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エヌ・シー・エヌ Research Memo(6):2026年3月期中間期は子会社が損失計上も、業況はおおむね堅調
配信日時:2025/12/30 12:06
配信元:FISCO
*12:06JST エヌ・シー・エヌ Research Memo(6):2026年3月期中間期は子会社が損失計上も、業況はおおむね堅調
■エヌ・シー・エヌ<7057>の業績動向
1. 2026年3月期中間期の業績
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高3,800百万円(前年同期比1.3%減)、売上総利益1,081百万円(同2.2%増)、営業利益12百万円(同85.6%減)、経常損失12百万円(前年同期は118百万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損失27百万円(前年同期は68百万円の利益)と、わずかに減収、経常損益・最終損益はいずれも損失となった。期初予想に対する進捗率は、売上高42.2%、営業利益4.3%となった。
利益面では売上総利益が微増となったものの、営業利益は人件費・販売促進費・広告宣伝費等の増加により、大きく減益となった。経常損益・最終損益については、翠豊が木材輸入に伴う為替リスクヘッジオプション取り引きにおいてデリバティブ評価損(16百万円)を計上したことが響き、損失となった。なおデリバティブ評価損は期中に認識済であり、下期での計上は予定していない。
2. 分野別売上高
(1) 住宅分野
住宅分野の売上高は2,335百万円(前年同期比0.3%減)となった。期初業績予想に対する進捗率は42.2%とおおむね堅調に推移した。同分野でKPIとする構造計算出荷数は486棟(同6.2%減)、SE構法出荷数は429棟(同4.0%減)にとどまった。構造計算出荷数減少の主な原因は、建築基準法の改正に伴い、建築確認申請の期間が従来の7日から35日に長期化したこと、行政側の手続き遅延により申請期間が想定以上に伸長したことにある。同社が木造建築業界の従事者に独自に行ったアンケート調査によれば、行政手続きに平均60日程度を要しており、この影響を受けた。法改正によって同社へのSE構法の引き合いは増加しているが、申請期間の長期化がボトルネックとなり、構造計算の後工程へ進みにくい状況が生じている。しかし、第2四半期以降は徐々に改善しており、同社は下期には解消すると見込んでいる。なお、SE構法出荷1棟当たりの平均売上金額は同3.9%増加したため、出荷件数の減少を補填した。SE構法登録施工店は新規に19社が加入し、廃業等で12社が退会した結果、計628社となり、ネットワークの裾野が拡大している。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野の売上高は1,197百万円(前年同期比8.5%減)となった。期初予想に対する進捗率は40.6%であり、KPIである構造計算出荷数は122棟(同4.7%減)となった。内訳は、SE構法86棟(同3.6%増)に対し、木構造デザインによるSE構法以外は36棟(同20.0%減)にとどまった。SE構法の構造計算出荷数は堅調に推移したが、SE構法以外は前年同期の好調さの反動減である。SE構法出荷数は60棟(同17.8%減)に減少した。中間期に出荷を予定していた物件の納期が下期にずれ込んだことが原因で、下期の出荷増が見込まれる。翠豊による大断面集成材加工や大規模木造建築施工に関する事業は、期中の工事案件を予定どおり完了し、売上高は前年同期並みで推移した。
(3) 環境設計分野
環境設計分野の売上高は199百万円(前年同期比35.5%増)と、大きく伸長した。2025年4月よりすべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されたことに伴い、戸建住宅の省エネ計算数が887棟(同5.5%増)に増加した。これに加え、集合住宅・非住宅の省エネ計算数も1,103棟(同40.3%増)と大きく伸びた。これは、2010年から開始した省エネ計算サービスの成果が実を結び始めていることによる。またこれらに加えて、中古マンションのリノベーション物件向けの出荷数も増加しており、204棟(同77.4%増)とこちらも大きく伸びている。新築マンションの高値推移が継続しているだけに、この傾向は今後も続くと予想され、同社への強い追い風になるだろう。また長期優良住宅申請サポート件数も317件(同17.4%増)と増加している。
(4) DX・その他の分野
DX・その他の分野の売上高は68百万円(前年同期比26.8%増)と、大きく伸長した。木造建築向けBIMソリューションを開発・展開する子会社MAKE HOUSEでは、2021年10月から提供を開始した高画質建築空間シミュレーションサービスである「MAKE ViZ」の受注が2026年3月期も好調に推移し、増収に貢献した。「MAKE ViZ」は、2次元の設計図面から精緻な3Dパース(視覚的な表現手法)が作成可能である。大手のみならず地方のハウスメーカーでも、SE構法による高級注文住宅向けのプレゼンテーション資料で使用するケースが増加しており、SE構法の受注増に伴い「MAKE ViZ」の受注も増加している。加えて、設計書類の電子化が今後さらに進む見込みであり、BIM技術の活用用途の拡がりが期待される。
3. トピックス
(1) 「大規模木造建築ネットワーク」の設立
同社は「大規模木造建築ネットワーク」を2025年5月に設立し、同年7月より活動を開始した。非住宅用途の木造建築への注目が高まるなか、同社は大規模木造建築に対応可能な全国36社のSE構法登録施工店をネットワーク化した。同社は、SE構法の提供を通じて培った非住宅木造建築の「設計・サプライチェーン・施工・品質」の提供に特化し、非住宅木造建築ニーズへの対応と、生じる課題への対応力強化を図る。設計事務所やゼネコン等、大規模木造建築の施工を手掛ける業者に対し、ネットワークの中から最適な施工業者を紹介する。これにより、非住宅木造建築に関する課題を解決し、実際の設計・施工を通じて同社事業の拡大を図る方針だ。中間期においては複数の設計事務所等から引き合いがあり、加盟工務店での受注が決定し、対応が進んでいる事例も出ていることから、今後の動向が注目される。
(2) 三井ホームとの販売提携
同社は、三井ホーム(株)との販売提携を2025年7月に発表した。桜の聖母学院中学校の校舎増築プロジェクトでは、顧客の「児童・生徒・保護者・職員が温もりや親しみを感じる校舎にしたい」という要望に対応した。耐火性能の厳格な校舎への木造増築に対し、同社のSE構法技術の「燃えしろ設計」を適用することで、木の意匠と耐火性能を両立する建築を実現する。現在は着工段階にある。順調に完工した場合、木造枠組壁工法(2×4工法)のリーディングカンパニーとして知られる三井ホームと、多様な木造工法で非住宅建築物の木造化に対応するため、さらなる協業が進むことが期待される。
(3) 三菱地所レジデンスとの連携
同社は2025年10月、三菱地所レジデンス(株)との共同プロジェクトが、2025年度グッドデザイン賞を受賞したと発表した。このプロジェクトは、中古マンションリノベーションにおいて、ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅の達成を目指す取り組みである。本連携の目的は、中古マンション市場全体でZEH水準及び省エネ基準(断熱性能・設備に関する基準)をスタンダードとすることにある。具体的には、リノベーション時に適切な省エネ設備導入を支援・推進している。近年の中古分譲マンションの需給活性化を背景に、三菱地所レジデンスは省エネ対応で物件価値の向上を実現し、同社は省エネ計算の受注増大という相互利益を得ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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1. 2026年3月期中間期の業績
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高3,800百万円(前年同期比1.3%減)、売上総利益1,081百万円(同2.2%増)、営業利益12百万円(同85.6%減)、経常損失12百万円(前年同期は118百万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損失27百万円(前年同期は68百万円の利益)と、わずかに減収、経常損益・最終損益はいずれも損失となった。期初予想に対する進捗率は、売上高42.2%、営業利益4.3%となった。
利益面では売上総利益が微増となったものの、営業利益は人件費・販売促進費・広告宣伝費等の増加により、大きく減益となった。経常損益・最終損益については、翠豊が木材輸入に伴う為替リスクヘッジオプション取り引きにおいてデリバティブ評価損(16百万円)を計上したことが響き、損失となった。なおデリバティブ評価損は期中に認識済であり、下期での計上は予定していない。
2. 分野別売上高
(1) 住宅分野
住宅分野の売上高は2,335百万円(前年同期比0.3%減)となった。期初業績予想に対する進捗率は42.2%とおおむね堅調に推移した。同分野でKPIとする構造計算出荷数は486棟(同6.2%減)、SE構法出荷数は429棟(同4.0%減)にとどまった。構造計算出荷数減少の主な原因は、建築基準法の改正に伴い、建築確認申請の期間が従来の7日から35日に長期化したこと、行政側の手続き遅延により申請期間が想定以上に伸長したことにある。同社が木造建築業界の従事者に独自に行ったアンケート調査によれば、行政手続きに平均60日程度を要しており、この影響を受けた。法改正によって同社へのSE構法の引き合いは増加しているが、申請期間の長期化がボトルネックとなり、構造計算の後工程へ進みにくい状況が生じている。しかし、第2四半期以降は徐々に改善しており、同社は下期には解消すると見込んでいる。なお、SE構法出荷1棟当たりの平均売上金額は同3.9%増加したため、出荷件数の減少を補填した。SE構法登録施工店は新規に19社が加入し、廃業等で12社が退会した結果、計628社となり、ネットワークの裾野が拡大している。
(2) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野の売上高は1,197百万円(前年同期比8.5%減)となった。期初予想に対する進捗率は40.6%であり、KPIである構造計算出荷数は122棟(同4.7%減)となった。内訳は、SE構法86棟(同3.6%増)に対し、木構造デザインによるSE構法以外は36棟(同20.0%減)にとどまった。SE構法の構造計算出荷数は堅調に推移したが、SE構法以外は前年同期の好調さの反動減である。SE構法出荷数は60棟(同17.8%減)に減少した。中間期に出荷を予定していた物件の納期が下期にずれ込んだことが原因で、下期の出荷増が見込まれる。翠豊による大断面集成材加工や大規模木造建築施工に関する事業は、期中の工事案件を予定どおり完了し、売上高は前年同期並みで推移した。
(3) 環境設計分野
環境設計分野の売上高は199百万円(前年同期比35.5%増)と、大きく伸長した。2025年4月よりすべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されたことに伴い、戸建住宅の省エネ計算数が887棟(同5.5%増)に増加した。これに加え、集合住宅・非住宅の省エネ計算数も1,103棟(同40.3%増)と大きく伸びた。これは、2010年から開始した省エネ計算サービスの成果が実を結び始めていることによる。またこれらに加えて、中古マンションのリノベーション物件向けの出荷数も増加しており、204棟(同77.4%増)とこちらも大きく伸びている。新築マンションの高値推移が継続しているだけに、この傾向は今後も続くと予想され、同社への強い追い風になるだろう。また長期優良住宅申請サポート件数も317件(同17.4%増)と増加している。
(4) DX・その他の分野
DX・その他の分野の売上高は68百万円(前年同期比26.8%増)と、大きく伸長した。木造建築向けBIMソリューションを開発・展開する子会社MAKE HOUSEでは、2021年10月から提供を開始した高画質建築空間シミュレーションサービスである「MAKE ViZ」の受注が2026年3月期も好調に推移し、増収に貢献した。「MAKE ViZ」は、2次元の設計図面から精緻な3Dパース(視覚的な表現手法)が作成可能である。大手のみならず地方のハウスメーカーでも、SE構法による高級注文住宅向けのプレゼンテーション資料で使用するケースが増加しており、SE構法の受注増に伴い「MAKE ViZ」の受注も増加している。加えて、設計書類の電子化が今後さらに進む見込みであり、BIM技術の活用用途の拡がりが期待される。
3. トピックス
(1) 「大規模木造建築ネットワーク」の設立
同社は「大規模木造建築ネットワーク」を2025年5月に設立し、同年7月より活動を開始した。非住宅用途の木造建築への注目が高まるなか、同社は大規模木造建築に対応可能な全国36社のSE構法登録施工店をネットワーク化した。同社は、SE構法の提供を通じて培った非住宅木造建築の「設計・サプライチェーン・施工・品質」の提供に特化し、非住宅木造建築ニーズへの対応と、生じる課題への対応力強化を図る。設計事務所やゼネコン等、大規模木造建築の施工を手掛ける業者に対し、ネットワークの中から最適な施工業者を紹介する。これにより、非住宅木造建築に関する課題を解決し、実際の設計・施工を通じて同社事業の拡大を図る方針だ。中間期においては複数の設計事務所等から引き合いがあり、加盟工務店での受注が決定し、対応が進んでいる事例も出ていることから、今後の動向が注目される。
(2) 三井ホームとの販売提携
同社は、三井ホーム(株)との販売提携を2025年7月に発表した。桜の聖母学院中学校の校舎増築プロジェクトでは、顧客の「児童・生徒・保護者・職員が温もりや親しみを感じる校舎にしたい」という要望に対応した。耐火性能の厳格な校舎への木造増築に対し、同社のSE構法技術の「燃えしろ設計」を適用することで、木の意匠と耐火性能を両立する建築を実現する。現在は着工段階にある。順調に完工した場合、木造枠組壁工法(2×4工法)のリーディングカンパニーとして知られる三井ホームと、多様な木造工法で非住宅建築物の木造化に対応するため、さらなる協業が進むことが期待される。
(3) 三菱地所レジデンスとの連携
同社は2025年10月、三菱地所レジデンス(株)との共同プロジェクトが、2025年度グッドデザイン賞を受賞したと発表した。このプロジェクトは、中古マンションリノベーションにおいて、ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅の達成を目指す取り組みである。本連携の目的は、中古マンション市場全体でZEH水準及び省エネ基準(断熱性能・設備に関する基準)をスタンダードとすることにある。具体的には、リノベーション時に適切な省エネ設備導入を支援・推進している。近年の中古分譲マンションの需給活性化を背景に、三菱地所レジデンスは省エネ対応で物件価値の向上を実現し、同社は省エネ計算の受注増大という相互利益を得ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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