶりの水準にまで低下したため、景気後退懸念も上値を抑制した。ナスダック総合指数も-0.17%と4日ぶり小反落。前日に28000円目前まで上昇していた日経平均は米株安を受けて180.87円安からスタート。米中摩擦の悪化が警戒されて円高・ドル安が急速に進んだほか、中国上海総合指数や香港ハンセン指数も大幅に下落し、リスク回避の売りが広がるなか、日経平均は前引け直前には27530.60円(462.75円安)まで下落した。 個別では、ダイキン<6367>や信越化<4063>、任天堂<7974>、ファナック<6954>、SMC<6273>、キーエンス<6861>などの値がさグロース(成長)株、FA関連株が大きく下落。東エレク<8035>やルネサス<6723>の半導体関連も弱い。景気後退懸念による原油先物価格の大幅下落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大幅安で、三井物産<8031>や住友商事<8053>の商社株も大きく下落。円高・ドル安進行を背景にトヨタ自<7203>、デンソー<6902>の輸送用機器も軟調。決算を発表したJSR<4185>は一時ストップ安になるなど急落し、東証プライム市場の値下がり率トップとなっている。丸和運輸<9090>も決算を受けて急落。ほか、エノモト<6928>、ファイズHD<9325>、三越伊勢丹<3099>が決算リリースを手掛かりに大きく下落。 一方、全面安商状のなか商船三井<9104>、ファーストリテ<9983>、東京電力HD<9501>、ZHD<4689>、ベイカレント<6532>、ニトリHD<9843>が逆行高。また、決算が好感されたTDK<6762>と大塚商会<4768>はそれぞれ急伸し、住友化学<4005>、京セラ<6971>、ANA<9202>も決算を受けて買い優勢となった。 セクターでは医薬品、精密機器、機械を筆頭にほぼ全面安。一方、海運のみが上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体91%、対して値上がり銘柄は8%となっている。 前日の引けにかけて騰勢を強めた日経平均は28000円に届くことなく今日は寄り付きから失速。このところ200日移動平均線上での推移が続いていたが、本日は一時同線を下回る場面が見られた。28000円を手前とした上値の重さが連日で確認されていた矢先の急失速であり、やはり28000円回復には材料不足の様子。多方面で指摘されているように、米国のハイテク・グロース株を中心とした7月の株価上昇はイベントや夏季休暇入り前の機関投資家による買い戻しが主体だったと推察される。 また、テクニカル面で日米ともに主要株価指数がいい水準まで戻してきたタイミングで、利益確定売りの口実とされかねない中国関連のネガティブなニュースも多く見られている。まず、ペロシ下院議長が台湾を訪問する計画と伝わっている。蔡英文総統との会談は3日に予定されているという。会談はいまだ流動的とはいえ、中国側は軍事行動も辞さないと強くけん制しており、米中摩擦悪化への警戒感が急速に高まっている。ウクライナ戦争に端を発したロシアを巡る地政学リスクもまだ沈静化していない中、中国とのリスクも高まるとなると、市場は素直に嫌気するだろう。7月のリバウンドに寄与してきた商品投資顧問(CTA)など足の速い向きが、足元の悪材料に反応して持ち高を転換させる可能性もあろう。 中国の景況感回復のペースが想定以上に緩慢だという懸念も強まりつつある。中国国家統計局が発表した7月の製造業PMIは49.0と、6月の50.2から低下し、予想外に活動拡大・縮小の分かれ目となる50を下回った。財新が発表する民間版の7月製造業PMIも50を上回りはしたが、50.4と前月の51.7から低下し、市場予想の51.5も下回った。新型コロナ感染再拡大に伴う行動規制再実施の影響が長期化し、生産、新規受注、雇用の伸びが鈍化している。欧米諸国がこれから景気後退を迎える一方、中国については、緩やかながらも対照的に景気回復へと向かうことが期待されていたため、このままでは世界経済のけん引役が不在となる。 さらに、中国については、建設活動の停滞を理由とした市民による住宅ローン返済のボイコット問題も深刻化している。英銀HSBCホールディングスは中国の不動産関連エクスポージャー120億ドル(約1兆6000億円)相当の約3分の1が劣化、または不良化していることを明らかにしたと伝わっている。開発業者に金融支援を行う基金の設立などが検討されているものの、銀行による融資縮小で経済活動が一段と停滞するリスクを孕み、こうした中国経済を巡るきな臭さが不透明感として相場の重石になっている。 米国でも市場の動きを中心に不透明感が強い。米10年債利回りは1日、2.57%と約4カ月ぶりの水準にまで低下した。現在、米連邦準備制度理事会(FRB)が誘導目標とする政策金利FFレートは2.25~2.50%に設定されており、長期金利が政策金利とほぼ同水準にまで低下している状況はさすがに行き過ぎている印象がある。市場は景気後退によりFRBが来年には利下げを迫られるとみているわけだが、記録的なインフレが続いている中、FRBは今後の経済データ次第では0.75ptの大幅利上げを続ける方針で、市場の見方との間に大きな開きがある。FRBがインフレを抑制したいと考えているにも関わらず、長期金利が政策金利並みの水準まで急低下していることで、むしろ緩和的な環境が作られるという皮肉な構図となっている。 前日に発表された米7月ISM製造業景気指数の項目をみると、「価格」が60.0と6月の78.5から大幅に低下し、「入荷遅延」も57.3から55.2へと低下傾向が続いた。こうしたところから、モノに関するインフレのピークアウト感はより確度を増したといえそうだ。しかし、いま問題視されているのは下方硬直性を有すサービス分野でのインフレ長期化であり、今回のISM景気指数の結果がインフレ懸念を大きく後退させたとは考えにくい。 となると、やはり政策金利の動向を巡って、市場の見方との乖離が大きくなりつつある現状をFRBが放置しておくとは想定しにくく、近いうちにこうした乖離を埋めるために、FRB高官から乖離修正を狙った発言が出てくると予想される。今晩には早速、セントルイス連銀のブラード総裁などの発言が予定されており、注目されよう。 後場の日経平均は節目の27500円を維持できるかが焦点になる。踏ん張れずにこの水準も下回ってしまうと、CTAなどの売りが加速するリスクがあり、その場合には一気に27000円近くまで戻す展開も想定しておく必要があろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/08/02 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は反発、長期的にはロシアの侵攻や米中問題も警戒必要か  日経平均は反発。131.63円高の27933.27円(出来高概算6億3690万株)で前場の取引を終えている。 前週末7月29日の米株式市場のNYダウは315.50ドル高(+0.97%)と続伸。前日引けに発表されたオンライン小売りのアマゾンや携帯端末アップルの好決算を受けてハイテクセクターが強く、相場全体を押し上げ終日堅調に推移した。金利の低下も支援し、ナスダック総合指数も大幅続伸、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比12.18円高からスタート。その後は、じりじりと上げ幅を拡げる展開となった。 個別では、配当引き上げによる利回り妙味の一段の上昇評価が続く商船三井<9104>を筆頭に川崎汽船<9107>や日本郵船<9101>などの海運株が大幅高となっている。ほか、キーエンス<6861>、OLC<4661>、デンソー<6902>、信越化<4063>、メルカリ<4385>などが堅調、業績上方修正や自己株消却を発表したエンプラス<6961>がストップ高買い気配、第1四半期業績が市場想定を上振れて着地したZOZO<3092>なども大きく上昇した。伯東<7433>、日本化薬<4272>、ミスミG<9962>が値上がり率上位に顔を出した。 一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、日立<6501>などが軟調。ゲーム事業下振れによる通期営業益下方修正を嫌気されたソニーG<6758>や第1四半期が想定以上の低調スタートとなった富士通<6702>などが大きく下落した。ほか、コムチュア<3844>や、アルプスアルパイン<6770>、沖縄電力<9511>、リオン<6823>、が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは海運、輸送用機器、空運が上昇率上位となった一方、電気・ガス、金属製品、医薬品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の71%、対して値下がり銘柄は25%となっている。 本日の日経平均株価は、小幅に上昇してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。その後は、アジア市況が軟調な展開、米株先物は冴えない展開となったことを横目にじりじりと上げ幅を広げ、プラス圏での推移となった。GAFAM決算を終えて米株高が継続していることは個人投資家心理にポジティブに働いている。そのほか、国内でも決算発表が増加してきており、決算発表を終えた個別株物色が中心となっている。 新興市場も本日は買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方にプラス圏に浮上、その後はじりじりと上げ幅を拡げた。新興市場でもGAFAM決算を終えて米株高が継続、長期金利低下・グロース買いの流れが続いていることが個人投資家心理にポジティブに働いている。ただ、グロース株優位の状況ではあるものの、新興市場でも既に決算を発表している銘柄など個別材料株中心の物色となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.67%高、東証マザーズ指数が0.63%高となった。 さて、4-6月期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったが、FRBの大幅利上げを回避できるとの期待から米株式市場は上昇を継続している。また、大型テック企業の決算では、アルファベットとマイクロソフトの決算が想定程に悪くなかったこと、アマゾンやアップルの決算で純利益が減少したものの売上高が増加したこと、などが好感されているようだ。大型イベントを無難に通過したことで個人投資家心理がポジティブに傾いていることは明確となっている。 ただ、株高が継続していくかは市場でも疑問視する声が多い。ブラックロックでシステマチックマルチ戦略シニアポートフォリオマネジャーを務めるジェフリー・ローゼンバーグ氏はブルームバーグで、「市場は利上げペースの鈍化にすがっており、株価が上昇すればするほどその後の継続が難しくなると言うことをよく考えていない」と話している。また、一部のFRBウオッチャーは、「パウエル議長の記者会見についての市場の解釈は狭過ぎる。」とも発言。フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の予測分布図では年内に3.4%前後、23年には3.8%ヘの利上げ見通しが示されており、利上げはまだ続きそうで過度な楽観論は危険としている。 また、長期的にはロシアのウクライナ侵攻や米中問題も見逃してはならない。ニューズウィークでは、将来のNATO加盟国への攻撃に備えて戦力と空中火力を温存している可能性があるというNATO国防大学の最新のリポートが発表されたと報じられている。ウクライナのゼレンスキー大統領は6月に「来年は、ウクライナだけでなく、他にも数カ国が攻撃されるかもしれない。そしてそれはNATO加盟国かもしれない」と警告。NATOのリポートはゼレンスキー氏の主張を反映し、ロシア軍のこれまでの弱さに騙されてはいけないと警告している。ロシアがウクライナ以外のNATO加盟国へ攻撃を開始する可能性があることは頭の片隅に置いておきたい。 米中問題に目を移すと、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は28日に電話会談を行い、台湾問題について長時間にわたり意見を交わしたという。ただ、ペロシ米下院議長の台湾訪問の可能性が浮上したことで中国が警告を発する事態となっているようだ。中国の国営通信によると、習氏はバイデン氏に「世論に反してはならない、火遊びをすればやけどをする。米国側がこのことを明確に理解することを望む」と述べたという。各国のインフレ及び金融政策の動向などに注目がいきがちだが、来年にかけてのロシアの侵攻や米中問題にもある程度のアンテナを張っておきたいところだ。 さて、後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目にじりじりと上げ幅を拡げる展開が続くか。前場に続いて個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。テクニカル面では、終値で節目の28000円超えとなるか注目しておきたい。 <AK> 2022/08/01 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、景気後退・円高が重荷、利上げ減速期待を裏切りそうな材料も  日経平均は3日続伸。129.07円高の27944.55円(出来高概算5億6644万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でダウ平均は332.04ドル高(+1.03%)と大幅続伸。4-6月期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったことで景気後退を警戒した売りが先行したが、大幅な利上げを回避できるとの期待から買い戻しも目立ち、上昇に転じた。下院が半導体業界支援法案を可決したほか、政府の環境問題支援策を巡る進展なども好感され、引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+1.08%と続伸。米国株の続伸を受けて日経平均は99.74円高からスタート。しかし、前日同様、寄り付き直後に28001.80円まで上昇した後は戻り待ちの売りから失速し、28000円割れ。ただ、決算を発表したアップルとアマゾン・ドット・コムが揃って良好な内容から時間外取引で株価が大幅に上昇していたこともあり、日経平均は下落に転じることはなく、その後はもみ合いとなった。 個別では、通期計画を上方修正したアドバンテスト<6857>が大幅に上昇し、レーザーテック<6920>なども上昇。エムスリー<2413>は前日の急伸に続いて大幅高。ファーストリテ<9983>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>、リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>など値がさ株、グロース(成長)株が総じて高い。アンリツ<6754>は決算を手掛かりに急伸、OLC<4661>も決算が安心感に繋がって上昇。一方、決算を発表したところで、ルネサス<6723>が急落し、村田製<6981>やキーエンス<6861>も下落。東邦チタニウム<5727>は上半期計画を上方修正も出尽くし感から急落、大阪チタ<5726>も連れ安へ。ほか、日産自<7201>も決算を材料に大幅安で、円高・ドル安が進むなかマツダ<7261>、SUBARU<7270>なども安い。 セクターではサービス、鉱業、石油・石炭が上昇率上位となった一方、医薬品、食料品、ゴム製品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体40%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 本日も日経平均は心理的な節目の28000円を手前に上値の重い展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)直後に上昇しても翌日以降に失速することが多かった米株式市場は、今回は2日目の前日もしっかりと続伸した。また、GAFAM決算で最後に残っていたアップルとアマゾンが共に予想を上回る決算を発表したことで、時間外取引のナスダック100先物も大きく上昇している。そうした追い風がある中でも、日経平均が28000円を明確に超えられないのは気になる動きだ。 また、気掛かりな要素は他にもある。米4-6月期GDPは2四半期連続でマイナス成長となった。欧州や米国での経済指標の下振れが相次いでおり、悪化ペースも速い。一段と景気後退懸念が強まっていることで、米10年債利回りの低下基調も続いている。グローバル景気敏感株とも称される日本株が、これだけ景気後退懸念が強まるなか、そしてこれから欧米諸国が景気後退を迎えようとする中、買われづらくなるのは当然なのかもしれない。 日本株の底上げに繋がってきた為替も、一時1ドル=139円まで進んだドル・円は足元で134円台にまで下落してきている。貿易赤字を通じた実需筋による円売り・ドル買いもあるため、大幅な円高・ドル安は想定しにくいが、投機筋による売買も多いため、ポジション調整が続けば、節目の130円くらいまでは下落余地があると考えられる。少なくとも、これまで独自の日本株高の背景として挙げられてきた円安・ドル高に明確なピークアウト感が見られていることは懸念材料で、欧米対比での日本株の底堅さが見られることはなくなっていく可能性が高いだろう。 力強い動きが続いている米国株も、主要株価3指数は前日時点で遂に100日移動平均線近辺まで戻してきた。今年前半のリバウンド局面ではいずれもこの100日線が戻り一服の目処になってきたことで、そろそろ売り方の買い戻しも一巡してくる頃合いと考えられる。FOMC結果公表があった当日には買い戻しだけでなく、軽い新規買いも入っていたとの声も聞かれたが、当日の株式取引量は過去3回のFOMC当日の取引量と比較して25~35%程少なかった。決算発表が本格化する中でのFOMCとしてはかなり少ないといえる。株式市場は上に行きたがっている様子が窺えるものの、そのエネルギーは余力に乏しそうだ。 企業決算もテクノロジー株が底堅い一方、日本株全体との連動性が高い景気敏感株については軟調なものが多い印象。特に上値の重いのが半導体を中心とした電子部品周り。米インテルの4-6月期決算は市場予想を大きく下回り、通期計画も下方修正された。東京市場でも、ルネサスが好調な決算ながらも需要ピークアウトへの警戒感から本日、株価が急落している。鉱工業生産の動向から代わりに自動車の挽回生産なども期待されるが、指数インパクトの大きい銘柄は電気機器セクターに多いため、こうした点も、日本株全体の重荷になる。 また、気掛かりなのはやはり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速への期待感を高めつつある市場の動向だ。パウエルFRB議長が今後の利上げ幅は「経済データ次第」としたことで、市場は足元の景気指標の下振れを利上げペース減速の根拠として捉えているが、経済データは景気指標だけでない。むしろ、FRBは依然としてインフレ抑制を最優先事項として掲げているわけであるから、物価指標の影響の方が大きいだろう。 その物価指標では、今晩、米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータが発表される。投資家の物価指標の注目は既に7月分に移っているため、波乱材料にはならないだろう。しかし、一方でその次回7月分を巡っては懸念要素が出てきている。前日に発表されたドイツの7月消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比+8.5%となり、前月(+8.2%)から加速、低下を見込んでいた市場予想(+8.1%)に反して大幅に上昇した。 欧州ではロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働問題などを背景に天然ガスの価格が急騰していることもあるが、米国でも猛暑に伴う冷房需要を背景に天然ガスの価格は大幅に上昇している。さらに、強気派が挙げていた資源価格の下落も、その後ほとんど進んでいない。むしろ、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月物)原油先物価格は14日に一時1バレル=88ドルまで下落した後は、足元で再び100ドルを窺う水準まで戻している。さらに、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、4月21日高値3.02%から7月6日安値2.29%まで大幅に低下した後、実は足元では2.48%へと大きく上昇に転じてきている。 こうしたところから、インフレピークアウトを先取りしすぎた動きには危うさが伴い、米国の7月CPIが近づく場面では、警戒が必要だろう。一方で底入れ感が強まっているマザーズ指数の構成銘柄では、メドレー<4480>やクラウドワークス<3900>など年初来高値を更新している個別株も多い。こうした銘柄群は、今後再び相場が調整した際でも、底堅さが意識され、次回のリバウンド局面では真っ先に高値を更新することが期待される。先行き慎重ながらも個別株の選別を極めていくことが重要なタイミングと言えそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/29 12:11

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