ランチタイムコメントニュース一覧

ランチタイムコメント 日経平均は反発スタートなるも、再び節目32000円を下回る *12:26JST 日経平均は反発スタートなるも、再び節目32000円を下回る  日経平均は反発。285.28円高の31944.31円(出来高概算5億7812万株)で前場の取引を終えている。 16日の米国株式市場のダウ平均は314.25ドル高(+0.93%)、ナスダック総合指数は160.75ポイント高(+1.20%)、S&P500は45.85ポイント高(+1.06%)とそれぞれ上昇。米政府、同盟国が中東情勢を巡り外交的解決に向け努力しており、大きな情勢悪化が見られない現状を好感し上昇。グールズビー米シカゴ連銀総裁がインタビューで、インフレ鈍化基調を認めたため金利先高観が後退しハイテクも買われた。米株高につられる形で17日の日経平均は404.76円高の32063.79円と3日ぶり反発して取引を開始した。ただ、中東情勢の緊迫化が株価の重しとなり徐々に下落基調へ。前場中ごろには再び節目となる32000円を下回った。 個別では、前日発表の中期経営計画が高評価となった西本WISMETTACHD<9260>がストップ高。RPAHD<6572>が上昇。Gunosy<6047>、アトラエ<6194>、anfac<7035>、DmMiX<7354>、トランザクション<7818>、ギフトHD<9279>らも上昇した。昨日でジャニーズ事務所が事実上の閉鎖となり類似企業に業績拡大のチャンスが訪れるとの思惑からエムアップHD<3661>、SKIYAKI<3995>などが上昇。リョーサン<8140>との経営統合正式発表で菱洋エレクトロ<8068>が大幅上昇、リョーサンも買い先行の動きとなった。東証スタンダードでは、テーオーHD<9812>が年初来高値更新、東京衡機<7719>も上昇。東証グロースでは、アルファクス・フード・システム<3814>がストップ高、カルナバイオサイエンス<4572>も大幅上昇となっている。 一方、前日発表の決算が嫌気された日本国土開発<1887>、テラスカイ<3915>、古野電気<6814>、日置電機<6866>らが下落したほか、ヨシムラフード<2884>、DDグループ<3073>、インテージHD<4326>、イオンファン<4343>、M&A総研<9552>らが下落率上位に並んだ。東証スタンダードでは、ギグワークス<2375>や鉄人化計画<2404>らが下落、東証グロースでは、データHR<3628>やバリュエンス<9270>らが下落した。 セクター別では、サービス業、精密機械が上昇をけん引。一方で、パルプ・紙、石油・石炭製品、非鉄金属が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 本日の日経平均株価は、前日の米株高を足掛かりに反発スタートとなったものの上値は重く、再び32000円を下回って前引けを終えた。前日の米国株式市場は上昇し、中東情勢をめぐる外交的努力に一定の評価を示した形とはなった。昨日発表されたNY連銀製造業景況指数は前月から低下ししたものの、市場予想は上回っていたことから、特にネガティブ視はされなかったようだ。 ただ、イラン外相が戦線拡大を示唆するなど、決して楽観視できない状況が続いている。ドル・円は1ドル=150円手前で膠着状態となっているが、ここのところ日本の為替介入の有無に関し、鈴木財務相や神田財務官の発言が報道で取り上げられており、急激な動きには警戒したい。今晩は米国で9月小売売上高の発表を控えており、後場はこれを見極めたいとして大きな動きは控えられそうだ。引き続き個別の動きが見られている決算関連に注目するのも一手だろう。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/17 12:26 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、先行き不透明感強まり節目の32000円を下回る *12:12JST 日経平均は大幅続落、先行き不透明感強まり節目の32000円を下回る  日経平均は大幅続落。529.21円安の31786.78円(出来高概算6億6030万株)で前場の取引を終えている。 前週末13日の米国株式市場のダウ平均は39.15ドル高(+0.12%)と反発。銀行のシティやJPモルガンなどの好決算を好感。その後、ボーイングの下落や10月ミシガン大学消費者信頼感指数の悪化を嫌気した売りに押され、ダウは一時下落に転じたが、底堅く推移した。一方でハイテク株は根強い金利先高観に手仕舞い売りが優勢となり軟調推移を継続、まちまちとなった米株市場を横目に、16日の日経平均は前週末比332.95円安の31983.04円と大幅続落でスタート。節目の32000円を下回り、その後はマイナス圏で軟調に推移した。 個別では、東エレク<8035>などの半導体関連株、川崎汽船<9107>や郵船<9101>などの海運株が軟調に推移。また、日本航空<9201>やANAホールディングス<9202>などの空運株、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、トヨタ自<7203>、ソフトバンクG<9984>、ディスコ<6146>、ソニーG<6758>、三菱商事<8058>などが下落した。業績予想上方修正も想定線で出尽くし感が先行しているDDグループ<3073>がストップ安。ほか、東名<4439>、マネーフォワード<3994>、ベイカレント<6532>が下落率上位となった。 一方、INPEX<1605>や石油資源開発<1662>などの石油関連株が堅調に推移、三井物産<8031>、ローソン<2651>、SHIFT<3697>なども上昇した。そのほか、今期は想定以上の大幅増益見通しを好感された良品計画<7453>、6-8月期の営業利益回復確認で買い安心感が台頭したIDOM<7599>が大幅高となっている。サインポスト<3996>、ヨシムラフード<2884>、Gunosy<6047>などが値上がり率上位となった。 セクターでは、空運業、機械、陸運業が下落率上位に並んでいる一方で、鉱業、石油・石炭製品、パルプ・紙が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の12%、対して値下がり銘柄は86%となっている。 本日の日経平均株価は、引き続き先週の大幅なリバウンドに対する反動に加えて、米ハイテク株安を受けて東京市場でも半導体関連株など値がさハイテク株を中心に売りが広がっている。また、中東情勢の一段の緊迫化なども警戒されているようだ。そのほか、原油先物価格の上昇でインフレが再燃するとの懸念も台頭している。中国・上海株式市場も、中国景気の先行きや中東情勢を巡る不透明感が根強く、軟調に推移している。 中東の地政学リスクは引き続き不安定材料として横たわっている。地上戦への移行で戦線の拡大が懸念されており、ブルームバーグ・エコノミクスによれば中東で紛争が拡大すれば世界的なリセッション(景気後退)につながる恐れがあるとの見方もある。イスラエルはパレスチナ自治区ガザでの「大規模な地上作戦」を準備していることを明らかにしており、実際に地上侵攻すればイランの関与を招く可能性がある。一方で米国は、ここ数日にイランと非公式ルートで協議を実施しているようで、ブリンケン米国務長官は16日にイスラエルを再び訪問して協議を実施する予定。バイデン米大統領も、イスラエルのネタニヤフ首相との電話会談での招待を受けて、数日中の同国訪問を検討しているという。ひとまず、イスラエルの地上侵攻の動向を注視して見守る必要があろう。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調推移が続くか。東証業種別株価指数もほとんどの業種が前営業日比で下落、プライム市場では1584銘柄と86%が下落しており、引き続き好決算を発表した企業への物色が中心となりそうだ。一方で、東証マザーズ指数は10月4日につけた安値677.80ptを下回って年初来安値664.36ptをつけた。米長期金利は4.6%台まで下落しているものの、ナスダックの大幅安や原油価格が上昇してインフレ長期化への警戒が広がったこと、中東情勢の不透明感などを受けて新興株を手掛けにくい地合いが続いている。後場のマザーズ指数は、下値模索の展開となろう。(山本泰三) <AK> 2023/10/16 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は反落、インフレ長期化懸念や米金利高が重しに *12:19JST 日経平均は反落、インフレ長期化懸念や米金利高が重しに  日経平均は反落。137.90円安の32356.76円(出来高概算7億761万株)で前場の取引を終えている。 12日の米国株式市場のダウ平均は173.73ドル安(-0.51%)、ナスダック総合指数は85.46ポイント安(-0.63%)、S&P500は27.34ポイント安(-0.62%)とそれぞれ反落。9月消費者物価指数(CPI)が予想を上回る伸びとなったため高インフレ長期化への懸念が広がった。また、30年債入札の低調な結果を受けて金利が急伸すると相場は大きく下落。主要株式指数がそろって下落した米株市場を横目に、13日の日経平均は166.27円安からスタート。朝方に下げ幅を縮小した後は一時プラス圏に浮上するも買いは続かず、こう着感の強い展開となった。 個別では、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株が軟調に推移。また、レーザーテック<6920>、トヨタ自<7203>、ソフトバンクG<9984>、ディスコ<6146>、ソニーG<6758>などが下落した。第1四半期大幅減益決算がネガティブインパクトとなった三光合成<7888>がストップ安、決算サプライズないが米国事業の不透明感などが残った7&iHD<3382>が大幅下落となった。ほか、ブックオフGHD<9278>、セントラル警備保障<9740>、サーバーワークス<4434>が下落率上位となった。 一方、ファーストリテ<9983>、東エレク<8035>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>なども上昇した。そのほか、今期の連続2ケタ増益見通しなどを好感されたマニー<7730>、通期予想は想定以上の上方修正となった竹内製作所<6432>が大幅高となっている。明光ネットワークジャパン<4668>、PRTIMES<3922>などが値上がり率上位となった。 セクターでは、その他製品、ゴム製品、輸送用機器が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の8%、対して値下がり銘柄は90%となっている。 日経平均株価は昨日までの3営業日で1500円近く上昇しており、本日は短期的な戻り待ちの売りが出やすかった。また、米9月CPIが予想をやや上回る伸びとなったほか、米長期金利が一時4.7%まで上昇するなど、国内の投資家心理にネガティブに働いている可能性がある。一方、昨日はダウ平均が一時350ドル近く下落した後に下げ幅を縮める展開となったことが東京市場で一定の安心感となった。さらに、国内で小売り・サービスを中心とする消費関連株の四半期決算発表がピークとなっており、好業績銘柄への物色意欲が相場の支えとなっている。 なお、米9月の消費者物価指数は前年同月比3.7%上昇(予想3.6%上昇)と予想をやや上回ったものの8月から横ばいとなった。変動が大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは同4.1%上昇と8月の4.3%上昇から6か月連続で伸びは鈍化した。全体的には、エネルギーコストが押し上げたほか、住居費や自動車保険、スポーツイベントのチケットといった娯楽サービスの価格上昇も反映された。直近では、FRB関係者のハト派発言が注目されるようになったが、9月のFOMCでは19人の政策決定当局者のうち12人が年内の追加利上げを支持する意向を示していることもあり、今後の姿勢に再度注目が集まろう。そのほか、CME FedWatch ツールでは、11月会合での利上げ確率は9.8%とほとんどが政策金利の据え置きを想定している。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調推移が続くか。中国や香港指数などのアジア市況も軟調に推移しており、米株価指数先物の値動きに注目しておきたいところ。東証業種別株価指数も全業種が前日比で下落しており、好決算を発表した個別株中心に物色が続きそうだ。テクニカル的には、25日移動平均線上方で推移しており、後場に同線で踏みとどまれるか注視しておきたい。一方で、東証マザーズ指数は朝方に節目の700ptを下回ると大きく下げ幅を広げており、米長期金利の上昇がバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の重しとなっている。後場では新興株も一部の好決算銘柄に物色が継続するか注目が集まりそうだ。(山本泰三) <AK> 2023/10/13 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、米金利低下によるハイテク株上昇が下支え *12:28JST 日経平均は続伸、米金利低下によるハイテク株上昇が下支え  日経平均は続伸。386.77円高の32323.28円(出来高概算6億6127万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でダウ平均は65.57ドル高(+0.19%)、ナスダック総合指数は+0.71%とそれぞれ4日続伸。米10年債利回りが2週間ぶりに4.5%台半ばまで低下し、これを好感しハイテク銘柄を中心に株価は上昇した。米国株高を引き継ぐ形で12日の日経平均は184.43円高からスタート。序盤に32355.40円(418.89円高)まで上げ幅を広げた後は騰勢一服し、前場の取引を終えている。 個別では、好調な決算内容からローツェ<6323>がストップ高買い気配、サイゼリヤ<7581>がストップ高。FPパートナー<7388>や吉野家HD<9861>も大幅反発となっている。また、イビデン<4062>、トリケミカル<4369>、フジミインコ<5384>、サムコ<6387>、ソシオネクスト<6526>、芝浦メカトロニクス<6590>など半導体関連が上昇した。その他、安川電機<6506>、大阪ソーダ<4046>、エンプラス<6961>らが上昇。全銀システム障害がほぼ解消され通常取引が再開した三菱UFJ<8306>も上昇した。東証スタンダードでは幸和製作所<7807>がストップ高買い気配となった。 一方、決算からコシダカHD<2157>、ライク<2462>、ABCマート<2670>、トレファク<3093>、コスモス薬品<3349>らが大幅下落。そのほか、DDグループ<3073>、ライフドリンクC<2585>、リズム<7769>、マネックスG<8698>が下落。東証スタンダードではケイブ<3760>、東証グロースではシリコンスタジオ<3907>、キャスター<9331>が下落。 セクターでは電気機器、機械、輸送用機器が上昇率上位に並んでいる一方、海運、石油・石炭製品、鉱業が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は35%となっている。 本日の東京株式市場は、前日の米国市場での米長期金利の低下を受けたハイテク株上昇が下支えとなり、半導体銘柄を中心に大幅上昇となった。ただ、日経平均が昨日までの2日間で900円を超す上げとなったことから、短期的な戻り待ちの売りが出やすかった。 なお、取引開始前に発表された8月の機械受注統計は、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)が前月比0.5%減だった。判断は10ヶ月連続で「足踏みがみられる」とされた。また、日本銀行の野口旭審議委員は本日新潟で行われた講演で、金融政策運営について「当面の使命は粘り強い緩和の継続」と述べた。現行の大規模緩和政策の必要性を改めて示しており、日本銀行の金融政策転換はまだ先とみられる。 米国では本日(日本時間21:30)9月消費者物価指数(CPI)が発表予定となっており、後場はこれを見極めたいとして小動きとなりそうだ。小売セクターから好決算で物色されて大幅反発銘柄も目立っており、本日決算発表が行われる松屋<8237>などは注目しておきたい。(二階堂千穂) <AK> 2023/10/12 12:28 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、短期筋主導のなか戻り一服も意識 *12:11JST 日経平均は続伸、短期筋主導のなか戻り一服も意識  日経平均は続伸。170.95円高の31917.48円(出来高概算6億1693万株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でダウ平均は134.65ドル高(+0.40%)、ナスダック総合指数は+0.58%とそれぞれ3日続伸。中国の景気刺激策への期待や金利先高観の後退で買いが先行。アトランタ連銀総裁が利上げ打ち止めを再表明すると金利が一段と低下し、相場の上昇を後押しした。米長期金利の低下や米国株高を引き継いで日経平均は100.57円高からスタート。序盤に31949.49円(202.96円高)まで上げ幅を広げたが、前日に750円超も上昇しているため短期的な過熱感が意識され、その後は騰勢一服。一方、今晩の米卸売物価指数(PPI)の発表を前に持ち高を傾ける動きは限られたほか、中国の景気対策期待も支えにプラス圏でのもみ合いが続いた。 個別では、米長期金利の低下を好感しレーザーテック<6920>やアドバンテスト<6857>、芝浦メカトロニクス<6590>、三井ハイテック<6966>、HOYA<7741>、東京精密<7729>、ローム<6963>などのハイテクが高い。ANYCOLOR<5032>、メルカリ<4385>などグロース(成長)株の一角も上昇。前日に原油高を通じて大きく売られたANA<9202>、JAL<9201>が反発。先週の下落がきつかったSUBARU<7270>、マツダ<7261>などの自動車関連は本日も買い戻しが優勢。ほか、東京電力HD<9501>を筆頭に電力株が堅調。決算ではJフロント<3086>、リソー教育<4714>などが大幅に上昇。 一方、前日に急伸した川崎汽船<9107>の海運のほか、東京製鐵<5423>、日本製鉄<5401>の鉄鋼が大きく下落。日米長期金利の低下を受けて三井住友<8316>など銀行が軟調。中国が新たな景気対策を検討との報道が伝わっているが、安川電機<6506>、SMC<6273>、ダイフク<6383>、キーエンス<6861>などは下落している。増資による一株当たり利益の希薄化が懸念された日本ケミコン<6997>が急落。月次売上動向が鈍化したMonotaRO<3064>、決算が低調だったタマホーム<1419>、イオンFS<8570>なども大幅安。 セクターでは輸送用機器、精密機器、空運が上昇率上位に並んでいる一方、海運、鉄鋼、不動産が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の27%、対して値下がり銘柄は69%となっている。 本日の東京株式市場は、前日に日経平均が今年最大の上げ幅を記録した直後にもかかわらず、急伸の反動をこなして底堅い動きを見せている。先週4日に30500円割れまで急落した日経平均は、9月15日終値からわずか3週足らずの間に3000円超も下落した。この間に、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの短期筋の持ち高は一気にネットロング(買い越し)からネットショート(売り越し)へと転じたとの試算もある。 ポジションが身軽になった状態で、米雇用統計を無難に消化し、警戒されていた米長期金利も低下に転じたことで、短期筋は一気に再び買い越しに転じてきているもよう。前日の先物手口などをみても、ドイツ証券やバークレイズなどシステマティックな売買を主体とする向きと思われる買い越しが目立った。ただ、前日10日の東証プライムの売買代金は3兆円台半ばにとどまっており、日経平均が今年最大の上げ幅を記録した割には物足りない水準だ。買いの主体はあくまで短期筋に限定され、実需筋はまだ先行きに懐疑的なようだ。 日経平均は32000円近くまで上昇してきたことで戻り一服感なども意識されやすいところ。32000円は累積売買代金からみて商いが最も集中している価格帯で、この水準では戻り待ちの売りも出やすくなってくる。また、東京証券取引所が公表している空売り比率(規制あり・規制なし合計)は6日の43.3%から10日には38.0%まで低下。過去の推移をみてもボトム圏に近い水準にまで低下しており、ここからの一段の株価上昇には追加材料が必要だろう。 今晩は注目の米9月卸売物価指数(PPI)が発表される。総合は前年同月比+1.6%と8月(+1.6%)から横ばいの一方、モメンタムを示す前月比は+0.3%と8月(+0.7%)から鈍化する見込み。食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比では+2.3%と8月(+2.2%)から小幅に加速する予想も、前月比では+0.2%と8月(+0.2%)と同じ伸びにとどまる見込みだ。総じてインフレの鈍化基調を再確認する結果が予想されており、予想通りの結果となれば、株式市場のリバウンド機運の追い風となりそうだ。 一方、9月以降の米長期金利の急上昇を巡っては、米景気に対する楽観的な見方やFRBの「Higher for Longer(より高く・より長く)」のスタンスを反映したものという考え方のほか、米中長期債の発行規模拡大に伴う需給の悪化や政局混迷に伴う信用リスクの高まりを反映したものとの考え方もある。後者の見方がより強く働いた結果であるのであれば、米長期金利の動向についてはまだ予断を許さない。 つなぎ予算の成立で一時的に回避されている米政府機関の閉鎖の先行きは、マッカーシー前下院議長の解任により先行き混沌としている。新しい下院議長の選任に手間取れば、再び米政府機関の閉鎖が懸念され、信用リスクの高まりを通じた米長期金利の上昇が再燃する可能性もある。 イスラム組織「ハマス」によるイスラエルへの攻撃を発端とした中東情勢の混乱についても、今のところは相場への影響は限定的だが、今後の動向次第ではイランに対する原油輸出規制の強化や石油輸送海路の遮断などのリスク要素がくすぶる。原油市況が左右する米長期金利への影響も注視する必要があろう。目先は短期強含みも、中長期ではまだ楽観には傾きにくい状況が当面続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/11 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、米株高受けて買い優勢の展開 *12:04JST 日経平均は大幅反発、米株高受けて買い優勢の展開  日経平均は大幅反発。772.08円高の31766.75円(出来高概算7億3083万株)で前場の取引を終えている。 国内連休中の米国株式市場のダウ平均は6日に288.01ドル高、9日に197.07ドル高と連日上昇。9月雇用統計では失業率が予想を上回ったほか賃金の伸びが鈍化したことを受けて金利の上昇が限定的となり、ソフトランディング期待を受けた買いも強まった。中東の地政学的リスク上昇を警戒する動きもあったが、連邦準備制度理事会(FRB)のジェファーソン副議長が政策を慎重に進める余地があると発言し、金利高懸念が後退して買戻しに拍車がかかった。ナスダック総合指数も上昇、堅調な値動きとなった米株市場を受けて、本日の日経平均は上昇スタートとなった。その後は上げ幅を広げてプラス圏での推移となっている。 個別では、レーザーテック<6920>やディスコ<6146>、東エレク<8035>などの半導体関連株、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>などの金融株が堅調に推移。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、ソニーG<6758>やメルカリ<4385>などのグロース株の一角も上昇して全面高となっている。キーエンス<6861>、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、神戸製鋼所<5406>、NTT<9432>、日本製鉄<5401>なども上昇している。そのほか、業績・配当予想上方修正を引き続き材料視された三陽商会<8011>が上昇、石油資源開発<1662>、ワキタ<8125>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、日本航空<9201>やANAホールディングス<9202>などの空運株が下落した。そのほか、マルマエ<6264>やマツオカコーポレーション<3611>、サカタのタネ<1377>などが急落、コジマ<7513>、Ubicomホールディングス<3937>、ワタミ<7522>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、鉱業、石油・石炭、海運業が上昇率上位となった一方で、空運業、水産・農林が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の87%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 今日の東京株式市場は買いが先行した。東京市場が3連休中の先週末6日と昨日9日の2日間で、米株式市場でダウ平均が大幅高となった流れを引き継いだ。また、小売り・サービスを中心とする消費関連株の四半期決算発表が本格化しており、好業績銘柄に対する物色意欲が株価を支える要因となった。ただ、中東地域での戦闘激化を受けた原油価格の上昇が、物価上昇や企業業績圧迫の要因となるとの警戒感も広がっている。なお、取引開始前に発表された8月の国際収支状況(速報)によると、経常収支は2兆2797億円の黒字。前年同月に比べ1兆6050億円黒字幅が拡大した。 一方で、新興市場は上値の重い展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄などで構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後にプラス圏で推移しているが、日経平均株価と比較すると上げ幅は限定的となっている。米長期金利は4.6%台まで下落しており、前週大幅に下落した新興株を買い戻す動きが継続している。ただ、今週は、11日に9月の米卸売物価指数(PPI)、12日に9月の米消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、これらを見極めたいとして積極的な買いを見送る向きもある。前引け時点での東証グロース市場Core指数は1.94%高、東証マザーズ指数は1.00%高となった。 さて、国内休日中の7日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した。戦闘の詳細は報道を注視しておきたいが、中東情勢の緊迫化を受けて、金やドルなどの安全資産に注目が集まっている一方で、株式も底堅い動きとなっている。先週末発表された雇用統計の結果や米連邦準備制度当局者のハト派的発言が好感されているほか、地政学リスクの高まりが金利据え置きにつながるとみられている。CME FedWatch ツールでは、次回FOMCでの金利据え置きが86.4%まで上昇、利上げ確率は13.6%まで低下している。 一方で、原油相場が急伸したことでインフレ高止まりを巡る懸念も強まっている。今回の出来事がすぐに供給への脅威になるわけではないとみられているが、イラン関与の疑いが伝えられる中でイランに対する報復の可能性が高まれば、ホルムズ海峡を巡る懸念が強まる恐れがあるという。世界の石油供給量の3分の1近くを占める中東で先行き不透明が強まっており、今後の金融市場への影響は読みにくい。今週は重要インフレ指標の発表も控えており、楽観視して株式を買い進む動きは手控えた方がよさそうだ。 さて、10月5日に発表された最新週(9月25日~9月29日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を4週連続で売り越した。売り越し金額は776億円となるなか、個人投資家は2週連続で現物株を買い越している。引き続き、海外投資家の売り越しスタンスにブレーキが掛かるか注目される。後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。本日は幅広いセクターが堅調に推移しており、プライム市場の主力株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/10/10 12:04 ランチタイムコメント 日経平均は反落、神経質ななか米雇用統計を見極めへ *12:14JST 日経平均は反落、神経質ななか米雇用統計を見極めへ  日経平均は反落。76.56円安の30998.80円(出来高概算7億7万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は9.98ドル安(-0.03%)、ナスダック総合指数は-0.12%とそれぞれ小反落。週次失業保険申請件数が予想を下回り労働市場の強さが再確認されたため、追加利上げを警戒した売りが先行。一方、原油安に加えてサンフランシスコ連銀総裁が政策金利の据え置きを示唆したことで、長期金利の落ち着いた動きが下値を支え、終盤にかけては下げ幅を縮めた。米株安や前日に急反発した反動が意識された日経平均は71.41円安からスタート。前日に続き短期的な戻りを狙った買いが入ったほか、香港株の大幅高を背景に上昇に転じる場面もあった。しかし、今晩の米雇用統計を前に様子見ムードが強く、上値では戻り待ちの売りも出たことで、前日終値を挟んだもみ合いにとどまった。 個別では、原油市況の下落基調を背景にコスト高懸念が和らいだ三菱製紙<3864>や東北電力<9506>などのパルプ・紙、電気・ガスが大きく上昇。マネックス証券とNTTドコモの資本業務提携を契機とした業界再編に対する思惑が続き、マネックスG<8698>を筆頭にマネパG<8732>など証券・商品先物取引が大幅高。金利の上昇一服を背景に住友林業<1911>、住友不動産<8830>の建設・不動産も高い。JAL<9201>、山崎製パン<2212>、武田薬<4502>、JT<2914>などのディフェンシブも堅調。川崎汽船<9107>などの海運、前日戻りの鈍かった三菱商事<8058>などの大手商社も上昇。業績・配当予想を大幅に上方修正した三陽商会<8011>はストップ高まで買われた。好決算が手掛かりとされた薬王堂HD<7679>、キユーピー<2809>、既存店売上高の動向が好感されたJINSHD<3046>も大幅高。 一方、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>が連日で大きく下落。米オープンAI社が独自のAIチップを製造する見込みとの一部報道を受け、米エヌビディアの業績に対する懸念が台頭したか、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、芝浦メカトロニクス<6590>などの半導体関連が軒並み大幅安。好決算ながらも出尽くし感が先行したオンワードHD<8016>やトーセイ<8923>、国内証券が投資判断を引き下げたUBE<4208>なども大きく下落。ほか、MSOL<7033>、M&A総研<9552>、インソース<6200>などのグロース(成長)株の下落が目立つ。 セクターでは鉱業、電気機器、機械が下落率上位に並んでいる一方、証券・商品先物取引、パルプ・紙、海運が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の24%、対して値上がり銘柄は73%となっている。 本日の東京株式市場は動きの乏しい展開。今晩の米雇用統計の発表を前に様子見ムードが強まっている。米9月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+17万人と8月(+18.7万人)から小幅に伸びが鈍化する見込み。一方、平均時給は前年同月比+4.3%と8月(+4.3%)から横ばいが予想されているが、モメンタムを示す前月比は+0.3%と8月(+0.2%)から加速する見込みだ。また、失業率は3.7%と8月(+3.8%)から低下する予想。全体的に労働市場の堅調を再確認することが事前の予想として織り込まれているため、投資家の警戒感は既に相応に高まっていると思われ、市場予想並みの結果にとどまれば、あく抜け感から株式の買い戻しが先行しそうだ。 一方、投資家の先行きに対する警戒度合いを示す恐怖指数、米VIX指数は3日、4日と連日で一時警戒モードの基準値とされる20を上回った。終値ではいずれも20を下回り、5日は18.49へと低下しているが、下向きから横ばいに転じつつある200日移動平均線を上回った状態が続いており、投資家の警戒感はくすぶっている。神経質な状態のなか、米雇用統計が市場予想を上振れてしまえば、素直にリスク回避の動き、すなわち金利上昇・株価下落が再開すると考えられるため注意が必要だ。 ほか、ここ最近、米長期金利の上昇に対して底堅さが見られていた半導体株が本日総じて弱い動きになっていることが気がかりだ。米オープンAI社が独自のAIチップを製造する見込みとの一部報道を受け、米エヌビディアの業績に対する懸念が台頭したことが背景にあるようだ。今晩の米国市場で雇用統計が上振れる可能性に加えて、米エヌビディアをはじめとした半導体株の下落もリスクとして意識されるなか、連休明け後の東京市場への警戒感は高まっている。後場も日経平均は上値の重い展開が続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/06 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は6日ぶり反発、 目先は新興株のリバウンド妙味が高いか *12:21JST 日経平均は6日ぶり反発、 目先は新興株のリバウンド妙味が高いか  日経平均は6日ぶり反発。359.63円高の30886.51円(出来高概算7億7716万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でダウ平均は127.17ドル高(+0.38%)と4日ぶり反発、ナスダック総合指数は+1.35%と反発。民間部門のADP雇用統計9月分が予想を大幅に下回ったために追加利上げ観測が後退し、ハイテク株を中心に買い戻しが強まった。ただ、政府機関閉鎖などに対する懸念が根強く、ダウ平均の上値は限定的だった。米長期金利の低下や米国株の反発を受け、目先の安心感から日経平均は206.77円高からスタート。時間外取引において米長期金利が軟化し、米株価指数先物が堅調に推移するなか買い戻し機運が高まり、日経平均は前引けまで上げ幅を拡大していく展開となった。 個別では、岡三証券G<8609>やJPX<8697>、三菱UFJ<8306>などの金融関連セクター、トヨタ自動車<7203>をはじめとした自動車関連などが大幅に反発。東北電力<9506>、日本製鉄<5401>、東京海上HD<8766>などのバリュー(割安)セクターも全般高い。金利低下が好感され、三菱地所<8802>などの不動産のほか、アドバンテスト<6857>、ANYCOLOR<5032>などのハイテク・グロース(成長)株も大幅に上昇。 マネックス証券とNTTドコモとの間における資本業務提携が好感されたマネックスG<8698>、出資先企業がインドの銀行との合併を承認されたと伝わったGunosy<6047>はそれぞれストップ高まで買われている。ほか、投資判断の格上げが確認されたクスリのアオキ<3549>、シマノ<7309>、日本空港ビルデング<9706>、投資判断の新規買い推奨が確認されたTOWA<6315>、ブリヂストン<5108>、TOYOTIRE<5105>、洋インキHD<4634>などが上昇。 一方、原油市況の続落を受けてINPEX<1605>や石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>、出光興産<5019>のほか、三井物産<8031>などが大幅に続落。太陽誘電<6976>はユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行に伴う潜在的な希薄化が嫌気され大幅安。営業減益決算を受けてエスプール<2471>は急落している。 セクターでは証券・商品先物取引、その他金融、空運を筆頭にほぼ全面高となっている一方、鉱業、石油・石炭製品のみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の91%、対して値下がり銘柄は8%となっている。 米長期金利が低下し、目先の安心感が生まれている。米9月ADP雇用リポートの民間雇用者数は市場予想を大きく下回り、2021年1月以降で最も小幅な伸びにとどまったほか、賃金上昇ペースの鈍化基調も引き続き確認できた。3日に発表された米8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想を大幅に上回ったことが警戒感を誘っていたが、調査対象が広く調査時期の新しいADPの方で労働市場の逼迫緩和が確認できたことはポジティブだろう。 米9月ISM非製造業景況指数も景況感の拡大を示す50以上を維持した一方、市場予想にほぼ一致したほか、新規受注の項目が今年に入ってからの最低水準にまで低下したことで、こちらもインフレ鈍化の基調を確認する株式市場にとってポジティブな結果となった。 米10年債利回りは4日のアジア取引時間の間に一時4.8%台後半まで上昇し、連日にわたって2007年以来の高値を更新したが、その後低下に転じ、5日のアジア時間においては4.70~4.71%台まで低下している。 ここまでの米長期金利の上昇スピードは非常に速かったうえ、米10年債利回りは大台の5%近くまでいったん上昇しただけに、さすがに騰勢一服となったように見える。また、米30年債利回りについては5日の米国時間に一時5%を超えたが、その後は低下に転じ、現在は4.84%台まで低下してきている。ここから、金利上昇については目先の達成感が台頭しているようにも見受けられる。 明晩は米雇用統計が発表される。米ADP雇用リポートでいったん警戒感は和らいでいるが、米ADP雇用リポートと米雇用統計の相関性は低く、米雇用統計が予想を上回る可能性は十分にある。東京市場については来週月曜日が祝日で休場となることもあり、明日は米雇用統計と連休中の空白リスクが意識されやすい。明日には再び警戒感が高まる可能性があり、この点は留意しておくべきだろう。 本日はバリュー(割安)・グロース(成長)などのスタイル別の指数や大型・中小型といったサイズ別の指数間において株価パフォーマンスにあまり大きな差は出ていない。10月に入ってからの利益確定売りがとりわけ厳しかった自動車や銀行、電力などのセクターが本日は大きく上昇していることで、ややバリュー株指数の方が、上昇率が大きいが、差はそこまで大きくない。 一方、市場別でみると、差が明確に表れており、本日はマザーズ指数が日経平均や東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る株価パフォーマンスを見せている。マザーズ指数は前日までに大きく下落し、年初来安値圏にあっただけに買い戻しが強めに入っている様子。それでもまだ25日移動平均線から下方乖離率5%を小幅に割ったに過ぎない。米長期金利の上昇に短期的なピークアウト感が見られるなか、明日の米雇用統計が余程大きく上回らない限りは、目先はマザーズ指数のアウトパフォームが期待できそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/05 12:21 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に5日続落、米長期金利の上昇はいつまで続くか *12:11JST 日経平均は大幅に5日続落、米長期金利の上昇はいつまで続くか  日経平均は大幅に5日続落。603.05円安の30634.89円(出来高概算9億1489万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でダウ平均は430.97ドル安(-1.28%)、ナスダック総合指数は-1.86%と大幅に下落。8月JOLTS求人件数が予想に反して増加に転じたことで長期金利が急伸しリスク回避の売りが広がった。また、つなぎ予算を成立させ政府機関閉鎖回避にこぎつけたマッカーシー下院議長が共和党内の保守強硬派からの反発で解任されたことも先行き不透明感を強めた。米国株の急落を受けて日経平均は472.91円安からスタート。時間外取引の米10年債利回りが一段と上昇するなかリスク回避の売りが膨らみ、前場中ごろには30581.61円(656.33円安)まで下落。その後は下げ止まったが、買い戻しは鈍く安値圏での底這いが続いた。 個別では、米国時間に一時急速に円高・ドル安が進むなど神経質な動きが見られた為替動向の影響もあり、マツダ<7261>や三菱自<7211>などの輸送用機器セクターが前日に続き急落。丸紅<8002>、神戸製鋼所<5406>、フジクラ<5803>、三菱重工業<7011>、東京電力HD<9501>など景気敏感やバリュー(割安)系のセクター・銘柄も総じて大幅に続落。日米長期金利の上昇にもかかわらず三菱UFJ<8306>などの銀行株も急落。大型株は軒並み売られていて、アドバンテスト<6857>や東エレク<8035>の半導体株も大きく下落している。 一方、オリンパス<7733>やテルモ<4543>の精密機器、エムスリー<2413>やストライク<6196>、M&Aキャピ<6080>のグロース(成長)株の一角が上昇。好決算を手掛かりにクスリのアオキ<3549>は急伸。好業績の観測報道が伝わったオービック<4684>や前日の決算説明会で過度な警戒感が後退したネクステージ<3186>も上昇。東証スタンダードでは、電気自動車を走行中に給電する技術の開発に取り組んでいることを発表したカーメイト<7297>がストップ高まで買われた。 セクターでは輸送用機器、電気・ガス、卸売を筆頭にほぼ全面安となっている一方、精密機器のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の89%、対して値上がり銘柄は9%となっている。 米長期金利の上昇が止まらず、株式市場ではリスク回避の動きが強まっている。米10年債利回りは3日、4.8%台に到達し、連日で2007年以来の高値を更新している。4日現在、時間外取引では4.82%まで上昇してきている。米労働省の8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が上方修正された前月分から小幅ながら減少するとの予想に反し、大幅に増加したことが米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測を高めた。日本の10年債利回りも連日で0.780%と約10年ぶりの水準で推移している。 一方、東京株式市場では前日と同様、景気敏感・バリュー(割安)株の方がハイテク・グロース(成長)株より下落率の大きいことが目立っている。セオリー通りであれば、長期金利の上昇は株価バリュエーションが高く、金利に対する感応度の高いグロース株の方により大きなネガティブな影響をもたらす。 しかし、10-12月期に入ったことで、機関投資家は前四半期(7-9月期)に株価パフォーマンスの良かったバリュー株に利益確定売りを出すなど持ち高調整を進めているもよう。対して、前四半期に株価パフォーマンスの冴えなかったグロース株についてはこうした影響が小さく、これが金利上昇下でのセオリーに反した物色動向につながっているようだ。歯止めのかからない米長期金利の上昇は株式市場にとってネガティブな材料でしかないが、グロース株の金利上昇に対する底堅さが見られている点はポジティブに捉えられる。 米10年債利回りの動向については予断を許さないが、これまでの上昇ペースが非常に速かったことで、次の大台となる5%が近づいてきたこともあり、目先は騰勢が一服となる可能性もある。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋は米10年債に対するポジションについて2021年後半以降、徐々に売り持ち高を増やしてきて、今年5月以降は過去10年を振り返る限り最大の売り持ち状況が続いている。投機筋が債券の売り持ち高を積み増す余地が少なくなっていると推察されるなか、今後は買い戻しによる債券価格の上昇(金利の低下)も予想される。 今晩の米9月ADP雇用リポートでは雇用者数の伸びが15万人と前月(17万7000人)から減少が予想されている。米8月JOLTS求人件数の予想外の上振れにより予断を許さない状況とはいえ、事前に警戒感がかなり高まっている分、予想通りに前月からの減少となれば、目先の安心感から株式の短期的な買い戻しが誘発されそうだ。 仮に米ADPの雇用者数も予想に反して前月から増加した場合には、もう一段の金利上昇・株価下落のリスク回避の展開が起こり得る。ただ、そうしたネガティブなシナリオが実現した場合には、週末の米雇用統計に対する警戒感は一段と高まる分、株式のさらなる下落余地は短期的には限られてくると考えられ、短期トレードのリスクリワードには妙味が出てこよう。 他方、つなぎ予算を成立させ米政府機関閉鎖回避にこぎつけたマッカーシー下院議長が共和党内の保守強硬派からの反発で解任されるなど、米政治情勢は混迷の様相を深めてきている。この問題については先行きをなかなか予想しづらく、引き続き株式市場のリスク要因としてくすぶる。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/04 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、物色動向の変化に期待 *12:18JST 日経平均は4日続落、物色動向の変化に期待  日経平均は4日続落。393.96円安の31365.92円(出来高概算7億8644万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でダウ平均は74.15ドル安(-0.22%)と続落、ナスダック総合指数は+0.66%と4日続伸。9月ISM製造業景況指数や製造業PMI改定値が予想を上回ったほか、連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事が複数回の利上げの必要性に言及し、10年債利回りが2007年来の高水準に達したことが重しになった。東京株式市場でも米長期金利の上昇や金利高止まりによる景気後退懸念を受けてリスク回避の売りが先行し、日経平均は151.91円安からスタート。香港株の大幅下落も重しになり、前場中ごろには31260.99円(498.89円安)まで下落した。その後は下げ渋ったものの、戻りは鈍く安値圏での底這いが続いた。 個別では、原油市況の下落を受けてINPEX<1605>や石油資源開発<1662>、ENEOS<5020>、出光興産<5019>などが大幅安。DOWA<5714>、住友電工<5802>、神戸製鋼所<5406>、三菱製鋼<5632>、日立建機<6305>、コマツ<6301>などの非鉄金属や鉄鋼、建機といった資源関連株も大きく下落。為替の円安基調は維持されているものの、マツダ<7261>や三菱自<7211>の輸送用機器も大幅安。業績予想を下方修正したネクステージ<3186>、瑞光<6279>、ライトオン<7445>、減益決算が嫌気された象印マホービン<7965>、業績上方修正も出尽くし感が先行したダイセキS<1712>などが急落している。 一方、ソニーG<6758>、ニデック<6594>、イビデン<4062>などのハイテクの一角がしっかり。ディフェンシブセクターとして選好されたか、ヤクルト<2267>、キユーピー<2809>、江崎グリコ<2206>の食料品が高い。政府クラウドへの参入方針報じられた、さくらインターネット<3778>は急伸。上半期上振れ着地となったしまむら<8227>、自己株TOBを発表したリクルートHD<6098>、外資証券が投資判断を引き上げた野村不HD<3231>なども上昇。東証スタンダードではプロネクサスとの業務提携が材料視されたアクセスグループ<7042>がストップ高まで買われた。 セクターでは鉱業、石油・石炭製品、非鉄金属を筆頭にほぼ全面安となっている一方、空運、食料品のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の76%、対して値上がり銘柄は21%となっている。 本日の東京株式市場は大きく続落。前日の日経平均は一時500円超も上昇した後、午後に急失速し、結局97円安と下落して終えた。高値からの下げ幅は600円を超えた。本日もそうした悪い流れを引き継ぐ形で日経平均は500円近い下落となっている。 日経平均は25日線や75日線の主要な移動平均線を大きく下放れてきている。また、週足では13週線に続き26週線も下回ってきており、テクニカルな悪化が鮮明になっている。心理的な節目の31500円も8月21日以来、割り込んできており、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の売りに拍車がかかるような状況だ。 東京証券取引所によると、9月22日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は3兆7562億円と、8月4日以来の年初来高水準にまで積み上がっていたため、個人投資家の手仕舞い売りなども広がっていそうだ。 米10年債利回りは2日、4.67%と先週末(4.58%)から大きく上昇。一時4.7%台に乗せ、2007年以来の高水準を記録した。日本の10年債利回りも本日一時0.780%まで上昇し、高値を更新してきている。日米長期金利の上昇に加えて個人投資家による手仕舞い売りを背景に、東京株式市場では新興株が特に厳しい下げに見舞われていて、マザーズ指数は年初来安値を更新している。 米長期金利の上昇の背景としては、米財務省による中長期債の発行規模拡大などの中長期的な需給環境の緩みに加えて、全米自動車労組(UAW)のストライキ、依然としてくすぶる米政府機関の閉鎖への懸念など多くの要素が絡んでいるだろう。 また、前日は、米9月ISM製造業景況指数が49.0と、市場予想(47.9)や8月(47.6)を大きく上回ったことも米長期金利の上昇に影響を及ぼした。生産の項目が拡大・縮小の境界値である50を超える52.5にまで上昇し22年7月以来の高水準を記録したほか、雇用の項目も51.2と4カ月ぶりに50を超えた。 一方、仕入れ価格の項目は43.8と8月(48.4)から大幅に減少した。また、米長期金利の上昇に大きく影響していた原油市況については、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格(期近物)が9月28日に一時1バレル=95ドルを超えたものの、足元では88ドル台にまで下落してきた。それにもかかわらず、足元で米長期金利の上昇ペースに歯止めがかからないのは気がかりだ。 今週は週末の米雇用統計に加え、今晩の米労働省の雇用動態調査(JOLTS)、明晩の米9月ADP全米雇用リポートなど雇用関連の指標が相次いで発表される。これらの指標で労働市場の逼迫緩和が改めて示唆されれば、米長期金利の上昇が一服し、株式市場が持ち直すことも考えられるが、目先は金利動向に神経質な状況が続こう。 一方、物色動向に関してはやや変化が出てきた。本日の東京株式市場では、原油市況の下落もあり資源関連を中心に景気敏感株・バリュー(割安)株の下落が目立つ。9月末の配当権利取りを狙った動きが一巡したタイミングで、日米の長期金利が上昇しているなかでも景気敏感・バリュー・高配当利回り銘柄の下落が目立つのは物色の変化を感じさせる。 また、日米長期金利が大きく上昇しているにもかかわらず、東京株式市場でのハイテク・グロース(成長)株の下落率は比較的軽微で、むしろ底堅い印象すら抱かせる。むろん、それまでの下落率が大きかったということもあるが、米ナスダック総合指数については4日続伸と金利高に逆行しており、こうした動きは注目に値しよう。今週の米雇用関連の指標で労働市場の軟化、米長期金利の上昇一服が確認されれば、ハイテク・グロース株への物色シフトが一段と進む可能性がありそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/10/03 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、米政府機関閉鎖回避や日銀短観受けて投資家心理改善 *12:17JST 日経平均は大幅反発、米政府機関閉鎖回避や日銀短観受けて投資家心理改善  日経平均は大幅反発。448.04円高の32305.66円(出来高概算7億150万株)で前場の取引を終えている。 前週末9月29日の米国株式市場のダウ平均は158.84ドル安(-0.47%)と反落。8月コアPCE価格指数の伸び鈍化で、金利高を警戒した売りが後退した。ただ、月末、四半期末の調整売りに加えて、連邦予算案期限を翌日に控えて下院が共和党のつなぎ予算案を否決したため政府機関閉鎖への警戒感が一段と強まったほか、自動車労働組合(UAW)ストライキ長期化を警戒した売りが強まり下落に転じた。ナスダックはプラス圏を確保、まちまちとなった米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。その後はプラス圏での推移となっている。 個別では、レーザーテック<6920>やディスコ<6146>、東エレク<8035>などの半導体関連株、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>などの金融株が堅調に推移。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、ソニーG<6758>やメルカリ<4385>などのグロース株の一角も上昇。キーエンス<6861>、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、神戸製鋼所<5406>、NTT<9432>、日本製鉄<5401>、なども上昇している。そのほか、業績・配当予想の上方修正を好感されたアダストリア<2685>が急騰、北川鉄工所<6317>、加藤製作所<6390>、千葉興業銀行<8337>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、三菱重工業<7011>、任天堂<7974>などが下落した。そのほか、イー・ガーディアン<6050>やピックルスホールディングス<2935>、スターティアホールディングス<3393>などが急落、プロトコーポレーション<4298>、エル・ティー・エス<6560>、アドバンスクリエイト<8798>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、銀行業、輸送用機器、機械が上昇率上位となった一方で、空運業、石油・石炭製品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の75%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 10月2日の日経平均は前週末比244.35円高の32101.97円と大幅反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値(12月限)は、大阪比195円安の31825円。直近で重しとなっていた需給イベントを通過したほか、米政府機関の閉鎖を回避するためのつなぎ予算案が可決されたことでひとまず投資家心理が改善する流れとなっている。また、日銀が朝方発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)の改善が引き続き買いを誘っている。 一方で、新興市場は上値の重い展開となっている。グロース市場の時価総額上位銘柄などで構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後にプラス圏で推移しているが、マザーズ指数は上昇スタートも上げ幅を大きく縮小してマイナス圏に転落している。東証プライム市場の主力株に注目が集まっているほか、米長期金利が依然として高水準で推移しており新興株を積極的に買い進む動きは限定的となっている。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.27%高、東証マザーズ指数は0.46%安となった。 さて、日銀は本日2日、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査(プラス5)から4ポイント改善してプラス9となり2四半期連続で改善した。供給制約の緩和で生産の回復が進む自動車や石油・石炭製品が大きく改善し、非製造業も新型コロナウイルスの影響が和らいで国内観光やインバウンド(訪日外国人)需要が回復している宿泊・飲食サービスなど幅広い業種で改善が続いた。 また、米政府機関の閉鎖問題については、米議会が30日に政府機関の閉鎖を回避するため11月17日までのつなぎ予算案を可決した。長期的な政府機関閉鎖となった場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)の取り組みに支障が出ると予想されていたが、なんとか土壇場で回避する見通しとなった。上記2つの要因から本日の東京市場では投資家心理が改善して、日経平均は堅調に推移している。 ただ、つなぎ予算が成立してもその失効時に向けては再度、政府閉鎖の懸念が再燃する可能性もあるなど不透明感は長期化の様相とみられている。また、全米自動車労働組合(UAW)のスト長期化の可能性に加えて、足元では10年債利回りが高水準で推移しており、原油価格も再び上昇している。雇用統計をはじめ米経済指標の公表を控える中、積極的に買い進む動きは想定しにくい状況にあろう。 米国ではガソリン価格高騰が支出を妨げ、クレジットカードの支払い延滞率も過去10年余りで最も高くなっているという。また、10月からはコロナ禍で停止していた学生ローン返済が再開する予定で、さらには、S&Pグローバル・レーティングの先月のリポートによれば、サブプライム自動車ローンの60日以上の延滞率は7月に過去最高水準に達したようだ。米国の消費動向には注目が必要だが、経済や金融市場にとってマイナスとなる材料が多々くすぶっており、当面不透明感が存在していることは9月から10月に切り替わったいまだからこそ再度頭の片隅に置いておきたい。 さて、9月28日に発表された最新週(9月19日~9月22日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を3週連続で売り越した。売り越し金額は9131億円となるなか、個人投資家は買い越しに転じている。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は3週連続の売り越しとなった。今後は、海外投資家の売り越しスタンスにブレーキが掛かるか注目される。後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。日銀短観を受けて自動車関連や銀行株など、プライム市場の主力株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/10/02 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続落、買い先行もマイナス圏に転落、原油価格の動向に注視 *12:14JST 日経平均は小幅続落、買い先行もマイナス圏に転落、原油価格の動向に注視  日経平均は小幅続落。36.28円安の31836.24円(出来高概算7億2727万株)で前場の取引を終えている。 前日28日の米国株式市場のダウ平均は116.07ドル高(+0.35%)と反発。10年債利回りが16年ぶり高水準に達したため警戒感から売られた。ただ、4-6月期の国内総生産(GDP)や個人消費の確定値の伸びが予想を下回ったため連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ長期化観測も後退し金利低下に伴い買戻しに拍車がかかり、相場は上昇に転じた。ナスダック総合指数は続伸、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。ただ、買いは続かずマイナス圏に転落する展開となっている。 個別では、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>などの金融株が軟調に推移。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、INPEX<1605>やENEOS<5020>などの石油関連も下落。ファーストリテ<9983>、東京電力HD<9501>、NTT<9432>、日本製鉄<5401>、日立<6501>なども下落。そのほか、合同製鐵<5410>や関西電力<9503>が急落、中部電力<9502>、水戸証券<8622>などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、アドバンテ<6857>やディスコ<6146>、東エレク<8035>などの半導体関連株の一角が堅調に推移。キーエンス<6861>、ソフトバンクG<9984>、メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、ソニーG<6758>なども上昇した。そのほか、今期業績予想の大幅上方修正を発表したJCRファーマ<4552>、株主優待制度を年2回に変更したFPパートナー<7388>などが急騰、エコナックHD<3521>、ADワークスグループ<2982>、トーホー<8142>などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは、海運業、石油・石炭製品、鉄鋼が下落率上位となった一方で、精密機器、繊維製品、電気機器が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の32%、対して値下がり銘柄は65%となっている。 9月29日の日経平均は146.12円高の32018.64円と反発して取引を開始した。昨日の米株市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が1.77%上昇したことで、東京市場の半導体関連株の株価を支える要因となった。また、日経平均は先週初19日から昨日まで、8営業日で1600円を超す下げとなっており押し目買いも入りやすかった。ただ、機関投資家などによる四半期末に伴うリバランス(資産の再配分)売りが出やすいとの見方もあり、前場中ごろにはマイナス圏に転落した。 一方で、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後に上げ幅を広げる展開となっている。米国株の上昇を受けて東京市場の新興株も一旦の買い戻しの動きが優勢か。時価総額上位銘柄中心に注目が集まっており、指数をけん引する形となっている。ただ、米長期金利が依然として高水準で推移しており、積極的に買い進む動きは想定しにくい。前引け時点での東証グロース市場Core指数は1.87%高、東証マザーズ指数は1.02%高となった。 さて、WTI原油先物価格は去年8月以来、およそ1年1か月ぶりに1バレル=95ドル台まで上昇した。原油価格の上昇が続くと世界的なインフレ再燃につながるため、市場関係者は直近の原油価格の上昇に注目している。そこで本日は、簡単に原油価格上昇の要因を抑えておきたい。 産油国の状況を確認してみると、サウジアラビアやロシアは年末にかけて自主減産の継続を明らかにしており、需給を引き締める要因となっている。具体的に、サウジアラビアは現行の日量100万バレルの原油の自主減産を12月まで3カ月延長すると表明。ロシアも年末にかけて輸出量を30万バレル減らすと発表している。 また、米国の原油在庫に注目してみると、民間や公的部門ともに大幅に減少していることが明らかになっている。一つの要因として、インフレ対策として国家の原油を放出して上がり続ける原油価格を抑制していた。実際、米エネルギー情報局(EIA)が27日発表した週間在庫統計で米原油在庫は、220万バレル減(市場予想32万バレル減)の4億1630万バレルとなった。一方で、直近は原油の在庫を積み増す動きがみられており、これ以上在庫を減少させる動きにはなりづらくなっている。 さらに、米国のシェール石油の生産低迷も需給ひっ迫の一因となっており、今後は北半球の気温が低下し暖房需要が増加する、石油の需要シーズンを迎えることも原油相場には追い風となる可能性がある。また、景気懸念がくすぶるなかでも中国の原油需要は強く、9月中旬に発表された8月の精製処理量は日量208.7万トンと過去最大となったようだ。このように、需給を引き締める要因が数多く存在している。 一方で、イランの産油量がここにきて増加に転じてきている。今年8月には、OPEC加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の協調減産が続いているものの、イランの増産によりOPECについては生産量が増えた形となった。足元の需給がひっ迫していることは変わりないが、来年にかけてはイランの産油量が原油価格に一定の影響を及ぼす可能性がありそうだ。イランの産油量には注視しつつ、今後の原油の需給動向を見守っていきたい。 さて、ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者で資産家のレイモンド・ダリオ氏はCNBCとのインタビューで、米経済の「有意の減速」が起きると考えていると述べたようだ。「米国が債務危機に陥るだろう」と述べるなか、経済成長率がゼロ近くに低下する可能性があると語ったという。こういったインタビューの内容も、今後の相場動向を予測するうえでは、意識しておきたい。 後場の日経平均はプラス圏に回復することができるか。週末や月末要因で積極的に買い進む材料に乏しい中ではあるが、半導体関連の一角や個別材料株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/09/29 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は反落、日米長期金利の上昇で配当落ち後もバリュー優位か *12:19JST 日経平均は反落、日米長期金利の上昇で配当落ち後もバリュー優位か  日経平均は反落。558.89円安の31813.01円(出来高概算7億4678万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は68.61ドル安(-0.20%)と続落、ナスダック総合指数は+0.22%と反発。議会の予算交渉が引き続き難航し政府機関閉鎖リスクの高まりが意識されたほか、原油市況や長期金利の急伸が売りを誘った。ただ、終盤は売られ過ぎ感から買い戻しが強まり下げ幅を縮小した。米株安を受けて日経平均は252.53円安からスタート。配当落ちの影響もあり一時32000円を割り込んだが、前日終値近辺で底堅い動きが続いた。しかし、時間外取引の米株価指数先物が失速したことや香港株が下落したことが影響し、前引けにかけては売りが広がり、大きく32000円を割れて前場を終えている。 個別では、原油市況の高騰によるコスト上昇が懸念されたANA<9202>やJAL<9201>の空運、西武HD<9024>や京王電鉄<9008>などの陸運、日本コンセプト<9386>や上組<9364>などの倉庫・運輸、関西ペイント<4613>やUBE<4208>などの化学が大きく下落。日米長期金利の上昇を受けてリクルートHD<6098>、テモナ<3985>、Appier<4180>、ANYCOLOR<5032>のグロース(成長)株、東急不HD<3289>、京阪神ビルディング<8818>などの不動産も下落。米マイクロン・テクノロジーの低調な決算を受け、東エレク<8035>、芝浦<6590>、日本電子材料<6855>などの半導体関連も安い。ほか、配当落ちの影響から銀行や商社に代表される卸売、鉄鋼セクターなども下落となっている。業績予想を下方修正した大紀アルミ<5702>や配当落ちに伴う手仕舞い売りが広がったFPG<7148>は大幅安。 一方、原油市況の上昇によりINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大きく上昇。四半期ベースの業績底入れ感が意識されたニイタカ<4465>、国内証券が目標株価を引き上げたコーセル<6905>、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応策を発表した日東精工<5957>などは急伸。外資証券が投資判断を引き上げた住友ゴム<5110>、業績上方修正が材料視された乃村工藝社<9716>、ライドオンE<6082>も大幅高。西松屋チェ<7545>は四半期業績の増益転換や増配・自社株買いが好感された。 セクターでは空運、倉庫・運輸、陸運を筆頭にほぼ全面安となっている一方、鉱業のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の82%、対して値上がり銘柄は14%となっている。 前日の日経平均は配当落ち前の時点から32000円を割り込むなど大きく下落していたが、午後は配当再投資を意識した買い戻しでプラス圏に浮上した。本日も配当落ちの影響を除けば前日終値から小幅な下げにとどまって底堅さを見せていた。しかし、前引けにかけては急速に地合いが悪化し、日経平均は32000円を大幅に割り込んで前場を終えている。日経225先物の水準を見る限り、午後の日経平均は配当落ちを考慮しても32000円割れの推移が見込まれ、投資家心理の悪化が懸念される。 長期金利の上昇に歯止めがかからない状況が気掛かりだ。米10年債利回りは27日、一時4.64%と2007年10月以来の高水準を記録した。在庫減少を背景にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格(期近物)が一時94.17ドルと昨年8月下旬以来の高値まで上昇したことが影響した。また、米8月耐久財受注が予想を大幅に上回る伸びとなったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が高水準の政策金利を据え置く期間が長期化することも意識されたようだ。 さらに、米政府機関の閉鎖リスクが依然としてくすぶっていることも信用リスクの上昇を通じて米長期金利の上昇に拍車をかけているもよう。米議会の予算交渉は引き続き難航しており、閉鎖リスクは日に日に高まっているようで予断を許さない状況だ。 全米自動車労組(UAW)と米大手自動車メーカーとの労使交渉も引き続き懸念材料だ。UAWは交渉に大きな進展がなければ、29日にはストライキを拡大する計画と報じられている。政府閉鎖とともに米経済成長の下押しリスクとなりうるほか、米金融政策の先行き不透明感を強める可能性もあり、注意が必要だ。 米長期金利のハイペースでの上昇基調を受け、国内の10年債利回りも28日、0.750%と直近の高値を更新してきている。日本銀行の金融政策を巡っては先週に金融政策決定会合を終えたばかりだが、こちらも先行き不透明感が強まっているといえる。 WTI原油市況が昨年8月下旬以来の高値まで上昇したことに加え、日米の金融政策スタンスの違いを背景にした円売り・ドル買いが続いており、ドル円は遂に1ドル=149円台を突破、昨年10月以来の150円超えが目前に迫っている。輸入物価への反映には3カ月ほどのタイムラグがあるとされているが、原油高と円安により年末近くから国内で輸入インフレが再燃することは必至といえる。日銀は今後、物価上昇の趨勢はいったん落ち着いていくと予想しているが、こうした見通しとは乖離が生じる状況になっており、政策不透明感を高めることにつながりそうだ。 個別に目を向けると、当面はバリュー(割安)・高配当利回り銘柄の物色が続きそうだ。本日の配当落ちに伴い、バリュー・高配当利回り銘柄の物色が一巡することが予想されたが、日米の長期金利の上昇基調を背景にグロース(成長)株対比で選好される状況が維持されそうだ。実際、本日配当落ちを迎えた鉄鋼や銀行セクターなどの主力銘柄の動きを見ると、総じて底堅い動きを見せている。 また、27日の米国市場の引け後に発表された半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーの決算は、9-11月期の損益見通しが市場予想以上の赤字幅となり、市況底入れ・株価回復を期待していた投資家を失望させる内容だった。同社株価は時間外取引で一時5%程下落した。こうした背景も日米長期金利の上昇とともにハイテク株を敬遠させることにつながり得ると考えられ、バリュー・高配当利回り銘柄の選好を長期化させることになりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/28 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は続落、金利上昇や需給懸念などが重し *12:11JST 日経平均は続落、金利上昇や需給懸念などが重し  日経平均は続落。151.34円安の32163.71円(出来高概算6億6035万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でダウ平均は388.00ドル安(-1.14%)、ナスダック総合指数は-1.56%とそれぞれ反落。ミネアポリス連銀総裁が追加利上げの必要性に言及したほか、JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)が政策金利が7%まで上昇するリスクを警告したため、金利高を警戒した売りが先行。経済指標の下振れで景気減速懸念も強まり一段安となった。米株安を受けて日経平均は291.68円安からスタートすると一時32000円を割り込んだ。一方、為替の円安基調が続くなか心理的な節目割れでは押し目買いも入り下げ渋った。その後は堅調なアジア市況や時間外取引の米株価指数先物を支援材料に緩やかに下げ幅を縮める動きが続いた。 個別では、明日の配当落ちを意識しての動きか、四国電力<9507>や関西電力<9503>の電気・ガス、商船三井<9104>や郵船<9101>の海運、中部鋼鈑<5461>、淀川製鋼所<5451>の鉄鋼、八十二銀行<8359>や高知銀行<8416>の銀行などバリュー(割安)セクターが下落。円安基調が続くなかではあるが三菱自<7211>、日産自動車<7201>の輸送用機器、TOYO TIRE<5105>、横浜ゴム<5101>のゴム製品なども軟調。ファーストリテ<9983>、ディスコ<6146>、ダイキン<6367>、ニデック<6594>、村田製<6981>などの値がさ株やハイテクの一角も冴えない。太陽誘電<6976>、スタンレー電気<6923>は投資判断の格下げが観測されている。 一方、第一三共<4568>やそーせいグループ<4565>の医薬品、出光興産<5019>や石油資源開発<1662>の資源関連、カチタス<8919>や三菱地所<8802>の不動産が上昇。芝浦<6590>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、ルネサス<6723>、レーザーテック<6920>のハイテクの一角も堅調。プラスアルファ<4071>は国内証券の新規買い推奨で大幅高。ほか、メドレー<4480>は新規買い推奨、大東建託<1878>は投資判断の格上げが観測されている。 セクターでは電気・ガス、海運、ゴム製品が下落率上位に並んでいる一方、医薬品、石油・石炭製品、不動産が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の61%、対して値上がり銘柄は34%となっている。 本日の日経平均は続落し、一時32000円を割り込んだ。その後に同水準を回復しているが、明日の配当落ち分を考慮すると、現値水準のままでは明日には再び32000円を割り込むことは避けられないだろう。 今週は需給要因が重なる。年金基金の配当再投資に伴う先物買い需要が日経225先物で1500億円強、TOPIX 先物では9000億円強と見込まれている一方、日経平均の構成銘柄の入れ替えに伴い、日経平均の既存採用銘柄では4000億円ほどの売り需要が予想されている。日経平均型に限っていえば、超過の売り需要が見込まれ、日経平均の下落が意識されやすいが、日本株全体でみれば超過の買い需要が予想されているということになる。 しかし、ここにきて俄かに年金基金が上昇した日本株のウェイトを引き下げるために配当再投資を見送るのではないかとの懸念が一部で浮上している。実際にそうなると、約1兆円の先物買い需要が剥落することになり、日本株全体の需給面での重しとなるため、気掛かりな話だ。 米株式市場ではダウ平均が200日移動平均線を下回ったほか、ナスダック総合指数とS&P500種株価指数が26週移動平均線を下回ってくるなど、トレンドの悪化が鮮明になっている。加えて、米VIX指数や日経平均VIなどのボラティリティーインデックスが大きく上昇してきており、リスクパリティ戦略(各資産のリスクの割合が均等になるように資産を保有する運用手法)ファンドによる機械的な売りなども増加してきているようだ。 ほか、米政府機関の閉鎖リスクもくすぶっている。格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米政府機関が閉鎖されれば米国の信用格付けにネガティブに反映されるだろうと指摘している。すでに節目の4.5%を超えて金利先高観が強まっている米10年債利回りのさらなる上昇に拍車をかけるようなことになれば、相場の一段の調整は避けられないだろう。 一方、足元で米経済指標の下振れが目立ってきた。つい先日まで強い米経済を受けてソフトランディング(軟着陸)期待が高まり、景気後退予想を取り下げる機関の動きなども見られていたが、ここ最近は金利上昇を受けて再び米住宅市場に関する指標などが悪化してきている。前日に発表された8月新築住宅販売件数も予想を下回り、5カ月ぶりの水準に減少した。 また、コンファレンスボードが発表した9月の米消費者信頼感指数では今後6カ月の見通しを反映する期待指数が73.7と、5月以来の水準に低下。期待指数の80割れは1年以内の景気後退入りを示唆するとの見方もあるようで、金利先高観と景気後退懸念の強まりという株式市場にとって嫌な組み合わせが見られている。 本日の東京株式市場では、電気・ガスや海運、鉄鋼、ゴム製品などのバリュー(割安)セクターの下落が目立つ一方、米長期金利が上昇するなかでも電気機器のハイテクセクターの底堅さが目立っている。明日の配当落ちに加えて、月末および四半期末のリバーサル(株価の反転)を見越した持ち高調整の動きとみられる。 しかし、米長期金利の上昇と景気減速懸念が同時に強まってきているなか、リバーサルに伴うハイテク株買いがどこまで続くかは不透明だ。同様の理由から配当落ち後にバリュー株が早々に持ち直すかも期待しにくいところ。円安が進行しているなかでも、自動車株に代表される輸送用機器セクターが続落している点からも投資家の懸念が窺える。10月に入れば季節性から相場の復調を期待する声も多いが、先行きについては引き続き慎重なスタンスが求められると考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/27 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は反落、 日米長期金利は早々に上昇再開、売買代金の減少が気掛かり *12:14JST 日経平均は反落、 日米長期金利は早々に上昇再開、売買代金の減少が気掛かり  日経平均は反落。298.77円安の32379.85円(出来高概算6億2155万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でダウ平均は43.04ドル高(+0.12%)、ナスダック総合指数は+0.45%とそれぞれ5日ぶり反発。10年債利回りが高値を更新するなか売りが先行。政府機関閉鎖リスクの高まりも重しとなった。一方、シカゴ連銀総裁が経済のソフトランディング(軟着陸)の可能性を指摘すると終盤にかけて買い戻しが強まり、プラス圏を回復した。米株高に加えて為替の円安が一段と進行するなかではあったが、米長期金利の上昇を背景としたハイテク株の下落が重しになり、日経平均は38.57円安からスタート。前日に上昇した反動で戻り待ちの売りが出やすかったことも影響し、日経平均は一時300円を超える下げ幅を見せた。その後はいったん下げ渋ったが、時間外取引の米株価指数先物が上げ幅を縮めたことが嫌気され、日経平均はこの日の安値圏で前場を終えている。 個別では、米長期金利の上昇を背景に東エレク<8035>、スクリン<7735>、イビデン<4062>、芝浦<6590>、太陽誘電<6976>、TDK<6762>などのハイテクや、インフォマート<2492>、SREHD<2980>、ラクスル<4384>などのグロース(成長)株が大きく下落。為替の円安にもかかわらず日産自<7201>、豊田自動織機<6201>、武蔵精密工業<7220>などの輸送用機器も安い。ほか、東京製鐵<5423>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、三井金<5706>、住友鉱<5713>の非鉄金属、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社なども軟調。上半期が営業減益で着地したあさひ<3333>は大きく下落している。 一方、国内長期金利の上昇を受けてT&DHD<8795>、かんぽ生命保険<7181>の保険、西日本フィナンシャルHD<7189>、千葉興業銀行<8337>の地銀など金融セクターが大きく上昇。東海東京<8616>は中間配当の増配が、日本取引所グループ<8697>は業績・配当予想の上方修正が、いよぎんHD<5830>は上半期業績の上方修正がそれぞれ好感された。ほか、四国電力<9507>、関西電力<9503>の電気・ガス、商船三井<9104>、郵船<9101>の海運、三菱製紙<3864>、日本製紙<3863>のパルプ・紙などバリュー(割安)セクターが堅調。あすか製薬HD<4886>は政策保有株縮減に伴う売却益計上が材料視された。東証スタンダードでは配当方針変更に伴う増配を発表したオーテック<1736>、業績予想を上方修正したラサ商事<3023>や大光<3160>、中期経営計画を発表したfonfun<2323>などが急伸。 セクターでは電気機器、輸送用機器、機械が下落率上位に並んでいる一方、保険、電気・ガス、海運が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の68%、対して値上がり銘柄は28%となっている。 本日の日経平均は反落し、前日の上昇分をほぼ吐き出す格好となっている。米10年債利回りは25日、一時4.56%まで上昇、終値ベースでも4.53%と節目の4.5%を上回り、2007年10月以来の高水準を記録している。先週末に一服したと思われた米長期金利の上昇が早々に再開したことで、前日に買い戻しが入ったハイテク・グロース(成長)株が再び売られ、日経平均の重しとして働いている。 日本の10年債利回りも26日、0.745%と21日に付けた2013年9月以来の水準を回復している。先週末の取引終了後に行われた日本銀行の植田和男総裁の会見では、マイナス金利政策の解除に関して踏み込んだ発言がなかったこともあり、金融引き締め懸念が後退したとの見方が一時強まった。これを受け、週明け前日の東京市場ではハイテク・グロース株が買い戻される一方で銀行セクターを中心に景気敏感・バリュー(割安)株の一角に利益確定売りが広がった。しかし、こうした流れは一日にして反転している。 そもそも、先週末の植田総裁の会見については、各種メディアが多方面で「金融引き締め懸念は後退」との解釈を報じていたが、個人的には、会見中の植田総裁は歯切れの悪さが目立った印象で、政策の先行き不透明感を強める内容に見受けられた。また、植田総裁は会見内で「(物価上昇率について)下がり方がすこしゆっくりめかなという雰囲気はある」と、物価高が想定より長引いていることを認めるような発言もしていた。内容としては今後のデータ次第では十分に政策変更が前倒しされる可能性も感じさせるような内容だったと思われる。 実際、日本の10年債利回りが再び高値を回復してきているほか、米長期金利の上昇ペースに対する為替の円安ペースは緩やかなものになっている。財務省による為替介入への思惑が当然に影響しているだろうが、日銀の追加政策修正観測の高まりも依然として根強いと見受けられる。 やや気掛かりなのはドル円が1ドル=149円目前に迫る水準にまで上昇(円安・ドル高)しているにもかかわらず、自動車をはじめとした輸送用機器セクターが本日軟調に推移していることだ。10月下旬以降の中間決算で上方修正が特に期待されるセクターだが、足元で円安との連動性が薄れてきているのは、円安による業績上振れを大方織り込み切った動きとも考えられ、この先は注意深く見守りたい。 ほか、売買代金の減少も気になる。前日の東証プライム市場の売買代金は3兆1000億円台と、9月11日以来の水準に減少した。今週27日には配当・株主優待の権利付き最終売買日を迎えるにもかかわらず、本日も前引け時点での東証プライムの売買代金は1兆5000億円台と低調だ。 前週に日米の金融政策イベントを通過し、やや手掛かり材料難であるほか、前週までに配当権利取りの動きが一巡していたとも考えられるが、それらを差し引いてもこの売買代金の減少ぶりは気になる。日米の長期金利の上昇が続くなか、投資家心理が悪化していると推察され、今後の金利動向からは一段と目が離せなくなった。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/26 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は反発、自律反発の買い広がる *12:13JST 日経平均は反発、自律反発の買い広がる  日経平均は反発。187.92円高の32590.33円(出来高概算6億3007万株)で前場の取引を終えている。 前週末22日の米国株式市場のダウ平均は106.58ドル安(-0.31%)と続落。長期金利の上昇が一段落したが、9月サービス業や総合PMI速報値の悪化を嫌気した。ハイテク株は金利の低下で堅調に推移したが、連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派発言を受けて終盤にかけ下落に転じた。原油高や年内の追加利上げの可能性、政府機関閉鎖の可能性や自動車労働組合(UAW)のスト継続リスクが警戒されて相場の戻りは鈍かった。ナスダック総合指数は小幅続落、主要株価指数がそろって下落した米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。朝方に上げ幅を縮小したが、プラス圏での推移となっている。 個別では、レーザーテック<6920>やディスコ<6146>、東エレク<8035>などの半導体関連株が堅調に推移。ソフトバンクG<9984>、NTT<9432>、神戸製鋼所<5406>、カプコン<9697>、ソニーG<6758>、JT<2914>なども上昇した。そのほか、自社株買いやSBIグループとの提携深化策を発表したダブルスタンダード<3925>、転移性乳がん対象新薬の第3相試験結果を好感された第一三共<4568>などが急騰、ラクーンHD<3031>、九電工<1959>、平和堂<8276>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、金融緩和策の長期化意識で三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>などの金融株が軟調に推移。また、キーエンス<6861>、ファーストリテ<9983>、東京電力HD<9501>、SANKYO<6417>、オリエンタルランド<4661>、信越化<4063>なども下落。そのほか、上半期業績見通しや中間期末配当計画を嫌気されたIRJ-HD<6035>が急落、ダイレクトマーケティングミックス<7354>、三菱製紙<3864>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、医薬品、小売業、食料品が上昇率上位となった一方で、銀行業、海運業、保険業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の74%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 9月25日の日経平均は前週末比114.85円高の32517.26円と5日ぶり反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値(12月限)は、大阪比5円安の32265円。本日の日経平均は前週の大幅な下落を受けて、いったんは自律反発が意識される展開となっている。そのほか、上海総合指数や香港ハンセンなどアジア市況は軟調に推移している。 新興市場も買い手優位の状況が続いている。マザーズ指数は上昇スタート後じりじりと上げ幅を広げてプラス圏で推移、グロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後にプラス圏に浮上する展開となっている。米長期金利の上昇に一服感が台頭していることはバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の追い風となっている。また、マザーズ指数は前週一時1月4日以来の年初来安値水準まで大きく下落しており、自律反発狙いの買いが続きやすいだろう。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.30%高、東証マザーズ指数は0.54%高となった。 さて、日銀は前週末に、金融政策決定会合で長短金利操作を柱とする現在の大規模な金融緩和の維持を決定した。前回の7月会合で0.5%から事実上1%に引き上げた長期金利の変動許容幅は、今回据え置いている。植田日銀総裁は金融政策を修正する時期について「到底決め打ちできない」と発言し、「引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで2%を実現できなくなるリスクの方が大きい」との認識を変更していない姿勢がうかがえた。これを受けて本日は、金利上昇に伴い貸出の利ざやが拡大するとの期待から買われていた銀行株中心に売られる一方で、前週軟調に推移していた半導体関連株などに買い戻しの動きが広がっている。 一方、米連邦準備理事制度(FRB)は、前週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の据え置きを決めたが、年内あと1回の追加利上げと政策金利をより高い水準で長く維持する可能性を示唆していた。今週29日に個人消費支出(PCE)価格指数が発表されるが、食料品とエネルギーを除くコア指数の上昇率が前年同月比3.9%(前月4.2%)と、約2年ぶりに4%を割り込む見通しとなっている。 ただ、インフレが鈍化傾向にある一方、4-6月期GDP確定値は改定値の2.1%成長から2.3%成長に上方修正される見通しとなっている。インフレの鈍化が滞る、もしくは予想以上の成長率に上方修正された場合には、年内の追加利上げ観測が強まる可能性があろう。また、米10年債利回りは依然として高水準に達しているほか、VIX指数も17.20と高水準で推移している。さらには、政府機関閉鎖の可能性、原油高などのリスク要因も目立ってきており、米株式市場を中心に相場動向には注視する必要がある。 そのほか、アメリカの元財務長官で経済学者のサマーズ氏が、Bloombergのインタビューでソフトランディングの可能性とスタグフレーションの可能性について語っている。米国の失業率が再度4.1%を超えそうななか、ローンの滞納率の増加について指摘している。また、「ここ数十年に起こったすべての景気後退の前には人々がソフトランディングについて語っていた。」と述べている。こういったインタビューの内容も、今後の相場動向を予測するうえでは、意識しておきたい。 さて、9月22日に発表された最新週(9月11日~9月15日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を2週連続で売り越した。売り越し金額は2781億円となるなか、個人投資家も現物株を2週ぶりに売り越した。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行も2週連続の売り越しとなった。さて、後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。積極的に買い進む材料に乏しい中ではあるが、個別株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/09/25 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、引け後の植田総裁会見に注目 *12:01JST 日経平均は4日続落、引け後の植田総裁会見に注目  日経平均は4日続落。283.57円安の32287.46円(出来高概算7億4190万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は370.46ドル安(-1.07%)、ナスダック総合指数は-1.82%とそれぞれ続落。タカ派な連邦公開市場委員会(FOMC)の結果に加えて、週次新規失業保険申請件数が予想外に減少し、長期金利が一段と上昇したことで終日売り優勢の展開だった。米株安を受けて日経平均は381.71円安からスタート。米10年債利回りが連日で高値を更新する一方、為替が円高に振れていたこともあり、ハイテクのほか直近強かったバリュー(割安)株にも利益確定売りが広がり、日経平均は寄り付き直後に32154.53円(416.5円安)まで下落。一方、昼頃に結果公表を控える日本銀行の金融政策決定会合を前にした様子見ムードや中国・香港株の上昇を背景にその後はもみ合いが続いた。 個別では、川崎汽船<9107>や郵船<9101>の海運、東京電力HD<9501>や北陸電力<9505>の電気・ガス、大阪製鐵<5449>や大同特殊鋼<5471>の鉄鋼、大紀アルミ<5702>や住友電工<5802>の非鉄金属など、バリューセクターが大きく下落。丸紅<8002>、三菱商事<8058>の商社、五洋建設<1893>、大林組<1802>の建設、三菱自<7211>、エフ・シー・シー<7296>の輸送用機器なども下落。東エレク<8035>やソニーG<6758>、ファナック<6954>、イビデン<4062>などハイテクの一角も安い。 一方、JAL<9201>、ANA<9202>の空運、ニコン<7731>、HOYA<7741>などの精密機器が堅調で、三井不動産<8801>、東京建物<8804>の不動産はしっかり。レーザーテック<6920>、ニデック<6594>、村田製<6981>、OLC<4661>、メルカリ<4385>、ANYCOLOR<5032>などのハイテク・グロース(成長)株の一角は上昇。スタジオジブリの子会社化を発表した日テレHD<9404>が急伸し、日本テレビが大株主にいるビーグリー<3981>はジブリとの連携強化に対する思惑が先行して大幅高。ほか、業績予想を上方修正したネクシィーズG<4346>、5社共同で新規IPプロジェクトの製作委員会を立ち上げるとしたピアラ<7044>、国内証券が目標株価を引き上げたデサント<8114>、増配が好感されたBEENOS<3328>などが大幅に上昇。大幅増配や自社株買いを発表したSANKYO<6417>はストップ高買い気配のまま終えている。 セクターでは海運、電気・ガス、鉄鋼が下落率上位に並んでいる一方、空運、精密機器、鉱業のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の65%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 米10年債利回りは21日、4.49%(20日は4.41%)へと連日で上昇し、2007年11月以来の高値を更新した。これを受け、国内外の株式市場でハイテク・グロース(成長)株の売りが継続している。金利の上昇にどこで歯止めがかかるか不透明ななか、当面はハイテク・グロース株の戻りは鈍いと考えられる。長期目線以外では押し目買いには慎重に臨んだ方がよいだろう。 本日の昼頃には日本銀行の金融政策決定会合の結果が公表される。前回会合でイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の微調整を行ったばかりであるため、さすがに今回は政策の現状維持が大方の予想とされている。しかし、9日に読売新聞が報じた植田日銀総裁へのインタビューを契機にマイナス金利政策の解除など追加の政策修正観測が高まっている。15日には総裁の発言と市場の解釈の間にはギャップがあるとする内容の報道もあったが、日本の長期金利も高値を更新するなか、こうした思惑はくすぶっている。 こうしたなか、注目されるのは植田総裁の会見だ。踏み込んだ発言がなく無難に終われば、あく抜け感から円安・株高が進みそうだが、マイナス金利解除を示唆する発言などがあれば、投機筋の円買い戻しに伴い円高が進む可能性もある。その場合、本日の前場のように、これまで値持ちの良かった景気敏感・バリュー株の利食い売りが続くと考えられ、物色としては手掛かり難に追い込まれかねない。足元で軟化してきている株式市場がここで持ち堪えるのか、それとももう一段の調整を迎えるのか、方向性を見極めるにあたって本日の植田総裁の会見は注目材料となろう。 後場の日経平均は上値の重い展開が続きそうだ。植田総裁の会見は引け後になるため、昼頃に現状維持の結果が伝わっても、会見内容を見極めたいとの思惑から買い戻しは限定的になりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/22 12:01 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に3日続落、日米長期金利の高値更新でバリュー優位は長期化か *12:12JST 日経平均は大幅に3日続落、日米長期金利の高値更新でバリュー優位は長期化か  日経平均は大幅に3日続落。376.06円安の32647.72円(出来高概算8億4131万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は76.85ドル安(-0.22%)、ナスダック総合指数は-1.52%とそれぞれ続落。連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り政策金利の据え置きが決定された。しかし、追加利上げの可能性が除外されなかったほか、最新の経済・政策金利見通しがタカ派な内容だったことから、長期金利が一段と上昇、株式市場は終盤にかけて下げ幅を広げた。米ナスダック指数の大幅続落を受け、日経平均は158.22円安と33000円を割り込んでスタート。日米の長期金利が揃って高値を更新し金利先高観が警戒されるなか、ハイテク株を中心にリスク回避の売りが続き、日経平均は前引けまで下げ幅を広げる展開となった。 個別では、米長期金利の上昇を背景にアドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、イビデン<4062>、村田製<6981>、ローム<6963>などのハイテクのほか、アンビス<7071>、MSOL<7033>、Appier<4180>、Sansan<4443>などのグロース(成長)株が総じて大きく下落。原油市況の軟化を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>も安い。国内長期金利も上昇するなか三菱地所<8802>、住友不動産<8830>など不動産株も軟調。ソニーG<6758>、HOYA<7741>、SMC<6273>など値がさ株も下落。堅調な決算ながらも出尽くし感や見切り売りが優勢となったサツドラHD<3544>、ツルハHD<3391>は売られた。長谷工<1808>は外資証券の投資判断格下げが確認されている。 一方、国内長期金利の上昇を追い風に三菱UFJ<8306>、三住トラスト<8309>の銀行が大きく上昇し、MS&AD<8725>、東京海上<8766>の保険も堅調。日本高周波鋼業<5476>、愛知製鋼<5482>の鉄鋼、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運などバリュー(割安)株の一角も堅調。大和工業<5444>は投資判断の格上げも寄与して大幅高。ほか、積水ハウス<1928>、東レ<3402>、熊谷組<1861>の投資判断の格上げが確認されている。 セクターでは精密機器、鉱業、電気機器が下落率上位に並んでいる一方、銀行、電気・ガス、鉄鋼が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の61%、対して値上がり銘柄は35%となっている。 前日の米ナスダック指数の大幅続落を受け、本日の東京株式市場ではハイテク・グロース(成長)株を中心に売られ、日経平均が1%を超える下落率となっている。日経平均は33000円の節目も大きく割り込み、配当落ち後の水準を示す日経225先物は32500円も下回っている。 前日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、ある程度は予想されていたとはいえ、事前の予想以上にタカ派な内容だった印象だ。最新の政策金利見通しによると、今年の年末時点の政策金利中央値は5.6%と、前回6月時点から変わってはいない。ただ、FOMC参加者19人のうち12人が年内あと1回の利上げを支持していることが示され、インフレの鎮静化を確実にしたいFRBの姿勢が窺えた。また、来年末の政策金利中央値は5.1%と前回の4.6%から大きく引き上げられ、来年に想定される利下げ幅は縮小している。 経済成長率の見通しは、今年は+2.1%と前回の+0.4%から大幅に引き上げられたうえ、来年も+1.5%と、減速はするものの、まずまずの水準の成長が予想されていることが示された。失業率の予測については、来年は4.1%と前回の4.5%から引き下げられ、底堅い労働市場が続く見通しになっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は会見で、経済のソフトランディング(軟着陸)を基本的なシナリオにしているわけではないと発言したが、見通しは全体的に雇用は堅調、経済成長は続くというソフトランディング達成への自信を深めたような内容になっている。 一方、インフレ率の見通しについては、FRBの目標である2%の達成は2026年とかなり先に予想されている。ソフトランディングの確度が高まった分、インフレとの闘いは長期化、より難しいものになるとの考えが示唆されている。 金利先物市場はFOMC直前の時点では、来年末の政策金利中央値を4.6%程度と予想していたため、今回の5.1%にまで引き上げられたFRBの見通しはタカ派といえる。FRBの「Higher for Longer(より高く、より長く)」がこれまで以上に強く意識される結果となった。 しかし、FOMCの後も金利先物市場が予想する来年末の政策金利中央値は4.76%と、あまり上がっておらず、FRBの予測とは乖離がある。年内の追加利上げの確率についても、FOMC前よりはやや上昇したが、現時点では5割未満にとどまっており、織り込み具合は大きくは進展していない。今後発表されるデータ次第では追加利上げの確率が高まり、これに伴い、金利上昇・株価下落が進む余地があると思われる。 米10年債利回りは19日の時点ですでに8月高値を上回って4.36%まで上昇していたが、前日はFOMC結果を受けて4.41%へとさらに上昇した。米長期金利は2007年11月以来の高水準を記録しているが、上述したように、現値水準からもう一段、金利に上昇余地があるというのは、株式市場にとって強い逆風になるとみられる。 国内の10年債利回りも本日、0.745%と約9年8カ月ぶりの水準を記録している。本日はハイテク・グロース株が大きく下落しているが、日米長期金利の高値更新で金利先高観がさらに強まっているなか、当面これらの関連株は下値模索の展開、よくてもレンジ推移となりそうだ。 一方、本日の東京株式市場では、前日の高寄り後の失速で中間配当取りを目的とした買いの一巡が意識されていた景気敏感・バリュー(割安)株の一角で堅調さの継続が確認されている。米国で弱い経済データが確認され、長期金利が明確に低下に転じるまでは、バリュー株優位の展開が想定以上に長期化する可能性が高そうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/21 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続落、米FOMC前にポイント整理 *12:10JST 日経平均は続落、米FOMC前にポイント整理  日経平均は続落。120.38円安の33122.21円(出来高概算8億1246万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でダウ平均は106.57ドル安(-0.30%)、ナスダック総合指数は-0.23%とそれぞれ反落。原油市況が年初来高値を更新し、インフレ再加速の懸念が強まったことで長期金利も上昇し、相場は軟調に推移した。一方、為替の円安を支援材料に日経平均は18.76円高からスタート。しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を日本時間21日午前3時頃に控えるなか、持ち高を一方向に傾ける動きは限られ、その後は狭いレンジでの一進一退が続いた。 個別では、ニューヨーク原油先物価格の東京時間に入ってからの下落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>、出光興産<5019>などの鉱業や石油・石炭製品が大きく下落。関西電力<9503>や東北電力<9506>の電気・ガス、中越パルプ<3877>やトーモク<3946>のパルプ・紙、帝人<3401>やセーレン<3569>の繊維製品、直近動きの強かったアイシン<7259>、トヨタ自<7203>の輸送用機器や共英製鋼<5440>、東京鐵鋼<5445>の鉄鋼などの下落も目立つ。 一方、飯野海運<9119>、商船三井<9104>の海運、丸運<9067>、鴻池運輸<9025>、JR東日本<9020>の陸運などが堅調。また、アドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>、ルネサス<6723>の半導体関連のほか、村田製<6981>、太陽誘電<6976>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>などハイテクの一角が堅調。国内証券が買い推奨でカバレッジを再開した日本ケミコン<6997>、業績・配当予想を上方修正したホットランド<3196>が急伸し、大型受注を発表したジェイテックコーポレーション<3446>は大幅に上昇。 セクターでは鉱業、石油・石炭製品、電気・ガスが下落率上位に並んでいる一方、海運、陸運のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の80%、対して値上がり銘柄は17%となっている。 本日の東京株式市場は前日の米株式市場と同様、重要イベント前の様子見ムードから動意に乏しい展開となっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は日本時間21日午前3時頃に公表される予定。今会合では、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を据え置くことはほぼ確実とされている。 一方、四半期に一度の最新の経済・政策金利見通しが公表される予定で、今年末および来年末の政策金利中央値が注目される。金利先物市場では年内の追加利上げの織り込みが4割程度にとどまり、来年末時点については0.25ポイントの利下げ2-3回分の実施を織り込んでいる。 しかし、足元の原油市況の上昇を受けて、最新の8月分の米国の消費者物価指数(CPI)および卸売物価指数(PPI)は総合指数では予想を上回り、モメンタムを示す前月比では前の月から大きく加速した。 また、19日に発表されたカナダの8月CPIは前年同月比+4.0%と7月(+3.3%)を大幅に上回り、市場予想(+3.8%)も超過した。上昇率は4月以来の大ききで、鈍化傾向にあったインフレは再び大きく加速に転じた。これを受け、短期金融市場が織り込む10月のカナダの金融政策会合での追加利上げの確率は、CPI発表前の3割程度から5割程度にまで上昇した。 こうした中、FRBは引き続きインフレとの戦いが終了したなどと、市場が喜ぶような姿勢を打ち出せるわけは当然ないと思われる。一方で、過度な金融引き締めを懸念する声がFRB内部で増えていることもあり、「政策判断はデータ次第で会合ごとに決定」するとの従来方針は維持されるとみられる。 結果、今年末の政策金利中央値は0.25ポイントの追加利上げ1回分を示唆することになりそうだ。すなわち、前回6月時点での政策金利中央値である5.625%水準が維持されると考えられる。仮に中央値がこれより高くなると、タカ派的と捉えられ、株式市場はネガティブに反応する可能性があろう。 来年末の政策金利中央値が市場想定程には利下げを示唆しない場合もタカ派に受け止められる可能性はある。ただ、こちらは今後のデータ次第で大きく変化する可能性が高いため、市場が素直にそのまま解釈する可能性は低く、今年末の政策金利中央値の方が攪乱要因になりそうだ。 19日、米10年債利回りは遂に8月22日に付けた高値を上回ってきており、金利動向に対する警戒感は一段と高まっている。FOMCの結果を受けて金利がさらに上値を追うような展開になると、株式市場の調整色が強まりそうで注意が必要だ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/20 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反落、気掛かりな材料が散見される *12:18JST 日経平均は3日ぶり大幅反落、気掛かりな材料が散見される  日経平均は3日ぶり大幅反落。403.86円安の33129.23円(出来高概算8億6150万株)で前場の取引を終えている。 先週末15日および週明け18日の米株式市場でのダウ平均は288.87ドル安(-0.83%)、6.06ドル高(+0.01%)、ナスダック総合指数は-1.56%、+0.01%だった。週末は大手自動車労組が初の一斉ストライキに突入したことやミシガン大学消費者信頼感指数が予想以上に悪化したことに加え、長期金利の上昇や台湾積体電路製造(TSMC)によるネガティブな報道を背景とした半導体株安が重しになった。一方、週明けは住宅指標の悪化が懸念された一方、長期金利の低下が支えとなり、連邦公開市場委員会(FOMC)を控えるなかもみ合いに終始した。先週末の米ハイテク株安の流れを引き継いで日経平均は236.86円安からスタート。寄り付き後はしばらくもみ合いが続いていたが、中国・香港株の下落が重しとなり、前場中ごろから一段と下げ幅を広げると、本日の安値水準で前場を終えている。 個別では、東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、東京精密<7729>、HOYA<7741>、イビデン<4062>の半導体関連が大きく下落し、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、SMC<6273>などの値がさハイテク株や、SHIFT<3697>、リクルートHD<6098>、アンビス<7071>などのグロース(成長)株も下落。業績予想を下方修正した扶桑化学工業<4368>、第1四半期が減益決算となったアスクル<2678>は大きく下落。IDOM<7599>はビックモーターによる保有株売却の検討が伝わり売られた。 一方、中間配当の権利取りを狙った買いなどから郵船<9101>や川崎汽船<9107>のほか、石油資源開発<1662>、INPEX<1605>、マツダ<7261>、三菱自動車<7211>、淀川製鋼所<5451>、中部鋼鈑<5461>、高知銀行<8416>、愛媛銀行<8541>など景気敏感・バリュー(割安)系のセクターが総じて高い。配当実施に関するリリースを材料に水戸証券<8622>が大幅に上昇し、丸三証券<8613>はストップ高買い気配のまま終えている。また、自社株買いなどを材料にアイザワ証G<8708>、東邦HD<8129>などが大幅高となっている。 セクターでは精密機器、電気機器、サービスが下落率上位に並んでいる一方、海運、鉱業、輸送用機器が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の61%、対して値上がり銘柄は35%となっている。 連休明けの日経平均は値幅を伴った形で下落。東証株価指数(TOPIX)は相対的に底堅く推移しているが、半導体を中心としたハイテク株の下落の影響から、日経平均の下落率が大きい。半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が製品納入を遅らせるよう取引メーカーに要請したことが背景とされている。 TSMCからの要請を巡っては、投資家の間では一時的な出荷調整に過ぎないのではないかと捉えている向きもいるようだ。ただ、TSMCはこの報道に関してメディアからの新たな情報発信の要請には応えていないようで、疑念を増幅させてしまっている。ちょうど一年ほど前頃から市場で台頭していた2023年の半導体市況の在庫調整の完了と本格的な市況回復については、実際には今年に入ってからの各企業による相次ぐ業績下方修正で度々先延ばしにされてきている。 半導体関連株は市況回復をかなり先取りする形で年前半に株価上昇を実現していただけに、このタイミングでもう一段、投資家の目線が切り下がるようなニュースフローが増えてくると、株式市場全体の調整色を強めかねず、注意を要しよう。 日経平均は現在、33000円の節目を維持しているが、配当落ち後の水準を示す日経225先物では同水準を割り込んできている。東京証券取引所が毎週第2営業日に公表しているプログラム売買に係る現物株式の売買によると、裁定残高のネットベースでの買い越し金額は既に過去3年におけるレンジ上限に近い水準にまで増加してきている。直近、海外短期筋の先物買いが裁定買いを誘発してきたことが読み取れるが、そろそろ短期筋の買い余力は限られてきたとも推察され、今後の需給反転の可能性を頭の片隅に入れておきたい。 米長期金利が高止まりしている点も気掛かりだ。米10年債利回りは18日に一時4.357%と、8月22日に付けた4.362%を窺う水準にまで上昇した。15日に発表された米9月ミシガン大学消費者信頼感指数の期待インフレ率が、1年先および5-10年先ともに市場予想と前月から大きく低下したにもかかわらず、この動きは興味深い。 むろん、同日に発表されたその他の米経済指標が予想を上回る内容だったことなども影響している可能性はあるだろう。ただ、原油市況に連れてガソリン価格が足元で上昇基調にあり、10月分から再び期待インフレ率が上昇することが懸念されるなか、今の段階から米長期金利が前回の直近高値を上回ってしまうようだと相場の先行き警戒感はさらに高まってしまいそうだ。 本日の東京株式市場では海運や鉱業、鉄鋼、銀行など景気敏感・バリュー(割安)株が買われており、先週に続き、9月の中間配当の権利取りを狙った買いが相場を下支えしている。しかし、中間配当を狙った買いは間もなく一巡し、その後は配当落ちによる短期的な株価下落が意識されてくる。ハイテク・グロース(成長)株が軟調ななか、景気敏感・バリュー株も上昇一服となると、相場のけん引役が見当たらなくなるため、要注意だ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/19 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、上値切り下げトレンド脱し先高観強まる *12:17JST 日経平均は大幅続伸、上値切り下げトレンド脱し先高観強まる  日経平均は大幅続伸。445.42円高の33613.52円(出来高概算9億2907万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でダウ平均は331.58ドル高(+0.95%)と3日ぶり反発、ナスダック総合指数は+0.81%と続伸。中国人民銀行が利下げを決定したほか、8月小売売上高が予想を上回ったため、世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まった。欧州中央銀行(ECB)は追加利上げを決定も利上げサイクル終了期待が相場を支援した。欧米株の上昇を引き継いで日経平均は260.34円高からスタート。為替の円安基調や時間外取引の米株価指数先物の大幅高を追い風に、景気敏感株を中心にハイテク株まで幅広く買われるなか、序盤からじわじわと上値を伸ばし、前場終盤頃には33634.31円(466.21円高)まで上昇した。 個別では、年初来高値を更新した原油市況を追い風にENEOS<5020>の石油・石炭製品、INPEX<1605>の鉱業が大幅に上昇。東京電力HD<9501>の電気・ガス、中越パルプ工業<3877>のパルプ・紙、野村<8604>の証券・商品先物取引、郵船<9101>の海運、UACJ<5741>の非鉄金属などバリュー(割安)系が引き続き全般高い。円安を支援材料に豊田自動織機<6201>、マツダ<7261>の輸送用機器が軒並み高となり、アイシン<7259>は前日の中期経営計画が引き続き材料視された。清水建設<1803>、三菱地所<8802>の建設や不動産も高い。他にも商社株が属する卸売や銀行・保険、鉄鋼など景気敏感セクターが軒並み強い動きを見せている。業績関連の材料ではANYCOLOR<5032>、TOKYO BASE<3415>、ニーズウェル<3992>が大幅に上昇。 一方、原油市況の上昇でコスト高が懸念されたかJAL<9201>、ANAHD<9202>の空運のほか、小売りが軟調。業績関連のリリースが失望されたポールHD<3657>、Link-U<4446>、ブラス<2424>、Hamee<3134>が急落し、好決算も出尽くし感が先行したギフトHD<9279>は大幅安となり、MSOL<7033>はストップ安まで売られた。 セクターでは石油・石炭製品、鉱業、電気・ガスを筆頭にほぼ全面高となり、空運と小売りのみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の72%、対して値下がり銘柄は25%となっている。 日経平均は33500円台を回復し、8月1日の33488.77円、9月7日の33322.45円を超えてきた。上値切り下げトレンドを脱したことで、先高観が強まる状況となっている。為替の円安基調に加えて、世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待が「世界の景気敏感株」と称される日本株の追い風になっている。 前日に発表された米8月卸売物価指数(PPI)は、総合が前年同月比+1.6%と市場予想(+1.3%)を上回り、7月(+0.8%)から加速。モメンタムを示す前月比も+0.7%と予想(+0.4%)を上回り、7月(+0.3%)から大幅に加速した。一方、食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比および前月比ともに予想に一致し、前年同月比の鈍化トレンドが続いたことで金融引き締めに対する懸念は強まっていない。 米8月小売売上高は前月比+0.6%と予想(+0.1%)を大幅に超過、自動車とガソリンを除くベースでも同+0.2%と予想(-0.1%)に反して加速した。ただ、7月分および6月分が下方修正されたほか、食料品店や百貨店など前月から鈍化した項目も多く、こちらも金融引き締め懸念を強めるほどの内容とは捉えられなかった。 投資家は米国経済の堅調さとインフレ鈍化を同時に確認できたものとして総じてポジティブに捉えているようだ。また、前日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会が開催され、直前になり急速に高まった市場の利上げ予想の通り、0.25ポイントの利上げが決定された。しかし、こちらもECBが経済見通しの軟化を示唆したことで、大半の投資家は今会合での利上げが最後になったとの見方を強めたようで、相場はむしろポジティブに捉えている。 さらには、景気の低迷長期化が懸念されている中国で14日、中国人民銀行(中央銀行)が今年2回目となる預金準備率の引き下げを発表したことで、中国経済の景気後退懸念も和らいだ。 結果として、昨日にかけて米国や欧州、中国で確認された一連の出来事はすべて景気後退やインフレ・金融引き締めに対する懸念を和らげる、株式市場にとってポジティブな材料として消化された。 ただ、今晩の米国市場は株価指数および個別株の先物・オプション取引の4つの取引の決済日が集中する「クアドラプル・ウィッチング」、すなわち米国版のメジャーSQ(特別清算指数)に当たる。この日を境に需給が転換することが多く、来週以降の株式市場の動きには注意したい。振り返ってみれば米消費者物価指数(CPI)も米卸売物価指数(PPI)も総じて上振れ気味の結果であった。米長期金利も高止まりしており、来週以降に再び金利高・株安の局面が訪れる可能性は捨てきれない。 一方、先週末のメジャーSQ日に日経平均がSQ値を上回れなかったことで「幻のSQ」を演出し、先高観が後退していた日本株は今週末になって上値切り下げトレンドを脱し、SQ値も大幅に上回ってきた。これにより一気に先高観が急速に強まっている。クアドラプル・ウィッチング以降の米国株の動向には要注意だが、金利上昇局面は円安も含めて割安株の多い日本株には相対的に追い風になりやすいとみられ、世界株対比での日本株の底堅さはこの先も続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/15 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は反発、日本株の相対的強さ光るも短期筋の買い余力は徐々に低下 *12:10JST 日経平均は反発、日本株の相対的強さ光るも短期筋の買い余力は徐々に低下  日経平均は反発。342.49円高の33049.01円(出来高概算7億5761万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でダウ平均は70.46ドル安(-0.20%)と続落、ナスダック総合指数は+0.29%と反発。8月消費者物価指数(CPI)は予想を上回ったが、利上げサイクル終了の軌道を修正する内容ではないとの見方から買いが先行。ダウ平均は終盤にかけ下落に転じたが、長期金利の低下を背景にハイテクは概ね堅調に推移した。米CPIを波乱なく消化できた安心感から日経平均は219.02円高からスタート。寄り付き直後は心理的な節目を前にもみ合いが続いていたが、時間外取引の米株価指数先物が大幅に上昇していることが支援材料となり、景気敏感株からハイテク株まで買われるなか、日経平均は前場中ごろには33085.86円(379.34円高)まで上昇した。 個別では、出光興産<5019>、ENEOS<5020>の石油・石炭製品、東京鐵鋼<5445>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、東北電力<9506>、東京電力HD<9501>の電気・ガス、野村<8604>、大和証G<8601>の証券、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>の保険、帝人<3401>、東レ<3402>の繊維製品、レンゴー<3941>、王子HD<3861>のパルプ・紙などバリュー(割安)系が全般強い。ほか、HOYA<7741>、東京精密<7729>、TOWA<6315>、東エレク<8035>、ディスコ<6146>、イビデン<4062>、TDK<6762>の半導体関連やハイテクの一角も高い。決算が好感されたトルク<8077>、丹青社<9743>、鳥貴族HD<3193>などは大幅に上昇。 一方、国内証券が投資判断を引き下げた川崎汽船<9107>が大きく下落。7月機械受注の下振れが嫌気されたかファナック<6954>、オークマ<6103>などが軟調。英半導体設計大手アームの公開価格が決定したソフトバンクG<9984>は材料出尽くし感から下落。小糸製作所<7276>は外資証券による投資判断の格下げで大幅安。エイチ・アイ・エス<9603>、ヤーマン<6630>は決算が失望されて大きく下落している。 セクターでは石油・石炭製品、鉄鋼、精密機器が上昇率上位に並んでいる一方、空運、ゴム製品、海運、鉱業のみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の57%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 前日の米株式市場ではダウ平均は下落、ナスダック総合指数は上昇したものの上昇率は0.29%と小幅だった。これに対し、日経平均は1%を超える上昇率で33000円を回復するなど想定以上の強い動きを見せている。東京証券取引所による改革要請や中間配当の権利取りを狙った動きのほか、日米の金利先高観などを背景に引き続きバリュー(割安)系が全体的に強い動きを見せている。加えて、米消費者物価指数(CPI)を波乱なく通過できことを材料に指数寄与度の大きいハイテク株に買いが入っていることが好影響を与えているようだ。また、為替の円安基調が維持されている点、13日に発足した第2次岸田内閣による今後の経済対策への期待なども寄与しているもよう。 一方、米8月CPIは総合指数が前年同月比+3.7%と7月(+3.2%)から加速し、市場予想(+3.6%)を上回った。前月比は+0.6%と予想に一致したが7月(+0.2%)からは大きく加速。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比では+4.3%と予想に一致し、7月(+4.7%)からは鈍化したが、モメンタムを示す前月比は+0.3%と予想(+0.2%)を上回った。上振れ幅が大きくなかったことで、株式市場は神経質に反応しなかったが、総じて上振れ気味で米金融政策の先行き不透明感を強める内容だったといえる。 また、警戒されている原油市況については、国際エネルギー機関(IEA)が13日、サウジアラビアとロシアによる減産延長を理由に、2023年後半には大幅な供給不足が生じる恐れがあると警告した。12日の石油輸出国機構(OPEC)の月報も供給不足に懸念を示しており、立て続けの警告となった。今後の原油市況は引き続きインフレ・金融政策動向のリスク要因になりそうだ。 日本株の世界株に対する相対的な強さが光っているが、やや気がかりな点もある。東京証券取引所が13日に公表したプログラム売買に係る現物株式の売買状況によると、9月8日時点の裁定残高はネットベースで1兆2983.82億円の買い越しとなり、前週(1兆2104.03億円の買い越し)から増加した。ネットの買い越し金額は2021年以降のレンジ上限に近い水準にまで増加してきた。海外短期筋の先物買いが裁定買い(現物買い・先物売り)を誘発してきたことが読み取れるが、そろそろ短期筋の買い余力は限られてきたと推察される。 本日、33000円を回復している日経平均も心理的な節目では売り買いが拮抗しているようで、決して上値が軽いようには見えない。本日の後場も33000円を維持して終えられるかが目先の焦点になりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/14 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は反落、材料に対し悪反応が先行しやすい状況か *12:10JST 日経平均は反落、材料に対し悪反応が先行しやすい状況か  日経平均は反落。100.48円安の32675.89円(出来高概算7億2605万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は17.73ドル安(-0.05%)と4日ぶり反落、ナスダック総合指数は-1.03%と3日ぶり反落。消費者物価指数(CPI)の発表を13日に控えるなか警戒感が上値を抑制。新製品発表にサプライズが乏しかった携帯端末のアップルや決算が嫌気されたソフトウエアのオラクルの下落が重しになり、ハイテク中心に下落した。米株安を受けて日経平均は34.08円安からスタート。為替の円安を追い風に寄り付き直後は一時上昇に転じる場面もあったが、今晩の米CPIを前にした警戒感や中国・香港株が下げ幅を広げたことが重しになり、前引けにかけては軟化する展開となった。 個別では、中堅外資証券が目標株価を引き上げた横浜ゴム<5101>、外資証券が投資判断を引き上げたブリヂストン<5108>が大きく上昇。川崎汽船<9107>を筆頭した海運や、第一生命HD<8750>、東京海上<8766>の保険、原油市況の上昇を好感した石油資源開発<1662>、INPEX<1605>、出光興産<5019>のエネルギー関連、三菱製鋼<5632>、神戸鋼<5406>の鉄鋼、レンゴー<3941>、日本製紙<3863>のパルプ・紙などバリュー(割安)系が全般高い。三菱UFJ<8306>や筑波銀行<8338>、福島銀<8562>など銀行株は連日で強い動きを見せている。ほか、JR東<9020>、JR東海<9022>の陸運、Jフロント<3086>、良品計画<7453>、しまむら<8227>の小売など内需系も堅調。 配当方針の変更と増配を発表したアートネイチャー<7823>、好決算が材料視された学情<2301>、神戸物産<3038>、未定としていた配当実施を発表した沖縄電力<9511>などが大きく上昇。クスリのアオキ<3549>、ツルハHD<3391>、TOA<6809>は投資判断の引き上げが観測されている。東証スタンダードでは業績上方修正や増配が好感されたオービス<7827>、来期からの配当方針を変更したウエスコHD<6091>などが大幅高となっている。 一方、HOYA<7741>、東京精密<7729>の精密機器、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>、アルバック<6728>の半導体や、キーエンス<6861>、ソフトバンクG<9984>、日立<6501>などハイテクが全般下落。イビデン<4062>は新製品発表を受けた米アップル株の下落が影響して下落。三井ハイテック<6966>は想定以上の業績下方修正を受けて急落。今期見通しが市場予想を下回ったラクスル<4384>や、資金調達に伴う株式価値の希薄化が懸念されたジャフコG<8595>も大幅安。ほか、住友ベークライト<4203>、東応化<4186>、JCU<4975>の化学、外資証券が投資判断を引き下げた大成建設<1801>、清水建設<1803>をはじめとした建設の下落が目立つ。 セクターでは精密機器、電気機器、建設が下落率上位に並んでいる一方、ゴム製品、保険、海運が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の65%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 本日の東京市場は全般もみ合いの展開。米長期金利の先高観がくすぶるなか、今晩の米8月消費者物価指数(CPI)の発表を前に様子見ムードが強まっている。前日の米10年債利回りはほぼ横ばい。米10年債入札は堅調だったようだが、最高落札利回りは2007年以来の高水準を記録。インフレ高止まりと米財務省の国債発行拡大を受けて高い利回りが要求されているようだ。 米8月CPIは、食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比+4.3%と7月(+4.7%)から鈍化が予想されている。一方、全体を示す総合CPIは同+3.6%と7月(+3.2%)から加速が予想されている。モメンタムを示す前月比ではコア指数が+0.2%と7月(+0.2%)から横ばい、総合は+0.6%と7月(+0.2%)から大きく加速する見通しだ。 12日、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)は一時1バレル=89.37ドルと昨年11月以来の水準にまで上昇し、年初来高値更新トレンドを続けている。昨日発表された石油輸出国機構(OPEC)の月報で、サウジアラビアの減産延長により、世界の石油市場は10-12月期に日量300万バレル超の供給不足、過去10年余りで最大の供給不足に直面する見通しが示されたことが材料視された。 原油市況の上昇が警戒されているなか、市場は今回の米CPIで、コアCPIの鈍化よりも総合CPIの加速の方をネガティブに捉える可能性があり、米金利上昇が誘発する株安には注意を払いたい。 ほか、9月1-7日に実施されたバンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネージャー調査が公表された。同調査結果からは、投資家の中国株を敬遠する動きが強まっていることが米国株などへの追い風になっているという指摘がされている一方、米国株の資産配分は前回調査から29ポイント拡大し、差し引き7%のオーバーウエートとなったことも示された。オーバーウエートは昨年8月以来だという。 各国の金融政策運営や世界の景気動向について先行き不透明感がくすぶるなか、果たして、ここから先いったいどれだけの買い余力が残されているのだろうか。最近の株式市場の動きを見る限り、市場はすでに大方の好材料を概ね織り込み済み、買いが一巡して需給も重しになってきているような印象を受ける。あらゆる材料に対してポジティブな解釈・反応よりもネガティブな解釈・反応が先行しやすい状況とみられ、イベントが続く来週にかけての動きには注意が必要とみる。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/13 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶり反発、徐々に広がる買いづらさ *12:10JST 日経平均は4日ぶり反発、徐々に広がる買いづらさ  日経平均は4日ぶり反発。197.95円高の32665.71円(出来高概算7億2702万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でダウ平均は87.13ドル高(+0.25%)と3日続伸、ナスダック総合指数は+1.13%と続伸。イエレン財務長官がインフレは着実に鈍化し、景気後退を回避する軌道にあると楽観的な見解を示したことが投資家心理を支えた。また、証券会社によるレーティング格上げが好感された電気自動車大手のテスラを筆頭としたハイテク株高が全体をけん引した。米株高を受けて日経平均は161.4円高からスタートすると、寄り付き直後に32749.35円(281.59円高)まで上昇。一方、日本銀行の政策修正観測の高まりを背景とした国内長期金利の上昇が重しとなった。ハイテク株を中心に下落し、日経平均は大きく失速、前場後半には18.72円高まで上げ幅を縮めた。ただ、時間外取引のナスダック100先物が強含みで推移するなか、前引けにかけては再び騰勢を強める展開となった。 個別では、トヨタ自<7203>、マツダ<7261>、ホンダ<7267>の自動車株が全般上昇。川崎汽船<9107>などの海運や、石油資源開発<1662>、三菱ケミG<4188>などバリュー(割安)系が堅調。KDDI<9433>、ソフトバンク<9434>の通信、武田薬<4502>、塩野義<4507>の医薬品なども高い。ABCマート<2670>と日軽金HD<5703>は証券会社のレーティング格上げが好感された。好決算や業績上方修正を材料に正栄食<8079>、萩原工業<7856>などが急伸している。 一方、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>の半導体株や、イビデン<4062>、本日決算を予定している三井ハイテック<6966>のハイテク関連が全般下落。日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼の下落も目立つ。MS&AD<8725>、SOMPO<8630>は国内証券のレーティング格下げが嫌気され、保険株全体も連れ安となっている。ほか、IHI<7013>が急落。米航空機エンジンのプラット・アンド・ホイットニーが手掛けるエンジンで見つかった製造過程での欠陥について、同エンジンに参画している同社も業績への影響が懸念されたようだ。代表取締役社長の辞任が発表されたネクステージ<3186>はストップ安となっている。 セクターでは医薬品、輸送用機器、繊維製品が上昇率上位に並んでいる一方、鉄鋼、保険、卸売が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の65%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 前日の週明けの米株式市場ではレーティング格上げが材料視された電気自動車(EV)大手のテスラを筆頭にアマゾン・ドット・コムやメタ・プラットフォームズなどハイテク株が大きく上昇し、ナスダック総合指数は+1.13%と続伸した。米10年債利回りが4.29%と(先週末8日は4.27%)と上昇するなかでも米ハイテク株が上昇したことは目先の安心感を誘う。 一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+0.09%とほぼ横ばいにとどまった。また、日本では先週末の一部報道を受けて、日本銀行がマイナス金利の解除に想定以上に早く取り掛かるのではとの思惑が高まり、国内の長期金利が上昇してきていることも重しになっている。新発10年物国債利回りは11日に0.705%と、2014年1月以来およそ9年8カ月ぶりの水準にまで上昇したが、本日は0.720%まで上値を伸ばしている。 日米の長期金利の上昇を受けて、東京市場でもハイテク株、とりわけ半導体株の下落が目立っている。生成AI(人工知能)関連の筆頭格として注目されてきたアドバンテスト<6857>は下落トレンドが強まっており、日足ではサポートになりそうな移動平均線が200日線くらいしか見当たらない。週足では13週線を下回って26週線も下回りそうなところまで下げてきている。26週線も下回ってしまうようだと、株価の調整は一段と厳しいものになりそうだ。 また、半導体株の中でも比較的値持ちのよかったディスコ<6146>も本日は大きく下落し、遂に25日線を割り込んできている。半導体株の調整色が続くなか、日米の長期金利の上昇を通じて、買いづらさが意識される対象は次第にハイテク全般から内需系のグロース(成長)株にまで広がってきている印象がある。前日急伸した銀行株は本日も底堅い動きを見せているが、買える対象が銀行株に限られてきた感もあり、ムードは良くない。 12日には米アップルの新製品発表イベントが開催されるが、中国による同社への規制が強化されるなか、期待感は萎んでいるように見受けられる。イベントをもって同社株をはじめハイテク株の動きが好転していく可能性は低そうだ。その後に米消費者物価指数(CPI)、欧州中央銀行(ECB)定例理事会、米卸売物価指数(PPI)などの重要イベントが控えていることを踏まえれば、なおさらだろう。日銀の政策修正観測が高まり、来週には日米の金融政策決定会合も控えるなか、ハイテク株は当面上値の重い展開が続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/12 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は続落、マイナス圏で軟調もみ合い展開続く *12:11JST 日経平均は続落、マイナス圏で軟調もみ合い展開続く  日経平均は続落。62.80円安の32544.04円(出来高概算6億6726万株)で前場の取引を終えている。 前週末8日の米国株式市場のダウ平均は75.86ドル高(+0.22%)と続伸。中国との対立を警戒した売りが一段落した。中国政府によるアイフォーン使用制限が警戒され売られていたアップル株が反発したことも相場支援材料となった。金利動向も安定したため主要株式指数は終日底堅く推移し、プラス圏を維持し終了。ナスダックは小反発、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。ただ、早々にマイナス圏に転落して、さえない動きとなっている。 個別では、レーザーテック<6920>やディスコ<6146>、東エレク<8035>などの半導体関連株が軟調に推移。川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株の一角、JR西<9021>などの陸運株、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>、三菱重工業<7011>、三菱地所<8802>、信越化<4063>なども軟調に推移した。そのほか、第1四半期の営業赤字転落を嫌気されたgumi<3903>、通期業績予想の下方修正を発表したベステラ<1433>などが急落、HEROZ<4382>、エイチーム<3662>、YTL<1773>などが値下がり率上位に顔を出した。 一方、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>などの金融株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株が堅調に推移。また、ソフトバンクG<9984>、神戸製鋼所<5406>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>、INPEX<1605>、ホンダ<7267>なども上昇。そのほか、第1四半期は想定以上の大幅増益決算となったフリービット<3843>、前期業績上振れ着地で今期も2ケタ増益・増配見通しとなったアイル<3854>が急騰、JMDC<4483>、アルトナー<2163>などが値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは、不動産業、サービス業、機械が下落率上位となった一方で、銀行業、保険業、電気・ガスが上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の46%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 9月11日の日経平均は前週末比83.70円高の32690.54円と反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値(12月限)は、大阪比100円高の32520円。本日の日経平均は、前週末に大幅安となった反動からやや買いが先行。ただ、値がさハイテク株の動きが重く、その後マイナスに転じている。そのほか、香港ハンセンなどが軟調に推移している点も重しとなっているか。 新興市場も軟調な展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後、一時的にプラス圏に浮上するも即座に再度マイナス圏転落。前引けにかけて下げ幅を広げる展開となっている。米長期金利は高水準で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けにくい地合いが続いている。また、今週は重要インフレ指標の発表を控えており、積極的に買い進む動きは限定的か。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.60%安、東証マザーズ指数は0.91%安となった。 さて、日本の物価上昇率が2%を上回る状態が続く中、国内の長期金利は一時0.7%と2014年1月以来の高水準を付けた。日銀の植田和男総裁が9日付の読売新聞のインタビューで、マイナス金利政策を解除する上で「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」とも述べたと伝わり、イールドカーブ・コントロール(YCC)撤廃や早期のマイナス金利解除への思惑が強まった。本日は、金利上昇に伴い貸出の利ざやが拡大するとの期待から銀行株は思惑買いが向かっている一方で、金利上昇が収益環境のデメリットとなる不動産関連株は売り優勢の展開となっている。 話は変わって、今週は重要インフレ指標の発表が控えている。13日には米8月消費者物価指数(CPI)、14日には米8月小売売上高及び米8月生産者物価指数(PPI)、15日にはミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。米雇用関連指標は、労働市場の逼迫緩和を示唆する結果となったが、CPIとPPIは全体では伸びの加速が予想されている。詳細は休日の「国内株式市場見通し」をご確認いただきたいが、兎にも角にも今週は米連邦準備制度理事会(FRB)が重要視するインフレ指標の結果を見極めたい動きが優勢となろう。 イエレン米財務長官は10日、ブルームバーグとのインタビューで、米国が労働市場に大きな打撃を与えずにインフレを抑制できると一段と自信を強めていると述べたようだ。同長官は「インフレの全ての指標が下降方向にある」と指摘したうえで、労働市場で需給緩和を目にしていることは「重要で良いことだ」とも発言した。前週は、FRB当局者らも米経済のソフトランディングは可能、と楽観的な見方を強めていた。 CMEのFEDウォッチツールでも、9月のFOMCでは金利据え置きが大方の予想となっている。ただ、11月FOMCでの予想は、据え置きに53.5%、0.25%の利上げに43.5%と警戒感がぬぐえていない。足元では、サウジアラビアの想定以上の減産延長の発表を受けて原油市況が昨年11月中旬以来の水準にまで上昇している。原油市況の上昇は今回の調査にはまだ反映されていないかもしれないが、今後の警戒材料となる。また、14日には欧州中央銀行(ECB)定例理事会が一足先に開催されるため、ECBの決定やラガルド総裁の発言にも注目が集まるだろう。 そのほか、9月7日に発表された最新週(8月28日~9月1日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を3週ぶりに買い越した。買い越し金額は3393億円となった一方で、個人投資家は現物株を9226億円と2週連続で売り越した。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は3週連続の買い越しとなった。さて、後場の日経平均はマイナス圏での軟調推移を継続か。手掛かり材料に乏しい中、売り手優位の状況が続くか注目しておきたい。また、銀行株買い・不動産株売りの動きが加速するかも注視したい。(山本 泰三) <AK> 2023/09/11 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は続落、国内のファンダメンタルズとテクニカルについて *12:17JST 日経平均は続落、国内のファンダメンタルズとテクニカルについて  日経平均は続落。309.77円安の32681.31円(出来高概算9億7959万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は57.54ドル高(+0.16%)と3日ぶり反発、ナスダック総合指数は-0.89%と4日続落。中国政府による規制強化を嫌気したアップル株の下落が相場全体を押し下げた。一方、週次失業保険申請件数の減少や4-6月期非農業部門労働生産性改定値の改善を背景に景気後退懸念が緩和するとダウ平均は上昇に転じた。ただ、金利の高止まりを背景にナスダック指数は終日軟調に推移した。日経平均は、9月限先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)に絡んだ売買が交錯するなか、74.83円安でスタート。しかし、寄り付き直後から売りが膨らみ、早い段階で32535.58円(455.5円安)まで下落。その後は下げ渋ったが、軟調な中国株や円安の一服を背景に戻りの鈍い展開が続いた。なお、SQ値は概算で32921.39円。 個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けて東エレク<8035>を筆頭に三井ハイテック<6966>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>など主力のハイテク株が総じて下落。イビデン<4062>、新光電工<6967>などは米アップルに対する中国の規制強化が引き続き重しになっているもよう。ダイキン<6367>、ファーストリテ<9983>、SMC<6273>などの値がさ株も軟調。DOWA<5714>、フジクラ<5803>、住友鉱<5713>の非鉄金属、東京精密<7729>、オリンパス<7733>、テルモ<4543>の精密機器、牧野フライス<6135>、FUJI<6134>の機械などが安い。住友電工<5802>は国内証券のレーティング格下げもあり下落。 一方、東京電力HD<9501>、九州電力<9508>、関西電力<9503>の電力株、岡三証券G<8609>、東洋証券<8614>の証券株などが高い。王子HD<3861>、レンゴー<3941>、出光興産<5019>、住友不動産<8830>は国内証券のレーティング格上げを受けて上昇。ホンダ<7267>も外資証券のレーティング格上げを材料に上昇している。 セクターでは鉱業、非鉄金属、電気機器が下落率上位に並んでいる一方、電気・ガス、証券・商品先物取引、石油・石炭製品が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の73%、対して値上がり銘柄は22%となっている。 国内景気がさらに気がかりになってきた。本日、厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、7月の実質賃金は前年同月比2.5%減少した。減少率は前月(1.6%減)から拡大し、市場予想(1.4%減)も大幅に上回った。前年比マイナスはこれで16カ月連続だ。一方、名目賃金に相当する1人当たり現金給与総額は1.3%増と19カ月連続で増加したが、こちらも市場予想(2.4%増)は大きく下回っている。ちなみに毎月勤労統計の結果は前月も市場予想を大幅に下振れていた。 週前半に総務省が発表した実質家計消費の大幅な下振れに続き、今回の毎月勤労統計の結果は非常にネガティブな印象を受ける。家計の実質消費と実質賃金のマイナス傾向が長期化しているだけでなく、下振れ度合いも足元で強まってきており、国内景気が海外と比して堅調とする、これまでの日本株買いの一つの理由は既に剥落しているのではないだろうか。 足元で不動産株が強い動きを見せており、これを受けて「日本のデフレ脱却期待が高まっている」と指摘する声が聞かれる。実際、そうした期待があるからこそ、こうした物色動向が実現しているのだろう。しかし、上記のように国内での賃金・消費に関する統計結果の弱さを見ていると、デフレ脱却期待はむしろ後退する方が自然な気がしてしまい、どうにもちぐはぐな印象が否めない。 弱い統計結果を受けて日本銀行の金融緩和が正当化されれば、それは日本株にポジティブと捉える向きもいるだろう。しかし、実質賃金や実質消費の下振れ要因として、日銀の金融政策による為替の円安が影響していることは明らかだ。さらに、足元では円安が一段と進行していることに加えて、原油価格まで再び高騰してきている。これでは家計の実質賃金や実質消費のマイナス傾向が解消される道筋が描けない。 日銀は果たしてどうするのだろうか。1ドル=150円が近づいてきていることで、財務省による為替介入が徐々に意識され、円安進行のスピードは鈍化してくるだろうが、日銀が現行の政策を修正しない限り、現在の円売り・ドル買いの構図が大きく反転することは難しそうだ。 日銀は賃金上昇を通じた持続的なインフレの達成が視野に入るまで現行の金融緩和政策を続けるとしている。しかし、その肝心の賃金は円安の影響もあってマイナス度合いがむしろ深まってしまっている。統計結果が弱いからこそ金融緩和を続けるのか、それともその背後にある原因に目を向け、だからこそ政策を修正するのか、政策のかじ取りは非常に難しくなってきている。個人的には、日銀が八方塞がりの厳しい状況に置かれているように見えてしまう。 上記のような状況を考えると、日本株が海外株を上回るパフォーマンスを続けるのは簡単なことではないと思われる。東京証券取引所がきっかけを作った企業改革の進展への期待など日本株の好材料は他にもあるが、5月以降のような海外株を明確にアウトパフォームする展開はもはや見込みにくいのではないだろうか。 為替の円安がさらに進展すると、日銀の年内の追加政策修正に対する思惑が高まる可能性もある。これは日本株を支えてきた景気回復と金融緩和の併存というゴルディロックス相場(適温相場)的な環境の剥落を意味することでもある。一方で、手を打たなければ、さらなる円安進行に伴う実体経済へのマイナス効果が増大する恐れもある。 なお、本日、9月限先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)を通過し、オプション取引は10月限が中心限月になっている。10月限の日経平均オプション取引の動向をみると興味深い。日経平均の現値水準から上方の各行使価格におけるコール(買う権利)と下方の各行使価格におけるプット(売る権利)の建玉残は、概ね同程度の規模で積み上がっている。前日まで日経平均は強い動きを見せていたが、ここから推察するに、あまり先高観が強まっている様子は見受けられない。 また、かなり離れた価格帯になるが、行使価格30000円にいたってはプットの建玉残が1万枚以上と極端に大きく積み上がっている。9月限のときもこうした動きが見られていたが、10月限においても極端に下値のヘッジを意識する動きが見られているのは気がかりだ。統計結果というファンダメンタルズを見ても、オプション取引の建玉残推移といったテクニカルな要素をみても、なかなか先行きに期待を持ちにくい状況のようだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/08 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は9日ぶり反落、米金利の先行きが一段と気がかり *12:14JST 日経平均は9日ぶり反落、米金利の先行きが一段と気がかり  日経平均は9日ぶり反落。36.20円安の33204.82円(出来高概算7億1062万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は198.78ドル安(-0.57%)と続落、ナスダック総合指数は-1.05%と3日続落。原油高に加え、8月ISM非製造業景況指数が予想を上回ったことで追加利上げ観測が再燃。長期金利が上昇するなかハイテク株を中心に軟調に推移した。一方、地区連銀経済報告(ベージュブック)で景気や雇用の鈍化の兆候が示されると金利上昇が一服、終盤にかけては下げ幅を縮小した。米株安を受けて日経平均は122.47円安からスタート。ただ、為替の円安基調を背景に即座に切り返すと80円程上昇に転じる場面もあった。しかし、連日の上昇に伴う短期的な過熱感が意識されるなか、米金利上昇を嫌気したハイテク・グロース(成長)株の下落が重しになり、前場中ごろには一時33096.47円(144.55円安)まで下落。一方、前引にかけては下げ渋って終えている。 個別では、アドバンテスト<6857>を筆頭にソシオネクスト<6526>、レーザーテック<6920>の半導体が大きく下落。ニデック<6594>、キーエンス<6861>、ダイキン<6367>、村田製<6981>、イビデン<4062>、ローム<6963>、芝浦<6590>、HOYA<7741>などのハイテクや半導体関連も下落が目立つ。米長期金利の上昇を嫌気し、ラクス<3923>、インソース<6200>、Appier<4180>、エムスリー<2413>のグロース株が大幅安。不正行為の疑いが一部で報じられたネクステージ<3186>は大幅に続落している。ユニプレス<5949>は国内証券のレーティング格下げが嫌気されて下落。 一方、国内証券が目標株価を引き上げた三菱重<7011>のほか、川崎重<7012>、IHI<7013>が連日で強い動き。INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業や、国内証券が揃って目標株価を引き上げた三井物産<8031>、伊藤忠<8001>、丸紅<8002>などの商社が堅調。三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>の不動産株は上値追いの様相を強めている。業績予想を上方修正したトーホー<8142>、丹青社<9743>のほか、国内証券によるレーティング格上げが好感されたタダノ<6395>、国内証券が目標株価を引き上げた竹内製作所<6432>も大幅高。 セクターでは精密機器、電気機器、鉄鋼が下落率上位に並んでいる一方、鉱業、建設、パルプ・紙が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の51%、対して値上がり銘柄は45%となっている。 前日に発表された8月の米ISM非製造業景況指数は予想を大幅に上回った。足元では、インフレが収束しつつ景気後退はマイルドなものにとどまり、かつ来年にはインフレ沈静化と景気減速を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが期待できるというゴルディロックス相場(適温相場)が続いていた。 こうした相場を維持していくためには、米ISM非製造業景況指数は景況感の拡大・縮小の境界値である50をわずかに上回る程度が市場としては心地よかった。しかし、結果は54.5と市場予想(52.5)を上回り、7月(52.7)から大きく上昇した。また気掛かりなのは、ISM製造業のときと同じように雇用と価格の項目が上昇している点だ。 前日に発表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)が、先週の雇用関連指標と同様に、米労働市場の逼迫緩和を示唆したことは好材料だったが、米ISMの製造業・非製造業がともに予想を上回り、雇用と価格が上昇した点はインフレ収束が一筋縄ではいかないことを示しており、ややネガティブに映る。 米10年債利回りは6日、4.29%と(5日は4.26%)さらに上昇し、8月22日に付けた高値4.36%を窺う動きとなっている。金利上昇を受けて債券との比較でみた株式の割高感が強まっており、米長期金利が高値を更新してくるようだと株式市場の調整は避けられないだろう。 足元の日本株は米金利上昇による為替の円安が大きな支援材料になっているが、為替介入も徐々に意識されるなか、円安余地は縮小してきていると考えられる。国内では実質賃金や実質消費の前年比マイナス傾向が続くなか、円安のマイナス効果も無視できず、日本株が円安を背景にいつまでも上昇を続けるのは難しいのではないだろうか。 5日に発表された8月の中国財新サービス業購買担当者景気指数(PMI)は51.8と7月(54.1)から大きく低下し、昨年12月以来の低水準を記録した。また、同日に発表されたドイツのサービス業と製造業を合わせた総合PMIは44.6と前月(48.5)から大幅に低下、新型コロナウイルスの流行で経済が低迷した2020年5月以来の低水準となった。 中国は米国と並ぶ世界経済の要を担う国であり、ドイツは輸出型経済という点で日本と似ている。両国の経済が極めて厳しい状況にあるなか、やはり「世界の景気敏感株」とも称される日本株だけが上昇を続けていくとは考えにくい。 もちろん、東京証券取引所の鶴の一声ではじまった企業改革への期待や、中国経済の低迷深刻化を背景にアジア地域の株式の持ち高を巡って中国株から日本株へ資金をシフトする海外投資家の動きなども踏まえれば、日本株の相対的な強さは続きそうではある。しかし、現値水準からの上値の余地は大きくないと思われる。 なかなか投資に対して積極的になりにくい状況ではあるが、物色動向としては、目先は引き続き高配当利回り銘柄や割安(バリュー)株が優位な地合いが続きそうだ。グロース株は長期的には仕込み時を検討し始めたいところだが、米長期金利の先高観がくすぶるなか、短期的にはまだ厳しい状況が続くと考えられる。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/07 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は8日続伸、日本株強し、独歩高の持続性はいかに *12:11JST 日経平均は8日続伸、日本株強し、独歩高の持続性はいかに  日経平均は8日続伸。225.72円高の33262.48円(出来高概算7億1556万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は195.74ドル安(-0.56%)と反落、ナスダック総合指数は-0.07%と小幅続落。サウジアラビアやロシアが原油減産の延長計画を発表。供給逼迫による原油高でインフレが長期化するとの懸念が浮上し、金利が大きく上昇するなか売りが優勢となった。ただ、ハイテクは12日にイベントが開催される携帯端末アップルの新商品発表への期待から底堅く推移した。一方、前日の東京時間から1円近く進んだ円安・ドル高基調を追い風に日経平均は78.3円高から続伸スタート。序盤から買いが先行し、前場中ごろには33279.00円(242.24円高)まで上昇した。中国・香港株の下落を受けて上げ幅を縮める場面があったが、アジア市況が下げ渋るに伴い、前引けにかけては再び騰勢を強めた。 個別では、為替の円安を追い風にトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、デンソー<6902>など自動車関連が上昇。マツダ<7261>は国内証券のレーティング格上げも寄与し大幅高。サウジアラビアとロシアの減産延長を受けた原油高を背景にINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、出光興産<5019>が高い。主力どころでは三菱重<7011>、川崎重<7012>の上昇が目立つ。高知銀行<8416>、池田泉州<8714>など地銀株が軒並み上昇しており、山口FG<8418>は国内証券のレーティング格上げも寄与して急伸。岡三<8609>、SBI<8473>の証券、MS&AD<8725>、第一生命HD<8750>の保険など金融関連が高い。アドバンテスト<6857>、村田製<6981>、イビデン<4062>などハイテクの一角の上昇も目立っている。ほか、国内証券のレーティング格上げが観測された住友ゴム<5110>、山崎製パン<2212>が上昇。 一方、川崎汽船<9107>、郵船<9101>の海運のほか、三菱製紙<3864>、大王製紙<3880>のパルプ・紙、トプコン<7732>、朝日インテック<7747>の精密機器、ライフドリンクC<2585>、アサヒ<2502>、日清粉G<2002>の食料品、AZ丸和HD<9090>、西日本鉄道<9031>の陸運、チヨダ<8185>、クリレスHD<3387>の小売など、内需系が全般軟調に推移。 セクターでは鉱業、輸送用機器、証券・商品先物取引が上昇率上位に並んでいる一方、海運、倉庫・運輸、パルプ・紙が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の55%、対して値下がり銘柄は40%となっている。 東京市場は引き続き強い展開となっている。前日は短期的な過熱感を警戒した利益確定売りで前場は軟調に推移していたが、後場はじわじわと水準を切り上げ、結局、日経平均と東証株価指数(TOPIX)はともに7日続伸。TOPIXは連日でバブル崩壊後の高値を更新し、日経平均は高値引けだった。 前日は週明けに強い動きを見せた景気敏感株・バリュー(割安株)も反動売りをこなして全般底堅い動きが見られていた。公募増資の観測報道で大きく下落したJFE<5411>が水を差すかと思われたが、鉄鋼セクターの下落は同社を除けば軽微だった。そして、本日は再び景気敏感・バリューが全面的に強い状況となっている。 前日の欧米株式市場で主要株価指数が揃って下落しているなかでの、足元の日本株のこうした強さには目を見張るものがある。むろん、為替の円安が一段と進行していることが大きく寄与している部分は否めないが、為替要因を差し引いても強い印象を抱く。海外投資家が再び日本株の買いを強めているという多方面で聞かれる指摘は妥当なようだ。 一方、その為替のほか世界経済の先行きを巡っては不透明感が強く、世界の景気敏感株と称される日本株がいつまで独歩高を続けることができるのかは心もとない。サウジアラビアが原油の自主減産をさらに3カ月延長することを発表し、ロシアも原油輸出の削減を年内は継続する方針を示した。これを受けて、原油市況が大きく上昇しており、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、期近物)は5日、一時1バレル=88.07ドルと昨年11月中旬以来の高値を記録した。また、米雇用統計の発表後に上昇していた米長期金利の上昇は祝日明けも続いており、米10年債利回りは5日、4.26%(先週末4.18%)まで上昇した。 足元の日本株は米金利上昇を背景とした為替の円安のプラス効果をより強く意識しているようだが、前日に総務省が発表した家計調査における実質家計支出の大幅な下振れをみても、国内の景気動向は安泰とはいえない。 また、株式市場はインフレ収束と米経済のソフトランディング(軟着陸)に対する期待を根強く維持しているようだが、これまでのディスインフレの主因は原油などのコモディティ価格の下落だ。そのコモディティ価格の筆頭格でもある原油市況が上昇に転じていることを踏まえれば、今後インフレは米連邦準備制度理事会(FRB)の目標値である2%を大きく上回る水準で下げ止まる、もしくは再び上昇していく可能性もあると考えられる。 そのようなシナリオが実現すれば、追加利上げ観測が再び台頭し、利上げサイクル終了期待やソフトランディング期待も後退しかねない。来週は米国で消費者物価指数(CPI)などの物価指標の発表があり、その後は日米の金融政策決定会合が開催される。CPIの結果次第では、相場は一気に警戒モードに転換する可能性がある。東京市場も、今週末の9月限先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)以降も、足元の強い基調が維持されるかについては注意深く見極める必要があろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/06 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は7日ぶり反落、先高観の表れか33000円タッチで達成感か? *12:11JST 日経平均は7日ぶり反落、先高観の表れか33000円タッチで達成感か?  日経平均は7日ぶり反落。69.18円安の32870.00円(出来高概算6億5853万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場はレーバーデーの祝日に伴い休場。欧州株式市場ではドイツDAXが-0.09%、英FTSE100が-0.15%、仏CAC40が-0.23%と全体的に冴えない展開。前日までに6日続伸していた日経平均は2.23円高と続伸スタート。取引開始直後には一時1カ月ぶりに33000円を回復したが、短期的な過熱感から失速すると、次第に利益確定売りが優勢となり、32784.32円(154.86円安)まで下落する場面もあった。その後は手掛かり材料難のなか一進一退が続いた。 個別では、アドバンテスト<6857>やルネサス<6723>、芝浦<6590>、SUMCO<3436>など半導体株関連が下落。日経平均銘柄として採用に至らなかった失望感からソシオネクスト<6526>は大幅安。前日大きく上昇したSUBARU<7270>、デンソー<6902>などの自動車関連や、りそなHD<8308>、みずほ<8411>の銀行が軟調。公募増資の可能性が報じられたJFE<5411>が急落し、日本製鉄<5401>、大同特殊鋼<5471>なども連れ安。ほか、国内証券のレーティング格下げが嫌気されたイーレックス<9517>、NOK<7240>、太平洋セメ<5233>、大成建設<1801>が下落。 一方、日経平均に採用されたニトリHD<9843>が大幅高となり、レーザーテック<6920>、メルカリ<4385>も日経平均採用が好感される形で一時大きく上昇したがその後失速。信越化<4063>はOKI<6703>と共同で窒化ガリウム(GaN)を使ったパワー半導体の素材を低コストでつくる技術を開発したと報じられ、塩化ビニール樹脂のアジア向け輸出価格が上昇したとの報道も相まって上昇。OKIは急伸し一時ストップ高を付けた。ほか、SMC<6273>、ファナック<6954>、ニデック<6594>、太陽誘電<6976>などの一部のハイテク、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>の不動産が堅調。F&LC<3563>、東映<9605>は国内証券のレーティング格上げで大幅高。 セクターでは鉄鋼、石油・石炭製品、保険が下落率上位に並んでいる一方、精密機器、不動産、その他製品、小売の4業種のみが上昇となっている。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の59%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 日経平均は一時8月2日以来となる33000円台に乗せる場面があったが、利益確定売りに押され、7日ぶりに小反落で前場を終えている。東証株価指数(TOPIX)も一時、連日でバブル崩壊後の高値を更新する場面があったが、連騰に伴う短期的な高値警戒感から利益確定売りが優勢となり、反落に転じている。 東証プライムの騰落レシオ(25日ベース)は4日時点で128.56%と、過熱気味とされる120%を上回っている。また、TOPIXのRSI(相対力指数、14日ベース)は足元で約75%と、こちらも一般に買われすぎを示す70%を上回ってきている。テクニカル的な過熱感が徐々に強まるなか、本日の東京市場はさすがに騰勢一服となっているようだ。 ただ、前日までの連騰記録やこの間の上昇幅を考えると、調整幅はかなり小幅でむしろ底堅さを印象付ける。また、一方でマザーズ指数が1%強の上昇率となっており、幕間つなぎの物色が向かう形で、本日は新興株が総じて堅調だ。前日のように東証プライムの主力株が広く買われて全体を底上げした後、全体が小休止する場面では新興株に買いが向かうといった形で上手く物色が循環しているともいえる。 しかし、マザーズ指数は200日移動平均線上に回復してきたものの、まだ75日線を超えられておらず、日経平均やTOPIXのように明確にトレンドが転換したわけではない。また、レーバーデー明け後の米長期金利の動きが気がかりであり、新興株を積極的に買える状況でもないだろう。 先週末に発表された米雇用統計は総じて労働市場の軟化を示し、米利上げサイクル終了期待を高めるものだった。しかし、米長期金利は発表後むしろ上昇した。レーバーデー明け後に企業の起債が増えてくることなどを意識したものとされている。レーバーデー明け後は海外投資家も本格的に夏季休暇から戻ってくるため、米雇用統計後の長期金利の上昇が祝日明け以降も続くのかを見極めたい。仮に米長期金利の上昇が続くようであれば、新興株の戻りは間もなく一服すると思われるし、米国市場が調整する形で日経平均やTOPIXも上昇が一服する可能性があろう。 ほか、本日の寄り付き前に総務省が発表した7月家計調査の結果は気がかりだ。2人以上の世帯の実質消費支出は前年同月比-5.0%となり、前年比の減少は5カ月連続となった。市場予想(-2.5%)を大幅に上回る減少率で、個人消費の動向に陰りが見られる。 日本株高の主な背景は東京証券取引所が主導する株価純資産倍率(PBR)の改善といった企業改革ではあるが、日本株買いの理由の一つとして、海外景気に比べて堅調な国内景気と、その背景としての個人消費も挙げられていた。しかし、実質家計消費の動向からは個人消費の減退が窺え、日本株買いの理由の一つは剥落しそうだ。個人消費の落ち込みは、持続的なインフレによるデフレ脱却という日本の構造変化への期待も後退させかねない要因であり、日本経済ひいては日本株の先行きは楽観視できる状況ではないだろう。 今週末は9月限先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)である。日経平均のオプション取引では、行使価格33000円にコール(買う権利)の建玉残が大きく積み上がっており、この水準では売り方と買い方の攻防が激しくなりそうだ。日経平均が33000円を明確に超えてくるようだと、コールの売り手であるディーラーのヘッジ目的の先物買いが強まる可能性はある。 ただ、日経225先物は5日の夜間取引に一時33090円まで上昇した後に失速して33000円割れ。現在行われている日中取引でも一時33000円を捉えたが、その後に失速して同水準乗せには二度失敗している。こうなると、日経平均は一時の33000円乗せによって目先の達成感が強まってしまったともいえそうだ。レーバーデー明け後の今晩の米国市場の動きがより一層重要になってきたと思われ、先行きを注視したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/09/05 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、買い先行後はじりじりと上げ幅を広げる展開 *12:14JST 日経平均は続伸、買い先行後はじりじりと上げ幅を広げる展開  日経平均は続伸。189.37円高の32899.99円(出来高概算6億5492万株)で前場の取引を終えている。 前週末1日の米国株式市場のダウ平均は115.80ドル高(+0.33%)と反発。8月雇用統計の結果が労働市場減速の証拠となり、追加利上げ観測が後退、買いが先行した。しかし、その後に発表されたISM製造業景況指数や建設支出が予想を上回り金利が上昇に転じると、特にハイテク株の売りが強まった。ナスダック総合指数は小幅に反落、まちまちとなった米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。 個別では、日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株が堅調に推移。また、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>などの金融株、トヨタ自<7203>やホンダ<7267>などの自動車関連のほか、ゼンショーHD<7550>、INPEX<1605>、ファーストリテ<9983>、三菱重工業<7011>、神戸製鋼所<5406>なども堅調に推移した。そのほか、第1四半期は想定以上の大幅増益決算となった伊藤園<2593>が急騰、業績上方修正で営業利益は前期比倍増となったファーストブラザーズ<3454>も大幅上昇、マイネット<3928>、エンビプロHD<5698>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、レーザーテック<6920>やディスコ<6146>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株の一角が軟調に推移。また、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、ダブルスコープ<6619>、なども下落。そのほか、シュッピン<3179>、エンプラス<6961>、広済堂HD<7868>、グリムス<3150>などが値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、海運、鉄鋼、輸送用機器が上昇率上位となった一方で、水産・農林業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の75%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 9月4日の日経平均は前週末比86.70円高の32797.32円と6営業日続伸でスタートした。シカゴ日経225先物清算値は大阪比60円高の32760円。本日の日経平均はやや買いが先行して始まったものの、その後は上値の重い展開となっている。4日の米国市場はレイバーデーの祝日のため海外勢の商いは膨らまないとみられ、こう着感が強い1日とみる市場関係者も多いようだ。 新興市場も売り買いが交錯する展開となっている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、マイナス圏に転落。その後買い戻しが広がったものの、積極的に買い進む動きは乏しく売り買いが交錯する展開となっている。前週末に発表された米雇用関連指標が総じて労働市場の逼迫緩和を示唆する内容だったことは国内の投資家心理にポジティブに働いている。ただ、米長期金利が再度上昇しており、新興株にとっては重しとなっている可能性がある。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.23%安、東証マザーズ指数は0.05%高となった。 さて、前週末に発表された米雇用統計の結果を振り返る。非農業部門雇用者数は前月比18万7000人増(市場予想17万人)と増加した一方で、失業率は3.8%と予想(3.5%)を大きく上回り、平均時給の伸びは前月比で+0.2%と予想(+0.3%)を下回った。労働市場の底堅さと鈍化の両方を示す強弱まちまちの内容となったが、米雇用動態調査(JOLTS)やADP全体雇用リポートに続いて労働市場の逼迫緩和を示唆する結果となった。 雇用関連指標の結果をポジティブに捉える市場関係者も増加している。「9月のFOMC会合では金利が据え置かれるとの市場予想を補強する」や「利上げ一時停止を正当化するには十分な内容」などの声が散見されている。ただ、依然として消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)などの指標を注目している関係者も多い。夏の商品価格の上昇でインフレが再加速するリスクもあるため、やはり来週に発表される同指標の結果には引き続き注視したいところ。 重要経済指標の発表やFOMCといった経済の注目材料のほか、従来から中国の状況や地政学リスクなどにもアンテナを張っておきたいと示唆しているが、本日は9月の米国株アノマリーについて触れておく。歴史的に9月の米国株式市場はパフォーマンスが悪く、弱気相場になりやすいともいわれている。調査会社CFRAによると、S&P500指数は1945年以降、9月は平均0.7%下落と最もパフォーマンスが悪い月となっているようだ。それも9月の第1月曜日のレイバーデー(労働者の日)明けから相場の展開が一変することもあるという。仮に9月が通常より不安定な地合いとなるのであれば、景気敏感株よりディフェンシブ株が注目される可能性もある。あくまで一つのアノマリーにすぎないため頭の片隅に置いておく程度に済ませておきたい。 そのほか、8月31日に発表された最新週(8月21日~25日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を2週連続で売り越した。売り越し金額は2047億円と前週から売り越し額は縮小したものの。2週連続での売り越しは3月以来となる。個人投資家も現物株を1161億円と2週ぶりの売り越し、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は2週連続の買い越しとなった。海外投資家の売り越しが今後も続くかは注目材料となろう。さて、後場の日経平均はじりじりと上げ幅を広げる展開となるか。買い手優位の状況が続くか注目しておきたい。(山本 泰三) <AK> 2023/09/04 12:14

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