ランチタイムコメントニュース一覧

ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反落、決算シーズンへの警戒感高まる、TSMC決算に注目 *12:10JST 日経平均は3日ぶり大幅反落、決算シーズンへの警戒感高まる、TSMC決算に注目  日経平均は3日ぶり大幅反落。374.15円安の32521.88円(出来高概算5億8276万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でダウ平均は109.28ドル高(+0.31%)と8日続伸、ナスダック総合指数は+0.03%と小幅ながら3日続伸。金融の好決算が続き、買いが先行。また長期金利の低下がハイテク株を支えた。さらに、良好な経済指標を受けて景気後退懸念が緩和しつつあり投資家心理が改善したほか、今後予定されている主要企業の好決算を期待した買いから終日堅調に推移した。一方、前日引け間際に大きく上昇していた日経平均は92.68円安から反落してスタート。米国市場の引け後に発表された決算を受けて電気自動車のテスラと動画配信サービスのネットフリックスが揃って時間外取引で大きく下落していることも嫌気され、下げ幅を広げる展開となり、前引けにかけては32500円割れを窺う場面もあった。 個別では、蘭ASML の決算後の株価下落を嫌気した流れからレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>など半導体株が大きく下落。ローム<6963>、キーエンス<6861>、信越化<4063>、イビデン<4062>、村田製<6981>のほか、メルカリ<4385>、エムスリー<2413>、ANYCOLOR<5032>、ベイカレント<6532>など、ハイテク・グロース(成長)株が全般下落。SUMCO<3436>は国内証券のレーティング格上げが観測されているが、半導体株安の地合いに押されて軟調。 一方、川崎汽船<9107>、日本製鉄<5401>、JFE<5411>、川崎重<7012>、INPEX<1605>など景気敏感株・バリュー(割安)が上昇。クリレスHD<3387>は国内証券のレーティング格上げを受けて急伸。オープンハウスグループ<3288>は外資証券の新規買い推奨を受けて上昇。神戸物産<3038>は月次動向が好感されて買い優勢となっている。東証スタンダード市場ではプラネット<2391>が急伸。日用品メーカーらが年内に共同の物流システム基盤の運用を開始し、同社開発の物流基盤システムが採用されると日本経済新聞社が報じており、これが材料視されている。プラズマ<6668>は国内証券の目標株価引き上げで急伸。ほか、業績・配当予想を大幅に上方修正したクロスプラス<3320>はストップ高買い気配のまま終えている。 セクターで精密機器、電気機器、保険が下落率上位に並んでいる一方、鉄鋼、鉱業、不動産が上昇率上位に並んでいる。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は29%となっている。 前日、日経平均は引けにかけて大きく上げ幅を拡大し、日経225先物は20日の夜間取引において一時33000円を回復した。しかし、本日の日経平均は朝方から売りが先行し、寄り付きから前日比マイナス圏での推移が続いている。下げ幅を徐々に広げる形で前日とは打って変わって弱い印象を受ける。 そもそも前日の引けにかけた強さも需給要因に過ぎないと思われる。前日の東証プライム市場の売買代金は3兆2000円弱と18日の3兆1000億円弱に続き、商いは5月以降でみると低調だった。前日の日経225先物およびTOPIX(東証株価指数)先物の日中売買高もそれぞれ3万枚台前半と値幅の割に商いは低調だった。今後、本格化していく企業決算や来週に控える日米の金融政策決定会合を前に全体的に様子見ムードが強まっており、薄商いのなか引け間際の買いが値幅を伴った上昇につながったと推察される。 前日の米国市場ではダウ平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合指数らが揃って2022年4月以来の高値を付けた。ただ、米国市場の引け後に発表された決算を受けて、電気自動車のテスラと動画配信サービスのネットフリックスは揃って時間外取引で大きく下落している。テスラは4%超、ネットフリックスは8%超の下落率となっている。 ネットフリックスは会員数が市場予想を大幅に上回ったものの、売上高実績と翌四半期の売上高見通しが市場予想を下回り、素直に売りが先行。一方、テスラは値下げによって粗利益率が市場予想を下回ったものの、売上高と一株利益は揃って予想を上回った。株価も時間外取引で買いが先行したが、すぐに下落に転じ、その後下げ幅を広げる形となった。 東京市場でも安川電機<6506>やファーストリテイリング<9983>の決算後の反応を見る限り、株価が高値圏にある銘柄については、決算後は出尽くし感が先行しやすいもよう。今後の企業決算シーズンに対する警戒感は高まったといえそうだ。 本日は半導体受託製造の世界最大手であり米エヌビディアを大口顧客にもつ台湾積体電路製造(TSMC)の決算が予定されている。生成AI(人工知能)ブームを背景に日米ともに半導体株の上昇が相場をけん引してきたが、足元では期待だけで買う局面は終わりを迎えつつあり、今後は決算で実績を確かめていく局面に入ってきたとみられる。 ただ、TSMCの会長は6月上旬に、2023年の設備投資計画について、レンジで示していた下限に近くなるとの見通しを示し、実質的な下方修正を発表した。生成AI需要が本格的に業績に寄与するのは2024年以降とも言われており、半導体株は期待が先行しすぎた印象が否めない。TSMCの決算で期待が剥落しないかに注意が必要だろう。 また、前日は最先端の半導体露光装置メーカーとして世界トップの蘭ASMLホールディングが4-6月期決算を発表した。売上高と一株当たり利益はともに市場予想を上回った。一方、受注高の伸びは1-3月期に続き前年同期比46%超の減少となったが、こちらも市場予想は上回ったもよう。ただ、決算を受けて同社株価は下落、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)指数も前日は1%を超える下落となった。 ASMLの受注動向からも生成AI需要の業績への本格的な寄与は当面先であることが示唆されており、また高値圏にある銘柄は出尽くし感が先行しやすいことが確認された。本日のTSMC、そして来週以降の日米の半導体企業の決算には注意すべきだろう。 景気や為替の先行きが依然として不透明ななか、引き続き景気敏感株や期待先行ですでに大きく上昇しているハイテク株は避けた方がよいと考える。景況感との連動性の小さい情報・通信セクターなどから、出遅れ感の強いグロース株を選好することが望ましいと考える。ほか、富裕層や訪日外国人観光客からの旺盛な需要が続く一方、コスト構造改革の進展などが確認されている大手百貨店銘柄などが注目できそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/20 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、米株高と円安で上昇も懸念はくすぶる *12:19JST 日経平均は続伸、米株高と円安で上昇も懸念はくすぶる  日経平均は続伸。316.41円高の32810.30円(出来高概算6億2272万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でダウ平均は366.58ドル高(+1.05%)と7日続伸、ナスダック総合指数は+0.76%と続伸。6月の小売売上高や鉱工業生産が予想を下回り、景気減速懸念から売りが先行。一方、コア小売売上高の上振れや良好な決算を受けた金融セクターの上昇が好感され、相場はプラス圏に回復。さらに、金利の低下でハイテクも買われ、終盤にかけて上げ幅を拡大した。米株高を受けて日経平均は318.47円高からスタート。寄り付き直後に一時失速したが、為替の円高一服や米景気減速懸念の緩和を背景に景気敏感株を中心に買いが入り、前場中ごろには32873.15円(379.26円高)まで上昇。その後もこの日の高値圏で堅調な推移が続いた。 個別では、川崎汽船<9107>の急伸を筆頭に郵船<9101>、商船三井<9104>の海運が大きく上昇。為替の円高一服を受けてトヨタ自<7203>、三菱自<7211>、マツダ<7261>が買われ、日産自<7201>は株主還元に関する経営陣のインタビュー報道を手掛かりに大幅高。三菱重工業<7011>、INPEX<1605>、コマツ<6301>、JFE<5411>など景気敏感株が堅調。レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、SHIFT<3697>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>などハイテク・グロース(成長)株の一角も高い。マネーフォワード<3994>は業績上方修正が好感され一時急伸した。 一方、アドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>、ディスコ<6146>の半導体のほか、ソニーG<6758>、村田製<6981>、イビデン<4062>のハイテクの一角が軟調。ローム<6963>は東芝<6502>への資金拠出に対する懐疑的な見方から売り優勢。ファーマフーズ<2929>、日置電機<6866>は好決算ながらも出尽くし感から大きく売られている。 セクターで海運、証券・商品先物取引、鉱業を筆頭に全面高となっている。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の85%、対して値下がり銘柄は13%となっている。前日、朝方の上昇後に急失速して冴えない展開だった日経平均は、本日は再び32500円を大きく超え、前日の高値を上回っている。一方、25日移動平均線手前で上昇一服となっており、同線が上値抵抗線として意識される格好となっている。本日の株高の要因は米国株高と為替の円高一服が挙げられる。 米6月小売売上高は前月比+0.2%と市場予想(+0.5%)を下回り、自動車・同部品を除いた売上高も+0.2%と市場予想(+0.3%)を下振れた。また、米6月鉱工業生産も前月比-0.5%と市場予想(横ばい)を下回った。 一方、米6月小売売上高については飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高が前月比+0.6%と5月(+0.3%)から加速し、市場予想(0.3%)も大きく上回った。 さらに、先週末に発表されたJPモルガン・チェースやシティ・グループに続き、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカの金融大手の決算も良好だったことで、景気後退懸念が緩和、ソフトランディング(軟着陸)期待が高まり、景気敏感株を中心に買われた。また、米長期金利が低下したことやマイクロソフトの新サービスの発表を受けて、生成AI(人工知能)関連株の買いが復活し、ハイテク株も上昇した。 良いとこ取りの相場展開だった米株高の流れに加え、日本銀行の植田和男総裁が前日、「(物価目標達成には)まだ距離がある」などと発言し、粘り強く金融緩和を続ける姿勢を再表明した。これを受けて、先週末まで日本株の大きな重石になっていた為替の円高の一服が一段と鮮明になり、本日の日本株高に寄与している。 ただ、植田日銀総裁はかねてからイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の修正は「サプライズを伴わざるを得ない」としている。また、為替の円高への反転のきっかけになった内田日銀副総裁の発言も踏まえれば、依然として来週27-28日に開催される日銀金融政策決定会合での政策修正観測はくすぶる。今後は秋ごろから政府の物価抑制策の効果も切れていくため、政治的な観点からも為替の円安は許容しにくい背景もある。 米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋の円売りポジションは7月11日時点で11万7182枚だった。2018年以降で最大を記録した7月3日からほぼ横ばいで、巨大な円の買い戻し圧力はまだ大幅に残されているようだ。日経平均とTOPIX(東証株価指数)はともにまだ25日線を明確に上回ることができておらず、短期調整局面を抜け出せたとまでは言いにくい。景気・為替との連動性の大きい輸出系大型株への上値追いには依然慎重に臨むべきと思われ、引き続き米金利の低下が支援材料となりやすい内需系グロース(成長)株を選好すべきと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/19 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は小反発、買い先行も上げ幅は限定的 *12:15JST 日経平均は小反発、買い先行も上げ幅は限定的  日経平均は小反発。26.99円高の32418.25円(出来高概算6億2573万株)で前場の取引を終えている。 国内連休中の米株式市場は堅調に推移、ダウ平均は続伸した。主要銀行の予想を上回る決算が好感されたほか、経済のソフトランディング(軟着陸)期待も強まった。また、イエレン財務長官が米国内経済への影響は小さく、景気後退を回避できると楽観的な見解を再表明したことで警戒感が後退。金利低下でハイテクが引き続き買われ、相場全体を押し上げた。ナスダック総合指数も上昇、主要株価指数が堅調に推移した米株市場を横目に、18日の日経平均は65.92円高の32457.18円と反発して取引を開始した。その後はプラス圏での堅調もみ合い展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が上昇。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、三井物産<8031>や三菱商事<8058>などの商社株も堅調に推移。また、トヨタ自<7203>、ANYCOLOR<5032>、ディスコ<6146>、JT<2914>なども上昇した。そのほか、第1四半期2ケタ増益で業績上振れ期待が高まったサーバーワークス<4434>が急騰、第1四半期大幅増益で好進捗となったヨシムラフード<2884>も急上昇、古野電気<6814>、RPAホールディングス<6572>、ジンズホールディングス<3046>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、JR東<9020>やJR西<9021>などの鉄道株、出光興産<5019>やENEOS<5020>などの石油関連が軟調に推移。ファーストリテ<9983>、日立<6501>、楽天グループ<4755>、メルカリ<4385>なども下落。ほか、第1四半期大幅減益をネガティブ視されたテラスカイ<3915>が下がり率トップに、第1四半期は想定以上の大幅減益となったIDOM<7599>が大幅下落、北の達人コーポレーション<2930>、JNSホールディングス<3627>、ベイカレント<6532>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、銀行業、金属製品、空運業が上昇率上位となった一方で、石油・石炭、鉱業、サービスが下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の67%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 今日の東京株式市場は買いが先行した。東京市場が3連休中、ダウ平均が0.55%、ナスダックが0.75%上昇したことが東京市場の株価の支えとなった。また、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が昨日は2.32%上昇となっており、東京市場で半導体関連株の株価支援要因となった。さらに、円安・ドル高水準となり輸出株などの追い風となった。 新興市場は強弱入り混じる展開となっている。マザーズ指数は上昇スタートとなり、その後はプラス圏で推移しているが、上げ幅は限定的となっている。グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、即座にマイナス圏に転落した。朝方に下げ幅を広げると、その後はマイナス圏で軟調推移となった。決算発表を終えた個別株物色が中心となっている。売買代金上位銘柄や直近IPO銘柄の下落を横目に地合いが不安定になってきている中、個人投資家の資金の逃げ足の速さには注意したい。前引け時点での東証マザーズ指数は0.30%高、東証グロース市場Core指数は0.84%安。 さて、中国国家統計局が17日発表した2023年4-6月の国内総生産(GDP)が6.3%増と、予想の6.9%(QUICK集計の市場予想の平均)を下回った。前四半期と比べた伸び率としてはプラス0.8%にとどまり、景気回復の勢いは減速している。また、6月の小売売上高は大きく減速し、上期の不動産投資も縮小した。景気回復の勢いが減速した要因は、関連産業を含めるとGDPの4分の1ほどを占めるとされる不動産市場の低迷の長期化や輸出の減少が挙げられている。 また、今回の中国4-6月GDPの発表を受けて、ウォール街では中国の経済成長率見通しを軒並み引き下げている。JPモルガン・チェースやモルガン・スタンレー、シティグループなどは今年の中国の経済成長率を5%に下方修正した。中国の景気回復にはかなりの脆弱さがあり、政府による刺激策は比較的抑制されているとの見方が背景となっているようだ。中国経済の減速感が意識されたことは、国内の投資家心理を悪化させる要因の一つとなっており、本日の日経平均の上昇は限定的となっている。 一方、イエレン米財務長官は、中国の成長減速は米国にある程度の悪影響を及ぼす可能性があるとしつつも、米国のリセッション(景気後退)は想定していないと語っている。労働市場は非常に力強く、働き盛りの人の労働市場参入を後押ししているが、「賃金の伸びは緩やかになりつつありインフレは落ち着きつつある」と指摘。また、ゴールドマンサックスでは、先週の米インフレ統計を受けて今後1年間の米リセッション確率を20%と従来の25%から引き下げている。さらに、米連邦公開市場委員会(FOMC)は来週の会合で政策金利を再度引き上げる見通しだが、最後の利上げになると想定しているようだ。今後、インフレ圧力緩和の継続や利上げの終了が現実味を帯びてくると、直近堅調に推移している株価にとってもさらなるポジティブ材料となろう。 そのほか、日本取引所グループが前週13日に発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は7月第1週(3〜7日)に現物株を314億円買い越したことが明らかになった。前週(3042億円の買い越し)から買い越し額は縮小しており、海外勢の買いの勢いは足元でやや鈍りつつある。一方、個人投資家は現物株を2週ぶりに買い越しており、買い越し額は3687億円、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は再び売り越しに転じた。引き続き海外勢の動きに加えて個人投資家の動向にも注意しておきたい。 さて、後場の日経平均はプラス圏での推移を継続できるか。今週から米企業、来週からは国内企業の4-6月期決算発表が本格化することから、決算内容を見極めたいとして積極的ない買いを手控える向きもありそうだ。また、ハイテク株や景気敏感株といった東証プライム主力株への投資は様子見ムードが台頭する可能性もある。本日は、一足先に決算を発表している企業へ注目が集まっている。引き続き個別株物色が中心となるか注目しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/07/18 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、ドル円75日線割れで円高・ドル安は当面継続か *12:16JST 日経平均は続伸、ドル円75日線割れで円高・ドル安は当面継続か  日経平均は続伸。74.49円高の32493.82円(出来高概算7億3328万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でダウ平均は47.71ドル高(+0.13%)と4日続伸、ナスダック総合指数も+1.57%と4日続伸。6月卸売物価指数(PPI)が予想以上に鈍化し、金利が一段と低下。ドル安と相まって企業収益の改善につながるとの期待が高まった。ハイテクを中心に買われ、ナスダックは引けにかけて上げ幅を拡大した。米株高を受けて日経平均は168.57円高の32587.90円からスタート。7月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出に絡んだ売買が交錯するなか直後に32780.63円(361.3円高)まで上昇したが、その後は急失速。為替の円高が一段と進行していたことが重石になり、下落に転じた後は一時32225.37円(193.96円安)まで下げた。一方、前引けにかけては買い戻され、プラス圏に再浮上している。なお、SQ概算値は32484.24円。 個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅高を受けてアドバンテスト<6857>が急伸し上場来高値を更新。東エレク<8035>、ディスコ<6146>、ソシオネクスト<6526>なども大幅に続伸。郵船<9101>、商船三井<9104>の海運も買われ、川崎汽船<9107>は年初来高値を更新。決算が好感されたSHIFT<3697>、久光製薬<4530>、ビーウィズ<9216>が急伸し、マニー<7730>も大幅高、ウイングアーク1st<4432>はストップ高買い気配となっている。東宝<9602>は業績及び配当予想の上方修正で買われた。東証スタンダードではニデック<6594>が株式公開買い付け(TOB)を発表したTAKISAWA<6121>、好決算に加え大幅増配や自社株買いが評価されたTONE<5967>がストップ高買い気配のまま終えている。 一方、2ケタ減益決算が失望された7&I-HD<3382>が大きく下落。3-5月期決算が市場予想を上回り業績予想を上方修正したファーストリテ<9983>は上昇スタートも失速して下落に転じた。Sansan<4443>は今期見通しが良好も3-5月期の営業赤字転落が売り材料視されて下落。決算が嫌気されたフィルカンパニー<3267>、ラクトジャパン<3139>、不二越<6474>が大幅安となり、松屋<8237>は好決算ながらも出尽くし感から大きく売られた。ほか、為替の円高を背景に日産自<7201>、マツダ<7261>、スズキ<7269>など自動車が軟調。 セクターで電気・ガス、小売、保険が下落率上位に並んだ一方、海運、その他金融、金属製品が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は29%となっている。 前日に急反発した日経平均だが、日経225先物は14日の夜間取引ではさらに上値を伸ばし、一時32800円まで上昇していた。しかし、本日の日経平均は高寄り後に32780円まで上昇しながら急失速し、早い段階で32500円を割り込んだ。下落に転じた後、32200円台前半まで下げ幅を広げるなど、前場だけで高値と安値の差は550円超にも及ぶ。 本日は7月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出日であり、前日からの値幅を伴った急激な変動はSQに絡んだ売買が影響していた可能性が高い。実際、前日は日経平均の上昇幅に比して、東証プライム市場の売買代金は3兆2829億円と5月以降の動向と比べると低水準にとどまった。オプションなどデリバティブ取引が主体の上げ相場だったと推察される。本日の高寄り後の失速ぶりも同様の背景と思われる。 また、為替の円高進行が止まらないことが日本株の上値抑制要因になっている。前日に発表された米6月卸売物価指数(PPI)は総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに、前年同月比と前月比で揃って市場予想を下回った。米6月消費者物価指数(CPI)に続く下振れで、インフレ収束期待はさらに高まる格好となった。米金利は幅広い年限でさらに低下し、米10年債利回りは13日、3.77%(前日比-0.09ポイント)まで低下。一方、日本銀行の政策修正観測の高まりが続いていることで、ドル円は137円台半ば前後まで一段と下落。昨日の東京時間からさらに1円もドル安・円高が進んだ。 米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に5日続伸したことで、東京市場ではアドバンテスト<6857>など半導体株が強い動きを見せているが、半導体以外のハイテク株は米ナスダック指数が大幅続伸した割には冴えないものが目立つ。為替の円高が日本株の相対的な弱さに明確に結びついていると捉えられる。 米商品先物取引委員会(CFTC)によると、7月3日時点での投機筋の円売りポジションは2018年以降で最大水準にまで膨れ上がっている。米国でのディスインフレへの思惑と米金利の急低下、そして日銀の政策修正観測により、こうした巨大な円売りポジションの巻き戻しが足元で急速に進んでいると推察される。 ドル円は75日移動平均線が位置する138円をあっさりと割り込んできた。これにより、今月27-28日に開催される日銀金融政策決定会合で政策の現状維持が確認されるまでは、ドル安・円高のトレンドがじわじわと続く可能性が高まってきた。 7月下旬からは4-6月期決算の発表が始まる。多くの輸出企業が想定為替レートとして1ドル=125-135円を設定しているなか、現状の水準であればまだ為替の恩恵は期待できるが、円安による業績上振れ期待はドル円が145円まで上昇した6月下旬ころからは後退せざるを得ない。引き続き、米金利の上昇一服がプラス効果として働き、かつ景気・為替との連動性の低い内需系グロース(成長)セクターへの投資が魅力的と考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/14 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、米インフレ収束期待が支援、円高トレンドは一服なるか *12:15JST 日経平均は大幅反発、米インフレ収束期待が支援、円高トレンドは一服なるか  日経平均は大幅反発。413.11円高の32357.04円(出来高概算6億761万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は86.01ドル高(+0.25%)と3日続伸、ナスダック総合指数も+1.15%と3日続伸。6月消費者物価指数(CPI)が予想以上に鈍化したためインフレ収束期待から買いが先行。長期金利の大幅低下を背景にハイテクが大きく買われた。一方、地区連銀経済報告(ベージュブック)で成長鈍化の見通しが明らかになると景気減速懸念から終盤にかけて上げ幅を縮小した。米株高を受けて日経平均は162.12円高の32106.05円からスタート。直後に32000円を割り込む場面もあったが、切り返すとハイテク・グロース(成長)株を中心とした買いが続き、上げ幅は400円を超え、この日の高値圏で終えている。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>の半導体株が大きく上昇し、ソシオネクスト<6526>は急伸。ソニーG<6758>はゲーム事業の研究開発への重点投資が報じられ大幅高。イビデン<4062>、村田製<6981>、TDK<6762>などのハイテクのほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社、信越化<4063>、住友鉱<5713>の景気敏感株の一角などが高い。決算が好感されたサイゼリヤ<7581>、第1四半期の売上状況が材料視された寿スピリッツ<2222>、自社株買い枠の拡大を発表したタナベ<9644>、業績上方修正を発表したセラク<6199>などが急伸。ほか、東証プライム値上がり率上位にはMSOL<7033>、Appier<4180>、Sansan<4443>などグロース株が多くランクイン。リクルートHD<6098>は外資証券の目標株価引き上げも寄与したもよう。 一方、前日に買われていた三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>、りそなHD<8308>の銀行、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運などは反落。為替の円高進行によりSUBARU<7270>、三菱自<7211>、マツダ<7261>など自動車が軟調。前日ストップ高となったローソン<2651>や決算発表後に上昇が続いていた良品計画<7453>は大きく反落。今期減益見通しのインターアクション<7725>、第1四半期営業赤字のイオンファンタジー<4343>、第1四半期は上半期計画を超過も上方修正のなかったTSIHD<3608>のほか、業績上方修正も出尽くし感が先行したトレジャー・ファクトリー<3093>などが急落している。 セクターで電気機器、サービス、精密機器が上昇率上位に並んだ一方、水産・農林、空運、保険が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 前日に発表された米6月消費者物価指数(CPI)は総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに、前年同月比と前月比で揃って予想以上に鈍化し、インフレ収束期待が高まった。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ観測は引き続き高いが、年内2回の追加利上げ観測は大きく後退し、9月FOMCでは据え置きの予想がコンセンサスになってきている。 米CPIの下振れを受けて米金利が幅広い年限で大きく低下した一方、日本銀行の政策修正観測の高まりが続いていることで、ドル円は138円台半ばまで一段と下落。急速な円高進行が重石となる形で、13日の夜間取引における日経225先物は一時32250円まで上昇しながら、終値では32030円まで大きく失速していた。 本日の日経平均も高く寄り付いた直後に失速し、早々に回復したばかりの32000円を一時割り込む場面があったため、嫌な流れになっている印象を受けた。ただ、その後に切り返して大きく上げ幅を広げ、前日の下落分を帳消しにしてきたことは目先の安心感につながっている。 一方、前日大きく下落した東エレク<8035>などのハイテク銘柄の一部には反発力の鈍さがやや感じられる。アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>など半導体株の一角はまだ25日移動平均線上を維持しているが、東エレクは25日線を依然として下回ったままである。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の追加投資による宣伝効果で5月以降の上昇相場の象徴銘柄でもあった三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>などの大手商社株も本日は上昇しているが、25日線割れの状態が続いており、トレンドの悪化は否めない。 また、本日の上昇率上位のセクターは概ね前日の下落率上位のセクターと一致しており、対照的に前日に下落率上位だったセクターが本日は上昇率上位に並ぶなど、全体的に日替わり物色の域を出ていない印象もある。 他方、米国ではナスダック総合指数とS&P500種株価指数が揃って年初来高値を更新した。米10年債利回りが再び大きく4%を割り込み、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年実質金利も、7日には1.79%と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降で最高水準まで上昇していたが、12日には1.6%まで低下した。金利の上昇一服とともにハイテク株買いが復活し、米主要株価指数が高値を更新してきている点は今の相場の基調の強さが続いていることを示唆している。 日経平均も円高が重石とはいえ、ドル円は足元で75日移動平均線が位置する138円手前で下げ渋っており、テクニカル的には円高・ドル安にも一服感が出てきそうな頃合いだ。米国株の堅調な地合いが続き、円高の一服感も加われば、日経平均も大きく崩れることなく、32000円水準での値固めが進んでいきそうだ。 ただ、景気と為替の動向は依然として不透明感が強いため、これらの要素との連動性が強いセクターへの投資は妙味が薄いと考える。米金利の上昇一服がプラス効果として働き、かつ景気・為替との連動性の低い内需系グロース(成長)セクターへの投資が依然として望ましいと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/13 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は反落、円安・日本株高トレンドの反転が加速 *12:18JST 日経平均は反落、円安・日本株高トレンドの反転が加速  日経平均は反落。245.71円安の31957.86円(出来高概算6億3091万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でダウ平均は317.02ドル高(+0.93%)と続伸、ナスダック総合指数も+0.54%と続伸。中国政府が追加の景気対策を検討しているとの報道を受け、期待から買い戻しが先行。今晩発表の消費者物価指数(CPI)でのインフレ改善を想定し金利低下が一段と進んだことも相場を支援した。ハイテクはナスダックが大型株の影響力を制限するための施策の一環としてリバランス(資産配分の調整)の実施を発表したことを受け、買い控えも見られたが終盤にかけて騰勢を強めた。米株高を受けて日経平均は76.48円高からスタート。しかし、為替の円高が一段と進むなか序盤から売りが強まり、早々に32000円を割り込んだ。前場中ごろには31791.71円(411.86円安)まで下げ幅を広げたが、その後は買い戻しから下げ渋る展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、ディスコ<6146>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>の半導体株が軒並み大きく下落、ローツェ<6323>は決算で受注高の大幅減が嫌気されて急落。イビデン<4062>、村田製<6981>、安川電機<6506>などハイテクも全般下落。三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>、東京海上<8766>など保険株の下落が目立つ。ハニーズHD<2792>、ライトオン<7445>、イオンFS<8570>、イオンモール<8905>は決算を受けて急落。コシダカHD<2157>は好決算も出尽くし感から売られている。 一方、株式の売出価格が決まったソシオネクスト<6526>は買い優勢。日本銀行の政策修正への思惑が強まるなか、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、みずほ<8411>、りそなHD<8308>の銀行が堅調。川崎汽船<9107>を筆頭に郵船<9101>、商船三井<9104>の海運が上昇しており、決算発表後に買いが続いている良品計画<7453>のほかニトリHD<9843>、7&I-HD<3382>など小売りの一角が高い、また、中国の景気対策への期待や原油高を受けてINPEX<1605>のほか、日本製鉄<5401>、JFE<5411>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼が堅調。 セクターで保険、医薬品、電気機器が下落率上位に並んだ一方、鉱業、水産・農林、海運が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の59%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 日経平均は朝方から売りが膨らみ、6月9日以来の32000円割れとなっている。32000円近辺でいったん下げ渋ることもなく、あっさりと同水準を割り込み、その後一時31700円台まで下げ幅を広げるなど、売り圧力が強い印象を受ける。ドル円は1カ月ぶりに140円を割り込んでおり、これまでの円安・株高のトレンド反転に拍車がかかっている。日本銀行が7月の金融政策決定会合で政策修正に踏み切るとの思惑が高まっており、これまでの安い円を借りて高金利通貨を買う円キャリー取引の巻き戻しが進んでいるようだ。 今晩に発表される米6月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.1%と5月(+4.0%)から大幅に鈍化し、2021年3月以降で最も低い伸びが予想されている。食品・エネルギーを除いたコア指数でも同+5.0%と5月(+5.3%)から鈍化が見込まれている。インフレ鈍化を想定して米10年債利回りは11日、4%を割れており、今晩の米CPIの結果発表後の反応を予想した先回りの円買い戻しも入っていそうだ。米CPIの結果発表後にドル円が即座に140円を回復できるかが目先の焦点となりそうだが、日銀金融政策決定会合を確認するまではドル円の本格的な回復は見込みにくいだろう。 値持ちのよかった東京エレクトロン<8035>やルネサスエレクトロニクス<6723>などの半導体株で、25日移動平均線を割り込んだ銘柄が確認されていることも、今後の相場の先行きを懸念させる材料だ。事前の市場コンセンサスでは、今晩の米CPIは予想を下回る確率の方が高く、株高の材料になり得るとみている向きが多いようだ。想定通りに結果が下振れた場合に、金利低下・株高となるのか、それを受けて明日の東京市場でも半導体株が持ち直してトレンドを維持するのかといったところが注目だろう。反面、今回のCPIが上振れた場合に備えたポジションが少ないように見受けられ、上振れた場合のネガティブなショックにも注意を払っておくべきだろう。 後場は、前引けにかけて下げ渋った日経平均が32000円を回復できるかに注目だ。ただ、今晩の米CPIを無難に消化したとしても、13日には米6月卸売物価指数(PPI)、週末には米銀行大手の決算が控える。また何より、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)および日銀金融政策決定会合の結果を確認しない限りは動きにくい。さらに、期待先行で株価が上昇してきた企業にとっては、その先に控える4-6月期決算のハードルも安川電機<6506>の反応から分かるように低くはない。景気と為替の先行き不透明感が強いなか、当面はこれらの要素と相関性の低い内需系の中小型グロース(成長)株などに妙味があると考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/12 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は6日ぶり反発、需給悪化イベント通過も上値の重さ変わらず *12:21JST 日経平均は6日ぶり反発、需給悪化イベント通過も上値の重さ変わらず  日経平均は6日ぶり反発。90.15円高の32279.88円(出来高概算6億888万株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でダウ平均は209.52ドル高(+0.62%)と4日ぶり反発、ナスダック総合指数も+0.18%と4日ぶり小反発。連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げを警戒した売りが先行したが、その後金利が低下したことで買い戻しが優勢になった。景気敏感株を中心に堅調に推移した一方、ハイテクは半導体株を除いて売り買いが交錯した。なお、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+2.06%と大幅に続伸。上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う換金売りが一巡したことや米SOX指数の上昇を背景に日経平均は244.94円高からスタート。しかし、為替の円高が重石となり、32500円に近づくと戻り売りに押される一進一退の展開が続いた。前引けにかけては失速し、この日の安値圏で終えている。 個別では、米SOX指数の上昇を受けてレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>など半導体株が大きく上昇。SUMCO<3436>は経済産業省が新工場建設を補助するとの報道もあり大幅高。連続増配や既存店売上高が好感されたコスモス薬品<3349>は急伸。決算を材料に前日ストップ高となった良品計画<7453>は大幅続伸。USENNEX<9418>は大幅増益決算と業績上方修正が、パンパシHD<7532>は既存店売上高が、ベルク<9974>は第1四半期高進捗の決算がそれぞれ材料視されて大きく上昇。ほか、ANYCOLOR<5032>やラクスル<4384>、Sansan<4443>などグロース(成長)株の上昇が目立つ。三菱自<7211>は外資証券の目標株価引き上げが好感されているようだ。 一方、本日、株式の売出価格が決定するソシオネクスト<6526>は大きく下落。為替の円高を受けてトヨタ自<7203>、日産自<7201>、マツダ<7261>が安い。決算が失望されたウエルシアHD<3141>、ブックオフGHD<9278>、進和<7607>、業績下方修正や株主優待制度の廃止が嫌気されたワッツ<2735>などは急落している。 セクターで水産・農林、金属製品、精密機器が上昇率上位に並んだ一方、輸送用機器、電気・ガス、海運が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は35%となっている。 上場投資信託(ETF)分配金捻出に伴う換金売りが前日で一巡したことで、あく抜け感が台頭する期待もあったが、本日の日経平均は伸び悩んでいる。何度か騰勢を強める場面もあったが、結局32500円が近づく度に売り戻され、前引けにかけては前日終値に近い水準まで失速した。 日経平均および東証株価指数(TOPIX)ともに25日移動平均線を下回った状態が3日以上継続、日足ローソク足は4本連続で陰線を形成しており、テクニカル的にはトレンドが明らかに悪化している。 先週後半から円高・ドル安に転じている為替のトレンドが一段と強まっていることも日本株の重石だ。ドル円は前日から25日線を割り込んできており、本日は1ドル=141円も割り込んできている。 日本の期待インフレ率および10年債利回りに代表される長期金利が先週末から大きく上昇してきている。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は依然としてマイナスではあるものの、名目賃金は着実に増加してきており、実質賃金のマイナス幅も縮小してきている。こうした背景から、日本でもインフレが定着する期待が高まっているようだ。 加えて、先週末の日本銀行の内田副総裁の発言もあり、7月の日銀金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)が修正もしくは撤廃されるとの思惑が強まっているようで、これが円高・ドル安の要因と推察される。 7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが再開され、米連邦準備制度理事会(FRB)がさらなる追加利上げを示唆し、さらに日銀金融政策決定会合で政策の現状維持が確認されれば、再び円安・ドル高に転じる可能性は残されていそうだ。 ただ、米ニューヨーク連銀が10日に発表した6月の消費者調査で、1年先のインフレ期待は3.8%と5月(4.1%)から低下し、2021年4月以来の低水準を記録したほか、米自動車オークション会社のマンハイムが集計した中古車価格指数によると、6月の中古車価格は前月比4.2%低下し、2020年4月以来の急激な落ち込みとなった。 今週発表される米国の物価指標の結果次第ではあるが、FRBの追加利上げは多く見積もっても2~3回と思われ、市場がすでに2回目まで織り込みはじめていることを考えれば、追加利上げ回数が市場想定比で大きく上振れる展開は考えにくくなっている。一方で、時間軸は長くても、日銀の政策修正が意識される状況は続くとみられ、再び円安・ドル高が大きく進むシナリオは想定しづらい。仮に7月の日銀金融政策決定会合で修正があれば尚更であり、この場合、ドル円は135円程度までの調整を強いられそうだ。 ほか、主力製造業決算の前哨戦として注目された安川電機<6506>の決算では、受注高が前四半期比で増加し、底入れ感が見られたものの、業績・受注ともに市場コンセンサスに沿った水準とみられ、前日の同社株価は大きく下落した。むしろ、受注高は会社計画比でやや弱含みのもよう。また半導体投資の回復が見えていないことで、第2四半期の受注は伸び悩むとの見通しも示されたという。 日本株は4月以降、大きく上昇してきただけに、決算では余程のポジティブサプライズでもない限り、株価が一段と上昇することは難しいだろう。これから迎える決算シーズンのハードルが高いことが今回の安川電機の決算から窺えた。上述した為替の不透明感も踏まえると、7月の日本株は少なくとも日柄調整を余儀なくされそうだ。この間、本日の指数別パフォーマンスにおいて相対的な強さを見せているマザーズ指数から窺えるように、中小型株や新興株に対する幕間繋ぎの物色に期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/11 12:21 ランチタイムコメント 日経平均は続落、前週に続いて売り手優位の状況続く *12:19JST 日経平均は続落、前週に続いて売り手優位の状況続く  日経平均は続落。214.54円安の32173.88円(出来高概算7億1179万株)で前場の取引を終えている。 前週末7日の米国株式市場のダウ平均は187.38ドル安(-0.55%)と続落。追加利上げを警戒した売りが続いたが、6月雇用統計で雇用者数の伸びが予想以上に鈍化したためピーク金利に近づいたとの見方からいったん下げ止まった。また、金利先高観の後退でハイテクが一旦プラス圏を回復。ただ、追加利上げ観測が変わらず長期金利も上昇に転じたため終盤にかけて売りが再開した。ナスダック総合指数も続落、主要株価指数がそろって下落した米株市場を横目に、7月10日の日経平均は前週末比5.04円高の32393.46円とわずかながら反発でスタート。その後は売り優勢の展開となりマイナス圏に転落。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が下落。郵船<9101>や商船三井<9104>、川崎船<9107>などの海運株、JR西<9021>などの鉄道株なども軟調に推移。三井物産<8031>、エーザイ<4523>、トヨタ自<7203>、ディスコ<6146>なども下落した。そのほか、第1四半期業績・受注はほぼ想定線の着地となった安川電機<6506>も下落、直近で軟調推移が継続しているソシオネクスト<6526>も大幅下落、サニーサイド<2180>、ライフドリンク カンパニー<2585>、エスクローAJ<6093>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、ソフトバンクG<9984>、楽天グループ<4755>、三菱商事<8058>などが堅調に推移。また、NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株、ゆうちょ銀行<7182>、メルカリ<4385>なども上昇。ほか、3-5月期はコンセンサス上振れで見直しの動きとなった良品計画<7453>が値上がり率トップに、ギガキャストを使う大型車体部品の生産に参入すると報道されたリョービ<5851>が大幅上昇、日本コンセプト<9386>、ライフコーポレーション<8194>、トレジャー・ファクトリー<3093>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは、海運業、輸送用機器、医薬品が下落率上位となった一方で、鉱業、小売業、パルプ・紙が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 シカゴ日経225先物清算値は、大阪比35円高の32465円。本日の日経平均はわずかに上昇して始まったものの、その後は即座にマイナスに転じ、再びプラス圏に浮上するやや方向感に欠ける展開に。引けにかけてはパッシブ型ETFの決算に伴う分配金捻出のための売り需要が見込まれるなか、積極的な売買は手控えられやすいとの指摘も聞かれている。 新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後、下げ幅を縮小する動きを見せるも軟調推移を継続。米雇用統計の結果を受けて国内の個人投資家心理はややネガティブに反応。また、米長期金利は引き続き4%台で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けにくい地合いが続いている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.24%安、東証グロース市場Core指数は1.03%安。 さて、前週末7日には6月米雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が20万9000人と市場予想(23万人)を下回った一方で、平均時給については前年同月比4.4%増(予想4.2%増)となり、3カ月連続で前月比0.4%増(予想0.3%増)となった。失業率は前月比0.1pt減の3.6%となり、ADP雇用リポートや新規失業保険申請件数などと合わせても、米労働市場は依然として逼迫している状況が確認された。前週の一連の雇用指標の結果を受けて金融引き締めが長期化する懸念が高まっている。 今週も注目材料が目白押しとなる。12日に米6月消費者物価指数(CPI)、13日には米6月卸売物価指数(PPI)が発表される。CPIは、ガソリン小売価格の下落が主に影響して前年同月比3.1%上昇と2021年3月以降で最も低い伸びが予想されている。ただ、食品・エネルギーを除いたコア指数では同5.0%上昇する予想で、予想を上振れる結果となった場合は25・26日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げ再開が濃厚となる。また、今週は米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁とFRBのウォラー理事、クリーブランド連銀のメスター総裁、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が発言を予定している。12日には地区連銀経済報告(ベージュブック)も公表されるため、インフレ指標の結果を含めて注目する必要がある。 そのほか、日本取引所グループが前週6日に発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は6月第4週(26〜30日)に現物株を3041億円買い越したことが明らかになった。一方、個人投資家は現物株を2週間ぶりに売り越し、6月第4週の売り越し額は1027億円だった。海外勢の買いの勢いは足元でやや鈍りつつあるが、7月に入ってからの日経平均株価は下落基調にある。7月以降の海外投資家の動向には引き続き注目が集まりそうで、投資部門別売買動向は欠かさずチェックしていきたい。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での推移が続くか。今週に重要指標の発表やFRB高官の発言が控えているほか、その先には主要企業の4-6月期決算も控えている。前週に続いて、ハイテク株や景気敏感株といった東証プライム主力株への投資は様子見ムードが台頭しそうで、ディフェンシブセクターや出遅れ感がある中小型株などに注目が集まりそうだ。新興株にも幕間つなぎの物色が向かうか注目しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/07/10 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、米10年実質金利の高値更新で警戒感 *12:15JST 日経平均は4日続落、米10年実質金利の高値更新で警戒感  日経平均は4日続落。154.14円安の32618.88円(出来高概算7億5782万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は366.38ドル安(-1.06%)と続落、ナスダック総合指数も-0.81%と続落。ADP雇用統計が1年超ぶりの大幅な伸びとなり、利上げ再開を警戒した売りが先行。ISMサービス業景況指数も予想を上回る強い結果で、10年債利回りが4%を超えるなか、株価指数は終日軟調に推移した。米株安や為替の円高を嫌気し、日経平均は322.38円安からスタート。週明けにかけて予想される上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う換金売りも警戒されるなか、売りが先行し一時32327.90円(445.12円安)まで下げ幅を広げた。一方、6月27日安値目前までの下げからは買い戻しが入り、一時61.15円安まで下げ幅を縮めた。ただ戻り一服となり、前引けにかけてはもみ合いとなった。 個別では、認知症新薬が米国で正式承認されたことで出尽くし感が先行したエーザイ<4523>や、増益・増配見通しも市場予想をやや下振れことで売りが強まったウェザーニューズ<4825>、上半期業績が計画を下振れたOSG<6136>などが大きく下落。ほか、ダイキン<6367>、ディスコ<6146>、信越化<4063>の値がさ株の一角や、丸紅<8002>、伊藤忠<8001>の商社、INPEX<1605>、コマツ<6301>、住友鉱<5713>の資源関連、日立<6501>、パナHD<6752>、ニデック<6594>、村田製<6981>のハイテクが下落。一方、株式売出の発表で前日ストップ安となったソシオネクスト<6526>が反発、韓国サムスン電子の決算でメモリーの在庫調整の進展が好感された東エレク<8035>も堅調。郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運も揃って上昇した。 セクターで鉱業、機械、電気・ガスが下落率上位に並んだ一方、海運、空運、陸運が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の57%、対して値上がり銘柄は38%となっている。 本日の日経平均は朝方に一時445円下落した後は即座に下げ渋り、底堅さを見せている。一方、前日の米株式市場では主要株価3指数が揃って続落、一時はナスダック指数も1%を大きく超える下落率で推移する場面があった。 要因は強すぎる米労働市場だ。前日は経済指標が多く発表された。驚きをもって捉えられたのが米6月ADP雇用リポートだ。6月の民間雇用者数は49万7000人の増加と、市場予想を2倍も上回る大幅な上振れとなった。また、米新規失業保険申請件数が前週比1万2000件増加の24万8000件となった一方、失業保険の継続受給者数は1万3000人減少の172万人となり、総じて労働市場の堅調ぶりが目立つ結果となった。さらに、再就職を斡旋する会社のチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、6月に発表された人員削減数は5月からほぼ半減、8カ月ぶりの低水準になったという。 ほか、米供給管理協会(ISM)の6月非製造業(サービス業)景況指数は53.9と5月(50.3)から大幅に上昇し、市場予想(51.2)も大きく上振れた。項目別でみると、価格が54.1と5月(56.2)から低下したものの、依然として拡大・縮小の分岐点である50を上回った状態が続いた。一方、景況感は59.2と5月(51.5)から急拡大し、新規受注も55.5と5月(52.9)から拡大。そして、5月は49.2と50割れとなっていた雇用が53.1と再び50を大幅に超えてきた。総じてサービス業の景況感が想定以上に強いことが確認され、上述の雇用指標と相まって一気に米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測が高まった。 これらの結果を受けて、6日、米2年債利回りは5%を超えて2007年以来の高水準を記録したほか、米10年債利回りは遂に4%を超え、年初来の水準にまで上昇した。今回の経済指標の結果は製造業を除けば総じて米国経済が堅調であることを示唆しており、額面通りに解釈すればソフトランディング(軟着陸)への期待が高まるものであった。 しかし、結果は堅調を通り越して強すぎる内容といえ、FRBの追加利上げが1回ではとどまらない可能性が意識されはじめた。既に5%を超えている政策金利が今後さらに大きく引き上げられるとなると、再び累積した利上げ効果が時間差を伴って実体経済へ悪影響を及ぼすリスクが想起される。利上げが過剰になればソフトランディングで済むはずのものがハードランディング(金利や為替、株価などの激変を伴った経済の悪化)に陥る可能性もあり、市場はこうしたリスクも意識しはじめている可能性がある。前日の米株式市場でテクノロジーやソフトウェアのセクターが上昇した一方、エネルギーや耐久消費財、小売り、銀行など景気敏感系のセクターが大きく下落した物色動向からも、そうした投資家心理が窺える。 また、米長期金利の急伸はやはり気がかりだ。米10年債利回りが4%を超えた一方、期待インフレ率を低位にとどまっている。このため、米10年債利回りから期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年実質金利は6日、1.77%まで上昇し、昨年10月中旬に付けた高値を更新、過去10年における最高水準にまで上昇した。これはすでに割高感のある米国株式を中心に株式市場にはネガティブであるはずだ。今のところ、株式市場は過度な反応は見せていないが、少なくとも債券市場は異変を察知しているようで、今後の株式市場の動きにも注意が必要だろう。 日本株については、米国で強い経済指標が相次いで発表された一方、為替が前日からむしろ円高気味に動いていることもマイナス要因だ。米債利回りが幅広い年限で急伸しているにもかかわらずだ。背景として国内要因が挙げられる。 朝方、厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によると、名目賃金から物価変動の影響を除いた5月の実質賃金は前年同月比1.2%減少、14カ月連続でのマイナスとなった。ただ、マイナス幅は4月の同3.2%減から縮小し、市場予想(同2.7%減)よりも小幅にとどまった。また、昨日に発表された2023年春闘の最終集計分では平均賃上げ率が3.58%と1993年以来の高い伸びとなっていた。 加えて、日本銀行の内田副総裁が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正について「バランスをとって判断していきたい」と言及したことが伝わった。内田副総裁は「企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが出てきている」とも発言しており、今月27-28日に開催される日銀金融政策決定会合での政策修正が意識されていることが、為替の円高につながっているようだ。 今月の米中の金融政策決定会合を通過するまでは景気・為替の先行きを巡る市場関係者の見方も定まらないことが想定される。その先に控える主要企業の4-6月期決算も踏まえると、ハイテクや景気敏感といった東証プライム主力株への投資はいったん控えた方がよさそうだ。その間はディフェンシブセクターや出遅れ感が残る中小型株などへの投資が一考に値しよう。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/07 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は3日続落、相場の方向性を決める今日明日が重要 *12:15JST 日経平均は3日続落、相場の方向性を決める今日明日が重要  日経平均は3日続落。405.51円安の32933.19円(出来高概算7億4521万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は129.83ドル安(-0.37%)と4日ぶり反落、ナスダック総合指数は-0.18%と3日ぶり小反落。中国経済指標の悪化や中国政府による半導体材料の輸出規制など米中関係の悪化が懸念された。また、6月分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で政策当局者のタカ派姿勢が確認され、金利先高観がくすぶるなか終日軟調に推移した。米株安を引き継いで日経平均は280.3円安からスタートすると一時32857.94円(480.76円安)まで下げ幅を拡大。週末および週明けにかけて予定されている上場投資信託(ETF)分配金捻出に伴う換金売りが意識されたもよう。一方、押し目買い意欲が根強く、その後、日経平均は33000円を挟んだ一進一退となった。 個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けてアドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>の半導体株が大きく下落、ソシオネクスト<6526>は主要株主による売出決定を受けてストップ安売り気配となっている。ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、ダイキン<6367>、ファナック<6954>の主力のグロース(成長)株や、新光電工<6967>、イビデン<4062>、TDK<6762>、三井ハイテック<6966>などのハイテク株が大幅安。日本製鉄<5401>、DOWA<5714>、クボタ<6326>などの景気敏感株、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社なども軟調。東証プライム下落率上位にはANYCOLOR<5032>、MSOL<7033>、メドレー<4480>などグロース株が多く入った。 一方、配当性向の引き上げに関する報道を手掛かりに神戸鋼<5406>が逆行高。東京電力HD<9501>、楽天グループ<4755>、スズキ<7269>が高い。ソシオネクスト株の売出を決めた富士通<6702>、パナHD<6752>は堅調。決算が見直しにつながったエスプール<2471>はストップ高まで買われ、高水準の自社株買いを発表したレオパレス21<8848>、外資証券がレーティングを引き上げた日清オイリオ<2602>なども大幅高となっている。 セクターで機械、その他金融、鉄鋼が下落率上位に並んだ一方、鉱業、空運、輸送機機器の3業種のみが上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の71%、対して値上がり銘柄は26%となっている。 本日の日経平均は一時33000円を割り込み、25日移動平均線水準での攻防となっている。ただ、引き続き同線がサポートラインとして意識される底堅さが見られている。また、今週に入って欧米の長期金利が上昇するなか、ハイテク・グロース(成長)株からバリュー(割安)株への物色シフトが起きていることもあり、東証株価指数(TOPIX)は依然として25日線より上方でしっかりとした動きを保っている。本日、仮に日経平均が終値で多少25日線を下回ったとしても、TOPIXが同線上を維持できれば、本格的な調整には至らないかもしれない。 一方、欧米での長期金利の上昇圧力が気がかりだ。米10年債利回りは5日、3.94%と4カ月ぶりの水準にまで上昇し、再び4%を窺う動きとなっている。欧州は英国を筆頭に根強いインフレ圧力の抑制を目的に中央銀行が利上げ長期化を強いられるとの観測が高まっている。他方、米国では前日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が材料視された。議事要旨では、ほぼ全ての会合参加者が2023年の追加利上げを予想していたことが判明。利上げ支持派は「労働市場は非常に逼迫して経済の勢いは予想を上回っており、インフレが目標の2%に戻る軌道に乗っているという証拠はほとんどない」と指摘した。 FOMC議事要旨は総じてタカ派だったという印象を受けた。6月FOMC以降、パウエル議長が度々年内2回の追加利上げを示唆する発言をしていたが、これまで市場はポーズに過ぎないとして額面通りには捉えていなかった。しかし、徐々に本当に追加利上げ2回の可能性が高まってきていると見受けられ、米長期金利の一段の上昇には注意が必要だ。 こうした中、今晩は米供給管理協会(ISM)の6月サービス業景況指数、米5月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数、米6月ADP雇用リポート、そして明日は米6月雇用統計と重要指標が相次いで発表される。引き続き堅調な労働市場が示唆されれば、米経済のソフトランディング(軟着陸)期待が維持される可能性があろう。 ただ、日米ともに株価指数を対象とした(日本はTOPIX、米国はS&P500指数)株式益利回りから米10年債利回りを差し引いたイールドスプレッドは過去10年における最も割高な水準に位置している。堅調な経済指標が一段の米長期金利の上昇につながれば、株価バリュエーションの割高感はさらに強まり、長期的には株高を正当化することがさらに難しくなりそうだ。 また、堅調な経済指標を受けて追加利上げ観測が高まれば、必要以上の追加利上げが経済をハードランディング(株価や為替、金利の急変を伴った経済の失速)へと陥れてしまうリスクが意識される可能性もある。一方、指標結果が予想より弱すぎれば、素直に景気後退入りが懸念される形で株式の下落につながる可能性もあろう。 今の株式市場は日米ともに基調が強く、個人投資家のセンチメントを表す指標も強気に大きく傾いている。上昇相場に乗り遅れまいとする投資家心理が維持され、強気相場が続く限り、経済指標の結果は都合よく解釈される可能性があるが、今回は強すぎず、弱すぎずといった絶妙な水準に落ち着く必要性があり、ハードルは低くないと考える。 また、上昇相場をけん引してきた半導体株の中でも象徴的だったソシオネクスト<6526>が大規模な売り出しの発表を契機に本日ストップ安売り気配のままになっていることは気がかりだ。同社株は6月22日にストップ安まで売られ基調の転換が示唆されていたが、その後はまだ底堅さを維持していた。しかし、今回の一件がダメ押しの一撃となる可能性が高い。また、半導体業界を巡っては、中国が半導体素材のガリウムとゲルマニウムの輸出規制を課すなど、米中摩擦に伴うコスト増の影響も懸念される。上昇相場のけん引役だった半導体株が一服となることは全体相場の調整にもつながり得る可能性があり、注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/06 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は続落、マイナス圏での軟調推移継続 *12:15JST 日経平均は続落、マイナス圏での軟調推移継続  日経平均は続落。119.52円安の33303.00円(出来高概算7億3638万株)で前場の取引を終えている。 前日4日の米国株式市場は独立記念日の祝日のため休場。欧州株式市場は、英FTSETM100が0.10%安、独DAXが0.26%安、仏CAC40が0.23%安。持ち高整理目的の売りに加えて、金融引き締め継続による英景気の減速懸念が重荷だった。米国市場が休場となって取引は低調となりそうななか、5日の日経平均は257.46円安の33165.06円と続落して取引を開始した。売り一巡後は下げ幅を縮小する展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連株の一角が下落。JR東<9020>やJR西<9021>などの鉄道株、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>などの金融株、信越化<4063>、三井物産<8031>、日立<6501>、楽天グループ<4755>などが軟調に推移した。そのほか、6月国内ユニクロ既存店売上高が7カ月ぶり前年を下回ったファーストリテ<9983>も下落、直近で軟調推移が継続しているLink-U<4446>が大幅続落、アドバンテッジリスクマネジメント<8769>、インフォマート<2492>、東テク<9960>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、郵船<9101>や商船三井<9104>、川崎船<9107>などの海運株が堅調に推移。また、アドバンテ<6857>、ソフトバンクG<9984>、第一三共<4568>、キーエンス<6861>、ディスコ<6146>、メルカリ<4385>なども上昇。ほか、今期2ケタ増益見通しや増配計画を好感されたアスクル<2678>が値上がり率トップに、イントラスト<7191>、エンシュウ<6218>、アークス<9948>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは、精密機器、陸運業、小売業が上昇率上位となった一方で、海運業、医薬品、保険業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の34%、対して値下がり銘柄は62%となっている。 今日の東京株式市場は売りが先行した。昨日の米株式市場が休場で手掛かり材料に乏しい中、欧州の主要株価指数が小幅ながら下落したことが東京市場の株価の重しに。また、米国で今晩、6月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表され、7日には6月の米雇用統計が発表されることから、これらを見極めたいとして積極的な買いを見送る向きがあった。一方、昨日の日経平均が300円を超す下げとなったことから、押し目買いも優勢で、前場中ごろから下げ幅を縮小する展開となった。 一方、新興市場は軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後、下げ幅をじりじりと広げる展開となった。休場明けの米株市場の動向を見極めたい動きが優勢となりそうなほか、週末にかけて米国で経済指標などの発表を控えており、買い進む動きは限定的となっている。前引け時点での東証マザーズ指数は1.10%安、東証グロース市場Core指数は1.05%安で幅広い銘柄が軟調に推移。 さて、今週末にかけては、5日に6月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、6日にISM非製造業景気指数や米6月ADP全米雇用統計、など注目材料が多い。FRB議事録に関しては、追加利上げの可能性を探るうえで注目が集まっている。また、7日には米雇用統計が発表される予定で、非農業部門雇用者数はエコノミスト予想で前月比22万5000人増と依然として堅調な伸びが見込まれている。想定より強い数字が出て金融引き締めが長期化する懸念が強まれば、7月の利上げ再開観測が強まるため、同指標の結果にも大きな注目が集まるだろう。 米主要株価指数や日経平均株価のチャートを振り返ってみると、2023年3月以降右肩上がりでの推移が続いている。背景としては、東証によるPBR改善要請や米著名投資家バフェット氏の追加投資表明、日本株を割安と捉える海外投資家の参入、新日銀体制下での追加緩和継続などが挙げられている。商社株の上昇や半導体の上昇、AI関連株への物色に注目が集まっているが、銀行株も上昇を続けている。 TOPIX銀行業指数は4日に相場全体に逆行する形で大幅高となり、2015年8月以来の高値を付けた。世界の主な銀行株指数の中で、世界的な銀行株安以前の水準を回復したのは日本だけとなっている。日本銀行の政策修正が期待される中、収益環境の改善を期待した買いが入ってきたほか、インフレによる貸し出しの増加が株価を押し上げる要因となった。ただ、株価上昇により銀行株の割安さは薄れており、日銀の政策修正観測は根強いものの、市場の関心は政策修正から業績に向かっているとの声も聞こえている。 そのほか、一部報道では国内個人投資家の株買い余力が増しているという。株高を受けた利益確定売りや新規の投資マネーの流入で、証券口座に預け入れた資金のうち投資に回っていない「待機資金」が15兆円超と過去最大となっているようだ。4日は高配当銘柄で構成する「日経平均高配当株50指数」は0.45%上昇し逆行高となるなど、全体相場が反落するなかでも個人投資家が積極的に押し目買いに動いていることが確認された。実際、月曜日の当欄でも述べたが、東証の投資部門別売買状況では、6月第3週(6月19日-6月23日)に個人投資家は3週ぶりに買い越しに転じており買越額は3446億円となった。 ただ、再度の記載となるが、海外投資家は13週ぶりに売り越しに転じている。海外投資家の売越額は3604億円で、株価上昇を受けたリバランスや持ち高調整に絡んだ売りが広がっている。ただ、今後このまま海外投資家の売り越しが継続して「海外投資家売り、個人投資家買い」の動きが続く場合は警戒感が広がっていきそうで、今後の投資家の動向には注意が必要だ。 さて、後場の日経平均はマイナス圏での推移が続くか。前場は下げ幅を縮小する動きがみられたが失速した。休場明けの米株市場の動きや米国の注目材料の発表を控えて、積極的に買い進む動きは限定的となっているか。そのほか、個別に材料が出た銘柄には物色が向かっている。(山本泰三) <AK> 2023/07/05 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は反落、34000円到達には材料不足か *12:12JST 日経平均は反落、34000円到達には材料不足か  日経平均は反落。306.55円安の33446.78円(出来高概算7億3092万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でダウ平均は10.87ドル高(+0.03%)と小幅に3日続伸、ナスダック総合指数は+0.20%と続伸した。独立記念日の前日の短縮取引で動意に乏しい展開だった。追加利上げ懸念がくすぶり一時下落する場面があったが、6月ISM製造業景況指数が3年ぶりの低水準に落ち込むと追加利上げ観測が後退、金利先高観の後退で買い戻されて再び上昇に転じて終えた。一方、前日の大幅高の反動が先行した日経平均は241.07円安からスタート。寄り付き直後は33500円を意識する動きが見られたが、早い段階で同水準を割り込むと、その後はじわじわと下げ幅を広げる展開となった。 個別では、共同開発中の新薬の試験結果が嫌気された第一三共<4568>が急落。アステラス製薬<4503>、中外製薬<4519>の他の医薬品株も下落した。ファナック<6954>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>の値がさ株が大きく下落し、三菱商事<8058>、丸紅<8002>、三井物産<8031>の商社の下落も目立つ。ほか、三菱重<7011>、コマツ<6301>などが安い。 一方、目標株価が引き上げられた三井住友<8316>、みずほ<8411>、三菱UFJ<8306>の銀行株が大きく上昇。ディスコ<6146>、アドバンテスト<6857>、太陽誘電<6976>、新光電工<6967>のハイテク、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>、郵船<9101>の海運、トヨタ自<7203>、日産自<7201>の自動車の一角などが堅調。決算が好感されたネクステージ<3186>と象印マホービン<7965>が急伸し、世界初の特許取得に関するリリースで日東精工<5957>も大幅高。ほか、千葉興業銀行<8337>、富山第一<7184>など地銀株が上昇率上位に多く入っている。 セクターで医薬品、ゴム製品、卸売が下落率上位に並んだ一方、銀行、海運、保険などが上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の58%、対して値上がり銘柄は38%となっている。 前日は米供給管理協会(ISM)の6月製造業景況指数が発表された。結果は46.0と景況感の拡大・縮小の分岐点である50を8カ月連続で割り込んだ。市場予想(47.1)は5月(46.9)からの改善を見込んでいたが、結果はむしろ悪化した。それにもかかわらず、前日の米株式市場は短縮取引ではあったが、底堅く推移し、主要株価指数は揃って続伸、景気敏感株の構成比が高いダウ平均も上昇して終えた。 市場関係者の間では製造業の悪さは想定内との声もあり、さほど材料視されなかったもよう。むしろ、米連邦準備制度理事会(FRB)の健全性審査(ストレステスト)を通過し増配を発表した大手銀行株が買われたほか、4-6月納車台数が過去最多を記録した電気自動車のテスラが大幅高になるなど、個別株物色が全体を支えた。 また、米ISM製造業景況指数も、たしかに予想を下回ったとはいえ、中身はそこまで悲観的ではなかった。項目別でみると、前回5月分の際に急低下し景気後退懸念を強めた新規受注(4月45.7→5月42.6)と受注残(43.1→37.5)がそれぞれ45.6と38.7へと揃って改善した。今回の景況指数の低下は主に在庫や雇用の項目の低下によるもので、この点が相場の影響が限られた背景と考えられる。 一方、新規受注と受注残は依然として50を大幅に割り込んでおり、「想定内」や「底入れ」と前向きばかりに評価していいとは考えにくい。株式益利回りから10年債利回りを差し引いて算出するイールドスプレッド、債券利回り対比でみた米国株式のバリュエーションは依然として歴史的な割高感を示しており、少なくとも今回のISMの結果はバリュエーションの割高感を正当化できる材料ではない。FRBの利上げもまだ年内2回実施される可能性が残されており、今後どのような形で足元のバリュエーションを正当化し続けるのか注意深く見守る必要があろう。 一方、本日の東京市場は米株高をよそに反落、前日の大幅高の反動が優勢となっている。前日の日経平均の大幅高、そして終値でのバブル崩壊後高値の更新については目を見張るものだったが、本日は早々に33500円を割り込んでおり、この水準では強弱感が対立しやすいようだ。 ただ、前日は値幅の割には東証プライム市場の売買代金が3兆4000億円台と、ここ数週間の水準と比較すると活況とはいえない水準だった。一方で先物の日中売買高をみると、日経225先物が5万811枚、東証株価指数(TOPIX)先物が4万5851枚と、前者の売買高が多めだった。前日の日本株の大幅高については、四半期末に伴う需給イベント通過などのあく抜け感が意識されやすいなか、短期筋の先物主導での買い戻しが中心だったと冷静に見た方がよさそうだ。 海外投資家が取引主体である東証プライム主力銘柄の好パフォーマンスが引き続き際立っているが、セクター騰落率を見ていると物色は日替わり感が否めない。また、半導体を中心としたハイテクや値がさ株頼みの構図が再び強まっている印象も受ける。しかし、ISM製造業景況指数の下降トレンドが続き、為替の円安も1ドル=145円を前に一服しているなか、景気・為替の動向に左右されやすい主力大型株に対してはなお慎重な投資スタンスが必要と考える。こうした関連銘柄よりは、独自要因で高成長を続けているにも関わらず足元の地合いに乗りきれていないような内需系グロース株を長期目線で仕込む方が、投資妙味が高いと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/07/04 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、米株高受けて買い優勢の展開 *12:11JST 日経平均は大幅反発、米株高受けて買い優勢の展開  日経平均は大幅反発。515.69円高の33704.73円(出来高概算7億5050万株)で前場の取引を終えている。 前週末6月30日の米国株式市場のダウ平均は285.18ドル高(+0.84%)と続伸。個人消費支出(PCE)コア価格指数の伸びが鈍化したため、連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測が後退し買いが先行。金利低下に伴いハイテクも買い戻され相場を押し上げた。月末、四半期末で運用会社などによるドレッシング買いも見られ終日堅調に推移した。ナスダック総合指数は大幅反発、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を横目に、7月3日の日経平均は前週末比328.56円高の33517.60円と大幅反発でスタート。その後はプラス圏で推移しており堅調な展開となっている。 個別では、レーザーテック<6920>やアドバンテ<6857>、東エレク<8035>、ソシオネクスト<6526>などの半導体関連株が大幅高。郵船<9101>や商船三井<9104>、川崎船<9107>などの海運株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も堅調に推移。三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>などの金融株のほか、キーエンス<6861>、ダイキン<6367>、ソニーグループ<6758>、NTT<9432>などが上昇した。第1四半期大幅増益で業績予想を上方修正したダイセキ環境ソリューション<1712>が急騰したほか、業績・配当予想の上方修正を発表した三光合成<7888>が上昇、日本マイクロニクス<6871>、ミクニ<7247>、ピックルスホールディングス<2935>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、上期累計の営業利益が前年同期比25.6%減の28億円に落ち込んだスター・マイカ・ホールディングス<2975>が軟調に推移、前週末大幅に上昇したマーケットエンタープライズ<3135>が利食い売り優勢から大幅下落となった。ほか、テスホールディングス<5074>、ファイズホールディングス<9325>、ダイコク電機<6430>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、機械、海運業、電気機器が上昇率上位となり、すべての業種がプラスとなった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の85%、対して値下がり銘柄は12%となっている。 シカゴ日経225先物清算値は大阪比245円高の33435円。米株高の流れもあり、本日の日経平均は買いが先行。米国ではアップルの時価総額が3兆ドルに乗せるなど、ハイテク株の強い動きが目立ったことから、東京市場においても指数インパクトの大きい値がさハイテク株がけん引する展開になっている。 一方、新興市場は上値の重い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅をじりじりと縮小する展開となっている。金利先高観が気がかりになっていたが、米経済指標の結果を受けて目先の安心感が台頭しており個人投資家心理が改善した。ただ、本日は東証プライム市場の主力株中心に注目が集まっており、新興株はやや蚊帳の外状態となっている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.18%高、東証グロース市場Core指数は0.86%高。 日本銀行が本日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が7四半期ぶりに改善した。大企業・非製造業も5期連続の改善となった。半導体不足の影響が緩和して生産が持ち直している自動車が大きく改善し、石油・石炭製品や食料品、造船・重機も改善した。宿泊・飲食サービスは0から36ポイント改善し36となり、改善幅、水準ともに2004年の調査開始以来最大となったようだ。 欧米の急速な利上げで海外経済への懸念は強く一部業種では悪化予想もみられるが、大企業・製造業の景況感悪化に歯止めがかかり、日本経済が「緩やかに回復していく」という日銀の見通しを支える結果となった。製造業および非製造業ともに前回からの改善が見込まれていたが、想定通りの結果となり市場もポジティブに反応している。ただ、7月の金融政策決定会合で物価見通しの上方修正に合わせて政策修正に踏み切るとの思惑は依然としてくすぶっていることは頭の片隅に置いておきたい。 さて、3日にはISM製造業景気指数、5日には6月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、6日にはISM非製造業景気指数、など今週は注目材料が多い。また、7日には米雇用統計が発表される予定。非農業部門雇用者数はエコノミスト予想で前月比22万5000人増と依然として堅調な伸びが見込まれており、失業率の予想は3.6%、平均時給の伸びは前年同月比で鈍化する見通し。雇用統計で、想定より強い数字が出て金融引き締めが長期化する懸念が強まれば、ハイテク株の調整につながる可能性も高いため、同指標の結果には大きな注目が集まるだろう。 そのほか、東証の投資部門別売買状況では、海外投資家が6月第3週(6月19日-6月23日)に13週ぶりに売り越しに転じたことが明らかになった。海外投資家の売越額は3604億円で、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は13週連続で売り越した。株価上昇を受けたリバランスや持ち高調整に絡んだ売りが広がっている。一方で、個人は3週ぶりに買い越しに転じており、買越額は3446億円となった。このまま海外投資家の売り越しが継続する場合は警戒感が広がっていきそうで、買い越しに転じた個人の動きも注視する必要があろう。 さて、後場の日経平均はプラス圏で堅調推移が続くか。米株先物の動向を横目に、6月19日に付けたバブル後最高値33772.89円に迫る展開も期待される。(山本泰三) <AK> 2023/07/03 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反落、一段の円安が支援も需給面の重荷が続きそう *12:11JST 日経平均は3日ぶり反落、一段の円安が支援も需給面の重荷が続きそう  日経平均は3日ぶり反落。175.15円安の33058.99円(出来高概算7億916万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でダウ平均は269.76ドル高(+0.79%)と反発。1-3月国内総生産(GDP)確定値の上振れや米連邦準備制度理事会(FRB)のストレステストを無難に通過した金融セクターの上昇によりダウ平均は終日堅調に推移。一方、パウエルFRB議長の年内最低2回とする追加利上げの発言もあり、長期金利の大幅上昇でハイテクは伸び悩み、ナスダック総合指数は0.42ポイント安と小反落。米半導体マイクロン・テクノロジーの時間外取引の上昇を受けて前日に上昇していた日経平均は、通常取引でのマイクロン株の下落を受け、反動で165.78円安からスタート。週末および月末、四半期末が重なることに伴う需給悪化も意識され、33000円を割り込む場面も見られた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソシオネクスト<6526>、東エレク<8035>の半導体、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、信越化<4063>、任天堂<7974>の値がさグロース(成長)株、三井物産<8031>、丸紅<8002>、住友商事<8053>の商社が下落。円安が進むなかでもホンダ<7267>、SUBARU<7270>、三菱自<7211>の輸送用機器が軟調。JR東海<9022>、JR西<9021>など陸運も全般冴えない。減益決算となったナガイレーベン<7447>、中国や韓国での販売動向が振るわないとの説明が会社からあったコーセー<4922>が大きく下落。 一方、アドバンテスト<6857>、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、HOYA<7741>、芝浦<6590>、イビデン<4062>、三井ハイテック<6966>などのハイテク・グロース株の一角が上昇。郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運、日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼も堅調。第1四半期好決算と業績上方修正を発表した高島屋<8233>が大幅高となり、外資証券がレーティングを2段階引き上げた三菱電機<6503>も上昇している。 セクターでその他製品、陸運、サービスが下落率上位に並んだ一方、海運、鉄鋼、繊維製品などが上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の74%、対して値上がり銘柄は22%となっている。 日経平均は一時33000円を割るなど同水準での攻防が続いている。新規失業保険申請件数や1-3月国内総生産(GDP)確定値の米経済指標が予想を上回ったことで、ドル高・円安に一段と拍車がかかっており、為替は東京時間に入って一時1ドル=145円の節目を超える場面もあった。こうした円安が支援材料になる一方、週末および月末、四半期末が重なる本日は年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りなど持ち高調整による需給悪化が意識されているもよう。 また、前日は米半導体メモリチップ製造大手のマイクロン・テクノロジーの株価が決算を受けて時間外取引で上昇していたことがハイテク株高に寄与していたが、29日の米株式市場でマイクロンの株価は結局4%を超える下落となった。これが本日の東京市場ではハイテク株の反動安として表れている。マイクロンの経営陣からは収益の底入れを指摘する声があったが、市場では在庫調整のペースは緩慢といった指摘が聞かれた。何より、市況の底入れや年後半からの回復を先取りする形で株価はすでに大きく上昇していたため、サプライズのない決算を受けて材料出尽くし感が先行したといえる。 日本株でも、前日は大幅増益ながらもサプライズのない決算を受けてJフロント<3086>が出尽くし感から売られた。一方で、市場予想を大きく上回る実績とともに第1四半期から早々に業績予想を上方修正してきた高島屋<8233>は対照的に買われている。日米ともに株価指数や個別株でみても既にバリュエーションの割安感は乏しいため、市場予想を上回る成長率もしくは構造改革による収益改善期待といった固有の要因がない限りは、株価は出尽くし感が先行しやすい状況と考えられる。 需給面に話を変えると、東京市場は今後上値の重い展開が続きそうだ。7月は決算を迎える上場投資信託(ETF)運用会社による分配金捻出のための換金売り需要が7、10日に現物・先物の合計で1兆1000~3000億円超発生すると予想されている。年金基金のリバランス売りが終わり、新四半期に入っても目先はこれが需給面での重荷として意識される。 また、東京証券取引所が公表する裁定取引に係る現物ポジションによると、6月23日時点の裁定残高はネットベースで1兆4391.52億円の買い越しとなり、前週(1兆2810.89億円の買い越し)から大幅に増加、直近4年間における最高水準を記録した。裁定買い残の解消売り圧力が一段と高まっているといえ、今後の需給面での重荷となろう。 さらに、市場全体の信用取引残高(東京・名古屋2市場、制度・一般合計)では、買い残が前週比2212億円増の3兆4688億円と5週連続で増加し、21年12月以来の高水準となった。日米ともに株高基調が一服していることもあり、今後は個人投資家の利益確定売りも重荷として働いてきそうだ。 ほか、米長期金利の上昇も気掛かりだ。米経済指標の上振れやパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて米10年債利回りは29日、3.84%と3月上旬以来の高値を記録している。日米ともに、S&P500種株価指数や東証株価指数(TOPIX)の株式益利回りから米10年債利回りを差し引いたイールドスプレッドは一段と株式の割高感を示唆しており、今後は再び金利動向にも目配せが必要といえる。 7月は経済指標だけでなく日米の金融政策決定会合や主力企業の4-6月期決算などイベントが多い。当面、株式については積極的な買いは控えるべき局面と考え、日経平均でいえば33500円水準では戻り売りで対応し、押し目買いは75日移動平均線や13週移動平均線が近づくまで慎重に待った方がよいと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/30 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、堅調だが上値追いは慎重に *12:16JST 日経平均は続伸、堅調だが上値追いは慎重に  日経平均は続伸。154.50円高の33348.49円(出来高概算8億8145万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でダウ平均は74.08ドル安(-0.21%)と反落。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が欧州中央銀行(ECB)フォーラムでの討論会で追加利上げを示唆したため警戒感から売りが先行。一方、議長が米経済の柔軟性を強調すると景気後退懸念の緩和で下げ止まった。また、ハイテクの買い戻しが前日に続き相場を支援した。ナスダック総合指数は+0.26%と続伸。日経平均は112.85円高からスタート。為替の円安のほか、米市場の引け後に発表された決算を材料に半導体マイクロン・テクノロジーの株価が時間外取引で上昇していたこともハイテク株高を通じて全体をけん引した。一方、日経平均は上げ幅を300円超にまで広げた後は心理的な節目の33500円を回復した目先の達成感もあり、前引けにかけてはやや失速した。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>の半導体株が軒並み上昇。米銀のストレステストが健全な結果だったことなどを追い風に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行も堅調。イビデン<4062>、芝浦<6590>、TDK<6762>のハイテクも高い。為替の円安を受けて日産自<7201>、SUBARU<7270>の自動車も上昇。トリケミカル<4369>、フジミインコ<5384>など半導体材料株で高いものが目立つ。決算が好感されたハローズ<2742>、グローバルニッチトップの中小型株に関する一部報道が材料視された酉島製作所<6363>が大幅高。デクセリアルズ<4980>はレーティング格上げが手掛かりとなった。一方、決算で出尽くし感が先行したJフロント<3086>、株式分割権利落ち日のNTT<9432>、配当権利落ちのJT<2914>などが下落している。 セクターで精密機器、銀行、電気機器が上昇率上位に並んだ一方、パルプ・紙、海運、食料品などが下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は50%となっている。 日経平均は前日の後場から力強い展開となり早々に33000円を回復。本日も前日の米株高を受けて値幅を伴って続伸している。前日は権利付き最終売買日だったため、権利取りを狙った売買が活発したもよう。また、3月末に権利確定した配当金の支払いも概ね一巡してきたとみられ、配当金を受け取った投資家の再投資の動きなども支えになったと考えられる。また、日経平均をはじめ日米ともに主要株価指数が25日移動平均線まで下落したことで、テクニカル要因でも押し目買いが入りやすかったとみられる。こうした背景が、四半期末に伴う年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りが意識されるなかでの株式の意外高につながったと思われる。 一方、本日は四半期末にかけての需給悪化を狙って空売りしていた向きが買い戻しを迫られていると想定されるほか、イベントの無難消化による安心感なども株高に寄与していそうだ。前日は欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムにて各国中央銀行の総裁らが討論会に参加した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長ら欧米中銀の総裁らの発言は、金融政策決定会合や先週の米議会証言を通過したばかりということもあり、新味に乏しかった。それでも目先のイベント通過があく抜け感を生んでいると思われる。 ただ、パウエル議長の「食品とエネルギーを除くコアインフレについて2025年まで当局目標の2%に戻ることはない」とした発言は金融引き締め長期化を示唆しており、来年からの利下げ転換を織り込む市場予想との乖離を感じさせた。また、引き続きインフレ抑制を最優先に年内2回の利上げを示唆するFRBに対して、市場は7月会合での追加利上げ1回が最後とみている。この乖離にも変化は見られておらず、今後このギャップがどう解消されるかについて先行きに不透明感を残す形となった。 ほか、ECBフォーラムで注目されたのは日本銀行の植田和男総裁の発言だ。植田総裁は「2024年に入ってもインフレ2%以上の伸びが実体化するとの確信が持てれば、政策を変更する良い理由になる」と述べた。一方で、「日本ではいまのところは基調的なインフレが2%を下回っている」とし、金融緩和継続の正当性を主張。これが改めて日本と世界との間の金融政策のスタンス、政策金利の差を意識させ、為替の円安基調を強めている。これも一つ足元の日本株高に寄与しているといえそうだ。 さらに、28日の米株式市場の取引終了後に発表した半導体メモリーチップ製造大手のマイクロン・テクノロジーの決算も足元の株高に一役買っている。同社の最高経営責任者(CEO)は「メモリー業界の売上高は底入れしたとみている」「業界の需給バランスが徐々に回復するにつれ利益率も改善すると予想している」などと説明。在庫調整が着実に進展していること、6-8月(第4四半期)についても堅調な見通しを示した。同社の株価は時間外取引で3%上昇し、本日の東京市場での半導体株高に寄与している、 ただ、まず為替の円安についてだが、最近は財務省など当局の要人から円安をけん制する発言が増えており、円安に対する警戒感は日を追うごとに高まっている。また、足元では政府のガソリン代や電気代の上昇を抑える物価抑制策の効果が発現していることに加え、日経平均に代表される歴史的な株高によって円安のマイナス影響が緩和されている。 しかし、今後、物価抑制策の効果が剥落してくれば、徐々に再び円安を否定的に捉える世論が強まってくる可能性がある。そうした事態は、新しい植田日銀総裁を選んだ岸田文雄首相からすれば容認しがたいことで、足元で内閣支持率が低下していることも踏まえれば尚更だろう。今後は岸田政権から日銀や財務省に対して暗黙のプレッシャーがかかることが想定され、この先は金融緩和策の修正が再び意識されてくる場面もあると思われる。 次にマイクロン・テクノロジーの決算についてだが、同社は米政府による対中国の安全保障政策上のリスクについて「見通しに影響を与え、回復を遅らせる大きな逆風だ」と指摘している。また、市況の在庫調整については進展しているものの、年後半から実需が急速に回復することは見込んでいない。最悪期は過ぎても本格的な回復がまだ先となれば、回復を先取りして上昇してきた足元の半導体企業の株価にはバリュエーションの調整リスクがあると考えられる。 6月が終わり、四半期末に伴うリバランスが終わったとしても、7月には日米の金融政策決定会合があり、その前には重要なインフレ・雇用関連の指標も控える。また、さらにその先には日米主力企業の4-6月期決算が控えている。製造業を中心に経済指標の減速が続くなかで欧米中銀の利上げは続いており、こうした影響が今後、時間差を伴って実体経済に表れてくる可能性もある。こうした中、上記イベントを確認・消化する前に、新しい四半期末に入ったからといって早々に再び積極的に株式の持ち高を積み上げてくるとは考えにくいだろう。投資戦略としては、引き続き景気敏感株やハイテク株は避け、景気・為替の影響を受けにくい内需系企業を選好すべきと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/29 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり反発、今晩のECBフォーラムや米マイクロン決算に注目 *12:08JST 日経平均は5日ぶり反発、今晩のECBフォーラムや米マイクロン決算に注目  日経平均は5日ぶり反発。304.06円高の32842.39円(出来高概算6億3994万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は212.03ドル高(+0.62%)と7日ぶりに反発。経済指標が軒並み予想を上回ったことで景気減速懸念が後退し、買いが先行。金利が上昇する中ではあったが、下落が続いていたハイテク株の押し目買いが強まり、相場全体を押し上げた。ナスダック総合指数は+1.64%と3日ぶり反発、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+3.60%と大幅続伸。米株高を引き継いで日経平均は269.51円高からスタート。一方、寄り付き前から円安に一服感が見られていたほか、米国による中国への人工知能(AI)半導体輸出規制に関する報道がハイテク株の上値を抑制し、日経平均は350円近くまで上げ幅を広げた後は伸び悩み、その後は32800円前後でのもみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソシオネクスト<6526>、ルネサス<6723>を筆頭に半導体株が大きく上昇。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、ニデック<6594>、新光電工<6967>、ローム<6963>などハイテクも高い。米金利高を受けて三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行が、為替の円安でトヨタ自<7203>、デンソー<6902>などが上昇。信越化<4063>、日本製鉄<5401>、クボタ<6326>の景気敏感株の一角、JAL<9201>、ANA<9202>の空運、NTT<9432>、KDDI<9433>の通信などが高い。業績・配当予想を上方修正したハニーズHD<2792>、ロシア事業の売却に伴う利益計上予定を発表した日本板硝子<5202>、自社株買いが好感されたイマジカG<6879>が急伸。一方、前日に急伸した川崎汽船<9107>をはじめ、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運が反落。サイボウズ<4776>は月次動向が嫌気されたか急落している。 セクターで空運、証券・商品先物取引、輸送用機器が上昇率上位に並んだ一方、海運、石油・石炭製品、鉱業の3業種のみが下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の86%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 前日に発表された米経済指標は総じて強かった。5月耐久財受注、6月消費者信頼感指数、5月新築住宅販売は軒並み市場予想を大幅に上回り、消費者信頼感指数は2022年初めの以来の高水準、新築住宅販売は約1年ぶりの高水準を記録した。個人貯蓄がまだ残されていることや労働市場の健全さが続いていること、そして中古住宅を中心とした住宅市場での在庫不足を背景に、消費者信頼感指数と新築住宅販売の結果はある程度想定できたが、上振れ度合いは想定よりも大きかった。また、先週末に発表された米6月製造業の購買担当者景気指数(PMI)の悪化を踏まえると、耐久財受注の上振れ度合いもややサプライズを伴った。さらに、4月S&Pコアロジック・ケース・シラー全米住宅価格指数は前月比ベースで3カ月連続の上昇となった。 これらの結果を受けて、改めて米国経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まっており、前日は米債利回りが短期を中心に長期の年限まで幅広く上昇した。一方、強すぎる経済データは米連邦準備制度理事会(FRB)の政策運営を難しくする。市場は依然として年内について残り一回の利上げしか織り込んでいないが、今回のような強い経済データが続くと、次回7月会合だけでなく、9月会合での利上げの可能性も高まってくるだろう。 米経済が思った以上に底堅く本当にソフトランディングとなるのであれば、先行きの景気後退懸念で抑えられていた米長期金利が再びじわりと上昇してくる可能性もある。一方でインフレ指標はまだFRBの目標値を大幅に上回っているとはいえ、伸び率は鈍化傾向にあるため、金利上昇と合わせてこれは実質金利の上昇につながってくる。すでに米株のバリュエーションは高く過熱感を指摘する声が聞かれているが、実質金利が上昇してくるとなれば一段と米株式の割高感が意識されてこよう。 こうした中、今晩は欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムで各国中央銀行の総裁らがパネル討論会に参加する予定だ。パウエルFRB議長などからは改めてタカ派な姿勢が示される可能性が高いと思われ、米ハイテク株がそれでも前日同様に強い動きを続けられるかに注目したい。 ほか、米ハイテク株を巡っては、バイデン米政権が中国への人工知能(AI)半導体輸出について新たな規制措置を検討していると一部報道で伝わっている。これを受けて米半導体エヌビディアの株価は時間外取引で3%下落している。本日の東京市場では、半導体株が大きく失速せずに上昇を維持しているため、相場への影響は限定的かもしれないが、生成AIブームの火付け役となったエヌビディア株が調整色を強めるようであれば、東京市場でも日経平均の上値抑制圧力として働くことになるだろう。 半導体については、今晩は米半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーの決算も予定されている。在庫調整の進展度合いを確認するとともに、再び底入れ感が強まるのか株価の反応に要注目だ。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/28 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、足元の調整はまだ想定の範囲内 *12:17JST 日経平均は4日続落、足元の調整はまだ想定の範囲内  日経平均は4日続落。252.11円安の32446.70円(出来高概算6億3781万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でダウ平均は12.72ドル安(-0.03%)と小幅に6日続落。ロシア情勢を巡る地政学リスクを警戒した売りが先行。また、四半期末に伴う持ち高調整でハイテク株の利食い売りが重荷となった。ナスダック総合指数は-1.16%と続落。米株安を受けて日経平均は68.85円安からスタート。四半期末に伴う年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りなど需給悪化が意識されるなか、前場中ごろまで下げ調子が続き、一時32306.99円(391.82円安)まで下げ幅を広げた。一方、前引けかけては時間外取引の米株価指数先物の動きに合わせて下げ渋る動きが見られた。 個別では、米エヌビディアの株価下落を受けてアドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>を筆頭に、ソシオネクスト<6526>、スクリン<7735>など半導体株が大きく下落。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、HOYA<7741>の値がさ株やソフトバンクG<9984>、ニデック<6594>、SMC<6273>、ローム<6963>などハイテクも全般軟調。三菱商事<8058>、丸紅<8002>、三井物産<8031>の商社株は大幅続落。SHIFT<3697>、リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>のほか、SREHD<2980>、Appier<4180>、インソース<6200>などグロース株の下落が目立つ。研究開発提携を通じて臨床試験中だった新薬の開発中止を米ファイザーが発表したことで、SOSEI<4565>はストップ安売り気配のまま終えている。 一方、急伸している川崎汽船<9107>を筆頭に郵船<9101>、商船三井<9104>の海運株が大幅続伸。前日に値上げが好感されたOLC<4661>も大幅に続伸。トヨタ自<7203>、日産自<7201>、三菱自<7211>の輸送用機器のほか、三菱UFJ<8306>、T&DHD<8795>、JFE<5411>、コマツ<6301>、出光興産<5019>など金融や資源関連セクターが堅調。JR東海<9022>、JAL<9201>、NTT<9432>などディフェンシブの一角もしっかり。産業革新投資機構(JIC)による買収で前日ストップ高比例配分となったJSR<4185>はTOB価格にサヤ寄せする形で大幅高。配当政策の変更などが評価された人・夢・技術グループ<9248>、大幅増益決算が好感された壱番屋<7630>なども大きく上昇。 セクターで不動産、医薬品、卸売が下落率上位に並んだ一方、海運、石油・石炭製品、空運が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体69%、対して値上がり銘柄は26%となっている。 日経平均は4日続落。前日は下落スタートながらも急速に切り返して32500円の節目を即座に回復するなど下値の堅さも見られたが、本日は前場中ごろまでほぼ一本調子で下げ続ける展開で、32500円も割り込んだまま前場を終えた。月末および四半期末に伴う年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りに加えて、7月上旬に控える上場投資信託(ETF)運用会社の分配金捻出の売り需要など、需給悪化イベントを前に売りが優勢となっている。 6月19日に付けた高値まで、日経平均は連日のようにバブル崩壊後の最高値を更新するなど今四半期(4-6月)の日本株の上昇率は世界的にも大きかったため、分かりやすい需給イベントを控えるなか、さすがに利益確定売りには抗えない様子。先物・オプション取引の決済期日が重なるクアドラプル・ウィッチング通過後は、米株式市場でも記録的な上昇率を見せていたナスダック総合指数を中心に利益確定売りが続いている。 ただ、どちらもこれまでの株価上昇率を考えれば、四半期末に伴う利益確定売りはあくまで想定内の範囲内であり、足元の株価下落を悲観的に捉えている向きは少ない。日経平均やナスダック指数など主要株価指数については、25日移動平均線が依然として下値支持線として機能していることもあり、まだトレンドは上向きのままだろう。本日の日経平均については、前場中ごろに安値を付けた後は引けにかけて回復し、32500円を回復しようとする動きも見られていて、むしろ前日に続き底堅さも確認されている。 重要なのは今週を過ぎてからの来週以降の動きだろう。四半期末に伴う持ち高調整を経て月替わりのタイミングで早々に再び株価は上昇基調に戻るのか否か。ETFの分配金捻出という国内固有の需給イベントを控える日本株については来週もまだ調整が続くかもしれないが、米株が回復した場合にはETFイベントの通過を待たずしてこれに付いていくのか、こうした点が焦点になってこよう。 ただ、世界的に中央銀行による利上げ長期化の機運が高まっていることや、経済指標の悪化が続いているなか、先行きについては不透明感が強く、需給イベント通過後に早々に再びリスク資産を積極的に積み上げていくのは難しいだろう。頃合い的にも7月の日米の金融政策決定会合とその後の四半期決算シーズンを確認するまではいったん様子見が無難と思われる。 こうした中、当面はこれまでの相場けん引役だったハイテク株の早期出直りを期待した押し目買いには慎重になり、引き続きディフェンシブセクターや、4-6月期における株価パフォーマンスの冴えなかった出遅れセクターへの投資妙味が相対的に高いと考える。 出遅れ解消の動き継続が期待されていた新興株については、新規株式公開(IPO)ラッシュに伴う需給の重荷もあるだろうが、マザーズ指数が足元で再び800ptを割り込むなど残念な動きになっている。ただ、今は地合いの悪化に連れられている要因も大きいと思われる。マザーズ指数は25日移動平均線水準までの調整が完了し、短期的な過熱感が解消されていることもあり、今後は再び物色が向かう展開に期待したい。ただ、今週は週末の米個人消費支出(PCE)コアデフレーターの発表に加え、28日には欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムで各国中銀総裁らがパネル討論会に参加する予定のため、短期的にはまだ警戒イベントがあり、押し目買いは打診的にとどめるべきだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/27 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反発、悪い流れ断ち切るも懸念くすぶる *12:10JST 日経平均は3日ぶり反発、悪い流れ断ち切るも懸念くすぶる  日経平均は3日ぶり反発。64.70円高の32846.24円(出来高概算6億3478万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場でダウ平均は219.28ドル安(-0.64%)と5日続落。連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測の高まりを受けて売りが先行。欧米の6月製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が市場予想を下回ったことで景気後退懸念が強まったことも重荷になった。金利は低下したがハイテクも売られ、ナスダック総合指数は-1.01%と反落。米株安を受けた日経平均は134.46円安からスタートすると、ロシア情勢の不透明感も背景に売りが先行し、寄り付き直後に388.82円安まで下げ幅を拡大。ただ、為替の円安進行や国内での半導体業界の再編を巡る材料を背景に個別株物色が活発となるなか、日経平均も急速に買い戻されてすぐにプラス転換した。一方、その後は戻り一服感から一進一退が続いた。 個別では、産業革新投資機構の買収が伝わったJSR<4185>がストップ高買い気配のままとなっており、本一件を受けた思惑から東応化<4186>、大有機化<4187>が急伸し、ほか、トリケミカル<4369>、ADEKA<4401>、フジミインコ<5384>、住友ベークライト<4203>など半導体部材関連の銘柄が軒並み高となっている。信越化<4063>、SUMCO<3436>、レゾナック<4004>、新光電工<6967>など時価総額の大きい関連株でも大幅高が目立つ。郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運をはじめ、神戸製鋼所<5406>、INPEX<1605>、コマツ<6301>、安川電機<6506>、住友化学<4005>など景気敏感株の上昇も多い。 一方、ソシオネクスト<6526>、レーザーテック<6920>など半導体の一角が大きく下落。先週末に崩れた丸紅<8002>、三井物産<8031>などの商社株も冴えない。また、Appier<4180>、ラクス<3923>、オプティム<3694>、SREHD<2980>、ANYCOLOR<5032>のグロース株の下落率が全体的に大きく目立っている。 セクターで海運、化学、鉱業が上昇率上位に並んだ一方、電気・ガス、情報・通信、銀行が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の54%、対して値下がり銘柄は42%となっている。 週末の間にロシア情勢の不透明感が一時にわかに強まった。国防省との確執を深めていた民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が24日、プーチン政権に対して武装反乱を起こした。首都モスクワに向けて部隊を進め、一時情勢は緊迫化した。しかし、プリゴジン氏は流血の事態回避に向けて緊張緩和策を講じることでプーチン大統領と合意し、その後ワグネルの部隊を撤収。結果的にプーチン政権に対する反乱はわずか一日で収束した。 反乱を起こしたプリゴジン氏は隣国ベラルーシに亡命した。ロシア大統領府は事態収拾に向けた取引の一環としてこの出国を認め、同氏とワグネル戦闘員に対する反乱罪での刑事訴追に向けた手続きについても、これを取り下げることをプーチン大統領が自ら保証したという。 今回の一件でロシア軍およびプーチン政権の弱体化が明らかになった。これがウクライナ戦争の早期終結につながれば何よりだが、実際のところ話はそう簡単でないだろう。一段と追い込まれたプーチン大統領が理性を失った暴挙に出るリスクなどが逆に増したともいえる。地政学リスクに関する先行き不透明感の強まりは今後の相場の重荷になりそうだ。 一方、週明けの東京株式市場では日経平均が寄り付き直後に一時400円近く下落したが、すぐに切り返してプラス圏に浮上するなど底堅い動きを見せている。地政学リスクを口実とした短期筋の売りが早々に買い戻されたもようだ。先週末にかけて需給悪化を想定した先回りの売りで日経平均は33000円を一気に割り込んでいた。これに続こうとした悪い流れを早々に断ち切ろうとする前場の底堅い動きは日本株の先高観が依然として根強いことを示唆しており、ポジティブな印象を受ける。 一方、月末にかけては年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りがまだ実際に発生する余地が残されている。また、今四半期における日本株の上昇率は記録的な大きさになっていることから、そのリバランス売りの規模の大きさも懸念され、目先は上値追いや押し目買いには慎重になるべきだろう。 さらに、ロシアのクーデターの一件でかき消された感があるが、実体経済の悪化も気がかりである。先週末に発表された欧米の6月製造業の購買担当者景気指数(PMI)は揃って市場予想を下回った。米国6月製造業PMIは46.3へと5月(48.4)から大きく低下し、景況感の拡大・縮小の境界値である50を大きく割り込んだ。ほぼ横ばいを見込んでいた市場予想(48.5)も大幅に下回っている。また、欧州の6月製造業PMIも43.6へと5月(44.8)から低下、こちらも横ばいを見込んでいた予想(44.8)を下振れた。 また、サービス業についても、欧州は6月が52.4と5月(55.1)から大幅に低下し、予想(54.5)を大きく下振れている。米国は54.1と予想(54.0)にほぼ一致したが、こちらも5月(54.9)からは低下した。サービス業はどちらも50超えが続いているが、両国ともに製造業の悪化の印象を打ち消せるほどの内容とは言いにくい。 先週はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、市場予想が織り込んでいる回数よりも多い、年内2回の追加利上げを再表明したほか、英イングランド銀行(中央銀行)とノルウェー中銀が0.5ポイントの大幅利上げに踏み切るなど、改めて世界的な金融引き締め長期化に対する懸念が強まった。一方で、今回の欧米PMIの結果のように、グローバルな景況感の悪化も続いている。経済減速下での利上げ長期化は高い確率で景気後退を深刻化させると思われ、今後の株式市場の展開には注意しておくべきだろう。 先週は物色の裾野が中小型株・新興株に広がっていることを指摘し、ポジティブに評価していたが、週明けのマザーズ指数は大きく続落している。地合いが悪化するなか、流動性リスクが意識される新興株が敬遠されている可能性がある。また、今週は新規株式公開(IPO)が多いため、IPOに備えた資金確保の動きも重荷になっていそうだ。今後1、2週間については、需給イベントの影響が想定されるハイテク・景気敏感の主力株および投資家心理の悪化が重荷となりやすい新興株には慎重なスタンスで臨む一方、ディフェンシブ銘柄への投資妙味が相対的に高いと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/26 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、33000円割れ、需給リスクと景気腰折れリスク *12:15JST 日経平均は大幅続落、33000円割れ、需給リスクと景気腰折れリスク  日経平均は大幅続落。542.55円安の32722.33円(出来高概算8億5818万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場でダウ平均は4.81ドル安(-0.01%)と小幅に4日続落。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が2日目の議会証言で年内2回の追加利上げが適切になる可能性を繰り返し、売りが先行。一方、根強い人工知能(AI)技術革新への期待感からハイテクの押し目買いが強まり、終盤にかけて下げ幅を縮小。ナスダック総合指数は概ね終日堅調に推移し、+0.95%と4日ぶり反発。米株高を受けて日経平均は193.47円高からスタート。寄り付き直後には一時33500円を回復したが、前場中ごろから売りが加速すると一気に33000円を割り込み、一時32693.57円(571.31円安)まで下落した。その後は為替の円安などを拠り所に下げ渋ったものの、押し目買いは限られ、この日の安値圏でのもみ合いにとどまった。 個別では、前日ストップ安まで売られたソシオネクスト<6526>が乱高下の末に大幅安。序盤は堅調だったアドバンテスト<6857>やディスコ<6146>の半導体株も下落に転じた。これまで強かった三菱商事<8058>、丸紅<8002>、三井物産<8031>の商社も軒並み大幅に下落。ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>の値がさ株のほか、神戸製鋼所<5406>、住友鉱<5713>、INPEX<1605>、三菱UFJ<8306>、デンソー<6902>、川崎重<7012>の景気敏感株、TDK<6762>、イビデン<4062>、ファナック<6954>などのハイテク株、インフォマート<2492>、ベイカレント<6532>、インソース<6200>のグロース株も全般安い。 一方、レーザーテック<6920>が逆行高となっており、7&I-HD<3382>、エーザイ<4523>、JAL<9201>、JR東<9020>などディフェンシブ系の一角が堅調。柏崎刈羽原発の再稼働を巡る報道を受けて東京電力HD<9501>が大幅高となり、九州電力<9508>は目標株価引き上げも材料視された。力の源HD<3561>は国内証券の新規買い推奨が手掛かりとされ大幅に上昇した。 セクターでは卸売、非鉄金属、輸送用機器が下落率上位に並んだ一方、電気・ガスのみが上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は11%となっている。 本日の日経平均は反発スタートも前場中ごろから急速に値崩れし、6月13日以来となる33000円割れとなっている。今月末は四半期末に当たり、年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りが意識されている。ただ、前四半期末の3月末からの株価上昇率の大きい銘柄ほどこそリバランス売りが膨らむと考えられるが、本日の東京市場では3月末比で上昇率の大きい半導体株はむしろ全体と比べれば底堅い。バフェット効果で半導体株と並んで上昇率の大きい商社株に代表される卸売がセクター下落率トップに顔を出しているが、これに続いて上位に入っているのは3月末比で上昇率の鈍い非鉄金属、鉄鋼など景気敏感セクターであり、本日の下落はリバランス売りが主因ではなさそうだ。 というよりは、月末にかけてこれからリバランス売りが強まることを狙った短期筋による先物主導での仕掛け的な売りが原因と推察される。一方、前引け時点での東証プライム市場の売買代金は既に2兆4000億円を超えており、現物にもまとまった売りは出ているようだ。 需給以外の観点からは、昨日の当欄「景気敏感株が主役に代われるのか?」で指摘したように、世界景気のオーバーキルに対する懸念が強まっていることも株価下落の背景として挙げられる。すなわち、主要中央銀行による過度な金融引き締めが経済をソフトランディング(軟着陸)でなくハードランディングへと導いてしまう恐れだ。 前日は海外で中央銀行による利上げラッシュが起こった。英イングランド銀行は金融政策委員会(MPC)において市場の予想に反して利上げ幅を0.5ポイントへと拡大させた。利上げ幅の拡大自体がサプライズではあるが、利上げ幅の拡大をMPC参加メンバー9人のうち7人が支持していたことも目を引く。また、MPCは政策金利が来年序盤に6%前後でピークを付けるとの市場予想を否定せず、利上げが追加で1ポイントも行われることが示唆されている。 ノルウェー中銀も0.5ポイントの大幅利上げを決定し、政策金利は15年ぶりの高水準に達した。また、8月の追加利上げも示唆している。さらに、スイス中銀も利上げ幅は0.25ポイントへと縮小させたものの、利上げを継続、加えて、追加利上げの可能性は極めて高いとした。 既に峠を超え、株式市場の最大の懸念材料ではないと考えられていたインフレだが、改めて世界的に長期化する可能性が警戒されているようだ。こうした中、パウエルFRB議長も、前日の2日目の上院での議会証言において改めて年内2回の追加利上げを示唆した。 一方、主要各国の経済指標は製造業を中心に低調だ。また、インフレ長期化による実質所得の伸び悩みや個人貯蓄の切り崩しにより、底堅かった個人消費も今後は減退していくことが予想される。ただ、上述したように各国中銀はインフレ沈静化になお躍起で、利上げ停止はおろか、むしろ継続を主張している。こうなってくると、改めて世界経済のハードランディング懸念が強まってくるのも自然といえる。 米株式市場はこれまでソフトランディング期待を織り込む形で上昇してきた。東京市場も相対的な景況感の良さが海外投資家から注目される理由の一つとされてきた。しかし、世界経済がハードランディングへと向かうのであれば、米株式市場はバリュエーション調整を強いられるであろうし、世界の景気敏感株と称される日本株も無傷でいられることはないだろう。 また、本日午前に発表された5月全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数で前年比+4.3%と伸びが加速。市場予想(+4.2%上昇)を上回り、1981年6月以来(+4.5%上昇)の高水準を記録した。日本銀行は世界の流れと逆行して依然として金融緩和を続けていて、これも日本株買いの理由の一つとされてきた。しかし、足元では1ドル=143円台と円安・ドル高の進行に拍車がかかっている。日銀は、輸入インフレは沈静化したとしているが、これが再燃する恐れが出てきた。その場合、実質賃金の低下が長期化し、個人消費の腰折れ、ひいては景気の減速というシナリオ実現の可能性が高まってくる。 日経平均は、目先は心理的な節目の32500円、もしくは32150円水準に位置する25日移動平均線で下げ止まれるかが焦点となろう。日本株の先高観をなお指摘する向きは依然として多いが、これまで海外投資家が日本株買いの理由としてきた「日銀の金融緩和継続」「相対的に底堅い景気」が今後売り材料へと変わってくる恐れが出てきたなか、慎重なスタンスが求められよう。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/23 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は小幅に3日続伸、景気敏感株が主役に代われるのか? *12:13JST 日経平均は小幅に3日続伸、景気敏感株が主役に代われるのか?  日経平均は小幅に3日続伸。0.49円高の33575.63円(出来高概算7億3126万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は102.35ドル安(-0.30%)と3日続落。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が下院での議会証言で年内の追加利上げの必要性を再表明したことが嫌気された。また、金利先高観に伴うハイテク売りが全体の重しになった。ナスダック総合指数は-1.20%と3日続落、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-2.68%と大幅に4日続落した。米株安を受けて日経平均は137.13円安からスタート。一方、海外投資家による買い意欲は健在のようで、日経平均はすぐに下げ渋ると一時プラス圏に浮上。ただ、指数寄与度の大きいハイテク・グロース株を中心に売られるなか、その後は再び軟化し、徐々に下げ幅を広げる動きが続いた。他方、節目の33500円を意識した下げ渋りも見られ、日経平均は前引けにかけては再びプラス転換した。 個別では景気敏感株が全般買い優勢で、三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>の銀行、東京海上<8766>、SOMPO<8630>の保険、オリックス<8591>、三菱HCキャピタル<8593>の金融、三菱商事<8058>、丸紅<8002>、伊藤忠<8001>の商社、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業、三菱重<7011>、川崎重<7012>の総合重機、JFE<5411>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、三菱マテリアル<5711>、DOWA<5714>の非鉄金属などが上昇。高浜原発の再稼働時期が決定したと発表した関西電力<9503>、目標株価が引き上げられた三井ハイテック<6966>は大幅高。業績予想を上方修正したテスHD<5074>、自社株買いを発表したインフォマート<2492>は急伸。一方、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>の半導体株が軒並み大きく下落、ソシオネクスト<6526>はレーティング格下げもあり大幅安となっている。 セクターでは卸売、鉱業、その他金融が上昇率上位に並んだ一方、精密機器、電気機器、金属製品が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 本日の東京市場ではハイテク・グロース株が売られる一方、景気敏感株に買いが入っており、指数では日経平均が冴えない展開となっている一方でTOPIX(東証株価指数)が上昇している。上昇相場初期の値がさ株・ハイテク株の一極集中から次第に物色が循環してきてはいたが、ここまで明確に日経平均とTOPIXの間でパフォーマンスに差がつくのは珍しい印象。 先週末から米株式市場では主要株価指数が揃って続落。ダウ平均とナスダック総合指数は3日続落、生成AI(人工知能)ブームで上昇が際立っていたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)にいたっては4日続落となっている。 先週末は株価指数や個別株を対象とした先物・オプション取引の決済期日が重なるクアドラプル・ウィッチングだったが、やはり先週末を境に需給に変化があったように見受けられる。まだ、ウィッチングを過ぎてから2日に過ぎないが、米株式市場では特にこれまでの上昇局面においてけん引役だったハイテク株の下落率が目立っている。対して、景気敏感株の構成比率が高いダウ平均は続落ながらも下落率はナスダックなどに比べて小幅にとどまる日が続いている。 市場関係者の間では、生成AIブームのポテンシャルには期待できるものの、ハイテク企業への業績貢献には時間がかかるとの慎重な見方もあり、足元の急ピッチでのハイテク株高は行き過ぎとの指摘も聞かれる。生成AIブームに火を付けた米半導体エヌビディアの決算から約1カ月が過ぎたが、ちょうど需給の転換点であるクアドラプル・ウィッチングを過ぎたこともあり、ハイテク株に対する熱狂はいったん小休止。今後は四半期決算ごとに経営陣からのコメントなどを通して実態を確認していく必要があると、冷静に見極める段階に入ったと思われる。 これまでの日米の株価指数の上昇のけん引役だったハイテク株が一服するとなると、日米ともに短期的な過熱感を指摘する声も聞かれていたなか、今後の相場は調整局面、良くても高値もみ合いといった局面に入っていきそうだ。前日の米株式市場および本日の東京市場のように、けん引役の交代で景気敏感株が今後相場をリードできれば理想的ではあるが、この点は慎重にみるべきだろう。 というのも、株価バリュエーションをみれば、米国経済を中心に世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待はすでに日米ともに株価に大方織り込み済みと思われることがまず一つ挙げられる。加えて、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の不透明感が再び高まっており、ソフトランディング期待は今後一段と高まるよりは縮小する可能性があると考えるからだ。 前日は下院金融サービス委員会においてパウエルFRB議長の議会証言があった。先週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見の内容と比べて新味には乏しかった。ただ、FRBが先週発表した最新の政策金利見通しで年内あと2回の利上げが示唆されたことに関し、市場が利上げ再開のハードルは高いとみているのに対して、パウエル議長は前日の議会証言でこの点に関して「経済がほぼ想定通りに推移した場合、これ(追加利上げ2回)は正確に推測した結果である」と述べ、追加利上げを再強調した。 市場は依然としてパウエル議長のこうしたタカ派な姿勢をポーズにしか過ぎないと捉えているようだ。しかし、今回の証言からは、FRBの経済データ次第というスタンスは変わらないものの、物価指標や雇用指標が現在のペースを上回る程に劇的に大きな減速を見せない限り、本当に追加利上げが行われる可能性が高まったような印象を個人的には受けた。仮にこうしたシナリオが今後現実味を帯びてくると、市場はFRBが必要以上に金融引き締めを行うことで経済をハードランディングへと導いてしまうオーバーキルのリスクを警戒しはじめる可能性がある。次回のFOMCは7月25-26日であるが、残り約1カ月の間にこうしたシナリオが台頭してこないかどうかを見極めていく必要があろう。 話は戻るが、以上の通り、今後経済のオーバーキル懸念が台頭するリスクも考慮すると、景気敏感株が長く主役の座に居座ることは考えにくく、景気敏感株への上値追いには慎重になるべきと考える。一方、依然として出遅れ感が残る中小型株・新興株については、リスクオフ時の流動性リスクには留意すべきだが、東証プライムの主力ハイテク・景気敏感株が手掛けづらくなってくると、消去法的な観点から投資対象として選ばれやすくなる可能性がある。本日東証グロース市場に新規上場するアイデミー<5577>、リアルゲイト<5532>は前場時点ではともに買い注文が売り注文を上回って値付かずとなっており、個人投資家の買い意欲の旺盛さが窺える。含み損益の改善した個人投資家による既存新興株に対する物色意欲が高まる展開に期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/22 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、強い日本株に対して要注意なのは米国株か *12:22JST 日経平均は続伸、強い日本株に対して要注意なのは米国株か  日経平均は続伸。134.62円高の33523.53円(出来高概算6億2345万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は245.25ドル安(-0.71%)と続落。5月住宅着工件数が予想を上回り、年内の利上げ再開に対する懸念が台頭。中国人民銀行による利下げが世界経済の減速懸念を強めたことも重しとなった。21-22日に予定されているパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を控えた調整的な売りも目立ち終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-0.16%と小幅続落。米株安を引き継いで日経平均は188.28円安からスタート。一方、時間外取引のナスダック100先物が上昇するなか、日経平均は早々に切り返すと、すぐにプラス圏に浮上。中盤はもみ合いが続いていたが、前引けにかけては再び騰勢を強め、33500円の節目を超えてきた。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ソシオネクスト<6526>、ANYCOLOR<5032>、SMC<6273>、芝浦<6590>、ベイカレント<6532>、ラクスル<4384>などのハイテク・グロース株の一角が高い。日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼、前日に報道を受けて急落した東京海上<8766>、SOMPO<8630>の保険も大きく上昇。商社では丸紅<8002>が大幅高。国内証券の新規買い推奨を受けたJAL<9201>が大きく上昇し、ANA<9202>も高い。本日引け後に発表される5月訪日外客数を期待した先回り買いで、JR東<9020>、JR西<9021>、三越伊勢丹<3099>、マツキヨココ<3088>、共立メンテ<9616>、資生堂<4911>などインバウンド関連が総じて強い動き。 高水準の自社株買いを発表したコニシ<4956>、新規事業に関するリリースが材料視された雪国まいたけ<1375>、ジャパンネットたかたと業務提携したネットプロHD<7383>、ブラックロック・ジャパンの大量保有が判明したレノバ<9519>、レーティング格上げが確認されたイーギャランティ<8771>などは大幅高となっている。 一方、トヨタ自<7203>、信越化学<4063>、ソニーG<6758>、ルネサス<6723>、HOYA<7741>、任天堂<7974>、ローム<6963>、村田製<6981>など主力処で値がさ株やハイテクの一角が軟調。 セクターでは空運、保険、水産・農林が上昇率上位に並んだ一方、精密機器、石油・石炭製品、輸送用機器が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の74%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 連休明け20日の米株式市場は続落し、主要株価指数は一時は揃って1%程度の下落率まで下げ幅を広げる場面があった。今晩の米下院でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を控え、やや警戒感が高まったとみられる。一方、米株式市場は序盤に売りが先行した後は、中盤にかけて急速に下げ渋り、底堅い動きとなった。ただ、主要株価3指数は中盤にはすでに前営業日終値に近い水準にまで戻していたにもかかわらず、その後は一進一退にとどまり、結局、プラス圏で推移する時間帯はほとんどなかった。 先週末の米株式市場は、株価指数や個別株を対象とした先物・オプション取引の決済期日が重なるクアドラプル・ウィッチングだった。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋のEミニ・S&P500種価指数先物を対象としたショートポジション(売り持ち高)は5月30日時点で43万4170枚に達し、QUICKでさかのぼれる2001年以降で最高となっていた。年末年始の予想とは大きく異なる形で株式市場が戻りを試す展開となるなか、ウィッチングに向けては売り方の買い戻しなどに拍車がかかったと考えられる。 一方、シカゴ・オプション取引所(CBOE)によると、5日移動平均ベースでのプット(売る権利)の売買代金をコール(買う権利)の売買代金で割って算出するプット・コールレシオは過去3年におけるレンジ下限まで低下してきている。先高観からコールを買っている強気目線の投資家が増加していることが示唆されている。 また、米個人投資家協会(AAII)の週次調査によると、6月16日時点で相場の先行きに対して「強気(ブル)」目線の米個人投資家の割合は45.2%と、2021年11月以来の高さにまで上昇しており、「弱気(ベア)」目線の投資家の割合である22.7%を大幅に上回っている。 米クアドラプル・ウィッチングに向けては、投資家は既存のポジションをロールオーバーするか(乗り換えるか)、反対売買で清算するかのどちらかを迫られる。このため、ウィッチングが一つの需給の転換点となることが多く、売り方の買い戻しは先週末まででいったん一巡した可能性が高いと推察される。 また、上述したように足元では強気目線の投資家が増え始めている。先物で弱気なポジションが維持されつつも、オプションでは強気のポジションも構築されてきており、これまでのように、投資家の身軽なポジションが株価の意外高を引き起こす余地は小さくなってきたといえる。 他方、本日の日経平均は米国株の下落を横目に、朝方の下落スタート後は大きく切り返して安値から400円近くも上昇するなど、非常に強い動きを見せている。週前半は久々に軟調な展開となり、さすがに上昇一服かと思われたが、どうやら外国人投資家の買い意欲はまだまだ健在のようだ。 ただ、米国株についてはクアドラプル・ウィッチングを通過した直後の今週の動きが重要で、米株の動向次第では、日本株も無傷でいられるとは考えにくい。米株が崩れたとしても、相対感でみた際の日本株の堅調さは続くだろうが、指数への影響力が大きい値がさ株や大型株などの上値追いには慎重になるべきタイミングと考える。 一方、朝安後に切り返して大きく上昇してきている本日のマザーズ指数の動きや、これまでの新規株式公開(IPO)銘柄の良好な初値形成、そして本日東証グロース市場に新規上場するシーユーシー<9158>に対する旺盛な買い注文状況などを見る限り、中小型株や新興株には引き続き強気目線で臨みたい。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/21 12:22 ランチタイムコメント 日経平均は続落、連日の下落は特殊要因による一時的なものか? *12:14JST 日経平均は続落、連日の下落は特殊要因による一時的なものか?  日経平均は続落。208.48円安の33161.94円(出来高概算6億8278万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場はジューンティーンスの祝日に伴い休場。欧州株式市場では独DAXが-0.95%、英FTSE100が-0.70%、仏CAC40が-1.00%と全般下落。期待された中国の景気刺激策が発表されなかったことに伴う失望感や利上げ長期化観測の高まりが重しになった。欧州株安を受けて日経平均は100.85円安からスタート。手掛かり材料難のなか、為替の円安進行を支えに前日終値を挟んだ一進一退が続いていたが、前場中ごろから円安が一服するに伴い、下げ足を速め、一時33089.02円(281.4円安)まで下落した。 個別では、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼、トヨタ自<7203>、ホンダ<7267>の輸送用機器、コマツ<6301>、クボタ<6326>の建機など景気敏感株のほか、ファナック<6954>、ダイキン<6367>、HOYA<7741>などの値がさ株が下落。企業向けの火災保険料を事前に調整していた疑いに関する報道を受け、東京海上<8766>、SOMPO<8630>、MS&AD<8725>の保険が大幅安。三井金<5706>、ファイバーゲート<9450>はレーティングの格下げ、SCSK<9719>は目標株価の引き下げでそれぞれ下落。ほか、Sansan<4443>、インフォマート<2492>、インソース<6200>、マネーフォワード<3994>などグロース株が東証プライム市場の値下がり率上位に多く並んでいる。 一方、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の追加投資が判明した商社株が軒並み買われ、三井物産<8031>、三菱商事<8058>が特に大きく上昇。ソシオネクスト<6526>、ソフトバンクG<9984>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>など半導体を中心としたハイテク株の一角も買い優勢。ほか、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運もしっかり。前日ストップ高となったANYCOLOR<5032>は本日も大幅高。高水準の自社株買いを発表した図研<6947>は急伸。開発に関するリリースを材料にジャパンディスプレイ<6740>も大きく上昇している。 セクターでは保険、証券・商品先物取引、鉄鋼が下落率上位に並んだ一方、卸売、海運のみが上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の73%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 本日の日経平均は前日に続き、冴えない展開となっている。要因としては、前日の米株式市場が祝日で休場だったことに伴い、先週まで積極的に買っていた海外投資家の参加が少ないことが、国内勢の売りを吸収できずに下落につながっているとの指摘が一つ聞かれた。また、別の視点では、野村アセットマネジメントが1月に設定した日本株対象の投資信託「(早期償還条項付)リオープン・ジャパン2301」の繰り上げ償還が決まったことで、「市場外で同ファンドからの売り注文を受けた証券会社が取引時間中に売りを出し、下げにつながったのではないか」といった市況解説も見られた。 恐らく、理由としてはどちらも間違ってはいないと思われる。ただ、ここまでの急ピッチの上昇ですでに日本株のバリュエーションの割安感は解消され、テクニカル的には過熱感が拭えず、いつ調整が入ってもおかしくないタイミングでもあった。こうした中、日経平均が節目の34000円を前に目先小休止の局面に入っても何ら不思議ではない。 前日の日経平均は335円安と久々に値幅を伴った下落で、前引けかけて下げ渋った後に後場に入って再び売り直されるという最近ではあまり見られないような弱い動きが見られた。4月以降の日本株の上昇相場においては、週初の月曜日と火曜日が特に強いという傾向が見られていたが、昨日および今日と、こうしたカレンダー要因の追い風に加えて為替の円安進行という支援材料もあったが、日経平均、TOPIX(東証株価指数)はともに軟調さが続いている。こうしたところからも、特殊要因による一時的な下落というよりは、調整局面に入った可能性の方を想定しておくべきかもしれない。 前日は米著名投資家のウォーレン・バフェット氏による日本商社株への買い増しが判明したが、東証のPBR(株価純資産倍率)の改善要請に加えて日本株高の要因の一つとして挙げられてきたバフェット効果については、メディアで騒がれはじめてから既に2カ月は超えている。時間軸としてはさすがにバフェット効果も剥落する頃合いといえそうだ。 前日のバフェット氏の追加投資についても、結局、以前から保有している商社株の買い増しのみにとどまっている。商社の次にバフェット氏が買う日本株はどこかという見方が日本株の先高観にもつながってきたわけだが、バフェット氏は一向に商社株以外にはまだ手を出していない。今後、商社株以外への投資が判明した際には改めて日本株ブームの火付け役として機能することへの期待は残るが、期待先行でここまで短期間で大幅上昇してきただけに、そろそろ改めて現実を直視すべきタイミングかもしれない。 一方、これまで指数のけん引役だった東証プライム市場の主力株に対しては冷静な目を向けていきたい反面、引き続き注目したいのは中小型株や新興株だろう。5月最終週からようやく出遅れ感の強かったこれら関連株も買われるようになり、先週、そして今週の週明けとその流れに弾みがついてきている。本日のマザーズ指数は日経平均などと同様に下落しているが、前日までの急伸の反動を考慮すれば、底堅いともいえる。 4月以降の上昇相場において先行して大きく上昇してきた東証プライムの主力銘柄については、今月末は四半期末にも当たるため、月末にかけては年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の利益確定売りなどが想定される。このため、月末までは新興株や中小型株の方が相対的に優位な展開がきやすいと考えられ、引き続き出遅れ感の強い銘柄に投資機会を見出していきたいと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/20 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続伸、前引けにかけて押し目買い優勢 *12:18JST 日経平均は小幅続伸、前引けにかけて押し目買い優勢  日経平均は小幅続伸。18.52円高の33724.60円(出来高概算6億3985万株)で前場の取引を終えている。 前週末16日の米国株式市場のダウ平均は108.94ドル安(-0.32%)と反落。連邦準備制度理事会(FRB)の数人の高官がインフレは高過ぎるとし、追加利上げの必要性を繰り返したため、長期金利の上昇を警戒した売りが再燃した。また、3つのデリバティブ取引の決済期日が重なるトリプルウィッチングであったほか、連休を控えた手仕舞い売りが終盤にかけて加速した。ナスダック総合指数も反落、主要株価指数がそろって下落した米株市場を横目に、19日の日経平均は前週末比62.61円高の33768.69円と続伸でスタート。その後はマイナス圏に転落して軟調もみ合い展開となっている。 個別では、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>などの金融株が堅調に推移した。ほか、三菱商事<8058>、キヤノン<7751>、NTT<9432>、武田薬<4502>などが上昇した。新たに発表した経営指標や株主還元方針を好感されたジーテクト<5970>が急騰したほか、「空飛ぶクルマ」の部品事業に参入するニデック<6594>が上昇、ANYCOLOR<5032>、RPAホールディングス<6572>、カナミックネットワーク<3939>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、レーザーテック<6920>やアドバンテ<6857>、東エレク<8035>などの半導体関連株が軟調に推移。郵船<9101>や商船三井<9104>、川崎船<9107>などの海運株のほか、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>、ソニーグループ<6758>、メルカリ<4385>なども下落。そのほか、業績・配当予想の下方修正を発表したトーメンデバイス<2737>、同じく業績・配当予想の下方修正を発表したツバキ・ナカシマ<6464>などが急落、ギフトホールディングス<9279>、グリー<3632>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは、パルプ・紙、保険業、銀行業が上昇率上位となった一方で、海運業、非鉄金属、輸送用機器が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の66%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 シカゴ日経225先物は大阪比25円高の33675円。本日の日経平均は買いが先行してスタートした。ただ、週明けの米国市場が祝日(Juneteenth National Independence Day)のため、海外勢のフローは限られるなか、寄り付き後早い段階でマイナスに転じる展開となった。その後は、押し目買い意欲も旺盛で前引けにかけてプラス圏に浮上した。 一方、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅を広げる展開となっている。4月以降の上昇率が大きい値がさ株や大型株に様子見ムードが台頭しており、出遅れ感の強い新興株に幕間つなぎの物色が継続している。また、米長期金利の上昇も警戒するほどではなく、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けやすい展開となっている。前引け時点での東証マザーズ指数は3.31%高、東証グロース市場Core指数は2.50%高。 さて、今週は21日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の下院での議会証言が予定されており、翌22日には上院銀行委員会で半期に一度の議会証言を行う。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では11会合ぶりに利上げ見送りが決定された一方、ドット・プロット(金利予測分布図)では、政策金利が中央値で年末までに3月時点の予測(5.1%)から5.6%に上昇するとの予想が示された。年内残り2回の利上げが示唆されており、パウエル議長からは「利下げは2、3年先になるかもしれない」などと市場が想定していたよりもタカ派的な発言が見られた。議会証言では、利上げ休止決定や銀行巡る緊張について質問受ける見通しで、同証言の動向にはしっかりと注目しておきたい。 1970年以降、FOMCが1年以上にわたって100ベーシスポイント以上の利上げを実施し、その後少なくとも3カ月間利上げを休止した局面が6回あるという。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによると、S&P500は利上げ休止後の90日間に平均8.2%上昇しているようだ。仮にFRBが長い期間利上げの休止を選択した場合、現在の強気相場が継続する見込みが高まることは歴史が示している。こういった情報も今後のシナリオを想定するうえでの材料になりそうだ。ただ、今回は利上げ休止というよりは一旦見送りという形であり、これまでの利上げ休止とは状況は大きく異なる点には注意が必要だ。 そのほか、東証の投資部門別売買状況では、海外投資家は6月第1週(6月5-6月9日)に現物だけで9864億円と11週連続の買い越しを見せている。背景としては、変わらず東証によるPBR改善要請や米著名投資家バフェット氏の追加投資表明、新日銀体制下での追加緩和継続などが挙げられている。ただ、海外投資家の買い越し金額が再度増加している一方で、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行の売り越しが続いている。また、個人の合計も売り越しに転じている。 引き続き海外勢の日本株買いが継続している点はポジティブに捉えられているが、今後も海外投資家及び個人投資家の動向は随時確認しておきたい。さて、後場の日経平均は、マイナス圏で軟調推移が続くか。引き続き出遅れ感のある新興株や中小型株中心に物色が向かうか注目しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/06/19 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は続落、出遅れ物色が再燃、月末にかけて新興株に期待 *12:09JST 日経平均は続落、出遅れ物色が再燃、月末にかけて新興株に期待  日経平均は続落。179.53円安の33305.96円(出来高概算6億7764万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は428.73ドル高(+1.26%)と大幅反発。長期金利の低下が安心感を誘い、買いが再燃した。また、新規失業保険申請件数の予想以上の増加を受けて連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルの終了が近いとの期待も相場を後押しした。ナスダック総合指数は+1.14%と6日続伸。一方、昨晩に岸田文雄首相が今国会会期中の衆議院解散を見送る考えを表明したことが失望感を誘い、日経平均は86.34円安と下落スタート。昼頃に日銀金融政策決定会合の結果公表を控えるなか、押し目買いは手控えられ、前引けまで軟調な展開が続いた。一方、出遅れ感の強い中小型株や新興株に強い買いが入っている。 個別では、ソシオネクスト<6526>、東エレク<8035>、スクリン<7735>などの半導体、村田製<6981>、三井ハイテック<6966>、新光電工<6967>、ローム<6963>のハイテクのほか、ソニーG<6758>、HOYA<7741>、ダイキン<6367>の値がさ株、トヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、マツダ<7261>の輸送用機器、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運、コマツ<6301>、竹内製作所<6432>の建機、日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連など、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が下落。東証プライム市場の銘柄ではANYCOLOR<5032>が大幅安で値下がり率上位に顔を出している。 一方、三井住友<8316>、みずほ<8411>、りそなHD<8308>の銀行、エーザイ<4523>、中外製薬<4519>、大塚HD<4578>の医薬品、資生堂<4911>、花王<4452>の化学、JAL<9201>、ANA<9202>の空運などが上昇。エイチ・アイ・エス<9603>、パーク24<4666>など一昨日決算を発表したばかりの銘柄が買われており、前日ストップ高比例配分となっていたMSOL<7033>は本日も一時ストップ高を付けた。自社株買いを発表したキヤノン<7751>とニーズウェル<3992>は大幅高となり、レーティングが引き上げられたレゾナック<4004>も上昇。 セクターでは海運、輸送用機器、鉄鋼が下落率上位に並んだ一方、空運、鉱業、銀行が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は47%となっている。 本日の東京市場では前日までの流れが反転し、日経平均やTOPIX(東証株価指数)が下落する一方、マザーズ指数が大幅に反発しており、13日以来の年初来高値を更新している。昨晩、岸田文雄首相が今国会会期中の衆議院解散を見送る考えを表明し、選挙=株高の期待が剥落し、短期目線の海外投資家が値がさ株・大型株を中心に利益確定売りを出していることが背景にあるようだ。上昇相場前半の値がさハイテク株の一極集中から次第に大型株、そして中小型株・新興株へと良い形で物色が循環しており、この形が続くようであれば足元の上昇相場は息の長いものになっていきそうだ。 前日の米株式市場は主要株価指数が揃って大幅に上昇。米連邦公開市場委員会(FOMC)では年内残り2回の利上げが示され、また米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「利下げは2、3年先になるかもしれない」などタカ派な姿勢を見せた。しかし、実際は経済データ次第となることは確実で、本当に再び利上げが行われる可能性は低いと市場は見透かしている様子。また、仮に追加利上げがあったとしても次回7月会合が最後になるであろうことが高確率で見込まれており、利上げサイクルの終了が景気の底入れ期待を高めているようだ。 ただ、時間軸がやや長い話にはなるが、消費者物価コア指数(CPI)などの物価指標は明確に鈍化基調にあるとはいえ、FRBの目標を依然として2倍以上も上回っている。利上げが停止されたとしても、急激な外的ショックがない限りは、利下げへの転換は現時点から短く見積もっても1年以上は先になるのではないかと思われる。その間、5%を超える高い政策金利が据え置かれることを考えれば、景気が持ち堪えられるかは不透明だ。 米国の製造業を巡る景気指標は低調な状態が続いている。また、コロナ禍での財政出動で積み上げられた米消費者の余剰貯蓄は今年10-12月期には底をつくという指摘があり、堅調だったサービス消費についても今後は減速が懸念されている。 前日発表された米国の経済指標はまちまちだった。5月小売売上高速報は前月比+0.3%と4月(+0.4%)からは鈍化したものの、市場予想(-0.2%)に反して増加し、個人消費の底堅さが確認された。一方、製造業に関する指標では、6月ニューヨーク連銀製造業景気指数が新規受注の改善を背景に+6.6と5月(-31.8)から大幅に改善し、市場予想(-15.1)も大きく上回った。ただ、6月フィラデルフィア連銀景況指数は-13.7と市場予想(-14.0)並みではあったが、5月(-10.4)からさらに悪化した。また、5月鉱工業生産は前月比-0.2%と4月(+0.5%)から悪化し、市場予想(+0.1%)に反してマイナスに陥った。 一方、東京市場に目を向けると、月末にかけては株主総会シーズンの終了に伴う材料出尽くし感や、四半期末に伴う年金基金によるリバランス(資産配分の調整)目的の売りが想定され、4、5月以降で上昇率の大きい値がさ株や大型株の上値はさらに重くなってくることが予想される。一方で、依然として出遅れ感の強い中小型株・新興株はこうした懸念要素に乏しいため、さらなる出遅れ解消が期待される。目先は業績好調ながらも、これまで見向きもされてこなかった新興株を中心に投資機会を見出すべきと考える。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/16 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は5日続伸、タカ派なFOMCも無難に消化 *12:10JST 日経平均は5日続伸、タカ派なFOMCも無難に消化  日経平均は5日続伸。113.15円高の33615.57円(出来高概算7億3194万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でダウ平均は232.79ドル安(-0.68%)と7日ぶり反落。連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控え、序盤はもみ合いが続いた。連邦準備制度理事会(FRB)は予想通り政策金利を据え置いたが、声明や見通しでタカ派色を想定以上に強めたため、年内の追加利上げを警戒した売りが一時膨らんだ。その後、パウエル議長が会見で追加利上げを明確化しなかったため下げ止まり、終盤にかけては下げ幅を縮めた。ナスダック総合指数は+0.39%と5日続伸。ダウ平均の下落を受け、短期的な過熱感もくすぶる日経平均は8.73円安と小安くスタート。ただ、海外投資家の旺盛な買い意欲や買い遅れた投資家による押し目買いなどが下値を支え、日経平均は前日終値を挟んだ一進一退が続いた。 個別では、ソシオネクスト<6526>、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>の半導体が軒並み大幅高。ローム<6963>、京セラ<6971>、TDK<6762>などハイテクも高い。ほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社が大幅続伸で、SOMPO<8630>、東京海上<8766>の保険、今週軟調だった郵船<9101>、商船三井<9104>の海運などが高い。レーティングが引き上げられたクボタ<6326>、三菱地所<8802>も大きく上昇。決算や上方修正など業績絡みの材料でLink-U<4446>、Hamee<3134>が急伸し、パーク24<4666>も上昇、MSOL<7033>はストップ高買い気配のまま終えている。 一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>が下落。エーザイ<4523>、第一三共<4568>の医薬品は大幅続落となり、ホンダ<7267>、日産自<7201>、三菱自<7211>の自動車の一角は軟調。ほか、楽天グループ<4755>、7&I-HD<3382>などが安い。決算を受けて東京ベース<3415>、ブラス<2424>が急落している。 セクターでは証券・商品先物取引、海運、その他金融が上昇率上位に並んだ一方、医薬品、電気・ガス、小売が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)については予想通り利上げが一時停止されたが、全体的な内容としては事前の市場想定よりはタカ派な印象を受けた。FOMCの開催前、金利先物市場は次回7月会合での利上げ再開を予想し、年内はこの1回の利上げだけを織り込んでいた。また、年内の利下げ予想は既にほぼ後退していたが、1回の利下げを織り込む確率もまだ僅かながら残っていた状況だった。 一方、新たに発表された政策金利見通し(ドットチャート)が示す今年年末の政策金利中央値は5.63%と、前回3月時点から0.5ポイント引き上げられ、利上げの回数としては残り2回という数字が示唆された。また、FOMC参加者18人のうち過半数の12人が5.63%の中央値ないしこれより上の水準を予想していた。加えて、パウエル議長は会見で利下げは「2年ほど先になるかもしれない」と発言しており、これは、少なくとも来年からの利下げは確実と考えている市場とは異なるもので、全体的にはタカ派寄りの結果となった。 一方、相場への影響は限定的のようだ。というのも、インフレ動向を見誤り、後に政策を急激に変更させた過去の失敗から、FRBは再び政策方針を二転三転させることで当局としての信頼を失うことを恐れており、こうした状況は誰もが分かっている。そのため、インフレが依然として目標の2%を大幅に上回っている状況ではタカ派な姿勢を維持せざるを得ないことは自明であるからだ。 また、結局は今後発表される経済データ次第とうい従来からの方針は変わっておらず、FRBのタカ派なスタンスをそのまま真に受ける向きは少ないのだろう。むしろ、一回停止させた利上げを再開させるにはそれ相応の根拠が必要であり、ハードルは高いと市場は見透かしている様子。株式市場が利上げに怯える局面はとうに終わったと考えているようだ。 こうした中、市場の関心はやはり前日の当欄で指摘したように、期待通りに米経済がソフトランディングできるかどうかにかかっていると思われる。今晩は米国で5月小売売上高や5月鉱工業生産、そして、6月ニューヨーク連銀製造業景気指数、6月フィラデルフィア連銀景況指数の景気指標が発表される。 これらの結果を受けて景気減速懸念が再燃しないかが焦点となろう。仮に市場予想を下振れると、前日に発表された米5月卸売物価指数(PPI)の市場予想を超える減速ぶりからも窺えるように、景気減速懸念が強まる可能性があり、積み上がった投機筋の円売りポジションの巻き戻しとともに円高・ドル安に振れる展開も想定される。本日は景気敏感株の株価が軟調だが、ソフトランディングの手掛かりをもう少し得るまでは安易な押し目買いには慎重になるべきだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/15 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は4日続伸、インフレ・金融政策はもはや重要でない *12:13JST 日経平均は4日続伸、インフレ・金融政策はもはや重要でない  日経平均は4日続伸。288.78円高の33307.43円(出来高概算7億9413万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でダウ平均は145.79ドル高(+0.42%)と6日続伸。5月消費者物価指数(CPI)の改善で6月連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ休止期待が一段と強まり、買いが先行。中国が景気刺激策を検討しているとの報道も投資家心理を上向かせ、主要株価指数は終日堅調に推移した。ナスダック総合指数は+0.82%と4日続伸。米株高に加え、為替の円安も追い風に日経平均は312.82円高からスタートすると、寄り付き直後に33478.21円(459.56円高)とこの日の高値を付けた。一方、その後は33500円を前に利益確定売りが上値を抑えたが、大きく崩れることはなく、一進一退が続いた。 個別では、為替の円安を追い風にトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、日産自<7201>の輸送用機器が軒並み高。中国当局が景気刺激策を拡大させる方向に傾いているとの報道で日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、住友鉱<5713>、三井金<5706>の非鉄金属、コマツ<6301>、日立建機<6305>の建機、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の重厚長大産業など景気敏感セクターが大きく上昇。業績予想を上方修正したトルク<8077>、自社株買いを発表したアイティフォー<4743>、目標株価が引き上げられたAppier<4180>などは急伸している。 一方、半導体株が利益確定売りに押され、ソシオネクスト<6526>、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>などが軒並み安。東エレク<8035>はレーティング格下げも重しになった。三井ハイテック<6966>、新光電工<6967>のハイテクの一角も大きく下落。ほか、第一三共<4568>、エーザイ<4523>など医薬品の下落が目立つ。 セクターでは輸送用機器、鉄鋼、非鉄金属が上昇率上位に並んだ一方、医薬品、電気・ガスのみが下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は35%となっている。 日経平均は4日続伸し、連日でバブル崩壊後の最高値を更新している。前日発表された米5月消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%と4月(+4.9%)から鈍化し、市場予想(+4.1%)も下回った。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する食品・エネルギーを除いたコア指数は前年比+5.3%と4月(+5.5%)からは鈍化したが、市場予想(+5.2%)はやや上振れた。ただ、概ね市場予想通りで鈍化基調も不変との捉え方が優勢で、株式市場は日本時間明日午前3時頃に結果公表予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ一時停止をほぼ完全に織り込む形となっている。 また、今回の5月CPIにおいて前月比で上昇した住居費や中古車の項目は、6月以降は低下に転じる見通しで、鈍化基調はさらに加速すると予想されている。これを受け、金利先物市場では7月会合での利上げ再開を織り込む確率が依然として6割とやや高めではあるものの、市場関係者の間では、6月FOMCからの利上げの完全停止を指摘する声も聞かれている。 ただ、パウエル議長は政策方針を二転三転させることによってFRBの信頼を失いさせたくはないだろうから、慎重な姿勢を維持せざるを得ず、明日の記者会見では利上げ再開に含みを残すことになるだろう。ただ、そうしたことも市場では既にほとんど織り込み済みであり、昨年前半までのような物価指標や金融政策決定会合がリスクイベントとなる局面はもはや終わったとみられる。 今後の株式市場の関心事項は期待通りに世界経済がソフトランディングを果たせるかどうかだろう。そうした意味では、明日に米国で発表される5月小売売上高や5月鉱工業生産、そして、6月ニューヨーク連銀製造業景気指数や6月フィラデルフィア連銀景況指数などの景気指標の方が注目度は高いだろう。最新の5月ISM景況指数は、製造業では新規受注と受注残が大幅に低下し、拡大・縮小の境界点である50をそれぞれ10ポイント前後も下回る水準にまで低下していた(新規受注は42.6、受注残:37.5)。また、サービス業の方も改善の予想に反して50.3と低下し、50割れが近づく形となった。こうした中、新たに景況感の悪化を確認する内容となると、ソフトランディング期待が後退する可能性があろう。 本日は米国での利上げ停止によるソフトランディング期待や中国での景気刺激策への期待から、輸送用機器のほか、鉄鋼、非鉄金属、商社に代表される卸売、鉱業、銀行など景気敏感セクターが上昇率上位を占めている。しかし、ソフトランディングとなるかどうかは今後の経済指標の確認が必要であり、現時点での関連株の上値追いには慎重になりたい。 一方、本日は上昇一服となっている半導体株については市場関係者の間では先高観が強く、投資家の押し目買い意欲も健在の様子。しかし、SMBC日興証券は14日付けのレポートにて、半導体製造装置前工程の市場見通しを引き下げ、また生成AI(人工知能)向け需要の業績寄与については2-3年先との見方を示し、足元の株価は期待先行と指摘し、東京エレクトロン<8035>のレーティングを引き下げた。半導体関連株がこれまでの上昇相場の主なけん引役となってきたが、筆者は半導体関連株についても現時点からの上値追いには慎重になるべきと考えている。 一方、本日はトヨタ自動車<7203>が午前に株主総会を開くなど、株主総会シーズンが到来している。一連の株主総会が終わる頃には、外国人投資家が好む東証プライム市場の主力大型株がけん引する上昇相場は一服するとみられ、そこからは先週から徐々に出遅れ感を解消し始めている中小型株や新興株がけん引役になっていくと期待している。いまは大型株にはやや慎重の一方、中小型株・新興株には仕込み時とのスタンスで臨みたい局面だ。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/14 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に3日続伸、スピード違反をいつまで続けるのか *12:14JST 日経平均は大幅に3日続伸、スピード違反をいつまで続けるのか  日経平均は大幅に3日続伸。512.49円高の32946.49円(出来高概算6億6062万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は189.55ドル高(+0.55%)と5日続伸。今晩発表予定の5月消費者物価指数(CPI)の改善期待から買いが先行。今晩から開催される連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ停止の思惑も強く、ハイテク株を中心に買われ、終盤にかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+1.52%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+3.31%とそれぞれ3日続伸。米株高を引き継いで日経平均は234.95円高からスタート、半導体などハイテク株を中心に買われた。序盤は高値もみ合いが続いていたが、前場中ごろから騰勢を強めると一時32995.35円(561.35円高)まで上値を伸ばした。ただ、心理的な節目を手前に前引けにかけてはさすがに騰勢一服となった。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>の半導体関連が軒並み高で、ソシオネクスト<6526>は目標株価引き上げもあり急伸。ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>の値がさ株、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社、クボタ<6326>、コマツ<6301>の建機、マツダ<7261>、日産自<7201>、デンソー<6902>の輸送用機器なども大幅高。メルカリ<4385>やベイカレント<6532>のグロース株も高い。トヨタ自<7203>は全固体電池を搭載した電気自動車(EV)の投入計画が好感された。ソフトバンクG<9984>は米Open AI社の経営者との面会報道を手掛かりに急伸。決算や上方修正などが業績関連ではアクシージア<4936>、萩原工業<7856>、トーホー<8142>が急騰。高水準の自社株買いと配当方針の変更を発表したセイノーHD<9076>はストップ高比例配分となっている。 一方、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運は続落。外資証券の原油価格見通しの引き下げを受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が軟調。月次動向を受けてMonotaRO<3064>は大きく下落。ほか、決算を受けてアセンテック<3565>、グッドコムアセット<3475>、鎌倉新書<6184>、学情<2301>、ラクーンHD<3031>などが大幅安となっている。 セクターでは輸送用機器、卸売、ゴム製品が上昇率上位に並んだ一方、海運、パルプ・紙、鉱業が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体68%、対して値下がり銘柄は28%となっている。 本日の日経平均は大幅続伸、上げ幅は500円を超え、大台の33000円に迫る勢いを見せている。週明けの米株式市場でハイテク株を中心に株価が大きく上昇したことが追い風になっているもよう。しかし、それだけでは前日終値水準からの500円超もの上げ幅はさすがに説明しづらく、本日の岸田首相の会見を先取りするような動きが先行していると思われる。 一方、日経平均は4月半ば以降のわずか2カ月で5000円程も上昇しており、スピード違反の様相は「ここに極まれり」といった気がしてならない。東証のPBR是正要請やバフェット効果など日本株の上昇を説明する後付けの理由はいくつがあるが、果たして5000円超もの上昇を正当化する材料なのだろうか。たしかに東証からの是正要請を受けて、企業から株主還元の積極化など動きが出ているが、自社株買いの一過性方策に頼る動きが多く、事業の構造改革といった持続的なPBR向上につながる方策を発表している企業は少ない印象を受ける。 こうした中、期待先行でPBRはすでに日経平均で1.90倍・1.33倍(指数ベース・加重平均ベース)、東証プライム全銘柄でも1.30倍にまで上昇している。すでに割安感は十分すぎるほどに解消されている。また、予想PERでは日経平均は19.9倍・14.8倍(指数ベース・加重平均ベース)、東証プライム全銘柄で15.2倍であり、こちらも、もはや割安感はなく、むしろ、割高感を否めない水準だ。 ちなみに、大和証券でも日本株の割高感を指摘している。同証券のチーフストラテジストである阿部健児氏はTOPIX(東証株価指数)の株式益利回りと米10年債利回りのスプレッド(利回り差)が2%台と、過去10年の中央値である4%を下回っていることを理由として挙げている(スプレッドが小さいほど株式が割高であることを意味する)。 個別をみても、例えばソシオネクスト<6526>やアドバンテスト<6857>は割高感が強く、正直、筆者個人としては、ここまでの株高は正当化しにくいと考えている。たしかに生成AI(人工知能)という新たなカタリストが出現し、これがもたらす業績へのインパクトがまだ正確には計ることができないうちに割高と一蹴するのは間違っているかもしれない。 しかし、まずソシオネクストはアドバンテストと異なり、生成AI向けの恩恵がそこまで大きくはないはずだ。また、成長分野向けに特化しているとはいえ、バリュエーションのプレミアムとしては高過ぎる印象が拭えない。また、アドバンテストは生成AI関連の筆頭格として挙げられているが、先週、世界半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)が今期の設備投資計画が予想レンジの下限近くになる見通しとしたことについてはどう捉えているのだろうか。生成AIブームは米エヌビディアの好決算を契機に始まったが、そのエヌビディアを大口顧客として持つTSMCから先行きに対して強気の見方が出てこないのは何故なのだろうか。 こうした中、両社の今期予想PER約45倍というのは正当化できるのだろうか(むろん、アドバンテストなどは信用需給が売り長になっていることもあり、ソシオネクストを含めて空売りは推奨しない。)。 ほか、商品先物取引委員会(CFTC)によると、6月6日時点での投機筋の円ポジションの売り越し幅は10万4817枚と前週からさらに拡大し、今年最大の売り越し幅を更新している。ただ直近の3年間の動向を振り返ると、10万枚の売り越し水準をボトムにその後は買い戻しに転じる傾向が見られている。 今晩の米5月消費者物価指数(CPI)では改めてインフレ基調の鈍化が確認される見通しで、明日結果が公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが一時停止される見込みだ。政策金利見通し(ドットチャート)ではターミナルレート(政策金利の最終到達点)が引き上げられる公算が大きいが、引き上げ幅は0.25ポイントの利上げ1回分程度にとどまる見通し。また、金利先物市場はすでに7月会合までに利上げが1回行われることを既に7割以上の確率で織り込んでいる。 足元の株高を受けて、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派なコメントを発する可能性もあるが、米金利の先高観は後退している、もしくは大方織り込み済みと思われる。となれば、日米金利差拡大に基づく円安・ドル高も期待しづらい。日本株を巡る支援材料が少なくなってきていることには留意しておきたい。こうした中、個別では大型株でなく、依然として出遅れ感の強い新興株や中小型株に着目すべきと考える。(仲村幸浩) <NH> 2023/06/13 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、買い優勢も注目イベント控えて上げ幅限定的 *12:15JST 日経平均は続伸、買い優勢も注目イベント控えて上げ幅限定的  日経平均は続伸。220.39円高の32485.56円(出来高概算5億8123万株)で前場の取引を終えている。 前週末9日の米国株式市場のダウ平均は43.17ドル高(+0.13%)と続伸。翌週に連邦公開市場委員会(FOMC)を控え動きづらい展開となったが、ハイテク株の買いに支えられ堅調に推移。利益確定の売りも出やすく一時マイナスに転じる場面があったがプラス圏を回復。ナスダック指数は上げ幅を縮めるも好材料が出た銘柄を中心に買いが続いた。主要株価指数が小幅に上昇した米株市場を横目に、12日の日経平均は前週末比146.95円高の32412.12円と続伸でスタート。その後はじりじりと上げ幅を広げる展開となっている。 個別では、レーザーテック<6920>やアドバンテ<6857>、東エレク<8035>、ソシオネクスト<6526>などの半導体関連株が堅調に推移。第一三共<4568>やエーザイ<4523>などの医薬品関連のほか、ソフトバンクG<9984>、ANYCOLOR<5032>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>、三菱重工業<7011>、メルカリ<4385>なども上昇。そのほか、高水準の利益成長継続見通しをポジティブ視されたフリービット<3843>、第1四半期大幅増益で上半期予想を上方修正したシーイーシー<9692>などが急騰、日本駐車場開発<2353>、鳥貴族HD<3193>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、郵船<9101>や商船三井<9104>、川崎船<9107>などの海運株、JR東<9020>やJR東海<9022>などの鉄道株の一角が軟調に推移した。ほか、ファーストリテ<9983>、オリエンタルランド<4661>、東京電力HD<9501>などが下落した。第三者割当による行使価額修正条項付第1回新株予約権の発行を発表したマースGHD<6419>が急落したほか、エイチーム<3662>やポールHD<3657>などが大幅に下落、gumi<3903>、レオパレス21<8848>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは繊維製品、精密機器、医薬品が上昇率上位となった一方、海運業、陸運業、建設業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の80%、対して値下がり銘柄は16%となっている。 シカゴ先物にサヤ寄せする格好から買いが先行して取引を開始。ただ、今週は米国および欧州、日本の各国中央銀行による金融政策決定会合が開催されるほか、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見、米5月消費者物価指数(CPI)など重要な経済指標の発表を控えていることもあり、徐々にこう着感が強まるとの指摘も市場からは聞かれている。 新興市場も堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅を大きく広げている。前週末の米国市場が堅調に推移したことは国内の投資家心理にもポジティブに働いており、主要イベントを控えて主力大型株を手掛けづらいことから幕間つなぎ的な物色が出遅れ感の強い新興株に向かっている可能性がある。前引け時点での東証マザーズ指数は3.01%高、東証グロース市場Core指数は3.78%高で日経平均株価よりも上げ幅は大きい。 さて、今週は注目イベントが目白押しとなっている。13-14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、同日には米5月CPI、14日に米5月卸売物価指数(PPI)、パウエルFRB議長の会見が予定されている。15日-16日には日銀金融政策決定会合が開催され、欧州中央銀行(ECB)定例理事会の開催、米5月小売売上高・鉱工業生産、米6月フィラデルフィア連銀景況指数の発表、16日には植田日銀総裁の会見、米6月ミシガン大学消費者信頼感指数の発表を控えている。これらのイベントを無難に消化できるか注目が集まっている。 総合CPIは前年同月比4.2%上昇(前回4.9%上昇)、前月比0.3%上昇(同0.4%上昇)と伸び減速が見込まれている。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年同月比5.2%上昇と2021年11月以来の小幅な伸びの予想。前月比では0.4%上昇と予想されており、仮に6カ月連続で0.4%かそれ以上の伸びを示すことになると、政策金利が長期にわたり高い水準にとどまる可能性がある。ただ、インフレが徐々に鈍化していることに変わりはなく、FRBに利上げを休止する余地を与えている。 実際に、6月13-14日に開かれるFOMCでは政策金利5-5.25%のレンジに据え置くと予想されている。CMEのFedウォッチツールでは、利上げ停止は27%で利上げ停止確率は73%に及んでいる。ただ、一部当局者らはインフレが十分速いペースで鈍化していないと懸念している。また、当局にとって主要な問題は銀行セクターの緊張で、ウォラー理事は「信用状況に大きな影響はまだもたらしていないが、そうした影響が景気に表れるのには時間がかかる可能性がある。」との見解を示している。今回、同会合については従来より警戒感が広まっていない印象がある。仮に、米CPIなど含めてサプライズ的な発表があると大きなインパクトを与える影響がある点は頭の片隅に置いておきたい。 そのほか、東証の投資部門別売買状況では、引き続き海外投資家の買い越しが継続する一方で、年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行の売り越しが続いている。背景としては、変わらず東証によるPBR改善要請や米著名投資家バフェット氏の追加投資表明、新日銀体制下での追加緩和継続などが挙げられている。ただ、前週と変わって5月4週目から個人の信用による売り越しが縮小して、最新週では買い越しに転じている。今後も海外投資家及び個人投資家の動向は随時確認しておきたい。さて、後場の日経平均は、プラス圏でこう着感の強い展開が続くか。引き続き幕間つなぎの物色が新興株に向かうか注目しておきたい。(山本泰三) <AK> 2023/06/12 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反発、底堅さ確認し安心感も目先の天井打ったか *12:16JST 日経平均は3日ぶり反発、底堅さ確認し安心感も目先の天井打ったか  日経平均は3日ぶり反発。508.49円高の32149.76円(出来高概算8億8647万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は168.59ドル高(+0.50%)と3日続伸。新規失業保険申請件数が予想を上回る増加となり、労働市場の軟化が示唆された。金融引き締め長期化への懸念が和らぎ、長期金利が低下するなかハイテク株を中心に買い戻しが入った。ナスダック総合指数は+1.01%と反発。米株高を引き継いで日経平均は286.11円高からスタート。本日は株価指数先物・オプション6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)に伴い、序盤は売り買いが交錯したが、早い段階で強含むと、一気に32240.05円(598.78円高)まで上昇した。一方、その後は上値が重く、32000円台を維持しながらも一進一退が続いた。なお、SQ値は概算で32018.38円。 個別では、ファーストリテ<9983>、ダイキン<6367>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>、ファナック<6954>、キーエンス<6861>など値がさ株が大きく上昇。三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社は揃って大幅高。エーザイ<4523>、第一三共<4568>、アステラス製薬<4503>など医薬品も高い。ほか、ソシオネクスト<6526>、ディスコ<6146>の半導体の一角、トヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、マツダ<7261>、デンソー<6902>の自動車関連、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼などが強い動き。業績・配当予想を上方修正したメディアスHD<3154>、好決算が評価されたアルトナー<2163>、Bガレジ<3180>などが急伸。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運のほか、ソフトバンクG<9984>、三菱重<7011>、川崎重<7012>、JR東海<9022>、JR東<9020>が軟調。決算が嫌気されて積水ハウス<1928>、アイモバイル<6535>、シルバーライフ<9262>などが大きく下落している。 セクターでは卸売、医薬品、電気・ガスが上昇率上位に並んだ一方、海運、空運、鉱業が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の84%、対して値下がり銘柄は13%となっている。 本日の日経平均は500円超の上げ幅で32000円を回復。前日は後場に31500円を割り込む場面もあった日経平均だが、大引けにかけて持ち直し、心理的な節目は維持して終えていた。また、日経225先物は9日の夜間取引において一時31440円まで下落する場面があったが、結局、31500円は回復し、31830円まで上昇して終えた。7日、8日と乱高下して大きく崩れていただけに、31500円を意識した底堅さの確認と本日の大幅高による32000円の回復は安心感につながっている。 一方、7日および8日と大きく崩れていた場面では改めて売り方がショート(売り持ち)を積み上げていた可能性もある。そのため、31500円割れに度々失敗した動きを受けて、売り方が早々に買い戻しに転じたことが想定され、本日の株高にはこうした一過性要因も含まれている可能性があろう。また、日経平均は32000円を超えた後はもみ合いが続いていて、6日までの勢いは見当たらない。7日午前に付けた32708.53円により目先の天井を打った感は強まっている。 一方、日本取引所グループ(JPX)が8日に公表した投資部門別売買動向によると、外国人投資家は5月第5週(5月29日-6月2日)、現物で5298億円の買い越しと10週連続の買い越しを見せた。買い越し幅は前の週の4096億円から増加した。将来の反対売買を伴わない現物による買い越し記録が長期化しているあたり、日本株を巡る構造変化への期待は引き続き高いようで、日経平均は目先の天井を打ったとしても、下値も堅そうだ。 ただ、来週は米国および欧州、日本において各国中央銀行による金融政策決定会合が開催される予定で、イベント前に目先は手掛けづらさが意識される。米国では、新規失業保険申請件数の増加に伴う長期金利の低下で、前日は再びハイテク株買いが復活した一方、今週に入って上昇が目立っていたラッセル2000は下落し、出遅れ感の強い中小型株への物色が小休止した。 東京市場でもマザーズ指数は週前半に強い動きを見せたものの、7日からは地合いに連れ安して、節目の800ポイントには届かず失速、本日も上昇してはいるが、日経平均や東証株価指数(TOPIX)に比べて上昇率は小幅にとどまっている。出遅れ感のある中小型株の上昇が早々に一服して、物色の裾野が広がらないようであれば本格的な強い上昇相場にはつながりにくいと思われる。来週のイベント通過後に中小型株が再び強い動きを見せることができるかが注目点になろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/09 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は続落、メジャーSQ通過前に調整局面入りか *12:15JST 日経平均は続落、メジャーSQ通過前に調整局面入りか  日経平均は続落。42.51円安の31871.23円(出来高概算5億9619万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は91.74ドル高(+0.27%)と続伸。目新しい材料がないなか、前日に続き製薬会社のメルクなどディフェンシブ銘柄が売られた一方、出遅れ感のあった景気敏感株の買いが目立った。一方、大型ハイテク株が売られ、ナスダック総合指数は終日軟調で、-1.29%と反落。米ハイテク株安を受けて日経平均は35.95円安からスタート。一方、これまでの上昇ペースが速かっただけに押し目買い意欲が強いためか、その後は下げ渋って一進一退、一時は32000円を回復する場面もあった。ただ、前引けにかけては再び失速し、この日の安値圏まで下落している。 個別では、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、信越化<4063>の値がさ株のほか、ファナック<6954>、安川電機<6506>、太陽誘電<6976>のハイテクが下落。ギフティ<4449>、SHIFT<3697>、Appier<4180>などグロース(成長)株の下落が目立つ。ラウンドワン<4680>は月次動向が嫌気されて大幅安。カプコン<9697>は新作ゲームの販売動向を受けて出尽くし感が先行、レーティング引き下げもあり大きく下落。HOYA<7741>もレーティング格下げを受けて大幅安となっている。 一方、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>の半導体の一角や、川崎汽船<9107>、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、ほか、JR東海<9022>、JR西<9021>の陸運、東京電力HD<9501>、九州電力<9508>などの電力大手が揃って大きく上昇。三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>の銀行、丸紅<8002>、双日<2768>の商社、JFE<5411>、日本製鉄<5401>の鉄鋼、コマツ<6301>、クボタ<6326>の建機、なども堅調。エーザイ<4523>はアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が近く米当局の完全承認を得る可能性が高いとの報道を受けて急伸。アイル<3854>は好決算が評価されて大幅高。シュッピン<3179>は月次動向が材料視された。 セクターでは精密機器、情報・通信、サービスが下落率上位に並んだ一方、電気・ガス、海運、石油・石炭製品が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の48%、対して値上がり銘柄は48%となっている。 本日の日経平均は続落スタートも、その後32000円を回復する場面もあるなど序盤を中心に底堅い動きを見せている。前日は前場に大きく崩れた後に後場に盛り返したと思いきや、大引けにかけて再び崩れ、前場の安値を更新するという印象の悪い展開だった。日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)を巡る植田和男総裁の発言がアルゴリズム取引の売りを誘発したとの指摘があった。また、明日の株価指数先物・オプション6月限特別清算指数算出(メジャーSQ)を前に、コールの売り手によるヘッジ目的の先物買いといったこれまでの動きのアンワインドが出た影響も大きいだろう。 一方、前日は海外投資家による現物での日本株買いフローが続いていたとの声も聞かれた。日本株を巡る構造変化に着目した海外勢による買い意欲は消えていないのだろうが、すでに買い持ち高が大きく積み上がっていた短期筋による売り圧力はそれ以上に大きかったようだ。昨日の一日だけで短期筋による売りが済んだとは考えにくく、需給面では今後やや上値の重さが意識されやすいだろう。 他方、本日は日経平均が踏ん張りを見せる傍ら、マザーズ指数は大きく反落している。昨日は日経平均が大幅安となった一方で、マザーズ指数は前の日の急伸の反動をこなしてプラス圏を維持して終えており、新興株のこれまでの出遅れ感解消への期待が高まっていただけに残念な動きだ。けん引役だったハイテク株が上昇一服となる一方で、出遅れ感のある新興株へと主役が綺麗に切り替わっていれば、息の長い上昇相場も意識されやすかっただろうが、足元の市場環境はそこまで強くないということだろう。 米株式市場でも環境の変化が見られている。これまでのハイテク一本頼みだった動きから一転し、ハイテクが売られる一方で景気敏感株や出遅れの強かったラッセル2000など中小型株が買われる動きが2日連続で確認されている。こうした傾向は今週に入ってからの東京市場でも見られている。 前日はカナダ中央銀行が豪中央銀行に続く予想外の利上げに踏み切ったことがサプライズとなった。米債務上限問題が解決して先行き不透明感が後退したタイミングでもあるため、来週13-14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ一時停止がコンセンサスとはいえ、利上げへの警戒感が高まっている。世界的な金融引き締め長期化が改めて意識されるなか、これまで一本調子で上昇してきたハイテク株には利益確定売りが出やすい状況になったと解釈できる。 一方で、資金が循環する形で景気敏感株など出遅れ感のあるセクターが今度は買われているわけだが、これにはやや違和感を抱く。一昨日に公表された世界銀行の見通しにおいて、来年、2024年の世界経済成長率見通しは下方修正された。予想以上に大幅に引き上げられた主要中銀の政策金利が時間差を伴って景気に影響すると考えられるためだ。実際、米国では銀行の貸し出し態度が新型コロナ発生直後に近い水準にまで既に悪化している。また、今週には米銀行の資本要件の厳格化についての報道もあった。今後、米銀の貸し出し態度は一段と悪化する可能性があり、実体経済にこのまま何の影響もなく無風で過ごせるとは考えにくい。 たしかに、足元の米景気は底堅い。雇用者数の伸びは依然として大きく、これだけ雇用が増えているにもかかわらず、景気後退という言葉を使うのは不適切だとの主張もある。しかし、今後のことは考えれば、やはり景気後退は避けられないのではないだろうか。米国景気は既に底入れしたとの指摘もあるが、最新の米5月ISM製造業指数は46.9と、景況感の拡大・縮小の境界値である50を7カ月連続で割り込んでいる。水準としても、4月(47.1)から悪化しており、底入れしているとは言いにくい。特に新規受注が42.6(前月45.7)、受注残は37.5(前月43.1)とともに急減している点が気がかりだ。 頼みの個人消費についても、米5月ISM非製造業景気指数が予想外に悪化し、50割れ目前になっているほか、コロナ後の財政政策で貯めた余剰貯蓄も既に乏しくなってきていることから、製造業の低調さを個人消費で補うこれまでの構図は今後崩れる可能性がある。 また、前日に発表された中国5月貿易収支では、輸出がドルベースで前年同月比7.5%の減少と、市場予想(1.8%減)を大きく上回る落ち込みだった。今後、各国主要中銀による利上げの累積効果が表れてくることを考えると、景気敏感株を積極的に買うという動きが長続きするとは考えにくい。世界的な利上げも再燃しているなか、世界景気が底入れしたと考えるのは難しいと思われる。目先は株式市場の調整色が強まる可能性が高いと考え、上値追いや闇雲な押し目買いには慎重なスタンスで臨むべきだろう。(仲村幸浩) <AK> 2023/06/08 12:15

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