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橋本総業HD Research Memo(3):管材を中心に住設、空調、建材、電材などを取り扱う
配信日時:2025/12/29 11:03
配信元:FISCO
*11:03JST 橋本総業HD Research Memo(3):管材を中心に住設、空調、建材、電材などを取り扱う
■事業概要
1. 取扱商品
橋本総業ホールディングス<7570>の取扱商品は、管類、継手類、バルブ類、化成品類、工具関連機材などの管材類をはじめ、便器・手洗器、洗面化粧台などの衛生陶器・金具類、給湯関連や厨房関連などの住宅設備機器類、各種エアコンや各種ポンプなどの空調機器・ポンプで、水回りのパイプやガス関連の商品が多い。主要な仕入先メーカーは住宅建材の積水化学工業<4204>や衛生陶器のTOTO<5332>、建材・電材のパナソニック ホールディングス<6752>、バルブのキッツ<6498>、エアコンのダイキン工業<6367>など、業界や日本を代表する大手有力メーカーが多く、販売店のみならずメーカーにとっても同社は流通の重要な要となっている。登録アイテム数は専門商材を中心に約250万点あり、主要倉庫で売れ筋を中心に常時約4万点の在庫を有するほか、各拠点でも地域に密着した商材の在庫を約1,000点取り揃え、一部は即日配送も行っている。なお、2026年3月期中間期のセグメント別売上高構成比は、管材類28.2%、衛生陶器・金具類26.8%、住宅設備機器類18.3%、空調機器・ポンプ25.3%、その他1.4%となっている。
需要は増しているが、厳しい市場環境
2. 業界環境
同社は建築資材業界、なかでも管材業界に属する。建設業界の市場規模は、新築・リフォームをあわせ76.7兆円、GDPの約12%を占めると言われ、管材業界の市場規模も管材と住宅設備機器、空調機器をあわせて5兆円と大きい。マンション販売やリフォームが堅調なほか、共働き世帯の増加に伴う保育施設や高齢化に伴う高齢者施設の増加、老朽化が課題となっている公共施設のリニューアルなど、需要は拡大している。このため、中長期的な管材業界の市場環境は、収益性、成長性ともに堅実と言える。そうした管材業界のなかで、同社は1次卸として、大手有力メーカーと全国の2次卸や工事店・工務店をつなぐ要となっている。
近年の市場環境は、労働力不足や世界情勢など外部環境の不安定化に加え、建設業界内でも新設住宅着工戸数の減少や諸制度の改正、建設・物流業界の2024年問題、競争激化、業界再編など年々厳しくなっている。こうしたなかで住設業界も、LIXIL<5938>など大手のほか中小零細のプレイヤーが乱立状態にあるところに、住設機器の(株)ハウステックを傘下に入れた小売大手のヤマダホールディングス<9831>が参入した。このため業界の再編圧力が高まり、トヨタ自動車<7203>とパナソニック ホールディングスが住宅子会社のため共同出資会社を立ち上げた。衛生陶器最大手で同社の仕入シェアが高いTOTOも事業を再編、半導体製造装置向けセラミック事業の成長に注力している。また、物流業界の2024年問題を機に、各メーカーは物流ヤードの縮小や営業所の統合など流通機能を縮小し、信頼関係のある全国規模の卸商社に機能を委ねる動きが出ている。さらに、建築基準法「4号特例」の縮小によって住宅建築の際に構造計算が必須となったため、これまで住宅全体の3分の1以上を供給してきたものの、構造計算する能力を持たない小規模工務店の廃業が増えている状況にある。
このような業界環境のなかで、同社は管材や環境・設備機材の品揃えを充実させる一方、取引先から要望の多い建材や電材、土木、産業機械といった商材、金属加工などのサービス、さらに海外対応など、事業領域を拡大している。加えて、物流の2024年問題絡みでは、在庫体制や即応体制など物流機能を強化することで、メーカー物流を積極的に引き受けていく方針だ。「4号特例」に関しては、タイで始めた積算・設計事業を生かし、工務店など取引先の構造計算業務などを代行していく。このように同社は、業界の課題を巧みに取り込んで収益化を図っている。
「四位一体」のバリューチェーンが強み
3. 同社の強み
近年、MonotaRO<3064>やアスクル<2678>、Amazon.comなどインターネット通販業態の成長が目覚ましい。建築資材全般を幅広く品揃えしていることから既存流通への侵食が懸念されたが、既存流通への影響は「一人親方」と呼ばれる個人経営の職人など一部にとどまっている。これは、インターネット通販業態が専門商材というよりMRO※を中心に究極のセルフ販売をしているのに対し、専門商社はプロである顧客に対し、幅広く深い品揃えの在庫、豊富な情報と的確な提案、効率的な発注と高頻度で利便性の高い配送を提供していることが理由だと考えられる。特に同社は、1次卸のなかでも品揃えやサービスなどが支持され、ほとんど影響を受けていないようだ。また、在庫の持ち方やコントロールも同社の強みである。競争が起こりにくい低単価品やトレンド商品などで在庫リスクを取ることで収益性の向上につなげるとともに、原材料価格の高騰など在庫リスクが取りづらい状況になった場合には、仕入価格や販売価格をコントロールすることで収益性の改善を図っている。
※ MRO(Maintenance, Repair and Operations):間接材。生産に直結する原材料・資材・部品など専門性の高い直接材以外を指し、建築資材業界以外でも広く使用される工具や消耗品などの経費購買品のこと。
同社は取引先に対し、専門商材を深掘りした品揃えばかりでなく、商品情報、地域~マクロ情報、人材の研修・教育などの充実したサービスを提供することで業界自体を育成し、設計段階から関与することで業界の発展に携わってきた。この結果、同社の流通は高付加価値化され、取引先との取り組みもより深いものとなり、メーカー、2次卸、ゼネコン、工事店・工務店と、川上から川下までが一体となった強固なバリューチェーンを構築した。これを同社は仕入先、販売店、工事店、同社による「四位一体」と呼んでおり、インターネット通販やホームセンターのみならず、2次卸や直営店で成長した競合先では持ち得ない強みとなっている。このほかにも、主要倉庫や各拠点で売れ筋を在庫していること、経営相談や後継者育成などのサポート、IT技術の導入支援なども強みである。特に、IT技術については積極的に自社開発しており、24時間365日注文や在庫検索ができる会員専用Webサイト「OPS(Online Partner System)」を運営しているほか、管材業界向けパッケージシステム「HOPE(HAT ORIGINAL PACKAGE)」や建築現場で必要となるカタログや図面などをWeb上から取り出すことができるWebカタログ「e設備ネット」を提供している。こうしたIT技術は、販売店運営の効率化に直結するため大変好評である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
<HN>
1. 取扱商品
橋本総業ホールディングス<7570>の取扱商品は、管類、継手類、バルブ類、化成品類、工具関連機材などの管材類をはじめ、便器・手洗器、洗面化粧台などの衛生陶器・金具類、給湯関連や厨房関連などの住宅設備機器類、各種エアコンや各種ポンプなどの空調機器・ポンプで、水回りのパイプやガス関連の商品が多い。主要な仕入先メーカーは住宅建材の積水化学工業<4204>や衛生陶器のTOTO<5332>、建材・電材のパナソニック ホールディングス<6752>、バルブのキッツ<6498>、エアコンのダイキン工業<6367>など、業界や日本を代表する大手有力メーカーが多く、販売店のみならずメーカーにとっても同社は流通の重要な要となっている。登録アイテム数は専門商材を中心に約250万点あり、主要倉庫で売れ筋を中心に常時約4万点の在庫を有するほか、各拠点でも地域に密着した商材の在庫を約1,000点取り揃え、一部は即日配送も行っている。なお、2026年3月期中間期のセグメント別売上高構成比は、管材類28.2%、衛生陶器・金具類26.8%、住宅設備機器類18.3%、空調機器・ポンプ25.3%、その他1.4%となっている。
需要は増しているが、厳しい市場環境
2. 業界環境
同社は建築資材業界、なかでも管材業界に属する。建設業界の市場規模は、新築・リフォームをあわせ76.7兆円、GDPの約12%を占めると言われ、管材業界の市場規模も管材と住宅設備機器、空調機器をあわせて5兆円と大きい。マンション販売やリフォームが堅調なほか、共働き世帯の増加に伴う保育施設や高齢化に伴う高齢者施設の増加、老朽化が課題となっている公共施設のリニューアルなど、需要は拡大している。このため、中長期的な管材業界の市場環境は、収益性、成長性ともに堅実と言える。そうした管材業界のなかで、同社は1次卸として、大手有力メーカーと全国の2次卸や工事店・工務店をつなぐ要となっている。
近年の市場環境は、労働力不足や世界情勢など外部環境の不安定化に加え、建設業界内でも新設住宅着工戸数の減少や諸制度の改正、建設・物流業界の2024年問題、競争激化、業界再編など年々厳しくなっている。こうしたなかで住設業界も、LIXIL<5938>など大手のほか中小零細のプレイヤーが乱立状態にあるところに、住設機器の(株)ハウステックを傘下に入れた小売大手のヤマダホールディングス<9831>が参入した。このため業界の再編圧力が高まり、トヨタ自動車<7203>とパナソニック ホールディングスが住宅子会社のため共同出資会社を立ち上げた。衛生陶器最大手で同社の仕入シェアが高いTOTOも事業を再編、半導体製造装置向けセラミック事業の成長に注力している。また、物流業界の2024年問題を機に、各メーカーは物流ヤードの縮小や営業所の統合など流通機能を縮小し、信頼関係のある全国規模の卸商社に機能を委ねる動きが出ている。さらに、建築基準法「4号特例」の縮小によって住宅建築の際に構造計算が必須となったため、これまで住宅全体の3分の1以上を供給してきたものの、構造計算する能力を持たない小規模工務店の廃業が増えている状況にある。
このような業界環境のなかで、同社は管材や環境・設備機材の品揃えを充実させる一方、取引先から要望の多い建材や電材、土木、産業機械といった商材、金属加工などのサービス、さらに海外対応など、事業領域を拡大している。加えて、物流の2024年問題絡みでは、在庫体制や即応体制など物流機能を強化することで、メーカー物流を積極的に引き受けていく方針だ。「4号特例」に関しては、タイで始めた積算・設計事業を生かし、工務店など取引先の構造計算業務などを代行していく。このように同社は、業界の課題を巧みに取り込んで収益化を図っている。
「四位一体」のバリューチェーンが強み
3. 同社の強み
近年、MonotaRO<3064>やアスクル<2678>、Amazon.comなどインターネット通販業態の成長が目覚ましい。建築資材全般を幅広く品揃えしていることから既存流通への侵食が懸念されたが、既存流通への影響は「一人親方」と呼ばれる個人経営の職人など一部にとどまっている。これは、インターネット通販業態が専門商材というよりMRO※を中心に究極のセルフ販売をしているのに対し、専門商社はプロである顧客に対し、幅広く深い品揃えの在庫、豊富な情報と的確な提案、効率的な発注と高頻度で利便性の高い配送を提供していることが理由だと考えられる。特に同社は、1次卸のなかでも品揃えやサービスなどが支持され、ほとんど影響を受けていないようだ。また、在庫の持ち方やコントロールも同社の強みである。競争が起こりにくい低単価品やトレンド商品などで在庫リスクを取ることで収益性の向上につなげるとともに、原材料価格の高騰など在庫リスクが取りづらい状況になった場合には、仕入価格や販売価格をコントロールすることで収益性の改善を図っている。
※ MRO(Maintenance, Repair and Operations):間接材。生産に直結する原材料・資材・部品など専門性の高い直接材以外を指し、建築資材業界以外でも広く使用される工具や消耗品などの経費購買品のこと。
同社は取引先に対し、専門商材を深掘りした品揃えばかりでなく、商品情報、地域~マクロ情報、人材の研修・教育などの充実したサービスを提供することで業界自体を育成し、設計段階から関与することで業界の発展に携わってきた。この結果、同社の流通は高付加価値化され、取引先との取り組みもより深いものとなり、メーカー、2次卸、ゼネコン、工事店・工務店と、川上から川下までが一体となった強固なバリューチェーンを構築した。これを同社は仕入先、販売店、工事店、同社による「四位一体」と呼んでおり、インターネット通販やホームセンターのみならず、2次卸や直営店で成長した競合先では持ち得ない強みとなっている。このほかにも、主要倉庫や各拠点で売れ筋を在庫していること、経営相談や後継者育成などのサポート、IT技術の導入支援なども強みである。特に、IT技術については積極的に自社開発しており、24時間365日注文や在庫検索ができる会員専用Webサイト「OPS(Online Partner System)」を運営しているほか、管材業界向けパッケージシステム「HOPE(HAT ORIGINAL PACKAGE)」や建築現場で必要となるカタログや図面などをWeb上から取り出すことができるWebカタログ「e設備ネット」を提供している。こうしたIT技術は、販売店運営の効率化に直結するため大変好評である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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