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NYの視点:米7月ISM非製造業景況指数は予想外に低下、コスト上昇で企業は投資に慎重
配信日時:2025/08/06 07:45
配信元:FISCO
*07:45JST NYの視点:米7月ISM非製造業景況指数は予想外に低下、コスト上昇で企業は投資に慎重
米供給管理協会(ISM)が発表した7月ISM非製造業景況指数は50.1となった。6月50.8から上昇予想に反し低下した。重要項目となる新規受注は50.3と、51.3から低下した。ただ、2カ月連続で活動拡大域となる50を上回った。雇用項目は46.4と、47.2からさらに低下し3月来の低水準。2カ月連続で活動縮小域となった。米経済の7割を消費が占めるため、同指数の低下は成長減速の可能性を示唆する。
コストの上昇や需要の鈍化が明らかになった。トランプ関税発動前に高関税を回避すべく売り上げが大幅に伸びたのち、経済への不透明感に企業は受注に消極的となっている。
仕入れ価格は69.9と、6月67.5から低下予想に反し上昇し、22年10月来で最高。設備、部品が全体コスト指数を押し上げ。一部の企業はコストの上昇を理由にプロジェクトを延期している。コストの上昇で、企業は利益率の低下を警戒し、今後さらに新規雇用や投資を控える可能性がある。
■米7月ISM非製造業景況指数:50.1(6月50.8)
仕入れ価格:69.9(67.5)
新規受注:50.3(51.3)
受注残:44.3(42.4)
入荷遅延:51.0(50.3)
在庫:51.8(52.7)
雇用:46.4(47.2)
新規輸出受注:47.9(51.1)
輸入:45.9(51.7)
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コストの上昇や需要の鈍化が明らかになった。トランプ関税発動前に高関税を回避すべく売り上げが大幅に伸びたのち、経済への不透明感に企業は受注に消極的となっている。
仕入れ価格は69.9と、6月67.5から低下予想に反し上昇し、22年10月来で最高。設備、部品が全体コスト指数を押し上げ。一部の企業はコストの上昇を理由にプロジェクトを延期している。コストの上昇で、企業は利益率の低下を警戒し、今後さらに新規雇用や投資を控える可能性がある。
■米7月ISM非製造業景況指数:50.1(6月50.8)
仕入れ価格:69.9(67.5)
新規受注:50.3(51.3)
受注残:44.3(42.4)
入荷遅延:51.0(50.3)
在庫:51.8(52.7)
雇用:46.4(47.2)
新規輸出受注:47.9(51.1)
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日本はマイナス金利、金が上昇しやすい環境 サンワード証券の陳氏
*17:26JST 日本はマイナス金利、金が上昇しやすい環境 サンワード証券の陳氏
皆さん、こんにちは。今回は、金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『日本はマイナス金利、金が上昇しやすい環境』と述べています。続けて、『先週のNY金(12月)は、雇用統計の予想以上の悪化を受けて、週末に反発した』と伝えています。また、『米連邦準備理事会(FRB)が29、30日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通りに政策金利は据え置きとなった』とし、『パウエルFRB議長は記者会見で、「9月について何も決定していない」と述べ、政策変更に慎重な姿勢を維持した。さらに、米国の経済指標は強く、FRBの利下げ見送りを支援する内容だった。第2四半期米実質GDPは前期から急回復し、2期ぶりにプラス成長となった。6月米個人支出(PCE)物価指数はFRBの物価目標である2.0%を依然として上回っていた』と解説しています。しかし、『7月雇用統計が予想以上に悪化した。雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比7.3万人増と市場予想の11万人増を大幅に下回った。5月と6月の就業者数も大幅に下方修正され、直近3カ月の平均は月3.5万人増と、コロナ禍以降で最低水準となった。金融引き締め継続やトランプ政権の高関税政策の影響で、米経済が急激に冷え込んでいるとの懸念が高まった』と述べています。一方で、『日銀は30、31日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%に据え置いた。植田総裁は記者会見で「インフレ率の上方修正だけで、金融政策が左右される種類のものではない」と発言し、利上げに慎重な姿勢を見せた。そのため、円買いが一方的に進むことは難しいだろう』と見解を述べています。陳さんは、『金は利子を産まない資産だが、日米の実質金利(名目金利-インフレ率)を比べると、円建て金がいかに上昇しやすい環境にあるかがわかる。米国は4.5%-2.7%=+1.8%だが、日本は0.5%-3.3%=-2.8%とマイナス金利になっており、円建て金は上昇しやすい環境にある。いずれ、7月23日の上場来最高値1万6326円を超えて一段高の展開になろう』と考察しています。OSE金予想レンジは、『1万5900~1万6400円』と想定しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の8月6日付「日本はマイナス金利、金が上昇しやすい環境」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。
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2025/08/07 17:26
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完璧な嵐?頼清徳政権が直面する三重の課題【中国問題グローバル研究所】
*16:01JST 完璧な嵐?頼清徳政権が直面する三重の課題【中国問題グローバル研究所】
頼清徳総統が率いる政権は、未曾有の内外の圧力に直面し、岐路に立たされている。世界経済の変動と国内政治の混乱の高まりの中で、頼政権は経済・政治・環境危機の嵐を乗り越えなければならない。本稿では、特に貿易、政治、気候変動の分野で、頼清徳政権がこれらの課題にどのように対応しているかを分析する。1.外部からの圧力と経済的課題頼清徳政権が直面する最初の大きな外圧は、世界貿易環境の変化と、グローバルサプライチェーンにおける台湾の競争力に関係している。米中貿易戦争が激化する中、グローバルサプライチェーンの一部である台湾も深刻な影響を受けている。2025年8月、米国の台湾に対する関税は32%から20%に引き下げられた。この引き下げによってある程度の圧力は軽減されたものの、台湾経済の重荷を取り除くには不十分である。特に、台湾が農産物市場の開放や関税撤廃、米国への投資を許可するかどうかといった重要な問題が未解決のままである。これらの未解決の問題は台湾経済に引き続き不確実性をもたらし、内外の政治・経済の安定に影響を及ぼす恐れがある。注目すべきは、台湾と米国の関税問題は農産物に限らず、台湾のハイテク産業にも関係している。最新データによると、台湾のハイテク製品は対米輸出の68%を占めている。これらの製品には半導体、電子部品、コンピュータ機器、通信機器などが含まれる。現在の貿易交渉の枠組みでは、米国が暫定関税(通商法232条によるハイテク産業関税を除く)を課した場合、台湾のハイテク製品の対米輸出に深刻な影響を与え、台湾の経済的圧力をさらに強める可能性がある。この追加関税により、台湾の輸出品には20%の関税が課される一方、日本や韓国の輸出品は15%の関税にとどまるため、これらの競合国と比べて米国市場での競争が一段と厳しくなる。この状況下で、台湾ドルは12%も上昇した。この変化は台湾の対外輸出、特に製造業や農産品部門に大きな影響を与えた。台湾ドルの上昇は、国際市場における台湾の価格競争力を低下させ、世界市場における台湾の立場を弱めており、間違いなく台湾の長期的な経済発展にとって脅威となる。頼清徳政権は、台米貿易交渉の結果を注視するだけでなく、今後の米国との貿易協定で、特にハイテク産業の関税や農産品市場の開放といった重要な問題に確実に取り組む必要がある。台湾は、より複雑な国際貿易紛争に巻き込まれることを回避しつつ、自国の経済的利益を守る必要がある。政府はまた、外部からの経済的圧力に直面しながら、台湾の安定と成長を維持するために緊急措置を講じ、関税や為替レートの変動が産業に及ぼす影響を最小限に抑えなければならない。2.国内政治の課題と政党間競争外部からの経済的圧力に加え、頼清徳政権は複雑な国内政治情勢にも直面しており、特に党内の結束を保ちつつ政党間の競争を乗り越えるプレッシャーがある。台湾の政治環境は不確実性に満ちており、特に与党・民進党が二つの大規模なリコール選挙で圧倒的な勝利を収めることができず、有権者が立法院の現状の構成を変えることに消極的であることが明らかになった。2025年7月26日の大規模リコール選挙では、24議席を対象としたリコールはいずれも成立せず、完全な失敗に終わった。8月23日に予定されている7議席のリコールもさらに大きな挑戦に直面している。頼清徳政権は依然として約40%の支持率を維持しているものの、今回のリコール失敗は、特に立法院の議席に関して有権者の現状容認を示している。有権者は立法院の構成を変えたいと強く望んでいないようだ。しかしこの失敗は、国民党や民衆党にとっての完全な勝利を意味するわけではなく、むしろ有権者が与党を監視するために野党に依存していることを露呈している。有権者は現状維持を好み、政治体制を急激に変えるよりも、野党に与党を牽制・監視させることを望む傾向がある。国内政治の複雑さは、政党内部の権力闘争にも表れている。国民党の若手世代は希望を抱いているものの、党内の伝統的な派閥を揺るがすには至っておらず、選挙では依然として古参や地方派閥の支持に依存している。一方、民進党はリコール選挙で敗北したものの、党に参加する若手リーダーが増え、内部の活性化につながっている。民衆党は今後、政治的な存在感を失う可能性があり、特に資源を効果的に統合できなければ、政界での足場を失うことになりかねない。頼清徳政権がこの複雑な政党間競争をどのように乗り越え、内部の結束を保ち、さまざまな利害を調整して政策を実行していくかは大きな課題となる。特に今後の地方選挙では、党内の異なる派閥の利益を調整しつつ若い有権者を引きつけることが、民進党の選挙での成績を左右するだろう。3.気候変動とグリーンガバナンスへの圧力気候変動は、頼清徳政権のグリーンガバナンスにとって重大な課題であり、特に頻発する自然災害により、政府の効果的な対応力と統治能力が試されている。最近、台湾中部と南部で発生した豪雨は、気候変動が台湾社会に与える深刻な影響を浮き彫りにしている。特に環境志向の有権者が多い南部地域では、これらの災害が地方自治体に大きな政治的圧力をかけている。これまで頼清徳政権はグリーン政策によって台湾南部で幅広い支持を得てきたが、気候変動により自然災害の頻度と深刻さが増す中、地方自治体は特に災害復旧と緊急対応において深刻な統治上の課題に直面している。しかし、問題の複雑さはこれだけにとどまらない。気候変動が悪化するにつれ、台湾南部や他の被災地域は、2026年に予定されている地方選挙で重大な政治的影響に直面する可能性がある。民進党が気候災害後の復旧を効果的に進められなければ、有権者の不満が募り、南部地域での同党の選挙見通しに影響を与える恐れがある。民進党はこれらの被災地域に注目し、復旧作業が遅滞なく進むことを確保しなければならない。さもなければ、南部での選挙において重大な挑戦に直面することになるだろう。さらに、頼清徳政権は農業政策をめぐり、国際社会からの、特に米国からの圧力にも対処しなければならない。米国は台湾に対して農産品市場のさらなる開放を要求するかもしれない。頼清徳政権にとって、これは経済的な好機であると同時に、政治的なリスクでもある。民進党が農業政策で妥協すれば、特に台湾南部の農業地帯における農家の支持を失う可能性がある。これらの地域は長年民進党を支持してきたが、政府が農民の利益を守れなければ、国民党は農産品流通システムでの影響力を強化する機会を捉え、これらの有権者の支持を取り戻す可能性がある。資源を拡大し、より広い支援ネットワークを構築することにより、国民党は将来の選挙で台湾南部の議席を奪還できるかもしれない。したがって、頼清徳政権はこれら一連の課題に対処するために、緊急の措置を講じなければならない。第一に、気候災害への対応と復旧作業を強化し、有権者の不満を緩和すると同時に、台湾南部における民進党の選挙上の優位を維持する必要がある。第二に、政府は農業市場の開放に関して、農民の利益が損なわないように慎重に判断し、選挙期間中に重要な支持層を失わないように、これらの政策を効果的に伝える必要がある。これらの分野でタイムリーな調整を行うことによってのみ、民進党は国政と地方の両方で敗北するという「二正面作戦」のジレンマを回避することができる。結論と展望頼清徳政権は、政治、経済、社会の厳しい課題に直面している。外的経済圧力は、国際経済における台湾の競争力を維持するため、政府に世界のパートナーとの経済連携を一層強化することを求めている。一方、党内の結束や有権者の支持維持などの内政上の課題は、政府に内部の対立を柔軟に調整し、リコール圧力を緩和するとともに、各派閥間の協力を促進することを求めている。同時に、気候変動とそれに伴う自然災害は政府に大きな統治上の課題を突きつけており、特に台湾南部の有権者の支持を確保する面では、政府の対応とリーダーシップは選挙の見通しに直接影響を及ぼすであろう。今後数か月、頼清徳政権は複雑な政治・経済情勢の中で茨の道を歩むことになる。災害復旧、党内結束、国際貿易交渉といった課題に、政府がどれだけ上手く対処できるかが、台湾の将来の政治情勢を左右するだろう。これらの問題に効果的に対処できなければ、民進党は地方選挙で敗北し、国政と地方両方の議会で支配を失い、最終的に民進党の長期政権に危機をもたらす可能性がある。こうした複雑な課題を切り抜け、台湾の安定と国民の信頼を守るためには、頼清徳政権はより繊細な先見的な戦略を採用しなければならない。緊急対応訓練を視察する頼清徳(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/
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2025/08/07 16:01
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南アフリカランド円今週の予想(8月5日)サンワード証券の陳氏
*09:45JST 南アフリカランド円今週の予想(8月5日)サンワード証券の陳氏
皆さん、こんにちは。今回は、南アフリカランド円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、今週の南アフリカランド円について、『追加利下げ見通しから上値の重い展開になろう』と述べています。続いて、『南アフリカ準備銀行(中銀)は31日、政策金利を0.25%引き下げて7.00%に決定した。クガニャゴ中銀総裁は記者会見で、決定は全会一致だったと説明。インフレ率については、3─6%の目標レンジ下限を目指すとした上で「これにより金融政策余地が拡大し、ショックに対する枠組みがより強固になる」と述べた』と伝え、また、『6月の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は3.0%と、中央銀行の目標レンジ(3%─6%)下限となった。市場予想と一致し、5月の2.8%から加速した。アナリストは金融緩和余地が残されていると指摘している。中銀は過去5回の政策決定会合のうち4回で利下げを実施した』と伝えています。また、『インフレ率は昨年8月以降、目標レンジ中間値の4.5%を下回っている。中銀はインフレ目標の引き下げが望ましいと繰り返し表明している。仮にインフレ率が年内に4%へ上昇しても、政策金利が7.0%であるため、実質金利はまだ高く、年内に少なくともあと1回、0.25%の利下げは想定されよう』と見解を述べています。南アフリカランド円の今週のレンジについては、『8.1円~8.4円』と予想しています。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の8月5日付「南アフリカランド円今週の予想(8月5日)にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。
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2025/08/07 09:45
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メキシコペソ円今週の予想(8月5日) サンワード証券の陳氏
*09:31JST メキシコペソ円今週の予想(8月5日) サンワード証券の陳氏
皆さん、こんにちは。今回は、メキシコペソ円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、メキシコペソ円について、『メキシコ中央銀行が7日に利下げを実施する見込みのため、上値の重い展開になりそうだ』と述べています。続けて、『メキシコの第2四半期国内総生産(GDP)速報値は、前期比0.7%増だった。2四半期連続のプラス成長で、エコノミスト予想(0.4%増)を上回った』と伝え『製造業を含む第二次産業とサービス業を含む第三次産業はそれぞれ0.8%、0.7%の増加で、農業、漁業、鉱業を含む第一次産業の1.3%減を相殺した。今回の統計はメキシコが景気後退(リセッション)に陥っていないことを「明確に示す」ものの、「経済が好調であることを意味するわけではない」ようだ。特に米国が関税を厳格に発動し始めたり、対象分野を拡大した場合にリセッションになるリスクが依然ある。第2四半期のGDP伸び率は、前年同期比では0.1%、エコノミスト予想は0.2%だった』と解説しています。次に、『トランプ米大統領は31日、メキシコとの現行の貿易協定を90日間延長し、その間、新たな協定の締結を目指して協議を続けることで、メキシコのシェインバウム大統領と合意したと発表した。両氏はこの日、電話会談を行った』と伝えています。メキシコペソ円の今週のレンジについては、『7.80円~8.20円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の8月5日付「メキシコペソ円今週の予想(8月5日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。
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2025/08/07 09:31
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NYの視点:米金融当局者は急速に利下げに傾斜、労働市場への懸念強まる
*07:45JST NYの視点:米金融当局者は急速に利下げに傾斜、労働市場への懸念強まる
米金融当局者は金利を巡る見解をシフトした。米7月雇用統計の結果や、特に5月、6月の非農業部門雇用者数が大幅に下方修正されたため、金融当局者の労働市場の見解が下方修正された可能性がある。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「経済は減速しており、対処する必要がある」と指摘。関税が物価に与える影響が長期化するかどうかわからないとした。「金利の軌道を転換することが待つよりも賢明かもしれない」とし、「おそらく近い将来に金利修正が適切となる可能性」を指摘し早期利下げを支持する可能性を示唆した。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も最近の講演やインタビューで、早期利下げを支持する可能性を示唆。デイリー総裁は「さらなる労働市場の減速は歓迎しない」とし、「今後数カ月で政策を修正する必要がある可能性が強い」との考えを示した。関税を巡り短期的にインフレを押し上げるが長期化しない、とカシュカリ総裁と同様の見解を示した。デイリー総裁は週初のインタビューでも、労働市場が減速している兆候があるとすると同時に、関税がインフレを押しあげている証拠はなく、利下げに近づいたとの考えを示している。両総裁は本年の連邦公開市場委員会(FOMC)での投票権を有さない。クック理事は、最新の雇用統計に懸念を表明すると同時に、「大幅な雇用データの修正は通常、転換点となることが多い」と指摘した。短期金融市場では9月の利下げ確率が95%まで上昇した。
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2025/08/07 07:45
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貿易戦争と武力による戦争(2)【中国問題グローバル研究所】
*09:46JST 貿易戦争と武力による戦争(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「貿易戦争と武力による戦争(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。これからも続く脅威トランプ氏は関税を、自らの意見を通し他国を脅す最も効果的な手段と位置づけている。そのため、最近発表された2国間貿易協定は、2国間の幅広い取り決め(エンゲージメント)のほんの一部にすぎない。タイ・カンボジア間の紛争で明らかになったように、トランプ氏の切り札は両国が紛争を継続する場合、関税引き上げである。このように単純で率直な手段で世界の紛争を解決できるとしたら素晴らしいが、残念ながらそんなことはあるまい。貿易協定の関税率のほかに、トランプ氏は医薬品と鉄鋼製品を対象に分野別関税をかけることも計画している。したがって、貿易協定が相次いで締結されているからといって、これで貿易摩擦が解消され、貿易コストの上昇が抑えられると考えるべきではない。貿易戦争はこれから別のフェーズに入っていくにすぎない。トランプ氏は関税を脅しの材料にし、自らの偏見のままに他国に無理やり国内政策を変えさせようとするのではないか。果たしてそれはまったく考えられないことであろうか。スコットランド滞在中に、トランプ氏は風力タービンが自ら所有するゴルフ場の景観を損ねていると不満を漏らした。英国政府が風力発電所を増やし続けた場合、関税率引き上げで英国を脅すのではないだろうか。ばかげた考えのように聞こえるが、特に2期目のトランプ氏は、実質的に個人的なビジネス目標を実現するために大統領職に就いていると言える。その地位に敬意を払い、株式などの資産を売却して利益相反を避けた歴代の大統領とは異なり、トランプ氏はそうした対応を取らず、恥ずかしげもなく大統領権限を利用して、自らと家族のビジネス上の利益を増進している。それを考えると、トランプ氏とのディールで落ち着いていられる外国政府などないだろう。しかし、今後は中国が米国に代わってより安定したパートナーとなるのだろうか? EUはよく考える必要がある。EUは長年、中国とのバランスの取れた関係の構築に苦慮してきた。経済的な投資と関与に注力したメルケル政権下のドイツでは、実質的に企業の幹部が外交政策のかじ取りを担っていた。このモデルは文字通り壁にぶつかり、ドイツの自動車メーカーは国内のEV競争で中国勢の後塵を拝してきた。メルケル氏はドイツの産業の動力源をロシアの炭化水素に頼る事態も招き、ウクライナ戦争で独裁国家に依存することの愚かさを嫌というほど思い知らされた。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長と欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は先週、外交関係樹立50周年を記念したEU・中国首脳会談の一環として、北京で習近平氏と会談した。フォンデアライエン氏は中国が欧州とEUにもたらす課題と直接的な脅威を非常によく理解しており、今回の首脳会談は当初の計画より規模が縮小された。だが、EUはどの程度まで中国と手を結ぶべきなのか。習近平氏はEUと中国を「2つの大経済圏」と称した。トランプ氏をめぐるEUの不安感と欧州の根底に流れる反米感情を刺激して、中国との距離を近づけたいと考えている。フォンデアライエン氏やカヤ・カラス氏など多数派は中国の危険性を理解している。だが欧州には、米国が欧州の同盟国を事実上切り捨てたことに大きな衝撃を受け、米国との絶縁による影響を和らげようと中国に目を向ける動きもある。今回の会談では、具体的な成果はほとんど得られなかった。レアアースや磁石の供給を確保する新たな仕組みで合意したものの、このコラムで以前に述べたように、中国から供給の確約を得たとしても、中国は経済制裁を利用し自国の政治的な意志を強要することも辞さないため、長期的な解決策とはならない。代替のサプライチェーンの構築と中国への依存の軽減以外に長期的な解決策はないのである。一方、習氏はEUを懐柔しようとしたのかもしれないが、EUがトランプ氏との貿易協定に同意したことで、その試みは失敗に終わった。関税率の確定に加え、EUは米国産のエネルギーと兵器の購入を増やすことに同意しており、防衛面で米国に依存する状況は変わらない。トランプ氏は当然のように、NATO同盟国の防衛費増額に加え、欧州の防衛とウクライナ戦争に欧州が責任を負うことを求め、一方で米国との絆と米国への依存を維持するよう要求した。EUの取引(ディール)の詳細を見れば、将来的にEUが同意できることを米国が制限することによって、中国に制約が課されたことが分かるだろう。約言すると、中国は、まったく安定感のないトランプ氏とは対照的に、信頼できる安定したパートナーであると自らを売り込みたいのかもしれないが、それに向けた行動をしていない。トランプ発の世界経済の大混乱は、今後長期間にわたるコスト上昇と予期せぬ事態をもたらすことになるだろうが、今のところ各国は、米国の思いどおりに関係を修正することを余儀なくされている。そしてこれは、中国にとって良い前兆ではない。このようにあまりにも複雑かつ混沌とした地政学的環境において、勝ち組と負け組を語ることはあまりに短絡的である。だが、トランプ氏が成功を収めているとまでは言えないにしても、中国が成功していないことは誰の目にも明らかである。
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2025/08/06 09:46
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貿易戦争と武力による戦争(1)【中国問題グローバル研究所】
*09:42JST 貿易戦争と武力による戦争(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)フレイザー・ハウイーの考察を2回に渡ってお届けする。中国の勢力圏とは?ドナルド・トランプ氏は自らの政権がこれまでで最も優れており、発足後100日間あるいは6カ月間でほかのどの政権より多くのことを成し遂げたと主張する。彼の言っていることはある意味正しい。米連邦政府の解体とそれがもたらす影響は今後、何百万人もの米国人に多大な影響を及ぼすことになり、完全に元通りになることはないだろう。外交関係を見ても、伝統的な同盟国や正式な同盟関係に背を向けたことは、第二次世界大戦後の約80年にも及ぶ「パックスアメリカーナ」体制との決別にほかならない。何十年もかけて国内外で構築したものが、ほんの数カ月で損なわれ、もはや回復できなくなった。トランプ氏の強い指導者好みと「アメリカ・ファースト」政策は、実質的に「力は正義なり」の考えを再び国際関係の中心に据えた。明確に示されたわけではないが(また当然トランプ氏が語ったわけでもないが)、彼は、北・中・南米、欧州、東南アジアをはじめとするアジアという勢力圏をそれぞれ監督する米国、ロシア、中国の3大国間の関係を、より対立的なそれに戻そうとしているように見受けられる。タイ・カンボジア間で長く続く国境紛争は、タイ軍のF16戦闘機がカンボジア領内を空爆したことを受けて、ここ数日で急激にエスカレートした。数十人が命を落とし、国境両側で10万人を超える住民が避難を余儀なくされている。両国間の緊張関係は数カ月前に再燃し始めていたが、今回の軍事的エスカレーションは多くの人にとって寝耳に水の事態であった。一般的に見て、この2カ国は中国の勢力圏に入ると言える。両国は長年にわたり中国と関係を構築してきた主要な貿易相手国であり(とはいえ、昨今中国の主要な貿易相手国でない国などないのだが)、いずれも一帯一路構想のパートナー国である。これは、中国が外交的影響力を発揮して紛争終結に導き、危機的状況を平和的に解決する絶好のチャンスではなかろうか。ところが中国メディアはそうしたことに言及せず、概ね沈黙を守ってきた。事実を報道して自制を求めるにとどまり、紛争終結に向けたドナルド・トランプ氏の尽力を報じさえした。トランプ氏は両国に即時停戦の用意があるとツイートしているが、信頼が回復し、長年続くこの問題が正式に解決するには時間がかかる。それは、トランプ氏がこの問題に進んで関与する時間を上回ることは間違いない。トランプ氏がお得意の武器を持ち出してこの2カ国に停戦に応じるよう迫ったことは、注目に値する。両国ともすでにかなり高い関税率を提示されており、トランプ氏は、停戦に同意しなければそれを大幅に引き上げると圧力をかけたのである。トランプ氏が戦争や軍事行動を嫌悪しているのは誰もが知るところだが、グリーンランドやカナダ、パナマを併合、すなわち侵攻すると脅したのは当の本人である。彼はノーベル平和賞の受賞を狙っているが、ロシアとウクライナの間に恒久的な平和を築くことができなければ、受賞はまずあり得ない。もちろん、習近平氏が平和賞を受賞できないことも明らかである。先月は、友好国イランが繰り返し空爆を受け、中国と緊密な関係にあるタイ・カンボジア両国軍が交戦し双方に死傷者が出るという2つの事件があったが、中国は傍観する姿勢を崩していない。パックスアメリカーナの世界が勢力圏ごとに分裂するとしても、それはまだ始まってない。少なくとも中国は足踏みしており、現状の「コンフォートゾーン」から抜け出すことに慎重な姿勢を見せている。これは、「米国が世界のリーダーとしての役割を退けば、自動的に中国がその座に就く」という単純な話ではないことを物語っている。新たな世界秩序で、中国は米国の担った役割をまねることはないだろう。世界各地の問題や紛争に対し、積極的な交渉役や仲裁役となる可能性は極めて低い。きっと中国は、自国に直接影響を及ぼさないかぎり、行動を最小限にとどめるはずである。パックスアメリカーナ後は中国が世界の警察官になるのではなく、警察官のいない社会となるのだ。これまでとは異なる新たな戦争貿易戦争も、当然のことながら引き続き注目を集めている。トランプ氏は「解放の日」に発表した相互関税に3カ月の猶予を提示後、期限をさらに8月1日に延長した。ここにきて貿易協定が相次いで締結されているのは驚くことではないだろう。日本が条件に同意し、トランプ氏が自ら所有するスコットランドのゴルフ場でゴルフをしている間にEUと米国が条件で合意したが、合意する国や地域は今後さらに増えるだろう。ディール、ディール、またディール。これはトランプ氏にとって成功以外のなにものでもない。彼は約束したことを今実現しているのだ。条件や全般的な関税率は、「解放の日」に提示された当初の税率を大幅に下回る。そのため、直近のトップ記事は非常にポジティブな内容のように映るが、新たな関税率はいずれも、ドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲く前のレベルを大きく上回っていることを忘れてはならない。中国関連の貿易については、米中が来月スウェーデンで再び会談することになっているが、非現実的な高関税の一時停止を続けると見てまず間違いない。中国に課せられる関税率は相変わらず50%前後であり、中国側にとっては、トランプ氏の怒りの最大の矛先が自分たちであることに変わりはない。トランプ氏に外交政策というものがあるとすれば、それは米国のこれまでのコミットメントから逸脱し、中国の脅威に焦点を合わせることである。貿易協定がトップ記事を飾るなか、忘れてはならないことが1つある。トランプ氏による世界貿易の「改革」で世界貿易のコストが上昇している。新たに合意された関税率は、「解放の日」に提示された貿易が停止するレベルの税率より低いとはいえ、史上最高水準であることに変わりはない。トランプ氏の目には、この新たな高関税時代が米国の黄金期の幕開けに映るだろうが、著名なエコノミストでそれに同意する者はほとんどいないであろう。エコノミストに限らず未来を予測することは誰にもできないが、今後数十年間の世界貿易の状況が、過去数十年間とはまったく異なるものになることは間違いない。このように長期的な動向をモデル化し理解することは難しいが、世界経済、特に米国に著しく大きな影響を及ぼすことになるのは確かだ。投資商品は「過去のリターンを将来の指針にはできない」と一般的に言われるが、これは今の世界貿易、経済関係、経済成長にも当てはまる。そのため、貿易協定をトランプ氏と結ぶだけで安心してはならない。各国は今後、米国との物事の進め方や関わり方を変える必要がある。だからといって、中国との関わりを深めることが必ずしも最善策というわけではない。「貿易戦争と武力による戦争(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。中国・EU首脳が会談(写真:新華社/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/
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2025/08/06 09:42
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地政学的混乱のさなかのEUと中国(2)【中国問題グローバル研究所】
*11:02JST 地政学的混乱のさなかのEUと中国(2)【中国問題グローバル研究所】
※この論考は7月24日の<EU and China Amidst Geopolitical Chaos>(※2)の翻訳です。欧州の希望と中国政府の野望欧州は今、対中関係で何を成し遂げたいと願っているのか。EUは利害が一致する分野で中国政府と歩調を合わせる一方、対立する分野では自らの利益と価値観を積極的に守ることで困難を最小限に抑えようとしているが、現在のアプローチは厳しい綱渡りといえる。経済面で欧州が求めているのは、より公平な条件での競争である。対中貿易赤字は昨年3,000億ユーロ(※3)(3,500億ドル)に上った。EUはこの慢性的な赤字を懸念しており、欧州の産業を脅かしているEVやソーラーパネルのようなセクターを中心に、欧州企業に対する互恵的な市場アクセスの拡大、 差別的な慣習の撤廃、中国産業の過剰生産能力縮小を望んでいる。また、レアアースと重要鉱物に安定的にアクセスするための輸出制限撤廃でも、中国側から具体的な譲歩を引き出そうとしている。レアアースと重要鉱物は、欧州のグリーン移行とデジタル化に欠かせない。今回の首脳会談で大きな進展は見られないと予想されるが、EU当局者は中国側が少なくともこれらの懸念を認識し、国内需要の刺激策や貿易不均衡への対処策を講じるのではないかと期待している。中国製EVに対する過去の措置と現在行われている乳製品の調査で見られるような相互措置からは、自らの懸念に中国が対処しなければ、行動を起こすことも辞さないという欧州の意向が垣間見える。経済面以外でも、欧州は気候変動をはじめ、各国の協力が欠かせないグローバルな課題の解決に中国を巻き込むことを目指している(※4)。緊張関係にあるとはいえ、両者はグリーンクレデンシャルを実証することを強く望んでおり、2025年7月の首脳会談で気候変動に関する共同宣言が出されるのではないかとの期待がある。だが、それが実現するかどうかは依然として不透明である。EUは、より公平で予測可能な世界貿易体制の確保を目的とした世界貿易機関(WTO)改革への中国の協力も望んでいる。中国にとって対欧州関係の主たる目的は、米中間の緊張が高まり続けるなかで、欧州が米国に同調しすぎないようにすることである。中国政府は、欧米間で現在どの程度意見の対立があるかを把握しており、今後EU・米国間に生じる亀裂を拡大させようとするだろう。経済面で中国が目指しているのは、中国製品をターゲットとしたEUの制裁措置と関税の撤回または先送りに加え、自国の産業の過剰生産能力と国家補助金に対する欧州の懸念への対処である。とはいえ、中国は基本的にはこうした問題を正当な経済開発の一環として扱っている。中国は一部欧州議会議員に科していた制裁措置を解除した。これは象徴的な意味合いが大きいが、関係を改善し経済協力に資する環境づくりをしたいという中国側の考えを示唆している。結局のところ中国が目指しているのは、時間稼ぎと対話を通じてEUの貿易救済措置を緩和させ、経済関係の悪化を防ぐことである。地政学面で中国が欧州に望んでいるのは、自らが唱える多国間主義を認め、中国が影響力を強めていく新たな世界秩序というビジョンを暗に支持することである。また、中国政府は自国の人権問題や新疆、チベット、香港に対する政策への国際的な批判を、国内問題への西側の干渉だとはねつけつつも、できるだけ抑えたいと考えている。ロシアというファクターウクライナでの戦闘は、EU・中国関係(※5)を含め、世界の地政学的環境を一変させた。中国は、表向きは中立的立場を維持しているものの、特に経済・外交面でロシア政府の支援を続けている。2022年以降の中国とロシアのこうした関係を、欧州各国政府は深く憂慮してきた。EU当局者も今では、ウクライナ戦争でロシアが使用する軍民両用品のうち、かなりの割合―推計で80%―が中国由来だと公然と口にする。EUは、ロシアの軍事力に不可欠な部品を中国政府が輸出し続けていることをたびたび非難してきた。ウクライナ問題での中国の立場にEUが不満を抱いていることは間違いない。今回の首脳会談が始まるほんの数日前、EUはロシアとの貿易を手助けしているとして中国の一部の中小銀行に制裁措置を科した(※6)。この措置について、中国政府は非難するとともに、報復措置も辞さないと警告を発した。EU側も、ロシア政府との「無制限のパートナーシップ」に大きな変化があるとは見ていない。期待しているのは、軍民両用品に対する税関手続きの厳格化と金融規制の強化など控えめな対応である。ウクライナ戦争により、地政学的ショックに対する欧州の脆弱性や、安全保障と経済的利益の相関性が浮き彫りとなった。一方で中国側は、中国が言うところの西側、特に米国の「覇権」に対抗する戦略的パートナーとしてロシアを位置づけている。報道によると、中国の王毅外相はエストニアのカヤ・カラス外相に、米国の関心が中国やアジアに集中するおそれがあるため、中国はウクライナ紛争でのロシアの敗北を望んでいないと語った(※7)という。この考え方は、たとえ西側から制裁を受けても、ロシアを破綻させないことが、中国が野望を膨らませるインド太平洋地域から欧米の関心をそらし、欧米のリソースを別の地域に向けさせる一助となるという中国の戦略的計算を示している。ウクライナ戦争を受けて、EUは経済面だけでなく安全保障面でも依存を減らし、レジリエンスを高めるという決意を固めた。この戦争は、安全保障を外部の力に頼る危険性と、欧州の外交政策を統一し強化する必要性を浮き彫りにした。ハンガリーや、最近ではスロバキアなど、一部加盟国が引き続き中国との結びつきを深めているものの、EU全体のムードとしては、警戒を強め断固としたアプローチを取る方向に傾いている。ウクライナ戦争では、中国の「中立姿勢」にも、自国の戦略的利益が危うくてもルールに基づく国際秩序を支持するという中国の言葉にも、無理があることが明らかになった。これを受けて欧州では、グローバルな規範を遵守するという中国の約束と、責任あるステークホルダーとしてのその役割に疑念が深まっている。経済的相互依存関係と、グローバルな問題の解決で中国の協力が必要であることを考えると、EUはつながりを完全に断ち切ることはできない(※8)。しかし、ウクライナ戦争がEUの「デリスキング」の取り組みを加速させ、中国が重要な経済的パートナーであると同時に、その行動が欧州の安全保障に直接影響を与えうる「体制上のライバル」でもあるとの認識を強くさせたことは間違いない。現実的思考とレジリエンス2025年7月24日のEU・中国首脳会談は転換点とはならず、逆に、ますます難しく複雑な関係に向けてまた一歩進むきっかけとなるであろう。欧州も、中国とスムーズに協働できるようになるという幻想はもう抱いていない。むしろ、経済・技術・地政学的領域にまたがる「体制上のライバル」だという現実に向き合っている。「デリスキング」戦略は、全面的な「デカップリング」とは微妙に異なる代替策ではあるが、レジリエンスと戦略的自律の強化に向け実質的に踏み出すことになるだろう。トランプ大統領の予測不能な外交政策がこの難しい問題をより複雑にしており、欧州はリスクヘッジをし、自らの能力増強への投資強化を余儀なくされている。EUは今後も、気候変動やパンデミックへの備えなどグローバルな課題で中国との現実的な協力を模索していくことになるだろうが、それはリスクを意識し、自らの利益と価値観を守るという決意を固めての対応となるはずである。ロシアというファクターは、中国の地政学的協力関係と、欧州の安全保障に影響が及ぶ可能性を常に思い出させてくれる。欧州は今後、綱渡りのような状況を乗り越えていくことになる。域内の結束を維持し、一貫性のある強固な対中政策を明確に発信し、志を同じくする世界各地のパートナーとの戦略的同盟関係を構築できるかどうかが、その成否を左右する。目指すべき目標は中国を孤立させることではなく、欧州の利益を促進し、国際規範を維持し、ルールに基づく国際秩序の未来を守ることができるような「関与条件」づくりである。 それには、揺るぎない決意と巧みな外交手腕、そして分断が進む世界で中国の台頭がもたらすチャンスと大きな課題の両方をしっかりと理解することが必要となる。中国・EU首脳が会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6488(※3)https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/china_en(※4)https://merics.org/en/comment/merics-forum-engaging-times-tension-views-europe-and-china(※5)https://www.bruegel.org/podcast/how-war-ukraine-reshaping-eu-china-relations(※6)https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3318793/european-union-sanctions-2-chinese-banks-over-aid-russia(※7)https://kyivindependent.com/chinas-foreign-minister-tells-eu-that-beijing-cannot-afford-russian-loss-in-ukraine-media-reports-6-2025/(※8)https://www.bruegel.org/newsletter/eu-china-and-russia-changing-geopolitical-landscape
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2025/08/05 11:02
注目トピックス 経済総合
地政学的混乱のさなかのEUと中国(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:58JST 地政学的混乱のさなかのEUと中国(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)テムール・ウマロフの考察を2回に渡ってお届けする。※この論考は7月24日の<EU and China Amidst Geopolitical Chaos>(※2)の翻訳です。2025年7月24日の北京は重苦しい空気に包まれるだろう。それは決して夏の湿度のせいだけではない。EU・中国首脳会談が開かれ、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と欧州理事会のアントニオ・コスタ議長が、中国の習近平主席および李強首相と膝を交えて話し合い(※3)、緊張が高まることが確実だからだ。これは定期的に実施される会談ではなく、外交関係樹立50周年という重要な節目を記念して開かれるものだが、近年の地政学的変動がもたらす混乱が暗い影を落としている。今回の会談では、貿易不均衡や、ウクライナに侵攻したロシアの戦争経済を支えているとされる中国の役割、人権問題のほか、返り咲いたドナルド・トランプ政権下で迷走する米国が広く世界に及ぼす影響が焦点となる。会談は50周年の祝賀ムードとは程遠く、戦略的自律を希求しながらも複雑で厄介な現実世界にそれを阻まれているEUの厳しい綱渡りを浮き彫りとするものになるだろう。EU・中国関係の変容この数十年間にわたる西側、特に欧州連合の中国に対するアプローチは、経済的相互依存関係が政治的な協働と統合を促進し、最終的に中華人民共和国に民主化をもたらすという考えに基づく関与戦略である。中国は主に経済的パートナー、欧州製品の巨大市場、そしてグローバルサプライチェーンの重要な一部と位置づけられていた。だがこうした認識は、まずゆっくりと、やがて(特に2010年代後半以降は)加速度的に変化し始める。転換点(※4)となったのはおそらく、EUが2019年に中国を「協力パートナー」、「交渉パートナー」、「経済上の競争相手」であると同時に、「体制上のライバル」としたことだ。この多面的な見方は、両者の関係の根本的な見直しを示しており、競争・対抗という側面が徐々に目立つようになってきた。EUがこうした新たなスタンスを示すようになった要因はいくつか(※5)考えられる。まず、中国は補助金の乱発や知的財産の盗用、差別的な市場アクセスを特徴とする国家主導型の経済モデルになっていき、欧州の事業や産業に直接影響を及ぼし始めた。欧州企業が中国市場への参入障壁と中国市場での不公平な競争に直面した(※6)のに対して、中国企業は多くは国の支援を受けつつ欧州単一市場への比較的自由なアクセスを享受していた。経済関係のこうした非対称性の拡大を受けて、より公平な条件での競争を求める声が強まった。次に、中国の強硬な外交政策と、香港での弾圧やチベット・新疆での人権侵害をはじめとした抑圧的な(※7)国内政策が、EUの核となる価値観およびルールに基づく国際秩序を守ろうとする姿勢と衝突するようになった。EUはそれまで人権問題と経済関係を分けて対応を図っていたが、この2つの問題の規模があまりに大きく、また体制的な性格を有することから、分けることが難しくなっていった。最後に、そしておそらく最も重要な点は、EUが戦略を考える上で、米中対立が大きな要素になってきたことである。米国が代々の政権下で中国政府に対立的な姿勢を強め、中国を最大の戦略的競争相手として扱うようになるなか、欧州はそれに従うことが自然だと感じていた。また元々は米国政府が唱えていた中国からの「デカップリング」という概念が、これまでとは微妙に異なるEUの対応を生んだ。2023年3月に欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、EUの対中政策をまとめる際の新たな原則として「デリスキング」(※8)という概念を紹介した。この戦略は「デカップリング」とは異なり、経済的つながり全体を断ち切るのではなく、過度な依存を減らし、重要セクターの戦略的脆弱性を軽減することを目指す。フォンデアライエン氏が明確に説明した(※9)ように、「中国からのデカップリングは実行可能でなく、また欧州の利益にもならない。私たちの関係は黒か白かというものではなく、私たちの対応もどちらか一方にはなり得ない。だからこそ、デカップリングではなくデリスキングに注力する必要がある。」デリスキングという考えが生まれた背景には、コロナ禍のときに医療用品などの必需品を中国に依存しすぎだと明らかになった(※10)ことと、ウクライナ侵攻後のロシアがエネルギー供給を武器にした(※11)ことから得た教訓がある。1つのパートナーに依存することの危険性が浮き彫りになったのだ。デリスキングには、EU自身の産業基盤と競争力の強化や、サプライチェーンの多角化による1カ国への依存の軽減、経済安全保障ツールの活用による強制や不公平な慣習の防止など、多面的なアプローチが含まれる。そしてこれが、重要インフラへの中国投資の監視強化(※12)、軍民両用技術の輸出規制強化、現在進められている中国製電気自動車(EV)に対する反補助金調査(中国側がこれを保護主義的だとし、対抗措置として欧州製品を調査する事態となった)などの貿易救済措置につながった。トランプ氏の大統領復帰ドナルド・トランプ氏が大統領に復帰したことで、欧州の地政学的環境の複雑さと不安定さが増し、対中政策にも直接影響が及んでいる。取引外交と関税重視を掲げ、長年続く同盟関係に疑問を投げかけるトランプ氏の「MAGA」外交政策は、欧州各国政府に多大な不安を与えている(※13)。第一次トランプ政権の攻撃的な貿易戦術は、欧米の結束より一国の経済的利益を優先させる意向がはっきりと見てとれた。トランプ政権下での同盟国に対する米国のアプローチは、多くが予測不能だ。そしてそれが、「外交政策の方向性が何の前触れもなく劇的に変わりかねない主要な安全保障パートナーとどのように歩調を合わせればいいのか」という欧州のジレンマを生んでいる。新たな欧米貿易戦争の勃発だけでなく、NATOの結束が弱まるという見通しまでささやかれ、欧州はより自立した外交政策の検討を迫られている。これは必ずしも中国を受け入れるという意味ではなく(※14)、欧州自身の戦略的自律とレジリエンス(強靭性)を重視するという意味だ。現在の地政学的環境により、EUは2つの大きな圧力の間で身動きが取れない状況にある。米国政府が、特に技術戦争や人権問題において中国に対する強固な一枚岩となるようEUに強く求める一方で、トランプ氏の言動が、そうした一枚岩になるのに必要な欧米の結束を揺るがしかねない。そのため、極めて不安定な国際政治で困難を最小限に抑えるため、EUは中国との関係を「リセット」すべきではないかと考える欧州指導者も出てきた。EUの最近の対応(※15)には、最新の対ロシア制裁パッケージの一環として、ロシアとの貿易を手助けしている中国の銀行を制裁対象とすることが含まれ、特定の問題で中国政府と対峙することにEUが意欲を見せるとともに内部で意見が一致していることを物語っている。経済的な影響を恐れて、一部加盟国が中国に直接異論を唱えることにこれまで難色を示してきたことを考えると、この新たな決議は注目に値する。とはいえ、最新技術に不可欠な重要鉱物や磁石を中国に依存していることや、野心的なグリーン移行目標を掲げていることなどを踏まえ、中国との完全な決裂は実行可能ではなく望ましくもないとの認識から、この決議は抑制的な内容になっている。「地政学的混乱のさなかのEUと中国(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。中国・EU首脳が会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6488(※3)https://newsroom.consilium.europa.eu/events/20250724-eu-china-summit-july-2025(※4)https://dgap.org/en/research/publications/eu-china-comprehensive-agreement-investment-cai(※5)https://www.eeas.europa.eu/eeas/eu-china-relations-factsheet_en(※6)https://merics.org/en/report/eu-china-fdi-working-towards-more-reciprocity-investment-relations(※7)https://merics.org/en/report/eu-china-fdi-working-towards-more-reciprocity-investment-relations(※8)https://www.csis.org/analysis/closer-look-de-risking(※9)https://www.euractiv.com/section/defence/news/von-der-leyen-wants-de-risking-not-de-coupling-in-new-china-doctrine/(※10)https://www.politico.eu/article/coronavirus-emboldens-europes-supply-chain-security-hawks/(※11)https://commission.europa.eu/news-and-media/news/roadmap-fully-end-eu-dependency-russian-energy-2025-05-06_en(※12)https://www.bruegel.org/first-glance/eu-duties-chinese-electric-cars-are-rule-respecting-response-subsidies(※13)https://ecfr.eu/publication/transatlantic-twilight-european-public-opinion-and-the-long-shadow-of-trump/(※14)https://www.politico.eu/article/eu-china-beijing-summit-trade-donald-trump-tariffs/(※15)https://www.rferl.org/a/eu-china-summit-leyen-xi/33481019.html
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2025/08/05 10:58
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