注目トピックス 日本株
三越伊勢丹---大幅続伸、ドル高円安進行でのインバウンド需要拡大を期待
配信日時:2024/10/07 13:23
配信元:FISCO
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アンジェス Research Memo(5):OMNIプラットフォームはゲノム編集技術のなかでも安全性の高さに強み
*16:15JST アンジェス Research Memo(5):OMNIプラットフォームはゲノム編集技術のなかでも安全性の高さに強み
■アンジェス<4563>のEmendoBioの開発状況1. ゲノム編集技術とOMNIプラットフォームの特徴ゲノム編集とは、特定の塩基配列(ターゲット配列)のみを切断するDNA切断酵素(ヌクレアーゼ)を利用して、狙った遺伝子を改変する技術を指す。2012年に従来より短時間で簡単に標的とするDNA配列を切断できるCRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)と呼ばれる革新的な技術が登場したことで、製薬業界においてもゲノム編集技術を用いて新薬の開発を行う動きが活発化した。米Vertex PharmaceuticalsとスイスのCRISPR Therapeuticsが同技術を用いて共同開発した遺伝性血液疾患「鎌状赤血球貧血症※」を適応症とした治療法が、2023年11月に英国、同年12月に米国で初めて承認された。患者から採取した造血幹細胞をゲノム編集技術で遺伝子改変し、それを注射投与で体内に戻すことで治療効果を得る治療法である。※ 鎌状赤血球貧血症とは、赤血球に含まれるヘモグロビン(酸素の運搬に使われるタンパク質)が遺伝子異常によって変形することで赤血球が鎌状となって壊れやすくなり貧血の症状を起こす疾患。症状が悪化すると壊れた鎌状赤血球によって毛細血管が遮断され激痛が生じるほか、長期にわたる場合、酸素供給量が低下することで臓器にも悪影響を及ぼし、腎不全や心不全を惹き起こすケースもある。米国内の患者数は約10万人で黒人に多いと言われている。従来は、白血球の型である「HLA型」が一致するドナーから造血幹細胞の提供を受ける以外に治療の選択肢がなかった。承認された治療法は、血管閉塞性危機が定期的に起きる12歳以上の患者を対象としている。CRISPR/Cas9技術は狙った遺伝子とは異なる箇所(標的DNA配列と似た配列)を切断してしまう「オフターゲット効果」があり安全性が課題とされてきたが、今回初承認となったことでハードルを1つクリアした格好だ。これに対してEmendoが独自開発したOMNIプラットフォームは、標的のDNA配列を高精度に切り取る独自のヌクレアーゼ(OMNIヌクレアーゼ)を効率的に探索し最適化することで「オフターゲット効果」を回避する安全性の高い技術であることが特徴だ。自社開発したヌクレアーゼのうち250超については特許も申請している。ゲノム編集技術による医薬品の開発を進める場合には、効率性だけでなく安全性も強く求められるため、OMNIプラットフォームは強みになると弊社では評価している。また、もう1つの特徴としてアレル特異的遺伝子編集が可能な点が挙げられる。アレル特異的遺伝子編集とは、対をなすアレル(対立遺伝子)の一方を傷つけることなく、異常のある遺伝子のみをターゲットにして編集することを言う。ヒトは父型と母型の2つのアレルを一対で持っており、片方のアレルが異常配列となることで発症する遺伝病を優性遺伝(機能獲得型変異/ハプロ不全)、両方のアレルに必要な遺伝子が欠損することで発症する遺伝病を劣性遺伝(複合型ヘテロ接合体/ホモ接合体)、または伴性遺伝(性別によって発症の仕方が異なる遺伝病)と呼ぶ。遺伝性疾患のうち、アレル特異的遺伝子編集の対象となるのは優性遺伝と劣性遺伝のうちの一部であり、遺伝性疾患の過半を占める。これはOMNIプラットフォームを活用したゲノム編集による治療法の開発領域が幅広いことを意味する。Emendoの調べによれば、遺伝性疾患の治療薬の市場規模は全体で約2兆円、このうち1.1兆円がOMNIプラットフォームの対象領域になり得ると見ており、潜在的な成長ポテンシャルは極めて大きい。ゲノム編集技術を用いた開発が活発化するなかで、OMNIプラットフォームに対する注目度も一段と高まることが期待される。EmendoはOMNI技術のライセンサーとして収益化を目指す方針2. 事業戦略Emendoは2023年まで独自のOMNIヌクレアーゼの開発にあたり、その探索と最適化を労働集約的に行ってきたため、開発人員が100名を超えていた。現在はこれまで蓄積した大量のデータベースとコンピューティング技術を活用した知識集約型の研究開発体制に移行しており、イスラエルの研究所の人員も2024年6月末時点で23名までスリム化し(一部はパレスチナ紛争で徴兵されたケースもある)、ゲノム編集技術に関する研究者とITエンジニアで構成されている。今後の事業戦略としては財務状況を鑑み、これまで開発してきた250を超えるOMNIヌクレアーゼやOMNIプラットフォームのライセンス活動に集中し、自社での治療薬の開発は一旦、凍結した。ライセンス契約に関しては、2024年3月にがん免疫療法の一種である遺伝子改変T細胞療法※のなかでも固形がんに効果があるとされるTCR-T細胞療法の開発で業界をリードするスウェーデンのAnoccaと、OMNI-A4ヌクレアーゼの使用権についての非独占的ライセンス契約を締結した。AnoccaはOMNI-A4ヌクレアーゼを用いて、難治性固形がんにおけるKRAS変異を標的とした初の臨床試験を2024年に開始する予定だ。Anoccaでは、ゲノム編集技術としてOMNIプラットフォームとCRISPR/Cas9の両方の技術を試した結果、OMNIプラットフォームを高く評価し、今回の契約に至っている。今回の契約締結によってEmendoは契約一時金(50万米ドル)と開発マイルストーンを合わせて総額で最大約100百万米ドルを受領する可能性があり、製品が販売された場合にはロイヤリティも受領することになる。※ 遺伝子改変T細胞療法とは、患者自身から取り出したT細胞内にがん抗原特異的T細胞受容体(TCR)やキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子改変操作によって発現させ、同細胞を増殖させて体内に戻すことでがん細胞を攻撃する治療法。国内ではCAR-T細胞療法の「キムリア(R)」(ノバルティス ファーマ(株))が2019年に製造販売承認されている。CAR-Tは血液がん領域、TCR-Tは固形がん領域で副作用の少ない治療法として開発が進められている。そのほかの企業との契約交渉についても、特定の開発プロジェクトでOMNI技術を利用したい企業と、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業等がある。Emendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結し、幅広い企業や医療機関等で同技術を活用してもらい、遺伝性疾患の治療技術の進歩に貢献したい考えだ。また、米国のアカデミアと連携してがん免疫療法分野における研究を本格的に開始する予定で、良好な研究成果を得ることができればライセンス契約につながる可能性がある。なお、今まで自社開発を進めてきたパイプラインについても、ライセンスアウトに向けて候補先企業等の探索を進めている状況だ。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2024/10/07 16:15
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アンジェス Research Memo(4):早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に売上を計上
*16:14JST アンジェス Research Memo(4):早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に売上を計上
■主要開発パイプラインの動向2. ゾキンヴィアンジェス<4563>は、HGPS及びPDPL治療剤「ゾキンヴィ」について、2024年1月に厚生労働省より製造販売承認を取得し、2024年5月27日より販売を開始した。乳児早老症とも言われるHGPSはLMNA遺伝子の突然変異により、ファルネシル化※された変異タンパク質であるプロジェリンが生成されることによって発症し、症状としては深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、動脈硬化の促進などがある。平均寿命は14.5歳と報告されている致死性の高い疾患である。また、PDPLはLMNAやZMPSTE24遺伝子の変異によりプロジェリンに類似したファルネシル化タンパク質を生成し老化を促進する。「ゾキンヴィ」は、核膜と強固な結合を形成するファルネシル化した変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害する作用を持ち、HGPS患者の死亡率を72%減少させ、平均生存期間を4年程度延長させるというデータもある。安全性については、多くの患者が10年以上にわたって「ゾキンヴィ」治療を継続しており、副作用も嘔吐や下痢、悪心等その大半が軽度または中等度のものである。なお、HGPS及びPDPLの世界における患者数は600人程度で、日本でも難病指定され、患者数は数名程度と報告されている。※ タンパク質に行われる修飾の一種。ファルネシル化酵素により、タンパク質の末端には疎水性のプレニル基が結合する。末端が疎水性になったタンパク質は、その疎水性の部分を細胞膜内に挿入するため、タンパク質は細胞膜(細胞の内側)につなぎ留められる。つまり、ファルネシル化されたタンパク質は、細胞の内側の細胞膜上に存在するようになる。「ゾキンヴィ」の患者1人当たりの年間売上高は薬価ベースで1億円強(卸販売会社経由での販売となるため、同社の売上高はやや割り引かれる)が見込まれる。現在、6人の患者がリストアップされ、順次服薬を開始しているようで、2024年12月期第2四半期の売上高は151百万円、仕入原価として100百万円を計上した。なお、仕入れについては円建てで行っているため、為替変動の影響は受けない。また、「ゾキンヴィ」の導入先であったアイガーが2024年4月に経営破綻したことに伴い、「ゾキンヴィ」の権利が米国のバイオ医薬品会社であるSentynl Therapeutics,Inc.に譲渡されたが、同社がアイガーと締結した契約についてもSentynlが継承することになり、今後も日本で同社が同じ条件で販売することに変わりない。NF-κBデコイオリゴDNAは慢性椎間板性腰痛症を対象とした第2相臨床試験の結果が2026年前半にも判明する見通し3. NF-κBデコイオリゴDNANF-κBデコイオリゴDNA(開発コード:AMG0103)は、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う転写因子となるタンパク質(NF-κB)に対する特異的な阻害剤である。NF-κBがゲノムの特定の配列領域(炎症を引き起こすゲノム)に結合し、スイッチが入ることで痛みなどの炎症の原因となるタンパク質が生成されるが、NF-κBデコイオリゴDNAを体内に入れることで、炎症を引き起こすゲノムとNF-κBが結合しにくくなり、炎症の原因となるタンパク質の生成を抑制する。2023年3月に塩野義製薬と国内第2相臨床試験への協力に関する契約を締結(開発費の一部を負担)し、同年10月から第2相臨床試験を開始した。予定症例数を92例※とし、最初の2例で最大投与量となる20mgの安全性試験を実施、安全性及び忍容性が確認されたことを受け、10mg群、20mg群、プラセボ群の3群(各30例、単回投与)に分類した比較試験を実施する。観察期間は12ヶ月間で、有効性については「痛み」の指標となるNRSスコアの変化で評価する。20ヶ所の医療機関で実施し、2025年内にも被験者登録が完了する見込みとなっている。順調に進めば2026年前半に臨床試験の結果が発表される見通しだ。結果が良好だった場合にはライセンスアウトする意向だが、塩野義製薬との協議次第となる。※ 対象者は18~75歳で3ヶ月以上持続する腰痛を有し、腰痛のNRSスコア(自己申告による痛みの指標)が臀部痛や下肢痛のNRSスコアよりも大きく、腰痛に対する保存的治療で効果が不十分な患者とする。スクリーニング時点の腰痛のNRSスコアは4~9の患者(中等度から強い痛み)で、かつ、投与実施日当日及び前日のNRSスコアが4~9の患者。国内の臨床試験に先駆けて米国で実施した後期第1相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検試験、25症例、観察期間12ヶ月)の結果は、安全性及び忍容性に問題がなかったほか、有効性においても投与量3群(0.3mg、3.0mg、10.0mg)のうち最大投与量群において投与後早期に腰痛が大幅軽減し、腰痛の軽減も12ヶ月後まで継続したことが確認された。治験担当医師からも「AMG0103は素晴らしい安全性プロファイルを有し、12ヶ月にわたり腰痛を有意に軽減しており、慢性椎間板性腰痛症に苦しむ患者に対して画期的治療薬となる可能性があると考えています。さらに、腰痛の軽減に加えて、椎間板の高さを回復させる可能性が示唆されたことは注目に値します」とのコメントが得られた。慢性椎間板性腰痛症に関しては、一般療法としてステロイド注射が行われるケースが多いが、同治療薬との比較においても同等以上の効果が得られたようだ。ステロイド注射が一時的な対処療法であるのに対してAMG0103は炎症を抑制する効果があるほか、椎間板の高さも回復することで腰痛の症状が長期にわたって改善したものと考えられる。慢性椎間板性腰痛症で苦しむ患者に対しては、現在内服・外用薬治療など対処療法が主に行われている。AMG0103は単回投与で長期間の効果持続が見込まれるため、患者のQOL向上にも貢献する。開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性があり、2026年前半にも発表される臨床試験の結果が注目される。新型コロナウイルス感染症及びARDS治療薬「AV-001」は前期第2相臨床試験の2024年内の終了及び2025年のライセンスアウトを目指す4. 新型コロナウイルス感染症及びARDS治療薬(Tie2受容体アゴニスト)カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト)※は、2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患の治療薬として共同開発を進めてきたが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があるとみて、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を実施している。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株では重篤な肺炎を発症する感染者が急減したことから、現在は対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含むARDSに拡大し(FDA承認済み)、目標症例数も当初予定の約120例から約60例に縮小したうえで臨床試験を進めている。60名を投与量で3群に分け、「AV-001」と標準治療薬またはプラセボと標準治療薬のいずれか投与し、安全性及び忍容性と有効性を評価する。※ 同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。ARDSの患者数は米国だけで26万人いる。2024年8月時点でコホート2の被験者登録が完了しており、問題が無ければコホート3に進む予定である。目標としては2024年内に臨床試験を完了し、良好な結果が得られればライセンスアウトする意向だ。臨床試験完了時期が2025年前半にずれ込む場合もあるが、ライセンスアウトする候補先企業へのプレゼンテーションも開始しており、臨床試験の結果が良好であれば2025年内にも導出が決まる可能性がある。なお、「AV-001」の開発にあたっては米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから助成金の一部を受領している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2024/10/07 16:14
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アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療用製品は米大手製薬企業とのパートナー契約締結を目指す
*16:13JST アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療用製品は米大手製薬企業とのパートナー契約締結を目指す
■主要開発パイプラインの動向アンジェス<4563>の主要開発パイプラインには、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNAや、提携先のVasomuneと共同開発中のTie2受容体アゴニスト、アイガーから導入した「ゾキンヴィ」がある。1. HGF遺伝子治療用製品HGF遺伝子治療用製品は血管新生作用の効果を活用して、閉塞性動脈硬化症のなかでも症状が進行した慢性動脈閉塞症向け治療薬として開発が進められてきた。慢性動脈閉塞症とは、血管が閉塞することによって血流が止まり、組織が潰瘍・壊疽を起こして最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患である。カテーテル治療や血管バイパス手術などが行われるが、手術ができないケースも多く、新たな治療法の開発が望まれている。HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に複数回注射投与することによって新たな血管を作り出し、血流を回復させることで潰瘍の改善を図るものである。国内では2019年3月に「標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能、効果または性能として、条件及び期限付き承認を取得し、同年9月より「コラテジェン(R)筋注用4mg」として提携先の田辺三菱製薬を通じて販売を開始した。用法は、虚血部位に対して筋肉内投与を4週間間隔で2回行い(4mg/回)、症状が残存する場合には4週間後に3回目の投与もできる(薬価は約61万円/1瓶(4mg))。条件及び期限付き承認となるため、製造販売後承認条件評価を実施し、同結果をもって2023年5月に本承認の申請を行ったが、二重盲検の国内第3相臨床試験成績を再現できなかったことから、2024年6月に申請を一旦取り下げた。今回の承認申請取り下げによって、国内での「コラテジェン」の販売は終了となる。ただ、製品売上高は2023年12月期実績で23百万円と少ないため、販売終了による2024年12月期業績への影響は軽微である。国内の開発戦略は今後の米国での開発動向を見て決定する方針だ。弊社では今回の開発戦略変更について、米国で実施した後期第2相臨床試験で想定以上の好結果を得られたことが影響したものと推察している。国内では下肢切断リスクの高い重度の患者※1を対象としてきたが、米国では2019年6月に改定された包括的高度慢性下肢虚血に関するグローバル治療指針※2や治験担当医師の提案を踏まえて、下肢切断リスクの低いステージ1~2の患者を対象に臨床試験を実施した。治験担当医師は、重症下肢虚血の患者はがんと同様に早期に治療を開始することが重要との仮説を立てたようで、治験結果でその仮説が証明されたようだ。※1 投与対象肢の動脈に閉塞又は狭窄部位が認められ、かつ潰瘍を有していること(平均10mm程度、最大約30mmまで)。血行再建術の適応が困難なこと。既存の内科的治療や処置による症状改善が認められないこと。血行動態の指標が一定水準以下であることなど。※2 グローバル治療指針(Global Vascular Guideline:GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic limb-threatening ischemia)の初期段階から適切な治療マネジメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。当ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、米国での後期第2相臨床試験は下肢切断リスクの低いclinical stage1と2を対象とした。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されている。米国の後期第2相臨床試験では、主要評価項目として「潰瘍の改善」と「血流の改善」を設定し、HGF遺伝子治療用製品またはプラセボを4週間の間隔を置いて4回投与する二重盲検比較試験を実施した。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分け12ヶ月の観察期間を設けてデータ収集を行った(被験者数は途中脱落者も想定して全75例を組み入れ)。当初は2024年4~6月にトップラインデータを発表する予定であったが、想定以上の好結果が得られたことで、治験担当医師が論文を作成し、2024年秋頃に権威ある学会や学術紙で発表する予定だ。同社もそれを受けて発表する。治験結果については、4mg/回の投与群でも明確な有効性が確認できたほか、潰瘍の状態についても改善だけに留まらず治癒した例も多くあったようだ。日本の臨床試験結果との違いに関して、同社では被験者の症状(軽度から中等度を対象)や投与回数(4回)の違いに加えて、経過観察期間中の患者の管理体制の違いが影響したのではないかと推察している。米国ではブーツを履くことで患部を保護していたほか、週1度の診察を受けるなどフォローアップ体制も万全だった。米国における今後の開発方針は、FDAとのミーティング(2024年10~11月頃)を行ったうえでの決定となる。9月18日付でFDAよりブレイクスルーセラピーに指定されたことを発表しており、第3相臨床試験を実施する場合、プロトコルの設定などに関する協議を優先的に行えるほか、後期第2相臨床試験で明確な有意差を得られたことから症例数も同等程度となる可能性があり、治験期間は被験者組み入れで1~2年、経過観察期間も含めれば2~3年になると同社では見積もっている。審査も通常より短期間で実施されるため、順調に進めば2028年頃に上市される可能性がある。また、有効性・緊急性があると判断されれば第3相臨床試験を行わずに、市販後調査を行う条件付きで製造販売承認されることも考えられる。米国での販売パートナー選定に関して治験担当医師からは、米国での閉塞性動脈硬化症の患者は退役軍人専門の医療施設に多く、これら医療施設に日系企業が新規にマーケティング活動を行う場合、相当の時間を要する。スムーズにこれら医療施設への販売を進めるためには、既に太いパイプを持つ米国大手製薬企業を販売パートナーとすることが望ましいとの助言があった。また、同疾患に対する新薬は20年間出ていないことや、対象患者は糖尿病を患っている患者が多いこともあり、糖尿病治療薬を持つ製薬企業にとっては魅力的に映ることも理由だ。このため、同社は米国での販売パートナー候補の探索に着手しており、2025年2月以降の早期契約を目指している。第3相臨床試験に進んだ場合、パートナー先が決まっていれば開発資金を軽減できる可能性がある。日本における開発方針については、国内の第3相臨床試験結果と米国における後期第2相臨床試験の結果を中心として、新たな申請データパッケージを構築し、改めて製造販売承認の申請に向けて準備を進めていくが、米国での今後の開発動向が大きく影響するものと考えられる。また、大手製薬企業との契約が締結されれば、欧州市場での展開も予想される。「コラテジェン」の市場規模については、米国だけで少なくとも数百億円規模になると弊社では試算している。同社では対象患者数を現時点で数万人規模と見込んでおり、これに国内の薬価(約61万円/1瓶(4mg))×4回を掛け合わせた。米国で開発に成功すれば、日本や欧州にも展開していくため、世界では1千億円を超えるブロックバスターになる可能性もある。まずは2024年秋に発表予定の治験結果の内容に注目したい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2024/10/07 16:13
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アンジェス Research Memo(2):遺伝子医薬の開発に特化した大阪大学発のバイオベンチャー
*16:12JST アンジェス Research Memo(2):遺伝子医薬の開発に特化した大阪大学発のバイオベンチャー
■会社概要1. 会社沿革アンジェス<4563>は1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーで、HGF遺伝子(肝細胞増殖因子)の投与による血管新生作用の研究成果を事業化することを目的としている。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン」において、田辺三菱製薬と2012年に米国市場、2015年に国内市場で末梢性血管疾患を対象とした独占的販売権許諾契約を締結した。2019年3月に国内で慢性動脈閉塞症患者向けに条件及び期限付き承認を取得し、同年9月から田辺三菱製薬を通じて販売を開始、2023年5月には条件付きの解除に向けた承認申請を行ったが、製造販売後承認条件評価(市販後調査)の結果、第3相臨床試験の成績を再現できなかったことから2024年6月に申請を一旦取り下げ、開発戦略の変更を発表した。また、米国では2019年11月より実施していた後期第2相臨床試験において良好な結果が得られたことを2024年6月に確認している。なお、2024年8月に田辺三菱製薬との日米における独占的販売権許諾契約を解消することを発表した(日本は2024年11月1日、米国は2025年2月1日。解消日が異なるのは日本が3ヶ月前、米国が6ヶ月前告知ルールのため)。そのほかのパイプラインでは、核酸医薬品であるNF-κBデコイオリゴDNAについて、米国で慢性椎間板性腰痛症を対象に2018年より後期第1相臨床試験を実施して良好な結果を得たことから、2023年3月に塩野義製薬<4507>と国内での協力契約を締結、同年10月より第2相臨床試験を開始した。また、2022年5月に米Eiger BioPharmaceuticals, Inc.(以下、アイガー)と希少遺伝性疾患で乳児早老症とも呼ばれるHGPS(ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群)及びPDPL(プロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー)を適応症とした治療剤「ゾキンヴィ」の国内での販売契約を締結し、2024年1月に製造販売承認を取得し同年5月より販売を開始した。なお2022年9月に、国内で進めていた新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止を発表、併せて新型コロナウイルス感染症の変異株を含むウイルス性肺疾患を対象とした改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤について、米スタンフォード大学と共同研究契約を締結した。M&A・アライアンス戦略として、2018年にカナダのVasomune Therapeutics, Inc.(以下、Vasomune)と共同開発契約を締結し(2023年3月に273百万円を出資)、新型コロナウイルス感染症及びARDS(急性呼吸窮迫症候群)を対象とした治療薬候補品「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト)の開発を進めている。また、2018年にはマイクロバイオームの研究開発を行うイスラエルのMyBiotics Pharma Ltd.に出資した(2022年11月に転換社債74百万円を引き受け、減損処理済み)。2020年には、ゲノム編集技術により希少遺伝性疾患の治療薬開発を目指す米Emendoの株式を取得し子会社化した。医薬品開発以外の事業としては、2021年4月に新生児の希少遺伝性疾患検査を主目的とした衛生検査所ACRLを開設し、CReARIDと連携して、オプショナルスクリーニング検査の受託サービスを提供している。2. 事業の特徴とビジネスモデル同社の事業の特徴は、遺伝子の働きを活用した医薬品である遺伝子治療用製品、核酸医薬、そしてDNAワクチンを遺伝子医薬として定義し、社会的な使命であるとともに確実な需要が存在する「難治性疾患」や「有効な治療法がない疾患」を開発対象領域としていることにある。また、自社開発品以外にもこうした事業方針と合致する開発候補品を海外のベンチャーや大学などの研究機関から導入して、開発パイプラインの強化とリスク分散を図っている。同社のビジネスモデルは、研究開発に特化し(製造は外部の専門機関に委託)、開発品についての共同開発や独占的製造販売権許諾契約を大手製薬企業と締結することで、契約一時金や開発の進捗状況に応じたマイルストーン収入や、上市後の製品売上高に対して一定料率で発生するロイヤリティ収入を獲得することを主軸としている。臨床試験の規模や期間は対象疾患等によって異なるが、第1相から第3相試験までおよそ3~7年程度かかると言われている。臨床試験の結果が良ければ規制当局に製造販売の承認申請を行い、おおむね1~2年の審査期間を経て問題がなければ承認・上市といった流れとなる。新薬開発の成功確率は低く、基礎研究段階に特定したリード化合物が新薬として発売される確率は、約3万分の1と言われている。希少遺伝性疾患の検査受託サービスでは、新生児の希少遺伝性疾患を調べるための拡大新生児スクリーング検査を提携先のCReARIDを通じて受託している。スクリーニング検査で要精密検査となれば遺伝学的検査(確定検査)を行う。スクリーニング検査やその後の確定検査によって発症前の早期段階から治療を始めることで、症状の進行を抑える効果が期待できる。検査対象となる疾患は、自治体が公費で実施するマススクリーニング検査(20疾患が対象)以外の希少遺伝性疾患で、希望者に対して有償で検査を実施している。現在検査可能な疾患はムコ多糖症やファブリー病(男子のみ)など9疾患※1だが、今後拡充する考えだ。CReARIDの検査数は連携医療機関の増加や認知度向上もあって年々増加傾向にあり※2、2023年度(2023年4月〜2024年3月)は約3.4万件の検査を実施し(2020年度約1.2万件、2021年度約1.7万件、2022年度約2.0万件)、このうち同社で約2万件の検査を受託した。CReARIDによれば、約3.4万件の検査のうち要検査判定が出たのは56件で、その後の精密検査で8件が確定診断されたと言う。※1 ムコ多糖症I型、II型、IVA型、VI型、ポンペ病、ファブリー病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、重症複合免疫不全症の9つの疾患を対象に検査を実施している。※2 連携医療機関は2024年8月時点で首都圏を中心に103施設(12都道府県)あり、検査実施率は院内出産児の6~8割程度となっている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2024/10/07 16:12
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アンジェス Research Memo(1):「コラテジェン」の米国での治験結果は2024年秋に発表予定
*16:11JST アンジェス Research Memo(1):「コラテジェン」の米国での治験結果は2024年秋に発表予定
■要約アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーで、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。2020年に先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化したほか、2021年には国内で希少遺伝性疾患の新生児向けオプショナルスクリーニング検査※を行う衛生検査所「アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下、ACRL)」を開設し、検査受託サービスを開始した。※ 公費負担ですべての新生児に実施しているマススクリーニング検査に含まれていない7疾患に対する有償検査サービスで、(一社)希少疾患の医療と研究を推進する会(以下、CReARID(クレアリッド))から受託して実施している。1. 「コラテジェン」の動向HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン」は、国内で重度の閉塞性動脈硬化症を対象とした条件及び期限付き製造販売の承認申請を2024年6月に取り下げ、今後は米国での開発を優先する方針を明らかにした。米国で実施した下肢潰瘍を有する軽度から中等度の閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第2相臨床試験で、潰瘍の改善だけに留まらず治癒まで期待できることが明らかとなったためだ。詳細な内容については2024年秋にも発表される予定で、画期的治療薬として注目を浴びる可能性がある。また、治験担当医師より「米国で効率的に販売拡大するためには、強力な販売力を持つ米大手製薬企業とパートナーを組むことが最適」との助言があったことや国内の承認申請を取り下げたこともあり、2024年8月に田辺三菱製薬(株)との日米における独占的販売権許諾契約の解消を発表し、米国では新たなパートナーの探索に着手している。今後の開発方針もFDAと協議して決定する予定で、第3相臨床試験を行うか、早期承認制度を活用して販売承認申請を行うことが考えられる。9月18日付でFDAよりブレイクスルーセラピー(画期的新薬)※に指定されたことも発表しており、ポジティブに評価される。米国での対象患者数は数万人規模と見られ、上市できれば数百億円の売上ポテンシャルが期待できるほか、欧州への展開も進める予定だ。国内についても米国の開発動向を見てPMDAと協議しながら方針を決定する。※ ブレイクスルーセラピー指定制度:重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対する新規治療薬の開発と審査を迅速化することを目的にFDAが導入した制度で、臨床試験の結果などをもとに指定する。2. ACRLの取り組み状況新生児を対象とした希少遺伝性疾患の検査事業は、前年比2倍強のペースで受託件数が拡大している。2024年8月には(公財)群馬県健康づくり財団と新たに契約し、群馬県における拡大新生児スクリーニング検査の受託も開始した。そのほかにも複数の自治体から引き合いがきており、年内にも契約が決まる見通しだ。2024年12月期は売上高で250百万円前後と前期比2倍以上に拡大し、損益面でも初めて黒字化が見込まれる。また、早老症治療剤「ゾキンヴィ」の発売(2024年5月)に合わせて、同疾患を対象とした遺伝学的検査(確定診断)※も開始した。今後は治療効果のモニタリングを行うためのバイオマーカー検査へと領域を拡大する予定で、希少遺伝性疾患検査に関するワンストップサービス体制を構築し、医療関係者や患者ニーズに応える方針だ。また、検査事業を推進するなかで、希少遺伝性疾患の新たな治療薬候補品の開発にもつなげていく。※ スクリーニング検査の結果で疾患の疑いがある場合、また、発症した症状から該当の疾患である可能性がある場合に、その病気の原因となる遺伝子変異の有無を確認することで該当の疾患かどうかを確定させる検査(確定検査)。3. 業績動向2024年12月期第2四半期累計の業績は、事業収益が347百万円(前年同期比296百万円増)、営業損失が5,107百万円(同843百万円減)となった。事業収益は、検査事業が伸びたこと加えて「ゾキンヴィ」の販売開始で151百万円、スウェーデンのAnocca AB(以下、Anocca)※からのライセンス契約一時金の受領により76百万円を計上したことが増加要因となった。営業損失の縮小は、Emendoの研究開発体制再編により研究開発費が同918百万円減少したことが主因だ。2024年12月期の事業収益は600百万円(前期比447百万円増)、営業損失は8,450百万円(同3,517百万円減)を見込む。検査事業の拡大や「ゾキンヴィ」の売上計上等が増収要因となる。また研究開発費の減少により営業損失は縮小する見込みだが、第2四半期まで為替が想定(142円/米ドル)より円安で推移し外貨建てコストが膨らんだこともあり、損失額は計画よりもやや膨らむ可能性がある。なお、2024年6月末の現金及び預金は1,820百万円と資金調達が必要な状況にある。このため、同社は2024年9月に第三者割当による社債(13億円)及び第45回新株予約権(下限行使価額35.5円、潜在株式数12,920万株)を発行し、今後の事業活動資金に充当する方針だ。※ 2014年の設立で、科学者、エンジニア、ソフトウェア開発者を中心に従業員数は100名を超える。特定の抗原を認識するTCRを発現するT細胞を選別、培養する技術を保有しており、複数のがん標的に対するTCR-T療法のライブラリーを持ち、40を超える製品候補を抱えている。これまでに150百万米ドルの資金調達を行った。■Key Points・HGF遺伝子治療用製品は米国治験で想定を大きく上回る結果が得られ、米大手製薬企業とのパートナー契約締結を目指す・早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に151百万円を売上計上・希少遺伝性疾患検査はスクリーニング検査から遺伝学的検査、バイオマーカー検査までワンストップで提供する方針・Emendoの事業構造改革により2024年12月期の営業損失は縮小の見通し(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2024/10/07 16:11
注目トピックス 日本株
エアーテック Research Memo(9):中期経営計画では総還元性向65%以上を方針に掲げる
*15:19JST エアーテック Research Memo(9):中期経営計画では総還元性向65%以上を方針に掲げる
■日本エアーテック<6291>の株主還元策2024年12月期は普通配当として1株当たり50.0円を予定しており、配当性向は55.2%となる。中期経営計画で、計画期間中の総還元性向を65%以上とすることを宣言しており、今後の株主還元策の動向が注目される。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2024/10/07 15:19
注目トピックス 日本株
エアーテック Research Memo(8):事業活動を通じて持続可能な社会と同社の持続的成長の実現を目指す
*15:18JST エアーテック Research Memo(8):事業活動を通じて持続可能な社会と同社の持続的成長の実現を目指す
■日本エアーテック<6291>のESG及びサステナビリティ経営への取り組み1. ESGへの取り組み2022年12月にパーパスを「きれいな空気で、未来を支える。」と定め、このパーパスのもと「サステナビリティ基本方針」を制定し、クリーンエアーシステム技術やノウハウを生かした事業活動を通じ、持続可能な社会と同社の持続的成長の実現を目指し、企業価値の向上に取り組むとしている。環境については、赤城スマートファクトリー、草加サービスセンター、加須工場、越谷工場の各拠点で太陽光発電システム及び蓄電設備を稼働し、社内における省エネルギー化を推進している。今後は、現在建設中の草加多目的センターにおいても導入予定だ。製品開発では、クリーンエアーシステムの省エネルギー化技術と機器の研究・開発に注力している。顧客のカーボンニュートラルの達成に寄与する機器の開発を進めており、各産業分野の設備・施設へ供給を展開していく。また、製品のカーボンフットプリント(CFP)の算定を開始しており、エアーシャワーのCFPを算定して対外発表を2024年4月に実施した。社会については、医療分野において、コロナ禍関連の特需収束後も感染症対策施設等(BSL-3※)を開発・提供することで、これまで対策が困難であった感染症に対する新たなワクチンや医薬品の開発を支援している。また、再生医療分野の新しい装置やシステムの開発を行うことで、これまで治療が困難であった難病や生活習慣病、がん治療等に対する新しい治療法の開発を支援している。さらに、異物混入対策として、食品、医薬品、化粧品、リチウムイオン電池等の電子材料、包装材料等、幅広い分野で衛生レベルを向上させることで、品質を安定させ、世の中の安全・安心・快適な暮らしにつながる製品を製造・販売している。※ バイオハザード対策室を指す。病原体の取り扱い、組み換え遺伝子実験、がん細胞などの取り扱い時に必須とされる。ガバナンスについては、改訂コーポレート・ガバナンス報告書への対応状況を2024年7月31日に公表した。公表時点で非適合(EXPLAIN)となっているのは1原則のみとなっている。「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」については検討中であり、今後の方針や取り組み等を年内に開示する予定である。2. サステナビリティ経営への取り組みSDGsの「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「気候変動に具体的な対策を」の5つの目標に対して2023年12月期における同社の取り組み内容を開示している。i) 「飢餓をゼロに」食品分野における衛生レベルを向上させる効果のある製品の納入を行っている。エアーシャワー、防虫エアーカーテン、クリーンブース等を多くの企業に納品した。ii) 「すべての人に健康と福祉を」事業を通じて医療分野における感染症対策品や感染症研究施設の納入を行っている。また再生医療分野では細胞培養施設(特殊クリーンルーム)を納入しているほか、医薬品分野に必要な製品として安全キャビネット、製造ライン用大型クリーンブース等の製造・販売を行っている。iii) 「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」顧客が製品を使用する際の省エネルギー性能を向上させるため、気流と空調のエネルギー効率向上を目指す研究開発に注力している。また各事業所へソーラーシステムを導入したほか、遮熱塗装工事を実施した。iv) 「産業と技術革新の基盤をつくろう」半導体分野において、高精度な電子部品製造に必要な製品の製造・販売を行うとともに、複数の関連会社と共同開発を進めている。詳細は公表できないとしているが、売上は拡大しているもようだ。このほか、環境及び社会側面の課題解決を目的とした技術革新にも貢献している。v) 「気候変動に具体的な対策を」赤城スマートファクトリーのほか、各地のサービスセンターや加須工場に太陽光発電、蓄電設備を導入した。さらに、スマートクリーンルームを上市することで、同社製品を通じて顧客の製造プロセス及びクリーンルームの省エネルギー化に貢献している。2023年2月には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同し、これに準拠した気候関連財務情報を開示した。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2024/10/07 15:18
注目トピックス 日本株
エアーテック Research Memo(7):国際的なトップ企業として2028年までに売上高180億円を目指す
*15:17JST エアーテック Research Memo(7):国際的なトップ企業として2028年までに売上高180億円を目指す
■中期経営計画日本エアーテック<6291>は2023年12月に5ヶ年(2024年12月期~2028年12月期)の中期経営計画を策定した。同社は2023年10月に東証プライム市場から東証スタンダード市場に移行したが、新市場での上場維持基準の適合に向けて、新たな経営方針、戦略を加味した。同計画では、「世界に通用するクリーンエアーシステム技術を確立し、社会に貢献する。」という社是のもと、「標準・準標準品の売上比率向上」「差別化(ハード、ソフト、創造性)による脱価格競争」「グローバル化」「新市場への進出」「総還元性向を65%以上とする(計画期間内)」「サステナビリティ経営への取り組み」の6つの中長期基本方針を定めた。数値目標として、2028年度の売上高180億円、営業利益14億円、経常利益18億円を目指す。「標準・準標準品の売上比率向上」については、標準製品の販売比率を80%以上に設定した。従来顧客の要望に応じた設計・製作を強みとしてきたが、規模拡大と利益率の両面を追ううえで標準品売上比率向上を第1目標とし、さらに特殊注文にも対応できる経営に舵をきった形で、2022年12月期~2026年12月期の中期経営計画での目標である60%以上から引き上げた。具体的な施策としては、創造的で省エネ効果やCO2吸着性能を持つ魅力的な新製品の開発、分野別の販売ルート構築による販売強化と価格改定、草加新倉庫をはじめとする工場及び倉庫の新設、新型機械設備導入や各種金型への投資等による原価低減及び品質向上策を挙げている。なお、2024年12月期第2四半期時点の標準品の販売比率は50%となっている。創造的な製品開発に向けては研究所を強化し、新製品の研究開発や特許出願を促進する。研究開発費については、2024年12月期以降、2022年度実績133百万円の2倍以上に増額する。特許出願件数を毎年5件以上という目標を設定し、新製品開発に向けて機運を醸成していく。販売強化に関しては、これまで営業面での空白区であった北海道での拠点作りを進めている。北海道はRapidus(株)の工場の千歳市への進出が発表されるなど、半導体工場の新たな拠点として注目度が増している。同社としても今後の電子分野における受注増を狙って販売拠点作りを急ぐ。分野別販売ルートの強化として、電子分野では半導体製造設備の製造メーカーとの直接取引だけでなく、代理店経由や、半導体工場のクリーンルーム建設を請け負うゼネコン・サブコンとの取引窓口の拡大を図っている。製薬分野では設備機器の直販に加え、医薬品製造設備の製造メーカー、代理店、製薬工場や研究所の建設を請け負うゼネコン・サブコンとの取引を強化している。標準製品の販売比率80%以上の達成に向けた施策として、製品のシェア拡大にも取り組む。クリーンエアーシステムに関する国内市場全体の規模は同社推定で800~900億円と見込んでいるが、その22%以上のシェア獲得を目指す。製品別の目標としては、2028年度までに同社の主力製品であるクリーンベンチ(現状シェア36%)、クリーンブース(同24%)、安全キャビネット(同31%)を50%以上、エアーシャワー(同36%)40%以上の獲得を目指す。ファンフィルターユニット(同62%)、HEPA/ULPAフィルター(同15%)については、それぞれ60%以上、15%以上を維持する。電子分野や自動車分野、医薬品や再生医療分野等では、完成品の品質や信頼性の向上のためのクリーン化として高清浄度要求や異物混入対策へのニーズは拡大・多様化している。製造する製品の内容によってそのレベルは異なるものの、製造工程でのクリーン化を求める製品の裾野拡大に伴い、同社がターゲットとする市場の成長が期待できることから、同社のシェア拡大のチャンスは大きいと考えられる。「差別化(ハード、ソフト、創造性)による脱価格競争」については、性能、仕様、品質、デザイン、省エネ効果等のコンテンツ面と、対話、展示会、IR、製品説明会、社員等のコミュニケーション面で差別化を図り、ブランド価値の向上を推進する。「クリーン機器といえばエアーテック」というブランド価値の確立が目標である。「グローバル化」については、現在海外7ヶ国で8社と提携し、同社は技術支援をもとに共同受注することもある。提携各社との連携をさらに強化することで、海外市場での知名度向上と販売強化を図る。知名度向上については展示会への出展や学会での発表等を進めることで推進していく。今後は米国への進出を計画しており、米国の業界に精通したメーカーや販売店との協力関係の構築に注力する。「新市場への進出」については、年々成長する空気清浄を必要とする市場において、その基幹技術である高性能フィルターの需要も拡大することから、フィルター製造を専門とする赤城スマートファクトリーを建設し、従来よりも生産能力を50%増強して2022年8月から稼働している。これまで伊勢崎工場で生産していたPTFEフィルターの製造も移設している。また、CO2吸着フィルター搭載空気清浄機の販売を進めるほか、同社内で複数のプロジェクトを立ち上げている。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2024/10/07 15:17
注目トピックス 日本株
エアーテック Research Memo(6):増益を見込むがコスト面は慎重に判断
*15:16JST エアーテック Research Memo(6):増益を見込むがコスト面は慎重に判断
■日本エアーテック<6291>の今後の見通し2024年12月期の業績予想は、売上高が前期比1.1%減の13,500百万円、営業利益が同31.5%増の930百万円、経常利益が同29.7%増の1,310百万円、当期純利益が同28.4%増の940百万円と、売上高はほぼ前期並みだが、各段階利益については増益を見込んでいる。2024年12月期第2四半期の実績を踏まえ通期業績予想を修正しており、売上高は期首予想を据え置いたが、各段階利益に関しては水準を一段と引き上げた。引き上げ後の水準では営業利益率は6.9%(前期比1.7ポイント増)、経常利益率は9.7%(同2.3ポイント増)となる。下半期においても電子分野、バイオ関連の設備投資は堅調という事業環境のもと、増収増益を目指す。市場動向を概観すると、電子分野ではやはり半導体及び関連する電子部品産業の工場新設や設備増強への投資が活発で、同社への引き合いも多い。特に半導体製造装置メーカーの投資意欲は旺盛なようで、クリーンルームのほか、クリーンルーム機器、クリーンブース等の受注が今後も継続すると見込まれる。自動車関連ではEV関連での設備投資が堅調で、クリーンルームやクリーンルーム機器の受注増につながりそうだ。バイオ分野はコロナ禍特需を除けば比較的業績の浮き沈みが激しくない顧客層となり、製薬メーカー等では感染症対策のためのワクチン研究等の活動に必要な研究施設や、細胞加工用クリーンルームへの設備投資が堅調で、特需の落ち込み分の穴埋めに寄与することが期待される。利益面では業績の上方修正を行ったものの、依然保守的に見積もっていると弊社では考えている。2024年12月期に入り、標準製品の価格転嫁や特殊製品の売価設定の見直しを実施したことにより、第2四半期の利益率改善に寄与したことから、通期でも同様の進捗が期待できる。一方で、原価については、材料価格の高止まりや仕入先からの値上げ要請が継続する可能性があり、不透明な状況にあるとしている(実際に同社としても重要部品の自社開発や、2社購買の徹底、原価低減に向けた金型投資を継続)。ただし、この原価の増加リスクについては不透明である分、業績予想の中に慎重に織り込んでいる。また、さらなる受注獲得や、受注増への対応も進んでいる。受注獲得のための施策として、各種展示会への参加を積極的に推進している。2024年12月期に海外では中国で2回(電子・バイオ各1回)、ドイツで1回(製薬・化学・バイオ)出展し、好感触を得た。国内については製薬・化粧品分野で「インターフェックスWeek」(大阪開催・東京開催)に、食品機械分野では「FOOMA JAPAN 2024」に出展した。これらの対応が新規顧客の取り込みツールとして機能し、全ての会場において複数の引き合いを受けた。受注増への対応については、2024年6月にPTFEフィルター(主に半導体製造工場のクリーンルーム等で使用する高性能フィルター)の製造ラインを伊勢崎工場から赤城スマートファクトリーへ移設した。これまでは双方の工場においてそれぞれフィルターを製造していたが、製造を赤城スマートファクトリーに集約することで生産効率を向上させる。移設に際して新型機械を導入したことにより、一層の量産体制強化と作業効率向上が図られている。PTFEフィルターは0.1マイクロメートルという超微粒子を除去する機能を持ち、半導体製造の前工程(ウエハー上に電子回路を形成する工程)で回路の微細化が進む中、今後の需要の高まりが大いに期待される。なお、伊勢崎工場では今後、標準品の製造拠点として増産を図る考えだが、板金加工設備導入により生産能力を向上させる計画である。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2024/10/07 15:16
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