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井関農 Research Memo(5):2027年12月期までに75億円以上の営業利益を積み上げる
配信日時:2025/10/20 12:05
配信元:FISCO
*12:05JST 井関農 Research Memo(5):2027年12月期までに75億円以上の営業利益を積み上げる
■井関農機<6310>の中期経営計画
1. プロジェクトZ
同社は、2021年2月に2025年12月期を最終年度とする中期経営計画を策定したが、資産効率と収益性向上を目的とした事業構造改革への取り組みが不十分だったため、途上の2023年11月に聖域なき事業構造改革に向けて「プロジェクトZ」をスタートし、資産効率と収益性の向上を加速させている。具体的には、強靭な企業体質へ生まれ変わるために、製造所再編を中心とした生産をゼロから見直す「生産最適化」、設計をゼロから見直す「開発最適化」、売り方やサービスの提供方法をゼロから見直す「国内営業深化」という3つの抜本的構造改革と経費削減を実行している。さらに海外では地域別戦略を展開し、国内では「大型」「先端」「畑作」「環境」といった成長セグメントに経営資源を集中して成長を加速する計画だ。
特にプロジェクトZ立ち上げ期の2024年12月期から2025年12月期において抜本的構造改革を短期集中で実施すると同時に成長戦略に取り組むことで、2027年12月期までに2023年12月期比で75億円以上の営業利益を積み上げ、営業利益率5%以上、ROE8%以上、DOE2%以上、PBR1倍以上の実現を目指している。さらに、2030年に「食と農と大地のソリューションカンパニー」になるという長期ビジョンを掲げ、2024年12月期~2027年12月期の4年間で累計500億円、2028年12月期~2030年12月期の3年間で累計520億円の営業キャッシュ・フローを創出する計画だ。2027年12月期は、抜本的構造改革や成長に向けた投資を行うため株主還元としてDOE2%以上を想定しているが、2028年12月期以降は、創出したキャッシュをさらなる株主還元の拡充に充当するほか、有利子負債の圧縮に振り向ける。これらにより、2030年12月期に海外で2023年12月期比約1.5倍の売上高を確保し、国内では成長分野にフォーカスした収益性の高い体制の構築を図る。加えて、PBR1倍以上を実現するため、プロジェクトZによる業績改善と並行して、株主還元の拡充、投資家との接点拡大、情報開示の強化、経営のスリム化、意思決定の迅速化、ガバナンス体制の強化なども推進する。
抜本的構造改革と成長戦略で成長を目指す
2. 構造改革と成長戦略
(1) 抜本的構造改革
生産最適化では、効率化と平準化を進めて生産性を向上するため、製品組み立て拠点を集約して棚卸資産と固定資産の圧縮を実行する。既に2024年7月に井関松山製造所と井関熊本製造所を経営統合※し、これまで井関熊本製造所で生産していたコンバイン、続けて井関新潟製造所で生産していた田植機の生産を井関松山製造所に移管する。また、油圧機器の生産を井関松山製造所から井関新潟製造所に移管、松山製造所で生産していた中小型トラクタなど海外向け製品の生産をPT.ISEKI INDONESIAへ移管する。こうした製造拠点の集約と海外生産拠点の増強を2030年までに完了する計画だ。開発最適化では、開発の効率化と製品利益率の改善を目的に、成長率と市場規模の2つの軸によって開発する機種・型式を30%以上削減するとともに、グローバル共通設計の強化を図る。需要が減少傾向にある小規模農家向けに関しては、製品の安定供給を目的に、ヤンマーアグリ(株)との間で、山間地や小規模区画向けの小型農業機械を相互にOEM供給するアライアンスを締結した。なお、生産最適化と開発最適化による営業利益の増益効果として、2027年12月期までに約35億円(2023年12月期比)を見込んでいる。
※ 経営統合後の新社名をISEKI M&Dとし、井関熊本製造所での生産は2025年12月期末に終了する予定。
国内営業深化では、在庫拠点の最適化や物流体制の見直しによる経営効率の向上、ノウハウ共有の強化による顧客拡大と提案力強化などを目的に、国内広域販売会社の経営統合を行った※。販売会社統合に伴うコスト削減などにより、2027年12月期までに15億円程度(2023年12月期比)の営業利益の創出を見込む。こうした経営統合のなかで目玉となるのが、農業の大規模化に対応するための専門部署として新設された「大規模企画室」で、効率化とシナジー創出の加速による成長戦略の基盤づくりを目的としている。経費削減では、抜本的構造改革と並行して、間接部門のスリム化や希望退職の募集などにより人員構成の最適化を図る。また、成長分野への人材配置や市場競争力を高めるための教育研修の充実など、人的資本投資も進めている。組織や業務の統合も進め、運営経費を徹底して削減する予定だ。一方で、ワークライフバランスの充実やダイバーシティの確保などにより、従業員のエンゲージメント向上を図る。人員構成の最適化と人的資本投資により、2027年12月期までにネット10億円程度(2023年12月期比。3つの抜本的構造改革の内数)、経費削減により10億円程度(同)の営業利益の創出を見込んでいる。
※ 2025年1月に、ヰセキ北海道、(株)ヰセキ東北、(株)ヰセキ関東甲信越、(株)ヰセキ関西中部、(株)ヰセキ中四国、(株)ヰセキ九州の国内販売会社6社及び三重ヰセキ販売(株)、井関農機営業本部を統合し、ISEKI Japanに社名を変更した。
(2) 成長戦略
海外では地域別戦略と商品戦略を推進し、特に収益性・成長性の高い欧州市場をけん引役に業績を拡大し、2030年12月期までに売上高800億円、売上高の年平均成長率10%、営業利益の年平均成長率20%の達成を目指す。なかでも景観整備市場においてNo.1ブランドとしての地位を確立した欧州に経営資源を集中し、ラインナップの拡充、在庫の一元管理、多様な人材交流を図り、2030年12月期までに欧州の売上高400億円超の達成を目指す。さらに、欧州を軸に相対的にシェアが低いあるいは未開拓の周辺市場への進出を進めるが、現地代理店などのM&Aも検討する。北米では、地域特性に応じた商品供給などにより、グローバル戦略パートナーであるAGCOのシェアアップを図る。アジアでは、タイから周辺国への拡大を図るとともに、東アジア地域でもニーズが強い先端技術や大型農機などを提供していく。こうした戦略によって、海外では2027年12月期までに10億円程度(2023年12月期比)の営業利益を上乗せする考えだ。
国内では、成長分野でニーズの強い「大型」「先端」「畑作」「環境」へ経営資源を集中して販売を伸ばすとともに、ノウハウの共有によってメンテナンスなど高収益事業を拡大し、中長期的に安定した利益を確保する計画だ。そのためにグループの強みと経営資源を生かし、ロボットトラクタやアイガモロボ、可変施肥田植機など「大型」「先端」「畑作」「環境」に対応した付加価値の高い農業ソリューションを提供していく。同時に大規模企画室の強化や大型農機・畑作酪農に強い人材の育成などによって、大規模農業におけるニーズに迅速に対応できる体制を構築・強化する。これにより、2027年12月期までの営業利益創出効果として5億円程度(2023年12月期比)を見込む。さらに、2030年までに同社製品売上高に占める大型機種の割合を50%以上に高めるほか、先端技術を取り入れた商品の売上高を年平均7.9%で成長させることも計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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1. プロジェクトZ
同社は、2021年2月に2025年12月期を最終年度とする中期経営計画を策定したが、資産効率と収益性向上を目的とした事業構造改革への取り組みが不十分だったため、途上の2023年11月に聖域なき事業構造改革に向けて「プロジェクトZ」をスタートし、資産効率と収益性の向上を加速させている。具体的には、強靭な企業体質へ生まれ変わるために、製造所再編を中心とした生産をゼロから見直す「生産最適化」、設計をゼロから見直す「開発最適化」、売り方やサービスの提供方法をゼロから見直す「国内営業深化」という3つの抜本的構造改革と経費削減を実行している。さらに海外では地域別戦略を展開し、国内では「大型」「先端」「畑作」「環境」といった成長セグメントに経営資源を集中して成長を加速する計画だ。
特にプロジェクトZ立ち上げ期の2024年12月期から2025年12月期において抜本的構造改革を短期集中で実施すると同時に成長戦略に取り組むことで、2027年12月期までに2023年12月期比で75億円以上の営業利益を積み上げ、営業利益率5%以上、ROE8%以上、DOE2%以上、PBR1倍以上の実現を目指している。さらに、2030年に「食と農と大地のソリューションカンパニー」になるという長期ビジョンを掲げ、2024年12月期~2027年12月期の4年間で累計500億円、2028年12月期~2030年12月期の3年間で累計520億円の営業キャッシュ・フローを創出する計画だ。2027年12月期は、抜本的構造改革や成長に向けた投資を行うため株主還元としてDOE2%以上を想定しているが、2028年12月期以降は、創出したキャッシュをさらなる株主還元の拡充に充当するほか、有利子負債の圧縮に振り向ける。これらにより、2030年12月期に海外で2023年12月期比約1.5倍の売上高を確保し、国内では成長分野にフォーカスした収益性の高い体制の構築を図る。加えて、PBR1倍以上を実現するため、プロジェクトZによる業績改善と並行して、株主還元の拡充、投資家との接点拡大、情報開示の強化、経営のスリム化、意思決定の迅速化、ガバナンス体制の強化なども推進する。
抜本的構造改革と成長戦略で成長を目指す
2. 構造改革と成長戦略
(1) 抜本的構造改革
生産最適化では、効率化と平準化を進めて生産性を向上するため、製品組み立て拠点を集約して棚卸資産と固定資産の圧縮を実行する。既に2024年7月に井関松山製造所と井関熊本製造所を経営統合※し、これまで井関熊本製造所で生産していたコンバイン、続けて井関新潟製造所で生産していた田植機の生産を井関松山製造所に移管する。また、油圧機器の生産を井関松山製造所から井関新潟製造所に移管、松山製造所で生産していた中小型トラクタなど海外向け製品の生産をPT.ISEKI INDONESIAへ移管する。こうした製造拠点の集約と海外生産拠点の増強を2030年までに完了する計画だ。開発最適化では、開発の効率化と製品利益率の改善を目的に、成長率と市場規模の2つの軸によって開発する機種・型式を30%以上削減するとともに、グローバル共通設計の強化を図る。需要が減少傾向にある小規模農家向けに関しては、製品の安定供給を目的に、ヤンマーアグリ(株)との間で、山間地や小規模区画向けの小型農業機械を相互にOEM供給するアライアンスを締結した。なお、生産最適化と開発最適化による営業利益の増益効果として、2027年12月期までに約35億円(2023年12月期比)を見込んでいる。
※ 経営統合後の新社名をISEKI M&Dとし、井関熊本製造所での生産は2025年12月期末に終了する予定。
国内営業深化では、在庫拠点の最適化や物流体制の見直しによる経営効率の向上、ノウハウ共有の強化による顧客拡大と提案力強化などを目的に、国内広域販売会社の経営統合を行った※。販売会社統合に伴うコスト削減などにより、2027年12月期までに15億円程度(2023年12月期比)の営業利益の創出を見込む。こうした経営統合のなかで目玉となるのが、農業の大規模化に対応するための専門部署として新設された「大規模企画室」で、効率化とシナジー創出の加速による成長戦略の基盤づくりを目的としている。経費削減では、抜本的構造改革と並行して、間接部門のスリム化や希望退職の募集などにより人員構成の最適化を図る。また、成長分野への人材配置や市場競争力を高めるための教育研修の充実など、人的資本投資も進めている。組織や業務の統合も進め、運営経費を徹底して削減する予定だ。一方で、ワークライフバランスの充実やダイバーシティの確保などにより、従業員のエンゲージメント向上を図る。人員構成の最適化と人的資本投資により、2027年12月期までにネット10億円程度(2023年12月期比。3つの抜本的構造改革の内数)、経費削減により10億円程度(同)の営業利益の創出を見込んでいる。
※ 2025年1月に、ヰセキ北海道、(株)ヰセキ東北、(株)ヰセキ関東甲信越、(株)ヰセキ関西中部、(株)ヰセキ中四国、(株)ヰセキ九州の国内販売会社6社及び三重ヰセキ販売(株)、井関農機営業本部を統合し、ISEKI Japanに社名を変更した。
(2) 成長戦略
海外では地域別戦略と商品戦略を推進し、特に収益性・成長性の高い欧州市場をけん引役に業績を拡大し、2030年12月期までに売上高800億円、売上高の年平均成長率10%、営業利益の年平均成長率20%の達成を目指す。なかでも景観整備市場においてNo.1ブランドとしての地位を確立した欧州に経営資源を集中し、ラインナップの拡充、在庫の一元管理、多様な人材交流を図り、2030年12月期までに欧州の売上高400億円超の達成を目指す。さらに、欧州を軸に相対的にシェアが低いあるいは未開拓の周辺市場への進出を進めるが、現地代理店などのM&Aも検討する。北米では、地域特性に応じた商品供給などにより、グローバル戦略パートナーであるAGCOのシェアアップを図る。アジアでは、タイから周辺国への拡大を図るとともに、東アジア地域でもニーズが強い先端技術や大型農機などを提供していく。こうした戦略によって、海外では2027年12月期までに10億円程度(2023年12月期比)の営業利益を上乗せする考えだ。
国内では、成長分野でニーズの強い「大型」「先端」「畑作」「環境」へ経営資源を集中して販売を伸ばすとともに、ノウハウの共有によってメンテナンスなど高収益事業を拡大し、中長期的に安定した利益を確保する計画だ。そのためにグループの強みと経営資源を生かし、ロボットトラクタやアイガモロボ、可変施肥田植機など「大型」「先端」「畑作」「環境」に対応した付加価値の高い農業ソリューションを提供していく。同時に大規模企画室の強化や大型農機・畑作酪農に強い人材の育成などによって、大規模農業におけるニーズに迅速に対応できる体制を構築・強化する。これにより、2027年12月期までの営業利益創出効果として5億円程度(2023年12月期比)を見込む。さらに、2030年までに同社製品売上高に占める大型機種の割合を50%以上に高めるほか、先端技術を取り入れた商品の売上高を年平均7.9%で成長させることも計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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