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軽んじられた同盟国:台湾が自ら戦略的価値を主張すべき理由(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2025/05/30 10:33
配信元:FISCO
*10:33JST 軽んじられた同盟国:台湾が自ら戦略的価値を主張すべき理由(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「軽んじられた同盟国:台湾が自ら戦略的価値を主張すべき理由(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
VI. リスクヘッジと域内での足場固め
戦略的リスクを軽減するため、台湾は地域的なリスクヘッジを体制化する必要がある。デジタルガバナンス、エネルギー転換、戦略的インフラ分野での東南アジアやインド、日本、オーストラリアとの連携を、象徴的意味合いのものから確固たる協力関係へと進化させなければならない。貿易および気候変動における世界的な連携でASEANの重要性が増しているが、これは台湾が継続的なパートナーシップを構築するチャンスとなる。
グローバルサウスにおいて、台湾は援助国というイメージから、信頼される政策支援国へと転換を図る必要がある。融資では中国に対抗できないが、電子政府や反腐敗システム、災害レジリエンスなどの分野に的を絞った専門知識・技術の提供やガバナンス連携はできる。このような形のソフトパワーが、台湾の組織や制度への信頼を構築し、地政学的競争が続くなかで、台湾が存在意義を持ち続ける一助となる。
VII 恩恵を受ける立場から戦略的ステークホルダーへ
台湾は、単なるステークホルダーから、世界的なイノベーションと安全保障における価値創造者へと自らのイメージを変える必要がある。具体的には、セキュアなテクノロジー回廊やサイバーセキュリティ連合、2国間経済協定への台湾の参加などである。戦略的資産を具体化させることで、台湾はインド太平洋地域の安定化で脇役ではなく主役とみなされるようになる。
台湾の外交組織はそのために、データ、アドボカシー、組織力に投資しなければならない。政策のモデル化、費用対効果のシミュレーション、相手に応じたロビー戦略は、もはやできればすればいい程度のものではなく不可欠なツールである。これからはパーソナリティが演出する政治ショーではなく構造的な同盟関係の時代となる。
台湾は、半導体セキュリティ、クリーンエネルギーの技術交流、軍民両用の研究開発イニシアチブでのセクター固有の基本合意など、準条約的な合意枠組みも推進する必要がある。それにより、台湾は主要な戦略的セクターで信頼できるプレイヤーとしての役割を果たすことができるようになる。
VIII. 米国市場との関係を見直す:50州のリスクに対応する
米国に進出する台湾企業は、50州でそれぞれ異なる実情に直面しなければならない。労働法やインセンティブ、インフラは州により大きく異なる。新南向政策下での東南アジアへの進出で犯した過去の失敗が教えてくれるように、デューデリジェンスが不十分であると、規制による行き詰まりを招きかねない。
政府は法務に関する説明会や、政治リスクの評価、セクター別のガイダンスでアウトバウンド投資を支援しなければならない。画一的な米国進出戦略は時代遅れであり、必要なのは的を絞り、各州に合わせてリスクを調整することだ。具体的には、ハイテク産業地域の特定、労働組合員の割合が高い州の労働コンプライアンス状況の把握、地域のサプライチェーンハブとの調整などが挙げられる。
さらに重要なのは、米国に拠点を置く台湾系企業を戦略的メッセージングに取り込むことである。TSMC ArizonaやAUOのエネルギーベンチャーなどの企業は、2国間の取り組みや信頼構築の実証例の役割を果たしうる。こうした投資対象を共通のセキュリティおよびイノベーション基盤の一部と位置づけて発信していく必要がある。
IX. 次なるステップ:受動的な立ち位置から戦略的設計へ
台湾が受動的な外交を脱却するには、自らの民主的レジリエンスと世界に必要とされる技術力を、明確に戦略的資本へと転換する国家戦略を体制化しなければならない。それには、外務、経済計画、国家安全保障を担当する高官からなる、政府機関同士をつなぐタスクフォースを常設して、外交メッセージと産業支援の整合を図る必要がある。台湾は主要な同盟国から期待できる戦略的見返りを積極的に特定し、相手の気付きを待つのではなく、それを二国間の対話に反映させるべきである。価値観に基づくパートナーシップは、価値を明確に伝えることから始まるのだ。
次に、台湾は自らの戦略的貢献を数値化して、それを伝える能力を強化しなければならない。その1つに、グローバルなサプライチェーンや地域安全保障の枠組みから台湾を疎外することのリスクの費用対効果を、独立機関に評価してもらうことがある。こうした評価の結果を、米国や欧州、日本など主要国政府に対する的を絞ったロビー活動で交渉の根拠にすることができる。台湾は、安全保障と経済関連の言論を得意とする商業外交担当者を育成し、交渉を主導して、道義的理由からだけでなく戦略的必要性の観点から台湾の重要性を主張する必要がある。
X. まとめ:便利な存在から必要とされる存在へ
台湾は便利な存在に甘んじていてはならず、必要とされる存在になることにこだわらなければならない。戦略的有用性が重視される世界では、存在意義は誰かに与えられるものではなく自らが主張するものである。台湾の存続は、正しくあるかどうかだけでなく、必要不可欠な存在になれるかどうかにもかかっている。
台湾が存続し続けるためには、公の場で明確かつ自信を持って、自らの価値を主張することを学ばなければならない。戦略的プレゼンスとは、認められるかどうかではなく、自らの位置付けによって決まるのだ。台湾は席が用意されるのを待つのを止め、率先して話し合いの場を設け、主導していかなければならない。
「軽んじられた同盟国:台湾が自ら戦略的価値を主張すべき理由(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: トランプ米政権の関税政策 世界経済に打撃の懸念(写真:AP/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
VI. リスクヘッジと域内での足場固め
戦略的リスクを軽減するため、台湾は地域的なリスクヘッジを体制化する必要がある。デジタルガバナンス、エネルギー転換、戦略的インフラ分野での東南アジアやインド、日本、オーストラリアとの連携を、象徴的意味合いのものから確固たる協力関係へと進化させなければならない。貿易および気候変動における世界的な連携でASEANの重要性が増しているが、これは台湾が継続的なパートナーシップを構築するチャンスとなる。
グローバルサウスにおいて、台湾は援助国というイメージから、信頼される政策支援国へと転換を図る必要がある。融資では中国に対抗できないが、電子政府や反腐敗システム、災害レジリエンスなどの分野に的を絞った専門知識・技術の提供やガバナンス連携はできる。このような形のソフトパワーが、台湾の組織や制度への信頼を構築し、地政学的競争が続くなかで、台湾が存在意義を持ち続ける一助となる。
VII 恩恵を受ける立場から戦略的ステークホルダーへ
台湾は、単なるステークホルダーから、世界的なイノベーションと安全保障における価値創造者へと自らのイメージを変える必要がある。具体的には、セキュアなテクノロジー回廊やサイバーセキュリティ連合、2国間経済協定への台湾の参加などである。戦略的資産を具体化させることで、台湾はインド太平洋地域の安定化で脇役ではなく主役とみなされるようになる。
台湾の外交組織はそのために、データ、アドボカシー、組織力に投資しなければならない。政策のモデル化、費用対効果のシミュレーション、相手に応じたロビー戦略は、もはやできればすればいい程度のものではなく不可欠なツールである。これからはパーソナリティが演出する政治ショーではなく構造的な同盟関係の時代となる。
台湾は、半導体セキュリティ、クリーンエネルギーの技術交流、軍民両用の研究開発イニシアチブでのセクター固有の基本合意など、準条約的な合意枠組みも推進する必要がある。それにより、台湾は主要な戦略的セクターで信頼できるプレイヤーとしての役割を果たすことができるようになる。
VIII. 米国市場との関係を見直す:50州のリスクに対応する
米国に進出する台湾企業は、50州でそれぞれ異なる実情に直面しなければならない。労働法やインセンティブ、インフラは州により大きく異なる。新南向政策下での東南アジアへの進出で犯した過去の失敗が教えてくれるように、デューデリジェンスが不十分であると、規制による行き詰まりを招きかねない。
政府は法務に関する説明会や、政治リスクの評価、セクター別のガイダンスでアウトバウンド投資を支援しなければならない。画一的な米国進出戦略は時代遅れであり、必要なのは的を絞り、各州に合わせてリスクを調整することだ。具体的には、ハイテク産業地域の特定、労働組合員の割合が高い州の労働コンプライアンス状況の把握、地域のサプライチェーンハブとの調整などが挙げられる。
さらに重要なのは、米国に拠点を置く台湾系企業を戦略的メッセージングに取り込むことである。TSMC ArizonaやAUOのエネルギーベンチャーなどの企業は、2国間の取り組みや信頼構築の実証例の役割を果たしうる。こうした投資対象を共通のセキュリティおよびイノベーション基盤の一部と位置づけて発信していく必要がある。
IX. 次なるステップ:受動的な立ち位置から戦略的設計へ
台湾が受動的な外交を脱却するには、自らの民主的レジリエンスと世界に必要とされる技術力を、明確に戦略的資本へと転換する国家戦略を体制化しなければならない。それには、外務、経済計画、国家安全保障を担当する高官からなる、政府機関同士をつなぐタスクフォースを常設して、外交メッセージと産業支援の整合を図る必要がある。台湾は主要な同盟国から期待できる戦略的見返りを積極的に特定し、相手の気付きを待つのではなく、それを二国間の対話に反映させるべきである。価値観に基づくパートナーシップは、価値を明確に伝えることから始まるのだ。
次に、台湾は自らの戦略的貢献を数値化して、それを伝える能力を強化しなければならない。その1つに、グローバルなサプライチェーンや地域安全保障の枠組みから台湾を疎外することのリスクの費用対効果を、独立機関に評価してもらうことがある。こうした評価の結果を、米国や欧州、日本など主要国政府に対する的を絞ったロビー活動で交渉の根拠にすることができる。台湾は、安全保障と経済関連の言論を得意とする商業外交担当者を育成し、交渉を主導して、道義的理由からだけでなく戦略的必要性の観点から台湾の重要性を主張する必要がある。
X. まとめ:便利な存在から必要とされる存在へ
台湾は便利な存在に甘んじていてはならず、必要とされる存在になることにこだわらなければならない。戦略的有用性が重視される世界では、存在意義は誰かに与えられるものではなく自らが主張するものである。台湾の存続は、正しくあるかどうかだけでなく、必要不可欠な存在になれるかどうかにもかかっている。
台湾が存続し続けるためには、公の場で明確かつ自信を持って、自らの価値を主張することを学ばなければならない。戦略的プレゼンスとは、認められるかどうかではなく、自らの位置付けによって決まるのだ。台湾は席が用意されるのを待つのを止め、率先して話し合いの場を設け、主導していかなければならない。
「軽んじられた同盟国:台湾が自ら戦略的価値を主張すべき理由(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: トランプ米政権の関税政策 世界経済に打撃の懸念(写真:AP/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
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