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上新電機 Research Memo(4):顧客のライフスタイルに寄り添う「コンシェルジュ」として付加価値創造(3)
配信日時:2025/12/01 11:04
配信元:FISCO
*11:04JST 上新電機 Research Memo(4):顧客のライフスタイルに寄り添う「コンシェルジュ」として付加価値創造(3)
■会社概要
(2) 商品カテゴリ別売上高
上新電機<8173>の2026年3月期中間期の商品カテゴリ別の売上高比率を見ると、テレビ、オーディオなどの映像・音響機器が8.4%、エアコンや冷蔵庫など白物家電を中心とした家電が40.7%、パソコンやその周辺機器、スマートフォンなどの情報通信機器が25.4%、その他が25.5%となっている。なお、その他で最大構成となっているのがゲーム・模型・玩具・楽器で、この点は他の家電量販店と異なるため注目に値する。家電市場が人口減少などにより中長期的に大きな成長を見込みにくいなか、各社ともに脱「家電販売専業」に動いており、最大手のヤマダホールディングスは家具や住宅市場などに範囲を広げ、エディオン<2730>はニトリホールディングス<9843>と資本業務提携し、エディオンの店舗でニトリの家具やインテリアを扱っている。競合他社が「家電と住宅」「家電と家具」といった日常生活分野で親和性のある事業戦略を進めるのに対し、同社はリフォームやエンターテインメントの「非家電分野」に対しても中長期的に積極的に取り組んでいる。エンターテインメント分野に関しては、大阪・日本橋の旗艦店では入り口付近にスマートフォンやデジタル家電の販売コーナーではなく、玩具やゲーム機、ボードゲームの売り場を展開している。「スーパーキッズランド」はガンダムなどのプラモデルや鉄道模型、ミニカーなどが揃う日本最大級の模型専門店で、模型に関する専門の販売員も揃えている。また、ゲーム機においても同社のインターネットショップを訪問すれば何でも欲しいゲームが手に入り、消費者の認知度も向上している。なお、国内玩具市場は若年層の人口減少にも関わらず近年拡大基調にあるが、これはカードゲーム・トレーディングカード市場の急拡大が背景にある。同社でもトレーディングカードを取り扱っており、ゲーム機に続いてエンターテインメント分野の主力製品の1つとなっている。
弊社ではこのようなエンターテインメント分野の商材の取り扱いの強化や、大阪・日本橋のような他の家電量販店にはない思い切った店舗運営は顧客ロイヤルティの創造という観点で大変意義が深いと考える。「家電を単に仕入れて販売する」という従来型のビジネスモデルではECとの価格競争に陥り差別化が見込みにくいなか、家電だけでなくエンターテインメント分野の売り場づくりによって顧客の来店を促し、体験型も含めた地域密着の多彩なイベントを開催して同社に継続的に来店・販売員を指名するファンを作ることが長期的な顧客ロイヤルティの向上につながる。それに加えて、他の家電量販店が真似できない充実したアフターサービス体制の構築により、無形資産としての付加価値の創造が可能となる。ただし、同社では現状においてエンターテインメントの顧客が家電販売にリンクしにくい状態であり、今後はエンターテインメント分野で同社のファンとなった顧客を家電販売に誘導できる仕組みづくりのほか、その目標値や進捗をKPIとして対外的に開示することを期待したい。
(3) 出店戦略
同社では関西・東海・関東・北信越エリアを重点エリアと位置付け、ドミナント戦略を推進してきた。ドミナント戦略とは、新規出店による店舗数の拡大ではなく、既存店のスクラップアンドビルドも含めた1店舗当たりの販売力強化に加え、EC事業、サービスインフラとのシナジー効果を最大限に引き出す経済圏の創出を目指すものである。同社は業界第7位のポジションにあり、国内におけるシェアは約7.9%、売上高が最も大きい関西エリアにおいては約20%のシェアを有している。今後、関西エリアでもさらなるシェア引き上げ余地があることに加え、それを足掛かりに他地域でのシェア拡大も中長期的な目線で進める構えだ。
2026年3月期中間期末の家電量販店8社の単純合算店舗数は2025年3月期末から減少に転じた。都心部の駅前に立地する事業者は主要ターゲットであるオフィスワーカーの情報家電に対する需要伸び悩みを背景としてファミリー層の需要を取り込むべく郊外に出店、一方で郊外における好立地の減少などから主に郊外幹線道路沿いに立地する事業者が都心部に出店するなど、オーバーストア気味になった影響で、家電量販店各社は過去に出店競争をしていた時期と比べると新規出店を抑制し、スクラップアンドビルド中心の店舗展開をしていることが背景にあると見られる。
一方、同社は大半が直営店での展開となっているが、直営店舗数は2022年3月期以降、減少基調にある。人口減少が進むなか、やみくもに店舗数を拡大しても、従業員が確保できなければ結果的に接客品質を落とすことになり、投下資本に対するリターンの確保が難しいことが背景にあった。一方、直営店1店舗当たり実店舗売上高(EC売上高を除く)はコロナ禍での白物家電特需のあった2021年3月期を除くと緩やかな拡大基調となっており、これは無理な出店戦略を取らずに、既存店での接客力の強化により重点を置いた成果と見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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(2) 商品カテゴリ別売上高
上新電機<8173>の2026年3月期中間期の商品カテゴリ別の売上高比率を見ると、テレビ、オーディオなどの映像・音響機器が8.4%、エアコンや冷蔵庫など白物家電を中心とした家電が40.7%、パソコンやその周辺機器、スマートフォンなどの情報通信機器が25.4%、その他が25.5%となっている。なお、その他で最大構成となっているのがゲーム・模型・玩具・楽器で、この点は他の家電量販店と異なるため注目に値する。家電市場が人口減少などにより中長期的に大きな成長を見込みにくいなか、各社ともに脱「家電販売専業」に動いており、最大手のヤマダホールディングスは家具や住宅市場などに範囲を広げ、エディオン<2730>はニトリホールディングス<9843>と資本業務提携し、エディオンの店舗でニトリの家具やインテリアを扱っている。競合他社が「家電と住宅」「家電と家具」といった日常生活分野で親和性のある事業戦略を進めるのに対し、同社はリフォームやエンターテインメントの「非家電分野」に対しても中長期的に積極的に取り組んでいる。エンターテインメント分野に関しては、大阪・日本橋の旗艦店では入り口付近にスマートフォンやデジタル家電の販売コーナーではなく、玩具やゲーム機、ボードゲームの売り場を展開している。「スーパーキッズランド」はガンダムなどのプラモデルや鉄道模型、ミニカーなどが揃う日本最大級の模型専門店で、模型に関する専門の販売員も揃えている。また、ゲーム機においても同社のインターネットショップを訪問すれば何でも欲しいゲームが手に入り、消費者の認知度も向上している。なお、国内玩具市場は若年層の人口減少にも関わらず近年拡大基調にあるが、これはカードゲーム・トレーディングカード市場の急拡大が背景にある。同社でもトレーディングカードを取り扱っており、ゲーム機に続いてエンターテインメント分野の主力製品の1つとなっている。
弊社ではこのようなエンターテインメント分野の商材の取り扱いの強化や、大阪・日本橋のような他の家電量販店にはない思い切った店舗運営は顧客ロイヤルティの創造という観点で大変意義が深いと考える。「家電を単に仕入れて販売する」という従来型のビジネスモデルではECとの価格競争に陥り差別化が見込みにくいなか、家電だけでなくエンターテインメント分野の売り場づくりによって顧客の来店を促し、体験型も含めた地域密着の多彩なイベントを開催して同社に継続的に来店・販売員を指名するファンを作ることが長期的な顧客ロイヤルティの向上につながる。それに加えて、他の家電量販店が真似できない充実したアフターサービス体制の構築により、無形資産としての付加価値の創造が可能となる。ただし、同社では現状においてエンターテインメントの顧客が家電販売にリンクしにくい状態であり、今後はエンターテインメント分野で同社のファンとなった顧客を家電販売に誘導できる仕組みづくりのほか、その目標値や進捗をKPIとして対外的に開示することを期待したい。
(3) 出店戦略
同社では関西・東海・関東・北信越エリアを重点エリアと位置付け、ドミナント戦略を推進してきた。ドミナント戦略とは、新規出店による店舗数の拡大ではなく、既存店のスクラップアンドビルドも含めた1店舗当たりの販売力強化に加え、EC事業、サービスインフラとのシナジー効果を最大限に引き出す経済圏の創出を目指すものである。同社は業界第7位のポジションにあり、国内におけるシェアは約7.9%、売上高が最も大きい関西エリアにおいては約20%のシェアを有している。今後、関西エリアでもさらなるシェア引き上げ余地があることに加え、それを足掛かりに他地域でのシェア拡大も中長期的な目線で進める構えだ。
2026年3月期中間期末の家電量販店8社の単純合算店舗数は2025年3月期末から減少に転じた。都心部の駅前に立地する事業者は主要ターゲットであるオフィスワーカーの情報家電に対する需要伸び悩みを背景としてファミリー層の需要を取り込むべく郊外に出店、一方で郊外における好立地の減少などから主に郊外幹線道路沿いに立地する事業者が都心部に出店するなど、オーバーストア気味になった影響で、家電量販店各社は過去に出店競争をしていた時期と比べると新規出店を抑制し、スクラップアンドビルド中心の店舗展開をしていることが背景にあると見られる。
一方、同社は大半が直営店での展開となっているが、直営店舗数は2022年3月期以降、減少基調にある。人口減少が進むなか、やみくもに店舗数を拡大しても、従業員が確保できなければ結果的に接客品質を落とすことになり、投下資本に対するリターンの確保が難しいことが背景にあった。一方、直営店1店舗当たり実店舗売上高(EC売上高を除く)はコロナ禍での白物家電特需のあった2021年3月期を除くと緩やかな拡大基調となっており、これは無理な出店戦略を取らずに、既存店での接客力の強化により重点を置いた成果と見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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