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ランチタイムコメント 日経平均は5日続伸、TOPIXはバブル崩壊後高値、強気転換か? *12:12JST 日経平均は5日続伸、TOPIXはバブル崩壊後高値、強気転換か?  日経平均は5日続伸。201.46円高の32820.80円(出来高概算6億4273万株)で前場の取引を終えている。 31日の米株式市場でダウ平均は168.33ドル安(-0.48%)と5日ぶり反落、ナスダック総合指数は+0.11%と5日続伸。米7月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが予想に一致し、利上げ終了期待を背景とした買いが先行。ただ、雇用統計の発表を控えた警戒感もくすぶり、終盤にかけてダウ平均は下落に転じた。一方、ハイテクは長期金利の低下で安心感が広がり終日堅調に推移した。前日までの4日続伸で短期的な過熱感が意識された日経平均は98.19円安からスタート。一方、寄り付き直後から切り返すと即座にプラス圏に浮上。予想に反して拡大・縮小の境界値である50を上回った中国8月財新製造業購買担当者景気指数(PMI)が好感され、堅調に推移する中国株を背景に日経平均もじわじわと上げ幅を広げる展開となり、終盤には32845.46円(226.12円高)まで上昇した。 個別では、ロシアの一段の原油輸出削減に向けた動きを背景とした原油市況の強含みにより、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、出光興産<5019>、ENEOS<5020>などが大きく上昇。中国の景気対策への期待からかJFE<5411>、日本製鉄<5401>の鉄鋼が全般高い。神戸製鋼所<5406>は電動車向けの新たな鋼板開発に関する報道も寄与し大幅高。筑波銀行<8338>、千葉興業銀行<8337>の地銀を筆頭とした銀行セクターのほか、野村<8604>、マネックスG<8698>の証券・商品先物、T&DHD<8795>、MS&AD<8725>の保険など金融関連が強い。川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社、帝人<3401>、東レ<3402>の繊維製品など景気敏感株も全般高い。配当性向の引き上げを発表した四電工<1939>、前期上振れ着地などが評価された内田洋行<8057>はそれぞれ急伸。 一方、子会社社長らの不祥事が伝わったアインHD<9627>が急落。ユーザーローカル<3984>は株式売り出しに伴う需給悪化が嫌気され大きく下落。ほか、国内証券のレーティング格下げを受けた物語コーポ<3097>、四半期収益の鈍化が嫌気されたACCESS<4813>、業績予想を下方修正したトリケミカル<4369>などが大幅に下落している。 セクターでは鉱業、鉄鋼、銀行を筆頭に全面高となっている。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の72%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 前日に発表された米7月個人消費支出(PCE)コアデフレーターは前月比および前年同月比ともに市場予想に一致した。前年同月比は+4.2%と米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標である2%を依然として大幅に上回っており、前月比も+0.2%と上昇が続いているが、前月比の伸びは6月から横ばいで小幅な伸びにとどまっている。FRBが特に重要視している指標なだけに、無難に消化できたこと、そして米長期金利の低下基調が続いたことは投資家心理の一段の改善につながっている。 今晩は米雇用統計が発表されるが、米雇用動態調査(JOLTS)、ADP全米雇用リポート、米PCEコアデフレーターと、今週発表された雇用・物価に関する指標は全て市場予想以下に収まっていることで、雇用統計に対する警戒感は大きく和らいでいる。余程大きく予想を上回らない限り、市場への影響は限られそうで、投資家の株式の買い安心感が強まっているように見受けられる。 東京市場は日経平均および東証株価指数(TOPIX)ともに今週は5日続伸と、負けなしの状態できている。TOPIXは遂に8月1日高値を上回り、ザラ場ベースでちょうど1カ月ぶりにバブル崩壊後の高値を更新している。日経平均もようやく25日線や75日線に続いて、50日線、13週線の上値抵抗線を上抜いてきており、これで日足・週足・月足ともに目立った上値抵抗線は見当たらない形となった。テクニカルな好転は鮮明になっている。 東証プライムの売買代金は8月29日まで8日連続で2兆円台にとどまっていたが、30日には3兆円台を回復。前日の31日はMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出する指数の銘柄入れ替えに伴うリバランス(再調整)というテクニカルな要因もあったが、売買代金は4兆円台を超えた。本日も3兆円は超えてきそうなペースと思われる。 夏季休暇入りの海外投資家が本格的に相場に戻ってくるのは4日のレーバーデー以降と言われている。ただ、ジャクソンホール会議を通過したことで、一部の海外投資家は早くも相場に戻って日本株に買いを入れているのではないかといった指摘もあり、足元の売買代金の増加はそうした指摘を表しているのかもしれない。 一方、前日に日本取引所グループ(JPX)が公表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物・先物合算で2103億円と2週連続の売り越しとなり、現物だけでも2095億円と2週連続の売り越しだった。海外投資家が現物で2週以上連続での売り越しを見せたのは3月下旬以来となる。全体の売り越しに占める現物の割合も大きく、海外投資家の投資スタンスの変化はやや気がかり。 しかし、本日が特にそうだが、東京時間に入ってからの動きが予想以上に強い展開が今週は印象強い。来週に発表される今週分の投資部門別売買動向では、海外投資家が再び買い越しに転じている可能性はありそうだ。 他方、来週は週末に9月限先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)を控える。9月限の日経平均のオプション取引の建玉残を確認すると、行使価格30000円のプットに1万6000枚と建玉残が大きく積み上がっている一方、行使価格33000円のコールにも1万枚と建玉残が積み上がっている。8月上旬は極端にプットの建玉残の多さが目立っていて、株価の下落ヘッジを意識した動きが優勢だった。しかし、8月下旬にかけてはプットの建玉残が漸減していく一方でコールの建玉残が徐々に増加し、足元では株価上昇に備えたヘッジの動きも増えてきているようだ。 こうしたなか、現物の売買代金も徐々に回復してきてはいるが、足元の相場の強さは、ジャクソンホール会議通過後のデリバティブ取引を主体としたメジャーSQ前の買い戻しに過ぎないという見方もできそうだ。本日から9月相場に入ったが、今月は日米ともに先物・オプション取引の清算や金融政策決定会合など重要イベントが多い。9月は例年、株価パフォーマンスが軟調であるという季節性もある。基調の強さが続くかについてはまだまだ予断を許さないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/01 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は4日続伸、テクニカル面では先高観強まる *12:18JST 日経平均は4日続伸、テクニカル面では先高観強まる  日経平均は4日続伸。183.77円高の32517.23円(出来高概算5億3793万株)で前場の取引を終えている。 30日の米株式市場でダウ平均は37.57ドル高(+0.10%)と4日続伸、ナスダック総合指数は+0.54%と4日続伸。8月ADP全米雇用リポートの雇用者数の伸びが予想以上に減速したほか、4-6月期国内総生産(GDP)改定値も予想外に下方修正されたため、利上げ終了期待を背景に堅調に推移した。ただ、週末に発表される雇用統計を前に様子見ムードも強かった。米株高を受けて日経平均は27.56円高からスタート。序盤からじわじわと上げ幅を広げ、前場中ごろには32534.85円(201.39円高)まで上昇した。一方、心理的な節目の32500円水準では売り買いが拮抗し、その後は同水準を挟んだ一進一退が続いた。中国の8月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7と前月(49.3)から上昇し、市場予想(49.1)も上回ったが、市場への影響は限定的だった。 個別では、レクサスの生産台数計画に関する報道を手掛かりにトヨタ自<7203>が買われ、豊田合成<7282>、トヨタ紡織<3116>のほか、SUBARU<7270>、スズキ<7269>、ホンダ<7267>なども大きく上昇。東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>の半導体も堅調。小田急電鉄<9007>、JR西日本<9021>、東武鉄道<9001>の陸運、ツナグGHD<6551>、コシダカHD<2157>、OLC<4661>のサービス、ハイデイ日高<7611>、F&LC<3563>、物語コーポ<3097>の小売など、内需系銘柄で上昇が目立つ。カルビー<2229>、牧野フライス<6135>、サワイGHD<4887>はレーティング格上げが好感された。いちご<2337>は自社株買いが、テラスカイ<3915>は米セールスフォースの好決算が手掛かり材料とされた。東証スタンダードでは株主優待の拡充を発表したプラザHD<7502>がストップ高買い気配のまま終えている。 一方、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連のほか、ソフトバンクG<9984>、ディスコ<6146>、芝浦メカ<6590>、イビデン<4062>のハイテクの一角、良品計画<7453>、しまむら<8227>の小売りの一角が軟調。ほか、松井証券<8628>、丸三証券<8613>の証券・商品先物取引、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業、三井住友トラスト<8309>、みずほFG<8411>の銀行などが冴えない。住友ファーマ<4506>は証券会社の目標株価引き下げが嫌気されて大きく下落。工場でボイラー事故が発生した三菱製紙<3864>は大幅安となっている。 セクターでは輸送用機器、陸運、サービスが上昇率上位に並んでいる一方、証券・商品先物取引、倉庫・運輸、鉱業、銀行の4業種のみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の69%、対して値下がり銘柄は26%となっている。 株式市場について明るい材料がまた一つ増えた。30日に発表された米8月ADP全米雇用リポートの民間雇用者数は17万7000人増と、市場予想の19万5000人増を下回った。前月7分は37万1000人増と、従来値の32万4000人増から上方修正されたが、市場予想に対する下振れに加えて、前月からの大幅な鈍化が確認されたことはポジティブだ。また、同調査によると、同じ職にとどまった労働者の賃金は前年同月比で5.9%増と、2021年以来の低い伸びだったという。 29日に米労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も予想を下回り、自発的な離職件数は21年2月以来の低水準だった。逼迫していた米労働市場の緩和が連日にわたってデータで実際に確認できたことは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクル終了の期待を高めることにつながり、相場の支援材料になっている。 29日に25日線および50日線の移動平均線を上回ったナスダック指数とS&P500種株価指数が30日も同線上で推移したことで、上値抵抗線の突破がダマしに終わった可能性は低下した。東証株価指数(TOPIX)は主要な移動平均線を全て上回った位置で推移しており、8月1日に付けたバブル崩壊後の高値更新を窺う水準にまで上昇してきている。 一方、日経平均は引き続き75日線が上値抵抗線として作用しており、前日の後場の失速によって戻り待ちの売り圧力が確認された32500円水準での攻防が続いている。ただ、日経平均も前日の当欄で指摘した通り、米長期金利の低下を背景としたハイテク株高が続いていることで、トレンド転換が近づいている印象を受ける。 今晩の米個人消費支出(PCE)コアデフレーター、そして明日の米雇用統計で、米インフレ鈍化と米労働市場の逼迫緩和が改めて確認されれば、米長期金利の一段の低下によるハイテク株高を背景に、日経平均の75日線突破も見られそうだ。 他方、世界経済の景気動向については依然として先行き不透明感が強い。このため、上記のポジティブシナリオが実現された場合には、景気や為替との連動性が高い外需系のハイテク株などよりは、これらの要因との連動性が小さい内需系のグロース株の方が買い安心感が強まってくると考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/31 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、株式市場に明るい兆し見え始めた? *12:18JST 日経平均は3日続伸、株式市場に明るい兆し見え始めた?  日経平均は3日続伸。302.75円高の32529.72円(出来高概算5億8796万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でダウ平均は292.69ドル高(+0.84%)と3日続伸、ナスダック総合指数は+1.74%と3日続伸。中国の大手国有銀行が既存の住宅ローン金利を引き下げるとの報道を好感し、買いが先行。7月JOLTS求人件数や8月消費者信頼感指数が予想を下回ると追加利上げ観測が後退、長期金利の大幅な低下に伴いハイテクを中心に買われた。米株高を受けて日経平均は205.98円高からスタート。前場中ごろにかけて失速する場面もあったが、時間外取引のナスダック100指数先物の上昇に加え、朝方に円高に振れていた為替が円安・ドル高に転じると再び騰勢を強めた。終盤には節目の32500円を突破し、この日の高値圏で前場を終えている。 個別では、ディスコ<6146>、東エレク<8035>のほか、ニデック<6594>、安川電機<6506>、イビデン<4062>、村田製<6981>、京セラ<6971>などのハイテク株が大きく上昇。芝浦<6590>は売出価格決定に伴う売り方の買い戻しも相まって急伸。岩手銀<8345>、ひろぎんHD<7337>の銀行株や、アイザワ証G<8708>、大和証G<8601>の証券など金融関連も全般高い。前日システムトラブルで工場停止に追い込まれたトヨタ自<7203>は本日から順次再開と伝わり反発。デンソー<6902>、豊田自動織機<6201>なども堅調。ホタテ加工の水産加工会社を子会社化したヨシムラフード<2884>、業績予想を上方修正したカナデン<8081>が急伸し、製品に関するリリースが材料視されたメンバーズ<2130>、トビラシステムズ<4441>は大幅高。クボタ<6326>は外資証券のレーティング2段階の格上げが好感されている。 セクターでは精密機器、機械、電気機器が上昇率上位に並んでいる一方、小売、電気・ガス、水産・農林が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の61%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 株式市場の先行きについて明るい兆しが見え始めた。昨日発表された米労働省雇用動態調査(JOLTS)の7月求人件数は882万7000件と前月(916万5000件)から減少し、市場予想の950万件を大幅に下回った。また、前月分は速報値の958万2000件から916万5000件へと下方修正されている。自発的離職者の割合や失業者1人に対する求人件数も着実に減少しており、総じて逼迫していた労働市場の緩和を示唆する内容となった。 これを受けて、米10年債利回りは29日、4.12%へと大幅に低下。4.36%を付けた22日からのピークアウト感が強まるチャート形状となっている。米株式市場もこれを好感し、ナスダック指数やS&P500種株価指数は上値抵抗線だった25日および50日の移動平均線を上回ってきた。東証株価指数(TOPIX)も25日線や13週線を明確に上回り、回復基調がより鮮明になった。 一方で、日経平均は75日線や13週線が引き続き上値抵抗線として意識されているが、米長期金利の低下を背景としたハイテク株高により、トレンド好転への期待は高まっている。市場予想を大幅に上回る好決算を発表したにもかかわらず、発表直後は冴えない動きが続いていた米半導体大手エヌビディアも28日、29日と続伸し、復調傾向にある。東京市場でもディスコ<6146>が上場来高値を更新し、東京エレクトロン<8035>も年初来高値を窺う展開になっている。アドバンテスト<6857>はまだ上値の重さが残っているような動きだが、半導体を中心としたハイテク株の上昇が続けば、相場は8月の調整期間を経た9月以降、再び上昇基調を辿る可能性がありそうだ。 一方、今週末にかけては米個人消費支出(PCE)コアデフレーターや米雇用統計など重要指標の発表が控えており、結果次第では本日の明るいムードが暗転する可能性もある。また、日本株に対する懸念要素としては為替動向が挙げられる。米長期金利の低下を受けてドル円は前日の米国市場時間において、147円30銭台から一時145円60銭台まで急低下した。足元では146円台を回復してきているが、米労働市場の逼迫緩和を確認する指標結果が続き、米金融引き締めサイクルの終了が強く意識されてくるようだと、為替の円高への反転が予想される。 逼迫緩和といえ依然として堅調な労働市場と底堅い個人消費を背景に米経済のソフトランディング(軟着陸)期待が根強く残るため、米経済指標の減速が確認されるまでは米長期金利の低下やドル円の下落の余地は限られると思われる。ただ、既に企業の景況感の指標は大幅に悪化しており、今後遅れて個人消費関連の指標も悪化してくる可能性はある。米商品取引委員会(CFTC)によると、投機筋の円売りポジションは7月に一時縮小されていたが、8月以降は再び積み上がってきている。きっかけ次第では円高への揺り戻し余地が大きいことには留意しておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/30 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続伸、買い戻し後の買い続かず *12:18JST 日経平均は小幅続伸、買い戻し後の買い続かず  日経平均は小幅続伸。55.73円高の32225.72円(出来高概算6億4320万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でダウ平均は213.08ドル高(+0.62%)と続伸、ナスダック総合指数は+0.84%と続伸。中国政府による資本市場の活性化策が好感され買いが先行。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を無難に消化した後の長期金利の低下が続いたことも投資家心理を改善させた。米株高を受けて日経平均は110.58円高からスタート。序盤は買いが先行し、早い段階で32389.12円(219.13円高)まで上げ幅を広げた。ただ、前日の大幅反発で買い戻しは大方進んでいたとみられ、中国・香港株の上昇や為替の円安基調は続いていたものの、日経平均はその後失速し、前引けにかけては前日終値近くまで戻す場面が見られた。 個別では、東京電力HD<9501>、北海道電力<9509>、四国電力<9507>のほか、イーレックス<9517>、レノバ<9519>など電気・ガスセクターが軒並み高。小田急電鉄<9007>やJR西<9021>の陸運のほか、パンパシHD<7532>、マツキヨココ<3088>、三越伊勢丹<3099>、など前日大幅に売られたインバウンド関連には買い戻しの動きが見られる。ほか、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、野村不HD<3231>の不動産セクターが堅調。三井ハイテック<6966>、そーせい<4565>、東和薬品<4553>、相鉄HD<9003>、住友重<6302>などは証券会社のレーティング格上げの動きが好感された。東証プライムの値上がり率上位にはネットプロHD<7383>、Sansan<4443>、メドピア<6095>、ANYCOLOR<5032>など中小型グロース(成長)株が多く見られる。 一方、レーザーテック<6920>、ディスコ<6146>、ルネサス<6723>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、イビデン<4062>、村田製<6981>などハイテクで軟調なものが多く見られる。三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼といった資源関連のほか、銀行・保険などの金融セクターも軟調。 セクターでは電気・ガス、陸運、不動産が上昇率上位に並んでいる一方、銀行、鉱業、保険が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の56%、対して値下がり銘柄は40%となっている。 前日の米国市場では先週末の流れが続いて長期金利が低下した一方、株価指数は続伸した。週明けも米長期金利の動きが落ち着き、米株価指数が続伸したことで、ジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を無難に消化した後のあく抜け的な動きが一過性に終わっていないことは投資家心理の改善につながっているようだ。 一方、ダウ平均やS&P500種株価指数、ナスダック指数の米主要株価3指数は25日線および50日線に上値を抑えられる状況を依然として脱していない。本日の日経平均は75日線上に復帰しているが、前引けにかけては失速、すぐ上を走る下向きの25日線が上値抵抗線として強く意識される形となっている。 東証株価指数(TOPIX)は25日線および75日線上に復帰しているが、6月中旬以降のレンジ相場が長期化する形で本日は日経平均との対比でも上値の重さが目立っている。また、直近3~6カ月間の価格帯別の累積売買動向をみると、TOPIXは現在位置する2300ポイント近辺に商いが最も集中している。この水準を明確に上抜けてレンジ相場を脱するには大きなエネルギーが必要と考えられ、足元の相場動向を踏まえると相応の材料が出てくるとは期待しにくい。 前日の日経平均は大幅に反発し、あっさりと32000円台を回復したが、500円超も上昇した割には東証プライム市場の売買代金は7日連続での2兆円台にとどまった。東京証券取引所が公表する空売り比率(価格規制あり・なし合計)は先週末25日には45.7%だったが、28日は40.6%まで低下した。イベント通過後のあく抜けに伴う短期筋の買い戻しは前日で大方進んだとみられ、これが本日の株価の伸び悩みの背景と考えられる。 一方、日経平均とTOPIXが伸び悩んでいるのに対してマザーズ指数が大幅に続伸し、200日線近くまで水準訂正を果たしてきた。今週は米FRBの金融政策を左右する経済指標が多く発表されるが、個人消費支出(PCE)コアデフレーターや雇用統計などの重要度の高い指標は週後半に集中している。このため、明後日までは警戒感が高まりにくく、本日のようなマザーズ指数の相対優位な展開が続く可能性がありそうだ。目先はテクニカル重視で売られすぎ感の残る中小型グロース株の短期リバウンド継続に期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/29 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、買い先行後もじりじりと上げ幅を広げる展開 *12:16JST 日経平均は大幅反発、買い先行後もじりじりと上げ幅を広げる展開  日経平均は大幅反発。529.75円高の32154.03円(出来高概算5億7865万株)で前場の取引を終えている。 前週末25日の米国株式市場のダウ平均は247.48ドル高(+0.73%)と反発。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がジャクソンホール会合での講演で、追加利上げの可能性を除外しなかったため金利上昇を警戒する場面があった。一方、議長が過剰な利上げリスクを認識し、今後の政策は慎重に決定していく姿勢を示すと上昇に転じた。ボーイングの上昇が相場を一段と押し上げ、終盤にかけて上げ幅を拡大した。ナスダックは反発、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタート後上げ幅を広げる展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が堅調に推移。日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も上昇。また、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>などの金融株のほか、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>、トヨタ自<7203>、ファーストリテ<9983>、ホンダ<7267>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、神戸製鋼所<5406>なども堅調に推移した。そのほか、配当性向の目標を30%から40%に引き上げた日鉄鉱業<1515>が急騰、エンプラス<6961>、トビラシステムズ<4441>、河西工業<7256>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、日本航空<9201>やANA<9202>などの空運株、資生堂<4911>やコーセー<4922>などの化粧品関連株が軟調に推移。また、高島屋<8233>や松屋<8237>などの百貨店株、マツキヨココ<3088>やサンドラッグ<9989>などのドラッグストア関連が下落したほか、株式売出による需給悪化を懸念されたNSD<9759>が急落。そのほか、日本金属<5491>、アクシージア<4936>、力の源HD<3561>、DDグループ<3073>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、機械、石油・石炭製品、保険業が上昇率上位となった一方で、空運業、小売業、陸運業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の80%、対して値下がり銘柄は17%となっている。 8月28日の日経平均は前週末比291.40円高の31915.68円と大幅反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値は大阪比230円高の31860円。先週末にパウエルFRB議長の講演を警戒するなか、日経平均は662円と大幅に下落していたこともあり、日経平均はイベント通過で買い戻しの動きが先行する展開となっている。 新興市場も堅調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、プラス圏での推移が継続している。ジャクソンホール会議での講演におけるパウエルFRB議長の発言内容が無難に消化されたことを受けて目先の安心感から買い戻しが先行。また、米長期金利の動きも落ち着いており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株も買い戻す動きが優勢となっている。前引け時点での東証グロース市場Core指数は1.26%高、東証マザーズ指数は0.58%高となった。 さて、最大の注目イベントだった国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエルFRB議長の講演は無難に通過した。パウエル議長は講演で、インフレ抑制のために必要なら追加の金融引き締めの用意があると語っており、従来からの姿勢を維持している。やはり、今週末にかけて発表される米個人消費支出(PCE)コアデフレーターや米雇用統計などの重要指標を見極めるまでは、積極的な売買は引き続き手控えられそうである。 8月の米雇用統計は、市場予想で雇用者数は約17万人増加して失業率は低水準である3.5%にとどまる見通しとなっている。予想通りなら、過去3カ月の雇用者数の伸び平均は2021年初め以来最も小幅になるようで、インフレリスクの一段の緩和が示唆されてFRBによる追加利上げの懸念が低下する。この場合は投資家心理にポジティブに働き相場の追い風となるが、仮に市場予想通りとならなかった場合はその逆となる可能性がある。 また、9月19、20日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の次回会合前には、8月消費者物価指数(CPI)の発表も控えている。CME Fedウォッチツールでは、9月の会合では80.5%の確率で利上げ休止の公算が大きいと見込まれているが、11月会合では0.25%利上げは51.1%、さらに0.5%の利上げは10.1%と、警戒感はくすぶっている。各種統計の結果次第では米長期金利がさらに上昇する可能性があるため、相場の本格的な復調はしばらく先になる可能性があろう。 そのほか、8月24日に発表された最新週(8月14日~18日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を8週ぶりに売り越した。現物株の売り越し額は7415億円となった。一方、個人投資家は現物株を3558億円と2週ぶりの買い越し、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行も買い越しに転じた。海外投資家が大きく売り越しに転じたことは注目材料となろう。さて、後場の日経平均は引き続きじりじりと上げ幅を広げる展開となるか。買い手優位の状況が続くか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/08/28 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり大幅反落、日米主要株価指数のチャート悪化が気がかり *12:13JST 日経平均は5日ぶり大幅反落、日米主要株価指数のチャート悪化が気がかり  日経平均は5日ぶり大幅反落。620.85円安の31666.36円(出来高概算5億679万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でダウ平均は373.56ドル安(-1.08%)と反落、ナスダック総合指数は-1.87%と4日ぶり反落。好決算を発表した半導体大手のエヌビディアの上昇が全体をけん引したが、その後に同社株価が伸び悩んだほか、週次新規失業保険申請件数が予想外に減少し長期金利が上昇したため、下落に転じた。また、ボストン連銀のコリンズ総裁が追加利上げを示唆すると下げが加速した。米株安を受けて日経平均は446.3円安と32000円割れからスタート。為替の円安は支援材料にならず、指数寄与度の大きいハイテク株が広く売られるなか、香港ハンセン指数の下落も重しになり、前場中ごろには31635.22円(651.99円安)まで下落する場面があった。 個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅安を背景にアドバンテスト<6857>が急落しているほか、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ディスコ<6146>の半導体製造装置関連や、イビデン<4062>、新光電工<6967>、芝浦<6590>、エンプラス<6961>のハイテクが全般大きく下落。SMC<6273>、安川電機<6506>のFA関連や、日立建機<6305>、クボタ<6326>、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>、信越化<4063>、レゾナック<4004>、三菱商事<8058>、三井物産<8031>など景気敏感株も総じて下落。福島第1原子力発電所での処理水の海洋放出が始まったことを嫌気してかニッスイ<1332>が大きく下落。 一方、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運のほか、日本郵政<6178>、F&LC<3563>、JR東海<9022>などのディフェンシブ系の一角が堅調。韓国最大手デリバードコリアとの資本業務提携が報じられたBEENOS<3328>は大きく上昇。レーティング格上げが観測されたライオン<4912>やクラレ<3405>も大幅高。ほか、エムアップHD<3661>、河西工業<7256>、ブイキューブ<3681>、メディアドゥ<3678>、ANYCOLOR<5032>などが東証プライムの値上がり率上位に入っている。東証スタンダードでは政策保有株式の縮減と自社株買いが好感されたダイドーリミテッド<3205>、グループ会社がトヨタ自動車<7203>向けに部品供給を開始した森六ホールディングス<4249>が買われている。 セクターでは電気機器、機械、非鉄金属が下落率上位に並んでいる一方、海運、サービス、不動産のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の64%、対して値上がり銘柄は31%となっている。 日経平均は大幅に反落し、前日に回復したばかりの75日移動平均線を早々に下回っている。東証株価指数(TOPIX)も前日に回復したばかりの25日線や50日線を再び下回った。為替は再び円安・ドル高に振れているが株式市場の支援材料にはなっていない。 前日の米株式市場で主要株価指数が揃って大幅に下落したことが投資家心理を悪化させていると思われる。特にナスダック総合指数の下落率は1.87%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落率は3.35%と大きく、本日の東京株式市場でもハイテク・グロース(成長)株の下落につながっている。前日、好決算を材料に時間外取引で一時9%超も急伸していた米半導体大手エヌビディアは、24日の通常取引では買い先行も失速してほぼ横ばいで終えた。これが影響する形で、アドバンテスト<6857>を筆頭に東京エレクトロン<8035>、レーザーテック<6920>などの半導体製造装置関連は軒並み急落し、前日の上昇分以上に下げている。 米エヌビディアの動きについては、これまでの株価上昇で好決算は織り込み済みだったとの指摘も聞かれる。ただ、前日の失速は地合いによるところが大きいとも考えられる。日本時間で今晩午後11時5分頃からは、国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が予定されている。既に相当に警戒感は高まっているが、相場の一段の調整につながり得るものとして懸念がくすぶっている。 こうしたなか、イベント前にいったん持ち株を売却して利益を確保しておこうと考える投資家がいても不思議ではない。そうした動きが米エヌビディアだけでなく、前日の米株式市場の全体の下落につながったと考えられる。だとすれば、パウエル議長の講演を無難に通過できれば、改めて好決算に着目する形でエヌビディアには買いが向かう可能性は十分にあろう。 一方、日米ともに主要株価指数のトレンド悪化が続いている点は気がかりだ。前日のダウ平均は上ヒゲを残す形で50日線の回復に失敗。S&P500種株価指数も同線が上値抵抗線として作用、ナスダック総合指数については25日線と50日線によるデッドクロスの示現が目前に迫っている。イベント通過後もエヌビディアを筆頭に米主要ハイテク株に買い戻しが入らなければ、相場全体の調整は一段と深まりそうだ。 一方、本日は半導体を中心としたハイテク株が軒並み下落し、日経平均が大きく下落している一方、マザーズ指数は朝安後に切り返してプラスに転じている。また、東証プライム銘柄のなかでも、Sansan<4443>、ラクスル<4384>、Appier<4180>、SHIFT<3697>など内需系のITグロース株は底堅く推移している。今晩のパウエル議長の講演を確かめるまでは予断を許さないが、外部環境に左右されにくい内需系グロース株のリバウンド機運の高まりに期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/25 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は4日続伸、米金利低下は好材料も背景は良くない *12:14JST 日経平均は4日続伸、米金利低下は好材料も背景は良くない  日経平均は4日続伸。136.07円高の32146.33円(出来高概算5億3875万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場でダウ平均は184.15ドル高(+0.53%)と3日ぶり反発、ナスダック総合指数は+1.59%と3日続伸。8月総合購買担当者景気指数(PMI)が予想を下回ったため、連邦準備制度理事会(FRB)の年内の追加利上げ観測が後退し、買いが先行。長期金利が大きく低下したことでハイテクが相場全体をけん引した。米株高を引き継いで日経平均は120.26円高からスタート。米市場の引け後に発表された半導体メーカーのエヌビディアの好決算を材料にハイテク・グロース(成長)株が買われるなか、日経平均は32199.12(188.86円高)まで上値を伸ばした。ただ、為替の円高進行が重しになったほか、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演を明日に控えるなか持ち高を傾ける動きは限られ、その後は一進一退が続いた。 個別では、ディスコ<6146>、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>の半導体のほか、イビデン<4062>、新光電工<6967>、芝浦<6590>、デクセリアルズ<4980>などのハイテク・電子部品材料が大きく上昇。生成AI(人工知能)関連も米エヌビディアの決算を材料に賑わい、さくらインターネット<3778>、Appier<4180>、ブレインパッド<3655>などが大幅高。ほか、INPEX<1605>、コスモエネHD<5021>などの資源関連が上昇。今期2度目の自社株買いが評価された船井総研<9757>は大きく上昇し、月次売上動向が好感されたしまむら<8227>は年初来高値を更新している。 一方、為替の円高を背景にホンダ<7267>、三菱自<7211>、SUBARU<7270>の自動車が全般軟調。村田製<6981>、ソニーG<6758>などハイテクの一角が冴えない。中国景気の先行き不透明感からか、ファナック<6954>、安川電機<6506>のロボット関連や、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>の非鉄金属、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼なども軟調。また、ギフティ<4449>、メドレー<4480>など生成AIとの関連性が薄いグロース株の一角で大きく下落している銘柄が見られる。 セクターでは鉱業、石油・石炭、倉庫・運輸が上昇率上位に並んでいる一方、ゴム製品、その他製品、輸送用機器が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 日経平均は前日に終値で32000円を回復し、本日も4日続伸と堅調に推移している。目先は32000円台を再び定着させることができるかどうかが注目される。ただ、日経平均は本稿執筆時点(24日午前11時頃)で75日移動平均線水準まで回復したが、同線での攻防が続いており、まだ明確には上抜いていない。また、その上には25日線が次なる上値抵抗線として待ち構えており、トレンドが転換したと判断するには時期尚早だろう。東証株価指数(TOPIX)は辛うじて25日線、50日線を上回りつつあるが、こちらも8月1日以降の上値切り下げ傾向をまだ明確に脱しきれていない。 本日の相場上昇をけん引しているのは半導体を中心としたハイテク株や生成AI(人工知能)サービス関連を中心としたグロース(成長)株であるが、この状況を生み出した主因はやはり半導体メーカーの米エヌビディアの決算だろう。 同社は23日の取引終了後に決算を発表。独占的に供給しているAI向け半導体の需要急増を追い風に、5-7月期の売上高は135億ドルと前年同期比2倍に拡大し、市場予想の約111億ドルを超過、調整後一株当たり利益も2.70ドルと市場予想の2.08ドルを上回った。8-10月期の売上高見通しも160億ドルと市場予想の約125億ドルを大幅に上回り、株価は時間外取引で一時9%超上昇した。 今晩の通常取引においてエヌビディアの株価がどのような動きを見せかまでを見極める必要があるが、決算前に先回り買いが入り株価が上場来高値圏にあるなかでも予想を大きく上回る決算を発表し、時間外取引で株価が大幅高で反応している点は評価できる。 一方、エヌビディアが高いハードルを越える決算を発表し、東京市場でもハイテク・グロース株が買われているにもかかわらず、日経平均やTOPIXの上昇率は小幅にとどまっている。為替が円高・ドル安に傾いていることが上値抑制要因になっていると思われるが、これを差し引いても物足りない印象を拭えない。また、マザーズ指数にいたっては朝高後に下落に転じている。同指数を成す銘柄の構成を踏まえれば、半導体株高の恩恵がないことは差し引いて考えるべきだが、生成AI関連の銘柄は含まれているし、前日の米長期金利が大幅に低下している点を考慮すると物足りないというより弱いと言わざるを得ない。 為替の円高・ドル安の背景は米長期金利の低下だが、これは前日に発表された米経済指標の悪化が背景にある。S&Pグローバルが発表した米8月の総合購買担当者景気指数(PMI)は50.4と、景況感の拡大・縮小の境界値である50を辛うじて上回ったが、7月(52.0)から悪化し、市場予想(51.5)も下回った。特に製造業PMIは47.0と予想(49.0)を大幅に下回り、50割れが続いた。堅調とされてきたサービス業のPMIも51.0と50は上回ったが、7月(52.3)および予想(52.2)を大きく下回っている。 また、ユーロ圏のPMIも悪化が目立っており、8月製造業PMIは43.7と7月および市場予想(42.7)は上回ったが、依然として大幅な50割れの状態が継続。一方、サービス業PMIは48.3と市場予想(50.5)を大幅に下回って50も大きく割り込み、景況感の悪化を強く示す結果となった。 株価バリュエーションへの下押し圧力を通じて相場の上値抑制要因となってきた米長期金利が大幅に低下したことは目先の安心感を誘う。ただ、低下の背景が欧米の景気減速を強く示す経済指標の悪化とあれば、中長期的に業績に収れんしていくとされる株価にとっても喜ばしい話ではない。企業業績は決算発表が終わったばかりの4-6月期をボトムに今後は改善に向かうとの期待があり、株式市場は企業業績の回復を先取りして上昇する局面もあった。しかし、果たして前四半期が本当に底だったのかは覚束ない。欧米の中央銀行による「higher for longer(より高く、より長く)」を意識した金融政策が続く可能性や、金融引き締めの累積効果が時間差を伴って発現することなども考えると、今後の実体経済、企業業績の行方を楽観視するのは危ういだろう。 一方、経済指標の悪化を受けて、米金利の先高観が和らいでいることは事実。25日の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を通過するまでは予断を許さないが、世界経済の需要動向といった外部環境に左右されにくい内需系グロース株については投資機会が近づいてきていると考えられる。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/24 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、底堅いが商い低調、米エヌビディア決算に注目 *12:15JST 日経平均は3日続伸、底堅いが商い低調、米エヌビディア決算に注目  日経平均は3日続伸。106.28円高の31962.99円(出来高概算4億7361万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場でダウ平均は174.86ドル安(-0.50%)と続落、ナスダック総合指数は+0.06%と小幅続伸。ジャクソンホール会議を控えた警戒感や金利先高観が上値を抑制。大手格付け会社が複数の地銀の格下げを発表したことや一部小売企業の低調な決算も重しになった。冴えない米株市場を受けて日経平均は138.8円安からスタート。ただ、始値をこの日の安値に切り返すと、時間外取引の米ナスダック100指数先物の上昇を追い風にプラス圏に浮上。その後はしばらくもみ合いが続いたが、前引けにかけて再び強含むと、心理的な節目の32000円手前に迫る形で前場を終えた。 個別では、四国電力<9507>、九州電力<9508>の電気・ガス、レンゴー<3941>、日本製紙<3863>のパルプ・紙、合同製鐵<5410>、大和工業<5444>の鉄鋼、JR東<9020>、JR九州<9142>の陸運、東邦チタニウム<5727>、UACJ<5741>、フジクラ<5803>の非鉄金属、石塚硝子<5204>、日本山村硝子<5210>、住友大阪<5232>のガラス・土石、キッコーマン<2801>、ライフドリンクC<2585>、味の素<2802>の食料品などが大きく上昇。中期経営計画を発表したエンビプロHD<5698>が急伸し、国内証券が目標株価を引き上げたノーリツ鋼機<7744>、関西電力<9503>も大幅高。JR東海<9022>は株式分割と株主優待拡充が評価され、マツダ<7261>は26年3月期の米国販売台数目標に関する報道が材料視された。太平洋セメ<5233>はティー・ロウ・プライス・ジャパンの買い増しが確認されている。 一方、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が下落し、ネクステージ<3186>、IDOM<7599>の中古車関連は大幅安。主要株主による全株式の売出しが嫌気された芝浦メカ<6590>が急落し、不祥事に伴う社長の辞任を発表したタムロン<7740>も大きく下落。業績予想を下方修正した日清紡HD<3105>も売られた。 セクターでは電気・ガス、パルプ・紙、鉄鋼が上昇率上位に並んでいる一方、卸売、鉱業、水産・農林が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 日経平均は寄り付きと同時に140円近く下げた後は切り返してプラス圏に浮上する底堅さを見せている。ただ、引き続き75日移動平均線が上値抵抗線として作用しており、上値の重さは意識される。東証株価指数(TOPIX)は13週線を超えてきてはいるが、横ばいの25日線や50日線が上値抵抗線として作用している。 また、今週に入ってから東京株式市場は底堅い動きとなっているが、東証プライム市場の売買代金は18日から前日までの3日間、連続で3兆円を割り込んでいる。本日も前引け時点での売買代金は1兆2000億円台にとどまっている。海外投資家の夏季休暇入りやジャクソンホール会議を前にした様子見ムードなども影響しているが、商いの低調さは拭えない。今週のこれまでの値動きだけをみて下値は堅いと判断するのは時期尚早だろう。 今晩の米国市場の引け後には生成AI(人工知能)ブームの火付け役となった半導体エヌビディアの決算が予定されている。関連株の筆頭格である同社は生成AIサービスの普及のカギを握るキープレイヤーである。同社製の先端半導体の大口購入の情報も多く聞かれており、好決算であることはほぼ間違いないだろう。 市場予想のハードルは高いが、これを上回る可能性も十分にある。一方、株価は上場来高値圏で推移しており、仮に市場予想を越える決算を発表しても素直に株高で反応するかは読みにくい。エヌビディアの決算は今後のハイテク株の動向を決めるうえで極めて注目度の高い材料である。同社の決算内容と時間外取引の株価反応を受けた明日の東京株式市場の動きは、足元もみ合いの様相を強めている株価指数の方向性を左右するとも思われ、注目したい。 他方、マザーズ指数の戻りは投資家心理をやや明るくしてくれている。マザーズ指数は先週末にかけて下落が続き、200日線を大きく下放れてしまっていたが、今週に入ってからは戻りを試す展開が続いている。依然として200日線下での推移にとどまり、自律反発の域は出ていない。しかし、米10年債利回りが2007年以来の水準で高止まりし、国内の10年物国債利回りも22日から0.665%と、日本銀行がイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の柔軟化を決定して以降の最高水準にまで上昇していることを踏まえると、堅調な値動きと評価できる。 明日以降については、米エヌビディアの決算を契機に東証プライムの半導体銘柄が再び脚光を浴びる展開も予想されるが、大型のハイテク株だけではなく中小型株までを含めたグロース(成長)が広く買われる形となれば、投資家心理も一段と明るくなりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/23 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、ハイテクに押し目買いも上値の重さ拭えず *12:14JST 日経平均は続伸、ハイテクに押し目買いも上値の重さ拭えず  日経平均は続伸。210.42円高の31776.06円(出来高概算5億4514万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は36.97ドル安(-0.11%)と小反落、ナスダック総合指数は+1.56%と5日ぶり反発。ナスダックは3週連続で下げた反動もあり押し目買いが優勢だった。また、好決算を期待された半導体エヌビディアの上昇を中心にハイテクが全体をけん引した。米ハイテク株高を引き継いで日経平均は226.96円高からスタートすると、半導体を中心に買いが先行するなか一時31906.10円(340.46円高)まで上昇した。為替の円安を追い風に自動車関連にも買いが入った。ただ、心理的な節目を前に戻り一服となると、高く寄り付いた香港ハンセン指数が失速するに伴い、日経平均も伸び悩み、高値から上げ幅を200円超縮める場面もあった。 個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の上昇を手掛かりにアドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>、ディスコ<6146>のほか、太陽誘電<6976>、芝浦メカトロニクス<6590>、SUMCO<3436>などが大きく上昇。日米の長期金利上昇を背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、りそなHD<8308>の銀行が大幅高となり、かんぽ生命保険<7181>、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>の保険、岩井コスモ<8707>、大和証G<8601>、野村<8604>の証券なども高い。三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社も揃って大幅に上昇。ソフトバンクG<9984>は傘下のアームの米上場申請を受けて買われた。ハイデイ日高<7611>は業績上方修正が好感され、さくらインターネット<3778>はGPUクラウドサービスへの追加投資が材料視された。 一方、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運、カチタス<8919>、オープンH<3288>、住友不動産<8830>、東京建物<8804>の不動産、京成電鉄<9009>、JR九州<9142>、小田急電鉄<9007>の陸運などが軟調。サカイ引越センター<9039>は株式売出しの発表が嫌気され急落。エービーシー・マート<2670>は業績上方修正も月次動向から概ね織り込み済みで売り優勢。西松屋チェ<7545>は月次動向が良好だったものの短期的な出尽くし感から下落。 セクターでは銀行、輸送用機器、卸売が上昇率上位に並んでいる一方、海運、不動産、陸運が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 日経平均は続伸ながらも、75日移動平均線が上値抵抗線として作用しており、同線を手前にした上値の重さが意識される。一方、東証株価指数(TOPIX)は75日線が下値支持線として機能しているが、13週線がやはり上値抵抗線として作用しており、上値の重い印象は拭えない。 前日はエヌビディアを筆頭とした半導体関連株やハイテク・グロース(成長)株が相場をけん引し、ナスダック総合指数は1.56%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は2.83%と大幅に上昇した。これに対し、為替が再び1ドル=146円台に乗せ、円安・ドル高も進んでいる状況も踏まえると、日本株の上昇率の鈍さはやや気になる。 また、本日はハイテク・グロース株が反発しているが、先週末にかけて上昇が一服していた米長期金利は早々に上昇を再開している。米10年債利回りは前日21日、一時4.35%を付け、2007年以来の水準にまで上昇した。海外投資家の夏季休暇入りに伴って商いが減少し、ボラティリティー(変動率)が高まりやすいとはいえ、ここ最近の米長期金利の上昇ペースの速さは懸念材料だ。 25日の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのテーマは「世界経済の構造変化」である。米国では、景気や物価への影響が中立的な金利水準とされる自然利子率がコロナ禍での相次ぐ財政政策などにより引き上がっているとの議論が活発化してきている。こうしたなか、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演で自然利子率の上昇について言及した場合には、米長期金利が一段と上昇する可能性がある。 多くの外資系大手証券のストラテジストらが足元の米10年債は買い場だと指摘している。ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を無難に消化し、海外投資家も夏季休暇から戻って商いが復活すれば、たしかに米長期金利が低下に転じる可能性は十分にある。しかし、一方で、米経済が本当にソフトランディング(軟着陸)に成功するのであれば、米長期金利の低下余地はさほど大きくないのかもしれない。また、米政府の財政赤字の補填を目的に中長期債の発行規模が拡大されている。需給悪化による金利上昇圧力は長期的なものと思われ、金利の先行きについては楽観視できないだろう。ハイテク・グロース株の上値追いには慎重になるべきと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/22 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は反発、プラス圏で堅調に推移 *12:13JST 日経平均は反発、プラス圏で堅調に推移  日経平均は反発。298.12円高の31748.88円(出来高概算5億5199万株)で前場の取引を終えている。 前日18日の米国株式市場のダウ平均は25.83ドル高(+0.08%)と小反発。金利先高観を受けた売りが継続したが、長期金利が低下に転じたため下げ止まった。手掛かり材料に乏しい中、次週開催されるジャクソンホール会合を控えた調整に加え、2兆ドル相当のオプション満期到来に関連したテクニカルな動きに終始した。終盤にかけて下げ幅を縮小してダウ平均はプラス圏を回復。ナスダック総合指数は続落、まちまちとなった米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が堅調に推移。日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株、JR東<9020>やJR東海<9022>などの陸運株、などが上昇。また、東京電力HD<9501>、トヨタ自<7203>、ファーストリテ<9983>、神戸製鋼所<5406>、ホンダ<7267>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>、INPEX<1605>なども堅調に推移した。そのほか、業績サプライズなしも配当性向の引き上げを好感されたあいホールディングス<3076>が急騰、河西工業<7256>、テスホールディングス<5074>、Appier<4180>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、三菱商事<8058>など商社株の一角、三井住友<8316>、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>、川崎船<9107>、などが軟調に推移。そのほか、日進工具<6157>、フジミインコーポレーテッド<5384>、力の源HD<3561>、宮越ホールディングス<6620>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、電気・ガス、鉱業、精密機器が上昇率上位となった一方で、保険業、ゴム製品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の82%、対して値下がり銘柄は15%となっている。 8月21日の日経平均は前週末比102.09円高の31552.85円と4日ぶりの反発でスタート。シカゴ日経225先物清算値は大阪比10円安の31460円。本日の日経平均は、自律反発的な動きで買いが先行した。ただ、今週はジャクソンホール会合を控えていることもあり、積極的な売買は手控えられやすく、戻りは限定的と見ている向きも多いようだ。そのほか、中国・香港指数は軟調に推移しており、日経平均は一時マイナス圏に転落する場面も見られた。 新興市場は堅調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅を大きく広げた。米長期金利については週末にかけて上昇が一服しているため、前週大きく下落した新興株に自律反発狙いの買いが向かっている。時価総額上位銘柄中心に注目が集まっており前引け時点での東証グロース市場Core指数は5.08%高、東証マザーズ指数は2.89%高となった。 さて、米長期金利については週末にかけて上昇が一服したものの、4.28%台と高水準で推移している。やはり、国内外で決算発表が一巡して手がかり材料が少ない中、最大の注目イベントである国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演には最大の注目が集まっている。7月のFOMC以来、米国の主要経済指標は物価と賃金の上昇圧力が緩和していることを示しており、利上げ停止の根拠となっている。ただ、労働市場や個人消費の指標がなお力強く、今後のインフレ減速に関して不安を拭い切れない状態となっている。 2024年の利下げを金融当局がどう考えるのかについての手掛かりのほか、今年のジャクソンホール会議のテーマ「世界経済の構造変化」についても注目が集まっている。ジャクソンホール会議でのポイントなどは19日の「国内株式市場見通し」で解説されているため、そちらをご覧いただきたい。いずれにせよ、同シンポジウムの動向を見極めたい動きが広がっており、今週は週を通して積極的な売買は限られそうである。 そのほか、世界の株式市場では中国事業のシェアが高い機械や素材関連株の下落が目立っているようで、中国経済の先行きに対する市場の懸念が映し出されている。実際に、中国各地でマンションなどの建設が停滞し、鋼材の需要にブレーキがかかっているという。また、国家統計局がまとめた7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は4カ月連続で50を下回っている。前週の当欄で述べたように、今後は各国の経済状況のほか、米国と中国の動き、台湾情勢などの地政学リスクを念頭に置いて相場や企業の動向を見守っていく必要がある。SMC<6273>など中国売上高比率の高い国内企業が軟調に推移する中、再度中国売上高比率が高い企業や中国から撤退する動きを見せている企業はピックアップしておきたい。 8月17日に発表された最新週(8月7日~10日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を7週連続で買い越しており、買い越し額は1799億1013万円となった。現物・先物の合計では6457億円と3週ぶりの買い越しとなり、前週は3842億円の売り越しだった。一方、個人投資家は現物株を2395億円と2週ぶりの売り越し、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は2603億円と3週連続で売り越した。あまり大きな変化はないものの、海外投資家の買い越しが続いていることは注目材料となろう。さて、後場の日経平均は引き続きじりじりと上げ幅を広げる展開となるか。買い手優位の状況が続くか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/08/21 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は3日続落、日経2日連続で急速な下げ渋りも安心できず *12:20JST 日経平均は3日続落、日経2日連続で急速な下げ渋りも安心できず  日経平均は3日続落。60.79円安の31565.21円(出来高概算5億6358万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でダウ平均は290.91ドル安(-0.83%)、ナスダック総合指数は-1.17%と3日続落。中国・香港株の下げ止まりを受けた安心感から買いが先行。しかし、製造業や雇用関連の指標が強く、30年債利回りが10年ぶりの高水準に達するなど、金利の上昇を警戒し売りが次第に強まった。米長期金利の上昇や米ハイテク株安を嫌気し、日経平均は304.74円安からスタート。寄り付き前に中国不動産大手の中国恒大集団が米国で破産申請したとの報道が伝わったことも投資家心理を悪化させた。ただ、ほぼ寄り付きと同時に31275.25円(350.75円安)とこの日の安値を付けると、その後は急速に下げ渋った。足元で下落のきつかった中国・香港株が底堅く推移していたことが安心感につながったようで、日経平均は前引け直前に一時プラス圏に浮上する場面もあった。 個別では、米長期金利の上昇を背景にギフティ<4449>、メドレー<4480>、Appier<4180>などの中小型グロース(成長)株が前日同様に売られている。また、インバウンド関連の反動売りが続き、三越伊勢丹<3099>、ラウンドワン<4680>、寿スピリッツ<2222>、共立メンテ<9616>などが下落。一方、米アプライド・マテリアルズの引け後に発表された良好な決算を背景にアドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ソシオネクスト<6526>など半導体製造装置関連が上昇。ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、ニデック<6594>などハイテクも概ね堅調。厚生労働省がジェネリック医薬品について金額ベースの普及目標を新設するとの報道を受け、東和薬品<4553>、サワイGHD<4887>が大きく上昇。証券会社のレーティング格上げを材料に住友理工<5191>、クラレ<3405>、三菱重<7011>なども大幅高となっている。 セクターでは電気・ガス、小売、医薬品が下落率上位に並んでいる一方、海運、鉱業、石油・石炭製品が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は28%となっている。 本日の日経平均は前日同様、一時大きく下落したものの、その後は急速に下げ渋って心理的な節目の31500円を回復するなど、底堅い動きを見せている。 前日の米株式市場は軟調な展開が続き、ナスダック指数やS&P500種株価指数に続いて、ダウ平均も遂に50日移動平均線を終値ベースで割り込んだ。日経平均も75日線や13週線を割り込んでいるため、日米ともにトレンドの転換が鮮明になっており、マネーフロー(資金の流れ)など相場の基調自体は悪化していると思われる。 加えて、日本時間で本日の寄り付き前には、中国不動産大手の中国恒大集団が米国で破産申請したと嫌なニュースが伝わっていた。週末の休暇中における突発的なリスクを避けたいとする動機から、リスク回避的な動きが増幅されやすく、本日は買い戻しが入りにくいと考えられた。 しかし、中国恒大集団の問題については、同社の経営を巡る昨年からの一連の報道などを通じて、ここまでの事態悪化は概ね織り込み済みだったもよう。また、足元で香港ハンセン指数や上海総合指数は既に大きく売り込まれていたため、改めてここから一段と売るような材料とは捉えられなかったのかもしれない。また何より、中国人民銀行が人民元の基準値設定により人民元安をけん制していることが、中国・香港株の下げ渋りを通じて売り方の買い戻しを誘っているのかもしれない。 ただ、中国の不動産業界では恒大集団だけでなく、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)など大きな問題を抱える企業が数多く存在し、中国発のリスクが市場に与える影響については、まだ予断を許さないだろう。一方、米長期金利の上昇に一服感が見られている点はやや安心感の創出に寄与している。米10年債利回りは17日、一時4.33%まで上値を伸ばしたが、その後4.25%程度にまで水準を切り下げている。 また、日本の10年物国債利回りも今週は再び上昇が続いていたが、本日は低下している。本日寄り付き前に発表された7月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数で前年同月比+4.3%と前回6月分(+4.2%)から拡大し、1981年以来の高水準を記録した5月分と並んだ。ただ、市場予想と一致し、上振れとはならなかったこともあり、国内長期金利への上昇圧力にはなっていない。 日米長期金利の上昇一服は目先の安心感として、本日、前場の東京株式市場の買い戻しなどに寄与しているのかもしれないが、来週は国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催される。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言次第では日米の長期金利の上昇基調が再開する可能性もあり、株式市場がここで下げ止まったと判断するのは時期尚早だろう。 足元、中小型グロース(成長)株で必要以上に売られているような銘柄が多く見られるが、日米の長期金利の先高観がくすぶるなか、こうした関連銘柄への押し目買いについては、今はぐっと堪えたい。仮に買うにしても、今はまだ打診買いにとどめて余力は十分に残し、また、追証などのペナルティが発生しない現物投資に限った方がよいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/18 12:20 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、日銀は追加政策修正を迫られる恐れ *12:17JST 日経平均は大幅続落、日銀は追加政策修正を迫られる恐れ  日経平均は大幅続落。287.92円安の31478.90円(出来高概算7億1728万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でダウ平均は180.65ドル安(-0.51%)と続落、ナスダック総合指数も-1.14%と続落。主要小売り企業の好決算が一時下支えも、中国経済の減速や予想を上回る経済指標を受けた長期金利の上昇が重しになった。また、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月開催分)で追加金融引き締めの必要性が示唆されると終盤にかけて売りが強まった。米株安を受けて日経平均は144.84円安からスタート。海外投資家の夏休み入りで商いが盛り上がりにくいなか、来週のジャクソンホール会議を前にした警戒感もあり、為替の円安が進んではいたが序盤から売りが先行。中国経済のリスクがくすぶるなか、香港ハンセン指数の連日の大幅安も嫌気され、日経平均は前場中ごろに31309.68円(457.14円安)まで下落。ただ、前引けにかけては安値から200円近く下げ幅を縮めた。 個別では、米長期金利の上昇を背景に、Appier<4180>やメドピア<6095>、ギフティ<4449>、チェンジHD<3962>など、好決算が確認されたばかりの銘柄も含めて中小型のグロース(成長)株に厳しい売りが散見される。前日に発表された訪日外国人旅客数は良好な結果だったが、短期的な出尽くし感から三越伊勢丹<3099>、共立メンテ<9616>、寿スピリッツ<2222>などのインバウンド関連の主力株が下落。関西ペイント<4613>は国内証券のレーティング格下げが嫌気された。ほか、日本製鉄<5401>、INPEX<1605>、三井物産<8031>、川崎汽船<9107>などの景気敏感株を中心に下落が目立つ。 一方、東エレク<8035>が横ばい、SUMCO<3436>は上昇など半導体関連の一角が相対的に底堅い。また、信越化<4063>、ファナック<6954>といった主力株で堅調なものも見られる。為替の円安を追い風にSUBARU<7270>、スズキ<7269>の自動車の一角も上昇。ほか、決算が良好だったパンパシHD<7532>、業績・配当予想を上方修正したアイコム<6820>、既存店売上高動向が好感されたイオンファンタジー<4343>、国内中堅証券がフェアバリューを引き上げたアニコムHD<8715>、ヨシックス<3221>などが大幅に上昇。オープンH<3288>による株式公開買い付け(TOB)が材料視された三栄建築<3228>は急伸している。 セクターでは精密機器、鉄鋼、パルプ・紙を筆頭に全面安となっている。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の84%、対して値上がり銘柄は14%となっている。 本日の日経平均は大幅に続落し、6月8日以来のザラ場ベースでの31500円割れとなっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月開催分)の内容が想定以上にタカ派色の濃いものだったこともあり、米10年債利回りが足元で4.29%と昨年10月24日の高値を更新してきたことが警戒感を誘っているもよう。一方、為替市場では1ドル=146円台へと突入し、円安・ドル高はさらに進展しているが、株式のサポート要因にはまったくなっていない。 一般に、株式市場では円安については、輸出企業の採算改善といったプラス効果の方が勝ると言われている。しかし、1ドル=145円台を目安に、この水準からの一段の円安についてはそうしたプラス効果よりも、インフレ進展による消費の減退などマイナス効果の方が大きいことが意識されている可能性が高い。 8日に発表された毎月勤労統計調査によると、6月の実質賃金は前年同月比1.6%減少した。減少率は5月(0.9%減)から拡大し、15カ月連続でマイナスとなった。また、8日発表の家計調査によると、6月の消費支出は物価変動を除く実質ベースで前年同月比4.2%減と、4カ月連続で前年を下回った。 昨年以降、日本国内でも食品業界などで値上げが相次いでいた。円安が一服したことで、こうした値上げも年末を迎えるまでには一巡してくるとも言われていたが、足元の急速な円安進行で輸入インフレが再燃し、食品業界を中心に値上げが想定以上に長期化する恐れもある。この場合、実質賃金や実質消費のマイナス傾向も続くことが予想され、個人消費の減退、経済の失速、ひいては日本のデフレ経済からの脱却期待の後退にもつながりかねない。 最後の「デフレ経済からの脱却期待の後退」の部分だけをみれば、日本銀行による金融緩和の長期化を意識させる。しかし、足元の円安については、日本の貿易赤字の継続や円買いを伴わない第一次所得収支を背景とした経常黒字など構造的な要因もあるが、主因は明らかに日米金利差の存在、日米の中央銀行の政策スタンスの違いによるものと考えられる。このため、上述したような過度な円安進行によるマイナス影響に焦点が移れば、日銀も年内にさらなる追加の政策修正を行うことは十分に考えられよう。 現在、円安はほとんど日本株高につながっていないが、今後、日銀の追加政策修正の観測が高まるようなことになった場合には、円高・ドル安への反転が想定され、その際には米国株以上に日本株のパフォーマンスはさらに厳しくなる恐れがあろう。 さて、海外投資家の夏休み入りに加え、来週の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を前に、相場は引き続きボラティリティー(変動率)の高い神経質な展開が続きそうだ。こうしたなか、株式ポートフォリオのリスクを最小化するような戦略を用いた「iシェアーズMSCI日本株最小分散ETF(上場投資信託)」に組み入れられている銘柄への投資などが一考に値しよう。また、薄商いのなか、流動性リスクは気がかりではあるが、中長期目線として割り切れるのであれば、終わったばかりの4-6月期決算で良好な内容が確認されたにもかかわらず、足元の地合い悪化で必要以上に売られている中小型株などにも妙味があろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/17 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、中国経済と米実質金利が重し *12:17JST 日経平均は大幅反落、中国経済と米実質金利が重し  日経平均は大幅反落。332.64円安の31906.25円(出来高概算6億6590万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は361.24ドル安(-1.02%)と反落、ナスダック総合指数も-1.14%と反落。中国経済指標が軒並み予想を下回り、世界経済の減速懸念が強まった。一方、米7月小売売上高が予想を上回り金利先高観が再燃。また、格付け会社フィッチが一部銀行の格下げの可能性を警告したことも売り材料となった。長期金利の上昇を嫌いハイテクも売られ、相場は終日軟調に推移した。米株安を引き継いで日経平均は273.31円安と32000円割れからスタート。序盤は売りが先行し、31784.91円(453.98円安)まで下落する場面があった。一方、日経平均は75日移動平均線を意識した下げ渋りも見られ、その後は膠着感の強い展開が続いた。 個別では、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運、丸紅<8002>、三井物産<8031>の商社、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼、三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>の銀行、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業、住友鉱<5713>、三井金<5706>の非鉄金属など、景気敏感株が全般下落。銀行株はフィッチの一部米銀の格下げ警告が影響しているもよう。太陽誘電<6976>、ニデック<6594>、TDK<6762>のハイテク、JMDC<4483>、Sansan<4443>、MonotaRO<3064>などのグロース(成長)株も総じて下落。第一生命HD<8750>は国内証券のレーティング格下げが嫌気された。 一方、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>などの半導体製造装置の一角が上昇。メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>などグロース株の一角も高い。前日にストップ高となったメドレー<4480>は大幅続伸。ギフティ<4449>、クラレ<3405>は国内証券のレーティング格上げが好感された。米国市場で住宅事業を手掛ける住友林業<1911>は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが大手住宅メーカーのDRホートンやレナーなどの株式を新規に取得したことが思惑を強めているようだ。富士製薬<4554>は共同開発医薬品の製造販売承認の取得を手掛かりに急伸。ほか、鹿島<1812>、大成建設<1801>、大林組<1802>など建設の堅調さが目立つ。 セクターでは石油・石炭製品、鉱業、銀行が下落率上位に並んだ一方、建設、電気・ガス、水産・農林が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の73%、対して値上がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は大幅に下落し、8月7日以来の32000円割れとなっている。前日の東京時間に発表済みではあるが、小売売上高を筆頭に、鉱工業生産、固定資産投資などの中国の主要経済指標が軒並み市場予想を大幅に下回ったことで、世界経済の減速懸念が強まっている。為替は1ドル=145円台後半と円安基調が続いているが、ここのところ、円安と東京株式市場の連動性が薄れており、相場の下支え要因にはほとんどなっていない。 石油輸出国機構(OPEC)のデータが、サウジアラビアの原油減産に伴う世界石油市場の供給不足を指摘したこともあり、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI、期近物)は10日に1バレル=84.89ドルと今年の高値を更新していた。しかし、中国経済の低迷の深刻化を背景に、足元のWTIは80ドル台で推移する場面も見られている。 一方、米国経済は堅調さを保っている。前日に発表された米7月小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(+0.4%)を大幅に上回り、前月6月分は+0.3%と速報値(+0.2%)から上方修正された。米経済のソフトランディング(軟着陸)期待は一段と高まっており、米中長期債の需給環境の緩みも引き続き意識されるなか、米10年債利回りは15日に4.22%と、昨年10月に付けた高値にほぼ並ぶ水準にまで上昇してきた。米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「物価上昇率が依然として高過ぎる」とし、追加利上げを示唆したことも影響したようだ。 米10年債利回りから期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年物実質金利は15日1.90%と、2009年3月以降で最高水準にまで上昇してきている。 中国経済の予想以上の低迷で製造業を中心とした企業業績への悪影響が懸念される一方、日本の製造業にはさほど恩恵のないサービス業を中心とした内需主導の米国経済の堅調さを背景に、米長期実質金利の高値更新が続いている。景気敏感株もハイテク・グロース株も買いにくい非常に厳しい地合いになってきたといえ、商いが細くなりがちな8月相場の後半は下方向に振れ幅が大きくなりやすい環境になってきた恐れがある。 投資戦略を立てるのが難しい局面になってきたが、米長期金利の先高観がくすぶるなか、ハイテク・グロースよりはバリュー(割安)株が相対的に優位と考えられる。また、バリュー株のなかでも、資源価格の下落が直接的に業績にマイナス影響を及ばさない銘柄などがより好ましいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/16 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は反発、プラス圏でもみ合う展開 *12:16JST 日経平均は反発、プラス圏でもみ合う展開  日経平均は反発。255.70円高の32315.61円(出来高概算6億5532万株)で前場の取引を終えている。 週明け14日の米国株式市場のダウ平均は26.23ドル高(+0.07%)と小幅に続伸。根強い利上げ終了期待で買い優勢となった。中国住宅市場を巡る混乱が投資家心理を悪化させ、長期金利の上昇も重しとなったが、今週予定されている主要小売り企業の決算発表を控えて下値は限定的だった。一部エコノミストによる来年の利下げ予想に加え、ニューヨーク連銀の7月消費者調査でインフレ期待が大幅に低下し、金利先高観が緩和したためハイテク株は買い戻しが強まった。ナスダック総合指数は大幅反発、主要株価指数がプラス圏で終了した米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が堅調に推移。三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、川崎船<9107>や日本郵船<9101>、商船三井<9104>などの海運株、JAL<9201>やANA<9202>などの空運株、なども上昇。また、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、日本郵政<6178>、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、INPEX<1605>なども上昇した。そのほか、第1四半期決算を好感されたエムアップホールディングス<3661>が急騰、ビーロット<3452>、メドレー<4480>、建設技術研究所<9621>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、ダイキン<6367>、楽天グループ<4755>、リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>などが軟調に推移。上期累計の最終利益が前年同期比80.1%減の4.1億円に大きく落ち込んだダブルスコープ<6619>が急落した。ほか、4-6月期営業赤字で通期予想を下方修正した電通グループ<4324>、工作機械事業低調で第1四半期業績が伸び悩んだシチズン時計<7762>などが大幅に下落した。そのほか、マーケットエンタープライズ<3135>、ベース<4481>、エスクリ<2196>、などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、鉱業、鉄鋼、海運業が上昇率上位となった一方で、パルプ・紙、水産・農林業、ガラス・土石製品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の58%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 15日の日経平均は312.62円高の32372.53円と反発して取引を開始した。ナスダック総合指数が1.05%上昇、主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が2.87%上昇と、東京市場でハイテク株や半導体関連株の株価支援要因となった。また、円安・ドル高が進行したことが、東京市場で輸出株などの株価を支える要因となった。一方、25日移動平均線が上値抵抗線となり、中国の景気懸念が意識される中、ここからの上値は大きくないとの見方があった。買い一巡後は上値の重い展開となっている。 新興市場もはまちまち。マザーズ指数は上昇スタート後即座にマイナス圏に転落、前場中ごろに下げ渋ったものの戻りは鈍い。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、プラス圏での推移が続いている。米ハイテク株に買い戻しの動きが広がったことは国内の投資家心理を改善する要因となった。ただ、米長期金利が4.2%台まで上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けにくい地合いが続いており、時価総額上位銘柄中心に注目が集まっている。前引け時点での東証マザーズ指数は1.39%安、東証グロース市場Core指数は1.22%高。 4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率6.0%増と、3四半期連続のプラス成長となった。前期比で内需がマイナス0.3ポイント、外需がプラス1.8ポイントの寄与度だった。半導体の供給制約が緩和された自動車の増加がけん引したほか、インバウンド(訪日外国人)の回復もプラスに寄与して輸出は前期比3.2%増で2四半期ぶりのプラスとなった。また、輸入は同4.3%減で3四半期連続のマイナスとなりGDPを押し上げた。一方、物価高が続く中で個人消費は同0.5%減と5期ぶりのマイナスとなっており、個人消費の減退が継続するかには注目しておきたい。 そのほか、イエレン米財務長官は14日、米経済に対する楽観的見方を著しく損なうものではないと語っており、成長は減速しつつあるが労働市場は極めて力強く、インフレ率も低下している米国についてポジティブに捉えているようだ。ただ、中国の経済的苦境について米国にとって「リスク要因」との認識を示し、米国にも一定の波及効果があるだろうと語っている。前日の当欄でも示唆したが、各国の経済状況を注視するだけでなく、今後は米国と中国の動き、台湾情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクを念頭に置いて相場や企業の動向を見守っていく必要があるだろう。 さて、このような状況下、出遅れ感や割安感が残る中小型株のほか、中国人の旅行需要というカタリストが意識されはじめたインバウンド関連などには引き続き注目しておきたい。日本円は対人民元で今年4.8%下落と他のアジア諸国通貨に比べ最も下げており、中国からの観光客を呼び込みやすいという見方もある。また、今年の訪日中国人旅行者数はコロナ禍前に比べてわずか13%しか戻っていないようで、今後の増加余地は大きい。 日本政府観光局のデータによると、中国人訪日客は2019年には国・地域別で最多の959万人に上り、1兆7000億円以上消費していたという。2023年4月-6月の訪日中国人の観光・レジャー目的の支出において、最も大きな割合を占めたのは「買い物代」で、次いで「宿泊費」「飲食費」となっている。今後仮に中国人観光客が回復すると、訪日中国人に人気のある「化粧品・香水」や「菓子類」「医薬品」などの購入がつながるドラッグストア、コンビニエンスストア、空港の免税店などは恩恵を受けそうだ。また、宿泊や観光関連の企業のほか、百貨店各社も引き続き好影響を受ける可能性がある。 国内企業の4-6月期決算発表は昨日で一巡した。8月は海外の投資家の夏休み入り、国内投資家の休日も重なり売買が細りやすい傾向があるほか、株式市場が下落しやすい季節性も存在する。ひとまず、決算発表を受けて個別銘柄への注目が続きそうで、決算を受けて上下に大きく動いた銘柄、好決算でありながらも動意の乏しかった銘柄についてはピックアップしておきたいところか。また、上述のインバウンド関連も目が離せない。さて、後場の日経平均はプラス圏でのもみ合い展開継続なるか。決算発表を終えた銘柄の値動きに注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/08/15 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は反落、買い続かずマイナス圏に転落 *12:16JST 日経平均は反落、買い続かずマイナス圏に転落  日経平均は反落。313.35円安の32160.30円(出来高概算8億3854万株)で前場の取引を終えている。 国内連休中の米国株式市場のダウ平均は連日上昇。10日は、7月消費者物価指数(CPI)が予想通り鈍化傾向を証明したため金利先高観が後退した。しかし、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁が追加利上げを否定しなかったため手仕舞い売りが強まり、上げ幅を縮小。11日は、7月卸売物価指数(PPI)が予想を上回る伸びとなったが、サービス需要の強さが再確認されたためソフトランディグ期待を受けた買いが強まった。ただ、金利上昇を背景にナスダック総合指数はまちまちで終了、強弱入り混じる展開となった米株市場を横目に、本日の日経平均は下落スタートとなった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が軟調に推移。三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、JR東<9020>やJR西<9021>などの鉄道株、JAL<9201>やANA<9202>などの空運株、なども下落。また、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、ディスコ<6146>、ソフトバンクG<9984>、ホンダ<7267>、オリンパス<7733>なども下落した。そのほか、決算発表を受けて材料出尽くし感が優勢となったメルカリ<4385>が急落、ミマキエンジニアリング<6638>、ハイパー<3054>、ミルボン<4919>などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株のほか、任天堂<7974>、楽天グループ<4755>、商船三井<9104>などが上昇。想定以上に底堅い業績推移をポジティブ視されたリクルートHD<6098>も堅調に推移した。ほか、第1四半期営業利益が通期計画を超過したダイコク電機<6430>、MSCI新規採用や大幅増益決算を好感されたゼンショーHD<7550>などが大幅に上昇した。そのほか、スターティアホールディングス<3393>、ゲオHD<2681>、ライフドリンク カンパニー<2585>、アトラエ<6194>、などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは、鉱業、不動産業、機械が下落率上位となった一方で、パルプ・紙、ガラス・土石製品、小売業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は58%となっている。 8月14日の日経平均は前週末比16.93円安の32456.72円と小反落でスタート。シカゴ日経225先物清算値は大阪比105円安の32455円で、本日の日経平均はシカゴ先物にサヤ寄せする格好からやや売りが先行した。ただ、為替が円安方向に振れていることが追い風となり、日経平均は一時プラス圏に浮上する場面も見られた。しかし、買いは続かず再度マイナス圏に転落、その後は軟じりじりと下げ幅を広げる展開となった。 新興市場も軟調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅を縮小してマイナス圏に転落する展開となっている。前週末まで大きく下落していた分、押し目買いの動きが広がったが、米長期金利が再度上昇しておりバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の重しとなっている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.65%安、東証グロース市場Core指数は0.53%安。 さて、前週注目された米7月CPIは概ね市場予想に一致した一方、前年同月比で市場予想を小幅に下回り、米8月ミシガン大消費者調査の1年先期待インフレ率も予想に反して前月から低下するなど追加利上げ懸念を緩和させる内容も見られた。ただ、食品とエネルギーを除いたコアCPI指数は前年同月比4.7%上昇したほか、米7月卸売物価指数(PPI)が予想を上回っており、結果的に米国債利回りの上昇につながった。 直近では、米国がリセッション(景気後退)を回避すると予測するエコノミストや投資家が増加している。また、米ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、米金融当局が来年6月末までに利下げを開始するとの予想を示している。強弱入り混じる内容でどっちつかずの動きが続く中、やはり今後はFOMC議事要旨(7月開催分)や今月終盤に開かれるジャクソンホール会合にも注目が集まろう。同会合ではパウエルFRB議長含めて当局関連の発言に注視しておきたい。 そのほか、中国の景気回復は不動産不況の悪化に圧迫されているようだ。最新の経済指標では成長回復の兆しがほとんど見られない公算が大きい可能性があるという。中国の一部地域が豪雨や洪水に見舞われたことで先月の建設活動が妨げられたことも要因となるようだ。さらに、中国の信託会社及び中融国際信託の顧客2社が満期を迎えた同社の信託商品の支払いが滞っていることを明らかにしている。中融の主要株主1社が流動性の問題を抱えていると報じられる中、中国の金融セクターにも混乱の兆候が表れた。 また、中国外務省が、台湾の頼清徳副総統がパラグアイ訪問の経由地として米国に立ち寄る計画について「一つの中国の原則に対する重大な違反」だと非難している。同省の報道官談話は、「中国は、米国と台湾のいかなる形の公式接触にも断固反対する」とし、頼氏の立ち寄りをアレンジした米国の決定を批判したようだ。各国の経済状況を注視するだけでなく、今後は台湾情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクを念頭に置いて相場や企業の動向を見守っていく必要があるだろう。 8月10日に発表された最新週(7/31~8/4)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を6週連続で買い越しているが、買い越し額は188億円と前週から縮小した。現物と先物を合算すると海外投資家は3842億円の売り越しとなっており、個人投資家は現物株を2662億円買い越した。さて、後場の日経平均は引き続きじりじりと下げ幅を広げる展開となるか。前週同様、決算発表を終えた銘柄中心に物色が続きそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/08/14 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は反発、国内連休中の海外市場に注目 *12:23JST 日経平均は反発、国内連休中の海外市場に注目  日経平均は反発。134.62円高の32338.95円(出来高概算8億6096万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でダウ平均は191.13ドル安(-0.54%)と続落、ナスダック総合指数も-1.16%と続落。イタリア政府が銀行の追加課税案について一部緩和を発表、欧州株の反発に連れて買いが先行した。ただ、10日に発表される消費者物価指数(CPI)を警戒した売りに押され、下落に転じた。原油市況の上昇も先行き警戒感を誘った。米株安を受けて、8月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出に絡んだ売買などが交錯するなか、日経平均は188.37円安からスタート。ただ、為替の円安進行や時間外取引のナスダック100指数先物の堅調推移を背景にすぐに切り返すと、その後は前引けまで一本調子で値を切り上げ、プラス圏に浮上して前場を終えている。なお、SQ値は概算で32013.86円。 個別では、業績・配当予想の上方修正と自社株買いを発表したINPEX<1605>が急伸し、第1四半期の好決算や株式分割を発表したホンダ<7267>も大幅に上昇。ほか決算関連では第1四半期決算から業績予想を上方修正した日本板硝子<5202>、ロート製薬<4527>、日本空港ビルデング<9706>、第1四半期が好スタートとなった長野計器<7715>、千葉興業銀行<8337>、武蔵精密工業<7220>、今期増益見通し及び中期経営計画の見直しが評価されたやまみ<2820>、4-6月期の営業黒字転換や新中計の発表が材料視されたコカ・コーラ<2579>、上半期が計画比で上振れ着地となり自社株買いも発表したネクソン<3659>、上半期が大幅に上振れたメック<4971>、業績予想を上方修正した東洋炭素<5310>などが急伸している。 決算以外では、中国が日本行きの団体旅行を解禁する方針と伝わり、三越伊勢丹<3099>、高島屋<8233>、パンパシHD<7532>、ラウンドワン<4680>、マツキヨココカラ<3088>、エアトリ<6191>などのインバウンド関連が前日に続き、大幅高となった。 一方、第1四半期はほぼ想定線も半導体や映画事業の不振などが嫌気されたソニーG<6758>、第1四半期が2桁減益で市場予想を大幅に下回ったオリンパス<7733>、第1四半期が2桁減益決算で低い進捗率となった三菱マテリアル<5711>、減益基調が続いたサントリー食品<2587>、4-6月期営業利益が市場予想を下回ったコーセー<4922>などが大きく下落。増益決算と利益予想の上方修正を発表したJMDC<4483>はインダストリー向けの伸び率鈍化が嫌気されたか大幅安。ほか、決算関連では第1四半期が大幅増益も計画据え置きが失望された円谷フィールズ<2767>、第1四半期好決算もサプライズに乏しく出尽くしにつながったじげん<3679>、第1四半期の低い進捗率が嫌気されたシンクロ・フード<3963>、業績予想を下方修正したグローブライト<7990>、減益決算が嫌気されたオプトラン<6235>などが急落。 セクターでは鉱業、石油・石炭、保険が上昇率上位に並んだ一方、精密機器、電気機器、サービスが下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 本日の日経平均は寄り付きと同時に一時32000円割れ目前の水準まで下落したが、その後は前引けまでほぼ一本調子で水準を切り上げ、前日比でプラス圏に浮上。本日の安値からの上げ幅は300円を超える。 日経平均はこれまで度々32000円を割り込む局面があったが、毎回、32000円台に早期に浮上し、押し目買い意欲を見せていたが、今週に入ってからは特に32000円手前からの下げ渋りが目立っており、底堅さを改めて確認できている。 日米長期金利の上昇や米国債の格付け引き下げなどを背景に先週から株式市場のムードが悪くなっていたが、日本株はかなり粘り強さを見せているといえる。日米長期金利の上昇も今週は一服しており、前日に行われた米10年物国債入札でも需要の堅調さが確認され、安心感につながっている。 一方、国内は明日から3連休で立ち会いは本日が最後となる。こうしたなか、今晩には米7月消費者物価指数(CPI)、明日11日には米7月卸売物価指数(PPI)が発表予定だ。米7月CPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分と同じ伸びが予想されている。一方、前年同月比では総合が+3.3%と6月(+3.0%)から加速する見込みで、コア指数は前年同月比+4.7%と6月分(+4.8%)から小幅な鈍化が予想されている。ある程度は織り込み済みとはいえ、CPIコア指数が米連邦準備制度理事会(FRB)の目標値である2%を大幅に上回ったままであるなか、CPI総合の伸びが13カ月ぶりに加速に転じるとなると、インフレ高止まりが想起される恐れがある。 商品市況の動きなどを背景に、米CPIは次回以降の8月分、9月分の方が警戒されていて、今回の7月分については、事前の市場関係者の間ではさほど警戒する声は聞かれていない。しかし、前日は、労働者のストライキを背景とした供給リスクから欧州の天然ガス先物価格が急上昇したほか、直近、上昇基調を強めている原油市況は、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)が一時1バレル=84ドル台後半と9カ月ぶりの水準にまで上昇した。コモディティ価格の動向が気がかりななか、警戒度が低い7月分から予想比で上振れとなると、次回8月分以降への警戒感は一段と上昇するだろう。その場合には、株式市場で再びリスク回避の動きが強まる恐れがある。 米物価指標の上振れは日米金利差の拡大による円安・ドル高を通じて日本株の相対的な底堅さに寄与する可能性もあるが、現値水準から一段と円安・ドル高が進むと、輸入インフレが再燃する恐れがあり、日本銀行の年内の追加政策修正への思惑なども高まりかねない。国内連休の間の海外市場の動向には注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/10 12:23 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶり反落、日米長期金利は低下も株冴えない *12:14JST 日経平均は4日ぶり反落、日米長期金利は低下も株冴えない  日経平均は4日ぶり反落。135.66円安の32241.63円(出来高概算8億612万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は158.64ドル安(-0.44%)と反落、ナスダック総合指数も-0.78%と反落。中国7月貿易収支が予想以上に悪化し、世界経済の減速を懸念した売りが先行。また、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが主要銀6行の格付見直しや中小銀10行の格下げを発表したことも重しになった。一方、金利の低下に伴い、安値では押し目買いが入り、終盤にかけては下げ幅を縮小した。米株安を引き継いで日経平均は30.97円安からスタート。一方、為替の円安基調が維持されているなか、前日同様に下値では買い戻しが入りやすく、その後は前日終値を挟んだもみ合いが続いた。ただ、軟調なアジア市況などを背景に前引けにかけてはやや軟化した。 個別では、業績上方修正と前期比での大幅増配が好感された神戸製鋼所<5406>のほか、業績予想を上方修正したJESHD<6544>、NISSHA<7915>、住友林業<1911>、バンナムHD<7832>、レゾナック<4004>、住友大阪セメ<5232>、第1四半期が好スタートとなったミズノ<8022>、エレコム<6750>、横河電機<6841>、タカラトミー<7867>、四半期受注高の底入れが好感されたTOWA<6315>、業績上方修正と増配を発表したアシックス<7936>、などが急伸。第1四半期がやや上振れ気味で着地した大阪ソーダ<4046>は売り方の買い戻しを巻き込んでストップ高となっている。シュッピン<3179>は第1四半期決算がほぼ想定線も月次動向の改善を材料に買われた。 ほか、中国政府が週内にも中国人の日本への団体旅行を解禁する可能性が一部メディアで報じられ、三越伊勢丹<3099>、高島屋<8233>、JAL<9201>、JR東<9020>、寿スピリッツ<2222>、共立メンテ<9616>などのインバウンド関連が買われている。 一方、ダイキン<6367>はほぼ市場予想並みの増益決算だったが、会社計画が据え置かれたことが売りを誘い大幅安。想定外の減益スタートとなった三菱製鋼<5632>、増益決算ながらも通期計画の未達が懸念されたBEENOS<3328>、上半期の業績予想を下方修正したニコン<7731>、ダイフク<6383>、タカラバイオ<4974>、決算が市場予想を下回ったシスメックス<6869>、NTTデータ<9613>、第1四半期の営業赤字が嫌気されたHUグループ<4544>、なども大きく下落している。 セクターでは鉱業、機械、銀行が下落率上位に並んだ一方、空運、その他製品、陸運が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の60%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 本日の日経平均は前引けにかけてやや軟化したが、概ね前日終値近辺での一進一退となっている。前日の米株式市場で主要株価指数が揃って下落したことに加え、ドル円レートの水準は前日の東京時間とほとんど変わらないため、これらの状況を踏まえれば思ったよりも底堅い印象を受ける。 要因としてはいくつか考えられるが、まずは先週の日本株安の独自要因として働いていた国内長期金利の上昇一服が挙げられよう。国内の10年物国債利回りは本日11時時点では0.580%の水準にある。3日の0.655%から4日連続での低下となっており、低下幅もそれなりに大きい。昨日の国内30年物国債の入札で旺盛な需要が確認されたあたりから、10年物国債利回りも急低下しており、今回の入札結果が安心感を誘っているもよう。 米長期金利が低下していることも本日のハイテク・グロース(成長)株の買い戻しを通じて相場を下支えしていると考えられる。米10年債利回りは8日に4.03%と7日の4.09%から低下、安値では4%を割り込む場面もあった。昨日行われた米3年物国債入札でも強い需要が確認され、目先の安心感につながっているようだ。 一方、先週、株式市場の下落を引き起こした日米長期金利の上昇が一服しているものの、日米の株式市場は冴えない展開が続いている。米国債の四半期入札や米消費者物価指数(CPI)などの注目イベントが今晩以降も控えていることを踏まえれば自然なこととも思われる。 ただ、前日の米国市場では長期金利が低下しているなかでも株式は総じて軟調で、主要株価指数の下落率は一時1%を優に超えて推移する場面があった。また、ダウ平均を除けば、S&P500種株価指数、ナスダック指数、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)などの株価指数は揃って前日に25日移動平均線を割り込んできている。 7月下旬にかけて株価指数が水準を大きく切り上げてきたことで、投資家の買いの持ち高はそれなりの水準に膨れ上がってきていたと考えられる。こうしたなか、日米ともに入札で国債の需要は堅調さが確認されたものの、どちらにおいても国債を買いながら同時に株式にもさらに資金を振り向ける余力は既になくなってきていたのかもしれない。これが、金利が低下しつつも株価が上がらない一因という可能性はありそうだ。 8月は海外投資家の夏休み入りで売買が細りやすい傾向があるうえ、株式市場が下落しやすい季節性もかねてから指摘されている。5月以降、相場をけん引してきた時価総額の大きい大型株などはしばらく上値の重い展開が予想される。目先は出遅れ感や割安感が残る中小型株のほか、中国人の旅行需要というカタリストが意識されはじめたインバウンド関連などに妙味がありそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/09 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、今週の懸念材料はこれから *12:12JST 日経平均は3日続伸、今週の懸念材料はこれから  日経平均は3日続伸。103.54円高の32358.10円(出来高概算7億4320万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は407.51ドル高(+1.16%)と4日ぶり反発、ナスダック総合指数は+0.61%と5日ぶり反発。ニューヨーク連銀総裁がインフレ動向次第では来年の利下げが正当化される可能性に言及し、投資家心理が改善した。米国株の反発や為替の円安を追い風に日経平均は176.05円高からスタート。序盤は買いが先行し、午前10時過ぎには一時32539.88円(285.32円高)まで上昇した。しかし、心理的な節目の回復が目先の達成感につながり、その後は失速。時間外取引の米株価指数先物の軟化や香港ハンセン指数の下落が重しとなり、一時下落に転じる場面もあったが、前引けかけては下げ渋った。 個別では、川崎汽船<9107>、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、コマツ<6301>、クボタ<6326>の建機など景気敏感株の上昇が目立つ。三菱重<7011>は国内証券のレーティング格上げが好感されて大幅に上昇、本日決算を控える川崎重<7012>も大幅高。レーザーテック<6920>は4-6月期受注の上振れが好感されて買い優勢。決算関連では、業績予想を上方修正したティラド<7236>、イトーキ<7972>、フジテック<6406>、第1四半期が好スタートとなったSANKYO<6417>、コムシスHD<1721>、丸一鋼管<5463>、昭和産業<2004>が急伸。 一方、アドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>の半導体株が軒並み下落。イビデン<4062>、新光電工<6967>、芝浦<6590>など半導体関連の一角も大幅安。上半期が下振れ着地となったスペース<9622>のほか、業績上方修正がなかったことが失望されたLIFULL<2120>、好決算ながらも出尽くし感が先行したUアローズ<7606>、第1四半期の低進捗が嫌気された日本製紙<3863>、カチタス<8919>、ARM<8769>などが急落した。 セクターでは電気・ガス、海運、食料品が上昇率上位に並んだ一方、保険、精密機器、石油・石炭が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は41%となっている。 本日の日経平均は寄り付きから買いが先行し、午前10時過ぎには一時32500円を超えた。週明け7日の米ダウ平均が1%超の上昇率で4日ぶりに反発し、下落が続いていた米ナスダック総合指数も5日ぶりに反発したことで、久々の米株高が投資家心理を改善させたようだ。しかし、心理的な節目を回復したところで戻り一服感が台頭し、その後は高値から300円ほども上げ幅を縮め、下落に転じる場面もあった。 前日の東京市場が朝安後に急速に切り返したのは、先週、株式市場の下落につながった日米長期金利の上昇が一服したことが大きい。先週末4日に発表された米7月雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想を小幅に下回ったとはいえ、平均時給の伸びは前年同月比および前月比でともに市場予想を上回った。しかし、それまでの金利上昇ペースが速かったことに伴う目先の材料出尽くし感に加え、雇用者数や週平均労働時間の減少に着目した景気減速の兆候から、米10年債利回りは3日の4.18%から4日には4.04%へと大きく低下した。週明けの日本の10年物国債利回りもこうした流れを引き継ぎ、先週末は0.65%を超えていたが、週明け7日は0.62%まで低下した。 しかし、7日の米10年債利回りは4.09%と先週末4日の4.04%から再び上昇している。日本の10年物国債利回りも本日8日は0.635%と早くも反発している。先週、米長期金利を上昇させた主な要因は米財務省による中長期債の発行規模引き上げと考えられる。今週は米国債の四半期入札が行われる。8日に3年債、9日に10年債、10日には30年債が予定されている。 また、今週は10日に米7月消費者物価指数(CPI)、11日には米7月卸売物価指数(PPI)、米8月ミシガン大学消費者信頼感調査の期待インフレ率が発表される。米CPIは前年同月比+3.3%と6月(+3.0%)から加速する見込みで、13カ月ぶりに伸びが前の月から拡大する予想だ。サウジアラビアの減産期間の延長や米経済のソフトランディング(軟着陸)期待を背景に、原油市況が需給の両面から上昇基調にあるなか、米7月PPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分(+0.1%)から加速する見込み。米ガソリン価格も上昇基調にあるため、期待インフレ率の上昇も予想される。 前日、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、インフレが減速すれば来年には利下げが正当化される可能性があるなどと指摘したことが足元の株式市場の支援材料になっているようだ。しかし、上述したように、米金利の先高観が残るなか、米四半期入札の結果や米CPI・PPIの結果は注視する必要がある。 一方、日本では本日午前に発表された毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比-1.6%と、前月(-0.9%)から減少率が拡大し、市場予想(-0.9%)よりも大幅な減少率となった。また、現金給与総額は同+2.3%と18カ月連続で増加したものの、伸び率は市場予想(+3.0%)を下回った。これが日銀の金融緩和を長期化させる思惑を強めることになれば、国内長期金利の上昇圧力が和らぎ、日本独自の株安要因も弱まりそうだ。 ただ、ドル円は現在(本稿執筆時点、8日11時前後)1ドル=143円30銭台と先週末4日から2円近く円安・ドル高が進んでいる。植田日銀総裁は7月の金融政策決定会合におけるイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の柔軟化にあたって、為替市場の変動率などにも配慮していることを示していた。足元のドル円の変動率は大きい上に、また、輸入インフレ再燃につながり得る円安は、物価目標の上振れを警戒する日銀としては許容しがたい。日銀の追加政策修正への思惑はくすぶり、国内長期金利の上昇圧力も簡単には和らがないだろう。 日米長期金利の上昇圧力がくすぶるなか、ハイテク・グロース(成長)株の上値は重い展開が予想される。一方、市況関連などのバリュー(割安)株が相対的に優位な展開が当面続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/08 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は小幅安、売り一巡後は下げ幅を縮小する展開 *12:16JST 日経平均は小幅安、売り一巡後は下げ幅を縮小する展開  日経平均は小幅安。2.44円安の32190.31円(出来高概算7億2456万株)で前場の取引を終えている。 前週末4日の米国株式市場のダウ平均は150.27ドル安(-0.43%)と続落。7月雇用統計の非農業部門雇用者数が予想を下回り、金利先高観の後退に伴い買い戻しが先行した。その後も長期金利の低下やアマゾンの好決算を背景に一段高となった。ただ、雇用統計で賃金の上昇が予想を上回り、連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測は完全には払しょくされなかった。また、10日に発表を控える消費者物価指数(CPI)への警戒感に加え、アップルの低調な決算を失望した売りが強まると終盤にかけて下落に転じた。ナスダック総合指数は続落、軟調な展開となった米株市場を受けて本日の日経平均は下落スタートとなった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、ソシオネクスト<6526>などの半導体関連株の一角が下落。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>、丸紅<8002>などの商社株も軟調に推移。また、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、ディスコ<6146>、川崎船<9107>なども下落した。そのほか、第1四半期の営業利益がコンセンサス大幅下振れとなったスクエニHD<9684>が急落、ジャストシステム<4686>、大阪チタ<5726>などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、NTT<9432>やKDDI<9433>、ソフトバンク<9434>などの通信株のほか、花王<4452>、任天堂<7974>、三菱重工業<7011>、郵船<9101>などが上昇。スプレッド拡大で業績予想を上方修正した日本製鉄<5401>も堅調に推移した。ほか、中国市場回復も加わり4-6月期は増益転換となったユニ・チャーム<8113>、業績・配当予想を上方修正した富山第一銀行<7184>が大幅に上昇した。そのほか、日本シイエムケイ<6958>、大真空<6962>、ヤマシンフィルタ<6240>、栗本鉄工所<5602>などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは、その他金融業、銀行業、卸売業が下落率上位となった一方で、水産・農林、鉱業、石油・石炭製品が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の66%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 8月7日の日経平均は前週末比271.47円安の31921.28円と大幅反落でスタート。加えて、決算発表がピークを迎えている他、週末が祝日となることもあって商いは膨らみづらく、短期的な物色に振らされる展開が予想されている。ただ、売り一巡後は押し目買いの動きが目立っており、前引けにかけてじりじりと下げ幅を縮小した。 新興市場も軟調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後、じりじりと下げ幅を縮小する展開となっている。米10年債利回りが依然として4%を超えており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けにくい地合いが続いている。ただ、前週末まで大きく下落していた分、押し目買いの動きも広がっている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.16%安、東証グロース市場Core指数は0.66%安。 さて、4日には米7月雇用統計が発表された。7月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比18万7000人増で市場予想(20万人)をやや下振れた。一方、失業率は3.5%で前月(3.6%)から低下、平均時給は前月比0.4%上昇と前月と同水準となったほか、前年比では4.4%上昇となった。雇用統計の結果は強弱入り混じる内容で米10年債利回りも4%水準で推移、投資家心理が上下どちらか一方に偏る結果ではなかった。ただ、今週は米国で10日に7月消費者物価指数(CPI)、11日に7月卸売物価指数(PPI)が発表される。仮にインフレ高止まりが意識されると、既に4%を超えている米10年債利回りの一段の上昇にもつながりかねないため、同指標の結果には大きな注目が集まっている。 パウエル議長をはじめ当局者らは、これまで政策はデータ次第との姿勢を一貫して繰り返してきた。今週は、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁とアトランタ連銀のボスティック総裁らの発言も予定されている。また、パウエル議長は今月下旬に、カンザスシティー連銀がワイオミング州ジャクソンホールで開く年次シンポジウムで登壇を予定している。5日に講演したボウマンFRB理事は、物価の完全な安定回復には追加利上げが必要になるかもしれないとの見解を示していた。やはり、9月に開かれる次回連邦公開市場委員会(FOMC)までに、当局関連の発言や今後の雇用統計、最新の物価統計の動向には注視しておきたい。 そのほか、今週は国内で1500社以上の企業決算が発表される。決算を材料とした東証プライム銘柄の個別株物色が主体となることが予想され、商いが膨らむことが想定される。好決算銘柄の買いが優勢となれば、株価指数の回復につながろう。米国と合わせて日本の長期金利の動向に注意を払いたいところだが、直近株価が大きく下落しながらも業績が堅調に推移している銘柄はしっかりとチェックしておきたい。 7月第4週(24~28日)投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を738億円買い越した。海外投資家の買い越しは5週連続で、個人投資家は1304億円の売り越しで4週ぶりに売り越した。海外投資家の買い越しが続く中、個人の売り越しが継続するか、今後もチェックを続けたい。さて、後場の日経平均はプラス圏に浮上して上げ幅を広げることができるか。前述のようにインフレ関連指標の発表が控えているが、今週から企業決算が本格化するためプライム市場の個別株物色に注目しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/08/07 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は小幅に3日続落、米雇用統計を受けた金利動向を注視 *12:13JST 日経平均は小幅に3日続落、米雇用統計を受けた金利動向を注視  日経平均は小幅に3日続落。28.34円安の32130.94円(出来高概算8億1610万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でダウ平均は66.63ドル安(-0.18%)と小幅続落、ナスダック総合指数は-0.09%と小幅に3日続落。長期金利の一段の上昇を警戒した売りが先行。7月ISM非製造業景況指数やサービス業PMIが予想を下回ったことも売り材料となり、軟調に推移した。一方、雇用統計や主要ハイテク企業の決算を控えた様子見ムードから下値は限定的だった。日経平均は140.22円安からスタートすると売りが先行し、一時31934.35円(224.93円安)まで下落。ただ、短期間での急ピッチの下落による自律反発が意識され、心理的な節目割れからは買い戻しが入り、プラス圏に浮上する場面もあった。国内の長期金利の上昇が一服していたことも目先の安心感を誘った。ただ、今晩の米雇用統計を前に様子見ムードが強く、戻り一服となった後は再び軟化した。 個別では、任天堂<7974>が好決算ながらも出尽くし感から大きく下落。営業損益が赤字に転落した古河電工<5801>、第1四半期が想定外の2桁減益となったエア・ウォーター<4088>、サプライズに乏しい決算で手仕舞い売りが膨らんだGウイン<8111>、ほぼ想定線も出尽くし感が先行したTDCソフト<4687>などが大きく下落。 一方、業績を大幅に上方修正した日東紡<3110>がストップ高買い気配のまま終えている。棚卸資産影響前の営業利益の増益が評価されたUACJ<5741>、第1四半期営業利益が市場予想を大幅に上回ったZHD<4689>、第1四半期大幅増益で好スタートを切ったシグマクシス<6088>などが急伸。業績及び配当予想を上方修正した品川リフラクトリーズ<5351>はストップ高となっている。ほか、株主還元強化を評価した動きが続いた郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運のほか、保険料の事前調整など複数の問題を背景に直近の下落がきつかった東京海上<8766>、SOMPO<8630>などの保険が大幅反発。サウジアラビアの自主減産延長による原油市況の反発を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>などが高い。 セクターでは繊維製品、その他製品、ゴム製品が下落率上位に並んだ一方、海運、保険、鉱業が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は46%となっている。 本日の日経平均は寄り付き直後に32000円割れを見た後はすぐに切り返すと、一時は安値から300円超上昇するなど、心理的な節目を意識した底堅さが見られた。一方、戻りの一服も早く、その後は次第に値を切り下げる展開となっている。 2日、3日と日米の長期金利の上昇が株式市場の下落につながっていただけに、金利への影響力の大きい米雇用統計の発表を今晩に控えるなか様子見ムードが強まっているようだ。前日3日の米10年債利回りは4.18%と、2日の4.09%からさらに上昇した。米名目金利から期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率を差し引いた米10年実質金利は3日に1.81%と、7月7日に付けた1.79%を上回り、2009年3月以降で最高水準にまで上昇した。 一方、前日まで上昇が続いていた日本の新発10年物国債利回りは、本日は上昇一服となっており、長期国債先物も下げ渋っている。前日は日本銀行が午後に臨時の国債買い入れを実施したにもかかわらず、長期金利が低下したのは一時的ですぐに低下分を埋める動きとなっていた。日銀を試すかのような海外投機筋と思われる向きからの国債売りが入っていたとみられるが、本日はいったん小休止しているもようだ。 しかし、今晩の米雇用統計で市場予想を上回る数値が出た場合には、足元で金利動向に神経質になっているタイミングでもあるため、米長期金利の一段の上昇を通じて日米ともに株式市場へのマイナス影響が懸念される。その場合には、本日いったん小休止している日本の長期国債への売りが再燃する可能性もあろう。 来週は米国で10日に消費者物価指数(CPI)も発表される。目先は金利動向に神経質な展開が想定され、ハイテク・グロース(成長)株の押し目買いは控えた方がよいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/04 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、日米長期金利が引き続き攪乱要因 *12:10JST 日経平均は大幅続落、日米長期金利が引き続き攪乱要因  日経平均は大幅続落。463.61円安の32244.08円(出来高概算8億8861万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でダウ平均は348.16ドル安(-0.97%)と4日ぶり反落、ナスダック総合指数は-2.17%と大幅続落。財務省による中長期債の発行拡大や7月ADP民間雇用者数の大幅な上振れを背景に長期金利が上昇するなか、ハイテクを中心に売られ、終日軟調に推移した。米株安を引き継いで日経平均は331.84円安からスタート。米10年債利回りの4%超え後の続伸を警戒したハイテク・グロース(成長)株の下落が重しになった。また、為替の円安基調は維持されているものの、国内での長期金利の上昇も続いていることが警戒感を誘った。日経平均は一時32180.02円(527.67円安)まで下げ幅を広げたが、13週移動平均線が位置する32000円を意識した押し目買いからその後は下げ渋った。 個別では、1日に決算を発表した米AMDの急落などを背景とした米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅下落を受け、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>などが下落。ソニーG<6758>、日立<6501>、ニデック<6594>のほか、メルカリ<4385>、マネーフォワード<3994>、サイボウズ<4776>などのハイテク・グロース株が全般安い。コマツ<6301>、三菱マテリアル<5711>、住友ゴム<5110>、石油資源開発<1662>、共英製鋼<5440>など景気敏感株も総じて軟調。業績下方修正を発表したTDK<6762>、NOK<7240>、ヤマハ<7951>などが急落。ほか、決算を材料に住友電工<5802>、住友化学<4005>、NTN<6472>、ハウス食G<2810>、ダイヘン<6622>などが大きく下落している。 一方、国内の長期金利の上昇を背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行が強含み。川崎汽船<9107>、郵船<9101>の海運が高い。HOYA<7741>、東京精密<7729>、信越化<4063>、三菱ケミG<4188>などの精密機器や化学の一角が堅調。新光電工<6967>は、富士通<6702>の保有株売却に関する順調な進捗を手掛かりに大幅高。好決算で前日にストップ高比例配分となったJVCケンウッド<6632>は本日も急伸。CTC<4739>は伊藤忠<8001>による株式公開買い付け(TOB)を材料にTOB価格にサヤ寄せの動き。ほか、決算を材料に日本ライフライン<7575>、インテリW<4847>、AZ丸和HD<9090>、スカパーJ<9412>などが急伸している。 セクターでは非鉄金属、ゴム製品、輸送用機器が下落率上位に並んだ一方、海運、精密機器のみが上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は10%となっている。 本日の日経平均は一時500円を超えるなど、大幅に続落。引き続き日米の長期金利の上昇が警戒されているようだ。前日2日の米10年債利回りは4.09%と1日の4.03%からさらに上昇。7月ADP民間雇用者数が前回6月分に続き市場予想を大幅に上振れたことで米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ懸念が再燃。また、米財務省による財政赤字の補填を目的とした中長期債の発行規模引き上げによる需給の緩みが警戒されている。さらに、1日には格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債の格付けを引き下げた。格下げ自体が大きな影響力を持つことはないだろうが、米国債の発行規模が引き上げられるタイミングでの発表となり、時期が悪かった。今後の米国債の入札に向けてタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)の上昇と利回り曲線のスティープ化を指摘する声が聞かれている。 また、引き続き日本国内の金利動向も気掛かりだ。10年利付国債(第371回)は本日午前の本稿執筆時点で0.65%まで上昇。前日の終値0.625%からさらに上昇している。長期国債先物の価格も続落しており、国内長期金利の上昇圧力がじわじわと高まっている様子が窺える。前日、日本銀行が臨時オペでの国債買い入れ額を前回から増額しなかったこともやや警戒感を高めさせているようだ。なお、本日、日銀は午前の金融調節で臨時買い入れオペの通知を見送った。 国内では来週が決算発表のピークであるため、決算を手掛かりとした個別株物色が相場を下支えしてくれることに期待したいが、米国は今週が決算発表のピークで、来週は発表数が前週比で半減する。決算を材料とした物色が後退するなか、4%を超えてきた米10年債利回りが一段と上昇するようであれば、株価指数が高値圏にあるなか利益確定売りを誘いやすいだろう。 米ダウ平均や米S&P500種株価指数は依然として上向きの25日移動平均線上を維持しているが、米ナスダック総合指数は前日に25日線を割り込んだ。日本も個別株物色に期待したいところだが、米国株がここから一段と大きく崩れてしまうようだと影響は免れないだろう。25日線を既に下回っている日経平均に対して、東証株価指数(TOPIX)は辛うじて同線を維持しようとする動きが見られているが、TOPIXも同線を大きく下放れてしまうと、調整色が強まりそうだ。長期金利の上昇が警戒され、為替相場の動向にも不透明感が漂うなか、これらの影響が相対的に小さい内需系セクターなどに注目したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/03 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反落、国内外の金利動向が気掛かり *12:18JST 日経平均は3日ぶり大幅反落、国内外の金利動向が気掛かり  日経平均は3日ぶり大幅反落。615.29円安の32861.29円(出来高概算9億2222万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でダウ平均は71.15ドル高(+0.20%)と3日続伸、ナスダック総合指数は-0.43%と3日ぶり反落。米ISM製造業景況指数は予想を下回ったが、重機メーカーのキャタピラーの決算が想定外に強く、経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まるなかダウ平均は終日堅調に推移した。一方、金利の上昇でハイテクは売り優勢となった。米ナスダック指数の下落を受けて日経平均は353.46円安からスタート。為替の円安が進行するなかではあったが、米長期金利の上昇を警戒したハイテク・グロース(成長)株の下落が重しとなった。33000円を意識した下げ渋りも見られたが、前引けにかけては売りが膨らみ、心理的な節目を大きく割り込んで終えた。 個別では、ゼンショーHD<7550>は既存店売上高の伸び鈍化が嫌気されたか大幅安。コニカミノルタ<4902>、日立造船<7004>は営業赤字決算を受けて大きく下落。寿スピリッツ<2222>、JAL<9201>、メルカリ<4385>は好決算ながらも出尽くし感から売られた。雇用調整助成金の支給申請手続きの一部において不適切な点が確認されたと発表したアウトソーシング<2427>は急落。ほか、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>などの半導体を筆頭に、安川電機<6506>、TDK<6762>、村田製<6981>のハイテク、マネーフォワード<3994>、ラクスル<4384>、JMDC<4483>などのグロース株が下落。 一方、前日予想を上回る決算を発表したトヨタ自<7203>は大幅に続伸。決算を材料にIRJ-HD<6035>、山崎製パン<2212>、ソフトクリエイト<3371>などが急伸。KeePer技研<6036>は月次動向を材料に大幅高。ほか、主力株では富士電機<6504>、キーエンス<6861>などが上昇。INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>、三菱マテリアル<5711>、東邦チタニウム<5727>などの鉱業、石油・石炭、非鉄金属なども堅調。 セクターでは保険、証券・商品先物、電気・ガスが下落率上位に並んだ一方、非鉄金属、輸送用機器、鉱業、ガラス・土石の4業種のみが上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の72%、対して値上がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は600円超下落し、33000円を大きく割り込んでいる。日経平均の下落率は1.8%超と、0.4%程度の下落率にとどまった米ナスダック総合指数に比べて大きめの下落率になっている。先週末の日本銀行の政策修正に伴う余波が続いているとみられ、日本固有の要因で国内株の変動率が高くなっているようだ。 東京証券取引所が公表している空売り比率は、先週末に47.8%まで上昇していたが、前日に37.9%まで低下。週明け以降の売り方の買い戻しが一巡したことも本日の相場の下落につながっていそうだ。 国内外の金利動向が気掛かりになってきている。米国では前日に発表された供給管理協会(ISM)の7月製造業景況指数をはじめ、労働省雇用動態調査(JOLTS)の求人件数などが市場予想を下回ったにもかかわらず、米10年債利回りは4%を超える水準にまで上昇し、ハイテク株の下落を誘発した。 米国債の大量発行が意識されていることが背景にあるようだ。米財務省は財政赤字の急速な悪化に対応するため、今週から期間が長めの債券の発行拡大に乗り出す方針。財務省が2日に発表する四半期定例入札予定では、発行総額を960億ドルから1020億ドルに引き上げると予想されている。新規発行額は来年にはほぼ倍増する見通しとも指摘されており、かつて米国債の最大の買い手だった米連邦準備制度理事会(FRB)がバランスシートの縮小に取り組むなか、国債需給の緩みが懸念される。また、直近は想定以上に強い米国の経済指標を受けて経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まっていた最中でもあった。今後、米長期金利がここからさらに上昇するようであれば株式市場も警戒感を抱かざるを得ないだろう。 また、日本国内でも長期金利の動向が気掛かりだ。日本の新発10年債利回りは足元0.6%前後でとどまっている。7月31日に、日銀が臨時の国債買い入れオペを実施し、市場の動きをけん制したことが効いている様子。一方、本日の長期国債先物は売りが優勢だ。金利の動きが限定的である一方、債券先物からは日銀の政策修正を意識した動きが窺える。 足元ではドル円が1ドル=143円台にまで上昇するなど、為替の円安が大きく進行している。円安による輸入インフレへの警戒感なども踏まえると、日銀も臨時オペの積極的な実施をいつまでも続けることは難しいと考えられる。こうした背景から、今後、0.6%で抑えられている10年債利回りが0.7%台を超えてくることなども想定されよう。この場合、依然として高水準にある投機筋の円売りポジションの巻き戻しにより、為替の円高が急速に進行する可能性がある。前日の米国時間から、為替の円安進行に対する日経225先物の上昇という従来の連動性が薄れているため、円高が進んだ場合の日本株の下落には注意したい。 ほか、国内金利がさらに上昇してくると、生命保険会社など国内機関投資家の米国債券から自国債券への回帰なども想定される。その場合、米長期金利の一段の上昇を通じて世界の株式市場の調整圧力として作用することも考えられる。 今回の日銀の政策修正は秀逸とも評価されているが、一方でやや難解なものになっており、投資家の間では捉え方が定まるのに時間がかかっている様子。政策修正の発表直後は円安・株高で反応し、市場は好意的に捉えたようだが、しばらくは日銀政策修正の余波が続きそうで注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/02 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、カギを握るトヨタと米AMDの決算 *12:13JST 日経平均は続伸、カギを握るトヨタと米AMDの決算  日経平均は続伸。246.31円高の33418.53円(出来高概算8億6713万株)で前場の取引を終えている。 7月31日の米株式市場でダウ平均は100.24ドル高(+0.28%)と続伸、ナスダック総合指数は+0.20%と続伸。月末に伴う持ち高調整に加え、今週に控える企業決算や経済指標を前にした様子見ムードにより小動きに終始した。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルが終了したとの見方が根強く、また今週発表される主要ハイテクの決算を期待した買いが下支えし、引けにかけて強含んだ。米株高や為替の円安を追い風に日経平均は120.09円高からスタート。一方、前日の大幅高の反動も意識され、その後はしばらく一進一退が続いた。ただ、前引けにかけては為替の円安がさらに進んだことで前日高値を超え、上げ幅を250円以上に広げてきた。 なお、午前に民間版、財新の中国7月製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表され、49.2と6月(50.5)から悪化し、市場予想(50.1)も下回ったが、相場への影響は限られた。 個別では、決算を材料にマキタ<6586>、日本調剤<3341>、牧野フライス<6135>のほか、エンプラス<6961>、テクノスJPN<3666>、キッセイ薬<4547>、旭有機材<4216>、キャリアDC<2410>、中国塗料<4617>、スミダ<6817>などが急伸。鉄鋼では大和工業<5444>、日本冶金工業<5480>が大幅に上昇。村田製<6981>は減益決算ながらも市場予想を上回ったことで大幅高。ソシオネクスト<6526>は好決算を評価する動きが続いた。ほか、アドバンテス<6857>、東エレク<8035>、ディスコ<6146>の半導体や、前日は出尽くし感から売られた商船三井<9104>や川崎汽船<9107>などの海運、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業など、ハイテクから景気敏感株まで全般堅調。 一方、決算を嫌気した動きが続いたキーエンス<6861>、ファナック<6954>が大きく下落。前日買われた三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行は反落。JT<2914>、ポーラオルHD<4927>、ZOZO<3092>は良好な決算ながらも出尽くし感から売り優勢。三菱電機<6503>は増益決算も市場予想に未達で大幅安。ほか、住友ファーマ<4506>、日本精工<6471>、ナブテスコ<6268>が決算を受けて大きく下落。東証プライム下落率上位にはクイック<4318>、伯東<7433>、メンバーズ<2130>、ベネフィット・ワン<2412>、デジタルアーツ<2326>、大紀アルミ<5702>など決算銘柄が並んでいる。 セクターでは電気・ガス、海運、鉱業を筆頭にほぼ全面高となった一方、銀行のみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は40%となっている。 本日の日経平均はやや膠着感の強い状況がとなっており、前日の米株式市場と似たような動きになっている。ただ、前日の大幅高の直後であることを考えると、引き続き堅調な地合いが続いていると評価できる。 前日の東証プライム市場の売買代金は引けにかけての大口クロス取引の影響があったとはいえ、先週末に続く5兆円超えとなった。商いも活況の上での大幅高となり、投資家の日本株への買い意欲を確認した。 一方、ドル円が1ドル=142円70銭台まで上昇し、前日の東京時間からさらに1円程も円安・ドル高が進んでいるにもかかわらず、日経平均は前日の高値をわずかに上回る程度の上昇にとどまっている。また、前日は午前に大幅に上昇した後、午後にかけては高値から一時400円近くも失速する場面が見られ、上値での戻り待ち売り圧力の強さも確認された。 日本銀行の金融政策決定会合でのサプライズ政策修正を経た後も、日本株への押し目買い意欲の強さが保たれている点は好印象ではあるが、日経平均も東証株価指数(TOPIX)に続いてバブル崩壊後の高値を更新するには追加の材料が必要と思われる。 こうした中、注目されるのはまず本日午後に予定されているトヨタ自動車<7203>の決算と、米国で本日予定されているアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の決算だ。トヨタ自動車の決算は半導体不足の解消による生産改善と為替の円安効果により好決算が期待されている。自動車産業の裾野は広く、日本株全体の業績動向を占う上でも重要な指標となる。一方、株価は前日に年初来高値を更新しており、好業績は既に大方織り込まれているとも思われる。出尽くし感から大きく下落するのか、すぐに下げ渋ってプラス圏を維持するのか株価反応に注目だ。 米AMDについては、生成AI(人工知能)ブームに火をつけた米エヌビディアのライバルで、AMDも生成AI関連製品の先行きに自信を見せている。これまでの日米の半導体企業やIT大手の決算はどちらかというと生成AIブームへの期待をいったん後退させる内容が多かった。しかし、AMDの決算でこうした期待が復活すれば、日米の株式市場のさらなる上昇に寄与しそうで、日経平均のバブル崩壊後の高値更新のカギを握ることになろう。 ほか、今晩は米国で供給管理協会(ISM)の7月製造業景況指数が発表される。市場予想は46.9と、6月(46.0)よりは改善する見通しも、引き続き景況感の拡大・縮小の境界値である50を割り込んだ状態が続く見込み。また、労働省雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が発表予定で、こちらは前月から求人件数がさらに減少する見込みだ。ほぼ予想通りになった場合、足元で強含んでいるドル円の上昇が一服するか為替の反応などに注目したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/08/01 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、プラス圏で堅調に推移 *12:15JST 日経平均は大幅反発、プラス圏で堅調に推移  日経平均は大幅反発。503.51円高の33262.74円(出来高概算9億9754万株)で前場の取引を終えている。 前週末28日の米国株式市場のダウ平均は176.57ドル高(+0.50%)と反発。個人消費支出(PCE)コア価格指数の伸びが予想以上に鈍化しインフレ鈍化傾向を再確認したため買いが先行。また消費の堅調さも確認され、ソフトランディング(軟着陸)期待も買い材料となった。金利の低下でハイテク株の買いも再燃しナスダックは大幅反発、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を横目に、7月31日の日経平均は前週末比369.60円高の33128.83円と反発でスタート。その後はじりじりと上げ幅を広げる展開となっている。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連株の一角が上昇。川崎船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も堅調に推移。また、トヨタ自<7203>やホンダ<7267>などの自動車関連のほか、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、ルネサス<6723>、日本製鉄<5401>、ソニーグループ<6758>なども上昇した。そのほか、通期上方修正と増配幅拡大を発表した豊田通商<8015>が急騰、第1四半期営業利益が想定以上の好進捗となったソシオネクスト<6526>も急上昇、北越工業<6364>、リオン<6823>、イントラスト<7191>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、アドバンテ<6857>、キーエンス<6861>、ヤクルト<2267>、KDDI<9433>などが下落。ほか、第1四半期の減収減益がネガティブサプライズとなった日本M&AセンターHD<2127>、想定外の下方修正にネガティブなインパクトが優勢となったファナック<6954>が大幅に下落した。そのほか、アンリツ<6754>、アグロカネショウ<4955>、ストライク<6196>、M&Aキャピタルパートナーズ<6080>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、輸送用機器、卸売業、精密機器が上昇率上位となった一方で、鉱業、空運、が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の82%、対して値下がり銘柄は16%となっている。 シカゴ日経225先物清算値は、大阪比325円高の33095円。本日の日経平均はシカゴ先物にサヤ寄せする格好から買いが先行しており、為替が円安方向にふれていることも追い風となっている。そのほか、国内企業決算の発表が本格化しており、決算発表を終えた個別株中心に物色が向かっている。 新興市場も堅調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、じりじりと上げ幅を広げている。米ハイテク株が値幅を伴って上昇したことは個人投資家心理を改善させる要因となった。また、米国で週末に発表された物価指標で改めてインフレ鈍化傾向が確認され、米長期金利の上昇が一服していることは新興株にとって支援材料となっている。前引け時点での東証マザーズ指数は1.45%高、東証グロース市場Core指数は2.63%高で時価総額上位銘柄に注目が集まっている。 さて、前週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、主要政策金利を0.25ポイント引き上げることを決定した。パウエル米連邦準備制度(FRB)議長の記者会見からもタカ派的なサプライズはなかった。また、欧州中央銀行(ECB)も0.25ポイントの追加利上げを決定。ただ、ラガルド総裁は決定発表後の会見で、今後の政策判断について入手するデータに左右されると強調していた。今後の政策会合でいったん利上げ休止を決めた場合でも、その後に再び利上げすることはあり得るとの見解を示した。 米国経済が景気後退を回避してソフトランディング(軟着陸)する確率が高まっているという認識が広がる中、7月以降の各国の金融政策方針に不透明感が残っているのは事実である。今週は、米国で供給管理協会(ISM)の景況指数、中国で国家版および民間版の購買担当者景気指数(PMI)が発表されるほか、週末には米雇用統計が発表予定。物価指標の鈍化傾向は続いているが、雇用関連の指標は依然として強い。結果次第では追加利上げ懸念が再燃する可能性があるため、これらの指標には注目しておきたいところである。 一方、S&P500は7月も月間で上昇の勢いとなっており、様子見していた弱気派が強気に転換するほか、乗り遅れることへの恐怖を感じている投資家も全て参加しており、トレーダーの株式へのエクスポージャーは歴史的に見ても高い水準にあるという。また、好調な米株式相場を受けてヘッジを考えているトレーダーはほとんどいないようで、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらはリポートで、オプション市場で株安に備えたプロテクションを買うのは「かつて目にしたことがないほど安い」と指摘しているようだ。 リセッション(景気後退)を招くことなくインフレを抑制することが過去に完全に成し遂げられた例はほとんどない。S&P500指数にとって1年で特にリターンの悪い9月・9月を控える中、上昇が継続するか注目が集まりそうだ。 話は変わって、今週から国内企業決算が本格化する。プライム市場の主力銘柄の決算が相次ぐため、本日同様個別株物色が活発化することで商いが膨らむことが想定される。好決算銘柄の買いが優勢となれば、株価指数の回復につながろう。 そのほか、7月第3週(18~21日)投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を197億円買い越した(前週は2793億円の買い越し)。買い越しは4週連続で、個人投資家は126億円の買い越しで3週連続の買い越しとなった。さて、後場の日経平均はプラス圏での推移を継続できるか。前述のように雇用関連指標の発表が控えているなか、今週から企業決算が本格化するため、プライム市場の個別株物色が中心となりそうだ。新興市場でも、決算を発表した銘柄への注目は集まろう。(山本泰三)  <AK> 2023/07/31 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、日銀政策修正の影響を考える *12:03JST 日経平均は大幅反落、日銀政策修正の影響を考える  日経平均は大幅反落。437.19円安の32453.97円(出来高概算7億7948万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は237.40ドル安(-0.66%)と14日ぶり反落、ナスダック総合指数は-0.54%と続落。米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に消化した安心感から買いが先行。4-6月期国内総生産(GDP)などの経済指標が軒並み予想を上回り、景気後退懸念が緩和したことも寄与。一方で年内の追加利上げ観測が再燃し長期金利の上昇が警戒されると売りに転換。また、日本銀行が本日の金融政策決定会合で政策修正を議論するとの観測報道もグローバルな資金フローの変化に対する警戒感を誘ったようで終盤にかけて下げ幅を広げた。日経平均は日銀の政策修正への警戒感から為替の円高が進むなか売りが先行し、446.74円安からスタート。ただ、昼頃に予定されている金融政策決定会合の結果公表とその後の植田総裁の会見を見極めたいとの思惑も働き、その午後は一進一退が続いた。 個別では、ソニーG<6758>、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、ファナック<6954>などの主力株が全般売られている。為替の円高を嫌気して日産自<7201>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>、デンソー<6902>などの自動車関連が下落。決算を材料に日野自動車<7205>、フューチャー<4722>、オムロン<6645>、システナ<2317>が急落し、ルネサス<6723>、富士通<6702>も大幅安。一方、日銀の政策修正観測を背景に三菱UFJ<8306>、りそなHD<8308>、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>などの銀行・保険が上昇。米インテルの好決算を受けてイビデン<4062>はハイテク株安のなか逆行高。決算を材料にフタバ産業<7241>、アマノ<6436>、シンプレクスHD<4373>、ブルソース<2804>、日清粉G<2002>が大きく上昇し、パワー半導体が好調な富士電機<6504>も大幅高となった。 セクターで電気機器、精密機器、医薬品を筆頭に全般下落。一方、銀行、海運、保険、陸運の4業種のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の79%、対して値上がり銘柄は17%となっている。 本日の日経平均は大きく反落。昨晩の米国市場の取引時間中、日本経済新聞社が、今回の金融政策決定会合において日本銀行がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の修正案を議論すると報じたことが要因だ。先週末に今会合では政策修正はないとする観測報道が出て、それまでくすぶっていた政策修正への思惑が一度大きく後退していただけに、今回の報道はサプライズだ。前日の米株式市場もハイテク株を中心に中盤までは大きく上昇していたが、日銀の観測報道が出たあたりから急速に上げ幅を縮め、結局、主要株価指数は揃って下落。米ダウ平均の連騰記録もついに終わった。 ただ、落ち着いて考えれば、日銀の政策修正は悪いことではない。もともとデフレ体質からの脱却という構造的な変化を、海外投資家は日本株買いの一つの理由として挙げていた。だとすれば、今回の動きはそうした構造的な変化が起こりつつあることを日銀が認めはじめたという証拠でもある。そもそも、世界各国の中央銀行が急速なペースで利上げを続け、日本も数十年ぶりのインフレに直面して少なくともデフレでない状況に至っているのであるから、YCCという世界を見渡しても異例の政策は修正してしかるべきだろう。マイナス金利政策を続けているだけでも十分に金融緩和的であるため、これを引き締めへの転換と解釈するのも拙速な判断だと考える。 そのため、政策の修正ペースが緩慢であれば、本日のリスク資産の売りも次第に落ち着いてくると思われる。本日売っているのも短期筋が中心だろう。今回の一件を通じて、次第に構造的な変化を見越して長期目線の実需筋が本腰を入れて買いを入れてくることも考えられ、短期筋の売りが落ち着いた後には日本株の強い動きが復活してくる可能性などもあろう。 一方、これはやや長めの時間軸で見た場合の話で、短期的には注意が必要と考える。というのも、日本と並んでマイナス金利政策を採用していたスイスが金融引き締めに転じた時もサプライズをもって受け止められていた過去の経緯がある。先進国の中では最後の砦ともいえる金融緩和を継続していた日本がいよいよ政策転換に舵を切りはじめたとすれば、それなりのインパクトがあろう。円は低金利通貨としての立ち位置が固まっていたため、低金利で借りた円を売って高金利の通貨を買うキャリー取引などにも影響を与えそうだ。 また、以前から、日銀が政策修正した場合の生保などの日本国内における機関投資家の投資行動の変化について海外では議論されていた。すなわち、国内機関投資家は米国債など海外債券の大口投資家であるため、日銀が政策修正することによって国内長期債券の利回りが高まれば、国内債券への回帰によって自国(海外)債券が売られ金利が上昇することを懸念していた。実際、こうした懸念を反映してか、前日は軒並み市場予想を上回った経済指標を背景に大きく上昇していた米10年債利回りが、日銀の観測報道が伝わったあたりからさらに急伸し、7月7日以来の4%乗せとなった。 このように、短期的には様々な所で世界的に資金フローの変化が起きる可能性がある。政策修正が小幅なものであれば波乱は小さいだろうが、変化幅が大きいか、あるいは将来の追加的な政策修正への思惑を高めるような結果となれば、こうした資金フローの変化は起こりやすいと考えられる。短期的には世界全体のマーケットの動向を注視する必要があろう。 ただ、今までの植田総裁の発言内容からして政策修正はかなり慎重に漸進的に進められるだろう。マイナス金利の修正などはさらに先のことと考えられ、依然として金融緩和的な姿勢を強調すると思われる。そのため、日経平均がここからさらに大きく崩れる可能性は低いのではないかと考えている。 仮に追加的な政策修正への思惑が高まり、市場の動揺が収まらない場合には、上述したような円キャリー取引の巻き戻しなど、資金フローの変化が起きることで一時的に為替の円高がさらに進むことが予想される。これは短期的には日本株への逆風となろう。一方、日米金利差は絶対的な水準でみれば依然として大きい。また、国内機関投資家の自国債券への回帰が起こって米国金利が上昇するケースも実現すれば、日米金利差は今の水準を維持するか、もしくはむしろ拡大する可能性もあるため、為替の円高の進展余地はさほど大きくはないとも考えられる。このため、いずれにしても日本株の調整は短期かつ軽微にとどまるのではないかと予想する。  個別については、目先は相場のボラティリティー(変動率)が高くなりやすいと考えられ、流動性リスクが大きい中小型株や新興株はやや厳しい局面が予想される。米経済のソフトランディング(軟着陸)期待や米ダウ平均の連騰劇を追い風に買われていた景気敏感株も、為替の円高余地が残されているなか、目先は手掛けづらさが意識されやすい。直近の半導体企業の決算はまちまちで、車載向けを除けば全体的に悪い内容が目立っているため、ハイテク株も買いづらいか。残るは消極的な観点から、景気や為替との連動性の低い内需系ディフェンシブセクターへの投資が一考に値しよう。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/28 12:03 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり小反発、半導体株の相場けん引局面はいったん終了か *12:11JST 日経平均は3日ぶり小反発、半導体株の相場けん引局面はいったん終了か  日経平均は3日ぶり小反発。61.13円高の32729.47円(出来高概算6億3596万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でダウ平均は82.05ドル高(+0.23%)と13日続伸、ナスダック総合指数は-0.12%と3日ぶり小反落。米連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.25ポイントの利上げ再開が決定。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今後のデータ次第で政策を決定していく方針を示すと、利上げサイクル終了への期待が高まった。また、ボーイングの好決算も寄与した。一方、決算を発表したマイクロソフトや半導体株の下落でナスダックは軟調に推移した。米ハイテク株安や為替の円高、国内半導体企業の低調な決算などを背景に日経平均は144.65円安からスタート。ただ、米FOMCを無難に消化した安心感などが下支えし、すぐに切り返してプラス圏に浮上した。一方、明日の日本銀行の金融政策決定会合を前に様子見ムードも強く、その後は前日終値を挟んだ一進一退が続いた。 個別では、外資証券の目標株価引き上げでディスコ<6146>が大きく上昇し、東エレク<8035>も高い。TOWA<6315>は国内証券の新規買い推奨を受けて急伸。C&R<4763>も新規買い推奨が材料視された。第1四半期の好決算が評価されたカプコン<9697>が急伸し、東証プライムの値上がり率トップとなっている。未来工業<7931>も決算を材料に大幅に上昇。台湾の鴻海精密工業が改善計画の策定を要請したと報じられたシャープ<6753>が買われた。米ボーイングの好決算を材料にジャムコ<7408>、大阪チタ<5726>なども高い。一方、決算が市場予想を大幅に下回ったアドバンテスト<6857>が下落。ほか、決算を材料にトプコン<7732>、サイバー<4751>が急落し、日東電工<6988>、キヤノン電子<7739>なども大きく下落した。 セクターで海運、保険、電気・ガスが上昇率上位に並んでいる一方、建設、ガラス・土石、金属製品が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の36%、対して値下がり銘柄は59%となっている。 米ダウ平均は13日続伸と36年半ぶりの連騰劇を記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り0.25ポイントの利上げ再開を決定。一方、注目されたパウエル議長の会見では、今後の経済データ次第で政策を決めると従来通りの方針を再表明。ただ、追加利上げも利上げ停止もあり得るとしている。これまでよりは追加利上げに対するトーンが和らいだ一方、対照的に利上げ停止の可能性にはこれまでよりも積極的に触れていた印象を抱いた。米金利も小幅ながら低下しており、市場は利上げサイクル終了への期待を一段と高めたようだ。これに伴い、米経済のソフトランディング(軟着陸)への自信も深めつつあるようだ。 一方、米ハイテク株が冴えなかったことに加え、結果公表を明日に控える日本銀行の金融政策決定会合を前にした為替の円高が重しとなり、東京市場は引き続き方向感に乏しい展開。事前の観測報道もあり、今回の金融政策決定会合での政策修正観測は既に大きく後退しているが、2023年度の物価見通しが従来から大幅に上方修正される公算が大きいとの指摘もあり、やや懸念はくすぶっている様子。 たしかに、予想通りに現行の政策が維持されたとしても、物価見通しが大幅に引き上げられれば、近い将来における政策修正を意識せざるを得ない。市場関係者も9月、10月の会合での政策修正を予想している向きが依然として多く、結局、今回が現状維持となっても、政策修正観測はくすぶり続けるのかもしれない。一方で、米国では利上げ打ち止め期待が高まるなか、緩やかながら経済指標の軟化傾向が続いているため、今後は来年の利下げに対する期待をより強く織り込みはじめる展開が想定される。今後の経済データ次第ではあるが、現状の路線を大きく変えるデータが出てこない限りは、このような構図が徐々に支配的になってくると考えられる。その場合、日米金利差は依然として大きな水準ではあるが、モメンタムとしては今後の縮小傾向が予想されるため、さらなる円安進行というのは期待しにくくなりそうだ。 ほか、注目すべき点としてはやはりアドバンテスト<6857>の決算だろう。第1四半期の営業利益は前年同期比68%の減少となり、市場予想を46%程も下回った。通期計画は維持しているが、想定為替レートを円安に修正したことを踏まえると、実質的な下方修正だ。また、システムオンチップ(SoC) の市場見通しを再び下方修正した。SoC市場見通しの下方修正は前期第1四半期から数えてこれで5四半期連続だ。 多くの半導体株は昨年10月に底入れし、2023年に入ってからは年前半での在庫調整の一巡と年後半からの回復を期待して株価が大幅に上昇してきた。そこに、生成AI(人工知能)ブームが加わり、5月から株価は騰勢をさらに強めた。なかでもアドバンテストは生成AI関連の筆頭格として買われ、昨年末比で株価は一時2.6倍にまで上昇していた。 しかし、世界の半導体企業の決算を見続けているが、底入れするどころか、見通しを下方修正している企業がいまだに多い。一般的に株価は半年先を見据えて先取りで動くとされるが、見通しが外れ続けてきたことで、半導体企業の業績と株価のモメンタムはかつて見たことがない程にまで対照的なものとなっている。 むろん、米マイクロン・テクノロジーやアドバンテストと同様に前日決算を発表した韓国のSKハイニックスの決算を見れば、先んじて調整が始まっていたメモリ市場はたしかに最悪期を過ぎたということで見方が一致している。また、アドバンテストとSKハイニックスはともに生成AI向けの需要拡大に自信を見せており、こうした見方は先日決算を発表したディスコ<6146>の見解とも一致する。このように、一部で弱さが残りつつも最悪期を過ぎたうえに生成AI向け需要の拡大という構造的な変化も踏まえれば、ある程度の業績と株価のモメンタムギャップは許容できるのかもしれない。 ただ、ディスコもアドバンテストも生成AI向け需要の業績への寄与度がどの程度のものになるかについて具体的な言及がない。少なくとも、今決算シーズンにおけるこれまでの半導体企業の決算、すなわち蘭ASMLホールディングや台湾積体電路製造(TSMC)、アドバンテストなどの決算を見る限り、半導体企業に対する過剰な期待はいったん調整せざるを得ないように思われる。実際は、ディスコはその後も上場来高値を更新し、アドバンテストも本日は想定以上に底堅い動きを見せるなど、筆者の見方とは非整合的な結果になっているが、少なくとも半導体株が相場をけん引することは当面期待しにくいと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/27 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続落、決算ハードルの高さを改めて確認 *12:12JST 日経平均は小幅続落、決算ハードルの高さを改めて確認  日経平均は小幅続落。13.51円安の32669.00円(出来高概算6億6300万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でダウ平均は26.83ドル高(+0.07%)と12日続伸、ナスダック総合指数は+0.60%と続伸。米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた様子見ムードから序盤はもみ合いが続いた。一方、7月消費者信頼感指数が予想を上回り2年ぶりの高水準に達するなど、景気への楽観的な見方が相場を徐々に押し上げた。また、主要ハイテク企業の決算を期待した買いも入り、相場は終日堅調に推移した。米株高を受けて日経平均は22.45円高からスタート。ただ、為替の円安の一服感が意識されるなか下落に転じると一時200円近く下げて32500円を割り込む場面もあった。一方、日本時間27日午前3時に結果が公表されるFOMCを前に持ち高を傾ける動きは限られ、その後は買い戻しが優勢となり、朝方の下げ幅を帳消しにして終えている。 個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の上昇を受けてレーザーテック<6920>、ディスコ<6146>、スクリン<7735>の半導体株が高い。神戸製鋼所<5406>、JFE<5411>の鉄鋼、三菱マテリアル<5711>、UACJ<5741>の非鉄金属のほか、SMC<6273>、日ペHD<4612>など景気敏感株や中国関連株が堅調。ソフトバンク<9434>との業務提携が材料視されたソースネクスト<4344>、国内証券の新規買い推奨を受けて富士紡HD<3104>が急伸。OBC<4733>は決算を手掛かりに大幅高となっている。 一方、イビデン<4062>、太陽誘電<6976>のハイテクの一角のほか、直近買われていた三菱自動車<7211>、マツダ<7261>などの自動車が軒並み下落。サイボウズ<4776>は月次業績を受けて急落。KOA<6999>、富士通ゼネ<6755>、シマノ<7309>、コメリ<8218>は決算を材料に大幅に下落。IHI<7013>は共同開発に参画していたエアバス小型機に搭載されているエンジンに関するネガティブな報道で大きく下落している。 セクターで輸送用機器、ゴム製品、海運が下落率上位に並んでいる一方、鉄鋼、パルプ・紙、電気・ガスが上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の53%、対して値上がり銘柄は40%となっている。 米ダウ平均が12日続伸と連騰記録をさらに伸ばした。ただ、日米ともに株価の動きは鈍くなってきている。日本時間27日の午前3時には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表され、その後はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見が控えている。今会合での0.25ポイントの利上げはほぼ完全に織り込まれているため、結果自体にサプライズはないだろう。一方、注目されるのはパウエル議長の会見だ。次回9月会合では約8割の確率で利上げの停止が予想されており、今回の7月会合で利上げサイクルは終了するとの見方がコンセンサスになっている。 直近の米消費者物価指数(CPI)などの物価指標の鈍化傾向を見る限り、実際、こうした市場コンセンサスの見方は後から振り返ってみれば間違っていなかったとなる可能性は高い。パウエル議長も本心ではもう利上げを今回で最後にしてもいいと思っているかもしれない。しかし、今回の会見はまだタカ派色の濃い内容のままに終わりそうだ。 CPIの鈍化は続いているが、コアCPIの鈍化ペースは緩慢で、FRBの2%の目標も依然として大幅に上回っている。労働市場の逼迫の緩和ペースも遅く、雇用関連の指標の堅調さは特に際立っている。また、中国景気対策の期待や米経済のソフトランディング(軟着陸)期待からWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物(期近物)は4月以来となる1バレル=80ドル超えを窺う水準にまで上昇してきている。これまでCPIの大幅な鈍化に最も寄与してきたのはエネルギー価格であるため、足元の原油市況の上昇は今後のCPIの鈍化一服を示唆する。 こうした不確実性が残るなか、パウエル議長が利上げ停止をほのめかすことはまずないだろう。ましてや現在の米株式市場は主要株価指数が最高値奪回を目指す勢いで上昇している局面にある。このような状況下で利上げ停止を示唆すれば、株高が勢いづき、資産効果で消費が拡大し、インフレ再燃とうい最悪のシナリオの可能性が高まってしまう。 そのため、今会合でのパウエル議長の会見は引き続きタカ派な内容となろう。9月会合以降の追加利上げについては明言しないだろうが、従来通り、今後の経済データ次第というスタンスを維持するだろう。日米ともに株価指数が高値圏にあるなか、予想通りの会見内容になった場合に市場がどのような反応を見せるか見物だ。 前日は通称「GAFAM」と呼ばれる米IT大手の一角であるアルファベットとマイクロソフトが決算を取引終了後に発表した。アルファベットは予想を上回る決算が好感され、時間外取引で大きく上昇。一方、マイクロソフトは予想を上回る決算だったが、生成AI(人工知能)サービス強化に向けた設備投資の拡大によるコスト増加に対する懸念から売られている。アルファベットはマイクロソフトの生成AIサービスの台頭により、主力の検索エンジンでの広告収入への影響が懸念されていた一方、マイクロソフトは相次ぐ生成AI関連サービスの投入で事前の期待が高まっていた。株価もマイクロソフトが足元で上場来高値を更新していた一方、アルファベットは2022年2月に付けた高値をまだ上回れないでいた。 ここから改めて読み取れるのは、事前の期待値の高い銘柄の決算ハードルはかなり高いということだ。これまでに発表済みの決算を振り返っても、良好な内容でも期待値が高い銘柄の大半は売りが先行している。 こうした観点から考えると、本日の引け後に決算発表を予定しているアドバンテスト<6857>は非常に注目だ。四半期決算では冴えない内容が続いてきた一方、生成AI関連の筆頭格として株価は大幅な上昇を続けてきた。しかし、蘭ASMLホールディングや台湾積体電路製造(TSMC)の決算を背景に、半導体関連株への期待値は後退している。一方でアドバンテストの株価は依然として上場来高値圏にある。日経平均への寄与度も大きいため、同社が決算で高いハードルを越えられるかどうかを注視したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/26 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は反落、高まる景気楽観論、危うさはらむ *12:19JST 日経平均は反落、高まる景気楽観論、危うさはらむ  日経平均は反落。94.97円安の32605.97円(出来高概算6億6233万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でダウ平均は183.55ドル高(+0.52%)と11日続伸、ナスダック総合指数は+0.18%と3日ぶり反発。予想を上回る改善を見せた7月製造業の購買担当者景気指数(PMI)やエネルギーのシェブロンの好決算を背景に景気敏感株が相場をけん引した。一方、金利の上昇などを背景にハイテクの上値は重かった。前日に大幅高となっていた日経平均は反動も意識され4.45円高と小幅高でスタート。すぐに下落に転じると朝方に140円近くまで下げ幅を広げる場面があった。ただ、景気敏感株を中心とした買いが相場を支えたほか、今週に控える多くのイベントを前に持ち高を傾ける動きも限られ、その後は軟調ながらも下値は限定的な展開となった。 個別では、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>の半導体のほか、キーエンス<6861>、ニデック<6594>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、芝浦メカトロニクス<6590>などのハイテク・グロース(成長)株が下落。東証プライムの下落率上位にはメドレー<4480>、ラクスル<4384>、Sansan<4443>など中小型グロース株が入った。インソース<6200>は業績上方修正も出尽くし感から大幅安となった。 一方、前期業績を上方修正したレーザーテック<6920>は買い先行後に伸び悩んだが上昇で終えている。半導体ではソシオネクスト<6526>も大幅高。業績上方修正が評価された三菱自動車<7211>が大きく上昇し、日産自<7201>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>など自動車が高い。川崎汽船<9107>、郵船<9101>の海運、三菱UFJ<8306>、りそなHD<8308>の銀行など景気敏感株が全般堅調。原油市況の上昇や中国の景気対策への期待からINPEX<1605>、ENEOS<5020>、住友鉱<5713>、大阪チタ<5726>などの鉱業、石油・石炭製品、非鉄金属などの上昇も目立つ。ほか、日ペHD<4612>、安川電機<6506>、ダイキン<6367>など中国売上比率の高い銘柄も堅調。今期ガイダンスが好感されたGenkyDrugStores<9267>、株主優待を拡充したコジマ<7513>などは急伸している。 セクターで保険、その他製品、空運が下落率上位に並んでいる一方、鉱業、石油・石炭製品、非鉄金属が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の40%、対して値上がり銘柄は56%となっている。 米ダウ平均が11日続伸と6年5カ月ぶりの連騰記録を見せた一方、前日に日本銀行の政策修正観測の後退を背景とした為替の円安を追い風に大幅上昇した日経平均は反動安が優勢の展開となっている。今晩から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)や週末にかけて控える日銀金融政策決定会合、そして徐々に本格化していく企業決算を前に積極的な売買を手掛けにくい様子。前日も東証プライム市場の売買代金は3兆円割れと、値幅の割に商いは活発とはいえなかった。 本日は前日に続き景気敏感株が相場の主役となっている。前日は為替の円安を背景に自動車関連が大きく上昇したが、本日も三菱自動車工業<7211>の決算などを材料に自動車関連は全般強い動きとなっている。また、業績上方修正を受けて前日ストップ高となった東京製鐵<5423>は本日も小幅ながら続伸、JFEホールディングス<5411>、神戸製鋼所<5406>なども続伸するなど鉄鋼も堅調な展開が続いている。 鉄鋼以外にも原油市況の上昇を受けて鉱業、石油・石炭製品、非鉄金属などの景気敏感セクターが軒並み高い上昇率となっている。中国政府が不動産セクターの緩和策や地方政府の債務削減策を講じる方針と伝わったことが追い風になっているようだ。また、前日に発表された米7月製造業の購買担当者景気指数(PMI)が49.0と、6月(46.3)から低下すると想定していた市場予想(46.2)に反して大幅に改善したことや、米エネルギー会社のシェブロンの好決算などを背景に米ダウ平均が連騰劇を見せたことも景気敏感株の支援材料になっているもよう。 一方、対象的に半導体を中心としたハイテク株はこれまでの好調さから転じて一服感がより鮮明になっている。前期業績の上方修正を発表したレーザーテック<6920>も伸び悩むなど株価反応は冴えない。蘭ASMLホールディングや台湾積体電路製造(TSMC)の決算を見る限り、ハイテク株が再び相場のけん引役になっていくのはハードルが高まっている印象を抱く。 代わりに景気敏感株が相場のけん引役であり続けることができればよいだろうが、これに関してはあまり楽観視できないだろう。まず、上述した米製造業PMIは改善したとはいえ、依然として景況感の拡大・縮小の境界値である50を割り込んだままだ。また、一方で製造業の低調さを相殺してきた米サービス業の7月PMIは50を上回ったままではあったが、52.4と6月(54.4)から大きく低下し、市場予想(54.0)も下回った。 さらに、欧州に目を向けるとより悲惨だ。7月ユーロ圏総合PMIは48.9と6月(49.9)からさらに悪化し、昨年11月以降で最低を記録。特に製造業が深刻で、製造業PMIは42.7と6月(43.4)から低下し、改善するとの市場予想(43.6)に反して悪化した。サービス業PMIも51.7と50は上回ったが、市場予想(52.0)を下回った。 中国の景気対策についてもこれまでと同様、市場が期待するような大規模なものが打ち出されたわけではない。総じて世界景気に対する株式市場の見方はかなり楽観的と言わざるを得ない。 日本時間27日の午前3時にはFOMCの結果公表が予定されており、その後にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見が控えている。可能性としては高くないだろうが、さらなる追加利上げに積極的な姿勢が示された場合には、今会合での利上げサイクル終了を見込んでいる市場の期待に反することになる。この場合、世界景気のソフトランディング(軟着陸)を期待している株式市場の見方とは乖離があり、やはり現在の市場のシナリオは楽観的で危うさをはらんでいると言わざるを得ない。 自動車株をはじめ日本株の追い風になっている為替の円安についても楽観視は危険だ。たしかに、観測報道の通り、今週の日銀金融政策決定会合において現行の政策が維持された場合には、一時的にさらに円安が進む可能性はある。しかし、思惑は根強く、結局、政策修正観測は次会合以降に引き継がれるだけとも言える。また、欧米の景気指標に減速感がみられるなか、いつまでも日銀の緩和策の維持だけで円安基調を語れるわけでもないだろう。足元の景気敏感株を中心とした株式市場の上昇には冷静に対応したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/25 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、後場もプラス圏での堅調推移続くか *12:12JST 日経平均は大幅反発、後場もプラス圏での堅調推移続くか  日経平均は大幅反発。396.46円高の32700.71円(出来高概算6億3817万株)で前場の取引を終えている。 前週末21日の米国株式市場のダウ平均は2.51ドル高(+0.01%)と小幅高。景気見通しへの楽観的な見方を背景とした買いが続いた。ただ、ナスダックは大型ハイテク株の優位性を低下させることを目的としたナスダック100指数のリバランスを24日に控えていることや大口オプション期日を迎えたことで、終盤にかけ調整的な取引が強まった。ナスダック指数は小幅安、もみ合い展開となった米株市場を横目に、7月24日の日経平均は前週末比343.89円高の32648.14円と3日ぶりの大幅反発でスタート。その後は堅調に推移している。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が上昇。JR東<9020>やJR西<9021>などの鉄道株、出光興産<5019>やENEOS<5020>などの石油関連、三井物産<8031>や三菱商事<8058>などの商社株も堅調に推移した。また、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、ファーストリテ<9983>、日本製鉄<5401>、ソニーグループ<6758>なども上昇した。そのほか、通期業績予想が想定以上の上方修正となった東京製鐵<5423>が急騰、自社株買い発表で需給下支え期待が先行した技研製作所<6289>も急上昇、合同製鐵<5410>、RPAホールディングス<6572>、そーせい<4565>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、金融政策維持の見方が強まって三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの銀行株が軟調に推移、川崎船<9107>や商船三井<9104>などの海運株の一角も下落した。みずほ<8411>、ダイキン<6367>なども下落。ほか、前週末急騰した宮越ホールディングス<6620>が利食い売り優勢から値下がり率トップに、業績予想の上方修正を発表したものの材料出尽くし感が優勢となったISID<4812>が大幅下落、ネクステージ<3186>、JCRファーマ<4552>、芝浦メカトロニクス<6590>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、鉄鋼、鉱業、輸送用機器が上昇率上位となった一方で、銀行業、海運業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の84%、対して値下がり銘柄は13%となっている。 本日の日経平均はシカゴ先物にサヤ寄せする格好から買いが先行、その後はプラス圏で堅調に推移している。ただ、ナスダック100先物のリバランス影響を見極めたいとの向きもあると見られ、積極的に買い進む動きにはなりにくいとの声もきかれている。 新興市場は堅調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、じりじりと上げ幅を広げている。前週末に大幅下落となった分の押し目買いが優勢に。ただ、為替の円安が再び進行するなか、決算発表が本格化するため東証プライム銘柄中心に注目が集まっており、新興株は相対的に冴えないパフォーマンスになっている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.66%高、東証グロース市場Core指数は0.90%高。 さて、今週は注目イベントが多数ある。24日に米国のナスダック100指数のリバランス実施、25日に米FOMC(米連邦公開市場委員会)やIMF(国際通貨基金)の世界経済見通し、26日にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長会見、米国の6月新築住宅販売件数、27日に米4-6月期GDP(国内総生産)速報値、28日に米国の6月個人所得、などの発表が予定されている。国内では、27日-28日に日銀金融政策決定会合、28日には植田日銀総裁の会見が予定されており、明日以降のイベントに備えて様子見姿勢を強めている投資家が多いだろう。 ナスダック100指数のリバランスでは、アップルやテスラなど大型ハイテク株7銘柄の構成比を見直す。構成比は、現在の56%弱から約44%程度に下がるようだ。ナスダックのウェブサイトに掲載された文書によると、指数の最大構成銘柄群の割合があらかじめ設定された基準値を超えた場合、特定の状況下で特別なリバランスが実施されるという。JPモルガン・チェースのストラテジストによると、リバランスにより中小型の構成銘柄の存在感が高まる見込みで、双方向の取引は600億ドル(約8兆4000億円)に達する可能性があるようだ。今週は、大型ハイテク株よりも中小型の構成銘柄の値動きに注目が集まりそうだ。 話は変わって、米FOMCと欧州中央銀行(ECB)はいずれも政策金利を0.25ポイント引き上げると予想されている。CME FedWatch ツールでは、25日開催の7月FOMCでの0.25ポイントの利上げがほぼ100%織り込まれている。ただ、FRBは6月FOMCで公表した政策金利見通し(ドットチャート)で年内2回の追加利上げを示したほか、パウエル議長も度々年内残り2回の追加利上げを主張していた。実際、パウエル議長とECBのラガルド総裁はいずれも、インフレは依然として高過ぎるとこれまで警告していた。 今回の会合後は、追加利上げを実施する可能性が高いか、はたまた長期の利上げ休止を計画しているか、政策当局者からのシグナルに大きな注目が集まっている。現状、次回9月FOMCでは据え置きが8割以上の確率で織り込まれている。仮に、パウエル議長が従来からの姿勢を維持して年内最後の利上げ可能性を示唆した場合にはタカ派サプライズとなり、株価にネガティブな影響があることは頭の片隅に置いておきたい。 そのほか、日本取引所グループが前週20日に発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は7月第2週(10~14日)に現物株を2793億円買い越しており、3週連続で買い越したことが明らかになった。一方、個人投資家は1801億円の買い越しで2週連続の買い越し。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は2603億円の売り越しだった。国内では主力企業の決算発表を控える中ではあるが、引き続き海外勢の動きに加えて個人投資家の動向にも注意しておきたい。 さて、後場の日経平均はプラス圏での推移を継続できるか。前述のように今週は注目イベントが多いほか、国内外の企業決算が本格化することから、積極的な買いを手控える向きもありそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/07/24 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続落、TSMC決算受けて半導体株の先行きに不透明感 *12:16JST 日経平均は続落、TSMC決算受けて半導体株の先行きに不透明感  日経平均は続落。72.60円安の32417.92円(出来高概算6億2025万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は163.97ドル高(+0.46%)と9日続伸、ナスダック総合指数は-2.05%と4日ぶり大幅反落。週次失業保険申請件数が2カ月ぶりの低水準となり景気後退懸念の緩和で買いが先行。良好な企業決算も支援材料にダウ平均は終日堅調に推移。一方、金利の大幅上昇やテスラなど一部ハイテク決算への失望感でナスダック指数は終日軟調だった。米株安を受けて日経平均は153.66円安からスタート。半導体などハイテク株を中心に序盤は売りが先行し、一時32080.95円(409.57円安)まで下げ幅を拡大した。ただ心理的な節目を前に切り返すと、為替の円安や景気敏感・ディフェンシブなセクターへの買い、一部企業の好決算を支援材料に前引けまで下げ幅を縮める流れとなった。 個別では、台湾積体電路製造(TSMC)の決算が嫌気され、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、スクリン<7735>などが大きく下落。イビデン<4062>、太陽誘電<6976>、安川電機<6506>などハイテクも軟調。一方、ディスコ<6146>は市場予想を下回る決算だったが単体速報で織り込み済み、生成AI(人工知能)関連需要へのコメントなどが好感され朝安後に上昇に転換。予想を大幅に上回る好決算となったニデック<6594>は大幅高。業績予想を上方修正したGenkyDrugStores<9267>、アルインコ<5933>、スイスの製薬企業の日本事業を買収したそーせい<4565>、国内証券の新規買い推奨が確認されたミダックHD<6564>などは急伸。ほか、NTT<9432>、KDDI<9433>の通信、武田薬<4502>、第一三共<4568>の医薬品、INPEX<1605>、JFE<5411>、クボタ<6326>の景気敏感、マツダ<7261>、三菱自<7211>の自動車が堅調。 セクターで海運、金属製品、銀行が下落率上位に並んでいる一方、医薬品、電気・ガス、パルプ・紙が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の46%、対して値上がり銘柄は49%となっている。 前日の米株式市場ではナスダック総合指数が-2.05%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-3.62%と久々に大幅な下落率となった。ナスダックについては電気自動車のテスラと動画配信サービスのネットフリックスの決算が市場の期待値に届かなかったことが要因の一つとして挙げられる。両社ともに株価は年始からすでに大幅に上昇していたこともあり、利益確定売りが膨らみ、テスラは-9.7%、ネットフリックスは-8.4%とそれぞれ大きく下落した。 SOX指数については、半導体受託製造の世界最大手で米エヌビディアを大口顧客にもつ台湾積体電路製造(TSMC)の決算が大きな要因だ。TSMCは前日に第2四半期(4-6月)決算を発表。四半期ベースでは約4年ぶりの減収減益となったが、売上高や利益は市場予想を上回った。しかし、7-9月期のガイダンスは主要項目が軒並み市場予想を下回った。また、2023年12月期通期の売上高について1桁の前半から半ばの減少としていた計画を10%前後の減少に下方修正した。生成AI(人工知能)で盛り上がっていた半導体株ブームはいったん小休止となりそうだ。 一方、前日に第1四半期(4-6月)決算を発表したディスコ<6146>は下げ渋って上昇に転じている。営業利益は前年同期比21.4%減と市場予想を下振れたが、先んじて発表済みの単体速報で概ね織り込み済みだったようだ。一方で、7-9月期の出荷額ガイダンスが期待値を上振れたこと、生成AI関連需要が早ければ第3四半期(10-12月)には出荷に貢献してくる可能性が示されたことが好感されたようだ。 ただ、ディスコは生成AI関連需要の具体的な規模については非開示としており、依然として期待先行の印象が強い。パワー半導体という強力な支援材料がもう一つ備わっていることもあり、ディスコの決算反応を半導体株全体に当てはめない方がよいだろう。 他方、本日の日経平均は寄り付き直後に400円超安となったところから切り返し、ほぼ下げを帳消しにしてきている。為替の円安効果も大きいが、ダウ平均の連騰劇を受けて景気敏感セクターに買いが入っていることが半導体株安の影響を和らげているようだ。医薬品や電気・ガス、建設、食料品などディフェンシブなセクターも買われており、東証プライム市場の騰落状況をみても値上がり銘柄数が僅かながら値下がり銘柄数を上回っている。 ただ、改めて生成AIブームで盛り上がっていた半導体株については、今回のTSMCの決算を受けて、いったん上昇一服の局面に入っていく可能性が高そうだ。半導体株は相場のけん引役であったため、チャートが悪化している日経平均などの好転もしばらく見込みにくいと考えられる。この間、本日のように景気敏感セクターやディフェンシブなセクターが買われ全体を支えてくれれば指数の下値は支えられるだろうが、こうした構図が長く続くかはやや心もとない。 来週からは国内でも企業の決算発表が本格化してくる。前日に東証プライム市場の売買代金が5月11日以来の3兆円割れとなるなど、足元では商いの低調が気がかりだ。決算シーズンにより再び売買が活発化してくるか、その際に商いを伴って日経平均やTOPIX(東証株価指数)が25日移動平均線など上値抵抗線を超えられるかが今後の焦点となろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/21 12:16

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