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連載コラム:日本のペイパル・マフィア(第4回)村口和孝さん前編【実業之日本フォーラム】
配信日時:2022/01/19 14:38
配信元:FISCO
私が「日本版ペイパル・マフィア」と位置づける人々について紹介していく本連載。2人目にご紹介するのは、1998年に日本初の個人型ベンチャーキャピタル「NTVP(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ)」を設立した村口和孝さんです。
村口さんは大学卒業後に入社して14年間勤めたジャフコ(旧日本合同ファイナンス)を辞めて独立し、NTVPを立ち上げました。それは、当時の日本のベンチャーキャピタルのあり方に疑問を感じたからだといいます。
「スタートアップとは、まだ会社組織による運営に至っておらず、人が集まってパートナーシップ的なもので運営されている段階を言います。もちろんスタートアップも枠組みとしては株式会社ですが、実際に事業を運営していく中で、最初は商品サービスを試行錯誤しながらヒットを狙い、ようやく確信が持ててから従業員を雇います。さらに組織を作り、内部統制し、予算を管理し、ビジネスモデルを効率的かつ大規模に展開できるようになって、初めて『カンパニー』となってIPOできる。ですからスタートアップのパートナーシップ的なプロセスの支援というものは本来、組織化される前の段階が長いため、個人のパートナーシップに基づいて行われるのが当然なのです」
「かつて日本では歴史的にベンチャーキャピタルが金融機関の新サービスとして立ち上がり、株式会社組織がベンチャー投資を手掛けてきたわけですが、これは世界でもめずらしいミスマッチな形態といえます。シリコンバレーのベンチャーキャピタルは、個人のベンチャーキャピタリストが集まってLPS(リミテッド・パートナーシップ、投資事業有限責任組合)となるのが一般的です。私は、日本でもスタートアップ支援は個人主体のパートナーシップをベースに、特に組織化前の創業期を支援すべきだと考え、NTVPを立ち上げました」(村口さん)。
NTVP立ち上げの翌年には創業間もない南場智子氏率いるディー・エヌ・エーへの支援を決定し、出資。ディー・エヌ・エーは、一時は破綻寸前まで追い込まれながらも2005年にマザーズへ上場、売り上げが100億円を超えた2007年には東証一部昇格を遂げ、その後も急成長を続けてきたことは皆さんもご存じのとおりです。また、私が創業メンバーとなり2006年に立ち上げたウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターホールディングス)もNTVPの出資を受け、2013年にマザーズ上場を果たし、時価総額1000億円超えを達成するまでになりました。このほか、村口さんがパートナーシップを築き関わった数々の創業物語については、ぜひ村口さんの著書『私は、こんな人になら、金を出す!』(講談社+α新書)もお読みください。
近年の村口さんには、かつて支援したスタートアップで上場を遂げた企業から改めて「創業時代の精神を取り戻させてほしい」と声がかかることも増えたといい、複数の上場企業で社外取締役を務めていらっしゃいます。
「ここ数年、上場企業の社外取締役のあり方が活発に議論されるようになっていますが、実際に自分自身が社外取締役としての経験を積むことでさまざまな気づきを得ることができました」
「振り返ると、投資事業組合としての投資判断、スタートアップ経営への関与(ハンズオン)、その中でのヒット商品づくり、ビジネスモデルづくり、組織づくり、上場審査に耐える会社づくり、さらに上場後も改革を続けて会社を発展させていくという全プロセスを体験できたと感じます。私が20年かけてやってきたこれらの体験は、一般に2、3年で人事異動があるサラリーマンのままでは得ることができなかったものでしょう。今後は、こうした一連の体験を積み、様々なパートナーシップを自在に築くことが出来るスタートアップ支援のプレイヤーが日本でももっと増えると期待しています」(村口さん)。
次回後編では、村口さんが日本のスタートアップ環境を盛り上げるために取り組んでいることをご紹介します。
【村口和孝さんプロフィール】
日本テクノロジーベンチャーパートナーズ ジェネラルパートナー、慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師
1958年、徳島県生まれ。84年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、野村証券傘下のベンチャーキャピタル会社である日本合同ファイナンス(現ジャフコ)に入社。14年勤務した後、98年に独立し、日本初の個人型ベンチャーキャピタルである投資事業有限責任投資事業組合「日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)」を設立。ディー・エヌ・エー、インフォテリア(現アステリア)、ウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターホールディングス)、イメージワン、IPS、ブシロード、JPYCなど多数の企業を支援し、個人投資家ベースの独立系ベンチャーキャピタリストとして日本で類を見ない実績を収めている。ボランティアで「青少年起業体験プログラム」を各大学や高校で実施。2007年から慶應ビジネススクール講師。「ふるさと納税」の提案者としても知られる。
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役 会長兼社長 最高投資責任者(CIO)
藤野 英人(ふじの・ひでと)
国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。「ひふみ」シリーズ最高投資責任者(CIO)。投資啓発活動にも注力し、JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授を務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)。
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
(3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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村口さんは大学卒業後に入社して14年間勤めたジャフコ(旧日本合同ファイナンス)を辞めて独立し、NTVPを立ち上げました。それは、当時の日本のベンチャーキャピタルのあり方に疑問を感じたからだといいます。
「スタートアップとは、まだ会社組織による運営に至っておらず、人が集まってパートナーシップ的なもので運営されている段階を言います。もちろんスタートアップも枠組みとしては株式会社ですが、実際に事業を運営していく中で、最初は商品サービスを試行錯誤しながらヒットを狙い、ようやく確信が持ててから従業員を雇います。さらに組織を作り、内部統制し、予算を管理し、ビジネスモデルを効率的かつ大規模に展開できるようになって、初めて『カンパニー』となってIPOできる。ですからスタートアップのパートナーシップ的なプロセスの支援というものは本来、組織化される前の段階が長いため、個人のパートナーシップに基づいて行われるのが当然なのです」
「かつて日本では歴史的にベンチャーキャピタルが金融機関の新サービスとして立ち上がり、株式会社組織がベンチャー投資を手掛けてきたわけですが、これは世界でもめずらしいミスマッチな形態といえます。シリコンバレーのベンチャーキャピタルは、個人のベンチャーキャピタリストが集まってLPS(リミテッド・パートナーシップ、投資事業有限責任組合)となるのが一般的です。私は、日本でもスタートアップ支援は個人主体のパートナーシップをベースに、特に組織化前の創業期を支援すべきだと考え、NTVPを立ち上げました」(村口さん)。
NTVP立ち上げの翌年には創業間もない南場智子氏率いるディー・エヌ・エーへの支援を決定し、出資。ディー・エヌ・エーは、一時は破綻寸前まで追い込まれながらも2005年にマザーズへ上場、売り上げが100億円を超えた2007年には東証一部昇格を遂げ、その後も急成長を続けてきたことは皆さんもご存じのとおりです。また、私が創業メンバーとなり2006年に立ち上げたウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターホールディングス)もNTVPの出資を受け、2013年にマザーズ上場を果たし、時価総額1000億円超えを達成するまでになりました。このほか、村口さんがパートナーシップを築き関わった数々の創業物語については、ぜひ村口さんの著書『私は、こんな人になら、金を出す!』(講談社+α新書)もお読みください。
近年の村口さんには、かつて支援したスタートアップで上場を遂げた企業から改めて「創業時代の精神を取り戻させてほしい」と声がかかることも増えたといい、複数の上場企業で社外取締役を務めていらっしゃいます。
「ここ数年、上場企業の社外取締役のあり方が活発に議論されるようになっていますが、実際に自分自身が社外取締役としての経験を積むことでさまざまな気づきを得ることができました」
「振り返ると、投資事業組合としての投資判断、スタートアップ経営への関与(ハンズオン)、その中でのヒット商品づくり、ビジネスモデルづくり、組織づくり、上場審査に耐える会社づくり、さらに上場後も改革を続けて会社を発展させていくという全プロセスを体験できたと感じます。私が20年かけてやってきたこれらの体験は、一般に2、3年で人事異動があるサラリーマンのままでは得ることができなかったものでしょう。今後は、こうした一連の体験を積み、様々なパートナーシップを自在に築くことが出来るスタートアップ支援のプレイヤーが日本でももっと増えると期待しています」(村口さん)。
次回後編では、村口さんが日本のスタートアップ環境を盛り上げるために取り組んでいることをご紹介します。
【村口和孝さんプロフィール】
日本テクノロジーベンチャーパートナーズ ジェネラルパートナー、慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師
1958年、徳島県生まれ。84年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、野村証券傘下のベンチャーキャピタル会社である日本合同ファイナンス(現ジャフコ)に入社。14年勤務した後、98年に独立し、日本初の個人型ベンチャーキャピタルである投資事業有限責任投資事業組合「日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)」を設立。ディー・エヌ・エー、インフォテリア(現アステリア)、ウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターホールディングス)、イメージワン、IPS、ブシロード、JPYCなど多数の企業を支援し、個人投資家ベースの独立系ベンチャーキャピタリストとして日本で類を見ない実績を収めている。ボランティアで「青少年起業体験プログラム」を各大学や高校で実施。2007年から慶應ビジネススクール講師。「ふるさと納税」の提案者としても知られる。
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役 会長兼社長 最高投資責任者(CIO)
藤野 英人(ふじの・ひでと)
国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。「ひふみ」シリーズ最高投資責任者(CIO)。投資啓発活動にも注力し、JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授を務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)。
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
(3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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