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アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(3)【実業之日本フォーラム】
本稿は『アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(2)【実業之日本フォーラム】』の続編となる。4.タリバンにどう向き合うべきか——今こそ外交復権のとき念願のカブール制圧を果たしたタリバンはこれから、シャリーア(イスラム法)統治に基づく「アフガニスタン・イスラム首長国」の樹立を目指すだろう。今後、国際社会はタリバンに、どう向き合うべきか。オバマ政権で国務副長官を務めたウィリアム・バーンズは自著『バックチャンネル』で、アフガニスタンをめぐって「外交の軍事化」が進んでいたとし、次のように述べている。軍事的手段に頼りすぎると、政策は泥沼に陥る。…外交の軍事化(the militarization of diplomacy)は罠である。それは過剰な、あるいは早すぎる武力行使につながり、非軍事的な手段を重視しないことになる。バラク・オバマが好んで言ったように「主な道具がハンマーであれば、すべての問題が釘のように見えてくる」のである。…(国防長官を務めた)ゲイツとマティスは、軍の任務と能力の重さが、外交の視野を狭めたり、その中心的な任務を歪めたりする可能性があることを理解していた。イラクやアフガニスタンでは、外交官は軍の対反乱(counterinsurgency)戦略の脇役に甘んじ、現地社会の構築や、アメリカ人の能力では達成できないような国づくり(nation-building activities)に夢中になっていた。(アメリカの)外交官の役割は、国務省ではなく、19世紀の大英帝国植民地省の役割を再現することかと思われることもあった。イラクやアフガニスタンの人々自身が築くしかないガバナンスや経済構造を構築するための長期的な取り組みに、限られた文民のリソースを投入するよう迫られた。米軍の重しが外れた今、求められるのは外交の復権である。バーンズはバイデン政権で再び政府に戻り、2021年3月から中央情報局(CIA)長官を務めている。バーンズCIA長官は8月23日にカブールを極秘訪問し、ハリルザード特別代表のカウンターパートだったタリバン幹部のバラーダルと会談していたと報じられている。早速、バーンズ自らバックチャンネルを使って「外交の非軍事化」を進めているようだ。「力の真空」を埋めようとしているのはタリバンだけではない。地政学的な要衝にあるアフガニスタンをめぐって、中国、ロシアも影響力を強めつつある。中国の王毅・国務委員兼外交部長は7月、タジキスタンで開催した上海協力機構(SCO)外相会合でガニ政権のアトマル外相と会談し、その二週間後に天津市でタリバンのバラーダルと会談していた。タリバンとしても、アメリカやNATOという「占領軍」をようやく追い出した今、ふたたび外国の介入を許すつもりはないだろう。しかしタリバンは「イスラム首長国」樹立について国際社会の承認を必要としている。1996年のタリバン政権は、サウジアラビア、パキスタン、UAEの3か国にしか承認されなかった。硬軟織り交ぜた外交を展開してくるだろう。米国が退場しつつある中、タリバンという難しい相手を前に、中国やロシアとて単独で支えるつもりはない。対アフガニスタン外交は多国間外交が主軸になっていくだろう。これからの多国間外交では二つのことが大切になる。第一に、G7と豪印を主軸とする民主主義勢力は結束し、自由で開かれた多国間主義に基づき対アフガニスタン外交を進めるべきである。8月24日のG7首脳テレビ会議は重要な節目となった。まだ国外退避が続く中での開催だったが、アフガニスタンが二度とテロの温床になってはならないこと、そして、女性、子ども、少数民族の人権が尊重されることをタリバンに求めた。良かったのは、G7のリーダーたちが「アフガニスタンの全ての関係者に対し、女性や少数派の参加を含む包摂的で国民を代表する政府を樹立するために、誠意をもって取り組む」ことを明確に求めたことだ。さらにタリバンなど「アフガニスタンの関係者を言葉ではなく行動によって評価していく」こと、そして、「いかなる将来の政府の正統性も、安定したアフガニスタンを確保するため国際的な義務やコミットメントを遵守するためタリバンがとるアプローチにかかっている」と明確にした。タリバンが再び国際テロの温床とならないか、また包摂的な国造りが進むか、心もとない。国際社会は、タリバン政権の正統性を認めることを最大のテコとして、タリバンの言葉ではなく行動によって見極めていく必要がある。そのためには国際社会の側が、自由で開かれた多国間主義に基づいてタリバンに向き合うことが不可欠だ。権威主義的で偏狭な多国間主義では、タリバンに約束を守るよう迫ることはできない。自由で開かれた多国間主義を推進していくうえでは、これから深刻になる難民流出と人道危機への対処も重要である。この分野で日本が果たしてきた役割は大きい。日本政府は、緒方貞子氏を中心にアフガニスタン復興支援国際会議を主催し、平和構築と人道支援を積極的に支援してきた。中村哲氏は草の根の人々ともに、紛争で荒れた農地に水を引き、緑と希望を取り戻した。国際社会が支援を続けた過去20年間で、アフガニスタンの人々の生活は大幅に改善した。平均寿命は55.8歳から64.8歳に、9歳も延びた。2001年当時に60万人だった就学児童は300万人にまで増えた。ほとんど就学できなかった女子も全体の4割を占めるまでになった。一人当たりの国民総所得は2倍以上になった。病院の数も格段に増えた。女性の地位と役割も格段に向上した。国会議員のうち女性が占める割合は27%であり、これは日本の14%を上回った。各省の大臣、副大臣クラスでも多くの女性が活躍した。それでも内戦が続く中、貧困の撲滅は難しかった。国民の半数はいまだに貧困状態に陥ったままである。外国人や海外経験者も多いカブールを一歩離れると、美しい山々、そして草原に住む人々がいる。保守的な地域では、なかなか女性の虐待がなくならなかった。タリバンが、この20年間の歩みを無にするようなことがないよう、国際社会は必要であれば圧力もかけていく必要がある。タリバンは美辞麗句の並ぶ対外発信を続けている。しかしそのタリバンは、心理戦と標的型テロによって政府軍を駆逐したことを忘れてはならない。対アフガン外交で大切な二つ目は、タリバンが国際社会との約束を守るかどうか見極め、守られない場合は経済制裁などエコノミック・ステイトクラフトを活用することである。米軍は撤退したが、非軍事の圧力はいまだに有効である。アメリカは金融制裁を実質的に強化しつつある。アメリカは、アフガニスタンの中央銀行が保有する約95億ドルの資産を凍結し、大部分が預けられているニューヨーク連邦準備銀行等からアフガニスタン本国への送金を停止した。タリバンという巨象がどこに向かおうとしているか、いまだ不透明である。国際社会は、まずはその姿をしっかり直視し、向き合っていくべきだ。1996年にタリバンがカブールを制圧し、女性への人権抑圧が続いても、国際社会はさして関心を払わなかった。そして5年後、9.11が起きた。90年代の教訓を踏まえ、「群盲象を評す」ことでアフガニスタンという巨象に振り回される失敗を繰り返してはならない。相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員写真:AP/アフロ【参考文献】川端清隆『アフガニスタン』みすず書房、2002年。川端清隆「タリバンの「勝利」がもたらすものは~米軍撤退に揺れるアフガニスタン2」『論座』、2021年8月21日付。登利谷正人「アフガニスタン 米タリバン和平も平和の展望見えず」『外交』Vol. 60(2020年3月)山本忠通「アフガニスタン紛争−和平と国連および日本」『中東研究』539号(2020年度 Vol. II)山本忠通「論理的、洗練された一面も タリバンを熟知する日本人が見るアフガニスタンのこれから」朝日新聞GLOBE+、2021年8月19日付。Benjamin Jensen, 『How the Taliban did it: Inside the ‘operational art’ of its military victory』, Atlantic Council, 15 August 2021.Sami Sadat, 『I Commanded Afghan Troops This Year. We Were Betrayed.』, New York Times, 25 August 2021.UNDP Statement on Afghanistan (20 Aug 2021)William J. Burns, The Back Channel, Random House, 2020.
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2021/09/01 10:26
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アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(2)【実業之日本フォーラム】
本稿は『アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(1)【実業之日本フォーラム】』の続編となる。3.タリバン、3つの勝因タリバンの勝因は大きく3つあった。ガニ政権の自壊、ドーハ合意と米軍撤退により生じた巨大な「力の真空」、そして、タリバンの軍事オペレーションが緻密な戦術に基づいていたことだ。第一に、ガニ政権が自壊した。カルザイ政権から続いてきた脆弱なガバナンス、深刻な汚職のまん延はガニ政権でも解消されなかった。さらに大統領選挙の混乱から、政権内での民族・個人間の対立による権力闘争が激化した。2019年9月に実施された大統領選挙の結果は2020年2月まで確定しなかった。選挙を争ったガニとアブドゥラの両氏が組閣人事を公表し、3月9日には両氏が大統領就任式典を挙行するなど、大いに混乱した。しかも大統領選挙の投票率は二割を切り、極めて低調だった。多くの国民が政府に強い不信感を抱いていたことの表れだったと言える。その背景に政府軍の誤爆による市民への被害があったことも忘れてはならない。政権幹部は、その多くが資質よりも部族など個人的なつながりで任命されていた。政府内にまん延する汚職は軍の上層部にも及んでいた。戦果の乏しい将校に、現場の兵士が信頼を寄せることはなかった。さらにアフガニスタンの情報機関、国家保安局は政府軍を構成する軍閥同士の争いを懸念し、部隊を率いる軍閥幹部に対し、兵士の動員や武器確保に細かく注文をつけたという。カブール陥落直前に陸軍トップが交代させられるなど、指揮統制も破綻していたと見られる。カブールがタリバンに包囲されると、ガニ大統領は国外に逃れてしまった。ガニ政権は、自ら崩壊した第二に、トランプ政権がタリバンと直接交渉し成立した「ドーハ合意」と米軍撤退により、巨大な「力の真空」が生じた。米国政府はタリバンをテロ組織に指定し、直接交渉は避けてきた。一方、タリバンの政治的立場は、アメリカに率いられた多国籍軍の撤退こそが和平プロセスを開始するため不可欠であり、最初に合意されねばならいというものだった。当初はアルカイダ掃討が目的だった米軍の「テロとの戦い」は、ビンラーディン殺害後も続いた。アフガニスタンの安定化(stabilization)という、捉えがたく、かつきわめて困難な目標のため、アフガン政府に対する国家建設(nation-building)支援が活動の中心になっていった。しかしパシュトゥーンから一定の支持を受けるタリバンを軍事的に抑え込めないことがわかると、アメリカは方針を転換していった。オバマ政権は断続的にタリバンとの直接交渉に臨んだ。トランプが大統領に就くと「永遠に続く戦争」を終わらせるべく大きく舵を切った。多くの米兵の命が失われ巨額の資金が投じられた米軍駐留の正当性を疑う者は多かった。しかし米軍の完全撤退という決断を、アメリカの大統領はためらってきた。皆が見て見ぬふりをする重要な課題、まさに「部屋の中の象(the elephant in the room)」だった。米軍撤退を迷いなく進めたトランプの大統領就任は、タリバンにとって幸運だった。2018年9月、トランプはハリルザード氏をアフガニスタン和平担当特別代表に任命した。ハリルザード特別代表はアフガニスタン生まれで、アフガニスタンとイラクで大使を歴任し、国連常駐代表も務めた。ハリルザード特別代表はタリバンが政治事務所を構えるドーハで直接交渉を行い、さらに周辺諸国にも根回しを行った。アメリカは米中ロ3か国協議も立ち上げ、タリバンとの直接交渉に支持を取り付けた。なお、アメリカと直接対話できないイランについては、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)代表を務める山本忠通・国連事務総長特別代表(SRSG)がテヘランを訪問し、交渉状況を説明した。2020年2月29日、アメリカのハリルザード特別代表はタリバンのバラーダル政治事務所長との間で「ドーハ合意」に署名した。タリバンがアフガニスタンを国際テロ組織の拠点にしないことを条件として、アメリカは駐留部隊を段階的に削減し、14か月以内、2021年5月までに全面撤退するという内容だった。同日、米国政府はアフガニスタン政府とも類似の内容で共同宣言を発表した。「ドーハ合意」には、いくつもの欠陥があった。まずは非国家の武装集団であるタリバンが自称する「アフガニスタン・イスラム首長国」が、米国政府は承認していないという但書付きとはいえ、合意の当事者になったこと。そして米国政府がタリバンとガニ政権と、別々の合意を交わすことになったこと。実効的な停戦は期待できなかった。さらにタリバンがアフガン政府と交渉を開始する条件として、ガニ政権に不平等な囚人釈放が定められていた。タリバンは最大1,000人の囚人釈放が求められたのに対し、ガニ政権には最大5,000人の囚人釈放が求められた。このため両者の直接対話が始まるまで6か月を要した。こうした欠陥はドーハ合意に至るまでの交渉が難航したことの表れでもある。しかし、このトランプ政権とタリバンとの「手打ち」でもっとも問題だったのは、様々な欠陥がありながらも、米軍の撤退プロセスだけは明確に決まってしまったことである。これでタリバンは外交交渉で時間を稼ぎ、米軍撤退を待ち、攻勢を仕掛けるまで兵力を温存することができた。そして、バイデン大統領が米軍駐留に終止符を打った。バイデンはオバマ政権時代から米軍派遣に消極的な立場をとってきた。2009年、オバマ政権で初めて開催された国家安全保障会議(NSC)で、マレン統合参謀本部議長はタリバンの夏季攻勢を前に3万人の増派を進言した。これに対しバイデン副大統領は大規模な増派に否定的な意見を述べた。バイデンは副大統領就任直前にカブールを訪問し、カルザイ大統領と会談していた。夕食の席でバイデンは統治体制の強化を求めたが折り合わず、逆にカルザイが、アメリカはアフガン市民の死に無関心だと述べたことから、バイデンはナプキンを放り捨て、夕食は突然打ち切られたという。「永遠に続く戦争」を終わらせるべきと考えていたのはトランプだけではなかった。バイデン政権は2021年4月の撤退表明後、米軍の安全確保のため、迅速に撤収を進めた。これにともない米軍による航空支援(空爆)は途絶えがちになり、しかも、多くの民間請負業者もアフガニスタンを離れた。アフガニスタン政府軍がかろうじてタリバンに軍事的優勢を維持できたのは、米軍のエアパワー、海兵隊や特殊作戦軍に依存してきたところが大きい。米軍撤退によりアフガニスタンには巨大な「力の真空」が生じた。ここでタリバンの第三の勝因が重要となる。タリバンは「力の真空」ができたタイミングを逃さず、緻密な戦術に基づいた軍事オペレーションを展開した。タリバンといえばゲリラ戦とIED(即席爆発装置)、自爆テロで多くの民間人を含むアフガン政府軍に被害を与える攻撃手法が知られていた。しかし今回、タリバンは周到に準備していたであろう勝利の理論(theory of victory)に基づき、軍事および非軍事の戦術を統合し政府軍を急襲、一気にカブールまで進撃した。タリバンは、まず政府軍を分断した。政府軍は全国の地理的要衝に散在するチェックポイントを確保していた。これは部隊を全国に分散させることを意味した。タリバンはこの脆弱性を突いた。地上の通信網を破壊し、チェックポイントをひとつずつ落とし、各部隊を孤立させた。食料、水、弾薬などロジスティクスが陸で分断されたため、アフガン軍は空輸で補おうとした。しかし、米軍と民間請負業者の撤収により、すでに疲弊していたアフガン空軍は、メンテナンスのため空軍力の稼働を落とさざるを得なかった。国土の大半が険しい山地であるアフガニスタンにおいて、これは致命的であった。次に心理戦を駆使した。ガニ政権幹部や軍の高官の腐敗、そして間近に迫った米軍撤退とロジスティクスの分断により、政府軍の士気は下がっていた。アフガニスタンの人口の70%以上は携帯電話を持っている。そこでタリバンはソーシャルメディアや部族長へのテキストメッセージで、降伏して生き残るか、部族や家族もろとも殺されるか、選択を迫った。部隊が降伏すると映像を撮影し、それを別の部隊に拡散させた。政府軍の兵士は次々と戦意を失い、降伏が相次いだ。そして、標的型テロを仕掛けた。タリバンは戦術的に重要な個人に標的をあてテロ攻撃をおこなった。市民社会のリーダーなど重要人物を暗殺し、犯行声明を出さなかった。こうしてガニ政権では治安が確保できないという人々の不安を増幅させた。さらにタリバンはパイロットの自宅を襲った。怯えたパイロットは自らの持ち場を放棄していった。米軍の空爆に苦しんできたタリバンは、貴重な地対空ミサイルを撃つことなく、政府の空軍力を削ぐことに成功した。『アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(3)【実業之日本フォーラム】』へ続く相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員写真:AP/アフロ【参考文献】川端清隆『アフガニスタン』みすず書房、2002年。川端清隆「タリバンの「勝利」がもたらすものは~米軍撤退に揺れるアフガニスタン2」『論座』、2021年8月21日付。登利谷正人「アフガニスタン 米タリバン和平も平和の展望見えず」『外交』Vol. 60(2020年3月)山本忠通「アフガニスタン紛争−和平と国連および日本」『中東研究』539号(2020年度 Vol. II)山本忠通「論理的、洗練された一面も タリバンを熟知する日本人が見るアフガニスタンのこれから」朝日新聞GLOBE+、2021年8月19日付。Benjamin Jensen, 『How the Taliban did it: Inside the ‘operational art’ of its military victory』, Atlantic Council, 15 August 2021.Sami Sadat, 『I Commanded Afghan Troops This Year. We Were Betrayed.』, New York Times, 25 August 2021.UNDP Statement on Afghanistan (20 Aug 2021)William J. Burns, The Back Channel, Random House, 2020.
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2021/09/01 10:25
注目トピックス 経済総合
アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(1)【実業之日本フォーラム】
1.カブール陥落2018年、国連での仕事のため、しばらくカブールで働いた。カブール市内の道路には高さ制限のバーが並んでいた。その前年、大使館地区のど真ん中で2トンの爆薬を積んだ大型トラックによる自爆テロがあり150名以上が亡くなった。高さのある車は爆薬を搭載している可能性があり、道路に並ぶバーは、それを通さないためのものだった。治安は悪化の一途をたどっていたが、それでもアメリカを中心とした主要国政府と国連は、ガニ政権とタリバンとの間で和平交渉が進むよう努力を続けていた。それから3年。2021年8月15日、あっという間にカブールは陥落した。アフガニスタンのほぼ全土が約20年ぶりにタリバンの支配下に置かれることになった。近年、タリバンは南部および東部の農村部や山岳部を中心に、支配地域を着実に拡大してきた。アフガン政府は米軍とNATO軍の強力な支援を受けながら、全国34の州都をなんとか確保してきた。しかし今年4月にバイデン大統領が駐留米軍を完全撤退させると表明すると、それまで力を蓄えていたタリバンが政府軍への攻撃を本格化させた。7月初頭には米軍の主要部隊が撤収した。ここでタリバンは攻勢を強め、8月6日に南西部ニムルズ州の州都ザランジを制圧。タリバンは次々と州都を陥落させ、ザランジが落ちた9日後、ついに首都カブールを制圧した。国連時代の同僚をはじめ、多くのアフガニスタン人がカブール陥落前から国外退避をはじめていた。カブール陥落により、その動きは一気に加速した。空港には国外退避を求める人々が殺到した。一人でも多くの自国民と、長年、協力してくれたアフガニスタン人を退避させるため、米軍を中心に各国がオペレーションを開始した。8月26日にはイスラーム国ホラーサーン州(IS-K)が米軍と空港に集まった群衆を狙って自爆テロ攻撃を仕掛け、米軍の兵士13名を含む180名以上が亡くなった。2.アフガニスタンという「巨象」アフガニスタンはユーラシア大陸の中心にあり「文明の十字路」と呼ばれてきた。地政学上の要衝に位置することから大英帝国やロシア帝国など列強が進出を試みたが、アフガニスタンの人々は徹底して抗った。そのため「帝国の墓場」とも呼ばれた。ソ連も撃退した。いまアフガニスタンと国境を接するのはイラン、パキスタン、中国、タジキスタン、トルクメニスタンとウズベキスタンの6か国。さらにロシア、インド、カタール、サウジアラビア、トルコなどもアフガン紛争に何らか関与したか、直接の影響を受けてきた。今回のカブール陥落に、こうした関係国を含め、国際社会が衝撃を受けた。思い出されるのは二つの出来事だ。2001年9月11日に起きた同時多発テロ。そして2011年5月2日(米国時間1日)、9.11テロの首謀者であったアルカイダの元指導者、ウサマ・ビンラーディンの殺害。アフガニスタンと聞いて多くの人々が思い起こす二つの出来事には共通点がある。いずれもアフガニスタンの国外で起きた、ということだ。9.11が起きたのはアメリカ、ビンラーディンが殺害されたのはパキスタンだった。これは今のアフガニスタン情勢を理解する上で示唆的である。アフガニスタンは地政学やグレートゲームの文脈で語られることが多い。しかし我々は、アフガニスタンという国を、真正面から見てきただろうか。欧米、あるいはパキスタンなど南アジアや、地政学の視点からばかり、アフガニスタンを見てはいなかったか。9.11から20年間、いやその前から、国際社会はアフガニスタンという「巨象」の輪郭しか捉えてこなかったのではないか。アメリカのみならず国際社会はアフガニスタンという巨象に振り回され、「群盲象を評す」を続けてきたのではないか。9.11から20年間、ためらいながらも象使いを続けてきたアメリカは、ついにこの巨象から振り落とされた。いま振り返るべきは、1996年のタリバンによるカブール制圧だ。タリバンは1994年、アフガニスタン南部の主要都市カンダハールに、パシュトゥーン人主体のイスラム原理主義武装組織として出現した。パシュトゥーンは多民族国家アフガニスタンで最大の民族である。タリバンはカンダハールを制圧して次々に既存の軍事組織を糾合したが、カブール制圧には1年以上かかった。ついにカブールを占拠すると、ナジブラ元大統領を処刑し、その遺体を市内の交差点で吊るし、女性の就労禁止、女学校の閉鎖、ブルカ着用強制など苛烈な支配をおこなった。アフガニスタンの人々は、この25年前のタリバンの所業を覚えている。25年前と違って、なぜ今回タリバンは驚異的なスピードでアフガニスタン全土を制圧できたのか。そして今後、国際社会はタリバンと、どう向き合うべきなのだろうか。『アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権(2)【実業之日本フォーラム】』へ続く相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員写真:AP/アフロ【参考文献】川端清隆『アフガニスタン』みすず書房、2002年。川端清隆「タリバンの「勝利」がもたらすものは~米軍撤退に揺れるアフガニスタン2」『論座』、2021年8月21日付。登利谷正人「アフガニスタン 米タリバン和平も平和の展望見えず」『外交』Vol. 60(2020年3月)山本忠通「アフガニスタン紛争−和平と国連および日本」『中東研究』539号(2020年度 Vol. II)山本忠通「論理的、洗練された一面も タリバンを熟知する日本人が見るアフガニスタンのこれから」朝日新聞GLOBE+、2021年8月19日付。Benjamin Jensen, 『How the Taliban did it: Inside the ‘operational art’ of its military victory』, Atlantic Council, 15 August 2021.Sami Sadat, 『I Commanded Afghan Troops This Year. We Were Betrayed.』, New York Times, 25 August 2021.UNDP Statement on Afghanistan (20 Aug 2021)William J. Burns, The Back Channel, Random House, 2020.
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2021/09/01 10:24
注目トピックス 経済総合
村田製作所のコール型eワラントが前日比2倍の大幅上昇(1日10:05時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはイオン<8267>コール24回 9月 3,000円、富士フイルムホールディングス<4901>コール109回 9月 9,400円、日経平均コール2133回 9月 28,500円、日経平均 プラス5倍トラッカー76回 9月 26,000円などが見られる。上昇率上位はニアピン米ドルr2 1316回 9月 113円(前日比3.5倍)、村田製作所<6981>コール210回 9月 11,400円(前日比2倍)、オムロン<6645>コール46回 9月 11,800円(+79.0%)、コマツ<6301>コール215回 9月 3,200円(+75.0%)、コマツコール214回 9月 2,800円(+71.7%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/01 10:23
みんかぶニュース 市況・概況
識学が3日続伸、ハウスドゥと事業提携◇
識学<7049.T>が3日続伸している。午前10時ごろハウスドゥ<3457.T>と事業提携を行うと発表しており、これが好感されている。
提携により、ハウスドゥ加盟店のうち、組織への課題を持つ加盟店の識学への紹介や、識学サービスの導入を決定したハウスドゥ加盟店に対するサービスの提供などを行うとしている。なお、同件が22年2月期業績に与える影響は軽微としている。
(注)タイトル末尾の「◇」は本文中に複数の銘柄を含む記事を表しています。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 10:22
注目トピックス 日本株
ラクーンHD---ストップ安、第1四半期大幅減益決算をマイナス視
ラクーンHD<3031>はストップ安。前日に第1四半期決算を発表、営業利益は2.6億円で前年同期比24.8%減益となった。通期予想は2ケタ増益の計画となっており、想定以上の低調スタートと受けとめられる形になっている。コロナ特需の反動でEC事業の増収率が鈍化したほか、プロモーション強化の継続と人員増強により広告宣伝費、人件費が増加しているもよう。成長期待の高さが株価水準に反映されており、ネガティブな反応は強まりやすくなっている。
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2021/09/01 10:21
日経QUICKニュース
東証10時 2万8300円台で伸び悩み 首相が衆院解散観測を否定
1日前場中ごろの東京株式市場で日経平均株価は伸び悩んでいる。前日に比べ200円ほど高い2万8300円台前半で推移している。菅義偉首相が衆院解散に踏み切るとの観測を否定したことで買いの勢いが弱まっている。 日経平均は上げ幅を300円超に広げる場面があった。菅首相が9月中旬にも衆議院を解散するとの観測を受け、市場では「衆院解散で株高になる」との経験則を踏まえた買いが朝方から入っていた。東海東京調査センターの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストは「仮に解散総選挙となれば、選挙にプラスになるような政策が打ち出される可能性があり、株にとっては好材料だろう」と話す。 10時現在の東証1部の売買代金は概算で9436億円、売買高は3億5966万株だった。 ファストリ、オムロン、ファナック、テルモが高い。半面、東エレク、オリンパス、リクルート、ヤマハ発が安い。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
2021/09/01 10:17
注目トピックス 市況・概況
東京為替:ドル・円は一時110円20銭まで上昇
9月1日午前の東京市場でドル・円は、110円10銭台で推移。日経平均の上昇は一服したが、リスク回避的な円買いは縮小している。仲値時点のドル需要は通常並みだったようだ。日経平均に大きな動きがない場合、ドル・円は110円台前半で推移する可能性がある。ここまでの取引レンジは、ドル・円は109円99銭から110円20銭、ユーロ・ドルは、1.1801ドルから1.1812ドル、ユーロ・円は、129円88銭から130円07銭で推移。
<MK>
2021/09/01 10:16
みんかぶニュース 個別・材料
セキドが5日続伸、固定資産売却益計上で22年3月期最終利益予想を上方修正
セキド<9878.T>は5日続伸している。8月31日の取引終了後、22年3月期単独業績予想について、最終利益を1億1800万円から3億3900万円(前期比2.9倍)へ上方修正したことが好感されている。
経営資源の有効活用と資産効率の向上を図るため保有する東京都八王子市の土地を売却するのに伴い、第4四半期の業績に固定資産売却益2億2100万円を特別利益として計上することが要因。なお、売上高73億5000万円(同8.5%増)、営業利益1億6800万円(同7.1%減)は従来見通しを据え置いている。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 10:15
日経QUICKニュース
外為10時 円、じり安 110円台前半 中値「ドル不足」の声
1日午前の東京外国為替市場で円相場はじりじりと下げ幅を広げている。10時時点では1ドル=110円18~19銭と前日17時時点に比べ37銭の円安・ドル高だった。日本時間1日の取引で米長期金利が一段と上昇しており、日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが増えた。日経平均株価が堅調に推移しているのも「低リスク通貨」とされる円の売りを促した。 円は一時110円20銭近辺まで下げ幅を広げた。10時前の中値決済に向けて、市場では「ドル不足だった」(国内銀行の為替担当者)との声が聞かれた。国内輸入企業による円売り・ドル買いが活発になったとの観測も円相場を下押しした。 菅義偉首相は1日午前、9月中旬に衆院解散に踏み切るとの観測を巡って「最優先は新型コロナウイルス対策だ。今のような厳しい状況では解散できる状況ではない」と語った。自民党総裁選に関しても「先送りは考えていない」と明言したが、外為市場では「影響は限定的」(国内銀行)との声もあり、今のところ円相場の反応は限られている。 円は対ユーロでも下げ幅を広げている。10時時点では1ユーロ=130円04~05銭と同16銭の円安・ユーロ高だった。ユーロは対ドルで下げ幅を拡大し、10時時点では1ユーロ=1.1802ドル近辺と同0.0025ドルのユーロ安・ドル高だった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
2021/09/01 10:15
みんかぶニュース 市況・概況
◎午前10時現在の値上がり値下がり銘柄数
午前10時現在の東証1部の値上がり銘柄数は1308、値下がり銘柄数は706、変わらずは165銘柄だった。業種別では33業種中29業種前後が高い。値上がり上位にパルプ・紙、海運、医薬品、機械など。値下がり上位に陸運、ゴム製品など。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 10:13
注目トピックス 日本株
日本電子---大幅反落、公募増資や売出の発表による希薄化・需給悪化を懸念
日本電子<6951>は大幅反落。200万株の公募増資、250万株の株式売出、67万5000株のオーバーアロットメントによる売出の実施を発表している。5.5%の希薄化となるほか、目先の需給悪化も警戒される状況に。株式売出は主にニコンが中心となる。生産設備への投資や研究開発投資などが資金使途となるようだ。中長期の成長につながっていくとはみられるが、前日にかけて高値更新となっていたなかで、利食い売り材料と捉える動きが優勢。
<TY>
2021/09/01 10:11
みんかぶニュース 個別・材料
VTHDが大幅高で3年2カ月ぶり高値、業績好調でM&A戦略による業容拡大にも期待
VTホールディングス<7593.T>がマドを開けて大幅高に買われ、年初来高値を更新。2018年7月以来約3年2か月ぶりの高値をつけた。ホンダ・日産系の自動車ディーラーで中古車も展開する。業績は新車販売、中古車ともに会社側の想定を上回る好調で推移しており、22年3月期業績については、営業利益段階で従来予想の80億円から86億円(前期比11.5%増)に上方修正している。PER6倍前後、配当利回り3.8%台と指標面から割安感が強い。一方、業容拡大に積極的でM&A戦略を推進しているが、「スーパーセブン」を生産する英ケータハムの子会社化で、スポーツカーの販売強化により同社の成長が後押しされる可能性がある。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 10:10
みんかぶニュース 個別・材料
ダブスタは連日の年初来高値更新、9月末を基準日として1株を2株に株式分割へ
ダブルスタンダード<3925.T>は連日の年初来高値を更新している。8月31日の取引終了後、9月30日を基準日として1株を2株に株式分割すると発表した。投資単位当たりの金額を引き下げることで、流動性の向上及び投資家層の拡大を図ることが目的という。ただ、8月中旬以降、株価は急上昇していただけに、高値更新後は利益確定売りに押される展開となっている。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 10:02
みんかぶニュース 市況・概況
10時の日経平均は232円高の2万8321円、ファストリが14.76円押し上げ
1日10時現在の日経平均株価は前日比232.05円(0.83%)高の2万8321.59円で推移。東証1部の値上がり銘柄数は1306、値下がりは706、変わらずは166と、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回っている。
日経平均プラス寄与度トップはファストリ <9983>で、日経平均を14.76円押し上げている。次いでオムロン <6645>が14.04円、ファナック <6954>が10.44円、テルモ <4543>が8.79円、太陽誘電 <6976>が8.64円と続く。
マイナス寄与度は6.12円の押し下げで東エレク <8035>がトップ。以下、オリンパス <7733>が2.88円、リクルート <6098>が2.59円、コナミHD <9766>が0.72円、アドテスト <6857>が0.72円と続いている。
業種別では33業種中30業種が上昇し、下落は陸運、鉄鋼、金属製品の3業種にとどまっている。値上がり率1位はパルプ・紙で、以下、医薬品、証券・商品、空運、その他製品、保険と続いている。
※10時0分2秒時点
株探ニュース
2021/09/01 10:01
みんかぶニュース コラム
<注目銘柄>=飯田GHD、戸建分譲好調で増益基調継続へ
飯田グループホールディングス<3291.T>は、コロナ禍で分譲戸建住宅の潜在需要が顕在化しており、増益基調継続が期待できる。PBR0.9倍台の株価水準は割安感が強い。
コロナ禍に伴う在宅時間の増加やリモートワークの普及など生活様式が変化したことで、部屋数が多く、独立性の高い戸建住宅への需要が高まっている。低金利環境の継続や住宅ローン減税の再延長など、各種住宅取得支援策の継続などもあり、住宅需要は引き続き堅調が見込まれている。同社の第1四半期(4~6月)決算も、営業利益が413億7600万円(前年同期比2.6倍)と大幅増益となり、22年3月期通期では同1280億円(前期比5.6%増)を見込む。
ただ、第1四半期の戸建分譲事業で販売棟数が前年同期比4.8%減の1万235棟となったことでコロナ特需のピークアウト感が意識され、株価はやや調整局面にある。しかし、仕入契約棟数は計画どおり順調に増加していることから、販売戸数が大幅に減少するリスクは限定的。これに加えて、平均単価が上昇し分譲戸建住宅の粗利率は上昇しており、高い利益水準での業績推移が期待できる。
23年3月期以降も同様で、コロナ特需が一段落しても、分譲戸建のシェア拡大、請負事業・リフォーム事業の強化などで増益基調は続きそう。株価も業績拡大に合わせた動きが期待できよう。(仁)
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 10:00
みんかぶニュース 市況・概況
武者陵司「テーパリングの先に見える長期趨勢 (2)」
―米国株式資本主義の軌道修正と、日本株劣位の終わり―
※武者陵司「テーパリングの先に見える長期趨勢 (1)」から続く
●超長期金利低下トレンド終焉と米国株式の潜在的リスク
武者リサーチは、前回にみたJ・マッキントッシュ氏の懸念(インフレ懸念に基づく悪い金利の上昇が株価の下落要因になるリスク)は時期尚早だと考える。当面予想される金利上昇は良い金利上昇(=経済拡大による)であり、悪い金利上昇(=インフレ)ではないと考えられる。また、金利と株価の関係が1999年以前に戻りつつあるとしても、現在の株式益回りは10年国債利回りよりはるかに高く、1~2%程度の長期金利上昇に株価は堪え得るバリュエーション上のバッファーを持っている。株価の長期上昇トレンドは変わらない、と見られる。
しかし、短期急落のリスクは排除できない。その引き金になりそうなのは、米国企業が長期金利低下という長く続いた金融環境に過剰適応してしまっていることである。市場がそのリスクに気づけば、株価急落などの一時的ショックを引き起こすかもしれない。
●米国企業はレバレッジを高め利益を100%株主に還元、これは持続可能か
ここ10数年の米国企業財務の特徴は顕著なレバレッジ化にある。米国企業はほぼ利益のすべてを配当と自社株買いで株主還元してきた。2015年から2020年の6年間に米国企業(除く金融)は6.17兆ドルの税引き利益を計上したが、この間の株主還元は配当3.63兆ドル、自社株買いは2.51兆ドル、合計6.14兆ドルと、獲得した利益をすべて吐き出した形となっている。つまり、簿価ベースでみれば、内部留保による自己資本増加は全く無かったわけである。にもかかわらず、債務は債券主体に3.04兆ドル増加した。企業の債務依存は大きく高まってきたといえる。
この企業による自社株買いはリーマンショック以降の11年間に累計4.06兆ドルに達し、唯一最大の株式買い主体であった。リーマンショック後、今日まで 米国株式は6.5倍と主要国を大きく上回る上昇を遂げたが、それはもっぱら企業の株価本位の財務戦略に支えられていたのである。
米国の家計保有の純資産額はリーマンショック後、2009年第1四半期に60兆ドルで底を打ち、2021年第1四半期には136兆ドルへと、12年間で76兆ドル(米国GDP比3.6倍)増加し、米国消費の推進力になったが、この資産価格の上昇は株高によって可能となったわけであり、その背景には企業の自社株買いがあった。このように考えれば、企業の株価本位の財務戦略は2010年代の米国経済拡大の屋台骨であったと言っても過言ではない。
●米国企業の高レバレッジがもたらした高株式バリュエーション
このレバレッジを高め、最大の株主利益である株価上昇を実現するという、株価本位の財務戦略は、米国企業にことさら強いものである。2011年以降の米国、日本、欧州企業の負債資本倍率 (D/Eレシオ) の推移をみると、米国企業のレバレッジ化が大きく進行してきたことがわかる。
配当・自社株買いによる利益還元→ROE上昇(=1株当たりの利益増)と需給改善による株高→市場価格ベースの自己資本(株式時価総額)増加→市場価格(株式時価総額)ベースの債務負担能力向上→債務増加、という連鎖が、米国においては特に強く定着してきたのである。
このように重要な役割を果たしてきた米国企業の財務バランス悪化を伴う株価本位財務政策、米国企業の高レバレッジ体質は、今後予想される金利上昇局面における企業収益の耐久力によって試されることになる。上述の自社株買いを起点とした株価上昇の好循環が減衰し、時には逆転する可能性も排除できない。注意深い観察が求められる時代に入っていく。
●2022年、米金利上昇、ドル高、日本株優位の時代の可能性も
米国金利の上昇は、米国企業の財務戦略転換(レバレッジ化からデレバレッジ化へ)を引き起こすのだろうか。とすれば、その影響は株価にも及び得る。債務の抑制→自社株買いの抑制などが起きないかどうか、注視するべきである。
それは株価本位の米国企業の財務政策がもたらした、米国の突出した株式バリュエーションの修正を意味する可能性もある。株式バリュエーションを日米で比較すると、株式時価総額対GDP比率は米国268%、日本133%、PBRは米国4.59倍、日本1.23倍と極端に開いている。
TOPIX/S&P500倍率の歴史的推移をみると、1990年の日本株バブル時に9倍を付けて以降一貫して低下し、現在過去最低の0.5倍となっているが、その過程は米国長期金利の低下(→米国企業の高レバレッジ化)とほぼ一致している。長期金利の低下局面で米国株式はレバレッジを高めることで、日本株式を凌駕し続けたのである。その結果が上述のような日米株式バリュエーション格差であったとすれば、金利趨勢の転換は日米株式バリュエーション格差の是正に結びつくのではないだろうか。
長期にわたる日本株劣位はそろそろ終焉する時期に来ている、と言えるかもしれない。金利の長期趨勢の転換は、米国企業と好対照な世界で最もレバレッジの低い日本企業と 日本株式に有利に働くのではないか。また、米国金利上昇はドル高・円安を促進するとみられ、日本株式にはダブルの追い風となりそうである。2021年2月から8月まで続いてきた、日本株式のパフォーマンス劣位は、2022年にかけて大きく是正されていくかもしれない。
(2021年8月30日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン287号」を転載)
株探ニュース
2021/09/01 10:00
みんかぶニュース 個別・材料
SMKが続急伸、上限を20万株とする自社株買いを実施へ
SMK<6798.T>が続急伸している。8月31日の取引終了後に自社株買いを実施すると発表しており、これが好材料視されている。上限を20万株(発行済み株数の3.08%)、または5億円としており、取得期間は9月1日から11月30日まで。株主還元の充実と資本効率の向上を図るためとしている。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:58
みんかぶニュース 個別・材料
日電子は大幅安、公募増資による希薄化懸念
日本電子<6951.T>は大幅安。8月31日の取引終了後、200万株の公募と250万株の株式売り出し、上限67万5000株のオーバーアロットメントによる売り出しを実施すると発表しており、1株利益の希薄化や需給悪化を懸念した売りが出ているようだ。
発行価格は9月8日から13日までのいずれかの日に決定する予定で、調達資金約173億円は、新工場(東京都武蔵村山市)の土地・建物の取得に伴って増加した借入金の返済資金や生産製造設備投資資金などに充てるという。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:55
みんかぶニュース 個別・材料
海帆がS安、株主優待制度の一時休止を発表
海帆<3133.T>が急落しストップ安の572円に売られている。8月31日の取引終了後、21年9月末から株主優待制度を一時休止すると発表しており、これが嫌気されている。直近四半期の業績内容などを考慮し、財務状況の改善を行うことが第一であると判断したという。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:48
注目トピックス 日本株
出来高変化率ランキング(9時台)~VTHD、INCなどがランクイン
※出来高変化率ランキングでは、直近5日平均の出来高と配信当日の出来高を比較することで、物色の傾向など市場参加者の関心を知ることができます。■出来高変化率上位 [9月1日 9:32 現在](直近5日平均出来高比較)銘柄コード 銘柄名 出来高 5日平均出来高 出来高変化率 株価変化率<7078>* INC 726600 71880 910.85% 15.65%<4011>* ヘッドウォータ 28400 6160 361.04% 14.58%<9878>* セキド 129200 31460 310.68% 2.06%<6125>* 岡本工 78600 19640 300.2% 10.1%<4488>* AIinside 393800 122060 222.63% 15.11%<1329>* iS225 51743 19442 166.14% 1.18%<2345>* クシム 724400 287760 151.74% 14.67%<7726>* 黒田精 51900 24160 114.82% 3.01%<3936>* グロバルウェ 434000 213440 103.34% 9.62%<3040>* ソリトン 145500 91260 59.43% 1.64%<1557>* SPDR500 10774 7407.4 45.45% 0%<7157>* ライフネット 127700 93220 36.99% -6.42%<6951>* 日電子 570000 425360 34% -5.78%<2035>* 日経VI 452920 342697.8 32.16% -3.11%<3925>* DS 135000 108240 24.72% -3.4%<5699>* イボキン 39000 31520 23.73% 7%<6908>* イリソ電子 51100 41420 23.37% -2.5%<2930>* 北の達人 357600 290480 23.11% -2.34%<6999>* KOA 203600 167960 21.22% 5.05%<3919>* パイプドH 109500 90500 20.99% 5.14%<7748>* ホロン 18700 15980 17.02% 2.13%<3692>* FFRI 23600 20840 13.24% 1.99%<2673>* 夢隊 82200 74660 10.1% 1.64%<3751>* 日本アG 165000 150100 9.93% 0%<1369>* DIAM225 10840 9967.8 8.75% 1.07%<7593>* VTHD 396100 375040 5.62% 7.05%<3906>* ALBERT 14000 13940 0.43% -0.41%<4435>* カオナビ 17100 17260 -0.93% -3.95%<7867>* タカラトミー 242200 244880 -1.09% 2.13%<6182>* ロゼッタ 49700 50320 -1.23% 2.59%(*)はランキングに新規で入ってきた銘柄20日移動平均売買代金が5000万円以下のものは除外
<ST>
2021/09/01 09:48
注目トピックス 外国株
概況からBRICsを知ろう ブラジル株式市場は続落、欧米市場の下落
【ブラジル】ボベスパ指数 118781.03 -0.80%31日のブラジル株式市場は続落。主要指標のボベスパ指数は前日比958.93ポイント安(-0.80%)の118781.03で取引を終了した。120156.9から117911.00まで下落した。前日の終値近辺でもみ合った後は下げ幅をじりじりと拡大させた。ボルソナロ大統領が国内のガソリン価格などの上昇を抑制すると発言したことが資源セクターの圧迫材料。また、翌9月1日に4-6月期の国内総生産(GDP)などが発表される予定となり、慎重ムードも強い。ほかに、欧米市場の下落などがブラジル株の売り手掛かりを強めた。【ロシア】MOEX指数 3918.96 -0.24%31日のロシア株式市場は3日ぶりに反落。主要指標のMOEX指数は前日比9.54ポイント安(-0.24%)の3918.96で取引を終了した。3938.68から3904.72まで下落した。前日の終値近辺でもみ合った後は下げ幅をじりじりと拡大させた。欧米市場の下落が嫌気され、ロシア株への売りも広がった。また、原油価格の下落も資源銘柄の売り手掛かりとなった。一方、指数の下値は限定的。ダイヤモンド生産のアルロサ(ALRS)の上昇などが指数を下支えした。同社の増配計画などが好感されたもようだ。【インド】SENSEX指数 57552.39 +1.16%31日のインドSENSEX指数は続伸。前日比662.63ポイント高(+1.16%)の57552.39、ナショナル証券取引所の主要50社株価指数ニフティは同201.15ポイント高(+1.19%)の17132.20で取引を終えた。買いが先行した後は上げ幅をじりじりと拡大させた。両指数はこの日、再び過去最高値を更新して引けた。外国人投資家(FII)の買い継続が支援材料。また、一連の景気対策への期待なども引き続き好感された。ほかに、成長の加速観測が指数をサポート。なお、インド統計局はこの日の取引終了後、4-6月期の国内総生産(GDP)成長率が20.1%となり、前期の1.6%から加速したと発表した。ただ、これは市場の平均予想21.0%をやや下回る水準となった。【中国本土】上海総合指数 3543.94 +0.45%31日の上海総合指数は、主要指標の上海総合指数が前日比15.79ポイント高(+0.45%)の3543.94ポイントと3日続伸した。景気対策が期待される流れ。中国経済指標が下振れを受けて、当局は景気落ち込みを回避するため、テコ入れ策を強める——との見方が改めて広がった。また、中国人民銀行(中央銀行)など関係各局は先週27日、農村振興を支援する会議を開き、金融支援の強化方針を確認。市場の一部では、「農村振興のほか、ハイテク製造やグリーン産業支援のため、人民銀は9月に金融緩和策を打ち出す」との観測も流れている。朝方公表された8月の中国製造業PMI(国家統計局などが集計)は50.1となり、市場予想(50.2)を下回った。また、同月の非製造業PMIは47.5となり、景況判断の分かれ目となる50を1年6カ月ぶりに割り込んでいる。景気先行き不安で売りが先行したものの、下値は堅く、指数は後場途中からプラスに転じた。
<CS>
2021/09/01 09:42
みんかぶニュース 市況・概況
1日韓国・KOSPI=寄り付き3195.67(-3.60)
1日の韓国・KOSPIは前営業日比3.60ポイント安の3195.67で寄り付いた。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:41
みんかぶニュース 個別・材料
レーザーテックが最高値圏まい進、外資の投資判断引き下げで拾い場提供
レーザーテック<6920.T>が上げ足を強めている。前日の米国株市場では半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が反落したものの、それをものともせず、上値指向を継続。前日に上場来高値を更新したが、きょうも戻り売り圧力のない青空圏を突き進む展開にある。EUV露光装置の市場が本格的に立ち上がるなか、マスクブランクス検査装置を独占供給する同社の存在が注目されている。リソグラフィーのトップメーカーであるオランダのASMLの株価が最高値近辺で頑強展開をみせていることも追い風材料となっているもようだ。市場では「ゴールドマン・サックス証券など同社株の投資判断を引き下げる動きがあり、株価を急速に軟化させる場面があったが、その際に空売りなども呼び込んだとみられる。しかし、そこを拾われ踏み上げを誘う展開に持っていかれ、ショートポジションを取った向きはしてやられた形となっている」(ネット証券アナリスト)という。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:40
みんかぶニュース 個別・材料
新都HDが続伸、廃金属の貿易取り引きに関するパートナーシップ締結
新都ホールディングス<2776.T>が続伸。8月31日の取引終了後、ナンセイスチール(千葉県船橋市)と日本五金鉱産(東京都江東区)との間で廃金属の貿易取り引きに関する3社間パートナーシップ契約を提携したと発表しており、これが材料視されているようだ。
このパートナーシップでは、ナンセイスチールが取り扱い金属スクラップを購入し、日本五金鉱産を通じて中国国内や東南アジアに販売する。新都HDでは、ナンセイスチールと日本五金鉱産の強みと特徴を発揮できるようつなぎ調整することにより、シナジーに基づいた安定的なグローバルビジネスの展開が可能であることに注目し、今回の契約締結に至ったとしている。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:40
個別銘柄テクニカルショット
東エレク---5営業日続伸でトレンド転換が意識される
5営業日続伸。8月20日につけた42670円を直近安値としてリバウンドを継続しており、75日線を支持線に変えてきている。調整トレンドの上限レベルを突破しつつあり、トレンド転換が意識されてきた。一目均衡表では雲上限を突破し、遅行スパンは上方シグナルを発生させている。
<FA>
2021/09/01 09:37
注目トピックス 市況・概況
東京為替:ドル・円は110円10銭台で推移、日経平均上昇でドル買い強まる
9月1日午前の東京市場でドル・円は、110円10銭台で推移。米長期金利の上昇や日経平均の上昇を意識したドル買いが観測されており、リスク回避的な円買いは増えていないことから、ドル・円は110円台前半で推移する可能性がある。ここまでの取引レンジは、ドル・円は109円99銭から110円16銭、ユーロ・ドルは、1.1807ドルから1.1812ドル、ユーロ・円は、129円88銭から130円05銭で推移。
<MK>
2021/09/01 09:37
みんかぶニュース 個別・材料
ミライアルが大幅反発、7月中間期業績の計画上振れと中間配当増額を発表
ミライアル<4238.T>が大幅反発している。8月31日の取引終了後、集計中の第2四半期累計(2~7月)連結業績について、売上高が51億円から52億7000万円(前年同期比11.4%増)へ、営業利益を5億7000万円から6億9000万円(同58.6%増)へ、純利益を4億2000万円から5億5000万円(同20.7%減)へ上振れて着地したようだと発表したことが好感されている。
プラスチック成形事業に関連する半導体業界の需要が堅調に推移したことで売上高が計画を上振れたことに加えて、新たな高機能樹脂製品の拡販や工場稼働率の向上が利益を押し上げたとしている。同時に、従来10円を予定していた中間配当を20円に引き上げると発表した。なお、期末配当予想は引き続き未定としている。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:34
みんかぶニュース 投資家動向
<個人投資家の予想> 09月01日 09時
■ 買い予想数上昇(最新48時間)
(銘柄コード) 銘柄 市場 [ 割安/割高 ]
(3807) フィスコ 東証JASDAQ(グロース) [ 割高 ]
(8103) 明和産業 東証1部 [ 割高 ]
(6898) トミタ電機 東証JASDAQ(スタンダード) [ 割高 ]
(4238) ミライアル 東証1部 [ 割高 ]
(6430) ダイコク電機 東証1部 [ 割高 ]
■ 売り予想数上昇(最新48時間)
(銘柄コード) 銘柄 市場 [ 割安/割高 ]
(6173) アクアライン 東証マザーズ [ 割高 ]
(3133) 海帆 東証マザーズ [ 分析中 ]
(6951) 日本電子 東証1部 [ 割高 ]
(3031) ラクーンHD 東証1部 [ 割高 ]
(9984) ソフトバンクグループ 東証1部 [ 割高 ]
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:32
みんかぶニュース 個別・材料
Casaがしっかり、お部屋探しアプリ運営のAlong withを子会社化へ
Casa<7196.T>がしっかり。8月31日の取引終了後、お部屋探しアプリ「yesman(イエスマン)」を運営するAlong with(東京都渋谷区)の全株式を9月1日付で取得し子会社化すると発表しており、これが好材料視されている。
今回の子会社化は、代理店の業務削減や集客の強化などに加えて、入居希望者と不動産管理会社・自主管理家主をマッチングすることで代理店との協業関係を強化し、家賃債務保証事業とのシナジーを創出するのが狙い。取得価額は非開示。なお、今後の業績に与える影響は現在精査中としている。
出所:MINKABU PRESS
2021/09/01 09:31