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井関農 Research Memo(7):米価上昇を機に国内農機関連が急拡大
配信日時:2025/10/20 12:07
配信元:FISCO
*12:07JST 井関農 Research Memo(7):米価上昇を機に国内農機関連が急拡大
■井関農機<6310>の業績動向
1. 2025年12月期中間期の業績概要
2025年12月期中間期の業績は、売上高が100,868百万円(前年同期比10.7%増)、営業利益が4,356百万円(同97.1%増)、経常利益が3,792百万円(同53.6%増)、親会社株主に帰属する中間純利益が3,273百万円(前年同期は644百万円の損失)となった。通期業績予想に対する進捗率は売上高で59.2%、営業利益で167.5%と、上期偏重とはいえ前期の54.1%、115.1%と比べて高くなったことから、通期業績予想を上方修正した。なお、主に固定資産売却益の計上と前年同期に発生した構造改革に伴う減損損失がなくなったことで、親会社株主に帰属する中間純利益の増益幅が大きくなった。
日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続いた。一方で、米国関税政策の変化や地政学リスクの継続、物価上昇による景気下押しリスクなど、先行きは依然として不透明な状況にあった。国内の市場動向については、2021年以降の米価下落や生産資材費高騰により農家の農機への購買意欲は減退し続けていたが、2024年6月以降、減反政策のなかインバウンド向けなど需要が増加したことを背景に米価が急上昇、2025年は新米概算金が高値となるなど、米価は一定以上の水準を維持する見込みとなった。このため2025年は、農家の主食用米作付意向が大きく拡大、過去5年間で最大の生産量となる見込みだ。足元では、農政も需給ギャップの反転を中長期的なトレンド変化と捉え、実質的に減反から、需要に応じた生産へと舵を切った。こうした状況は、「大型」「先端」「畑作」「環境」という成長戦略を進める同社の戦略とマッチしており、国内では成長市場に経営資源を集中させ、海外では主力市場の需要を着実に捉えることで、収益性向上と事業拡大の同時進行を図った。
この結果、国内の売上高が、原価高騰に対応した2025年7月の価格改定による前倒し需要を含め農機製品が大きく伸びて65,840百万円(前年同期比20.0%増)となり、為替影響もあって35,027百万円(同3.4%減)にとどまった海外売上高をカバー、全体で2ケタの増収を達成した。利益面では、2022年以降毎年続けてきた価格改定の効果は顕在化したものの、農機製品が大きく伸びたことによるミックス変化の影響などにより売上総利益率は低下した。一方、増収効果に加え構造改革を背景に販管費の伸びを抑制できたため、販管費率は大きく改善した。
なお、プロジェクトZの効果については、合併や生産移管など一時費用の発生により、1億円と少額だったものの、一時費用は2025年のみ発生する見込みのため、効果は2027年12月期へ向けて時間とともに広がる見込みだ。コストダウンについては、変動費の削減や設計段階からの見直しなどを通じ、今後一層本格化する見通しである。なお、営業外損益は為替差益が為替差損に転じたため経常利益の伸びが低くなったが、特別損益で熊本地区の不動産売却に伴う固定資産売却益が発生し、前年同期の構造改革に伴う減損損失(熊本)がなくなったことなどから、親会社株主に帰属する中間純損益は大幅な増益となり黒字転換した。
国内大幅増収、海外は堅調維持
2. セグメントの状況
エリア別では、国内で大幅増収、海外は主戦場の欧州で為替影響による悪化はあるものの堅調を維持した。
国内の農機製品は、前述のとおり、米価上昇を背景に農家の投資意欲の高まりが続いたこと、さらに7月の価格改定を前にした駆け込み需要もあって、大幅な増収となった。なかでも機械の買い替え投資が多く、トラクタや耕うん機など整地用機械、田植機や野菜移植機といった栽培用機械、コンバインなど収穫調製用機械、ロータリーなど作業機が軒並み大きく伸びた。なお、駆け込み需要の反動については、2025年産新米価格の動向から投資意欲がさらに高まっていることなどから、会社想定より大きくないようだ。一方、収支構造改革の柱である補修用部品・修理整備などのメンテナンス収入が着実に伸長しており、大型物件の完工があった施設工事は政府による共同利用施設の再編集約・合理化支援もありベースとして堅調な動きである。
海外は、欧州が現地通貨ベースでは増収となったものの為替影響で減収、米国は市場環境の悪化で減収、アジアは大幅な増収となった。欧州については、一部地域で高温・少雨の影響はあったが、物価上昇が一段落して需要が回復傾向となり、小売店の在庫レベルも調整が進んで資金繰りが改善してきたため、今後の販売増が期待される。ドイツでは前年の仕入れ商材における特需が剥落したものの、フランスで顧客ニーズを捉えて投入した電動新商材の販売が堅調に推移し、加えてイギリスPTC社の連結化によって物流や在庫一元管理の面でシナジーも発揮しつつある。北米の減収は、一部で米国関税問題の影響があるかもしれないが、コロナ禍で急増したコンパクトトラクタの需要一巡による市場の弱含みが要因だ。アジアは韓国とインドネシアが2ケタ増収をけん引した。韓国は、在庫調整が完了したことで輸入を再開できるようになったため、販売代理店が展示会を開催するなど販促策を強化した。大規模農業の進展に伴い、大型機械へのニーズは引き続き強いようだ。インドネシアは、食料安全保障や自給率の改善へと農業政策が見直されるなか、同社工場がインドネシアにある地の利を生かし、増加する政府・地方の入札を着実に確保できた。一方タイは、稲作市場とサトウキビ市場がともに低迷するなど厳しい環境にあったが、新製品投入や品揃え拡大など外部環境の影響を受けにくい法人向け営業を強化した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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1. 2025年12月期中間期の業績概要
2025年12月期中間期の業績は、売上高が100,868百万円(前年同期比10.7%増)、営業利益が4,356百万円(同97.1%増)、経常利益が3,792百万円(同53.6%増)、親会社株主に帰属する中間純利益が3,273百万円(前年同期は644百万円の損失)となった。通期業績予想に対する進捗率は売上高で59.2%、営業利益で167.5%と、上期偏重とはいえ前期の54.1%、115.1%と比べて高くなったことから、通期業績予想を上方修正した。なお、主に固定資産売却益の計上と前年同期に発生した構造改革に伴う減損損失がなくなったことで、親会社株主に帰属する中間純利益の増益幅が大きくなった。
日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続いた。一方で、米国関税政策の変化や地政学リスクの継続、物価上昇による景気下押しリスクなど、先行きは依然として不透明な状況にあった。国内の市場動向については、2021年以降の米価下落や生産資材費高騰により農家の農機への購買意欲は減退し続けていたが、2024年6月以降、減反政策のなかインバウンド向けなど需要が増加したことを背景に米価が急上昇、2025年は新米概算金が高値となるなど、米価は一定以上の水準を維持する見込みとなった。このため2025年は、農家の主食用米作付意向が大きく拡大、過去5年間で最大の生産量となる見込みだ。足元では、農政も需給ギャップの反転を中長期的なトレンド変化と捉え、実質的に減反から、需要に応じた生産へと舵を切った。こうした状況は、「大型」「先端」「畑作」「環境」という成長戦略を進める同社の戦略とマッチしており、国内では成長市場に経営資源を集中させ、海外では主力市場の需要を着実に捉えることで、収益性向上と事業拡大の同時進行を図った。
この結果、国内の売上高が、原価高騰に対応した2025年7月の価格改定による前倒し需要を含め農機製品が大きく伸びて65,840百万円(前年同期比20.0%増)となり、為替影響もあって35,027百万円(同3.4%減)にとどまった海外売上高をカバー、全体で2ケタの増収を達成した。利益面では、2022年以降毎年続けてきた価格改定の効果は顕在化したものの、農機製品が大きく伸びたことによるミックス変化の影響などにより売上総利益率は低下した。一方、増収効果に加え構造改革を背景に販管費の伸びを抑制できたため、販管費率は大きく改善した。
なお、プロジェクトZの効果については、合併や生産移管など一時費用の発生により、1億円と少額だったものの、一時費用は2025年のみ発生する見込みのため、効果は2027年12月期へ向けて時間とともに広がる見込みだ。コストダウンについては、変動費の削減や設計段階からの見直しなどを通じ、今後一層本格化する見通しである。なお、営業外損益は為替差益が為替差損に転じたため経常利益の伸びが低くなったが、特別損益で熊本地区の不動産売却に伴う固定資産売却益が発生し、前年同期の構造改革に伴う減損損失(熊本)がなくなったことなどから、親会社株主に帰属する中間純損益は大幅な増益となり黒字転換した。
国内大幅増収、海外は堅調維持
2. セグメントの状況
エリア別では、国内で大幅増収、海外は主戦場の欧州で為替影響による悪化はあるものの堅調を維持した。
国内の農機製品は、前述のとおり、米価上昇を背景に農家の投資意欲の高まりが続いたこと、さらに7月の価格改定を前にした駆け込み需要もあって、大幅な増収となった。なかでも機械の買い替え投資が多く、トラクタや耕うん機など整地用機械、田植機や野菜移植機といった栽培用機械、コンバインなど収穫調製用機械、ロータリーなど作業機が軒並み大きく伸びた。なお、駆け込み需要の反動については、2025年産新米価格の動向から投資意欲がさらに高まっていることなどから、会社想定より大きくないようだ。一方、収支構造改革の柱である補修用部品・修理整備などのメンテナンス収入が着実に伸長しており、大型物件の完工があった施設工事は政府による共同利用施設の再編集約・合理化支援もありベースとして堅調な動きである。
海外は、欧州が現地通貨ベースでは増収となったものの為替影響で減収、米国は市場環境の悪化で減収、アジアは大幅な増収となった。欧州については、一部地域で高温・少雨の影響はあったが、物価上昇が一段落して需要が回復傾向となり、小売店の在庫レベルも調整が進んで資金繰りが改善してきたため、今後の販売増が期待される。ドイツでは前年の仕入れ商材における特需が剥落したものの、フランスで顧客ニーズを捉えて投入した電動新商材の販売が堅調に推移し、加えてイギリスPTC社の連結化によって物流や在庫一元管理の面でシナジーも発揮しつつある。北米の減収は、一部で米国関税問題の影響があるかもしれないが、コロナ禍で急増したコンパクトトラクタの需要一巡による市場の弱含みが要因だ。アジアは韓国とインドネシアが2ケタ増収をけん引した。韓国は、在庫調整が完了したことで輸入を再開できるようになったため、販売代理店が展示会を開催するなど販促策を強化した。大規模農業の進展に伴い、大型機械へのニーズは引き続き強いようだ。インドネシアは、食料安全保障や自給率の改善へと農業政策が見直されるなか、同社工場がインドネシアにある地の利を生かし、増加する政府・地方の入札を着実に確保できた。一方タイは、稲作市場とサトウキビ市場がともに低迷するなど厳しい環境にあったが、新製品投入や品揃え拡大など外部環境の影響を受けにくい法人向け営業を強化した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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