みんかぶニュース 市況・概況

消費者心理の悪化に身構える米国市場 (1) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

配信日時:2025/03/14 11:40 配信元:MINKABU
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。 ●THE S&P 500 MARKET:2025年2月 個人的見解:最高値を更新するも市場はレンジ相場の展開となり、各種の交渉の終結が待たれる  2月のS&P500指数 は、各種発言、大統領令、政策といった、ワシントンで繰り広げられるイベントに限定的な反応しか示さず、それらのイベントがまだ進行中であり、交渉の一部であると見ているようでした。2025年2月の「限定的」な反応を具体的に挙げると、S&P500指数は1.42%の下落と許容できる下落幅にとどまったこと、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回ったこと、マグニフィセント・セブン銘柄が下落したことなどです。S&P500指数の2月のトータルリターンはマイナス1.30%でしたが、マグニフィセント・セブン銘柄を除くとプラス0.41%であり、年初来の指数全体のトータルリターンはプラス1.44%から、マグニフィセント・セブン銘柄を除くとプラス3.27%に浮上します。  上記のイベントの結果が米国、ひいては市場を変化させる可能性もありますが、市場の目先の懸念は消費者であり、消費者が悲観して(信頼感指数やセンチメント指数で示されます)支出を控えれば、企業利益が減少し、さらには雇用の減少にもつながりかねません。そうした消費者の悲観に加え、政府関連の雇用の不確実性と、それによる民間の雇用への影響や、関税導入によるインフレ再燃の可能性も懸念されます。雇用は引き続き堅調で、インフレ率も大幅に低下していますが、消費者は自身の認識に基づいて動くものであり、将来の利益に対する市場の認識を左右するのは消費者です。  2月にS&P500指数は1.42%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.30%)。1月は2.70%上昇(同プラス2.78%)、2024年12月は2.50%下落(同マイナス2.38%)でした。過去3ヵ月では1.29%下落(同マイナス0.97%)、年初来では1.24%上昇(同プラス1.44%)、過去1年間では16.84%上昇(同プラス18.41%)となりました。2024年通年では23.31%上昇(同プラス25.02%)、2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。  2月は11セクターのうち6セクターが上昇しました。1月は10セクター、12月は3セクターが上昇しました。2月のパフォーマンスが最高となったのは生活必需品で5.59%上昇しました(年初来では7.58%上昇、2023年末比では20.47%上昇)。パフォーマンスが最低だったのは一般消費財で、9.42%下落しました(同5.44%下落、同22.10%上昇)。  2月は値下がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数を上回りました。2月の値上がり銘柄数は248銘柄でした(平均上昇率は6.06%)。1月は355銘柄が値上がりしました(同6.63%)。2月に10%以上上昇した銘柄数は40銘柄(同14.18%)で、1月の79銘柄(同13.84%)から減少し、1銘柄(1月は2銘柄)が25%以上上昇しました。一方で、値下がり銘柄数を見ると、2月は255銘柄が値下がりしました(平均下落率は7.45%)。1月は148銘柄が値下がりしました(同4.22%)。2月に10%以上下落した銘柄数は72銘柄(同15.69%)で、1月の15銘柄(同14.73%)から増加し、5銘柄(1月は1銘柄)が25%以上下落しました。2024年通年では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数が332銘柄(平均上昇率は28.17%)、値下がり銘柄数が169銘柄(平均下落率は16.07%)でした。  3月は、関税の適用延長が期限を迎え、議会では財政調整法案(減税の延長、政府支出の削減、政府債務の上限引き上げが盛り込まれる予定です)の採決が行われ、政府機関が閉鎖される可能性があるなど、いくつかの答えが出る重要な月となりそうです。あるいは、再び「様子見」の月となるかもしれません。いずれにせよ、より多くの「既知」が明らかになるにつれ、市場は方向性を持ち始めるでしょう。好材料は経済の基調が力強いことで、雇用や需要は依然として高水準にあり(求人件数は減少しており、適切にマッチしていない可能性がありますが)、市場や住宅を通じて富は潤沢で(均等に分配されていないとしても)、消費者は目先の満足(そのための支払い能力を有しています)を重視しているように見えます。主な悪材料は引き続き、米国政府の支出が収入を大幅に上回っていることで、債務費用が予算に食い込み始めていますが、支出を切り詰めるのは痛みを伴います。政治を巻き込まないと、システムが複雑なため、その場しのぎ以上の対策が必要となり、はるかに多くの時間と人員を要しますが、現時点では時間も人員も不足している状況です。 ●インデックスの動き  ○2月に入っても1月から続く大統領令や政策転換が次々と発表されました。トランプ大統領は政策を打ち出し、関税を実行し(一部は延期されましたが)、イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)は雇用面で行動に出始めましたが、双方で裁判所が関与しています。市場の反応は弱く、ボックス圏(前月末から1.77%上昇~3.36%下落のレンジ内)で推移しました。市場は、政府関連の動きの多くがまだ「進行中」で、交渉の一部であると見ており、政府が何らかの表明をすれば、政策のみならず、市場の水準や株価もすぐに動くと考えているようです。S&P500指数は2月に終値での最高値を2回更新しました(6144.15)。1月の最高値更新は1回、米大統領選以降の最高値更新は13回となりました。しかし、個人消費をめぐる懸念の高まりを受け、最高値の水準を維持することはできませんでした。   ⇒2月のS&P500指数はレンジ相場の展開となり、1.42%下落して月末を迎えました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.30%)。1月は2.70%の大幅上昇(同プラス2.78%)、2024年12月は2.50%の大幅下落(同マイナス2.38%)でした。   ⇒過去3ヵ月では1.29%下落(同マイナス0.97%)となりました。   ⇒年初来では1.24%上昇(同プラス1.44%)となりました。   ⇒2025年2月末までの1年間では16.84%上昇(同プラス18.41%)となりました。   ⇒2024年通年では23.31%上昇(同プラス25.02%)、2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。   ⇒2月は値下がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数を上回りました。248銘柄が値上がりしたのに対し、値下がりは255銘柄でした(1月は355銘柄が値上がりし、147銘柄が値下がりしました。また、2024年通年では332銘柄が値上がりし、169銘柄が値下がりしました)。   ⇒2月は19営業日のうち10営業日で上昇しました(1月は20営業日のうち12営業日で上昇)。また、4営業日で1%以上変動し、そのうち2営業日が上昇、2営業日が下落でした。1月は、5営業日で1%以上変動しました(2営業日が上昇、3営業日が下落)。2024年通年では50営業日で1%以上変動しました(31営業日で上昇し、このうち3営業日で2%以上上昇。また19営業日で下落し、このうち4営業日で2%以上下落)。   ⇒2月は11セクターのうち、6セクターが上昇しました(1月は11セクターのうち、10セクターが上昇)。  ○S&P500指数の時価総額は2月に7110億ドル減少して、50兆4430億ドルとなりました(1月は1兆3490ドル増加)。2024年通年で時価総額は9兆7660億ドル増加、2023年は7兆9060億ドル増加、2022年は8兆2240億ドル減少でした。  ○ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は、2月中に終値での最高値を更新することはありませんでした(2024年通年では48回更新、最後の終値での最高値更新は2024年12月の4万5014.04ドルで、同じ日に取引時間中の最高値4万5074.63ドルも記録しました)。ダウ平均は2月に1.58%下落して(配当込みのトータルリターンはマイナス1.39%)4万3840.91ドルで月を終えました。1月は4.70%上昇して(同プラス4.78%)4万4544.66ドル、12月は5.27%下落して(同マイナス5.13%)4万2544.22ドルでした。過去3ヵ月では2.38%下落(同マイナス1.98%)、年初来では3.05%上昇(同プラス3.32%)、過去1年間では12.42%上昇(同プラス14.41%)しました。2024年通年では12.88%上昇(同プラス14.99%)、2023年は13.70%上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%下落(同マイナス6.86%)でした。  ○2月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、1.09%と1月の1.03%から上昇しました(12月は0.91%)。年初来では1.06%でした。2024年通年は0.91%、2023年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.41%)。  ○2月の出来高は、1月に前月比8%増加少した後に、同10%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では18%増加となりました。2025年2月までの12ヵ月間では前年比1%増加しました。2024年通年では前年比2%減少しています。2023年は同1%減で、2022年は同6%増でした。  ○2月は1%以上変動した日数は19営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)、2%以上変動した日はありませんでした。1月は1%以上変動した日数は20営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数が9日(上昇が4日、下落が5日)、2%以上変動した日はありませんでした。2024年通年では、1%以上変動した日数は50日(上昇が31日、下落が19日)で、2%以上変動した日数は7日(上昇が3日、下落が4日)でした。2月は19営業日中9日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上となった日が2日ありました。対して1月は1%以上の変動が20営業日中9日で、2%以上となった日はありませんでした。年初来では1%以上の変動が18日、2%以上の変動が2日でした。2024年通年では1%以上の変動が83日、2%以上の変動が11日でした。2023年は1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日でした。  過去の実績を見ると、2月は52.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.92%、下落した月の平均下落率は3.44%、全体の平均騰落率は0.06%の下落となっています(平均がマイナスとなる3ヵ月のうちの1つ:2月が-0.056%、5月が-0.059%、9月が-1.13%)。2025年2月のS&P500指数は1.42%の下落でした。  3月は61.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.34%、下落した月の平均下落率は3.85%、全体の平均騰落率は0.60%の上昇となっています。  今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2025年は3月18日-19日、5月6日-7日、6月17日-18日、7月29日-30日、9月16日-17日、10月28日-29日、12月9日-10日となっています。 ※「消費者心理の悪化に身構える米国市場 (2)」へ続く 株探ニュース

Copyright (C) MINKABU, Inc. All rights reserved.

ニュースカテゴリ