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シンバイオ製薬 Research Memo(4):BCV開発リスク低減、2030年までに2適応症で承認取得目指す(1)
配信日時:2024/05/30 13:14
配信元:FISCO
*13:14JST シンバイオ製薬 Research Memo(4):BCV開発リスク低減、2030年までに2適応症で承認取得目指す(1)
■シンバイオ製薬<4582>のBCVの開発戦略
2. 開発パイプライン
BCVは現在、造血幹胞移植後のAdV感染症や脳腫瘍、血液腫瘍、脳神経変性疾患など複数の領域でアカデミアとの共同研究も行いながら開発が進んでいる。このうち、造血幹細胞移植後のAdV感染症を対象とした第2相臨床試験においてヒトでのPOCを確立したことを2023年5月に発表している。POCの確立により、他の疾患領域における開発リスクの低減と開発期間の短縮化が見込めることになり、BCVのプラットフォーム展開による事業価値最大化に向け、今後のパートナー契約交渉もスムーズに進むことが期待される。
(1) 造血幹細胞移植後のAdV感染症
BCV(注射剤)の最初の開発ターゲットとして、小児(成人含む)を対象とした造血幹細胞移植後のAdV感染症に対する国際共同第2a相臨床試験を2021年8月から米国で開始している。AdVは自然界に存在するウイルスで、呼吸器、目、腸、泌尿器などへの感染によって、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、胃腸炎、出血性膀胱炎等の感染症を引き起こす。健常人が感染しても重篤になるケースは稀だが、造血幹細胞移植後の免疫力が低下した患者が感染すると重篤化するリスクが高く、未だ有効な治療薬もないことから治療薬や予防薬の開発が強く望まれている。世界における造血幹細胞移植の件数は年間3.5万件で、このうちAdV感染症の患者数は約2千人※となっている。
※出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
第2相臨床試験では安全性、忍容性及び有効性(血中AdV量の変化)を評価し、次試験のための推奨用量を決定する試験となる。投与量(0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg※1)を分けてそれぞれ週2回投与する群と、0.4mg/kgを週1回投与する群の4グループに分けて試験を実施した結果、週2回0.4mg/kg投与群(10例)において、すべての患者で血中AdVが消失し、そのうち90%の患者は治療後4週間以内にウイルス消失が確認された。また、全27例の患者のうち、経口BCV製剤で確認された胃腸毒性及び肝毒性を含む治療に関連する重篤な有害事象はなかったことが報告※2されており、ヒトでのPOCが確立されたとしている。学会発表による反響は大きかったようで、造血幹細胞移植後のAdV感染症を発症した患者の家族や担当医師からBCV使用のリクエストが3件あり、人道的観点から無償提供を行った。米国の10代の患者についてはBCV投与後、症状が改善したとの報告を受けている。
※1 体重50kg以上の場合は投与量10mg、15mg、20mg。
※2 治療に関連した有害事象発生による投与中止は、0.4mg/kg(週2回)で1例、全27例中6例で観察されたが、治療終了後には消失している。
今回の臨床試験の結果を受けて、同社は日本で用途特許※を出願し、迅速承認手続きによって2024年1月に4ヶ月という短期間で特許登録されたことを発表している。また、欧米でも用途特許を取得していく予定で、特許戦略によってBCVの事業価値拡大を目指す。POC確立によって、同社は他の疾患の開発においても、0.4mg/kg、週2回投与を目安として、開発を進められるようになったと見ている。これは、BCVの開発リスク低減と開発期間の大幅な短縮化が可能になることを意味しており、BCVプラットフォーム展開を進めていく同社にとっては、大きな意義があったと評価している。
※患者の体重に従って一定量の液剤BCVを一定間隔で静脈投与すること、また所定期間投与を継続し、中止基準に従って投与を終了することを定めている。
なお、AdV感染症の今後の開発予定としては、国際共同第3相臨床試験の開始に向けて米国及びEU、英国の規制当局との協議を2024年前半に実施し、早ければ2024年12月期第4四半期に第3相臨床試験を開始したい考えだ。実際のFPI(第1例目の症例登録)は2025年12月期第1四半期となる見通しで、FPIが確認された段階で5百万米ドルのマイルストーン支払いが発生する(このため、2024年12月期計画には織り込まず)。順調に開発が進めば2028年後半にも承認取得する可能性がある。
(2) 腎臓移植後のBKV感染症
2つ目のパイプラインとして、腎臓移植後のBKV※感染症を対象とした国際共同第2相臨床試験を2022年12月よりオーストラリアと日本で進めていたが、症例集積が計画に対して遅れていることや他の開発パイプラインの開発状況等も鑑みて、2023年8月に開発の優先順位を引き下げることを決定した。
※BKVはポリオーマウイルス科に属するDNAウイルスで、健常人でも小児期に100%近くが自然感染しており、健康状態であれば目立った症状は出ないが、臓器移植や骨髄移植後の免疫力が低下している状況ではウイルスが活性化し、出血性膀胱炎や間質性腎炎などを発症する。また、症状が悪化すると移植後の腎臓も機能不全となり喪失するケースがある。
腎臓移植は末期腎不全の唯一の根治療法となっており、移植手術が必要な患者数は世界で約10万人規模にのぼる。腎臓移植後は免疫力が低下しているため各種のウイルス感染症を発症するリスクがあり、なかでもBKV感染症の患者数は年間約8千人※と見られている。現在は免疫抑制剤やCMV感染症治療薬等が対処療法的に処方されているが効果は限定的で、未だ確立された治療法のないアンメット・メディカルニーズの高い疾患として有効な治療薬の早期開発が望まれている。今回、開発の優先順位を引き下げたものの、環境が整えば臨床試験を再開する意向だ。
※出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HH>
2. 開発パイプライン
BCVは現在、造血幹胞移植後のAdV感染症や脳腫瘍、血液腫瘍、脳神経変性疾患など複数の領域でアカデミアとの共同研究も行いながら開発が進んでいる。このうち、造血幹細胞移植後のAdV感染症を対象とした第2相臨床試験においてヒトでのPOCを確立したことを2023年5月に発表している。POCの確立により、他の疾患領域における開発リスクの低減と開発期間の短縮化が見込めることになり、BCVのプラットフォーム展開による事業価値最大化に向け、今後のパートナー契約交渉もスムーズに進むことが期待される。
(1) 造血幹細胞移植後のAdV感染症
BCV(注射剤)の最初の開発ターゲットとして、小児(成人含む)を対象とした造血幹細胞移植後のAdV感染症に対する国際共同第2a相臨床試験を2021年8月から米国で開始している。AdVは自然界に存在するウイルスで、呼吸器、目、腸、泌尿器などへの感染によって、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、胃腸炎、出血性膀胱炎等の感染症を引き起こす。健常人が感染しても重篤になるケースは稀だが、造血幹細胞移植後の免疫力が低下した患者が感染すると重篤化するリスクが高く、未だ有効な治療薬もないことから治療薬や予防薬の開発が強く望まれている。世界における造血幹細胞移植の件数は年間3.5万件で、このうちAdV感染症の患者数は約2千人※となっている。
※出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
第2相臨床試験では安全性、忍容性及び有効性(血中AdV量の変化)を評価し、次試験のための推奨用量を決定する試験となる。投与量(0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg※1)を分けてそれぞれ週2回投与する群と、0.4mg/kgを週1回投与する群の4グループに分けて試験を実施した結果、週2回0.4mg/kg投与群(10例)において、すべての患者で血中AdVが消失し、そのうち90%の患者は治療後4週間以内にウイルス消失が確認された。また、全27例の患者のうち、経口BCV製剤で確認された胃腸毒性及び肝毒性を含む治療に関連する重篤な有害事象はなかったことが報告※2されており、ヒトでのPOCが確立されたとしている。学会発表による反響は大きかったようで、造血幹細胞移植後のAdV感染症を発症した患者の家族や担当医師からBCV使用のリクエストが3件あり、人道的観点から無償提供を行った。米国の10代の患者についてはBCV投与後、症状が改善したとの報告を受けている。
※1 体重50kg以上の場合は投与量10mg、15mg、20mg。
※2 治療に関連した有害事象発生による投与中止は、0.4mg/kg(週2回)で1例、全27例中6例で観察されたが、治療終了後には消失している。
今回の臨床試験の結果を受けて、同社は日本で用途特許※を出願し、迅速承認手続きによって2024年1月に4ヶ月という短期間で特許登録されたことを発表している。また、欧米でも用途特許を取得していく予定で、特許戦略によってBCVの事業価値拡大を目指す。POC確立によって、同社は他の疾患の開発においても、0.4mg/kg、週2回投与を目安として、開発を進められるようになったと見ている。これは、BCVの開発リスク低減と開発期間の大幅な短縮化が可能になることを意味しており、BCVプラットフォーム展開を進めていく同社にとっては、大きな意義があったと評価している。
※患者の体重に従って一定量の液剤BCVを一定間隔で静脈投与すること、また所定期間投与を継続し、中止基準に従って投与を終了することを定めている。
なお、AdV感染症の今後の開発予定としては、国際共同第3相臨床試験の開始に向けて米国及びEU、英国の規制当局との協議を2024年前半に実施し、早ければ2024年12月期第4四半期に第3相臨床試験を開始したい考えだ。実際のFPI(第1例目の症例登録)は2025年12月期第1四半期となる見通しで、FPIが確認された段階で5百万米ドルのマイルストーン支払いが発生する(このため、2024年12月期計画には織り込まず)。順調に開発が進めば2028年後半にも承認取得する可能性がある。
(2) 腎臓移植後のBKV感染症
2つ目のパイプラインとして、腎臓移植後のBKV※感染症を対象とした国際共同第2相臨床試験を2022年12月よりオーストラリアと日本で進めていたが、症例集積が計画に対して遅れていることや他の開発パイプラインの開発状況等も鑑みて、2023年8月に開発の優先順位を引き下げることを決定した。
※BKVはポリオーマウイルス科に属するDNAウイルスで、健常人でも小児期に100%近くが自然感染しており、健康状態であれば目立った症状は出ないが、臓器移植や骨髄移植後の免疫力が低下している状況ではウイルスが活性化し、出血性膀胱炎や間質性腎炎などを発症する。また、症状が悪化すると移植後の腎臓も機能不全となり喪失するケースがある。
腎臓移植は末期腎不全の唯一の根治療法となっており、移植手術が必要な患者数は世界で約10万人規模にのぼる。腎臓移植後は免疫力が低下しているため各種のウイルス感染症を発症するリスクがあり、なかでもBKV感染症の患者数は年間約8千人※と見られている。現在は免疫抑制剤やCMV感染症治療薬等が対処療法的に処方されているが効果は限定的で、未だ確立された治療法のないアンメット・メディカルニーズの高い疾患として有効な治療薬の早期開発が望まれている。今回、開発の優先順位を引き下げたものの、環境が整えば臨床試験を再開する意向だ。
※出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HH>
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