注目トピックス 日本株
ダイハツインフィニアース:株価一時調整も再評価余地大きい、造船関連銘柄としても注目
配信日時:2025/11/10 17:01
配信元:FISCO
*17:01JST ダイハツインフィニアース:株価一時調整も再評価余地大きい、造船関連銘柄としても注目
ダイハツインフィニアース<6023>は10月27日に年初来高値3525円を付けて以降、3000円を割り込んで推移している。ただ、同社の中長期ビジョンでは2031年3月期の売上高120,000百万円、営業利益9,000百万円、ROE9.5%以上を見据える。今期業績予想を上方修正しているため、このビジョンも上方修正される可能性があるが、現時点の計画でも利益面でCAGR7.4%が想定される。今期予想EPS184.94円にCAGR7.4%を計算していくと2031年3月期EPSは264.27円、これに現状のPER15倍をかけると株価は4000円手前と試算される。中長期ビジョンの数値が改定される場合は、なお上値余地が残っているといえよう。
10月30日に発表した2026年3月期上期決算を確認すると、上期累計の売上高41,534百万円(前年同期比3.2%減)、営業利益2,463百万円(同22.6%減)と、10月23日に開示した業績予想の上方修正水準で着地した。機関売上においてタンカー向けを中心に中小型機関の台数構成比が上昇したが、コンテナ船向けを中心とする大型機関の販売は一時的に減少。一方、船舶稼働率の高止まりを背景に、メンテナンス販売は堅調に推移している。利益面は、次世代燃料対応機関の開発および生産体制の整備に向けて、2026年の稼働を目指した姫路工場の生産能力強化投資が進行している。受注残は前年比52.9%増の101,051百万円と過去最高の受注残高を確保した。
通期の売上高は85,000百万円(前年同期比4.3%減)、営業利益6,300百万円(同17.5%減)まで引き上げている。期初想定よりも円安が進んだこと、また、メンテナンス関連において想定以上に高い需要水準を維持した点を考慮。ただ、今期は前提として、前期の部品・メンテナンスの一時的な需要増による売上の剥落が前提の業績予想となっており、豊富な受注残から数字上の減収減益見通しは大きな懸念点とはならない。
直近のトピックスとしては、高市早苗首相の政策による追い風である。高市首相は、造船は経済・安全保障を支える極めて重要な産業と指摘。船舶建造能力を抜本的に強化するためロードマップを策定するとともに、民間の積極的な投資促進に向け大胆な措置を検討すると述べた。人工知能(AI)や造船など17分野を重点投資対象と決定しているが、同社も造船関連銘柄としての恩恵も一部で受ける可能性はある。同社は海運会社(船主)約100社超え、造船会社約70社との顧客基盤を有しているなか、造船需要に合わせて船舶用機器の需要も安定的に発生し、新造船に加え稼働隻数の増加が同社業績につながっていきそうだ。そのほか、4月時点で今治造船株式会社が19.7%を保有する第1位株主となっている。
同社は、船舶用の発電用補機関と推進用主機関、及び陸用の発電用・ポンプ用機関を提供している。主力製品である船舶用の発電用補機関は国内シェア約46%、海外でも25%を占め、世界5大メーカーの一角を担う。とりわけ大型外航船向け発電用補機関においては、国内トップクラスの実績を誇る。ビジネスモデルは、製品販売時の利益は限定的だが、納入後20-30年に及ぶ部品供給・メンテナンスに重きを置いており、長期的に安定した収益構造を築いている。内燃機関の研究開発から製造・販売、メンテナンスまでの一貫体制を構築するなか、サービス体制の充実と顧客対応力を武器に着実に取引基盤を拡大してきた。2025年3月期の売上構成比は、舶用機関部門約82%、陸用機関部門約13%、その他事業約5%となっている。
同社の競争優位性は、事業特化、サービス対応力、技術力、財務基盤、資本関係といった多面的な要素に裏打ちされている。舶用エンジン市場は寡占構造であり、日本国内ではヤンマーとの2社体制となっているが、ダイハツインフィニアースは特に大型舶用エンジン分野では出力性能に優れる自社製品群を揃え、コンテナ船や自動車運搬船向けの強みを発揮している。差別化要素としては、国内外での迅速なアフターサービス体制を確保している点が挙げられ、顧客満足度の高さを背景に安定したシェアを維持。新燃料への対応も進めており、天然ガスのエンジン開発は既に完了しており、次のステップとしてアンモニア燃料対応の技術開発も視野に入れている。海外では、韓国ヒュンダイ、欧州のMANおよびバルチラと合わせた5社が市場を占めているが、上述同社の強みは海外企業と比較しても優位性を保っている。財務面では、業績の安定性と収益性は高水準。
市場環境としては、造船・海運業界はコロナ禍後の物流需要拡大を受けて回復基調にあり、新造船発注も高水準で推移している。造船所の稼働率は国内外ともに高く、同社も海外案件の獲得を進めている。加えて、国際的な環境規制の強化が進む中、低炭素燃料(LNG、メタノール、アンモニア)への対応が新たな需要を創出している。これにより、エンジン更新需要の顕在化と、長期的な市場成長が期待される。そのほか、米国の関税政策についての影響も整理しているが、現在各国の造船会社の受注残高は積み上がっており、船を造るための船台は数年先まで埋まっている状況となる。米国において中国造船業に対する規制や政策が実施され、船主が発注を差し止めざるを得ない状況等が発生した場合には影響が生じる可能性はあるが、現時点では確認されていない。
中長期ビジョン「POWER! FOR ALL beyond 2030」では、新燃料対応に向けた研究開発とサービタイゼーション事業の体制構築の2つを推し進めるとともに、持続的な成長に向けてM&A等を通した事業領域拡大を目指している。具体的には、次世代燃料であるアンモニアや水素への対応を見据えたエンジンの開発、エネルギー効率や環境性能に優れた製品群の拡充を進めるとともに、製造工程でのGHG排出削減にも注力している。また、稼働データの活用やIoT・AI技術の活用によるアフターサービスの高度化を通じて、保守事業を安定収益源として強化していく。2050年までにネット・ゼロ・エミッションへの貢献と舶用機器業界での中核企業となることを目指している。
長期的に同社の収益を支えるのはアフターサービス事業である。船舶用エンジンは20-30年にわたり稼働するため、整備・部品交換といった定常的な需要が発生し続ける。納入台数の増加によりサービス収入も拡大が見込まれ、利益の安定化に寄与する。販売面では、老朽船の更新や環境規制対応が追い風となり、エンジン販売自体も堅調に推移する見通しである。燃料の多様化に対応するデュアルフューエルエンジンや、将来のアンモニア燃料対応エンジンなど、技術開発も進んでおり、姫路新工場の稼働により大型エンジンの生産能力は最大1.8倍に拡大。これらは売上成長およびサービス需要の拡大に直結し、中長期的な収益源として期待される。
株主還元において同社は、配当性向30%を目安とした安定配当方針を掲げ、今後「減配回避・増配基調」を目指す方針を示している。また、同社は成長投資にも積極的で、500億円規模の設備・研究開発投資計画を推進中であり、「成長投資:内部留保:配当」のバランスを重視した経営姿勢がうかがえる。
総じて、潤沢な受注残と確かな技術力による業績成長は想定しやすい。加えて、燃料多様化対応や生産能力の拡大など成長ドライバーも備えており、中期的には増収増益への反転が見込まれる。安定した本業収益に加え、配当を中心とした堅実な株主還元も評価材料となるなか、将来にわたる成長と安定の両立を志向する企業として今後の動向に注目しておきたい。 <FA>
10月30日に発表した2026年3月期上期決算を確認すると、上期累計の売上高41,534百万円(前年同期比3.2%減)、営業利益2,463百万円(同22.6%減)と、10月23日に開示した業績予想の上方修正水準で着地した。機関売上においてタンカー向けを中心に中小型機関の台数構成比が上昇したが、コンテナ船向けを中心とする大型機関の販売は一時的に減少。一方、船舶稼働率の高止まりを背景に、メンテナンス販売は堅調に推移している。利益面は、次世代燃料対応機関の開発および生産体制の整備に向けて、2026年の稼働を目指した姫路工場の生産能力強化投資が進行している。受注残は前年比52.9%増の101,051百万円と過去最高の受注残高を確保した。
通期の売上高は85,000百万円(前年同期比4.3%減)、営業利益6,300百万円(同17.5%減)まで引き上げている。期初想定よりも円安が進んだこと、また、メンテナンス関連において想定以上に高い需要水準を維持した点を考慮。ただ、今期は前提として、前期の部品・メンテナンスの一時的な需要増による売上の剥落が前提の業績予想となっており、豊富な受注残から数字上の減収減益見通しは大きな懸念点とはならない。
直近のトピックスとしては、高市早苗首相の政策による追い風である。高市首相は、造船は経済・安全保障を支える極めて重要な産業と指摘。船舶建造能力を抜本的に強化するためロードマップを策定するとともに、民間の積極的な投資促進に向け大胆な措置を検討すると述べた。人工知能(AI)や造船など17分野を重点投資対象と決定しているが、同社も造船関連銘柄としての恩恵も一部で受ける可能性はある。同社は海運会社(船主)約100社超え、造船会社約70社との顧客基盤を有しているなか、造船需要に合わせて船舶用機器の需要も安定的に発生し、新造船に加え稼働隻数の増加が同社業績につながっていきそうだ。そのほか、4月時点で今治造船株式会社が19.7%を保有する第1位株主となっている。
同社は、船舶用の発電用補機関と推進用主機関、及び陸用の発電用・ポンプ用機関を提供している。主力製品である船舶用の発電用補機関は国内シェア約46%、海外でも25%を占め、世界5大メーカーの一角を担う。とりわけ大型外航船向け発電用補機関においては、国内トップクラスの実績を誇る。ビジネスモデルは、製品販売時の利益は限定的だが、納入後20-30年に及ぶ部品供給・メンテナンスに重きを置いており、長期的に安定した収益構造を築いている。内燃機関の研究開発から製造・販売、メンテナンスまでの一貫体制を構築するなか、サービス体制の充実と顧客対応力を武器に着実に取引基盤を拡大してきた。2025年3月期の売上構成比は、舶用機関部門約82%、陸用機関部門約13%、その他事業約5%となっている。
同社の競争優位性は、事業特化、サービス対応力、技術力、財務基盤、資本関係といった多面的な要素に裏打ちされている。舶用エンジン市場は寡占構造であり、日本国内ではヤンマーとの2社体制となっているが、ダイハツインフィニアースは特に大型舶用エンジン分野では出力性能に優れる自社製品群を揃え、コンテナ船や自動車運搬船向けの強みを発揮している。差別化要素としては、国内外での迅速なアフターサービス体制を確保している点が挙げられ、顧客満足度の高さを背景に安定したシェアを維持。新燃料への対応も進めており、天然ガスのエンジン開発は既に完了しており、次のステップとしてアンモニア燃料対応の技術開発も視野に入れている。海外では、韓国ヒュンダイ、欧州のMANおよびバルチラと合わせた5社が市場を占めているが、上述同社の強みは海外企業と比較しても優位性を保っている。財務面では、業績の安定性と収益性は高水準。
市場環境としては、造船・海運業界はコロナ禍後の物流需要拡大を受けて回復基調にあり、新造船発注も高水準で推移している。造船所の稼働率は国内外ともに高く、同社も海外案件の獲得を進めている。加えて、国際的な環境規制の強化が進む中、低炭素燃料(LNG、メタノール、アンモニア)への対応が新たな需要を創出している。これにより、エンジン更新需要の顕在化と、長期的な市場成長が期待される。そのほか、米国の関税政策についての影響も整理しているが、現在各国の造船会社の受注残高は積み上がっており、船を造るための船台は数年先まで埋まっている状況となる。米国において中国造船業に対する規制や政策が実施され、船主が発注を差し止めざるを得ない状況等が発生した場合には影響が生じる可能性はあるが、現時点では確認されていない。
中長期ビジョン「POWER! FOR ALL beyond 2030」では、新燃料対応に向けた研究開発とサービタイゼーション事業の体制構築の2つを推し進めるとともに、持続的な成長に向けてM&A等を通した事業領域拡大を目指している。具体的には、次世代燃料であるアンモニアや水素への対応を見据えたエンジンの開発、エネルギー効率や環境性能に優れた製品群の拡充を進めるとともに、製造工程でのGHG排出削減にも注力している。また、稼働データの活用やIoT・AI技術の活用によるアフターサービスの高度化を通じて、保守事業を安定収益源として強化していく。2050年までにネット・ゼロ・エミッションへの貢献と舶用機器業界での中核企業となることを目指している。
長期的に同社の収益を支えるのはアフターサービス事業である。船舶用エンジンは20-30年にわたり稼働するため、整備・部品交換といった定常的な需要が発生し続ける。納入台数の増加によりサービス収入も拡大が見込まれ、利益の安定化に寄与する。販売面では、老朽船の更新や環境規制対応が追い風となり、エンジン販売自体も堅調に推移する見通しである。燃料の多様化に対応するデュアルフューエルエンジンや、将来のアンモニア燃料対応エンジンなど、技術開発も進んでおり、姫路新工場の稼働により大型エンジンの生産能力は最大1.8倍に拡大。これらは売上成長およびサービス需要の拡大に直結し、中長期的な収益源として期待される。
株主還元において同社は、配当性向30%を目安とした安定配当方針を掲げ、今後「減配回避・増配基調」を目指す方針を示している。また、同社は成長投資にも積極的で、500億円規模の設備・研究開発投資計画を推進中であり、「成長投資:内部留保:配当」のバランスを重視した経営姿勢がうかがえる。
総じて、潤沢な受注残と確かな技術力による業績成長は想定しやすい。加えて、燃料多様化対応や生産能力の拡大など成長ドライバーも備えており、中期的には増収増益への反転が見込まれる。安定した本業収益に加え、配当を中心とした堅実な株主還元も評価材料となるなか、将来にわたる成長と安定の両立を志向する企業として今後の動向に注目しておきたい。 <FA>
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