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エヌ・シー・エヌ Research Memo(7):2026年3月期は業績予想据え置き。SE構法の優位性を引き続き訴求
配信日時:2025/12/30 12:07
配信元:FISCO
*12:07JST エヌ・シー・エヌ Research Memo(7):2026年3月期は業績予想据え置き。SE構法の優位性を引き続き訴求
■エヌ・シー・エヌ<7057>の今後の見通し
1. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の連結業績は、売上高9,016百万円(前期比11.0%増)、営業利益294百万円(同64.9%増)、経常利益326百万円(同11.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益229百万円(同18.5%増)と、期初業績予想を据え置いた。また、2025年10月、同社は持分法適用関連会社であるN&S開発に、保有する優先株式の全部を売却することを発表した。これに伴い、第3四半期において株式売却益23百万円、受取配当金8百万円を計上する見込みだが、業績予想には織り込み済である。なおN&S開発への議決権比率に変動はない。
利益面では中間期の翠豊におけるデリバティブ評価損がはく落するため、本来の利益率が業績に反映される見込みだ。2025年3月期は連結子会社や持分法適用関連会社の利益化達成により営業利益や経常利益が大きく改善しており、現状各社の業況は堅調なことから、2026年3月期連結での利益転換が期待される。
2. 分野別売上高の見通し
(1) 住宅分野
住宅分野では、売上高5,536百万円(前期比17.1%増)、KPIである構造計算出荷数は1,073棟(同8.5%増)、SE構法出荷数は1,010棟(同12.0%増)を見込む。下期は、未出荷案件の出荷や、法改正に伴うSE構法への需要増により、各出荷数の上積みが期待される。また、2026年4月に建築基準法のさらなる改正(木造戸建住宅の壁量計算等の厳格化)が予定されており、法改正前の住宅建築の駆け込み需要の増加、法改正後の壁量計算におけるSE構法の優位性を訴求できる機会の増加が見込まれる。同社は、SE構法の広告宣伝を活発化し、施工店との協力体制を強化することで、顧客からの引き合いを着実に受注につなげる方針である。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野では、売上高2,950百万円(同0.1%増)を見込む。KPIの構造計算出荷数は265棟(同10.9%増)、SE構法出荷数は152棟(同10.1%増)と、いずれも2ケタ増を計画する。下期は受注ずれ込み分の確実なクロージングや、受注活動の継続推進による売上高底上げを目指す。「SE構法Ver.3」の推進による鉄骨マーケットの攻略や、大規模木造建築ネットワークを活用した加盟工務店との協業が、有効な手段となる見込みだ。翠豊については、案件の引き合いは増加し、受注ストック増加につながっている。下期の業績は前年同期を上回る見込みである。
(3) 環境設計分野
環境設計分野では、売上高350百万円(前期比20.7%増)を見込む。木造住宅・集合住宅・非住宅木造建築・リノベーションの各分野において中間期業績は予想以上に好調であり、下期も継続して受注獲得を推進する。
(4) DX・その他の分野
DX・その他の分野では売上高180百万円(同13.6%増)を見込む。MAKE HOUSEによる「MAKE ViZ」拡販に加え、2026年4月より認められるBIMによる建築確認申請対応を好機と捉える。初期段階の設計検討でBIMデータを活用するサービス「MAKE DoC」の展開を強化することで、業績巻き返しが期待される。
2. 中期計画の進捗状況と今後の成長戦略
中期計画(2024年3月期~2026年3月期)については、新設住宅着工戸数が低調に推移していた影響により、見直す方針である。建築基準法改正に伴う端境期でもあるため、見直し内容の発表時期は検討中である。現時点での同社の分野別成長戦略は次のとおりである。
(1) 住宅分野
住宅分野では、SE構法の新バージョン「SE構法Ver.3」による性能の大幅向上を生かした施策を推進する。まず、2026年4月の建築基準法改正により木造戸建住宅の構造基準が見直され、在来工法の必要壁量が従来比1.4倍に増加する。これまで壁量計算は不要とされていた延床面積300平方メートル以下の建物(1階建建物の一部を除く)についても、2026年4月より壁量計算が義務化されるためである。
これに該当する日本家屋に多い在来工法や木造枠組壁工法の場合は、壁量計算の厳格化に対応した工法に見直す必要がある。一方、SE構法の場合は既に構造計算の実施された木材を使用し、柱と梁を鉄骨造のように強固に接合させるラーメン構造が可能なため、改めての構造計算は不要である。さらに「SE構法Ver.3」では、構造用パーティクルボード「G-BOARD」を採用し、壁倍率換算で11.7倍(在来工法で使用する合板の壁倍率は2.5倍)相当の超高耐力の壁を構築可能だ。これにより、住宅建築に必要な物理的な壁量の削減が可能となり、同じ床面積でも大空間の開放的な住宅設計が実現する。
同社は、構造審査の厳格化を前に、このメリットを最大限に活用するため、登録施工店との協業により販売を推進している。同社によれば、登録施工店515社(2025年3月期時点)における年間販売棟数9,650棟のうち、SE構法の採用数は7.8%の752棟と開拓の余地が大きい。同社はSE構法の優位性をさらに訴求し、SE構法の採用率を高めるため、登録施工店の支援策を強化する方針だ。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野では、非住宅木造建築の市場拡大に対応するため、2025年7月に活動を開始した「大規模木造建築ネットワーク」を活用する。北海道から沖縄までカバーする体制により、全国各地で生じる中大規模木造建築ニーズを発掘し、迅速に対応することで受注増につなげる。
生産面の強化策として、SE構法に必要な主要プレカット木造部材の供給体制を増強している。2025年9月時点で全国13ヶ所に工場を構えており、2026年3月期は新たに名古屋拠点の増設に向け、工場と提携契約を締結した。住宅着工件数が減少傾向にあるなか、工場に新たなプレカット受注機会を提供し、同社は提携先拡大による安定した供給体制確立が実現する。この相互利益の享受を通じて生産を強化し、確実に受注を捕捉し、成長の足掛かりとする。
そのほか、「SE構法Ver.3」の推進による鉄骨マーケットの攻略、大規模木造建築に対応した技術開発、子会社や関連会社との連携による構造設計から環境設計、BIM、施工までのプロセスを一気通貫で対応する体制も引き続き有効な手段となる。
(3) 環境設計分野
環境設計分野では、住宅・非住宅を問わず、すべての新築建築物への省エネ基準適合義務化を追い風とし、登録施工店ネットワークを通じた販売拡大策を展開する。今後の領域拡大策としては、リノベーションでは中古マンション市場の需要を取り込むほか、ZEB認証では環境に関心の高い企業・団体を中心に販促を進める。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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1. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の連結業績は、売上高9,016百万円(前期比11.0%増)、営業利益294百万円(同64.9%増)、経常利益326百万円(同11.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益229百万円(同18.5%増)と、期初業績予想を据え置いた。また、2025年10月、同社は持分法適用関連会社であるN&S開発に、保有する優先株式の全部を売却することを発表した。これに伴い、第3四半期において株式売却益23百万円、受取配当金8百万円を計上する見込みだが、業績予想には織り込み済である。なおN&S開発への議決権比率に変動はない。
利益面では中間期の翠豊におけるデリバティブ評価損がはく落するため、本来の利益率が業績に反映される見込みだ。2025年3月期は連結子会社や持分法適用関連会社の利益化達成により営業利益や経常利益が大きく改善しており、現状各社の業況は堅調なことから、2026年3月期連結での利益転換が期待される。
2. 分野別売上高の見通し
(1) 住宅分野
住宅分野では、売上高5,536百万円(前期比17.1%増)、KPIである構造計算出荷数は1,073棟(同8.5%増)、SE構法出荷数は1,010棟(同12.0%増)を見込む。下期は、未出荷案件の出荷や、法改正に伴うSE構法への需要増により、各出荷数の上積みが期待される。また、2026年4月に建築基準法のさらなる改正(木造戸建住宅の壁量計算等の厳格化)が予定されており、法改正前の住宅建築の駆け込み需要の増加、法改正後の壁量計算におけるSE構法の優位性を訴求できる機会の増加が見込まれる。同社は、SE構法の広告宣伝を活発化し、施工店との協力体制を強化することで、顧客からの引き合いを着実に受注につなげる方針である。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野では、売上高2,950百万円(同0.1%増)を見込む。KPIの構造計算出荷数は265棟(同10.9%増)、SE構法出荷数は152棟(同10.1%増)と、いずれも2ケタ増を計画する。下期は受注ずれ込み分の確実なクロージングや、受注活動の継続推進による売上高底上げを目指す。「SE構法Ver.3」の推進による鉄骨マーケットの攻略や、大規模木造建築ネットワークを活用した加盟工務店との協業が、有効な手段となる見込みだ。翠豊については、案件の引き合いは増加し、受注ストック増加につながっている。下期の業績は前年同期を上回る見込みである。
(3) 環境設計分野
環境設計分野では、売上高350百万円(前期比20.7%増)を見込む。木造住宅・集合住宅・非住宅木造建築・リノベーションの各分野において中間期業績は予想以上に好調であり、下期も継続して受注獲得を推進する。
(4) DX・その他の分野
DX・その他の分野では売上高180百万円(同13.6%増)を見込む。MAKE HOUSEによる「MAKE ViZ」拡販に加え、2026年4月より認められるBIMによる建築確認申請対応を好機と捉える。初期段階の設計検討でBIMデータを活用するサービス「MAKE DoC」の展開を強化することで、業績巻き返しが期待される。
2. 中期計画の進捗状況と今後の成長戦略
中期計画(2024年3月期~2026年3月期)については、新設住宅着工戸数が低調に推移していた影響により、見直す方針である。建築基準法改正に伴う端境期でもあるため、見直し内容の発表時期は検討中である。現時点での同社の分野別成長戦略は次のとおりである。
(1) 住宅分野
住宅分野では、SE構法の新バージョン「SE構法Ver.3」による性能の大幅向上を生かした施策を推進する。まず、2026年4月の建築基準法改正により木造戸建住宅の構造基準が見直され、在来工法の必要壁量が従来比1.4倍に増加する。これまで壁量計算は不要とされていた延床面積300平方メートル以下の建物(1階建建物の一部を除く)についても、2026年4月より壁量計算が義務化されるためである。
これに該当する日本家屋に多い在来工法や木造枠組壁工法の場合は、壁量計算の厳格化に対応した工法に見直す必要がある。一方、SE構法の場合は既に構造計算の実施された木材を使用し、柱と梁を鉄骨造のように強固に接合させるラーメン構造が可能なため、改めての構造計算は不要である。さらに「SE構法Ver.3」では、構造用パーティクルボード「G-BOARD」を採用し、壁倍率換算で11.7倍(在来工法で使用する合板の壁倍率は2.5倍)相当の超高耐力の壁を構築可能だ。これにより、住宅建築に必要な物理的な壁量の削減が可能となり、同じ床面積でも大空間の開放的な住宅設計が実現する。
同社は、構造審査の厳格化を前に、このメリットを最大限に活用するため、登録施工店との協業により販売を推進している。同社によれば、登録施工店515社(2025年3月期時点)における年間販売棟数9,650棟のうち、SE構法の採用数は7.8%の752棟と開拓の余地が大きい。同社はSE構法の優位性をさらに訴求し、SE構法の採用率を高めるため、登録施工店の支援策を強化する方針だ。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野では、非住宅木造建築の市場拡大に対応するため、2025年7月に活動を開始した「大規模木造建築ネットワーク」を活用する。北海道から沖縄までカバーする体制により、全国各地で生じる中大規模木造建築ニーズを発掘し、迅速に対応することで受注増につなげる。
生産面の強化策として、SE構法に必要な主要プレカット木造部材の供給体制を増強している。2025年9月時点で全国13ヶ所に工場を構えており、2026年3月期は新たに名古屋拠点の増設に向け、工場と提携契約を締結した。住宅着工件数が減少傾向にあるなか、工場に新たなプレカット受注機会を提供し、同社は提携先拡大による安定した供給体制確立が実現する。この相互利益の享受を通じて生産を強化し、確実に受注を捕捉し、成長の足掛かりとする。
そのほか、「SE構法Ver.3」の推進による鉄骨マーケットの攻略、大規模木造建築に対応した技術開発、子会社や関連会社との連携による構造設計から環境設計、BIM、施工までのプロセスを一気通貫で対応する体制も引き続き有効な手段となる。
(3) 環境設計分野
環境設計分野では、住宅・非住宅を問わず、すべての新築建築物への省エネ基準適合義務化を追い風とし、登録施工店ネットワークを通じた販売拡大策を展開する。今後の領域拡大策としては、リノベーションでは中古マンション市場の需要を取り込むほか、ZEB認証では環境に関心の高い企業・団体を中心に販促を進める。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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