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武者陵司「ナショナリズムの覚醒が日経平均を6万5000円に押し上げる」(後編)<新春特別企画>
配信日時:2026/01/02 15:00
配信元:MINKABU
※ナショナリズムの覚醒が日経平均を6万5000円に押し上げる」(前編)から続く
(3)AI革命により経済の繁栄を持続できるか…陰の主役株式資本主義
困難な地政学環境にありながらも、米国経済は好調、株価も史上最高値を更新している。そのカギはAI革命と株式資本主義(=株高による信用創造)にある。米中経済持久戦に勝つためには、AI革命の遂行により、米国民の生活水準を新たな高みに押し上げなければならない。現在の米国経済繁栄のモデルはそれが可能だろうか。多面的検討が必要である。
スマートフォンの世界需要がピークアウトし、ハイテクブームはいったん踊り場を迎えた。しかし、「チャットGPT」の登場が事態を一変させ、2024年から米国経済はAI牽引の新たな成長フェーズに入った。牽引車 GAFAMの直近の5社時価総額合計は15兆ドル、米国GDPの5割規模にまで増大した。たった5社の巨大企業の塊が、まるでスタートアップのベンチャー企業並みの目覚ましい勢いで成長を続けている。鍵はAIが引き起こす劇的生産性の向上にある。ウォール・ストリート・ジャーナルは単位機能(=トークン、つまり質問と応答)あたりの価格が最低レベルのAIでも年率9分の1以上に低下している、との報告を伝えている。2年で2倍の集積度の上昇(=2年で2分の1の価格低下)という半導体のムーアの法則とは桁が違う指数関数的(exponential)変化である。かつて電気やインターネットの普及が人々の生活とビジネスを一変させたが、それ以上の変化が起きることは間違いない。
このGAFAMやエヌビディア、オラクル、オープンAI、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]などのプレーヤーは、経済金融のプラットフォームとしての株式資本主義に立脚している。GAFAM5社を見ると、これまで利益の9割を自社株買いと配当によって株主に還元しきた。無駄な資本を貯めこまないため、ROE(自己資本利益率)はおおむね60%前後の高水準で推移している。それにもかかわらず投資は自己資金(フリーキャッシュフロー)の範囲内であり、借入金はごく少なく、自己資本比率は6~7割と高い。GAFAMが実現しているモデルは、利益の全てを株主に還元し、高株価により高い資金力を獲得し、高投資を続けることで高い利益成長を実現するという好循環である。
●AI時代のエコノミクス→初期投資急増/生産性上昇とホワイトカラー失業
当面、データセンター投資などAI設備の初期投資が急増し、経済を押し上げている。また、GAFAMなどのハイテク企業はAIを活用した新サービスを立ち上げ、利益成長を加速させている。しかし、AIは市場調査や書類作成、グラフィックデザイン、プログラミングなどホワイトカラーの職を奪い、労働需給の悪化も引き起こしている。増加する企業利益を如何に家計所得と消費増加につなげるのか、手立てが必要である。
コロナショック後の月次家計収入と消費の増加趨勢(年率換算)を見ると、賃金は家計所得増加の半分に過ぎず、残りが配当・金利等の資産所得と財政支援によって賄われていることが分かる。この家計所得には資産売却益は含まれていないが、それを考慮すれば家計所得の株式関連所得依存度は2~3割を超えるだろう。家計が貯蓄を取り崩して消費を続けてきたのは、膨大な資産価格上昇の評価益があったからこそである。このように余剰フローの主経路として株式市場が決定的な役割を果たしている。
また、公的支援や減税による財政を通した所得移転が必須である。高資産価格を誘導し維持させる金融政策と、財政による需要圧力を高める高圧経済政策が必要になっていく。トランプ政権の金融緩和と減税に対するこだわりは、AI革命と中国からのデフレ圧力に対抗するためには必要なものである。
GAFAM+エヌビディアの突出した株高を、バブルと切り捨てる悲観論があるが、それは正しくないだろう。確かにS&P500時価総額に占める マグニフィセント・セブン(GAFAM+エヌビディア、テスラ)のシェアは10年前の8%から32%まで上昇し、オーバープレゼンスに見える。また、高PERで割高にも見える。マグニフィセント・セブン7社のPERは30倍と、S&P500社の22倍、マグニフィセント・セブンを除くS&P493社の18倍を大きく凌駕している。しかし、このマグニフィセント・セブン7社の利益成長率は年率20%、S&P500平均の利益成長は7%なので、マグニフィセント・セブンの突出した成長が3、4年も続けばむしろ割安に見えるバリュエーションであり、決して割高と言えない。益回り=10年国債利回りをフェアバリューと見たバリュエーションモデル(FEDモデル)で見ると、現状は割安局面が終わりフェアバリューに戻った局面、1995年から1996年当時と同レベルのバリュエーションである。バブル崩壊を懸念するのではなく、むしろ積極的にリスクをとる場面であると考える。
●ドルの信認に陰りなし、2026年も株高環境
信用創造に基づく需要創造の脆弱性を心配する向きは多い。財政赤字による金利上昇、貿易赤字など対外債務の増加によるドル信認の低下、株・不動産価格の下落などが景気後退や、経済繁栄モデルの崩壊すら引き起こす、という懸念は消えない。金利、ドル、株・不動産などの資産価格のコントロールは経済運営の要である。
執拗に上昇を続ける金価格がドル不安の高まりの現れとの懸念があるが、それは正しくない。過去を検証すると、金とドルとの連動関係は、2002年から2011年のドル下落が金上昇と一致しているにすぎない。ドルは米国の貿易収支(対GDP)との相関が強いが、米国貿易赤字は関税導入以降大きく減少しており、それはドル高要因といえる。
では、金価格上昇は何によってもたらされているのだろうか。ドル決済から締め出されたロシアや中国の金保有の増加が第一の要因であるが、それ以上にドル信用の供給量と連動していると考えられる。1980年の金高はニクソンショック(ドル金交換停止)による信用増大、2011年までの金高はグラス・スティーガル法廃止による信用増大と照応している。では、いま米国で増大が進行しそうな信用とは何か、それは暗号資産(仮想通貨)かもしれない。
トランプ政権の改革の中でも、際立って歴史的意義を持つものは、 ステーブルコイン革命であろう。将来から振り返った時に、新通貨制度の発明であった、と見なされるかもしれない動きである。2025年7月成立、2027年以降に施行されるGENIUS(ジーニアス)法の本質を大胆に整理すると、通貨発行者を権威の象徴・法王庁=中央銀行から民間・市場へと大転換させることであろう。(A)通貨発行の主体→政府・中銀から民間・市場へ、(B)通貨価値の源泉→これまでの政府権力(=徴税権)からブロックチェーンに集約される技術と市場の英知に、(C)通貨流通の範囲→これまでの国境を越え、サイバー空間も含めた全宇宙に、という大構想が見えてきた。ステーブルコインという新たな通貨発行は、米国にとって新しい需要創造手段になると思われる。第一に、通貨発行企業は担保として、主に米国国債の保有が義務づけられるので米国債需要が高まる。そして、ステーブルコインの発行を海外企業に認めれば、米ドルの信用創造、米ドルの需要を一層強める。
●2026年の世界・米国経済と市場は堅調に推移すると想定される
米国経済、欧州経済、日本経済はともに「高圧経済化+軍事経済化」により、二つのデフレの風(中国とAI化)を打ち返す必要がある。当面は現在の繁栄の源泉である、株式資本主義を推進せざるを得ないだろう。
(4) 2026年から高市保守革命で日本ルネサンスへ
●日本の失われた30年は完全に終わった
アベノミクスがスタートした直前の2012年と比較すると、株式時価総額は3.9倍(301兆→1161兆円へ)、法人企業経常利益は2.4倍(48.5兆→114.8兆円へ)、一般会計税収は2倍(40.9兆→80兆円強へ)、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)運用益は6.6倍(25兆→166兆円へ)、外人観光客4.8倍(835万→4000万人へ)と目覚ましい上昇を見せた。名目GDPは1.24倍、就業者数は1.09倍、女性就業率61%から85%へ、最低賃金は759円から1021円へと大きく改善した。デフレが終わり、0%であった政策金利は0.75%まで引き上げられた。1ドル=85円であったドル円レートは156円に上昇した。
米国技術のコピーと、米国市場での販売を基本とした戦後日本企業のビジネスモデルは、Only One(オンリーワン)分野、競争のないBlue Ocean(ブルーオーシャン)へと戦略転換した。円高対応のグローバル化も大きく進展し、グローバルトップ企業も多く現れた。米中対立と円安により、世界需要が日本に集中し始めた。コーポレートガバナンス改革により株式資本主義がようやく日本にも定着し始め、企業の配当は対GDP比0.9%(2000年度)、1.8%(2012年度)から6.2%(2024年度)へと米国以上の水準まで高まった。家計金融資産(年金保険の準備金を除く)の7割を占めていた現預金が徐々に減少し始め、貯蓄から投資への流れが確かになった。
ただし、国民生活は失われた30年のままである。実質家計消費は2012年度末302兆円、2013年度末311兆円に対して、2025年3Qは298兆円(2020年基準)と、むしろ低下している。経済成長率もG7の中でも最低水準が続いている。デフレ経済下で強行された「社会保障と税の一体改革」により、国民負担率は2011年度の38.8%が2022年度48.4%、2024年度(推)46.2%と急上昇したためである。しかし、これから高市政権の高圧経済政策による減税が打ち出され、実質消費も回復し始めるだろう。国内投資も上向き、消費と投資の拡大好循環が起きることはほぼ確かである。
●日本不振の真因……大義の喪失(他力本願の日本国家像80年)終焉へ
それにしても、なぜ日本はかくも長き不振に陥ってしまったのだろうか。日本は明治維新以降の改革により植民地化を逃れられたばかりか、非西欧にあって唯一民主主義を受容し、工業化を成し遂げた国、という自負があった。敗戦後の奇跡のような復興を遂げたことも、日本の固有の長所が成せるものと意識された。「Japan as number one(ジャパン・アズ・ナンバーワン)」を支えた誠実、勤勉、公正、協調的な国民性は日本の長所として讃えられた。その国民的長所は短期間に変わるはずがないのに、全く見えなくなってしまったのである。
さまざまな分析がなされているが、最も本質的な原因は大義、つまり国の羅針盤の喪失であろう。
明治の日本には先進国に追いつき、民主主義を受容し、富国強兵を成し遂げるという強烈なナショナリズムが大義であった。
戦後の昭和の羅針盤は、平和主義と経済主義に変わった。戦争の反省と米国軍事従属の大枠の中で、ナショナリズムを棚上げし、与えられた運命の中で賢くふるまう「町人国家論」(天谷直弘氏)が広く受け入れられた。このナショナリズム棚上げの状態は、米国の日本叩きにより破綻し、大義を持たない日本は茫然自失に陥った。
失われた30年は、まさに大義喪失の時代であった。企業は脱日本・グローバル化で生き残りを図り、個人は海外との接触を減らし内向きになる「引きこもり」で精神的安寧を求めた。この股割き状態の中で、政治家と官僚は自立心を失っていた。最大の政策目標が財政赤字削減、老後不安を担保する社会サービスの充実などという矮小性であった。
●高市政権登場の必然と歴史的使命
中国の強大化とトランプ政権の安全保障戦略の大転換は、日本に再び大義に基づく国家経営を迫っている。ナショナリズム、力への信仰、現実主義へのシフトが必要であることは、自明である。政治家や言論エリートより早く、国民・有権者がこのことを気づき始めた。2025年7月参院選挙での改革派保守野党の大勝、自民党内で少数派であった高市氏の総理総裁選出、自公連立から自民維新への連立の組み換えと改革派保守野党の政権協力などは、有識者やオールドメディアを置いてきぼりにする形で、民意が推し進めた変化である。ここに高市政権登場には必然性と歴史的意義があることを肝に銘ずるべきである。
高市政権は圧倒的な国民の支持の下で、保守ナショナリズム革命を遂行していくだろう。その端緒となる解散総選挙から動きが出てくる。富国強兵、財政再建の犠牲にされてきた国民生活の向上、米国に仕組まれてきた国際分業の有利化(例えば台湾から日本への生産移転)は必須である。円安は日本への生産移転を促進するだろう。
●日本には保守・ナショナリズム革命を成功に導く二つの力がある
保守・ナショナリズム革命を成功に導く、米・欧・中にはない要素の第一は、経済資源と投資力である。高い企業収益力、潤沢な貯蓄・資本力、実は豊かな財政出動余力である。また、世界で最も相互信頼が高い国=トラストの国=最低のリスクプレミアムの国である。
第二は、国民的結束力である。現代日本人は初めて自らの足で立つ喜びを共有するはずである。大義に結集する条件は日本が世界で一番揃っている。同質的国民性、高まっていた大義への希求、熾烈な日本の国際環境(危険な隣国である中国・ロシア・北朝鮮、頼れない覇権国である米国)、禁じられていたナショナリズムの復権(愛国心、国家主義の名誉回復)などである。
このようにして日本に大義が戻れば、政策や企業行動のベクトルが揃い、決断の時間を早め、変化を促進する。意見が対立する財政論議にも直ちに解が下されよう。
高市改革は急進展するだろう。それは最も力強い株価支援策となる。
(2026年1月1日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン394号」を転載)
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