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注目トピックス 日本株 天昇電 Research Memo(3):プラスチック成形品メーカー。長い間に蓄積された技術力と顧客の信頼が強み(2) ■会社概要c) 家電・OA家電メーカーからの依頼により、主に液晶テレビ、照明器具などの筐体や各種OA機器・精密機器・医療機器等の機構部品や機能部品を製造している。「毎日目にするものだから、毎日手にするものだから」 こそ、美しい外観と高品質を常に意識している。機能とデザイン性の両立が求められる家電製品の世界では、部品においても高い外観品質と精度が要求されるが、天昇電気工業<6776>では多様な金型技術・成形技術を駆使することに加え、アセンブリー、塗装までも一貫して行うことが可能で、顧客の高度な要望に応えられる体制を整えている。金型温度を瞬時に上昇・下降させて成形する技術は、ウエルドやフローマーク等の外観不良を改善できると同時に、金型への樹脂の転写性能を向上することで高光沢やシボデザインの製品をより丁寧に仕上げ、塗装を施さなくとも美しい外観を作り上げることができる。また、これらの成形技術に「射出圧縮成形」「ガスアシスト成形」といった特殊な成形方法を組み合わせることで、ヒケやソリといった不具合も軽減し、高い外観品質の維持が可能となっている。d) OAオフィス機器メーカーからの依頼により、外装品や機能部品の設計、成形、加飾、組立等のサポートを行っている。家電で培った外観を美しく魅せる仕上げる技術を生かし、オフィスの様々なシーンで同社製品が使われている。具体例としては、人間工学に基づき座り心地を追求した高級オフィスチェアがある。椅子の背もたれは、異材質成形技術を用いて硬い材質を骨格に柔らかい材質で被覆し、人間工学の理想を具現化することを可能にした。また、高い透明性が重視されるLED照明機器のレンズも挙げられる。成形技術のみならず経験から養われる熟練の目と徹底した品質管理体制から、高い透明性を持つ製品を生み出すことを可能にした。(2) 特色と強みa) 長い間に培われた技術力と顧客からの信頼同社は創業当初からプラスチック製品の製造を手掛けており、この間に培われた技術力は高い。さらに、単に最終製品を製造するための設備だけでなく、様々な設備を保有しており、これらのコンビネーションにより多くの顧客の多様なニーズに応えることができる。そのため顧客からの信頼の獲得につながり、新製品の企画段階から同社に声がかかることも多い。b) 最先端技術と様々な生産設備同社は単に製品を製造する射出成形機だけでなく、様々な設備を持っている。例えば、金型製作/設計設備、フィルム加飾設備、試作設備、印刷/ホットスタンプ設備、塗装設備、組立設備、測定/試験設備等があり、これにコンピュータを駆使した最先端の技術と組み合わせることで、常に顧客へ最良の提案ができる体制を築いている。c) 特殊技術さらに同社は、顧客からの多様なニーズに応えられるよう、特殊技術も有している。主な特殊技術は以下のとおり。1) ウエルドレス/光沢成形技術:特殊金型、成形技術を用いて塗装レスを実現し、漆器のような光沢を出す。2) 特殊印刷(炭素繊維品塗装):独自の技術を使って炭素繊維(カーボン)への特殊塗装を行う。3) フィルム加飾:真空・圧空技術によって製品へフィルムを貼り付け転写する。手触り感も表現できる。(3) 競合射出成形製品の市場には多くのメーカーが存在する。しかし同社が手掛ける製品の多くは、価格が決め手となる汎用品ではなく、同社が企画段階から参画してそれぞれのユーザー向けに設計された製品が多い。したがって同社と真正面から競合する企業は少ないが、同社は射出成形製品だけではなく幅広い分野への参入を視野に入れている。4. 主要な技術(1) 表面華飾(加飾)技術a) 3次元表面加飾技術(TOM)真空/圧空技術により、製品へフィルムを貼付・転写する。これにより、デザインだけでなく、手触りの感触も表現できる。b) 水圧転写水溶性フィルムを使用し、水圧により絵柄を転写する技術で、素材を生かしたデザインを表現できる。c) 塗装技術独自の塗装技術を駆使し、高光沢・高輝度塗装をはじめ、炭素繊維(カーボン)製品への特殊な塗装も手掛けている。主に自動車部品の塗装に用いる。今後、自動車のEV化が進むとさらに軽量化が要求され、プラスチック部品の需要が一段と高まると期待される。d) 印刷/転写技術スクリーン印刷、パッド印刷、ホットスタンプなど、様々な印刷/転写技術を保有している。平面や凹凸面といった形状に合わせ、ノウハウを生かし、小さな物から大きな物まで多機種にわたって提案できる。フィルム華飾とのコラボレーションも可能であり、スマートフォンのケースなど、様々な分野での応用が期待される。e) 漆器の光沢技術特殊金型、成形技術を用いて、塗装レスを実現し、漆器のような光沢感を表現できる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇) <EY> 2022/07/04 16:13 注目トピックス 日本株 天昇電 Research Memo(2):プラスチック成形品メーカー。長い間に蓄積された技術力と顧客の信頼が強み(1) ■会社概要1. 会社概要天昇電気工業<6776>は、1936年(昭和11年)に創業した歴史のある合成樹脂(プラスチック)成形品メーカーである。ラジオのキャビネットを木製からプラスチック化したのは同社が初めてである。その後も長い歴史のなかで、様々な合成樹脂の成形加工を手掛けてきた。その間に培われた技術力をベースに、金型事業、塗装などの加工工程へも事業領域を拡げ、生産においても国内のみならず海外生産へも進出している。現在では自動車部品、家電・OA機器や機構部品、さらに大型コンテナや感染性医療廃棄物専用容器など多分野へ展開している。2. 沿革同社の創業は1936年に遡る。以降は一貫してプラスチックの成形加工を事業として行ってきた。言い換えれば、プラスチック加工の老舗であり名門でもある。株式については、1961年に東証2部に上場し、現在は東証スタンダート市場に上場している。これまでに幾多の主要株主の変遷があったが、現在はプラスチックコンテナやパレットの大手メーカーである三甲(株)の関連会社が筆頭株主(2022年3月期末現在33.6%保有)、三井物産<8031>が第2位(同13.8%)となっている。なお、代表取締役社長である石川忠彦(いしかわただひこ)氏は三井物産の出身である。3. 事業内容(1) 事業領域と生産類型分類主力事業は、各種プラスチック製品や部品の製造・販売である。プラスチックの加工にはいくつかの方法があるが、同社は射出成形によって製品を製造している。また単に最終製品の製造だけでなく、開発当初から顧客と共同で製品設計、金型設計・製造、成形、塗装、印刷、検査、納品と一貫して行う場合もある。同社の事業を事業領域で分類すると、「受託生産」「共同開発」「自社ブランド」の3領域に分けられ、さらに生産類型では以下の4つに分けられる。a) 成型事業(受託生産)自動車・家電・OA機器などの顧客から生産委託を受けて各種部品等を製造する。微細な顧客の要望に応えるため、同社の「顧客本位・品質重視」の姿勢と、強度や美しさなどを生み出す幅広い技術を掛け合わせて事業を遂行している。b) 成型事業(共同開発)顧客の商品企画・開発力と同社の商品企画・開発力を持ち寄って共同開発を行っている。同事業は、結果を足し算以上、掛け算にまで高めることを目的としており、得意分野を適確に見定める“企業力”が問われる分野であると言う。芳香剤自動拡散器、樹脂製把手などユニークな製品実績が多数ある。c) 金型事業(受託生産)顧客からの委託を受けて金型を製造する事業である。金型製造のための最先端設備と金型を知り尽くした同社の高度な加工技術で、スピーディ、かつハイクオリティな金型供給を実現している。d) 最終製品事業(自社ブランド)自社ブランド製品を同社が独自に開発する事業である。生産品のストック&フローに不可欠なプラスチックコンテナから、医療廃棄物容器、集中豪雨の被害から生活を守る雨水貯留槽まで、多種多様なオリジナル製品が上市している。「プラスチックという材料の特性を最大限に生かしきる」という同社の最高品質へのこだわりが、数々のベストセラーを生み、生産の現場や医療の最前線で使用されていると言う。(2) 主要製品と主な向け先決算短信で公表されているセグメントは「日本成形関連事業」「中国成形関連事業」「アメリカ成形関連事業」「不動産関連事業」に分けられており、売上高比率(2022年3月期)は、日本成形関連事業83.4%、中国成形関連事業2.5%、アメリカ成形関連事業12.7%、不動産関連事業1.5%となっている。セグメント名となっている日本、中国、アメリカは国別販売地域で分けられており、製品別ではない。不動産関連事業については、神奈川県相模原市の土地・建物及び福島県二本松市の土地を賃貸する事業で、毎期安定した収益を上げている。なお、2021年7月に子会社化した竜舞プラスチックは「日本成形関連事業」に含まれる。また正式に開示されている数値ではないが、同社によれば不動産関連事業を除いた近年の成形関連事業の主な向け先(概算値)は、自動車関連が約60%、オリジナル(自社)製品が約25%、家電・OA機器が約15%としている。製品は国内5工場(福島、矢吹、群馬、埼玉、三重)、国内子会社1工場、海外3工場(中国、ポーランド、メキシコ)で製造されている。a) 自動車関連各種内外装品、エンジンルーム用部品、ダッシュボードなど様々な製品を製造・販売している。主要な大手自動車メーカーとはすべて取引があるが、特定のグループには属していない。また部品メーカーでもティア1、ティア2の多くの部品メーカーと取引がある。自動車向けでは、「製品設計~金型製作~成形~塗装~各種組立」まで同社のネットワークを活用して最適地生産を行い、技術力と総合力で顧客の多種多様なニーズに応えている。特に近年注力しているのが、加飾分野におけるカーボン塗装技術だ。同社の経験・ノウハウを生かした同技術は、自動車のみに特化せず多分野に展開することが可能である。b) オリジナル製品同社が独自に開発した商品で、各種製品類の搬送用に使われるテンバコ(多目的通い箱)、テンタル(樽型容器)、ミッペール(医療廃棄物専用容器)、雨水貯留浸透資材、テンサートラック(導電性プリント基板収納ラック)などがある。オリジナル製品の利益率は高い。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇) <EY> 2022/07/04 16:12 注目トピックス 日本株 天昇電 Research Memo(1):2022年3月期は減価償却費の増加により営業減益となるも、内容は好転 ■要約天昇電気工業<6776>は、1936年(昭和11年)に創業した歴史のある合成樹脂(プラスチック)成形品メーカーである。長い歴史のなかで培われた技術力は高く、顧客との信頼関係も厚い。製品の向け先は幅広い業種に及んでいるが、現在は自動車向けの比率が約60%と高い。今後は、内需向けの製品を拡充する一方で、北米での事業を拡大する方針である。同社は長い間、業績低迷に苦しんでいたが2017年3月期に9年ぶりに復配(年間3円)するまで業績が向上し、現在も継続して配当を実施している。2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で大幅減益となった。2022年3月期も営業減益となったが、減価償却費の増加によるもので、内容は好転した。1. 2022年3月期の業績:減価償却費の増加により営業減益となるも、内容は好決算2022年3月期の連結業績は、売上高19,449百万円(前期比25.0%増)、営業利益225百万円(同22.6%減)、経常利益355百万円(同19.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益246百万円(同54.9%増)となった。主たる向け先である自動車メーカーの生産・販売がコロナ禍や半導体不足等により停滞したことから、同社の単体売上高は前期比0.4%増に止まったが、新規連結となった竜舞プラスチック(株)の寄与と米国子会社の好調により連結売上高は大幅増収となった。金型を中心に設備投資を積極的に行ったことから減価償却費が増加し、営業利益は減益となったが、償却前営業利益は前期比36.2%増となった。キャッシュ・フローも改善しており、内容は見かけほど悪くはなく、むしろ好決算だったと言える。2. 2023年3月期の見通し:償却負担は続くが増益を目指す2023年3月期の連結業績は、売上高24,000百万円(前期比23.4%増)、営業利益600百万円(同165.7%増)、経常利益540百万円(同52.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益350百万円(同42.2%増)と予想している。竜舞プラスチックが通年で寄与すること(2022年3月期は9ヶ月間)、自動車生産がある程度回復することを前提に20%超の増収を見込んでいる。営業利益については、減価償却費も増加すると推測されるものの、これを吸収して大幅な増益を見込んでいる。国内の自動車生産の動向が業績を左右すると思われるが、業績だけでなく財務基盤も着実に改善している点は注目する必要があるだろう。3. 中長期の成長戦略:内需型製品及び海外事業の拡大により成長を加速する現在は売上高の約60%が自動車向けとなっているが、今後は雨水貯留浸透資材などの内需型製品の売上高を伸ばすなどして自動車向け比率を35%程度とすることで成長を図る。その一方で、米国での事業をさらに拡大することでも成長を目指す。容易な道のりではないが、これが達成できれば、同社の体質は大きく変わるだろう。定量的な数値と同時に、同社の事業体質がどう変わっていくか、今後に注目したい。■Key Points・プラスチック製品の老舗メーカー。技術力が高く顧客からの信頼は厚い・2022年3月期は営業減益だが、減価償却費の増加によるもので、内容は好決算・今後は内需型製品及び海外事業の拡大で収益基盤の安定化を図る(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇) <EY> 2022/07/04 16:11 注目トピックス 日本株 nms Research Memo(6):2023年3月期も安定した配当を実施予定 ■株主還元策株主還元について、nmsホールディングス<2162>は配当と自社株買いを合わせた総還元性向を株主還元の指標としており、配当性向20%を中期目標に還元を行っている。2022年3月期の配当実績は1株当たり5.0円と前期比プラス1.0円であった。2023年3月期は、今後の業績回復などを見据えて前期と同じ1株当たり5.0円を見込んでいる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎) <EY> 2022/07/04 16:06 注目トピックス 日本株 nms Research Memo(5):製造業でのデジタル化普及遅延解決へ。独自ビジネスモデル構築でDX需要を取り込む ■中長期の成長戦略nmsホールディングス<2162>は「生産現場におけるデジタルテクノロジーの導入・運用の遅れ」「正規社員削減による生産性の低下、品質問題、安定した生産現場の確立」を日本の製造業の大きな課題と捉え、これに対して同社独自のビジネスモデルを構築する計画である。まずは、必要技術・ツールをワンストップで提供し、製造業のDX推進のサポートをしていく。様々な特性を持つAI企業・パートナー企業、海外の政府・大学とのネットワークを活用し、人材・生産管理・自動化・部材調達・物流といった顧客ニーズに合ったDXを実現していく考えである。日本企業の製造現場におけるデジタル化の遅延は国の課題として認知されており、政府主導で解決を図っている。「デジタル化による効果を事前にイメージしづらい」「ITが分かる人材がいない」など様々なボトルネックはあるものの、デジタル化は国の生産性向上に向けた喫緊の課題であり、今後あらゆる方面でデジタル化普及に向けた潮流が強まると予想する。そうしたなか、DXの推進サービスを手掛ける同社にとっては、中長期的に大きなビジネスチャンスが訪れると弊社は考える。さらに、同社は国内外の製造業ファブレス化に貢献できる高度人材の育成・提供も進める。グループ内EMS・PS事業とのシナジーに加え、ジョブグレードアップ制度の展開や技術・技能教育の拡充により、様々なニーズに貢献する即戦力人材を育成していく。同社のビジネスモデルでは人材こそが競争力・成長力の源泉であり、こうした積極的な取り組みが、中長期的に同社の業績を押し上げていくと弊社は期待する。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎) <EY> 2022/07/04 16:05 注目トピックス 日本株 nms Research Memo(4):2023年3月期は市場の需要も旺盛で増収増益の見込み ■今後の見通し1. 2023年3月期の業績予想nmsホールディングス<2162>の2023年3月期の業績予想は、売上高が77,100百万円(前期比21.8増)、営業利益が600百万円(前期は361百万円の損失)、経常利益が450百万円(前期比266.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が50百万円(前期は1,980百万円の損失)となっている。旺盛な需要を背景に受注は堅調に推移しており、今後の業績成長のポテンシャルは大きい。部材不足による顧客企業の一時的な生産減や計画の後ろ倒しなどがあるものの、受注は底堅く推移しており、各事業とも部材不足解消時を見据えた取り組みを進めている。2023年3月期にコロナ禍の影響がどれだけ緩和されるかは見通しづらいものの、需要が旺盛な外部環境に加えて、事業構造改革などの内部変革の効果が影響緩和後に顕在化する見通しだ。同社の成長に弊社は注目したい。なお、同社は2021年12月6日に兼松<8020>との資本提携を解消すると発表した。両社は2015年に資本・業務提携契約を締結し、EMS事業の拡大や海外事業展開における協業など、様々な取り組みを進めてきた。今回、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能とする体制の確保が必要との判断に至り、資本提携を解消する。なお、業務提携は継続するとしている。2. セグメント別業績概要(1) HS事業需要は引き続き高水準を維持しており、製造業の人手不足も継続するなど、HS事業の市場状況は良好である。こうしたなか、同事業では顧客ニーズに合わせた多様なサービス・人材の提案・提供、製造業の海外進出・製造支援サービス事業の拡大、デジタルプラットフォームの構築・展開を主眼に据え、事業規模拡大を図る。事業環境の変化に対応する形でグループ内製造受託インフラ・ノウハウを顧客ニーズに合わせて提案・提供するほか、製造業のファブレス化に即応するため、顧客シニアエキスパート人材の転籍支援にも注力し、幅広い人材の雇用機会を創出することで、採用枠の拡大、生産性の向上につなげている。人材教育・育成に関しては、エンジニア採用・育成プログラムの強化、ジョブグレードアップ制度の高度化と効果の可視化を行い、実績を他地域に展開していく考えだ。また、外国人技能実習生についても、同社独自のスキームを有しており、アフターコロナを見据え、引き続き注力していく。さらに、利益率の適正化も積極的に推進する。同社は、それぞれのプロセスにおける適正価格の見直し、原価率の改善によりしっかりと利益を確保していく構えだ。製造業の海外進出・製造支援サービス事業については、住友商事<8053>との業務提携をきっかけに、ベトナム・タンロン工業団地でワンストップサービスを提供するほか、「人材ソリューション+製造支援」に則り顧客の安定した生産をサポートするなど、事業の拡大を図っていく。目先は部材価格の高騰などネガティブな要素もあるものの、こうした積極的な取り組みを通じ、同社はアフターコロナを見据えた訴求力の高いデジタルプラットフォームを構築する。具体的には、人材ビジネスノウハウをベースとした製造業のファブレス化、モノづくり高度化に貢献する独自のデジタルプラットフォーム「製造DX」を構築していく考えである。(2) EMS事業EMS事業では、2022年3月期は部材不足やコロナ禍による影響を受けているものの、2023年3月期から新規受注・生産拡大が活発化する見通しである。こうしたなか、同社はベトナム拠点とメキシコ拠点において各種活動に注力していく。2021年6月に新規品生産立ち上げを開始したベトナム拠点では、車載用ワイヤレス充電器関連やAV・音響機器関連など、プレス技術を核に完成品まで生産できる特長を生かし、ベトナムへの生産移管を進める日系企業のニーズに合わせた対応に注力する。これにより売上を倍増させることを計画している。メキシコ拠点では生産計画が後ろ倒しになっていた顧客からの受注が再開され、2023年3月期第1四半期から量産を開始している状況だ。主軸の車載関連部品に加え、北米において大きなマーケットを有し、需要が安定している家電や電動工具、産業機器などの顧客にフォーカスし事業を推進していく計画である。市場規模の大きい車載関連市場を中心に、足元では海外事業での事業体制が整いつつあり、着実に成長基盤は強まっている。加えて日本基準の高品質な商材・サービスを提供できることも強みであり、価格高騰の安定化が進むにつれて、収益は長期安定的に伸びると弊社は見ている。(3) PS事業PS事業では、高圧電源、マグネットロールを中心に安定した収益体質への足掛かりを構築するほか、マグネットロールではASEANにおける販売に着手するなど、主軸製品の収益基盤を強化していく。また、産業機器市場への製品展開、新規顧客の獲得・拡販も進めていく。さらに、部材調達難・部材価格高騰といった厳しい事業環境ではあるものの、省人化・自動化ニーズによるロボティクス市場の拡大や、コロナ禍を背景とした殺菌・滅菌機器市場への製品展開を実行するなど、新たな市場を開拓していく考えだ。加えて、電池パック技術を横展開し、新分野需要に対応していく。具体的には、安心安全の電源設計技術と蓄電・充電技術・ノウハウを生かしてターゲット分野を拡大するほか、建機・農機の電動化ニーズによる販売拡大を推進する。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎) <EY> 2022/07/04 16:04 注目トピックス 日本株 nms Research Memo(3):2022年3月期は営業減益も、旺盛な需要により今後の市場見通しは明るい ■業績動向1. 2022年3月期の連結業績概要nmsホールディングス<2162>の2022年3月期の連結業績は、売上高が63,277百万円(前期比15.4%増)、営業損益が361百万円の損失(前期は689百万円の利益)、経常利益が122百万円(前期比22.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損益が1,980百万円の損失(前期は735百万円の損失)となった。受注が堅調に推移したことによって売上高は伸びたものの、コロナ禍による影響や部材不足による影響が大きく、営業損益では損失を計上した。経常損益は、主に海外子会社へのグループ内貸付金に対する為替差益697百万円の発生を背景に利益を計上した。親会社株主に帰属する当期純利益については、EMS事業における米国・メキシコ拠点で実行した事業構造改革費用、想定収益の後ズレによる減損損失をそれぞれ164百万円、1,433百万円を計上したため、損失となった。事業全体としては、部材不足や先行投資などを要因に依然として厳しい事業環境ではある。しかし、部材不足の背景には製造業における生産活動活発化を通じた需要のひっ迫であること、同社の売上高も増加していることから、事業環境は徐々に快方に向かうだろうと弊社は考える。また、2022年3月期に実施した事業構造改革に関しても、2023年3月期下期からその効果が業績に反映されてくることが予想される。2. セグメント別業績概要(1) HS事業HS事業の売上高は22,088百万円(前期比15.4%増)、セグメント利益は647百万円(同26.0%減)となった。国内事業についてはコロナ禍や半導体関連などの部材不足による影響があったものの、事業規模拡大に向けた施策が奏功したこと、コロナ禍に伴う顧客企業の稼働調整の影響が前期に比べて軽微となったことから、事業全体で増収となった。利益については、人材の募集関連費用といった事業規模拡大のための先行投資の影響があり、減益となった。海外事業については、ASEANにおける新型コロナウイルス感染症の再拡大により顧客企業の稼働調整などの影響はあったものの、前年同期に比べるとその影響は軽微であった。特に中国、タイの業績は改善傾向となった。(2) EMS事業EMS事業の売上高は28,400百万円(前期比18.1%増)、セグメント損失は536百万円(前期は29百万円の損失)となった。同事業は中国・ASEAN・北中米において生産活動を展開しており、戦略投資の実行期にある。コロナ禍に伴う影響として、マレーシア、メキシコの両政府方針によるロックダウンや部材不足などの影響が残ったものの、ベトナム拠点での新規品生産立ち上げの開始のほか、中国・ASEAN地域においてコロナ禍による影響が前期に比べて軽減されたこともあり、増収となった。利益面では、重点施策として生産立ち上げを進めているメキシコ拠点の先行投資コストに加え、事業全体において部材不足に起因した顧客企業の減産や生産計画の後ろ倒しや部材価格高騰などによる影響が大きく、利益圧迫要因となった。足元では、ベトナム拠点に続いて生産計画が後ろ倒しになっていたメキシコ拠点において、顧客企業からの受注が再開され、2023年3月期第1四半期から量産を開始した。(3) PS事業PS事業の売上高は12,788百万円(前期比9.6%増)、セグメント利益は1百万円(前期比99.5%減)となった。抜本的コスト構造改革による体質強化の効果もあり、第1四半期は想定を上回る状況で推移したものの、第2四半期に入って部品調達難や副資材も含む価格高騰の影響が顕著となった。また、顧客企業やサプライヤーの生産拠点が集中するベトナムやマレーシアにおけるコロナ禍によるロックダウンの影響で大幅な生産減となった。利益面では、部材調達難などの影響により、前期に対して減益となった。ただ需要は高い水準を維持していることから、部材不足解消時や2023年3月期以降を見据えた取り組みを進めている。3. 財務状況2022年3月期末における資産合計は前期末比3,334百万円増の34,842百万円となった。流動資産は26,349百万円となり、4,690百万円増加した。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産が1,435百万円、原材料及び貯蔵品が2,279百万円、その他流動資産が302百万円増加したことによる。固定資産は8,453百万円となり、1,342百万円減少した。有形固定資産が1,192百万円減少したことによる。負債合計は前期末比5,343百万円増の32,148百万円となった。流動負債は26,333百万円となり、8,873百万円増加した。これは主に短期借入金が7,287百万円、支払手形及び買掛金が1,261百万円増加したことによる。固定負債は5,814百万円となり、3,529百万円減少した。これは主に長期借入金が3,103百万円、その他固定負債が199百万円減少したことによる。純資産合計は前期末比2,008百万円減の2,693百万円となった。利益剰余金が2,046百万円減少したことが大きく影響した。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎) <EY> 2022/07/04 16:03 注目トピックス 日本株 nms Research Memo(2):日本のモノづくり品質で世界展開 ■会社概要nmsホールディングス<2162>は1985年に製造派遣・製造請負を柱とする人材サービス(ヒューマンソリューション=HS)事業を基盤に創業し、2007年にJASDAQに上場した。その後、2010年7月に(株)志摩電子工業、2011年7月に(株)テーケィアール(現 TKR)を買収して電子・電気機器の製造受託(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス=EMS)事業を発足した。さらに2013年10月に(株)日立メディアエレクトロニクスの一部事業を、2014年10月にパナソニック(現 パナソニックホールディングス)<6752>から一般電源事業をそれぞれ譲受して、電源関連製品の開発から設計・製造・販売まで行うメーカー(パワーサプライ=PS)事業を発足した。2019年には、ソニー(現 ソニーグループ)<6758>の米国法人からメキシコ工場を含む米国の事業部門を譲受した。同社は、「ニッポンのモノづくり品質を世界へ」を標榜し、3つの事業を組み合わせて「人材ビジネス」×「モノづくり」の強みを最大化することを経営の主眼としている。なお、同社は2017年4月より持株会社制へ移行した。(1) HS事業HS事業では、国内・海外におけるマニュファクチャリングサービス全般を日本・中国・ASEAN諸国で提供している。具体的には、製造事業、生産系エンジニアリング事業、IT・設計開発エンジニアリング事業、テクニカルサービス事業、ロジスティクスサービス事業、省力化装置事業などである。また、研修施設や日本語教育システムなどを活用し、外国人材定着支援サービスも展開している。(2) EMS事業EMS事業では、実装・プレス・成形・完成品組み立てのほか、試作、部品調達、検査など広範囲にわたるノウハウを有し、高い実装品質と低コストの生産ライン構築により一貫生産・量産のほか、プロセス単体・少量多品種での生産対応を手掛けている。具体的な事業内容は、電子機器製造受託サービス、電子機器修理サービス、車載関連機器・部品の設計・開発・製造、スタートアップソリューション等を行うシェアビジネス、3Dプリンター事業などである。(3) PS事業PS事業では、電源専業メーカーとして電源及び関連部品を提供しているほか、新事業の柱として自動車や産業機器類の電動化に対応するEV関連製品を開発し、新規分野への参入を図っている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎) <EY> 2022/07/04 16:02 注目トピックス 日本株 nms Research Memo(1):2022年3月期はコロナ禍の影響と部材高騰が損益圧迫も、需要旺盛で受注は好調 ■要約1. 2022年3月期の連結業績概要nmsホールディングス<2162>の2022年3月期の連結業績は、売上高が63,277百万円(前期比15.4%増)、営業損益が361百万円の損失(前期は689百万円の利益)、経常利益が122百万円(前期比22.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損益が1,980百万円の損失(前期は735百万円の損失)となった。受注が堅調に推移したことによって売上高は伸びたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)や部材不足による影響が大きく、営業損益では損失を計上した。経常損益は、主に海外子会社へのグループ内貸付金に対する為替差益697百万円の発生を背景に利益を計上した。親会社株主に帰属する当期純利益については、EMS事業における米国・メキシコ拠点で実行した事業構造改革費用、想定収益の後ズレによる減損損失をそれぞれ164百万円、1,433百万円を計上したため、損失となった。事業全体としては、部材不足や先行投資などを要因に依然として厳しい事業環境ではある。しかし、部材不足の背景については、製造業における生産活動活発化を通じた需要のひっ迫であること、同社も売上高は増加していることから、事業環境は徐々に快方に向かうものと弊社は考える。また、2022年3月期に実施した事業構造改革に関しても、2023年3月期下期からその効果が業績に反映されてくることが予想される。2. 2023年3月期の連結業績予想2023年3月期の業績予想は、売上高が77,100百万円(前期比21.8%増)、営業利益が600百万円(前期は361百万円の損失)、経常利益が450百万円(前期比266.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が50百万円(前期は1,980百万円の損失)となっている。旺盛な需要を背景に受注は堅調に推移しており、今後の業績成長のポテンシャルは大きい。部材不足による顧客企業の一時的な生産減や計画の後ろ倒しなどがあるものの、受注は底堅く推移しており、各事業とも部材不足解消時を見据えた取り組みを進めている。2023年3月期にコロナ禍の影響がどれだけ緩和されるかは見通しづらいものの、需要が旺盛な外部環境に加えて、事業構造改革などの内部変革の効果が影響緩和後に顕在化する見通しだ。同社の成長に弊社は注目したい。3. 中長期の成長戦略同社は「生産現場におけるデジタルテクノロジーの導入・運用の遅れ」「正規社員削減による生産性の低下、品質問題、安定した生産現場の確立」を日本の製造業の大きな課題と捉え、同社独自のビジネスモデルを構築する計画である。まずは、必要技術・ツールをワンストップで提供し、製造業のDX推進のサポートをしていく。様々な特性を持つAI企業・パートナー企業、海外の政府・大学とのネットワークを活用し、人材・生産管理・自動化・部材調達・物流といった顧客ニーズに合ったDXを実現していく考えである。さらに、国内外の製造業ファブレス化に貢献できる高度人材の育成・提供も進めていく。グループ内EMS・PS事業とのシナジーに加え、ジョブグレードアップ制度の展開や技術・技能教育の拡充により、様々なニーズに貢献する即戦力人材を育成していく。なお、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画に関しても、事業環境の変化を注視しながら今後時機を得て開示する予定としている。■Key Points・2022年3月期は、部材価格高騰や先行投資が損益を圧迫・2023年3月期通期は、依然として事業環境不透明も、構造改革などの成果が下期に結実の見込み・膨らむデジタル化需要取り込みに向け、独自性の高いビジネスモデル構築へ(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎) <EY> 2022/07/04 16:01 注目トピックス 日本株 新興市場銘柄ダイジェスト:メドレックは年初来高値、ウェッジHDがストップ高 <3906> ALBERT 4325 +240大幅に3日ぶり反発。22年12月期の純利益を従来予想の4.46億円から6.44億円(前期実績3.53億円)に上方修正している。AI・高性能チャットボット スグレス事業の譲渡に伴い、2.85億円の特別利益が発生したため。営業利益予想は6.57億円(同4.36億円)で据え置いた。5月20日に直近高値(5490円)を付けてから株価が右肩下がりで推移していたため、自律反発に期待する買いも入っているようだ。<4169> エネチェンジ 1271 -64大幅に続落。東証が1日から信用取引に関する規制措置を強化したことが引き続き嫌気されている。新規の売付及び買付に係る委託保証金率が70%以上(うち現金40%以上)となった。日証金も増担保金徴収措置を実施している。同日から委託保証金率が50%以上(うち現金20%以上)となった東京通信<7359>も大幅に続落している。両株とも短期間で急騰していただけに、利益確定売りも重なっているようだ。<2388> ウェッジHD 107 +30ストップ高。持分法適用関連会社のGroup Lease PCL(GL)と同社の元取締役2名に対してJトラスト<8508>傘下のJトラストアジアが行っていた刑事告発について、タイ特別捜査局が棄却したと発表している。同局は刑事告訴に根拠がないことを示す最終不起訴処分を決定したという。Jトラストアジアは誤った財務諸表によって騙されてGLに投資したと主張し、刑事告訴していた。<3498> 霞ヶ関キャピタル 2294 +239大幅に続伸。23万株(5.00億円)を上限として自社株買いを実施すると発表している。発行済株式総数(自社株を除く)に対する割合は2.82%。取得期間は4日-9月30日。譲渡制限付株式やストックオプションへの充当など経営環境の変化に応じた機動的な資本政策の遂行を可能とするため。また、22年8月期第3四半期累計(21年9月-22年5月)の営業損益が3.15億円の赤字(前年同期実績6.01億円の赤字)に縮小したことも開示している。<3913> sMedio 794 +100ストップ高。国際的な衛生管理手法のHACCPに対応した流通・小売業界向け温度管理ソリューションなどを手掛ける台湾のKiwi Tech社と資本業務提携すると発表している。同社子会社で日本法人のキーウィテクノロジー(東京都港区)を割当予定先として新株30万6000株を発行する。調達資金の約1.91億円はIoTソリューション事業の立ち上げ・拡大などに充てる。sMedioはKiwi Tech株を0.50億円を限度に市場で購入する予定。<4586> メドレック 133 +20年初来高値。出願中の「メマンチン含有経皮吸収型液剤」について、特許庁から特許査定が通知されたと発表している。メドレックス独自の経皮吸収技術を用いたアルツハイマー治療貼付剤MRX-7MLLをカバーするもの。1日1回の経口剤に対し、貼付剤は投薬状況を目視確認できる上、3日に1回などの選択肢を提供できるという。特許の有効期限は2038年まで。日本のほか米国で登録されており、欧州や中国でも権利化を目指している。 <ST> 2022/07/04 15:54 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(10):2022年3月期の年間配当金は4円増配の60円、2023年3月期も4円増配予定 ■株主還元策日新<9066>は、将来の経営環境の変化や事業展開などを見据え、業績、財務状況、配当性向水準などを総合的に勘案し、安定的配当の継続を基本に利益還元する方針を掲げている。内部留保資金については、安定的経営基盤の確立に向け、中長期的見地に立ったグローバルな事業展開をはじめ、物流施設やIT関連の整備・拡充及び財務体質の強化のために活用するとしている。同社の基本方針である「安定配当の継続」については、過去10年間配当の増配・維持を継続していることや、コロナ禍の影響による旅行事業の急速な収益悪化のなかでも配当を維持したことなどに現れている。今後もこの基本方針は継続していく予定である。2022年3月期については、前期比4.0円増配の年間60.0円の配当を実施した。また、2023年3月期については、前期比4.0円増配の年間64.0円(中間配当金32.0円、期末配当金32.0円)の配当を予定している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:40 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(9):2023年3月期業績も過去最高水準を維持 ■今後の見通し1. 2023年3月期の業績見通し地政学リスクの高まりによる資源価格の高騰や新型コロナウイルスの新たな変異株の影響等、世界経済の先行き不透明な状況は継続するものと日新<9066>では見込んでいる。物流事業では旺盛な貨物需要は当面継続すると見込まれるものの、スポット案件の剥落等が見込まれる。一方、旅行事業においては海外業務渡航の取扱いは徐々に回復に向かうものの、本格的な回復にはなお時間を要するものと予想される。このような状況の下で同社は、2023年3月期の連結業績について、売上高で190,000百万円(前期比1.4%減)、営業利益で8,500百万円(同6.6%減)、経常利益で9,000百万円(同8.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益で6,500百万円(同2.1%増)と見込んでいる。なお、営業利益及び経常利益が減益予想であることに対し、親会社株主に帰属する当期純利益は増益となっている要因は、2022年3月期に倉庫解体による特別損失を計上したことの反動による。2. セグメント別計画(1) 物流事業売上高は前期比2.7%減の183,800百万円、営業利益は同12.5%減の8,200百万円を見込んでいる。国際物流環境については、海上コンテナ不足や米国西海岸の港湾混雑による航空需要の高止まりや、米国内トラック便代替輸送、緊急貨物輸送など、現在の不安定な環境は当面継続するものと思われるが、荷動きは徐々に安定化に向かうと予想される。一方、半導体や自動車部品の供給不足解消は依然先行きの見えない状況で、世界経済の本格的回復には時間を要することには注意が必要である。このような前提の下、物流事業では旺盛な貨物需要が当面継続すると見込まれるものの、スポット案件(代替輸送、緊急輸送)の剥落等が予想されることから、減収減益の見通しとなっている。(2) 旅行事業売上高は前期比84.0%増の4,600百万円、コスト削減施策をさらに推進することで営業損失は450百万円(前期は1,053百万円の損失)の見通し。本格的回復には時間を要するものと思われるが、徐々に海外業務渡航の取扱人数は回復に向かうと同社では予想しており、営業利益の黒字化は2024年3月期の見込みとなっている。(3) 不動産事業売上高は前期比20.3%増の1,600百万円、営業利益は前期同額の765百万円を見込んでいる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:39 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(8):事業活動を通じ、地球規模での持続的な社会の発展への貢献を目指す ■ESGへの取り組み日新<9066>は、社名の由来である「日々新たに、また、日に新たなり」の精神を基本に、自己革新を続けながら、安全・迅速に高品質な物流・旅行サービスを提供することで、豊かな社会の実現に貢献するとともに、顧客との間に信頼を築き上げながら企業価値を高め、すべてのステークホルダーの期待に応えることを経営の基本方針としている。この基本方針を実現するために同社は、経済・社会の発展に不可欠である物流事業をはじめ旅行業などの関連事業を、企業倫理・法令遵守の徹底及び地球環境保全への積極的な取り組みなど企業の社会的責任(CSR)を果たしながら、グローバルに展開していくことを目指している。2022年3月期のトピックスとしては、2021年12月に「サステナビリティ基本方針」を制定したほか、以下のような取り組みを実施した。(1) Environment(環境)同社では、TCFDのフレームワークに従い、気候変動(機会、リスク)への取り組み状況や影響などを評価しCSRレポートに公開している。具体的には、環境対応施設として、平和島冷蔵物流センターを建設した。自然冷媒を使用した冷凍機を導入したほか、トラック予約受付システム導入によりトラック待機時間を削減しCO2削減に貢献した。このほか、事業者クラス分け評価制度(経済産業省)で7年連続の優良事業者(Sクラス評価)※となった。※直近5年間のエネルギー使用量平均原単位1%以上低減した事業者。(2) Social(社会)人材育成カリキュラムの充実のほか、多様な働き方の導入やダイバーシティなどを推進している。一例を挙げると、数年前から「女性が活躍する会社」の実現に向けて力を入れており、新卒採用での男女同数採用、子育て支援での男性社員の育児休暇取得などで成果が表れている。また、管理職登用では管理・営業で部長職での女性登用が相次ぎ、女性管理職比率は8.5%まで向上した。これらの活動が評価され、「えるぼし」(女性活躍推進法)及び「くるみん」(子育て支援)の認定を取得した。(3) Governance(ガバナンス)2021年6月23日付で女性取締役を登用しているほか、2020年10月には指名報酬委員会を設置している。サステナビリティ推進体制としては、経営会議の諮問機関として「サステナビリティ委員会」(2022年3月新設)が全社的サステナビリティ方針を策定し、「サステナビリティ推進室」(同年4月新設)にてサステナビリティ計画へ落し込み、現場部門に直結した「推進チーム(E、S、G」)がサステナビリティ活動を担っている。そして、「サステナビリティ委員会」がサステナビリティの重要課題に対して、課題解決に向けた目標の設定、進捗管理を行い、経営会議に答申する。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:38 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(7):第6次中期経営計画の定量目標と重点施策はほぼ達成。第7次中期経営計画を始動(3) ■日新<9066>の中期経営計画(5) 重点施策外部環境変化に柔軟に対応できる強靭な事業構造の構築を目指し、「事業基盤強化」及び「経営基盤強化」を重点施策としている。事業基盤強化としては、事業ポートフォリオの再構築、産業別営業力強化、新規事業創出(DXを活用した新商品・サービス展開)を推進していく。また経営基盤強化としては、ESG経営を強力に推進する。(6) DXの推進「DXの推進」としては、最先端デジタル技術の活用により、DXを加速・強化していく計画だ。DXを「営業拡大」と「業務効率化」の2つに区分けし、推進していく。「営業拡大」では、デジタルフォワーディングサービスのオンライン化を進める。従来の電話・対面営業業務をオンラインで対応できるようにする。また、荷物にタグを付与することにより、ドアToドアでの追跡管理を可能とするなど、IoTを活用した国際物流の可視化サービスも展開していく。現状はリターナブル容器を管理しているが、商品も紐付けして管理・追跡できるよう進化させる。このほか、2021年8月に同社と東京大学協創プラットフォーム開発、三井倉庫ホールディングス、TW Linkの4社が、貿易情報連携プラットフォーム「TreadeWaltz®」を運営するトレードワルツに共同出資した。トレードワルツの貿易プラットフォーム基盤を活用することで、フォワーディングサービスのデジタル化を進め、荷主にわかりやすく、よりスピーディな国際物流ポータルサービスの提供を目指す。また、トレードワルツへの共同出資によりさらに高度な電子貿易業務ノウハウを獲得し、同社のDXプロジェクトを加速化・発展させていきたいと考えている。業務効率化としては、貨物情報共有システムの構築を進めていく。これにより、荷主が貨物の状況を確認したい場合、リアルタイムで画像を送信できるようになる。ロケーション管理などIoTによる現場の最適化も推進する。また、サイバーポートやCONPASとの連携により書類の簡素化や港での待ち時間短縮が見込まれるほか、AI・OCRによる手配業務の効率化(画像認識による書類作成)も計画している。(7) 事業ポートフォリオ戦略の推進2021年7月に稼働した新基幹システムにより、事業ごとの収益を明確にアウトプットすることで、同社の事業ポートフォリオを改めて精査し、より効果的な経営資源の投入が可能となった。このため、営業体制を産業別の体制に変更するとともに、3次元(事業別、産業別、地域別)での事業管理体制を整え、さらなる事業拡大を目指していく。フェーズ1では事業ポートフォリオ管理を確立し、フェーズ2で効率的な事業運営と的確な投資判断につなげる方針だ。各地域のポートフォリオポジション及び施策としては、重点投資領域を日本とし、システム投資、人材育成、倉庫建設などインフラの整備及び拡充と、さらなる収益力向上を目指す。成長促進領域をアジア、中国、米州とし、効率性を高め、さらなる収益拡大を目指す。また、収益改善領域を欧州とし、食品や医薬品等に特化した独自サービスの開発を推進する。(8) 営業組織の再編従来は特定の産業・顧客(自動車や化学品など)が複数部門にまたがり、重複して非効率な営業活動となっていた。そこで、2022年4月に7つの産業別営業組織へ再編し、1営業部門が1つの産業を担当することとした。営業組織は7つの産業別営業部門(モビリティ、ケミカル、食品、電機・電子、機械・設備、メディカル・バイオ、展示会・イベント)からなり、今後は産業別に営業活動が一本化され、営業予算と利益責任も負うことになる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:37 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(6):第6次中期経営計画の定量目標と重点施策はほぼ達成。第7次中期経営計画を始動(2) ■中期経営計画2. 第7次中期経営計画第6次中期経営計画は2022年3月期が最終年度となり、2023年3月期から第7次中期経営計画がスタートする。第7次中期経営計画については日新<9066>内の専門部署で検討され、2038年の創立100周年を見据え、2038年の目指すべき企業像を明確にし、それに向けた施策を第7次中期経営計画にて策定した。また、これまでの物流事業の「規模の経済」から脱却して、「利益/キャッシュフロー」重視へ方向転換し、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指している。第7次中期経営計画は「Nissin Next 7th」(NN7)とし、2022年3月に公表した。「Next」には、 “次の姿”を目指して、“次のSTEP”へ、という同社の強い思いが込められている。また、基本方針は「グローバル・ロジスティクス・プロバイダーとして、新領域事業への挑戦とコア事業の深耕化を図るとともに、ESG経営に取組む。」としている。(1) 3つのポイント第7次中期経営計画では、「コア事業の深耕化」「ESG経営」「新領域事業」の3つのポイントを掲げている。「コア事業の深耕化」は事業ポートフォリオの見直しに該当する。営業体制を産業別の体制へ変更し、3次元(事業別、産業別、地域別)での事業管理体制を整えることで、事業拡大を目指す。「ESG経営」としては、持続可能な社会の実現に向け、責任ある企業活動を推進する。「新領域事業」では、従来とは異なる発想により新たな物流関連事業を創出する。特に、物流業の業際分野で物流業者が関われるテーマやDXに関わるテーマを重点的に模索し、中長期に物流フィールドを拡大することで、より大きなスケールの物流事業者を目指していく。(2) 期間第7次中期経営計画は2023年3月期~2027年3月期の5年間となるが、新たな試みとして5年間を2つの期間にわけ、フェーズ1の2年間で強固な経営基盤を確実に構築し、フェーズ2の3年間で大きな飛躍の実現とより高い企業価値の創造を目指す。a) フェーズ1(2023年3月期~2024年3月期)フェーズ1の2年間では、次世代(Society5.0)に適応する事業基盤・経営基盤の構築を実行する。中長期的な視野で新しい社会に対応していくために、新基幹システムで得たデータを営業施策に有効活用するほか、新領域事業創出のための基盤作りを推進する。一方、ESG経営にも積極的に取り組む方針で、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応などを予定している。このほか、IT商品の進化なども進めていく。b) フェーズ2(2025年4月期~2027年3月期)フェーズ2の3年間では、施策の確実な実行とさらなる成長の実現を目指す。フェーズ1で構築した事業基盤・経営基盤を活用し、企業価値を高める新しい施策を実行していく。具体的には、これまで培ってきたグローバル・ロジスティクス・プロバイダーとしてのサービス提供や産業ごとの構造変化に合わせたサービスの提供に加え、新領域事業として従来とは異なる発想によって生み出す新たな物流関連事業にも挑戦し、企業価値を高めていく方針だ。(3) 数値目標数値目標についてもフェーズごとに設定している。フェーズ1では、2024年3月期に売上高1,900億円、営業利益85億円、経常利益90億円、親会社株主に帰属する当期純利益65億円、ROE8.0%程度を目指す。トップ水準の売上高及び2022年3月期に達成した過去最高益を2024年3月期まで維持していく。アフターコロナを想定すると、この数値目標は過去の業績を一段階上げた高水準と言える。フェーズ2では、2027年3月期に売上高2,750億円、営業利益110億円、経常利益115億円、親会社株主に帰属する当期純利益86億円、ROE9.0%程度を目指す。第6次中期経営計画当初、同社では「2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益100億円」達成を目指していた。今回の第7次中期経営計画の数値目標は売上高が下回っているものの、「収益認識に関する会計基準」等の適用によるもので、当該基準を適用しないと仮定した場合、3,200~3,300億円に相当し、過去最高売上高となる。(4) 投資計画第7次中期経営計画期間中の投資計画は総額250~300億円としている。このうち、「施設関連投資」としては、神奈川埠頭50億円、栃木芳賀倉庫50億円、その他国内・海外施設100~150億円程度を重点的に投資する。また「戦略投資枠」として50億円を計画しており、IT/DX、ESG、M&A、人材開発などに投資する計画だ。なお、M&A投資は、物流機能の補完や顧客層の拡大などを目的とした案件について、今後調査企画及び具体的検討に入る。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:36 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(5):第6次中期経営計画の定量目標と重点施策はほぼ達成。第7次中期経営計画を始動(1) ■中期経営計画日新<9066>は2017年5月に、2022年3月期を最終年度とする第6次中期経営計画を策定した。基本方針として『「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」~世界最高品質の物流企業への更なる進化~』を掲げ、定量目標を設定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響による世界経済環境の変化が著しく、達成が困難なものと判断し、2020年11月に取り下げることとした。しかしながら、結果的に2022年3月期営業利益は、当初目標である7,400百万円に対し9,098百万円と大幅に上回って着地した。第6次中期経営計画の1年目(2018年3月期)は順調に進捗したものの、2年目(2019年3月期)下期より米中摩擦の影響で主に自動車関連貨物の荷動きが弱まり、特に航空貨物の減少が目立ちはじめた。3年目(2020年3月期)に入っても世界経済の減速に回復の動きが見られず、第4四半期には新型コロナウイルスの世界的蔓延が表面化し、物流、旅行ともに収益に大きな影響を受けた。4年目(2021年3月期)もコロナ禍の影響が継続したが、物流事業は2020年7月以降徐々に貨物量の回復がはじまり、下期以降は世界的な海上コンテナ不足による航空需要の拡大などもあり、業績が急回復した。しかしながら旅行事業は、旅客便の減便や各国の入国制限が継続し営業損失が続いた。そして、5年目(2022年3月期)は一転し、物流事業では旺盛な貨物需要の下、同社の専門性とネットワーク力を生かしたスポット案件(代替輸送、緊急輸送)を着実に受注に結びつけ、旅行事業では徹底的な経費削減の努力をした結果、短期間で収益が改善し、過去最高益を達成した。1. 第6次中期経営計画の振り返り(1) 重点3分野の進捗状況同社は第6次中期経営計画で「自動車関連物流」「化学品・危険品物流」「食品物流」を重点3分野として設定し、連結売上においてバランスの取れた売上構成を目指した。なお重点3分野は、それぞれ業界トップの得意先との取引を長年継続しており、安定した市場・顧客構造となっている。a) 自動車関連物流第6次中期経営計画3年目(2020年3月期)は米中摩擦やコロナ禍、半導体や自動車部品の供給不足解消は依然先行きの見えない状況であったが、4年目となる2021年3月期下期以降は米国を中心に日本やアジアでも、自動車関連貨物は航空輸出入ともに一転好調に転じた。この結果、当初計画(2022年3月期に454億円)に対し21.6%増の552億円となった。第6次中期経営計画の実績としては、インドで二輪車用倉庫を拡張したほか、中国で深セン発欧州向け鉄道輸送併用サービスを開始した。また米州では、コロンバス、デトロイト、ナッシュビルの3拠点に自動車部品を対象とした倉庫を開設した。b) 化学品・危険品物流コロナ禍の影響が少ないこともあり、当初計画(2022年3月期に195億円)に対し7.7%増の210億円となった。c) 食品物流コロナ禍の影響が少ないこともあり、当初計画(2022年3月期に120億円)に対し17.5%増の141億円となった。2022年3月期の実績としては、タイ発メキシコ向け清涼飲料の輸出や米国発日本・アジア向けコーヒー飲料の材料などの輸出などが挙げられる。(2) 2022年3月期の取り組み第6次中期経営計画最終年度(2022年3月期)の取り組みは、以下のとおりである。a) EV・FCV関連市場の開拓次世代モビリティ関連の部品取扱倉庫建設用地を栃木県に取得した。b) 化学品・危険品、食品物流の国内外事業強化平和島冷蔵物流センターの貨物集荷強化のほか、横浜地区危険物倉庫開設に向けた準備を進めている。c) 物流施設再編による収益拡大天井クレーンなどの大型重量貨物の荷役設備が整った横浜重量物梱包センターへ重量貨物を集約し、取扱物量が増加した。d) 新基幹システムの軌道化同社は2021年7月に、新基幹システムを稼働した。このシステムは事業ごとの収益を明確にアウトプットできる機能を有していることから、同社の事業ポートフォリオを改めて精査し、より効果的な経営資源の投入を目指していく。e) DXへの積極的な取り組み同社では以前より「物流商品開発室」にてITを駆使した物流商品の開発や顧客へのシステム提案を活発に行っていたが、2021年4月より新たに機能を充実させた「物流DX推進室」を設立した。今後はデジタルと物流の融合を全面に出した物流商品開発や新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいく。また、2021年7月には、オンラインで「見積もり」「発注」「作業進捗」の一元管理ができるデジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」を開設した。これは、オンラインサイトを通じて複雑な国際物流管理を可視化し、シンプルなフォワーディングを目指したサービスとなる。これにより、顧客が同サイトで見積もりを作成し、同社営業スタッフが顧客訪問を行うなど、営業プロセス改革が見込まれる。2021年8月には、同社と東京大学協創プラットフォーム開発(株)、三井倉庫ホールディングス<9302>、(株)TW Linkの4社が、貿易情報連携プラットフォーム「TreadeWaltz®」を運営する(株)トレードワルツに共同出資することを発表した。トレードワルツの貿易プラットフォーム基盤を活用することで、フォワーディングサービスのデジタル化を進め、荷主にわかりやすく、よりスピーディな国際物流ポータルサービスの提供を目指す。f) グループ会社のガバナンス機能強化同社米国子会社を業務プロセス統制の対象に追加した。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:35 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(4):各利益は過去最高益を更新。物流事業は国内外ともに大幅増益、旅行事業も収益改善 ■業績動向1. 2022年3月期の業績概要日新<9066>の2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比23.6%増の192,699百万円、営業利益は同248.4%増の9,098百万円、経常利益は同130.0%増の9,859百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同217.1%増の6,365百万円となった。また期初計画比では、売上高で31.1%増、営業利益で127.5%増、経常利益で119.1%増、親会社株主に帰属する当期純利益で135.7%増と計画を大きく上回り、各利益は過去最高益となった。ちなみに、「収益認識に関する会計基準」等を適用しなかったと仮定した場合、売上高も過去最高水準となっていた。2022年3月期は、第6次中期経営計画最終年度に当たる。自動車関連、化学品・危険品、食品物流の重点3分野に注力し、海上・航空ともに旺盛な貨物需要に対応したほか、スペース不足や港湾混雑のなかでも専門性を生かしたサービスを提供したこと等により、好調な取扱いが継続した。旅行事業においては、厳しい経営環境が続くなかで経費削減施策を進めた結果、営業損失額は大幅に改善した。ロシア・ウクライナ情勢の業績への影響としては、直接的な影響として物流サービスへの影響がある。同社の現地法人であるLLC NISSIN RUSは、ロシアや周辺国(カザフスタンやウズベキスタン)での物流サービスをカバーしており、これまで堅調な経営状況であった。しかしながら、ロシアへの経済制裁(SWIFTの停止)により取引決済ができなくなり、多くの顧客(日系企業)が業務停止となり、同社の現地サービス事業も一時停止となっている。また、シベリア鉄道を利用した物流については、シベリア鉄道は運行しているものの日本海を渡る輸送船の決済ができなくなり、シベリア鉄道を利用した輸送サービスも現在一時停止している。一方、間接的影響としてはロシア上空を飛行できないほか、船の寄港地にも制約があり、航路の変更を余儀なくされている。なお、情報収集しながら顧客や荷主と対策を検討し、臨機応変な物流サービスを提供することで、業績への影響はほとんど出ていないようだ。2. セグメント別概要物流事業では、海上コンテナ不足と米国西海岸の混雑によって2021年3月期第3四半期から急増している航空シフトの需要を着実に捉えたことに加え、需給逼迫のなかでも輸送スペースを確保し取扱いが増加した。旅行事業では、徹底的な経費削減施策効果により収益が改善した。(1) 物流事業BSA(ブロックスペースアグリーメント;事前に航空スペースを予約)による輸送スペース確保や多様な輸送手段(代替ルートを活用)を駆使し、旺盛な貨物需要に対応した。その結果、売上高は前期比25.5%増の188,868百万円、営業利益は同125.8%増の9,372百万円と増収・大幅増益となった。物流事業のうち日本の売上高は同13.7%増の114,170百万円、営業利益は同108.4%増の4,171百万円、海外の売上高は同49.3%増の74,698百万円、営業利益は同142.1%増の5,200百万円と、国内外ともに大幅な増益で着地した。a) 日本航空輸出では自動車関連貨物をはじめ電子部品や化学品、半導体関連貨物等の取扱いが好調に推移し、輸入では食品、園芸関連等が堅調に推移した。海上輸出では化学品が堅調に推移し、輸入では食品や家電製品等の取扱いが底堅く推移した。b) アジア自動車関連貨物の取扱いはアジア全域で好調に推移した。タイでは二輪車の欧米向け海上輸出が収益に貢献したほか、プロキュアメント力の強化により海上、航空ともに輸出物量が増加した。ベトナムでは、中国向け電子部品の航空輸出及び米国向け家電製品の海上輸出が順調に推移した。c) 中国香港では家電製品及び電子部品の航空輸出の好調が続き、海上輸出において本船の運行遅延等が発生するなか、輸送スペースの確保に努め北米向け家電製品をはじめ取扱いが増加した。上海では、航空輸出入貨物の取扱いが堅調に推移した。d) 米州米国では、海上コンテナ不足や港湾混雑による海上輸入貨物の国内代替輸送の継続が大きく収益に貢献した。自動車関連貨物は航空輸送が輸出入ともに好調に推移し、食品関連では航空輸出の取扱いが増加した。なお、2021年10月に、米国テネシー州に自動車関連貨物の新倉庫を開設している。e) 欧州ドイツでは家電製品の倉庫保管・域内配送業務が引き続き堅調であったほか、ベルギーでは自動車関連貨物の堅調な取扱いに加え、食品及び医薬品関連の航空輸出も好調に推移した。また、ポーランドでは倉庫保管、域内配送業務の取扱いが増加した。オーストリアではチャーター機を使った中国からのコロナ検査キットの航空輸入が収益に寄与した。(2) 旅行事業売上高は前期比40.4%減の2,500百万円、営業損失は1,053百万円(前期は2,315百万円の損失)となった。BEP(損益分岐点比率)を下げるために徹底的合理化に努め、人員の削減(日新航空サービス(株)の社員を本社へ吸収)、事務処理業務のデジタル化、オフィスの効率化(地方営業拠点を閉鎖)などコスト削減を実行し、経費削減施策については計画通り進捗した。一方売上面では、国内旅行で若干の取扱い増加が見られたものの、海外業務渡航においては取扱人数の本格的な回復には至らず、減収となった。(3) 不動産事業売上高は前期比6.8%増の1,330百万円、営業利益は同1.5%減の765百万円となった。2021年9月の緊急事態宣言解除後に観光客が増加し駐車場収入が増加した一方、賃貸物件の家賃収入は減少した。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:34 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(3):国際総合物流のパイオニアとして物流全般にかかわる事業を幅広く展開(2) ■日新<9066>の会社概要3. 特長と強み(1) 海外拠点同社グループの海外拠点は24ヶ国・地域、37現地法人(一部合弁会社含む)にわたる。豊富な海外拠点によってきめ細かなグローバル・ロジスティクス・ネットワークが構築され、航空貨物、海上貨物、港湾・倉庫、国内までワンストップで多様な顧客ニーズに対応している。物流事業における海外の子会社・関連会社については、米州地域4社、欧州地域7社、東南アジア・インド地域17社、東アジア9社(2022年3月期末時点)となる。(2) 多様な輸送手段同社は、世界各国・海上・航空すべてに対応しているうえ、港湾・倉庫までワンストップで取扱っているが、このような大手総合物流会社はNIPPON EXPRESSホールディングス<9147>などに限られている。同社は京浜地区(千葉、東京、横浜)及び大阪、神戸の5ヶ所に港湾拠点があり、顧客のニーズに応じてあらゆる輸送手段を提案できる。直近ではこの強みを生かし、海上コンテナ不足と米国西海岸の混雑による航空シフト需要を着実に捉えることができた。(3) 顧客構造同社は業界トップの得意先との取引を長年継続しており、安定した市場・顧客構造となっている。特に重点分野の顧客とは協力パートナーとしてWin-Winの関係を築き、利益貢献している。(4) 経験豊富な人材同社の営業スタッフは、物流の専門知識や国内外での豊富な経験など、高い専門性を有している。これに加え同社では、人材育成カリキュラムなどの育成体制を整えている。一例を挙げると、スキルアップ分野(全社員を対象としたeラーニングの実施や社内外での各種セミナーへの参加)や女性活躍分野(キャリア形成支援研修の実施)、グローバル人材育成分野(若手社員を対象とした海外研修員派遣制度、語学研修の実施)、ノウハウの継承分野(ベテラン社員を社内研修講師として活用)、自己啓発など幅広い。このほかにも、評価制度や自己申告・ローテーションなども実施しており、人材育成に積極的であることが窺える。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:33 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(2):国際総合物流のパイオニアとして物流全般にかかわる事業を幅広く展開(1) ■会社概要日新<9066>は1938年に創業し、優れた海外ネットワークが強みの独立系総合物流企業である。国際総合物流のパイオニアとして海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送、倉庫、引越、通関など物流全般にかかわる事業を幅広く展開している。戦後の高度経済成長期に日本を代表するモノづくり企業の物流パートナーとして国内物流から海外進出まで対応することで、企業成長と発展を実現してきた。強みである海外ネットワークと国際物流を生かし、海外事業展開及び顧客ニーズに合致した新たなビジネスモデルをグループ一体となって創出することで、顧客から信頼され評価される「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」を目指している。なお、同社グループは「認定通関業者(AEO)」の認定を受けているほか、セキュリティー管理や法令順守の体制構築、グリーン経営認証取得の推進など環境経営の強化にも積極的に取り組んでいる。1. 沿革同社の83年の歴史で特筆すべき点は、戦後混乱期と1970年代の一時期を除き、黒字決算を継続していることである。これは創業から続く堅実経営によるものと見ている。同社の歴史は、(1) 企業創業期、(2) 事業拡大期、(3) 国際物流展開期、の3つに大きく分けられる。(1) 企業創業期(1938年~1957年)1938年12月に川崎市にて日新運輸(株)を設立した。創業時は「はしけ※」と「トラック輸送」事業を展開し、横浜界隈で米国進駐軍の物資輸送や重・軽油の輸送などを請け負うことで事業規模が拡大した。その後国内物流事業は順調に拡大し、港湾荷役業も本格的に展開していった。※「はしけ(艀)」とは、港湾内で重い貨物を積んで航行するために作られている平底の船舶のこと。貨物船から荷物をクレーンで小さな船(はしけ)に積み替え、陸揚げし、トラック輸送へ繋げる。(2) 事業拡大期(1958年~1982年)1955年~1973年の高度経済成長期には、自動車、電機、素材などの製造業が日本経済をけん引するようになり、同社でも自動車メーカーや家電メーカーとの取引が開始された。これらの顧客は積極的に海外生産を推進し、海外拠点を拡大したため、同社も海外物流拠点を設立することで顧客のサプライチェーン構築に対応し、海外物流事業を拡大していった。また、1946年頃には石油販売業務を開始し、高度経済成長期には石油業界との取引も始まり、タンクローリー輸送を開始している。このほか、1968年には新しい輸送形態である「国際複合一貫輸送業務」を業界で初めて開始した。(3) 国際物流展開期(1983年~)1990年代は、世界経済の生産拠点が欧米先進国からASEAN(東南アジア)へ移り、同社の顧客を含む国内製造業も工場のASEANシフトが顕著になった。この流れによって同社のアジアでの物流事業も拡大していった。1994年以降は次の進化に向け、海外への事業展開を積極的に推進している。2. 事業概要同社は、国内外にわたる物流事業をはじめとして、旅行事業及び不動産事業を運営している。(1) 物流事業物流事業は、航空貨物輸送、海上貨物輸送、港湾・倉庫、国内物流・構内作業などを行っている。a) 航空貨物輸送世界主要都市向けをカバーしていることに強みがある。同社現地法人や代理店のネットワークを通じて安全・正確・迅速に荷受人のもとまで輸送する。航空各社との協力関係により、スペース提供力及び運賃競争力に優れている。b) 海上貨物輸送NVOCC※サービスをはじめ、大型プラント輸送やISOタンクコンテナ輸送にも豊富な実績を有する「国際複合一貫輸送」のパイオニアである。※Non Vessel Operating Common Carrierの略で、非船舶運航業者のこと。c) 港湾・倉庫港湾輸送は、横浜・大阪・神戸の各港でコンテナターミナル事業を展開する。倉庫は、京浜・関西などの港湾地区を中心に、一般倉庫及び冷蔵倉庫(30数ヶ所)を保有している。d) 国内物流・構内作業トラック、ローリー、JRコンテナ列車、内航船等の豊富な輸送手段により、全国100ヶ所以上の事業所・グループ会社を拠点に物流サービスを提供する。また、顧客の工場・物流センターで、製品の在庫管理、搬出入、梱包・仕分けなどの構内サービスも提供している。(2) 旅行事業企業・団体の業務出張をトータルサポートするサービスや、業務視察旅行・研修旅行・セミナーイベントツアーなど、企業の目的に合わせて旅行プランを提案する。(3) 不動産事業主に不動産賃貸を行っており、京浜地区を中心に、商業ビル、商業用地賃貸、駐車場を展開する。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:32 注目トピックス 日本株 日新 Research Memo(1):2022年3月期の各利益は過去最高を更新。第7次中期経営計画を始動 ■要約1. 会社概要日新<9066>は1938年に創業し、優れた海外ネットワーク網が強みの独立系総合物流企業である。国際総合物流のパイオニアとして海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送、倉庫、引越、通関など物流全般にかかわる事業を幅広く展開している。強みである海外ネットワークと国際物流を生かし、海外事業展開及び顧客ニーズに合致した新たなビジネスモデルをグループ一体となって創出することで、顧客から信頼され評価される「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」を目指している。2. 業績動向2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比23.6%増の192,699百万円、営業利益は同248.4%増の9,098百万円となり、各利益は過去最高を更新した。また期初計画比では、売上高で31.1%増、営業利益で127.5%増となり、計画を大きく上回って着地した。物流事業では、海上コンテナ不足と米国西海岸の混雑によって2021年3月期第3四半期から急増している航空シフトの需要を着実に捉えたことに加え、好調な荷動きが継続し、需給逼迫のなかでも輸送スペースを確保した結果、取扱いが増加した。旅行事業においては、厳しい経営環境が続くなかで経費削減施策を進めた結果、営業損失額は大幅に改善した。2023年3月期の連結業績については、売上高で190,000百万円(前期比1.4%減)、営業利益で8,500百万円(同6.6%減)を見込んでいる。物流事業では旺盛な貨物需要は当面継続すると見込まれるものの、スポット案件の剥落等が予想され減収減益見込み。一方、旅行事業においては、徐々に海外業務渡航の取扱人数は回復に向かうと同社では予想しており、営業利益の黒字化は2024年3月期の見込みとなっている。3. 中期経営計画第6次中期経営計画は2022年3月期が最終年度となり、2023年3月期から第7次中期経営計画「Nissin Next 7th」(NN7)が始動した。第6次中期経営計画の最終年度となる2022年3月期はこれまでから一転し、物流事業では旺盛な貨物需要の下、同社の専門性とネットワーク力を生かしたスポット案件(代替輸送、緊急輸送)を着実に受注に結びつけ、旅行事業では徹底的な経費削減の努力をした結果、短期間で収益が改善し、過去最高益を達成した。重点3分野も全分野で当初計画を超過達成するなど、好調に推移した。第7次中期経営計画では、これまでの物流事業の「規模の経済」から脱却して、「利益/キャッシュフロー」重視へ方向転換し、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指している。フェーズ1(2023年3月期~2024年3月期)の2年間で強固な経営基盤を確実に構築し、フェーズ2(2025年4月期~2027年3月期)の3年間で大きな飛躍の実現とより高い企業価値の創造を目指す。数値目標としては、フェーズ1※では、2024年3月期に売上高1,900億円、営業利益85億円、経常利益90億円、親会社株主に帰属する当期純利益65億円、自己資本利益率(ROE)8.0%程度、フェーズ2では、2027年3月期に売上高2,750億円、営業利益110億円、経常利益115億円、親会社株主に帰属する当期純利益86億円、ROE9.0%程度を目指す。※第7次中期経営計画策定時は、数値目標として2024年3月期に売上高2,140億円、営業利益75億円、経常利益80億円、親会社株主に帰属する当期純利益60億円、ROE7.8%程度としていたが、物流事業では旺盛な貨物需要が当面の間継続が見込まれること、旅行事業でも入国規制の緩和等により海外業務渡航の回復が予想されることから、2022年5月に修正した。■Key Points・2022年3月期の各利益は過去最高益を更新・2023年3月期より第7次中期経営計画「Nissin Next 7th」(NN7)を始動。フェーズ1は事業基盤・経営基盤の構築、フェーズ2で成長を軌道に乗せる計画・将来の成長ドライバーとなるDX推進を強化(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司) <YM> 2022/07/04 15:31 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(10):安定した利益還元を基本方針とし、株主優待制度も導入 ■株主還元とSDGsの取り組み1. 株主還元策クオールホールディングス<3034>の株主還元については、将来の事業展開や経営基盤強化のための内部留保の確保を考慮しつつ、株主への安定した利益還元を継続していくことを基本方針としている。配当額に関して、公約配当性向等の基準は特に設けていない。また、機動的な資本政策の遂行を図るため、自己株式の取得についても必要であれば適宜検討していく方針となっている。こうした基本方針を踏まえて、2023年3月期の1株当たり配当金については、前期比4.0円増配の32.0円(配当性向18.1%)を予定している。業績拡大による内部留保の充実に伴い、普通配当を2.0円増配することに加えて、2022年10月に創業30周年を迎えるにあたり、記念配当2.0円を実施する予定にしている。なお、2024年3月期は記念配当が剥落するものの、配当水準は維持していく意向を示している。また、株主優待制度も導入している。毎年3月末の株主を対象に、100株単元株主の例で見ると、1年未満の保有なら3,000円相当、1年以上の保有なら5,000円相当のカタログギフトを贈呈する。6月10日の終値(1,333円)で、配当金と株主優待を合わせた投資利回りを計算すると、1年未満保有で4.7%、1年以上保有で6.2%となる。2. SDGsの取り組みSDGsの取り組みに関して同社は、グループのサステナビリティに関する活動強化を図るため、取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を2022年5月に設置し、委員長に代表取締役社長が就任した。今後、サステナビリティの動向調査や、サステナビリティに係る経営戦略の立案、重要課題(マテリアリティ)の見直し、進捗状況のモニタリングと達成状況の評価などを進めていく予定にしている。サステナビリティの取り組み事例としては、グループ全体で「店舗美化」と「SDGs推進」を目的とした店舗緑化運動を実施しているほか、日本障がい者サッカー連盟とパートナーシップ契約を締結し、高度な専門知識を持ったスポーツファーマシスト及び、管理栄養士による講習や食事・栄養相談を通じて、障がい者サッカー協会やチームを支援している。また、障がい者雇用の推進を目的に、業界初の特例子会社クオールアシスト(株)を2009年に設立しており、現在、重度障がい者を中心に在宅雇用で50名を超える従業員が活躍している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:30 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(9):CMR派遣は専門性の追求と取引者数の拡大に注力 ■クオールホールディングス<3034>の中長期の成長戦略と進捗状況3. 医療関連事業の成長戦略と進捗状況医療関連事業の成長戦略として、「専門性の深化」と「グループシナジーの最大化」を掲げ、それぞれ売上規模の拡大とともに収益力を高めていく方針となっている。(1) CSO事業CSO事業におけるCMR市場の現状認識として、新薬の主軸が顧客ターゲット(医療施設や医師)の多いプライマリー薬(生活習慣病等)から、顧客ターゲットが限られるスペシャリティ薬(抗がん剤等)にシフトするなかで、製薬企業におけるMR人材の削減が進む一方で、専門性の高いMRやITリテラシーの高いMRについての需要は拡大しており、そうしたなかで専門性の高いCMRの需要については旺盛なことが挙げられる。実際、「2021年度版MR白書」によれば国内のMR人員は2013年度の6.5万人をピークに2020年度は5.3万人まで減少しており、特に2017年以降は毎年2千人以上のペースで減少している。一方、CMRについては2016年度の4,054人をピークに2018年度に3,614人まで減少していたが、その後は増加に転じ2020年度には3,923人となっている。MRに占めるCMRの比率についても2017年度の5.9%から2020年度は7.3%まで上昇している。欧米では10%台の水準となっていることから、国内でもさらにCMR比率が10%台まで上昇する可能性は十分にある。こうした状況を背景に、同社はCMR人員を2022年3月期末の約600名から、2024年3月期には1,000名まで拡大し、業界シェアを現在の約15%から20%超に引き上げていくことを目標としている。このため、専門性の追求と取引社数の更なる開拓に注力していく。同社のCSO事業の強みとして、MRを教育するためのスタッフが20名と業界トップクラスの陣容を誇り、基礎分野から高度な専門分野に至るまで幅広く充実した教育カリキュラムを構築している点が挙げられる。特に、最近はオンコロジー領域、炎症性腸疾患、中枢神経疾患領域のほか新型コロナウイルス感染症等のニーズが高く、こうした専門分野のCMRを育成していくことで事業規模の更なる拡大を図っていく戦略だ。また、CRO事業についても同社が強みを持つ食品分野での受注獲得や、専門性の高い分野の強化を推進していく方針となっている。(2) 医療系人材紹介派遣事業医療系人材紹介派遣事業については、薬剤師、保健師、登録販売者等の医療従事者の派遣サービスの拡大に加えて、薬局の事業承継コンサルティングや法人向けの健康経営に関するコンサルティングなどサービスラインナップの拡充を図っている。今後はM&A等も活用しながら事業領域を拡大し、成長を目指していく方針となっている。(3) 医薬品製造販売事業同社が医薬品製造販売事業に進出を決めた背景には、総合ヘルスケアカンパニー構想がある。国内トップクラスの調剤薬局チェーンである同社は、一方で、医薬品の営業担当者であるCMRの派遣(CSO事業)や、医薬品の研究開発をサポートするCRO事業等も行っている。医薬品製造販売事業に進出することで研究開発から製造、販売、調剤を経て患者に至る、ヘルスケア分野において切れ目のないサービスを提供することが可能となる。グループシナジーとしては前述のとおり、グループの調剤薬局で藤永製品の取扱店舗数を拡げていく。また、新たなGE医薬品の開発を計画しており、工場への設備投資やM&A等も進めながら事業規模を拡大し、次のステップとして大手製薬企業からの受託製造等にも展開していく方針となっている。後発医薬品に関しては2021年に大手メーカーの製造工程における不正問題が明らかとなり、品質管理体制の強化が一段と求められるなか、同社においては製造工程の可視化と作業者への支援を行う生産実行システムの更新を進めていく予定にしている。品質管理体制を盤石にしたうえで、事業拡大を進めていく方針だ。中期目標としては新規事業の育成やM&A等も視野に入れながら、売上高で300億円を目指しており今後の動向が注目される。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:29 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(8):保険薬局事業は店舗数の拡大等に取り組むことで持続的な成長を目指す ■クオールホールディングス<3034>の中長期の成長戦略と進捗状況2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況保険薬局事業では、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」を基本戦略として成長を目指していく。(1) 戦略的出店による規模の拡大店舗数については自力出店で年間10~20店舗を行い、M&Aにより年間30~70店舗を獲得していくことで、1,000店舗を当面の目標としている。当初は2023年3月期の到達を目標としていたが、コロナ禍の影響でM&Aのペースが鈍ったため、今のペースでいけば2025年3月期頃に到達するものと予想される(大型M&Aが実現すれば前倒しで達成する可能性もある)。出店ターゲットとするエリアは、3大都市圏等人口の多いエリアが中心で、ドミナント出店により効率的な店舗数拡大を目指している。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携を取りやすいところを対象に進めていく方針だ。店舗形態としては、同社が強みとするマンツーマン薬局での出店を継続し、M&Aの対象についても同様となる。異業種連携による新業態薬局の店舗数については、2022年3月末時点で44店舗となっている。内訳は、ローソン協業店が36店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗、無印良品内店舗が1店舗、駅ナカが2店舗である。このうち、主力のローソン協業店については認知度の向上によって、収益力も向上しており、今後も在宅調剤事業を拡大するなかでの差別化戦略として注力していくことにしている。具体的には、訪問服薬指導と合わせて一般用医薬品やその他の商品を顧客の注文に応じて配送する移動販売サービスを有料老人ホーム等の高齢者施設に向けて開始しており、同サービスを拡大していく。利用客にとっては医薬品と合わせて、日用品等もまとめて購入できることから利便性が高く、競合他社との差別化要因となる。また、無印良品店舗内での「まちの保健室」での出店は、地域密着型店舗として特色を出した店舗となっており、2022年4月に2店舗目を出店するなど、今後もニーズを見ながら増やしていく考えだ。調剤薬局業界では、2020年から解禁されたオンライン服薬指導や2021年8月より導入された機能別認定制度に加えて、2023年からは電子処方箋の運用も開始される予定となっている。今後、薬局運営においてもDX化が一層求められる一方、こうした体制を構築していくためには一定規模以上の資金力が必要となり、大手企業による寡占化が進むと見られている根拠の1つとなっている。また、調剤薬局は全国に約6.0万店舗あり、市場規模としては2020年度で約7.5兆円の規模となっているが、2015年度から2020年度までの年平均成長率を見ると、薬局数が0.9%増と若干ながらも増え続けているのに対して、調剤医療費については同0.9%減と微減傾向となっている。市場が成熟化しているなかで、大手調剤薬局は自力出店やM&Aによって店舗数を拡大することで売上成長を続けている。同社もそのうちの1社で、2015年度からの5年平均成長率を見ると、調剤売上高で6.4%、店舗数で8.7%と業界全体を大きく上回っている。現状、調剤薬局市場で上位10社の売上合計が1.4兆円程度であり、市場シェアに換算すると約19%の水準にとどまっている。ドラッグストア業界が業界再編により上位10社で70%以上のシェアを占めていることを考えれば、調剤薬局業界は今後もより一層寡占化が進んでいく可能性が高く、同社が自力出店だけでなくM&Aを活用しながら出店を拡大していく戦略は理に適っており、中期的に店舗数拡大によって持続的な成長を実現していくことは可能と弊社では考えている。なお、M&Aの基準について同社は売上規模やシナジー効果の有無等、社内で厳格な基準を定めて可否を判断するようにしている。(2) 薬局の価値創出同社では「薬局の価値創出」に向けた取り組みとして、国民から求められる質の高い薬局づくりを展開してきた。前述の通り「健康サポート薬局」については2022年3月時点で159店舗が認定され、2021年8月から制度が導入された「地域連携薬局」は146店舗、「専門医療機関連携薬局」は9店舗が認定されており、今後も順次認定に向けた申請を行っていく予定にしている。また、同社は2022年度も重点施策として在宅調剤事業の強化とDXの推進に取り組んでいく方針となっている。厚生労働省の資料によれば、現在の在宅調剤の市場規模は約3,100億円、利用者数で29万人と推計されている。調剤市場全体に占める比率は4%強だが、団塊の世代が75歳を迎える2025年以降は「地域包括ケアシステム」により在宅での医療・介護サービスの一段の需要拡大が見込まれている。こうした環境下において、在宅調剤の市場は今後高成長が続くものと予想される。現在の在宅調剤の9割弱は特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム等の施設となっているが、在宅調剤加算の条件として個人宅向けの訪問服薬指導も求められており、今後は施設向けだけでなく個人宅向けにも注力すべく、2021年4月に在宅推進本部を立ち上げて各種取り組みを推進している。具体的には、在宅調剤における差別化戦略として最新の調剤機器の導入・活用、誤薬防止対策としてのバーコード管理の導入、感染対策支援、在宅調剤特化型店舗、栄養管理士による栄養サポート等、安全性・利便性の高いサポート等の取り組みを推進している。また、前述した移動販売サービスもその1つとなる。在宅調剤の売上目標としては2024年3月期に100億円を掲げているが、中期的に高成長が期待できる市場として注目される。一方、もう1つの重点施策として取り組んでいる「DXの推進」では、薬局内でのIT活用による業務効率化だけでなく、利用客の待ち時間短縮や利便性向上につながる取り組み等も推進している。オンライン服薬指導に関しては、2020年9月に全店で対応できるようにする等、業界のなかでも積極的に導入を推進してきた。また、新たな取り組みとして2022年2月と3月にドローンを使って医薬品の配送を行う実証実験を広島県江田島市、愛媛県今治市でそれぞれ実施した。実証実験では技術的な問題もなくスムーズに配送ができたようで、将来的には離島等、通常の配送が困難な地域への配送手段として活用していく可能性がある。さらに、2022年4月よりLINEの公式アカウントを使った処方箋予約受付サービスも開始した。ユーザーは公式アカウントから店舗を指定して処方箋を送信すれば、店舗から薬の準備が完了次第、連絡が届く仕組みとなっている。ユーザーにとっては薬を受け取るための待ち時間が短縮できるほか、LINEを使った服薬サポート、お薬手帳の確認なども可能となり、利便性の向上につながる。同業他社もすでに取り組んでいることから、目新しさはないものの薬局の価値向上につながる取り組みとして評価される。また、同社は300万人以上のクオールカード会員数を保有しており、これら会員基盤のビッグデータを活用してQOL向上に貢献する新たなサービスの創出にも取り組んでおり、差別化戦略によりシェアの更なる拡大を目指していく考えだ。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:28 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(7):売上高3,000億円、営業利益250億円を中期的に目指す ■中長期の成長戦略と進捗状況1. 中期成長戦略の全体像クオールホールディングス<3034>が掲げる中期目標とそれに向けた成長戦略は従来から一貫しており変更はない。中期的な業績目標としては、売上高3,000億円、営業利益250億円を掲げている。事業セグメント別では、保険薬局事業の売上高が2022年3月期比で1.6倍増となる2,500億円、医療関連事業で同3.7倍増となる500億円と従来目標を継続している。一方、営業利益に関しては従来、それぞれ125億円を目標としていたのに対して、今回は保険薬局事業で150億円、医療関連事業で100億円とより現実的な目標に修正した。保険薬局事業については2022年3月期比で1.3倍、医療関連事業については同8.4倍となる。営業利益に関しては持株会社や共通費用分を考慮していないため、単純比較はできないが保険薬局事業については目標達成が射程圏内に入ってきていると見られる。一方、医療関連事業については売上高、営業利益とも目標との乖離が大きく、各事業において事業のさらなる拡大に向けた成長戦略が必要となってくる。なお、同事業の売上高500億円の内訳としてはCSO及びCRO事業と医療系人材紹介派遣事業を合わせて200億円、医薬品製造販売事業等で300億円を見込んでいる。保険薬局事業で着実な成長を図りながら、医療関連事業の規模拡大と収益性を高めていくことで、将来的にバランスの取れた収益ポートフォリオの構築を目指していく戦略だ。成長戦略として、保険薬局事業については1)戦略的出店による規模の拡大と、2)薬局の価値創出、の2軸で臨む方針で、2022年度は重点施策として引き続き「在宅調剤の強化」「DXの推進」をテーマに掲げている。一方、医療関連事業については、営業利益率20%を目標にしており、「専門性の深化」と「グループシナジーの最大化」に取り組むことで高成長を実現していく戦略となっている。以下ではそれぞれの事業セグメントの成長戦略と進捗状況について述べる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:27 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(6):CMR派遣は需要回復、医療系人材紹介派遣は2022年春以降に需要回復へ ■クオールホールディングス<3034>の業績の動向3. 医療関連事業の動向医療関連事業のうち、主力のCSO事業は前下期からCMR派遣の需要が減少した影響が上期まで続いたが、下期以降は新型コロナウイルス治療薬関連を中心に需要が回復基調となり、通期では若干の増収増益となった。期末時点でCMRは約600人と過去最高水準となっており、需要も引き続き旺盛なことから2023年3月期はさらなる成長が期待できる状況となっている。一方、医療系人材紹介派遣事業では、コロナ禍が長期化するなか薬剤師の派遣を絞り込む動きが業界全体で続いたことにより減収減益となった。ただ、足元は薬剤師派遣の需要も回復傾向となっている。プラス面では、健康経営の関心の高まりから企業の産業医・産業保健師の派遣需要が回復し、売上高が増加した。また、健康有料法人の認定取得をサポートするサービスやストレスチェック及びヘルスケアセミナーといったコンテンツ提供サービス等を開始したことにより、薬局や医療機関、ドラッグストア、企業、学校などの取引先数も拡大した。アポプラスキャリアについても2022年3月に、「健康経営優良法人2022」を取得している。医薬品製造販売事業では、自社開発したGE医薬品のグループ内薬局での導入を進めており、先発品からの切り替え率で前第4四半期の約6割から約8割まで浸透した製品も出るなど、グループシナジーの効果は着実に出ている。一方で、原薬の調達がコロナ禍の影響もあって滞ったことや、物流費の上昇などもあり業績は減収減益となった。2023年3月期業績は保険薬局事業、医療関連事業ともに2ケタ増益となる見通し4. 2023年3月期の業績見通し2023年3月期の業績は売上高で前期比8.3%増の180,000百万円、営業利益で同21.8%増の12,000百万円、経常利益で同18.9%増の12,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同18.4%増の6,500百万円と連続で過去最高を更新する見通しだ。コロナ禍の影響もほぼ一巡し、保険薬局事業、医療関連事業ともに増収増益となる見通しだ。設備投資については前期比32.3%減の1,174百万円を計画している。今期は比較的小規模の店舗を多く出店することもあり、設備投資額も減少する見込みだ。一方で、減価償却費は同22.5%増の1,916百万円となるほか、M&Aを積極的に進めることから、のれん償却額についても同8.7%増の3,444百万円と増加を見込んでいる。これら償却費の増加を増収効果で吸収する格好となる。(1) 保険薬局事業2023年3月期の業績前提となる新規出店については、自力出店で10〜20店舗程度、M&Aで30~70店舗を見込んでいる。自力出店のうち5店舗は異業種連携や駅ナカ店舗で計画している。M&Aについては積極的に進めていく予定だ。5月17日までの実績として自力出店で5店舗、M&Aで1店舗を獲得し、合計店舗数は前期末比横ばいの834店舗となっている。自力出店のうち1店舗は良品計画との連携による「無印良品広島アルパーク店」内の「まちの保健室」への出店で、2店舗目の出店となる。また、処方箋応需枚数については既存店で前期比5%強の増加を想定し、処方箋単価については薬剤料が薬価引き下げの影響と長期処方の減少により低下傾向が続くと見ている一方で、調剤技術料については上昇する見込みで、合計では若干の低下を想定している。このため既存店の調剤報酬売上については前期比5%程度の増収となり、これに新規出店・M&A効果と、EC販売やコンビニエンスストアの物販、並びにOTC医薬品の売上増を見込んでいる。なお、在宅調剤売上については大手介護施設向けが伸びるほか、個人宅向けの取り組みも強化していく。2022年度の診療報酬改定による調剤技術料への影響については、地域支援体制加算で在宅調剤やオンライン服薬指導など、かかりつけ薬局としての機能強化に取り組めばプラス要因になると見られる。一方、調剤基本料や後発医薬品加算体制については改正の影響は軽微だったようだ。営業利益の増益要因としては、薬剤料収入の増加による売上総利益の増加に加えて、技術料単価の上昇と処方箋応需枚数の増加による技術料収入の拡大が寄与することになる。なお、2022年春の新卒薬剤師の採用数については、前年並みの200名前後だったと見られ、2023年春も同程度の採用を予定している。(2) 医療関連事業2023年3月期の医療関連事業は2ケタ増収増益となる見通し。CSO事業がCMRの需要回復により増収増益となるほか、前期に落ち込んだ医療系人材紹介派遣事業についても薬剤師の派遣需要が回復してきたことで増収増益に転じる見通しとなっている。CMRについては前期末の約600人から2023年3月期末は700~800人まで増員を目指し、採用・育成を積極的に進めていくことにしている。特に、需要の強いスペシャリティ薬等の専門領域のMRやITリテラシーの高いMRの採用・育成を積極化していく方針だ。一方、医薬品製造販売事業については前期並みの収益水準を想定している。薬価改定による販売価格下落の影響を新規案件の取り込みで相殺する格好となる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:26 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(5):調剤薬局は処方箋応需枚数の回復と技術料の上昇で薬剤料単価の低下をカバー ■クオールホールディングス<3034>の業績の動向2. 保険薬局事業の動向(1) 調剤売上高の状況保険薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やEC等の商品売上高で構成されている。このうち、2022年3月期の調剤売上高は前期比4.0%増の142,311百万円となった。出店期・タイプ別内訳を見ると、自力出店店舗のうち、既存店については前期比7.8%増、金額ベースで3,181百万円の増収となった。また、M&A等で取得した店舗については、既存店と新店を分けていないためわかりにくい面もあるが、前期比3.1%増、金額ベースで2,964百万円の増収となっている。調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、処方箋応需枚数は前期比6.0%増の14,176千枚、処方箋単価は同1.9%減の10,039円となった。これらも出店期やM&A等の要因による影響を受けているため、以下ではそれぞれについてもう少し詳細に見る。処方箋応需枚数の実態に近いと考えられる既存店の増減率は前期比9.5%増となった。2021年3月期にコロナ禍による受診控えや長期処方の影響で大きく落ち込んだ反動によるところが大きく、おおむね想定の範囲内だったと見られる。2022年3月期もコロナ禍が続いたが、病院や薬局での感染防止対策が進んだことで、受診控えなどの動きは限定的なものにとどまった。全店ベースの月次動向を見ても処方箋応需枚数についてはおおむね前年同月を上回った水準で推移した。一方、既存店の処方箋単価は前期比1.6%の低下となった。薬剤料と調剤技術料に分けると、薬剤料は薬価引き下げや長期処方が減少傾向となった影響で数%低下したと見られる。一方、店舗の付加価値分に相当する調剤技術料に関してはGE医薬品の取扱いや在宅調剤の取り組みを推進したこと等により前期から上昇した。GE医薬品の取扱い比率(数量ベース)については、グループ全体で2021年3月時点の85.9%から2022年3月時点では84.0%と若干低下したものの、厚生労働省が目指しているGE比率8割の水準は超過している。また、最高点数となる28点(取扱比率85%以上の店舗)を取得した店舗の構成比は、2021年3月の64.7%から、2022年3月は69.6%に上昇しており、技術料単価の上昇要因の1つとなっている。なお、数量ベースでの取扱比率が低下した要因としては、2021年夏以降、複数の後発医薬品メーカーに業務停止命令が下され、供給不足が続いていることが要因となっており、今なおその状況が続いている。業績面への直接的な影響は無かったものの、供給不足になった医薬品の代替品を調達する必要が生じるなど生産性の面で少なからず影響が出たものと考えられる。そのほか、調剤基本料や地域支援体制加算についても、それぞれ最高点数の取得店舗比率が上昇しており、技術料単価の上昇に寄与した。特に地域支援体制加算については、地域のかかりつけ薬局としての機能を強化することで取得できるもので、同社においても在宅調剤の取り組みを推進したことで取得店舗数が増加している。在宅調剤売上に関しては2021年3月期実績の約30億円から約50億円と順調に増加した。なお、2021年8月から新たに薬局の機能別認定制度が導入された。機能別認定制度とは、薬局を機能別に「地域連携薬局」※1及び「専門医療機関連携薬局」※2の2分類とし、それぞれ一定要件を満たした店舗を都道府県知事が認証する制度となる。店舗によっては「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の両方で認証取得することも可能で、逆にいずれの要件も満たさない場合は、認定外薬局となる。超高齢社会の到来に向けて課題となっている在宅医療への対応として、医療や介護を含めた「地域包括ケアシステム」構想を確立していくための施策で、患者自身が適した薬局を選択できるようにすることを狙いとしたものだ。※1 入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局。※2 がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局。同社はもともとマンツーマン薬局を主力とし、地域のかかりつけ薬局としての取り組みを推進してきたことから、認定取得を順次進めており、2022年3月末時点では「地域連携薬局」で146店舗、「専門医療機関連携薬局」で9店舗が認定取得店舗となった。また、「地域連携薬局」と同様のコンセプトで2016年度よりスタートしている「健康サポート薬局」は前期末比5店舗増の159店舗となっている。同制度の導入によって現状直接的な収益への影響はないが、新型コロナウイルス治療薬の取扱ができる店舗としてこれら認定店舗が指定されたこともあり、2年後の診療報酬改定では調剤技術料の算定にも影響する可能性があると弊社では見ている。このため同社では今後も認定取得を推進し、将来的にはすべての薬局で「地域連携薬局」あるいは「専門医療機関連携薬局」の認定を受ける計画となっている。(2) 出退店とM&Aの状況2022年3月期末の店舗数は834店舗となり、前期末比で23店舗の増加となった。2021年3月期が6店舗の純増だったので、直近2期間はやや増加ペースが緩やかだったと言える。これはコロナ禍の状況が続くなかで、M&A交渉が長引いたことに加えて、2022年度の診療報酬改定を控えて案件の精査を慎重に進めたことが要因となっている。新規出店の内訳を見ると、15店舗がオーソドックスな自社出店(マンツーマン型)、15店舗がM&Aによる取得で、1店舗が病院内売店の出店となっている。また、自社出店のうち1店舗は良品計画<7453>の「無印良品 直江津店」にオープンした「まちの保健室」において協業パートナーとして参画した店舗となる。「まちの保健室」は地域の生活者の“健やかな暮らし”に貢献するために、定期的な健康をテーマとしたイベントの開催や、健康維持及び疾病予防などのための商品を販売する場となっており、医薬品や一般用医薬品を同社店舗で販売している。地域密着型の新たな店舗形態として注目される。一方、退店は8店舗となり、うち2店舗はローソンとの連携店舗となっている。2021年3月期は28店舗の退店となっており、退店数については減少に転じている。(3) 利益率改善要因保険薬局事業の営業利益率は前期の6.5%から7.7%に上昇した。利益率の改善要因は、処方箋応需枚数の回復と調剤技術料単価の上昇による利益増効果と、生産性向上による効果となっている。同社はここ数年、店舗の生産性を高めるため各種自動化機器の導入を進めてきたことで店舗当たりの薬剤師数の最適化が進み、地方店舗では派遣薬剤師が不要となるなどで人件費率が低下した。例えば、従来は手作業で行っていた薬剤のピッキングや調合作業を自動化機器の導入によって省力化している。2021年3月期以降、薬剤師数(正社員)は微増ペースが続いている一方で、臨時雇用者数の減少が続いているが、この大半は派遣薬剤師の減少によるものと弊社では見ている。なお、薬剤師が1日に対応できる患者数の上限が40人と決められていることや、処方箋応需枚数が回復してきたこともあり、店舗当たり薬剤師数については現状からさらに引き下げることは難しいようで、今後は現状を維持していくことになりそうだ。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:25 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(4):2022年3月期は保険薬局事業の回復により過去最高業績を更新 ■業績の動向1. 2022年3月期の業績概要クオールホールディングス<3034>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比2.7%増の166,199百万円、営業利益で同33.8%増の9,855百万円、経常利益で同36.4%増の10,094百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同63.1%増の5,489百万円と2期ぶりに増収増益に転じた。売上高はコロナ禍の影響が長引いたこともあり会社計画には若干届かなかったものの、営業利益、経常利益ともにほぼ計画通りの着地となり、売上高に関しては2期ぶり、各利益は4期ぶりに過去最高を更新した。医療関連事業が減収減益となったが、保険薬局事業の収益増でカバーした格好だ。販管費が前期比3.1%減少したが、これは賃料の減少と人員の最適配置に取り組んだことで残業代が減少したことが主因となっている。事業セグメント別の業績を見ると、保険薬局事業は売上高で前期比2.9%増の153,164百万円、営業利益は同23.5%増の11,865百万円となった。売上高は新規出店・M&Aによる店舗数の増加に加えて、既存店舗における処方箋応需枚数の増加により、処方箋単価の下落を吸収したことが増収要因となった。また、利益面では増収効果に加えて、GE医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算の取り組みを推進したことで処方箋1枚当たりの技術料単価が上昇したこと、自動化機器の活用等で派遣薬剤師のコストを削減できたことなども増益要因となった。一方、医療関連事業は売上高で前期比2.5%減の13,471百万円、営業利益で同19.4%減の1,190百万円となった。CSO事業については下期に需要が回復し若干の増収増益となったものの、コロナ禍の影響で薬剤師派遣の需要が低迷したことにより医療系人材紹介派遣事業が減収減益となったほか、医薬品製造販売事業もコロナ禍で原薬の調達が滞り、物流コスト上昇の影響を受けたこともあって減収減益となった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:24 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(3):CMR派遣を中核として医療系人材紹介派遣事業を展開 ■クオールホールディングス<3034>の会社概要3. 医療関連事業医療関連事業には、主にアポプラスステーションで展開するCSO事業(CMR派遣)やCRO※事業(治験支援サービス)、アポプラスキャリアで展開する医療系人材(薬剤師、登録販売者、保健師、看護師等)の紹介派遣事業、2019年8月にグループ化した藤永製薬による医薬品製造販売事業等が含まれる。売上構成比はCSO/CRO事業が約6割、医療系人材紹介派遣事業と医薬品製造販売事業がそれぞれ約2割となっている。※CROとはContract Research Organization(医薬品開発業務受託機関)の略で、臨床試験等の支援業務等を指す。(1) CSO事業及びCRO事業CSO事業とは、MRを採用・育成し、契約先の製薬企業に対して派遣する事業となる。MRとは、販売する薬についての知識や情報を医師や薬剤師等に提供する製薬企業の営業担当者を指す。ここ数年、製薬企業は新薬の開発ターゲットが顧客ターゲット(医療施設や医師)の多いプライマリー薬(生活習慣病治療薬等)から、顧客ターゲットが限定されるスペシャリティ薬(抗がん剤等)にシフトしていることもあり、自社で抱えるMR人材を削減しCMRに切り替える動きが顕著となっている。こうしたなか、同社は採用力と教育力を強みにCMR人材の増員を進めており、2022年3月期末時点でCMRの人員数が約600名と業界シェアで15%程度、取引先企業数で50~60社と業界トップの実績となっている。MR認定センター「2021年版MR白書」によれば、2021年3月末のCMR数は3,923人(前年同月比6名増)、CMRを活用している企業数は138社となっている。一方、CRO事業では医療用医薬品、OTC薬品、食品、ヘルスケアの各領域において、治験・臨床研究に関して企画からパブリケーションまでトータルソリューションを提供している。同社は食品分野での治験に強みを持ち、医薬品分野では皮膚科、眼科領域で実績がある。(2) 医療系人材紹介派遣事業医療系人材紹介派遣事業では、薬剤師や保健師、登録販売者等の紹介派遣を行っているが、なかでも薬剤師の紹介派遣が主になっている。薬剤師の派遣者数ランキングでは業界トップ10に入っており、また、保健師についても同様にトップ3に入る実績を持つ。そのほかアポプラスキャリアでは、薬局の事業承継・経営支援サービスや企業向けに健康経営コンサルティングサービスなども提供している。(3) 医薬品製造販売事業藤永製薬は1941年設立(創業は1924年2月)の医薬品メーカーで、精神科・皮膚科を主な事業領域としている。フェノバールやヒダントール(いずれも先発薬)、炭酸リチウム「フジナガ」(ジェネリック薬)等を製造している。年間売上規模はグループ入りする前は18億円程度だったが、グループ内調剤薬局への販売拡充や製造設備の増強を進めることで独自のポジションを確立し、事業拡大を図っていく方針となっている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:23 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(2):保険薬局事業と医療関連事業を両軸に展開 ■会社概要1. 沿革クオールホールディングス<3034>は1992年、現取締役会長の中村勝(なかむらまさる)氏により設立された。1993年に日本橋兜町に調剤薬局第1号店を開設以来、自社出店に加えてM&Aを積極的に活用して調剤薬局店舗網の拡大を進めてきた。その傍ら、関連事業・周辺事業への進出も図り、2003年にはフェーズオン(株)を設立して治験関連事業に進出したほか、2008年にはクオールメディス(株)を設立し労働者紹介・派遣事業を開始した。その後、同社は保険薬局事業とBPO事業(現、医療関連事業)の2つの事業セグメントに事業を整理し、経営の効率化と業容の拡大を図り、2018年10月に持株会社体制へと移行した。同社本体は純粋持株会社としてクオールホールディングス(株)に社名を変更し、コーポレート・ガバナンスの充実やグループの中長期成長戦略の策定、グループ全体の統率等に取り組んでいる。保険薬局事業はクオール(株)やM&Aでグループ化した企業等で展開しており、医療関連事業は、アポプラスステーション(株)でCMR派遣を中心としたCSO事業を、2019年8月に子会社化した藤永製薬で医薬品製造販売事業をそれぞれ展開している。また、2020年2月にはアポプラスステーションで展開していた薬剤師等の医療系人材紹介派遣事業の成長を促進するため、アポプラスキャリア(株)を設立し事業移管している。同社が、保険薬局事業と医療関連事業の2軸で事業展開を進めているのは、収益の安定性を高めながら事業成長を図ることが狙いとなっている。保険薬局事業については安定して収益を獲得できる事業ではあるものの、医療行政の方針(2年に1度の診療報酬改定等)によって収益変動リスクがつきまとう。改定年度では、収益面でマイナス要因となることが多く、こうしたマイナス分を医療関連事業でカバーすることで全体の収益を安定して伸ばしていく戦略となっている。事業セグメント別の収益構成比を見ると、保険薬局事業が売上高の91.9%、営業利益の90.9%を占める主力事業となっている(2022年3月期実績)。『マンツーマン薬局』と異業種連携による『新業態薬局』を展開、M&Aも活用しながら店舗数を拡大2. 保険薬局事業(1) 事業規模と業界内でのポジショニング保険薬局事業セグメントの主な事業内容は調剤薬局の運営となり、2022年3月期末の店舗数で見ると、総店舗数834店舗のうち約97%に当たる812店舗を調剤薬局で占めており、残り22店舗は病院内売店の運営となる。また、セグメント売上高のうち約93%は処方箋売上高(いわゆる調剤売上高)が占めており、残りは薬局やコンビニ、病院内店舗での商品販売や、クオール公式通販サイト内での健康食品、衛生用品等の販売収入となる。調剤薬局業界における同社のポジショニングについて見ると、店舗数では上場している調剤専門チェーンのなかでアインホールディングス<9627>(2022年4月末で1,099店舗)に次ぐ2番手、売上高についてはアインホールディングス、日本調剤<3341>に次ぐ3番手となっている。日本調剤は店舗数で697店舗と3番手だが、売上規模の大きい門前薬局での展開が多いことから、売上高では同社を上回っている。(2) 店舗戦略同社の店舗戦略の特徴の1つとして、タイプの大きく異なる2つの業態で事業を展開していることが挙げられる。1つは『マンツーマン薬局』であり、もう1つはコンビニ大手であるローソン<2651>やビックカメラ<3048>等異業種との連携による『新業態薬局』となる。マンツーマン薬局とは、通常のクオール店舗を対象とした店舗展開の基本スタンスを表象するコンセプトであり、事業モデルにおける“コアビジネス”でもある。そのポイントは処方元医療機関とクオール薬局との深い連携関係にある。“マンツーマン”という言葉は医療機関との深い連携関係を構築するために使用されていると弊社では理解している。マンツーマン(1対1)という言葉からは、1つのクオール薬局は1つの処方元医療機関とだけ連携を深めるとイメージしがちだが、実際には、1つの薬局は複数の医療機関と深い連携関係を構築していることが多いようだ。マンツーマン薬局では医療機関との連携を生かして効率的でローコストのオペレーションを実現し、その果実を患者のためのサービス向上に資することを目指している。具体的には、マンツーマン関係にある処方元医療機関の診療科目や地域性等に応じて店舗設計や機能を変化させた店づくりを追求している。その原資は、マンツーマン経営の利点である医薬品在庫の効率化をはじめとする店舗の低コスト構造から生み出される。同社はマンツーマン薬局のコンセプトのもと、患者にとって利用価値の高い、患者から選ばれる薬局づくりを店舗戦略の中核に位置付けている。また、医療機関との連携を本質とするマンツーマン薬局のコンセプトは、国が掲げる『患者のための薬局ビジョン』に沿ったものと言え、成長戦略においても重要なポイントとなっている。また、2021年8月から導入された認定薬局制度(詳細は後述)においても強みになると弊社では見ている。もう1つの業態である、異業種との連携による新業態薬局の展開は、2009年6月の薬事法改正により、コンビニやドラッグストア、スーパー等の他業種店舗が登録業者として、一般用医薬品(いわゆる大衆薬)を販売できるようになったことが背景にある。これを機にドラッグストア等で調剤薬局事業に参入する流れができ、それを迎え撃つ施策として同社は既述の2社との事業連携に踏み切り、その取り組みを推進している。事業連携を通じた店舗が“新業態”とされるのは、マンツーマン薬局との対比において、ターゲット顧客層が異なるためだ。マンツーマン薬局では顧客層がある程度絞り込めるため、医薬品在庫等もそれを念頭において効率化されたものとなっている。一方、新業態薬局は人通りの多い立地で不特定多数の顧客をターゲットとする、いわゆる面対応型薬局となる。このため、店舗の在庫管理等の点でマンツーマン薬局よりも負担が増えるが、より多くの来店客数(すなわち処方箋応需枚数)を期待できることにもなる。マンツーマン薬局をコアモデルと位置付けつつ、新業態でも展開することで顧客層の拡大を図るというのが同社の狙いとなっている。2022年3月期末の新業態店舗数はローソンとのコラボ店が36店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗となっており、そのほか駅ナカ店舗が2店舗ある。なお、2022年3月期末の地域別出店数を見ると、関東が338店舗(構成比40.5%)と最も多くなっており、次いで関西が133店舗(同15.9%)、甲信越が110店舗(同13.2%)となっている。東京を創業地として店舗展開してきたことから関東圏が多いが、2017年3月期末からの増加数で見ると、関西が40店舗と最も多く、次いで東海・北陸が25店舗、関東が24店舗となっており、ここ数年は関東以外の主要都市部での自力出店やM&Aにも注力していることがうかがえる。注力エリアは人口が密集する東名阪エリアとなる。店舗数と地域別人口構成比率との比較で見ると、関東、甲信越は上回っているものの、東海・北陸エリアについては下回っており、特に愛知県を中心とした東海エリアの開拓が今後の課題と言える。(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:22 注目トピックス 日本株 クオールHD Research Memo(1):主力の保険薬局事業を中心に2023年3月期も過去最高業績の更新が続く ■要約クオールホールディングス<3034>は大手調剤薬局チェーンの1社で、調剤薬局店舗数で第2位、売上高で第3位(上場企業ベース)の位置にある。マンツーマン薬局と異業種連携による新業態薬局での店舗展開に特徴がある。調剤以外の分野では、CSO※事業に加えて薬剤師等の医療系人材紹介派遣事業、医薬品製造販売事業を展開している。※CSOとはContract Sales Organization(医薬品販売業務受託機関)の略で、CMR(契約MR(Medical Representative、医薬情報担当者))の派遣業務となる。1. 2022年3月期業績は過去最高益を4期ぶりに更新2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比2.7%増の166,199百万円、営業利益で同33.8%増の9,855百万円と増収増益に転じ、売上高は2期ぶり、営業利益は4期ぶりに過去最高を更新した。医療関連事業は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響もあって減収減益となったものの、主力の保険薬局事業が処方箋応需枚数の回復に加えて、在宅調剤の強化並びに後発医薬品(以下、GE医薬品)加算率の推進等による技術料収入の増加、薬剤師の最適化に取り組んだことによる生産性向上等により、売上高で前期比2.9%増、営業利益で同23.5%増と回復したことが主因だ。なお、期末の調剤薬局数は前期末比23店舗増の834店舗となった。2. 2023年3月期も2ケタ増益が続く見通し2023年3月期の業績は売上高で前期比8.3%増の180,000百万円、営業利益で同21.8%増の12,000百万円と増収増益が続く見通しだ。保険薬局事業は既存店の処方箋応需枚数の回復や技術料単価の上昇、並びに新規出店・M&A効果により薬価引き下げ等のマイナス影響を吸収し、1ケタ増収2ケタ増益を見込む。また、医療関連事業もCSO事業や医療系人材紹介派遣事業の収益回復により2ケタ増収増益を見込んでいる。調剤薬局の新規出店は10〜20店舗程度、M&Aで30~70店舗を想定している。直近2期間はコロナ禍の影響でM&A獲得店舗数が20店舗を下回っていたが、当期は再加速していく。また、重点施策として在宅調剤の売上拡大とITを活用したサービス(LINEを活用した処方箋予約等)の拡充に取り組んでいく方針だ。3. 保険薬局事業、医療関連事業を両輪に売上高3,000億円を目指す方針中長期成長戦略は、従来から一貫しており変更はない。保険薬局事業では「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」に取り組むことで安定成長を目指す。出店はM&Aも含めて年間40~90店舗ペースを継続し、1,000店舗の早期達成を目指す。また、今後重要性が高まる地域のかかりつけ薬局として付加価値を高めることで、シェア拡大を図っていく。2021年8月よりスタートした薬局の認定制度に基づいて、地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の認定取得を進めており、2022年3月末は合わせて155店舗で認定を取得した。将来的にはすべての薬局でいずれかの認定を取得することを目指している。医療関連事業ではCSO事業における「専門性の深化」に取り組み、高付加価値人材の育成によってCMRを2022年3月期の600人から中期的に1,000人体制を目指す。また、藤永製薬(株)で展開する医薬品製造販売事業は、「グループシナジーの最大化」に取り組むと同時に、製造品目数の拡充やM&A、受託開発事業の強化等により事業規模の拡大を図る。これら取り組みにより、中期目標である売上高3,000億円、営業利益250億円の達成を目指していく。■Key Points・2022年3月期は保険薬局事業の回復により過去最高業績を更新・2023年3月期業績は保険薬局事業、医療関連事業ともに2ケタ増益となる見通し・拡大が続く在宅調剤市場の取り込みと薬局の価値創出に取り組み、中期目標の売上高3,000億円、営業利益250億円を目指す(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) <SI> 2022/07/04 15:21

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