後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
構造変化に対する期待だけでない株高を再認識
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32039.34;-467.44TOPIX;2215.01;-21.27[後場の投資戦略] 本日の日経平均は32700円まで上値を伸ばした後に一時32000円を割り込むなど700円超もの値幅をみせ、乱高下している。今週末は株価指数先物・オプション取引6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)のため、需給主導で荒い展開になりやすい。また、日経平均は5月以降に3000円超から4000円近くも上昇してきただけに、急ピッチでの上昇の反動も出やすいだろう。 ただ、この値幅の大きさについては、日本株を巡る構造的な変化に着目して買ってきている投資家だけでなく、テクニカル要因だけで持ち高を大きく積み上げている向きもそれなりに多いという証左だろう。メジャーSQを通過してからも、東証によるPBR改善要請や賃上げを通じた日本のデフレ脱却など、構造的な改革機運に対する期待は続くだろうが、ここまでの指数の上昇ピッチの速さは、そうしたファンダメンタルズ的な見方だけに基づかないということを改めて認識しておきたい。 世界銀行は6日に最新の世界経済見通しを発表。米国などの主要国の経済が想定よりも底堅いと判断し、2023年の実質GDP(国内総生産)成長率予測を2.1%とし、今年1月公表の前回予測(1.7%)から上方修正した。一方、2024年の成長率見通しは2.4%と前回予測(2.7%)から下方修正している。主要中央銀行による政策金利の上昇が予想されていたよりも大きく、金融引き締めの影響が今後時間差を伴って実体経済に表れると想定している。 株式市場は2024年には主要中銀による利下げが期待できるとの見方から、今年後半からは、来年からの回復期待先取りで株価は上昇していくと考えている向きが多いようだ。しかし、世銀が主張するように、利上げの累積効果がシリコンバレー銀行の破綻のように、今後再びじわりと発現してくる可能性はあり、この点、株式市場はやや楽観視し過ぎかもしれない。 また、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の会長は6日、2023年の同社の設備投資計画について、想定レンジの下限により近くなるとの見通しを示した。一方、同社は依然として今年後半からの市況改善を予想している。加えて、世界半導体市場統計(WSTS)は6日、2023年の半導体市場が前年比10.3%減になるとの見通しを発表し、従来予想(4.1%減)から下方修正した。スマートフォンやパソコンなど民生品向けの需要が低迷していることが背景で、WSTSは世界的なインフレなどで個人消費は振るわず、下押し要因が当面続くと見ているもよう。ただ一方で、WSTSも24年の市場見通しについては23年比11.8%増となり、22年実績を上回ると予想している。 しかし、この半導体に関しても個人的には市場はやや楽観的すぎるのではないかと思っている。日米の半導体企業の株価をみると、昨年はほぼ全ての銘柄が大幅に株価調整しており、日柄的にも値幅的にもたしかに一旦は悪材料を織り込み切ったと思われる。しかし、最終需要の底入れ感がほとんど確認されていないにもかかわらず、大半の半導体企業の株価は昨年秋頃には底入れし、そこから今年は大幅に回復、生成AI(人工知能)向け需要という新たなカタリストも加わり、足元では下げをほぼ帳消し、すでに上場来高値を更新している企業などもある。 ただ、上述したように、足元で半導体市況見通しの下方修正はまだ続いている。また、例えば東京エレクトロン<8035>は、前期は計画の下方修正が2回もあった。加えて、アドバンテスト<6857>は直近の決算まで2四半期連続で半導体市況の見通し前提を下方修正している。これだけ市況見通しに関する下方修正が多方面から相次いでいると、長らく言われいている今年後半からの市況回復という見立ても後ずれする可能性が十分にありそうだ。 こうした中、すでに多くの関連株が上場来高値を更新していたり、昨年の下げを取り戻し切っているのは正直どうなのかという印象を受ける。もちろん、株価は常に先を見据えて動くものであり、一般的に半年先を見据えて動くといわれる。しかし、いまの関連株の株価水準は今後訪れる市況回復を先走って大分織り込んでしまったのではないかという気がしてならない。生成AI需要という新たな材料が加わったことでアップサイドが出てきたともいえるが、やや期待先行の印象も拭えない。 本日も日経平均が後場に力強い回復を見せれば、日本株の強気モードはメジャーSQ後も続きそうだが、ここからは楽観の揺り戻しなど総じて慎重な姿勢で臨みたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/06/07 12:23
後場の投資戦略
依然として先高観強い日本株
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32350.58;+133.15TOPIX;2224.07;+4.28[後場の投資戦略] 日経平均は32000円割れからスタートも、急速に切り返してプラス圏に浮上し、4日続伸となっている。日経225先物は6日の夜間取引において一時32570円まで上昇。その後、米5月ISM非製造業景気指数が予想外に前月から悪化したことに伴う景気減速懸念や為替の円高により、32060円まで500円超も失速する場面があった。 急ピッチでの上昇の反動が出やすいなか、材料の少ない今週において最も注目されていた経済指標が悪化したことで、分かりやすく米株安・円高に売りで反応したに過ぎないともいえるが、上方向ならまだしも、短時間で500円超も下方向へ大きく動いたケースはここ最近ではほとんど見られていなかったため、基調の転換を感じさせた。 そのうえ、本日は日経平均が32000円も割り込んでスタートしたことで、そうした見方が裏付けられたかとも思った。しかし、完全にこれは杞憂に終わった。上述した通り、日経平均はその後急速に切り返し、プラス圏に浮上している。 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>の大幅な買い長の状況、および日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の大幅な売り長の状況が続くなか、売り方の買い戻しが下値を支えたとみられている。ただ、それだけではなく、依然としてこれまでの上昇相場のけん引役である海外勢の買い意欲が旺盛であることも挙げられるだろう。やはり、少なくとも今週末の株価指数先物・オプション取引6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)を通過するまでは上方向を見ておいた方がよさそうだ。 一方、中長期的には懸念材料がくすぶる。前日に発表された米5月ISM非製造業景気指数は50.3と4月(51.9)から低下し、改善するとの市場予想(52.4)に反して低下した。景況感の拡大・縮小の境界値である50割れ目前までの低下であるほか、特に新規受注が52.9と前回(56.1)からの低下幅が大きかったこともあり、景気減速懸念が再燃した。 ただ、直近の米サービス業購買担当者景気指数(PMI)とは動きが乖離しているほか、先週末に発表された米5月雇用統計でも力強い雇用者数の伸びが確認されていることから、景気後退懸念で株式市場が大きく下落するほどの内容とまでは判断できない。また、構成項目の仕入価格が56.2と前回(59.6)から大幅に低下し、新型コロナ流行前の水準に近づいてきた点はインフレ鎮静化、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止を示唆する点で株式市場にはポジティブな内容だった。 一方、米当局が金融システム強化に向け策定中の新規制案で、米大手銀行は平均で20%の資本要件引き上げを課される見込みと報道されており、これはマイナス材料だろう。新規制は資産1000億ドル(約14兆円)以上の銀行が対象になるもよう。米当局が現在最も厳格な規制の対象としているのは資産2500億ドル以上の銀行であるため、新規制ではこの基準が大幅に引き下げられることになる。米地銀の数十行も対象となり得るとのことで、貸し出し抑制が一段と強まる恐れがある。まだ確定事項でないうえ、実体経済に影響が出るまでには時間がかかる話であるため、現時点では株式市場への影響は限られると思われるが、懸念材料であることに違いない。 また、これまで相場のけん引役だったハイテク株に上昇一服感が見られている。前日、米アップルは新製品として複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro」を発表した。株価は期待感から一時上場来高値を更新していたが、発表後は出尽くし感から下落に転じた。時価総額が大きく、市場への影響力が大きい同社株が上場来高値更新による達成感やイベント通過による材料出尽くし感からこのまま調整局面入りになるようだと、米株式市場の上値が重くなろう。 ほか、140円台の定着に度々失敗しているドル円の動向も気がかりだ。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、5月30日時点での投機筋による円ポジションは9万6193枚の売り越し。5月中旬から売り越し幅を急速に拡大させてきており、今年に入ってからの最大の売り越し幅となっている。ただ直近の3年間の動向を振り返ると、おおよそ10万枚の売り越し水準をボトムにその後は買い戻しに転じる傾向が見られる。米景気指標の下振れや財務相・日銀ら当局による円安けん制などを背景にドル円の先高観が薄れるなか、今後はじわりと進みそうな円高にも注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/06/06 12:23
後場の投資戦略
メジャーSQに向け33000円目指す展開に現実味
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;32045.83;+521.61TOPIX;2211.88;+29.18[後場の投資戦略] 日経平均は大幅に3日続伸、前場の間に節目の32000円を超えてきている。今週末には株価指数先物・オプション取引6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)を控えている。権利行使価格32000円にはコール(買う権利)の建玉が大幅に積み上がっているため、日経平均がこの水準を超えてきたとなると、ディーラーなどコールの売り手によるヘッジ目的の先物買いの加速が想定され、ここから一段と上値を追う展開が予想される。 米国で債務上限を停止させる財政責任法案が上下院にて可決、3日にはバイデン大統領が署名し成立したことで、米国のデフォルト(債務不履行)は回避された。また、米5月雇用統計は非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を大幅に上回った一方、平均時給の伸びは前年比で鈍化、失業率は予想以上に上昇するなど、逼迫した労働市場の緩和を示唆する面も見られた。こうした外部環境の不透明感の後退やイベント通過に伴うあく抜け感などから、米国では投資家の先行き不安心理を表すVIX指数が先週末には14.6と15を下回り、警戒水準の20を大幅に下放れる状況になった。 加えて、外為市場ではドル円が再び140円台に乗せるなど円安・ドル高が進んでいる。また、先週末、中国が不動産市場を支える新たな一連の措置を検討していると報じられた。中国当局は主要都市の中心部以外で物件の手付金比率を引き下げることや、仲介手数料の減額を検討しているという。 東証によるPBR改善要請やバフェット効果、日銀による金融緩和の継続など、国内独自の要因で大幅に上昇してきた日本株だが、いまは米中に関する外部環境の改善も追い風に一段と騰勢を強める展開となっている。上述したように今週末のメジャーSQまでは売り手のヘッジ目的の先物買いの関係で、今後日経225先物や日経平均は33000円を目指す展開が想定されよう。 一方、リスクにはなりにくいとはいえ、今月は各国中央銀行による金融政策決定会合が相次いで開催される。また、米債務上限問題は解消されたが、今後は米財務省が減少していた手元資金を拡充するため、大量の債券を発行する見込みだ。これに伴い、市場の流動性が低下し、株式や債券のパフォーマンスにも悪影響がもたらされることが指摘されている。 米国でも、株価指数先物取引および株価指数オプション取引、個別株オプション取引の3つの取引期限満了日が重なるトリプルウィッチング(米国版メジャーSQ)が近づくまでは良好な需給環境が株価の上昇をもたらすことが予想される。しかし、米VIX指数の15割れはやや楽観に傾き過ぎている印象も拭えない。目先は強気維持でも日米のSQ通過後の基調転換には注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/06/05 12:21
後場の投資戦略
日本株独歩高は終焉か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31384.93;+236.92TOPIX;2172.36;+23.07[後場の投資戦略] 日経平均は続伸し、5月29日に終値ベースで付けたバブル崩壊後高値の31233.54円を超えてきている。前日の米ナスダック指数が1.3%前後、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1.55%上昇したのに比べると上昇率は小幅ではあるが、前日の上昇分や為替が円高・ドル安に傾いていることを考慮すれば違和感はない。 前日に発表された米5月ADP雇用統計の雇用者数は市場予想を大幅に上回り、週次新規失業保険申請件数も予想を下回るなど、改めて米労働市場の堅調さが確認された。一方、ADP雇用統計における賃金の伸びは鈍化した。また、米1-3月期単位労働コスト改定値は前期比年率+4.2%と予想(+6.0%)および速報値(+6.3%)から大幅に鈍化。これらの賃金インフレ鈍化の結果に加えて、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ一時停止を示唆したこともあり、米長期金利は一段と低下、ドル円のさらなる下押し圧力として働いた。 今晩は米5月雇用統計が発表されるが、改めて賃金インフレの鈍化が確認されれば、6月利上げ観測の一段の後退に伴いさらに円高・ドル安が進む可能性がある。その場合、これまで日本株高は円安とともに進んできた背景もあるため、日本株の上値抑制要因となりかねないだろう。 また、5月31日までの一週間で米国株ファンドが年初来最大となる資金流入を記録したことが伝わっている。この週、米債務上限問題が解決へ向かうとの楽観的な見通しが強まったことが背景にあると考えられる。これまでの日本株高の背景としては、東証によるPBR改善要請やバフェット氏の商社株への追加投資など日本独自の要因もあったが、債務上限問題など米国株を敬遠する材料があったからということも一つの要因としてあるだろう。足元で円安が一服したことに加え、米債務上限問題を巡る不透明感も解消されたことで、消去法的な理由から日本株に向かっていた逃避マネーの流れは小休止することが考えられる。今後も日本株への期待は続くだろうが、少なくとも日本株独歩高の局面は終わった可能性が高い。 米株式市場ではハイテク株をけん引役にナスダック指数やS&P500指数が堅調に推移している。景気敏感株が足かせになっているダウ平均も200日移動平均線がサポートラインとして機能する形で底堅さを見せており、米債務上限問題も峠を超えたいま、米株式市場は総じて良好な印象を受ける。 一方、米国で足元発表されている決算がやや気掛かりだ。小売りでダラー・ゼネラルやメーシーズが業績予想を下方修正したほか、小売り以外でも、クラウド型ID管理・統合認証サービスのオクタ、人工知能(AI)ソフトのC3.ai、クラウド顧客管理情報サービスのセールスフォース、サイバーセキュリティサービスのクラウドストライクHDなどの決算が振るわず、株価も揃って下落した。また、AIブームで沸く半導体のブロードコムも、第3四半期(5-7月)の売上高見通しはAI需要の高まりを背景に市場予想を上回ったが、時間外取引では株価は伸び悩んで下落した。エヌビディアの決算を契機に日米の株式市場をけん引してきた半導体株だが、やや買い疲れ感も出てきたようだ。 東京市場は来週末が株価指数先物・オプション6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)である。足元の堅調な株価推移を受け、来週末までは売り方の買い戻しなどでもう一段の上昇が見込めそうだが、その先は需給の転換が意識されやすい。足元ではファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に焦点が移ってきている様相も見受けられ、主力大型株の上昇は一服する可能性が高い。 こうしたなか、一方で、米長期金利が明確に低下してきていることが追い風にもなるグロース(成長)株のうち、景気や為替との連動性の小さい情報・通信やサービスといった内需系セクターのグロース企業に注目したい。これらのセクター群はこれまでの日経平均主導の上昇相場においてほとんど恩恵を享受できていなかったことから、出遅れ感の解消に期待したいところだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/06/02 12:21
後場の投資戦略
好地合いに徐々に変化の兆し
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30976.43;+88.55TOPIX;2139.89;+9.26[後場の投資戦略] 前場の日経平均は乱高下する荒い展開となった。前日は久々の大幅安となったが、これまでの上昇相場のけん引役だった商社株が特に大きく崩れたあたりから、あくまで月末のリバランス(資産配分の再調整)目的の売りが主因だったのではないかとの指摘があった。実際、本日はリバランス売り一巡に伴う需給改善やそれを見越した売り方の買い戻しが入ったか、日経平均は寄り付きからするすると値を切り上げ、あっさりと31000円を一時回復した。 一方、日本時間午前7時前から米下院での採決プロセスに入っていた「財政責任法案」が可決されたと伝わってからは好材料出尽くし感からか、急速に値を崩し、日経平均はマイナス圏にまで落ちる場面がみられた。米債務上限問題については、前日に共和党の強硬派議員らから、バイデン米大統領とマッカーシー下院議長の合意に対して報復宣言が出されるなど、無事に可決されるかやや懸念されていた。このため、特に難航が予想されていた下院で可決されれば素直に買いで反応するかと思われたが、実際には出尽くし感で売りが強まったもよう。 その後、日経平均は再度31000円を回復する場面もあるなど底堅さも見せているが、好材料に素直に反応できなくなっているあたり、これまでの強気一辺倒だった状況からはややムードが変わってきている印象を受ける。 為替も米国時間に一時1ドル=140円台を回復したが、同水準を再び割り込むとさらに円高方向に動いてきている。これまで日米金利差拡大に加えて、海外投資家が日本株を買う際にヘッジ目的で同時に円を売っていたことが円安・ドル高の要因となってきたが、円安が一服し、円高に傾いてきているあたりから、海外勢の買いが一服してきた感が窺える。 米債務上限問題がほぼ解決したことで米国債を巡る先行き不透明感が後退し、再び米国債の需要が高まることも想定される。加えて、日本経済新聞社の5月31日付けの記事「米社債市場が急回復、ファイザーが4兆円の超大型起債」によると、足元では米企業による投資適格債の発行額が5月1日から18日で約800億ドル(約11兆2000億円)と、既に4月月間を4割上回る規模にまで増加し、米国の社債発行市場が急回復しているもよう。 米銀行の経営破綻など金融システムの危機に対して、米連邦準備制度理事会(FRB)らが大規模な流動性供給で対応したことが、これまでのマーケットにおける一時的な弛緩ムードを作り出していた。しかし、米債務上限問題後の米債務短期証券(TB)の大量発行や企業の起債の増加、そしてFRBの金融引き締め継続により、市場に一時的にだぶついていたマネーは吸い上げられ、マーケット環境は再び引き締まってくることが考えられる。 需給面では先物手口をみると、商品投資顧問(CTA)との連動性の高いドイツ証券は先週まで日経225先物とTOPIX先物で買い越し傾向を続けていたが、今週に入ってからは売り越しに転じており、昨日も両先物で売り方に上位に入っていた。需給面に関する追い風も止んできたとみられる。 今週末の米雇用統計や来週末の株価指数先物・オプション6月限の特別清算指数(SQ)算出を控えるなか、まだ上方向も含めて荒い展開となる局面は残されているだろうが、徐々に調整モード入りに注意を払った方がよいタイミングがきたと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2023/06/01 12:22
後場の投資戦略
ドル円の先高観後退や国内経済指標の下振れを懸念
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30976.54;-351.62TOPIX;2137.87;-21.35[後場の投資戦略] 日経平均は5日ぶり反落。前日は前場安値から後場は300円高と急速に切り返して4日続伸したが、本日は連休明けの冴えない展開だった米株式市場を受けて売りが優勢となっている。 米連邦政府の債務上限交渉は合意に達したものの、議会採決への不透明感がくすぶっている。マッカーシー下院議長は可決に自信を示している一方、米共和党の強硬派議員らはバイデン米大統領とマッカーシー下院議長の合意に対して報復するなどと警告している。共和党内の一部ではマッカーシー下院議長の解任動議の採決を計画しているとも伝わっている。 一方、どんなに難航したとしても最終的には可決されるであろうことから、将来的な歳出抑制の景気に対する影響を織り込む形で、米債券市場では長期金利が大きく低下。また、前日発表された5月ダラス連銀製造業活動指数が-29.1と予想(-18.0)を下回り、4月(-23.4)から悪化したことも金利低下に拍車をかけた。 こうした米長期金利の低下に加えて、国内では足元で財務省と金融庁および日本銀行による情報交換会合が本日午後5時半から開かれるとも伝わっている。30日の外国為替市場でドル・円相場が一時1ドル=140円93銭と、昨年11月以来のドル高・円安水準を付けたことを受け、直近の急激な為替変動に対応した動きのようだ。これらの複合的要因を背景に、為替は前日の米国時間から1ドル=140円を割り込んできている。 米債務上限問題の最終的解決に予想外に時間がかかり、債務不履行(デフォルト)リスクが意識されるようなネガティブシナリオが実現した場合には、リスク回避目的の円買い・ドル売りが強まる可能性があるし、あっさりと解決に向かっても結局、景気動向への懸念や国内当局によるけん制などからドル円は伸び悩む可能性が高まってきた。ドル円の先高観が薄れ、1ドル=140円超えの定着は困難との見方が強まれば、日本株にも影響がありそうだ。 独り勝ちの様相を呈している東京市場ではその他にも気掛かりな要素が出てきた。今朝、取引開始前に発表された国内4月鉱工業生産は前月比-0.4%と予想(+1.4%)に反してマイナスとなり、3月(+1.1%)から大きく失速。前年比でみても-0.3%と予想(+2.0%)を大きく下回った。また、4月小売売上高は前月比-1.2%とこちらも予想(+0.5%)に反してマイナスとなり、前回(+0.6%)から大幅に悪化した。 東証によるPBR改善要請やバフェット効果などは引き続き下値を支える要因として意識されるだろうが、経済再開(リオープン)などで相対的に底堅いとみられてきた国内経済への楽観的な見方はやや修正が必要そうだ。鉱工業生産の結果をみても、やはり製造業主体の日本は世界景気の減速からの影響を免れることができないようだ。 日経平均は前日および本日といずれも31000円を下値として意識して下げ渋る動きが見られており、底堅さは健在の様子。ただ、上述したように日本株を巡る環境を楽観視ばかりもしていられない状況だ。これまで相場のけん引役となってきた海外投資家が好んで買ってきた東証プライム市場の主力大型株は景気敏感株が多い。これら銘柄の上昇ピッチはこれまで非常に速かっただけに、上述した背景からいったんは小休止の局面に入りそうだ。前日の当欄での繰り返しになるが、ここからはやはり出遅れ感の強い中小型株に投資機会を見出していきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/31 12:32
後場の投資戦略
さすがに上昇一服感を示唆する兆候も
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31119.27;-114.27TOPIX;2148.14;-12.51[後場の投資戦略] 日経平均は4日ぶり反落。前日は朝方に644円高と急伸した後は失速し、高値から326円も上げ幅を縮めて取引を終えた。本日は前日の米国市場が休場で手掛かり材料難のなか、短期的な過熱感を冷ます売りが優勢となっている。 一方、前日はこれまで相場をけん引してきた半導体関連株が失速した一方、海運、商社、保険、銀行などに買いが入った。半導体株一強という極端な資金集中による株価指数の急伸は健全な上げとはいえないが、前日は資金を上手くセクター間で循環させながら株価指数の上昇につながったという点で理想的な形だったといえる。ただ、朝方の早い段階で高値を付けた銘柄が散見されたほか、日経平均は31000円超えの水準では上ヒゲを伴った陰線を相次いで形成しているあたり、上値の重さも徐々に意識されている印象。 前日の先物手口では、日経225先物とTOPIX先物の両先物において、商品投資顧問(CTA)など短期筋との連動性が高いドイツ証券が売り方上位に入った。ドイツ証券は先週まで両先物において買い越し傾向が顕著だったため、短期筋の買いが一服したことを示唆していそうだ。また、日経225ミニでは、買い方上位にSBI証券と楽天証券の国内ネット証券が並んだ。日経平均が上昇を続けるなかでも、レバレッジ型上場投資信託(ETF)を通じて指数の下落に賭けていた個人投資家の動きが長らく話題になっていたが、そうした逆張り目線の個人も前日は重い腰を上げて買い戻しに転じた可能性が高いと推察される。 短期筋の買いが一服し、頑なに指数の上昇に対して空売りを続けていた個人も買い戻しに転じつつある、これらの点だけを踏まえれば、日経平均の上昇もやはり一服する可能性が高いのではないかと考える。 一方、半導体関連株など東証プライム市場の銘柄を中心にこれまで急伸してきた銘柄は非常に底堅い動きを見せていて、依然として買い意欲の根強さも窺える。また、4月以降(4月第1週-5月第3週)、海外投資家は現物だけで日本株を3兆5939億円と記録的な買い越しをみせている。これらの背景を踏まえれば、買い手は当然に短期筋だけではないはずであり、そうした点を考慮すれば、日経平均は上昇一服となっても海外市場が大崩れしない限りは当面下値も堅いと考えられる。 他方でこうしたなか、マザーズ指数の軟調ぶりから窺えるように、新興株を中心とした中小型株の低調なパフォーマンスが続いている点が気がかりだ。ただ、相場全体が堅調さを保つのであれば、こうした出遅れ感の強い銘柄群もいずれ見直される局面がくるだろう。新興株に関しては、6月から新規株式公開(IPO)が増える関係で需給面での重しが想定され、低調さがまだ続く可能性はあるが、夜明けは近づいていると考えたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/30 12:27
後場の投資戦略
幅広い銘柄が堅調に推移
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31325.84;+409.53TOPIX;2166.41;+20.57[後場の投資戦略] シカゴ日経225先物清算値は大阪比540円高の31500円。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はギャップアップから取引を開始した。米債務上限問題の交渉について、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が基本合意に達したことは投資家心理にポジティブに働いている。ただ、今週は米雇用統計など重要な経済指標の発表を控えるなか、徐々にこう着感が強まるとの見方も広がっている。 新興市場も堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、朝方に上げ幅を広げた。ただ、その後は上値の重い展開となっている。米長期金利は上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとっては厳しい地合いが続いている。また、東京市場では引き続き半導体関連などプライム市場の主力株中心に投資家の注目が集まっており、新興株を積極的に買い進む動きは乏しい。前引け時点での東証マザーズ指数は1.37%高、東証グロース市場Core指数は0.99%高。 さて、休日に米債務上限問題を巡る与野党の交渉は合意に近づいていると報道された。バイデン大統領とマッカーシー下院議長は、債務政府の法定債務上限に関する原則合意を盛り込んだ法案が議会を通過して署名に向けて大統領に送付され、米国で初のデフォルトが回避されると確信していると表明したようだ。議長は大統領と再び協議し、31日に採決を行う方針を表明。ひとまず、債務上限問題について過度な警戒感は後退しており、投資家心理にポジティブに働いているだろう。 一方、英国の物価指標の上振れやウォラーFRB理事のタカ派発言などを受けて米長期金利は3.8%台まで上昇している。FRBは6月13~14日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ポイントの追加利上げが適切かどうか判断する。6月FOMCでの0.25ポイントの利上げは、FRB内部でかなり意見が分かれているが、CMEFEDウォッチツールでも約62%と織り込み済みとまではいってない。今週は米国で供給管理協会(ISM)の5月製造業景気指数、5月雇用統計などが発表されるため、これらの指標には最大限の注目が集まろう。 ただ、6月2日発表の5月雇用統計では、非農業部門雇用者数の増加幅が前月比で20万人を割り込み、平均時給は0.3%増と1年ぶりの大幅増だった前月から鈍化する見通しとなっている。また、4月の求人件数は2年ぶりの低水準が予想されており、労働市場の需給逼迫が徐々に緩和しつつあることが想定されている。あくまで予想であるため、結果が出るまでは油断できないが、今週発言が予定されているリッチモンド連銀のバーキン総裁とフィラデルフィア連銀のハーカー総裁、ジェファーソン連邦準備制度理事会(FRB)理事らの発言にも注意を払っておきたいところだ。 そのほか、東証の投資部門別売買状況によると、海外投資家の買い越氏が継続する一方で、個人投資家や年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行の売り越しが続いている。背景としては東証によるPBR改善要請や米著名投資家バフェット氏の追加投資表明、新日銀体制下での追加緩和継続などが挙げられており、日本株市場のメインプレーヤーである海外投資家の動向は今後も随時確認しておく必要がある。さて、後場の日経平均は、プラス圏でこう着感の強い展開が続くか。前引けにかけてじりじりと上げ幅を縮小しているが、引き続き半導体関連株を中心に国内主力企業への物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/05/29 12:29
後場の投資戦略
ハイテク集中買いがけん引する構図はどこまで続くか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31101.60;+300.47TOPIX;2158.63;+12.48[後場の投資戦略] 日経平均はハイテク株高がけん引する形で続伸、再び31000円を捉えている。ただ、東証プライム市場の値上がり銘柄と値下がり銘柄の割合が拮抗する日が多くなっており、本日は値下がり銘柄の割合の方が高い。マザーズ指数や東証グロース市場指数の低迷ぶりからも一目瞭然のように、新興市場を中心とした中小型株は「蚊帳の外」状態が続いている。米国でもナスダック指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の強い動きが続いているが、一方でダウ平均は4月以降の保ち合いを下放れてきている。生成AI(人工知能)ツールの普及を背景にハイテクブームが巻き起こっていることは悪いことではないが、ハイテクに一極集中しているような今の相場は心もとない。 東京証券取引所が発表する投資部門別売買動向によると、海外投資家は5月第3週(15-19日)も現物・先物合算(ミニ除く)で1兆3434億円と大幅な買い越しを見せ、現物だけでは7167億円の買い越しだった。足元ではロングオンリー、いわゆる買い持ち高しか作らない長期目線の海外投資家も日本株買いに動きはじめたとの指摘が聞かれている。投資委員会などで承認を得た後に動くプロセスを踏まえると、これら実需筋の買い越しはまだ続く可能性が高く、日本株の底堅さは続きそうだ。 一方、投資部門別売買状況によると、個人投資家や年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行の売り越しは続いており、国内勢はほとんど足元の上昇相場に追随する動きを見せていない。日本株への期待が高まっているとはいえ、期待だけでどこまで海外勢が買い越しを続けるのかも未知数だ。 一部外資証券が、日本での近々の解散総選挙および日本維新の会の伸長と連立政権入りの可能性を示唆するレポートを発行している。海外勢の日本株買いの背景にはこうした政治への期待もあるようだ。しかし、候補者の擁立を巡って自民党と公明党による亀裂が生じているために解散へ踏み切ることは不可能との指摘もある。また、25日に開かれた7&iHD<3382>の株主総会では対立する米ファンドの提案が退けられた。これから株主総会が本格化していくが、海外勢への日本企業への変革期待が尻すぼみに終わる可能性も頭の片隅に置いておきたい。 午後の日経平均は堅調な動きが想定されるものの、上値追いには慎重になるべきか。来週は中国で購買担当者景気指数(PMI)、米国ではISM製造業景気指数、雇用統計など重要指標が発表される。米債務上限問題も合意に近づいていると報じられているが、最後まで予断を許さない。海外動向を見極めたいとの思惑も働くなか、国内勢の追随買いは引き続き期待しづらく、海外勢の買いがどこまで続くかを見極める局面に入ったといえよう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/26 12:12
後場の投資戦略
半導体に助けられるも外部環境の不透明感強まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30848.07;+165.39TOPIX;2152.00;-0.40[後場の投資戦略] 日経平均は下落してスタートも切り返して反発している。米株式市場の取引終了後に発表された半導体エヌビディアの決算が実績および見通しともに市場予想を大幅に上回るポジティブサプライズとなり、東京市場でも半導体株がけん引している。一方、米債務上限問題の先行き不透明感がくすぶるなか、半導体関連を除けば軟調で、東証株価指数(TOPIX)やマザーズ指数は下落している。 25日の夜間取引の日経225先物は米国株安を受けて一時30400円まで下落していた。前日までの続落で調整色を強めていた日経平均が本日30500円を下回っていれば、ムードは一段と悪化していたことが想定されたため、本日の日経平均の上昇と節目の30500円キープは投資家心理を支える点では大きそうだ。 一方、外部環境を巡っては先行き不透明感が強まっている。米債務上限問題については、デッドラインが近づいているなか、いまだに合意の兆しを明確に見せていない。また、イエレン米財務長官は、6月1日にも米連邦政府が資金枯渇に陥ると改めて警告し、財務省短期証券(TB)の6月1日満期のレートは一時7%上回った。さらに、格付け会社のフィッチ・レーティングスは24日、米国の長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)「AAA」を「レーティング・ウオッチ・ネガティブ」に置いたと発表した。今のところ相場への影響は限られているが、2011年の相場を彷彿とさせるようで嫌な印象だ。 他方、すでに沈静化は時間の問題で相場の関心事の中心から外されてきたインフレについての警戒感が高まっている。前日に発表された英国の4月消費者物価指数(CPI)は市場予想を大幅に上回り、食品・エネルギーなどを除くコア指数は3月から大きく加速。これを受けて24日の取引では英国債利回りが急上昇、トラス前政権が財源の裏付けのない大型減税計画を発表して市場が混乱に陥った時以来の高水準を付けた。 さらに、米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が「インフレが2%目標に向かって低下しつつある明確な兆候が得られるまでは、利上げの停止を支持しない」と発言。これら複数の材料が相まって、米債利回りも大きく上昇している。 他方、米債利回りの上昇を受けて、為替の円安・ドル高トレンドが強まっており、足元でドル円は1ドル=139円台後半と、140円超えを窺う水準にまで上昇している。こうした円安が東京株式市場の下値を支えているともいえるが、これだけ円安が進んでいる割には日経平均の動きも鈍ってきており、明らかに22日までの状況とは変わってきている様子。円安が素直に日本株の上昇につながりにくくなっているあたり、投資家心理が垣間見えるようで、注意を払うべきだろう。 また、海外勢の日本株高シナリオの一つには「植田日銀体制下での金融緩和継続」も挙げられていたが、ドル円が140円台を超えてくると、日本国内でも沈静化したはずの輸入インフレの再燃が想起される。これが来年以降の春闘での賃上げ継続を連想させれば、日銀の緩和継続のスタンスに疑念が持たれる場面も出てくるかもしれない。米債務上限問題だけでなく、金利・為替の動向、これらとの株価の連動性などを今後注意深く見守っていきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/25 12:15
後場の投資戦略
相場の基調転換に注意
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30623.83;-333.94TOPIX;2149.76;-11.73[後場の投資戦略] 日経平均は続落。前日は大幅高で発進し、連日でバブル崩壊後の高値を更新していたが、後場に大きく崩れた。経済産業省による先端半導体製造装置に関する輸出規制の報道が利益確定売りの口実となったほか、一部の国内年金基金からの大口売り観測が指摘されていた。 本日は米債務上限問題がくすぶるなか、前日のナスダック指数、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)がそろって1%を超える下落率となったことも影響し、日経平均も1%超の下落率で続落している。これまでの上昇幅を考えれば、スピード調整の範囲内だが、さすがに前日の急な崩れ方を受けて目先の一服感が強まったようだ。 米株式市場では、景気敏感株の構成割合の高いダウ平均が75日移動平均線を下回り、200日線に近づいていて、4月以降のもみ合いレンジを下放れてきている。一方、資金の逃避先となってきた大型株ハイテク株も、米債務上限問題の「Xデー」が早ければ6月1日にも到来すると指摘されるなか、デッドラインが近づいていることで利益確定売りが強まってきている。ナスダック指数は前日に久々に1%を超える下落率となった。 また、大型ハイテク株と並んで資金が集まっていたところでは、高級品を中心とした小売企業が挙げられるが、前日はフランスの高級品ブランド、エルメス・インターナショナルやLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンなど関連株がそろって急落した。米債務上限問題のデッドラインが近づき投資家が神経質になりやすいなか、これまで堅調だった銘柄群にまとまった売りが出てきている点は相場の基調転換を示唆しているような印象を受け、注意したい。 米債務上限問題については、最終的には解決に向かうことはほぼ間違いないとみられている。ただ、交渉に当たっているマッカーシー下院議長は異例の15回目の投票にて議長に選ばれた人物であり、もともと共和党内で求心力が高いとはいえない。そのため、本当に党内の意見をまとめ切れるかはやや心もとない。大丈夫だとは思うが、この問題については最後まで予断を許さないでおくべきだろう。 また、にわかに台頭しはじめたのが中国での新型コロナ感染の再拡大だ。オミクロン株「XBB」系統が先月下旬から感染拡大に拍車をかけているようで、ピークを迎える6月末にかけては週に約6500万人が感染するとの試算が伝わっている。市場関係者の間では、中国人訪日客の復活が期待されていたなか、日本国内でのインバウンド消費への期待が後退しかねない、また「内需主導の底堅い経済」という日本株シナリオの重要要素が一つ欠けることになると懸念する声も聞かれる。実際、これまで株価が堅調だったインバウンド関連銘柄では三越伊勢丹<3099>、マツキヨココ<3088>、パンパシHD<7532>などが前日から大きく崩れている。 急ピッチで上昇してきた日本株については、海外勢の日本株への見方が変わってきているなか、下げはあくまで外部環境につられた一時的なものであるとして強気な姿勢を維持している市場関係者が多い。ただ、相場の基調転換を示唆する材料はいくつか確認されており、短期筋の持ち高が大きく積み上がっていたことを考えると、短期的には調整局面入りに注意を払いたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/24 12:12
後場の投資戦略
実需筋の買いはどれ程期待できるのか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;31286.70;+199.88TOPIX;2184.08;+8.18[後場の投資戦略] 日経平均は9日続伸と驚異的な躍進劇が続いている。この間の上昇幅は優に2000円を超えている。先週末に日経平均がバブル崩壊後の高値を更新したことでさすがに一服感が出てくると思われたが、この予想は今のところ外れている。 先週末は米連邦政府の債務上限問題の交渉が「一時停止」と伝わり、一時広がっていた楽観論が萎んだ。為替も前日の東京時間には先週後半に付けた高値からは1円程も円高・ドル安になっていたため目先の一服感をより正当化する材料になると考えていた。 しかし、前日の東京市場は朝方にやや売りが先行した後はすぐに下げ渋り、午後は大きく切り返してプラス転換、日経平均は31000円を超えた。さらに、主要株価指数がまちまちだった米株式市場を横目に23日の夜間取引の日経225先物はさらに上値を伸ばし、本日の日経平均も250円超と上昇。強すぎて驚きを隠せない。 主な背景として挙げられているのは海外投資家の日本株買いだ。今週に入ってからは、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの短期筋だけでなく、ロングオンリー(買い持ちのみ)と呼ばれる長期目線の投資家による現物買いも入っているとの指摘が聞かれる。決算シーズンを通過した後も東証プライム市場の売買代金で3兆円超えが続いているあたり、こうした指摘も間違いではないだろう。 ただ、前日の東証プライム市場の売買代金は3兆円をかろうじて上回った水準で、徐々に減少してきている。また、前日の先物手口をみると、日経225先物の買い方筆頭はJPモルガンだったが、上位には引き続きCTAとの連動性が高いドイツ証券が入ったほか、日本株調査部門をもたずシステマティックな売買のみとみられるバークレイズ証券がこれに続いた。TOPIX先物でも買い方筆頭はバークレイズであり、差し引き1000枚を超す買い越しも見られなかった。国内証券にいたっては、これまでの上昇相場において買い方上位に入った日はほとんどなく、むしろ売り方上位に入ることが多い。国内の機関投資家はQUICKの月次調査からも窺えるように、海外勢の旺盛な買い越しに対して利益確定売りで対応しているようだ。ここから先週後半と同様、筆者には前日も短期筋主体の上昇相場だったようにみえる。 実体経済に目を向ければ、年初に期待されていた中国経済の回復スピードは早くも失速し、期待はずれに終わっている。加えて、米国では銀行をはじめとした企業の経営破綻など急速な利上げ影響が表れはじめている。その米国ではインフレがピークアウトしたとはいえ、早期の利下げ転換によってインフレをぶり返してしまった1970年代の過ちを指摘し、利上げ継続を主張するFRB高官がまだいる。 さらに、米国ではコロナ後の高止まりするオフィス空室率と超低金利時代のローン借り換えが懸念される商業用不動産業の行方、そして急速な銀行の貸し出し態度悪化を通じた信用収縮の影響が今後表れることも予想されている。こうしたマクロ環境の悪化が予想されるなかで、果たして長期目線の実需筋がどれだけ買いを入れてくるのだろうか。 3月末、東証はPBRが低迷する企業に対して改善策を開示・実行するよう要請した。そして、先週までの1-3月期決算において新たな資本政策の発表などで応える企業が増えたことも事実。こうした変化の兆しを捉えて、長期目線の投資家が打診買いを入れるのは理解できる。ただ、マクロ環境の追い風がなく、むしろ今後さらなる逆風が予想されるなか、日本固有の要因だけで現物買いがいつまでも続くとは想定しづらい。 日本だけに歴史的な上昇相場が訪れていることは確かだが、乗り遅れを恐れて今の波に急いで乗じるような行為だけはすべきでないだろう。日経平均など指数の上昇が一服すれば、東証プライム銘柄の大型株の上昇も小休止すると予想される。こうした中、好業績にもかかわらず地合いの関係でこれまで蚊帳の外とされてきた中小型株などに目線を向けるべきと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/23 12:11
後場の投資戦略
上昇一服感が台頭か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30833.94;+25.59TOPIX;2164.95;+3.26[後場の投資戦略] シカゴ日経225先物清算値は大阪比45円安の30855円。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はやや売りが先行した。先週の日経平均は連日のギャップアップからの上昇でバブル後の高値を更新したこともあり、急ピッチの上昇に対する利益確定の動きが入りやすく、朝方の下げは想定内といったところ。ただ、その後は買い戻しも優勢でプラス圏に浮上した。 一方、新興市場はもみ合い展開が続いている。マザーズ指数は下落スタート後、朝方にプラス圏に浮上。その後は前週末終値付近でのもみ合い展開となっている。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落スタート後、下げ幅を縮小するもマイナス圏での推移が続いている。連邦政府の債務上限問題を巡る交渉が一時停止されたと伝わったことが国内の投資家心理にもネガティブに働いているか。前引け時点での東証マザーズ指数は0.17%高、東証グロース市場Core指数は0.53%安。 さて、5月のFOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジが0.25ポイント引き上げられて5-5.25%となり、利上げ停止の可能性が示唆された。前週は、ボウマン理事やクリーブランド連銀のメスター総裁などは利上げ継続すべきとの見解を示している一方で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は19日に6月は利上げ休止に傾いていると発言。銀行の貸し渋りなど信用収縮がもたらす金融引き締め効果を指摘したようだ。次回の6月FOMCは6月13-14日に開かれる。CMEのFedウォッチツールでは、利上げ確率は9.2%で利上げ停止確率は90%に及んでいる。 一方、米連邦政府の債務上限問題については、マッカーシー下院議長が21日にバイデン大統領と電話で協議し、話し合いは「建設的だった」と連邦議会議事堂で記者団に話したようだ。ただ、議長は記者団への発言で、まだ合意に達していないことを強調しており、本日22日に再び会談して話し合いを続けるという。6月1日にも米国がデフォルト(債務不履行)に陥る恐れがあると警戒されているなか、引き続き米債務上限問題の動向に注目が集まろう。 そのほか、バブル崩壊後の高値を更新した日経平均株価だが、背景としては東証によるPBR改善要請や米著名投資家バフェット氏の追加投資表明、新日銀体制下での追加緩和継続などが挙げられている。また、投資主体別売買動向を見てみると、海外投資家は4月から6週連続で日本株を買い越している。推移を確認すると海外投資家が3月2週目から売り越し幅が縮小して4月2週目にかけて大きく買い越しに転じている一方で、信託銀行は6週連続で売り越している。日本株市場のメインプレーヤーである海外投資家の動向は今後も注目していく必要がある。 また、日本企業に対してアクティビスト(物言う株主)ファンドの動きが活発化しているようだ。アイ・アールジャパンホールディングスの資料によると、5月11日時点でアクティビストによる株主提案の提出件数は43件と前年同時点の27件を大きく上回っており、過去最多となった2022年の58件に迫る勢いだという。日本株がバブル崩壊後の戻り高値を更新するなか、こういった情報も頭の片隅に置いておきたい。 さて、米国の外部環境は不透明感を払しょくしきれていないが、株価が上下どちらにむかってもいいように引き続き今後のシナリオを考えていきたい。月曜日の当欄を担当する筆者は引き続き今後の下落シナリオを想定して相場を見守っているが、理由や要因などは過去の当欄をご覧いただきたい。後場の日経平均は、こう着感の強い展開が続くか。引き続き東証プライム市場を中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/05/22 12:22
後場の投資戦略
バブル後高値更新も先物主体への転換でピーク近いか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30892.47;+318.54TOPIX;2168.15;+10.30[後場の投資戦略] 日経平均は7日続伸と驚異的な躍進劇をみせており、東証株価指数(TOPIX)とともにバブル崩壊後の最高値を更新している。対ドルでの円安が前日からさらに1円ほども進むなど追い風が吹いているとはいえ、日経平均は直近1カ月間だけで2000円以上も上昇している。 前日に東京証券取引所が発表した投資部門別売買状況によると、海外投資家は現物・先物合算で7699億円の買い越しとなり、現物だけでも5884億円と大幅な買い越しとなった。現物については、これで3月最終週(3月27-31日)から6週連続の買い越しとなり、累計では2兆9068億円にも及ぶ。将来の反対売買による決済を伴う先物ではなく、現物でこれだけの規模を買い越しているあたり、今回の海外投資家の動きには単なる買い戻しの域を超えたものが感じられる。 米シリコンバレー銀行(SVB)が破綻した3月第2週(3月6-10日)から海外投資家の売り越しが続いたのは3月第4週(20-24日)までで、この3週間で現物では累計2兆1580億円売り越していた。一方、翌週の3月第5週(27-31日)から4月第4週(4月24-28日)までの間に現物で累計2兆1581億円とほぼ同額買い越した。この時点では筆者はまだ単純な買い戻しに過ぎないと考えていたが、5月に入ってからも現物の買い越しが続いているあたり、最近、市場関係者の間で指摘されている通り、海外投資家が日本株に対する見方を変えてきたことは確かといえる。 一方、今週半ば以降の動きについては、東証プライム市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数がほぼ拮抗するなか、値がさ株など指数寄与度上位の銘柄の上昇が指数をけん引している動きが明確に見られていることから、現物より先物主導の動きに変化しつつあると考えられる。実際、18日の日中取引および夜間取引の合計取引高は8万4000枚超えと、直近4営業日と比較して3万枚近くも増加した。昨夕から始まった19日付けの夜間取引での日経225先物の取引高もすでに3万枚超えと夜間取引としては異例の多さであり、売り方の買い戻しなどを巻き込む形で先物主体相場への転換が窺える。 前日の当欄「『もうはまだなり』もピークアウトも意識する水準」で指摘したが、5月の国内大型連休入り前から日経225先物およびTOPIX(東証株価指数)先物で売り方上位となり、5月2日以降には225先物での売り越し基調が鮮明になっていたドイツ証券は、17日に225先物とTOPIX先物でともに大きく買い越しに転じた。そして前日も225先物は小幅だった一方でTOPIX先物では大きめの買い越しが続いていた。同証券の手口は商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの動きとの連動性が高い傾向があるため、先物主体の短期筋もやはり日経平均の3万円突破を受けて、買いの流れに乗じてきたようだ。 ただ、今週から、現物主体の動きから先物主体の動きに切り替わっているとすれば、3月末以降から進んできた日本株の独歩高基調はやはり一旦は小休止の域に入るのではないだろうか。日経平均が本日バブル崩壊後の最高値を更新したことでさすがに上昇一服感や達成感もこれまで以上に強まってくると考えられる。ここまでの強い基調から大幅な値崩れは想定しづらいが、29000円台半ばあたりまでの調整は十分にありえるだろう。海外勢の日本株に対する見方が変化しつつあるとはいえ、世界景気の先行き不透明感が強いなか、日本株だけがいつまでも独歩高を続けるとは想定しづらい。ここからは、これまで指数をけん引してきた半導体関連などのハイテク株よりは、指数対比で出遅れ感の強い銘柄などに着目した方がよさそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/19 12:16
後場の投資戦略
「もうはまだなり」もピークアウトも意識する水準
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30533.64;+440.05TOPIX;2155.57;+21.96[後場の投資戦略] 日経平均は大幅に6日続伸し、2021年9月に付けたバブル崩壊後の高値30795円を窺う水準にまで一時上値を伸ばした。前日の米株式市場において久々に主要株価指数がそろって大幅に上昇したことや為替の一段の円安進行が追い風になっている。また、岸田首相が米インテルなど半導体メーカー幹部と面談することや、米マイクロン・テクノロジーが日本政府から2000億円の支援を受け、同社広島工場で次世代製品の生産を目指すことが伝わった。これらの材料を手掛かりに、指数寄与度の大きい半導体をはじめとしたハイテク株が大幅高となっていることが指数の引き上げに寄与している。 米国株高の背景としては、くすぶっていた連邦政府の債務上限問題について進展の兆しが見られたことが挙げられる。バイデン米大統領は交渉の妥結に自信を見せたほか、マッカーシー下院議長もこの問題で合意をまとめられることを確信していると発言。当事者らからの楽観的な見通しを受けて投資家心理が改善した。また、米ウェスタン・アライアンスの預金が前四半期末から20億ドル余り増えたことが伝わり、地銀の経営不安が緩和したこともセンチメントを上向かせた。 しかし、日経平均の急ピッチでの上昇については、さすがに過熱感を通り越して警戒感がくすぶりはじめたようだ。東証プライム市場の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割った騰落レシオ(25日平均)は前日時点で143%と「買われ過ぎ」とされる120%を大幅に超えており、こうした状況は長期化している。また、日経平均の日足チャートをみると、25日移動平均線からの現状株価の乖離率は過熱感を示すとされる5%を大幅に超えてきている。 少し前まで、日経平均は26000-28000円レンジが当面続くと言われていたが、現状の株価水準はレンジ上限を2500円程も上回る。もちろん、背景としては昨日の当欄「3万超えても勢いそのままの日経平均を考察」で指摘した通り、ここ数カ月の間に日本株に対する見方を大きく変えるような要素がいくつも重なったことが挙げられる。 しかし、さすがに株価指数については一段の上昇を期待しにくい水準まですでに到達している。当初はたしかに海外投資家の日本株に対する見方の変化といった裏付けのある株価上昇だったともいえるが、今週に入ってからの株価上昇については「買うから上がる」、「上がるから買う」といった値動き重視の様相に切り替わっている印象も受ける。小さなきっかけで株価はもろく崩れることが予想され、上値追いには慎重になるべきだろう。 また、前日の先物手口では興味深い動きが確認された。5月の国内大型連休入り前から日経225先物およびTOPIX(東証株価指数)先物で売り方上位となり、5月2日以降には225先物での売り越し基調が鮮明になっていたドイツ証券が、前日17日は225先物とTOPIX先物でともに大きく買い越し、買い方トップに躍り出た。これは売り方がいよいよ買い戻しに踏み切った証左ではないかと考えている。逆にいうと、売り方が遂に買い戻しを迫られたあたり、現状の株価水準は目先のピークに達したともいえそうだ。 中国経済回復の勢い失速、それを裏付ける資源価格の軟化傾向、米国で徐々に増える企業倒産などの急速利上げの後遺症、米商業用不動産ローンの借り換え問題など、世界景気の先行きに影を落とす材料はいくつもある。こうした中にもかかわらず、現物の日経平均がバブル崩壊後の最高値に一時迫るところまで上昇してきたあたり、目先のピークを示唆している気がしてならない。 本日は後場の日経平均の動きにいつも以上に注目したい。ここ数週間、日本株の独歩高ともいえる強い動きが続いてきたが、概ね共通していえることは後場が強いことだ。前場からの勢いがより加速する場合や前場にやや押されても後場は前場の高値を上回ってくることがよく見られた。上述したように日経平均が目先のピークを付けたとする予想が正しいのであれば、本日の後場の日経平均はこれまでとは異なり、前場高値を上回れず、前場よりも騰勢を弱める動きが見られるだろう。逆にそうならずに前日までと同様、後場に強い動きが見られれば、足元の日本株独歩高の状況はもう少し延長されることになりそうだ。ただ、仮に後者になった場合でも、日経平均がバブル崩壊後の高値を更新すればやはり目先のピークを迎えた可能性が高いと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/18 12:16
後場の投資戦略
3万超えても勢いそのままの日経平均を考察
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30039.41;+196.42TOPIX;2132.74;+5.56[後場の投資戦略] 日経平均は遂に大台の3万円を回復した。東証株価指数(TOPIX)は連日でバブル崩壊後33年ぶりの高値を更新している。正直に言ってここまでの強さは全く予想できていなかった。本日は東証プライム市場では値下がり銘柄の割合の方が多い(前引け時点)うえ、値がさ株の上昇率が高いことから先物買いが押し上げ役として働いているだろうが、それでも強い。背景としては度々多方面で指摘されているように日本株を巡る海外投資家の見方が変わり、日本株のアロケーション(配分比率)を増やしていることが考えられる。 すなわち、(1)東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業への改善要請、(2)米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による日本株への追加投資を契機とした見直し機運、(3)植田新日銀体制の下での金融緩和継続、(4)1-3月期決算において東証の改善要請に積極的な株主還元策で応える企業が増えたこと、(5)諸外国に比べて周回遅れで到来した経済再開の効果、(6)デフレ体質が染み付いていた日本で賃金上昇によるインフレ定着という構造的な変化が起きつつある(と認識されつつある)こと、などだろう。 筆者は日経平均の大台3万円回復にはもともと懐疑的だった。理由としては、(1)先週末の5月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出日通過を境に需給が転換すると考えていたこと、(2)15日の決算発表一巡で株主還元策発表パレードも小休止して手掛かり材料難になること、(3)米連邦政府の債務上限問題によるボラティリティの高まり、(4)年初の株高をけん引していた中国経済の回復期待の剥落、(5)デフレ体質の脱却による日本の構造変化は期待先行で、来年以降の春闘を確認する必要があり期待は沈静化すると考えられること、などだ。 しかし、5月SQを通過しても、決算発表が一巡しても、中国の経済指標の下振れが続いても、米債務上限問題がくすぶり続けていても、日本株の上昇の勢いは止まる気配をまったく見せていない。日経平均は大台の3万円を回復しても「目先の達成感」といった様相すら感じさせず、勢いはそのままだ。 足元では海外投資家の日本株買いがヘッジファンドなど短期筋の追随買いを呼んでいるようだ。また、日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の空売りや日経平均ダブル・インバース連動型上場投信<1357>の購入を通じて日経平均の下落に賭けていた売り方が損失覚悟の買い戻しを迫られていることも踏み上げ的な相場を創出していると考えられる。 一方、日経平均の予想一株当たり利益(EPS)が切り下がってきているなか、株価収益率(PER)主導の上昇により日本株のバリュエーションにも割安感がなくなってきている。 前日発表された米国4月の小売売上高や鉱工業生産は総じて予想を上回り、経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まっているもよう。しかし、15日の米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁や米アトランタ連銀のボスティック総裁に続き、16日には米リッチモンド連銀のバーキン総裁や米クリーブランド連銀のメスター総裁らも追加利上げを示唆するなど株式市場に逆風をもたらす材料も確認されている。異例のハイペースで引き上げてきた大幅利上げの効果は今後も徐々に顕在化してくると考えられ、米国経済のソフトランディングに過度な期待をもつのは危うい気もする。 中国経済回復の息切れ感も強まるなか、PER主導の株価上昇がどこまで続くのかについては個人的にはやはり懐疑的にならざるを得ない。また、筆者が日経平均の大台3万円回復に懐疑的だった理由としては、もう一つ、(6)東証の改革要請効果の持続性が挙げられる。東証から尻を叩かれる形で国内企業から株主還元策が相次ぐことは第一歩として評価できる。しかし、本当に重要なのは自社株買いといった一過性の策ではなく、成長性・収益性の向上といった企業の構造的な変化だ。ただ、まだ日が浅いこともあり、そうした動きは少ない。当面は期待先行で株主還元策の強化だけでも株高の地合いに寄与するとみられるが、中長期的には期待が剥がれ落ちていく恐れもあることを頭の片隅に置いておきたい。 米債務上限問題は最終的には解決するだろうが、早ければ6月1日にも米政府の資金繰りが行き詰まる可能性が指摘されており、デッドラインは近づいている。過去の経験からすれば大きな波乱にはならないだろうが、ボラティリティの高まりには注意したい。日経平均などの株価指数の強さとその継続性が際立つ中ではあるが、目先は上値追いに慎重になるべきだろう。なお、今晩の米国市場では小売りのターゲットやIT関連製品のシスコシステムズが決算を発表する。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/17 12:18
後場の投資戦略
特段の好材料ないが3万円に迫る違和感
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29828.71;+202.37TOPIX;2122.85;+8.00[後場の投資戦略] 前日に発表された5月ニューヨーク連銀製造業景況指数はマイナス31.8と4月(プラス10.8)から急低下し、市場予想(マイナス3.8)も大幅に下振れた。景況指数の見通しは3カ月ぶり高水準となり、受注と出荷の見通しも加速したようだが、新規受注の指数は20年4月以来の急低下となっており、景気後退懸念がくすぶる結果となった。 また、ブルームバーグ通信が興味深い報道をしている。米国では、わずか48時間未満で少なくとも7社が連邦破産法11条の適用を申請したという。超低金利時代に積み上げた負債の借り換えに苦戦していることが背景とされている。商業用不動産の借り換え問題が以前から指摘されていたが、信用収縮の影響は不動産だけでなく幅広い業種・企業にすでに及んでいる様子。こうした報道も合わせて考えると、上述の経済指標の大幅下振れはやはり懸念材料だ。 さらに、気掛かりな点もある。すでに米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利は5.00-5.25%と、2006年以来の高水準にまで異例のスピードで引き上げられてきた。しかし、そうした中でも、前日は米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が堅調な労働市場とFRBのインフレ目標を2倍超上回る現状を踏まえた上で追加利上げの可能性を示唆した。また、米アトランタ連銀のボスティック総裁も、基本路線としては政策金利の据え置きを主張しながらも、「根強い物価圧力を考えると、次の政策会合での行動は利下げよりも利上げの方が可能性は高くなる」と発言。 こうした一部高官のタカ派発言は、前回5月会合での利上げ打ち止め、および年内2-3回の0.25ポイントの利下げを織り込んでいる市場とのギャップをより鮮明にさせる。こうしたギャップはいずれどこかで修正されるだろうが、前日の連銀総裁の発言だけを踏まえれば、FRBが市場に歩み寄るよりも市場の期待が削がれる形でのギャップ解消の可能性が高まったといえそうだ。 ほか、米国時間で本日16日、バイデン大統領とマッカーシー議長らとの間で債務上限問題の協議が行われると報道され、これが協議の進展期待の高まりにつながっているが、マッカーシー議長は「ほとんど進展はない」と発言している。また、同氏はホワイトハウスや民主党について「彼らは解決策を見つけるためではなく、会談を行ったと言うために、会談を開催したいかのように見受けられる」などとも言及していて、引き続き予断を許さない状況だ。 他方、本日午前11時頃に発表された中国の注目経済指標については、総じて予想を下回る内容だった。4月鉱工業生産は前年比+5.6%と3月(+3.9%)から加速も、市場予想(+10.9%)を大幅に下振れ、4月小売売上高も同+18.4%と3月(+10.6%)から加速も、市場予想(+21.9%)を下回った。そのほか、固定資産投資や不動産投資の指標については市場予想を下回っただけでなく、3月よりも悪化した。今回の4月指標は、比較対象となる昨年同期が、新型コロナ感染拡大で製造中心地である上海が封鎖されていたこともあり、前年比では高い伸びが見込まれていたが、鉱工業生産の市場予想比での大幅な下振れは気掛かりだ。 中国では先んじて発表された国家版および民間版の製造業購買担当者景気指数(PMI)が景況感の拡大・縮小の境界値である50をともに割り込んだほか、11日に発表された消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)はともに市場予想を大幅に下回っていた。これらの結果を受けて同国の景気回復モメンタムのピークアウト感が指摘されていたなか、今日発表された指標結果はこうした懸念をさらに強めといえる。 国内企業の決算発表が前日で一巡したことで本日からは手掛かり材料の取得に難儀することが想定される。加えて、中国の世界経済けん引役の期待も剥落しつつある中、日経平均はこのまま3万円台の大台回復に成功するのだろうか。日経平均の予想一株当たり利益(EPS)が切り下がっているなか、足元の株高はほぼ株価収益率(PER)主導の上昇だ。値動き自体は非常に強いが、ここからの上値追いには慎重になりたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/16 12:28
後場の投資戦略
プラス圏で堅調に推移、29500円台を回復
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29507.03;+118.73TOPIX;2106.74;+10.35[後場の投資戦略] シカゴ日経225先物清算値は大阪比155円高の29575円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均はやや買いが先行。約1年半ぶりに29500円台を回復してセンチメントがやや上向く格好となっている。また、国内主力企業の決算発表が本格化する中、引き続き投資家の目線が東証プライム市場中心に向かっている。 一方、新興市場は強弱入り混じる展開が続いている。マザーズ指数は下落スタート後、マイナス圏で軟調に推移。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、プラス圏でもみ合う展開となっている。米長期金利が3.4%台まで上昇、米国では債務上限問題や景気後退懸念のほか金融不安が再燃しており、国内の投資家心理の悪化は続いている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.30%安、東証グロース市場Core指数は0.58%高で時価総額上位銘柄中心に物色が向かっている。 さて、12日に発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は57.7で4月の63.5から低下、昨年11月以来6カ月ぶりの低水準となった。1年先のインフレ期待は4.5%で4月の4.6%からやや低下した。米4月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)でインフレの鈍化基調を確認し、米金利も大きく低下していることで安心感が生まれつつある。 ただ、景気後退懸念や連邦債務上限問題などネガティブなニュースも散見されている。米国では一部地銀の預金流出の動きが確認され、金融不安が再燃している。また、米連邦政府の債務上限問題が遅々として解消に向かわず、早ければ6月1日にも米政府の資金繰りが行き詰まる可能性が指摘されている。仮に債務上限問題の解決に失敗した場合、債務不履行(デフォルト)による経済への悪影響を懸念する見方もやや強まっている。足元の米国債5年物の保証料率(CDS)は2011年以来の水準に急上昇し、市場にもデフォルトへの警戒が広がっているようだ。 わずかながらの可能性であるが米国がデフォルトする場合は、信用力を失った米国債の価格が下落して金利が上昇する。住宅ローン金利も上昇し、不動産販売が冷え込むという。米国GDP(国内総生産)は4%低下し、700万人が職を失うことになる可能性があるようだ。また、米国債の格付けは最低位の「D」に降格され、国民への社会福祉費の支払いが滞るほか、公務員や軍人への給料支払いが滞るなど政府停止状態に陥る可能性があるとも報じられている。 ただ、バイデン米大統領とマッカーシー下院議長(共和)ら議会指導者は米国のデフォルトを回避するため、16日に再度会談する予定。バイデン大統領は交渉の条件について口を閉ざしたままだが、妥結は可能との認識を表明しており、引き続き楽観しているようだ。会談日程確定せず変更もあり得ると関係者が発言しているようだが、ひとまずは上記のデフォルトが起きた場合を頭の片隅にとどめておくとする。 そのほか、話は一転するが、フロリダ州のジミー・パトロニス最高財務責任者(CFO)が、同州の公的な資金360億ドル(約4兆8000億円)を預かる金融機関に対して、社会・政治的問題には積極的に関与しないよう警告したという。フロリダ州は、融資の是非を判断する際に社会・政治的要素を考慮する金融機関が州の公金を保持することを禁じる新法を可決し、この州法に違反する一部金融機関と関係を断つこともいとわないとの考えを示したようだ。バンク・オブ・アメリカ(BofA)やウェルズ・ファーゴが含まれており、金融不安が再燃する中、こういった情報にも目を向けておきたい。 さて、米国を取り巻く環境は強弱入り混じっており、株価が上下どちらにむかってもいいように今後のシナリオを考えていきたい。過去の月曜日の当欄では、今後のシナリオを想定している記事もあるので、そちらをご覧いただきたい。後場の日経平均は、プラス圏での推移が続くか。東証プライム市場を中心に決算発表を終えた銘柄への物色が継続するか注目する。(山本泰三)
<AK>
2023/05/15 12:24
後場の投資戦略
インフレ鈍化・金利低下を好感しきれない相場
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29359.43;+232.71TOPIX;2094.72;+11.63[後場の投資戦略] 前日に発表された米4月卸売物価指数(PPI)は前年比+2.3%と2月(+2.7%)から鈍化し、2021年初旬以来の低い伸びとなり、市場予想(+2.5%)も下回った。前月比では+0.2%と上昇したが、こちらも市場予想(+0.3%)を下振れた。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+3.2%と2月(+3.4%)から鈍化し、市場予想(+3.3%)を下回った。前月比では+0.2%と市場予想に一致。 米4月消費者物価指数(CPI)に続き、先行性の高い米PPIでもインフレの鈍化基調が確認されたことは安心感につながった。一方、前日に発表された米週次新規失業保険申請件数は前週比2万2000件増の26万4000件と市場予想(24万5000件)を上回った。堅調だった米労働市場にも徐々に軟化の兆しが出ているとみられ、米PPIの結果と合わせて米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続への警戒感は一段と薄れたといえよう。金利先高観の後退で米金利の低下が続くなか、日米ともに株式は強含み、日経平均は年初来高値を更新している。 しかし、前日は米地銀のパックウェストの預金減少を受けて金融不安が再燃し、ダウ平均はまたもインフレ鈍化を好感しきれずに下落した。また、米国ではマネー・マーケット・ファンド(MMF)の資産残高が2週連続で過去最高を更新するなど、銀行預金から資金を移す動きが続いており、地銀の経営不安はくすぶっている。それなりの規模をもつ銀行がすでに3行破綻しているが、さすがに4行目も意識されはじめると警戒感が高まろう。 本日の東京市場では日経平均や東証株価指数(TOPIX)は為替の円安も寄与して上昇しているが、新興株は売り優勢でマザーズ指数は下落している。インフレ鈍化と金利低下が最も追い風になりそうなところが軟調に推移しているあたり不可解な動きといえ、個人投資家がそれだけ先行きを警戒している証左といえよう。 加えて、米国では債務上限問題もくすぶっている。同問題を巡っては12日に予定されていたバイデン大統領とマッカーシー下院議長の会談が来週に延期されると伝わった。米与野党の協議に目立った進展はみられず、早ければ6月1日にも米政府の資金繰りが行き詰まる可能性も指摘されている。過去にも同様の問題は何度もあったことから、「結局、最終的には解決するから大丈夫だろう」というのが大方の考えだろう。ただ、誰もがそう思い込んでいるからこそ、偶発的な事由の重なりによるリスクを考えておくべきだろう。過去の経験則からしても、仮に最終的に解決するにしても、問題の最終局面では事態の混乱を警戒してマーケットは下落する傾向にあることに留意しておきたい。 また、改めて本日の5月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出を境に需給が転換するリスクについても思い出しておきたい。なお、本日は東レ<3402>、AGC<5201>、住友電工<5802>、NTT<9432>、オリンパス<7733>、資生堂<4911>、クボタ<6326>、アサヒグループ<2502>、ヤクルト本社<2267>などの決算が予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/12 12:24
後場の投資戦略
米コアCPI鈍化も株高の燃料としては不足
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29062.04;-60.14TOPIX;2079.60;-6.31[後場の投資戦略] 前日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.4%と市場予想に一致した一方、前年比では+4.9%と市場予想(+5.0%)を小幅ながら下回った。また、食品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.4%、前年比+5.5%と共に市場予想に一致した。上振れが警戒されていただけに、今回の結果は目先の安心感につながったもよう。住宅価格に対して1年超もの遅行性があり上昇が続いていた住居費は前月比+0.4%と、2月(+0.8%)と3月(+0.6%)からの鈍化傾向が続き、粘着性の高かったサービス価格の上昇率鈍化も明確に見られるようになった。 しかし、米4月CPIはモメンタムを示す前月比では総じてプラスが続いている。総合は+0.4%と3月(+0.1%)から大きく加速し、コア指数は前月比+0.4%と3月と同じ伸びが続き、鈍化していない。前年同月比では総合およびコア指数ともにわずかに鈍化したものの、ペースはあまりに緩慢と言わざるを得ない。米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標である+2.0%を大幅に上回る状況は当面続く状況であり、市場が期待するような年内の利下げは、金融危機や景気後退が深刻化しない限り、引き続き見込みにくいだろう。 東京株式市場の反応も冴えない。米CPI鈍化を受けた金利低下により、ハイテク・グロース(成長)株は上昇しているが、日経平均や東証株価指数(TOPIX)は為替の円高が重しとなる形で軟調に推移している。マザーズ指数や東証グロース市場指数などは上昇しているが、上昇率は小幅にとどまっている。前日の米株式市場でも、ハイテク中心のナスダックは上昇したが、ダウ平均は下落するなどまちまちでCPIの結果は株高の火付け役としては機能していない。 対ドルで円が1円ほど上昇している中でも、日経平均が29000円を維持している点は底堅さを感じるが、今週で決算発表が一巡することを考えれば、現状の株価水準からの一段高にはやはり材料不足の感が否めないだろう。米国でも興味深い分析があり、金融大手ゴールドマン・サックスによると、アップルやマイクロソフトなどのITセクター上位5銘柄だけで年初から5月初旬までのS&P500種株価指数の上昇分の約9割を説明できるという。 決算一巡で手掛かり材料が乏しくなっていく中、今後は株式市場の一段高よりは調整局面を警戒した方がよさそうだ。前日後場に決算を発表したトヨタ自動車<7203>の動きも気掛かりだ。今期計画は概ね市場予想に一致しサプライズに乏しかったものの、為替前提が保守的な点を踏まえると悪くない見通しだったと捉えられる。また、自社株買いの発表や前期第4四半期の市場予想比での上振れ着地、そして半導体などの部材調達環境の改善に自信を示した会社側の姿勢なども合わせて考慮すると、好感されてもおかしくない内容だった。 しかし、前日の同社株価は決算の発表直後に一時2%超にまで上昇率を拡大したが、結局その後は伸び悩んで上げた分はほぼ吐き出した。さらに本日は為替の円高もあるが、1%を優に超える下落率となっている。自動車株の中でも出遅れ感が強かっただけに見直し余地は相対的に大きかったはずであるが、今回の同社株の決算反応は投資家の景気に対する先行き警戒感の根強さを裏付けているといえそうだ。 なお、本日はソフトバンクグループ<9984>、東京エレクトロン<8035>などの決算が予定されているほか、米国では4月卸売物価指数(PPI)が発表される。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/11 12:38
後場の投資戦略
強い日本株を支える要因について考察
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29113.33;-129.49TOPIX;2086.85;-10.70[後場の投資戦略] 本日の東京市場は今晩の米4月消費者物価指数(CPI)の発表を前にやや弱含んでいるが、前日からの動きを踏まえると非常に底堅いといえる。8日の米株式市場は主要株価指数がまちまちで動意に乏しかったにもかかわらず、前日9日の東京市場は大幅高となり、東証株価指数(TOPIX)は年初来高値を更新、日経平均も29000円を優に回復した。9日の米株式市場はフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-1.87%と大きく下落し、ナスダック指数も0.6%超と下落したが、夜間取引の日経225先物は大幅高となった前日日中取引の終値比でほぼ横ばいで一時は上昇に転じる場面もあるなど、奇妙なまでの強さが見られた。 背景としては、種々の要因にもとづく日本株の相対的優位性が挙げられそうだ。すでに多方面でも指摘されているが、東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業への改善要請や著名投資家ウォーレン・バフェット氏による日本株への追加投資の意向表明を契機に日本株に着目する投資家が増えてきたと考えられている。そして、実際、今まさに佳境を迎えている1-3月期決算において、多くの日本企業から増配や自社株買いの決定、新たな資本政策に関する基本方針の発表など、株主還元を強化する動きが相次いでいる。 バフェット氏の保有で注目されている商社株については、前日の場中に決算を発表した伊藤忠<8001>と住友商事<8053>は、株主還元が好感される形で高値圏にある株価がさらに急伸した。また、前日引け後に決算を発表した三菱商事<8058>は増配だけでなく、3000億円を上限とする大規模な自社株買いも発表し、こちらも高いハードルを超えて本日も株価は大幅高となっている。 また、前日はJFEホールディングス<5411>、川崎汽船<9107>といった鉄鋼、海運セクターの代表格が急伸したことで、バリュー(割安)株への買いも再び人気化した。世界と比較して周回遅れで始まった国内の経済再開の動きでリオープン(経済再開)・インバウンド関連銘柄が買われてきた中、景気後退懸念による金利の先高観後退で内需系グロース(成長)株も強含み、そして、これらに再び脚光を浴びたバリュー株の上昇も加わることで、前日は日本株の株高地合いを裏付ける条件がそろったといえる。 しかし、ここから先は短期的にもやや注意を要する局面に入ってくると考える。前日に東証が発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は4月に日本株を現物で2兆1000億円強買い越した。月間で5年半ぶりの大きさであり、3月の2兆2500億円程の売り越しをほぼ解消した。米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻以降にさらに高まっていた景気後退懸念の中でも先物でなく現物でこれだけの買い越し幅が見られたのは、恐らく上述したような日本株を巡る独自要因が寄与しているところが大きいのだろう。ただ、裏を返せば3月の売り越し幅を解消したことで買い戻し余地はなくなったともいえる。 また、今回の決算シーズンで国内企業から株主還元の強化などが相次いだことが足元の日本株の相対的な強さにつながっていると思われるが、今週でその決算発表も一巡する。このため、来週以降はこれまでの株高地合いに寄与してきた要因が一旦とはいえ、一つ剥落することになる。 さらに、今週末は5月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出日に当たる。足元ではSQに向けて売り方の買い戻しに拍車がかかっていると思われる。また、日経平均の29500円や30000円を権利行使価格とするコール(買う権利)オプションの建玉がそれなりに積み上がっている。このため、コールオプションの売り手によるデルタヘッジに伴う先物買いが先物価格を上昇させ、これが裁定業者の裁定買い(割高な先物を売り、割安な現物を買う)を誘発すれば、一段高が演出される。足元の日本株の想定超の強さはこうした需給要因が効いている可能性があろう。そうだとすれば、今週末のSQを通過すれば、また一つ日本株の株高地合いに寄与してきた要因が一つ剥落することになる。 今晩の米4月CPI、明晩の米4月卸売物価指数(PPI)が予想を下回って米株式市場が上昇すれば、週末に向けて日本株の一段高はあり得るだろう。また、本日は注目のトヨタ自動車<7203>の決算が予定されているが、日本株を代表する同社株が株価の下落トレンド転換につながるような決算を発表すれば、こうした流れにも弾みがつこう。ただ、これらの材料を見極める必要があるとはいえ、上述したように、今週末をもって日本株の相対的な強さはいったん小休止となる可能性があるため、この点には留意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/10 12:22
後場の投資戦略
足元の底堅さ継続も先安観を拭えない
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29173.56;+223.68TOPIX;2091.27;+20.06[後場の投資戦略] 注目されていた米連邦準備理事会(FRB)による上級銀行貸出担当者調査(SLOOS)の結果が前日に発表された。米銀各行が融資基準を一段と引き締めたほか、企業および消費者からの融資需要が軟化していることが判明した。一方、米シリコンバレー銀行の破綻を背景に急激な信用収縮が警戒されていただけに、シリコンバレーショックがあった中では想定よりも悪くなかったとの見方が優勢だったようで、株式市場には大きな影響は今のところ見られていない。 しかし、同調査によると、1-3月に大規模・中規模企業の商業向け貸し出し需要が弱まったと報告した銀行の割合は55.6%へと大幅に上昇(昨年10-12月は31.3%)し、リーマンショックによる世界金融危機のさなかの2009年以来の高水準となった。また、全ての規模の企業からの融資需要が3カ月前に比べて低下していることが示され、クレジットカードや自動車ローンなどの家計向け融資に対する需要は再び軟化しているという。 FRBのハイペースでの利上げによる信用収縮への影響が時間差を伴って発現したのと同様、シリコンバレーショックを受けた信用収縮加速の影響も、もうしばらく時間差を伴って表れる可能性が十分に考えられる。今回のSLOOSの結果は、株式市場にネガティブな影響が織り込まれるタイミングが後ずれしたことを示唆しているに過ぎないかもしれない。 株式市場は過去の経験則から、景気後退(リセッション)期に入る前に底入れすることは稀だと言われている。今はまだ堅調なサービス消費が製造業の業績悪化を下支えする形で、経済全体が明確にリセッション入りしたとは判定されていないが、リセッション入り前にもかかわらず、足元の株式市場は非常に底堅い。 しかし、米銀の貸し出し態度のさらなる厳格化を要因とした信用収縮加速の影響が今後徐々に表れていくことが予想される。一方、米国では堅調な労働市場を背景にインフレの高止まりが想定されており、デリバティブ市場が織り込むような年央からのFRBの利下げ転換の可能性は低いと考えられる。景気後退が深まる中でも高水準の金利が長期にわたって据え置かれることを想定すれば、業績の一段の悪化と株価の下落は避けられないと考える。FRBが本当に利下げを強いられる場合があるとしたら、それは相当に深刻な金融危機が起きた場合などに限られると思われ、その場合もやはり株式市場には強い逆風となるだろう。このため、短期的には堅調も、中長期的には株式市場は軟化していくと予想される。 上述したようなシナリオに基づき、個人的には今回の米経済のリセッションは急激ではなくても、期間としてはかなり長いものになるのではないかと予想している。一般に、株式市場は半年先を見て動くと言われるが、筆者の見解では、半年先はまだリセッション期の真っ只中と思われ、今は株式市場が底入れするタイミングではないと考えている。 他方、2009年のリーマンショックのような急激な金融危機でない限り、株式の全面安は想定しづらい。景気に左右されにくいビジネスを展開している銘柄や、財務基盤が堅固で株主還元の強化余地がある銘柄などについては相対的な投資妙味が高まる局面と想定される。今週、東京市場では決算発表が佳境に入っているが、今決算シーズンではそうした銘柄選別を極めるタイミングといえよう。 米国では10日に消費者物価指数(CPI)、11日に卸売物価指数(PPI)、12日にミシガン大学消費者調査など重要インフレ指標が明日以降、相次いで発表される。これらの結果次第では相場のムードも変わり得るため、注視したい。なお、本日は任天堂<7974>、三菱商事<8058>、ダイキン<6367>、ニトリHD<9843>、ローム<6963>、郵船<9101>などの決算が予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/09 12:21
後場の投資戦略
朝方から売り優勢の展開に
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28969.68;-188.27TOPIX;2070.67;-4.86[後場の投資戦略] 本日の日経平均は売りが先行、その後はやや下げ幅を広げている。相場に対する過度な警戒感は後退している反面、今週は決算発表がピークを迎えることもあって手掛けにくさが意識されているようだ。 一方、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅をじりじりと広げる展開となった。国内決算発表の本格化に備えて、本日は値動きの軽い新興株に幕間つなぎの物色が向かっている可能性がある。前引け時点での東証マザーズ指数は1.27%高、東証グロース市場Core指数は1.54%高で時価総額上位銘柄が上昇をけん引した。 さて、国内連休中の米国市場は荒い値動きとなった。2-3日で開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、連邦準備制度理事会(FRB)が市場の予想通り0.25ポイントの利上げを決定した。声明では前会合まで記載していた追加利上げの可能性を示唆する文言を削除したため利上げ停止の観測が強まった。ただ、パウエル議長が会見で、FRBの見通しに基づくと利下げは想定されないとすると利下げ期待が後退。また、インフレが高止まりすれば利下げはしないと言明しており、10日に発表される4月米消費者物価指数などのインフレ指標に注目が集まる形となった。 4日には、地銀ウェスタン・アライアンス・バンコープが身売りを含む複数の選択肢を検討しているとの報道を材料に地銀、金融株の下げが全体の下落をけん引した。連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げを受けて地銀の経営安定性に対してさらに警戒感が強まっている。同行がこの報道を「完全な誤り」だと否定したため警戒感は緩和したが、ヘッジファンド運営会社パーシング・スクエアの創業者でアクティビストのビル・アックマン氏は、「銀行システムのストレスはまだ当分終わらない」と警告している。米地銀や金融機関の動向には引き続き注視する必要があろう。 他方、5日に発表された4月米雇用統計では、雇用者数と賃金の伸びがいずれも加速した。非農業部門雇用者数は前月比25万3000人増(市場予想:18万人)で、平均時給は前年同月比4.4%増(市場予想:同4.2%増)となった。失業率は3.4%(市場予想:3.6%)で半世紀ぶりの低水準だった1月と並ぶ水準となった。今回の雇用統計の結果は、労働需要の底堅さを浮き彫りにしており、KPMGのチーフエコノミストであるダイアン・スウォンク氏は「今回の統計は利上げ休止に関して我々が望むほどの安心感をもたらすものではない」と話したようだ。 やはり、今後のインフレ指標の結果には注目が集まるだろう。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年同月比で5.5%上昇と予想されており、3月は5.6%上昇だった。物価上昇圧力のペース鈍化が小幅にとどまっており、インフレが根強いことを示唆する。11日には4月の米生産者物価指数(PPI)も公表される予定で、前月比では物価圧力の強まりが予想されている。これらの指標の結果次第では相場が大きく動く可能性があるため、今週は様子見姿勢を強める判断も妥当といえそうだ。 過去の月曜日当欄では、長期的には欧州不動産市場の動向や金融不安などの再燃などの多くのネガティブ材料浮上によって株価が下落するシナリオを想定してきた。今後の米国の物価上昇率の動向、FRB高官の発言には引き続き最大限注目しておきたい。後場の日経平均は、軟調な展開が続くか。決算発表を終えた銘柄や新興株への物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/05/08 12:19
後場の投資戦略
連休中のイベントを整理、グロース株の軟調が気掛かり
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29104.83;-18.35TOPIX;2070.42;-7.64[後場の投資戦略] 本日の東京市場はさすがに上昇一服の動き。大型連休前の最後の取引日であるうえ、連休中に米連邦公開市場委員会(FOMC)や米雇用統計など重要イベントが相次ぐだけに、利益確定売りが上値を抑制しているもよう。 連休中のイベントについてだが、まずは日本時間4日午前3時頃に結果が判明するFOMCが注目されるが、その前に今晩の米3月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も重要だ。先週に米国で発表された1-3月期の個人消費支出(PCE)コアデフレーターや雇用コスト指数は相次いで予想を上回り、インフレの高止まりを示唆した。また、前日に米供給管理協会(ISM)が発表した4月の製造業景気指数では項目別で、支払価格が53.2と前月(49.2)から大きく増加し、拡大・縮小の境界値である50を超えた。 今晩の米3月JOLTS求人件数も強い結果となれば、FOMCを前に今会合での利上げ停止期待が後退する可能性がある。一方、前回の2月JOLTS求人件数の際には市場予想を大幅に下回ったにもかかわらず、賃金インフレの鈍化を好感する動きではなく景気後退を懸念する動きが優勢だった。今回は米銀行の経営不安を巡る一連の問題への警戒感が和らいできているタイミングであるため、予想を下回れば素直に賃金インフレ鈍化のサインとして好感することが予想されるが、市場心理を計るうえで指標結果に対する反応に注目したい。 米FOMCでは、0.25ポイントの利上げが既にコンセンサスとなっており、利上げ幅はもはや問題でない。問題は利上げ停止をどのように示唆するかだ。市場は今会合での利上げ停止を織り込んでおり、最新のドットチャート(政策金利見通し)の中央値からもそれは示唆されている。ただ、上述したようにインフレ指標はモメンタムとしては鈍化しているものの、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標水準を大幅に上回る水準で高止まりしているため、利上げ停止を完全に明言することは難しそうだ。他方、今後は銀行の貸し出し態度の厳格化を通じた金融環境の引き締まりが想定され、追加利上げを積極的に示唆することも憚られるだろう。このため、パウエル議長が会見においてどのようにバランスを取った見解を示すのかに注目したい。 4日には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会も開催される。米国よりもさらにインフレ指標が高止まりしている欧州では0.50ポイントの大幅利上げ継続を支持する声も少なく、今会合以降の利上げ継続の公算も大きい。ラガルド総裁が積極的な金融引き締め姿勢の継続を改めて強調すればグローバルな金利高止まり感が株式市場の上値抑制要因として働く可能性があるだろう。 さらに、4日には米アップルの決算も発表される。前回の四半期決算の際には経済再開が進む中国での販売が回復しつつあると前向きなコメントが発信され、投資家もポジティブに捉えていた。ただ、欧米では景況感の悪化を背景に消費者による財・モノへの支出態度は厳しくなっている。また、スマートフォンの買い替えサイクルが長期化している背景もあり、予断を許さないだろう。これまでのところ、米国企業の決算は総じて予想を上回る内容で安心感を創出してきたが、アップルの決算がこうした流れを強化するのか、歯止めをかけてしまうのかに注目だ。 最後に、個人的には東京市場での物色動向を気掛かりに思っている。ここのところ、グロース(成長)株の上値の重さが目立つ。景気後退懸念がくすぶる中、景気循環との連動性の高い電気機器セクターなどの上値が重いことは分かるが、景気動向との連動性の低い情報・通信といった内需系セクターのグロース株については、FRBの利上げ停止期待や日本銀行の緩和政策の維持を背景に相対的な強さが見られてもいいと思うが、実際は軟調な銘柄が多い。 これについては、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株追加投資に関する報道をはじめ、東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への改善要請、それに対して自社株買いや新中期経営計画の発表などで応える企業の動きなどから、投資家の物色対象がバリュー(割安)株に向きやすくなっていることが要因として一つ挙げられそうだ。ただ、そうだとしても、随分と前から金利先高観が後退してきているにもかかわらず、内需系グロース株が強くないあたり、日経平均の年初来高値更新ほどには投資家心理は明るくなく、実体も強いわけではないのかもしれない。(仲村幸浩)
<AK>
2023/05/02 12:16
後場の投資戦略
節目の29000円突破も上値の重い展開
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29056.25;+199.81TOPIX;2070.43;+12.95[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、米国株高の流れを受けてギャップアップスタート、節目の29000円を突破した。ただ、1日と2日は大型連休の谷間となるため、買い一巡後は次第にこう着感が強まるとの見方が強い。連休中の米連邦公開市場委員会(FOMC)や米雇用統計を前に積極的に買い進む動きは限定的となっているか。なお、取引時間中に29000円を上回るのは22年8月19日以来となる。 一方、新興市場は軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートしたが、朝方に上げ幅を急速に縮小してマイナス圏に転落。投資家の目線は東証プライム市場に向いており、新興市場はやや蚊帳の外状態となっている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.31%安、東証グロース市場Core指数は2.57%安で時価総額上位銘柄が下落をけん引した。 さて、今週はゴールデンウイークの大型連休に伴い、東京市場は本日と明日の2日間のみの立会いとなる。連休中には5月2日から3日にFOMC、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見、3日は米供給管理協会(ISM)の4月非製造業(サービス業)景気指数などの経済指標、5日は米雇用統計の発表を控えている。 5月FOMCでは0.25ポイントの利上げが濃厚で、CMEFEDウォッチツールも約85%で織り込み済みとなっている。ただ、個人消費支出(PCE)コアデフレーターや雇用コスト指数など米国のインフレ関連指標は依然として高い伸びとなるなか、パウエル議長の発言に注目が集まる。次回6月会合での0.25ポイントの利上げ確率は20%程で、パウエル議長の発言次第ではネガティブな動きにもつながる可能性がある。10日には、米消費者物価指数(CPI)の発表も控えているため、いずれにせよ経済指標の数字には最大限の注目をしておきたい。 他方、経営不安が高まっている米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)は、米連邦預金保険公社(FDIC)が公的管理下におく大詰めの調整を進めているという。公的管理後の買収にはJPモルガン・チェースなど複数の金融機関が名乗りをあげているといい、市場の混乱を最小限にとどめたい考えのようだ。現状、市場ではシリコンバレー銀行(SVB)やFRCの経営不安に関しては各社「固有の問題」との見方が根強いとされている。 米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長は、SVBの破綻を受けた検証でFRBが米国の金融機関を監督する方法を徹底的に見直すよう呼び掛けた。同氏は、破綻の原因が同行のリスク管理の甘さと金融当局による監督不備にあったとみている。ただ、今後ほかの地銀破綻が続くと、金融不安が再燃し、投資家心理には相当なダメージを与えることになろう。 過去の月曜日当欄では、長期的には欧州不動産市場の動向や金融不安などの再燃などの多くのネガティブ材料浮上によって株価が下落するシナリオを想定してきた。また、金融不安が注目され始めたとき、暗号資産ビットコインをポートフォリオに組み込むことも勧めてきた。引き続きこのスタンスに変わりはなく、直近のビットコイン価格は乱高下するものの米主要株価指数との相関性がなくなってきている。 今後の米国の物価上昇率の動向、失業率やFRB高官の発言次第では株価が上昇していくシナリオも考えられる。相場がどちらに動いてもいいように引き続き国内外の経済情報はしっかりと追っていきたく、ゴールデンウイーク中も経済ニュースは欠かさずチェックしたいところ。後場の日経平均は、上値の重い展開が続くか。決算を発表した個別材料株中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/05/01 12:20
後場の投資戦略
スタグフレーションの様相強まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28656.19;+198.51TOPIX;2046.61;+14.10[後場の投資戦略] 前日の米株式市場は久々に主要株価3指数がそろって大幅に上昇。終始上げ幅を広げる久々に強い動きが見られた。通称「GAFAM」としてIT大手の一角を占めるメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)が予想を上回る決算を発表し、急伸したことでハイテクを中心に相場のけん引役となった。一方、前日に時間外取引の動きですでにメタの株高を織り込んでいた東京市場は、本日は日本銀行の金融政策決定会合の結果を控えていることもあり、堅調ながらも大勢はもみ合いで推移。 米国市場の取引終了後に発表されたアマゾン・ドットコムの決算は予想を上回ったものの、けん引役となったクラウド事業の売上成長が4月に入ってからは減速していることが明らかになり、時間外取引で一時急伸した株価は失速して結局マイナスで終えている。マイクロソフト、アルファベット、メタの流れで続いてきたIT企業への期待感がやや剥落したことも相場の重しとして働いていそうだ。 前日に発表された米1-3月期の個人消費支出(PCE)コアデフレーターは市場予想を大幅に上回り、1年ぶりの高い伸びとなった。これを受け、米金利が幅広い年限で大きく上昇したことも上値抑制要因として働いていると思われる。当該指標の結果により、今晩に発表される米3月PCEコアデフレーターが上振れる可能性が高まっており、来週、国内大型連休中に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にやや警戒感が高まっている。 前日の米株式市場の上昇については、メタの株価上昇に加え、連日で急落していた地銀のファースト・リパブリック・バンクが急反発に転じたことや、これまでの米国での納税金額が予想を上回る水準となっていることで、連邦政府の債務上限問題のデッドラインが後ろ倒しになったことを指摘する声も聞かれている。 しかし、ファースト・リパブリック・バンクについては空売りに利用できる株があと4%しか残っていないとの指摘があり、単純に売り方の利益確定に伴う買い戻しが強まったに過ぎないかもしれない。また、米連邦政府の債務上限問題も依然として混迷としており、リスクは残っている。結局、昨日の米国株の上昇については企業の決算を除けば明確な好材料があったわけではないといえる。 また、その米企業決算についてはまちまちで、IT関連で堅調さが確認されている一方、鉱業・建設機械大手のキャタピラーについては受注残がほとんど増えていないことが明らかになり、前日の同社株価は軟調に推移した。昨日発表された米国の1-3月の実質国内総生産(GDP)速報値も、個人消費は堅調だったものの、設備投資は大きく落ち込み、昨年10-12月期(+2.6%)から大きく鈍化し、前期比年率+1.1%と市場予想(+1.9%)を下回った。 景気後退の足音が着実に近づいてくる中、インフレ指標の高止まりによりスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の様相が濃くなっており、米連邦公開市場委員会(FRB)の利上げ打ち止め時期が遠のくことなどがあると、マーケットは嫌気することになりそうだ。 国内では大型連休の関係で来週は立会いが週初の2日間のみに限られる。連休中に重要指標やイベントを多く控えるため、今後も上値の重い展開が続くとみておきたい。なお、本日はソニーG<6758>、村田製<6981>、コマツ<6301>、レーザーテック<6920>などの決算が予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/04/28 12:16
後場の投資戦略
ITと半導体で決算に明暗
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28349.95;-66.52TOPIX;2024.91;+1.01[後場の投資戦略] 前日の米株式市場で主要株価指数はまちまちで冴えない印象。米地銀のファースト・リパブリックの株価が2日連続で急落したことが引き続き投資家心理の重しとして働いているようだ。同行は米連邦準備制度理事会(FRB)の緊急貸出制度へのアクセスを制限される可能性があると指摘されている。また、経営難に陥っている同行の救済計画の一環として、アドバイザーらが既に一度救済した米大手行に対し、同行から市場価格を上回る水準で社債を購入するよう説得を試みる見通しなどと報じられている。ただ、実現する確率は高くなく、先行き不透明と言わざるを得ない。今のところ同行のように雲行きの怪しい動きが他行では見られていないことが安心感を誘うが、市場のやや神経質な動きは同行固有の問題として割り切っていない様子。 決算を受けたマイクロソフトの大幅高でナスダック指数は一時大きく上昇したが、その後に失速し上昇率は小幅にとどまった。一方、東京市場も本日は調整モードが継続中。米株の冴えない動きもあるが、これまで株価の堅調だったアドバンテスト<6857>が市場予想を大幅に下回るガイダンスを示し、急落していることが重しになっている。製品別見通しでは先んじて調整色が強まっていたメモリ向けだけでなく、SoC(システム ・オン・チップ)向けでも堅調が見込まれていた先端プロセス向けも含めて需要減を想定しており、ネガティブな印象だ。 一昨日に決算を発表した米半導体大手テキサス・インスツルメンツの第2四半期(4-6月期)見通しも市場予想を下回り、自動車を除く最終市場の大半で需要が鈍化し、在庫調整が長期化するリスクについて会社側から言及があった。すでに決算を発表済みの蘭ASMLホールディングや台湾積体電路製造(TSMC)の決算も市場の期待に未達の内容だったといえる。パワー半導体向けなどで強みを見せるディスコ<6146>を除き、これまでの半導体企業の決算は概ね全敗だったと言ってよいだろう。今年1-3月の間に底入れ期待から株価指数をアウトパフォームしてきた半導体株の決算が総じて低調に終わっていることは印象が悪い。 一方、ファナック<6954>も同様に今期見通しは市場予想を大きく下回る内容となったものの、株価は買い優勢で反応している。受注に底入れの兆しがあるとの指摘が一部で聞かれ、こうした見方が優勢になったと考えられるが、四半期ベースの全体受注の動向を見る限り、底入れの確度が高まったとは言いにくく、この点は市場関係者の間でも見解は分かれている様子。今期の営業利益率見通しが前期第4四半期から一段と下がることもネガティブな印象だ。 他方、米国市場の取引終了後に発表されたメタ・プラットフォームズの決算では、第1四半期の売上高と一株当たり利益、また第2四半期の売上高見通しが全て市場予想を上回り、時間外取引で株価は急伸した。マイクロソフト、アルファベットに続き、これでGAFAM決算は今のところ3戦3勝だ。景気後退懸念の強まりに伴い、金利先高観が後退していることもあり、今回の決算シーズンを挟んでIT関連銘柄への選好度合いがさらに強まる可能性がありそうだ。 ただ、27日に決算を予定しているアマゾン・ドット・コムは、クラウド部門の人員削減を開始したと伝わっている。同社はクラウド部門で大半の利益を稼いでいるが、景況感悪化に伴う顧客の費用削減の動きが強まっているようだ。今晩のアマゾンの決算にはやや注意したい。なお、国内では本日、キーエンス<6861>、信越化<4063>、デンソー<6902>などの決算が予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/04/27 12:22
後場の投資戦略
米IT大手決算は堅調も景気後退懸念さらに強まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28469.08;-150.99TOPIX;2027.86;-14.29[後場の投資戦略] 久々の米株市場の大幅下落を受けて、東京市場でも全般売り優勢の展開となっている。米地銀のファースト・リパブリック・バンクが1000億ドルの資産売却を検討していると報じられ、同社株は一時50%急落、金融システム不安が再燃したことが主な背景だ。ただ、前日に発表された米経済指標が軒並み低調だったことも景気後退懸念を強め、投資家心理の悪化につながっているようだ。 米4月リッチモンド連銀製造業指数はマイナス10と3月(マイナス5)から大きく悪化し、市場予想(マイナス8)を下回った。フィラデルフィア連銀製造業景況指数やダラス連銀製造業活動指数に続く悪化となり、製造業の景況感悪化が増してきていることが窺える。 4月コンファレンスボード消費者信頼感指数は101.3と3月(104.0)から悪化し、市場予想(104.0)を下回った。現況指数は前月から横ばいも、先行きを示す期待指数は68.1と3月(73.0)から悪化した。また、4月フィラデルフィア連銀非製造業(サービス業)景況指数はマイナス22.8と3月(マイナス12.8)から大幅に悪化した。製造業の落ち込みを堅調なサービス業が相殺することで米経済の底堅さが続いてきたが、サービス業にも悪化の兆候が出てきているようだ。 一方、本日の東京市場での主要株価指数の下落率は前日の米国市場に比べて軽微にとどまっており、日経平均は心理的な節目である28500円を維持しようとする踏ん張りも見られている。米市場の取引終了後に発表されたIT大手のマイクロソフトとアルファベットの決算が総じて予想を上回り、時間外取引でそれぞれ上昇していることが安心感を誘ったとみられる。両社ともに事業全般に底堅さが確認されたことは素直にポジティブに捉えられよう。 また、ファースト・リパブリック・バンクの件で金融不安が再燃しているが、取引終了後に発表された米地銀のパックウエストの決算は予想を上回り、懸念された預金額については3月末からは増加したと発表し、こちらも時間外取引で株価は急伸。これが再燃した金融不安が連鎖的に波及することを抑止することに寄与しているようだ。 しかし、株価指数から目を離して個別の物色動向をみると先行き警戒感も解きにくい。マイクロソフトとアルファベットの決算が堅調だったほか、景気後退懸念に伴う金利先高観の後退で米長期金利が大幅に低下しているにもかかわらず、本日の東京市場ではグロース株の下落が特に大きく、景気敏感株の下落以上に目立っている。指数をみても、日経平均や東証株価指数(TOPIX)が底堅さを見せている一方、マザーズ指数、東証グロース市場指数は大きく下落している。 グロース市場といえば、宇宙ベンチャーとして新規上場して間もないispace<9348>の月面着陸が失敗に終わった可能性が高いと伝わっていることは残念と言わざるを得ない。同社株は新規上場後は上値追いの展開となっていたが、民間企業で世界初の月面着陸として高まっていた期待が失望に変わっただけに、本日はストップ安売り気配で値付かずとなっている。東証スタンダード市場の話にはなるが、直近ではAbalance<3856>、アースインフィニティ<7692>といった個人投資家の間で人気化していた銘柄が大きく売られる動きが目立っている。今回のispaceの件もあり、個人投資家の含み損益の悪化などには注意しておきたい。 関連企業が多く今後の主要企業決算の参考指標として注目されたニデック<6594>の決算も前日説明したように芳しいものとは言えなかった。株価の反応も良くなく、前日は一時4%超上昇も伸び悩んで結局0.9%高で終わった。本日は地合いの悪化もあるが大幅に下落し、2022年初来の長期下落トレンドを脱することはできていない。米主要株価3指数が4月に入ってからのもみ合いを下放れてきていることもあり、目先は慎重になった方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/04/26 12:28
後場の投資戦略
株価堅調も違和感が拭えない
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28706.04;+112.52TOPIX;2048.76;+11.42[後場の投資戦略] 米市場の取引終了後、地銀のファースト・リパブリックが第1四半期決算を発表した。1株利益は予想を上回ったが、預金が第4四半期に比べて40.8%減少したことを明らかにしたほか、第2四半期に全従業員の約2割を削減する計画を発表し、時間外取引で株価は急落している。一方、3月末以降は預金流出ペースが鈍化したとしており、これが安心感につながっているのか、時間外取引の米株価指数先物は堅調に推移。東京市場でも銀行株が上昇しているなど影響はほとんど見られていない。 こうした中でも、本日の東京市場は動意に乏しかった前日の米株市場とは対照的に堅調な値動きを見せ、日経平均は再びザラ場ベースでの年初来高値を更新してきている。ただ、個人的にはどうにも実体と乖離したような違和感が拭えない。東京市場では前日に決算発表したニデック<6594>が大幅に上昇しており、これが今後に控える企業決算への期待感につながっているとの指摘も聞かれる。 ただ、ニデックの決算は強弱材料が混在している。2024年3月期の計画は市場コンセンサスをやや上回る水準としている。構造改革費用計上の一巡に加えて、電気自動車の動力装置であるイーアクスル(E-Axle)の収益改善などを見込んでいる。想定為替レートが1ドル=120円、1ユーロ=130円と、それぞれ現状の為替水準に対してかなり保守的である中でのコンセンサス上振れとあって、これを評価する声も聞かれる。 しかし、第4四半期(1-3月期)の営業損益は243億円の赤字で黒字予想の市場コンセンサスを大きく下回り、第3四半期決算の際に大幅に下方修正した通期計画も下振れた。車載事業の赤字が拡大したほか、精密小型モーターも赤字に転落し、その他の多くの部門でも減益となった。下方修正後の計画未達は業績予想に対する信頼度の低下につながり、今期の計画も素直に受け止めていいかにはやや疑問符が付く。株価も本日は上昇しているが、2022年以降の大幅な株価下落を踏まえれば買い戻しの域を出ておらず、評価されている程までの上昇率とも言いにくい。 株式市場はたしかに堅調ではあるが、引き続き足元の株価の想定超の底堅さを過大評価するべきではないと考える。今晩の米国市場ではアルファベット、マイクロソフトの決算が予定されている。景気後退懸念が強まっている中、顧客のクラウド投資については予算縮小やスケジュール延期などが想定され、注目のクラウド事業については両社ともに成長鈍化が予想される。ある程度は織り込まれていると思われるが、S&P500採用企業のうちIT業種を対象としたPER(株価収益率)などバリュエーションには割高感が否めず、株価反応には注意が必要だろう。 また、今週は米地銀決算が他にも多数控えており、パックウェストが今晩の米国市場では予定されている。預金流出の状況などが引き続き警戒され、金融不安もくすぶる中、今後も株式市場は堅調ながらも上値の重い展開が続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/04/25 12:18
後場の投資戦略
プラス圏で推移も上げ幅は限定的
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28646.39;+82.02TOPIX;2042.57;+7.51[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、じりじりと上げ幅を広げる展開となった。ただ、今週は米大型テック株の決算のほか、国内でも指数インパクトの大きい値がさ株の決算が予定されている。また、日銀の金融政策決定会合を控えていることもあり、積極的な売買は手控えられやすいと見られている通り、上値の重さが窺える。 新興市場も堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタート。その後もじりじりと上げ幅を広げる展開となっている。景気後退懸念が緩和して底堅い値動きとなった米国株の動きを受けて投資家心理が改善している可能性がある。前引け時点での東証マザーズ指数は0.72%高、東証グロース市場Core指数は0.80%高となった。 さて、今週は米国でアルファベットやマイクロソフト、アマゾン・ドットコムなどIT大手の決算が予定されており、東証プライム市場の主力株の決算発表も本格化していくため、基本は個別株物色が中心となり指数の方向感は出にくいと予想されている。また、国内大型連休中の米連邦公開市場委員会(FOMC)も近づく中、積極的な売買は手控えられそうだ。 週末にかけては植田和男総裁の就任後で初となる日本銀行の金融政策決定会合が予定されている。玉木林太郎・元財務官はロイターとのインタビューで、「新体制が始まった日銀の金融政策について、現行の大規模緩和の修正に早めに着手すべき」と指摘していた。中でも長短金利操作(YCC)の見直しが最優先としている。また、早ければ6月会合でYCCの撤廃を決める可能性が半分程度あるのではないか、との声も一部では聞かれている。直近で日銀はYCCの修正や政策金利の引き上げをする予定はないとしていた。ただ、国内の物価高や米経済の不況懸念を受けて市場が織り込まないよう不意を突く形でYCCの修正を打ち出す可能性もあるため、同会合には引き続き注目しておきたい。 他方、先週20日のブルームバーグ記事では、「1929年以降に米国が陥ったリセッション全てに目を向けると、株式相場の急落は起きるかどうかではなくいつ起きるかが問題だ」と示唆されている。過去約100年に景気縮小局面に入った後で新たな底値を付けるのを回避したという例は一度もないようで、相場が底打ちするのはリセッションが始まってから平均で9カ月後であると、ブルームバーグ・ニュースがまとめたデータで示されているという。2023年中に更なる下落が起こる可能性があり、来年初に底をつく可能性もあるか。 過去の月曜日当欄では、米銀行破綻に続いて不動産市場への警戒、投資ファンドや年金基金などのノンバンクに起因する可能性などを紹介してきた。月曜日の当欄を担当する筆者は、いまだに長期的には欧州不動産市場の動向や金融不安などの再燃などのネガティブ材料の浮上によって株価が下落するシナリオを想定して相場を見守っている。引き続きこのスタンスに変わりはないが、今後の米国の物価上昇率の動向、失業率やFRB高官の発言次第では株価が上昇していくシナリオも考えられる。相場がどちらに動いてもいいように引き続き国内外の経済情報はしっかりと追っていきたい。後場の日経平均は、プラス圏での推移が続くか。主力企業の決算本格化を前に、個別材料株への物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/04/24 12:17