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紀文食品 Research Memo(1):繁忙期へ向けプロモーション強化、下期業績回復へ
配信日時:2025/12/23 13:01
配信元:FISCO
*13:01JST 紀文食品 Research Memo(1):繁忙期へ向けプロモーション強化、下期業績回復へ
■要約
1. 会社概要
紀文食品<2933>は、スリミ(SURIMI)製品※のトップメーカーで、主にスーパーマーケットやコンビニエンスストア向けに販売している。スリミ製品は蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺんなどを総称した食品で、原材料となる魚が各地で異なるため、それぞれの地方で様々な種類の製品が作られてきた。同社は、日本各地のスリミ製品のフルライン化をいち早く進めるとともに、チルド物流や販売手法を独自に確立したことで、約3,000億円といわれる国内スリミ製品市場でトップシェアを獲得するに至った。こうした国内食品事業のノウハウと「紀文」ブランドを生かし、食品関連事業では外部企業にチルド物流サービスを提供、海外食品事業では健康志向を背景に魚食化が進むアジアや欧米でスリミ製品などの販売に力を入れている。
※ 2025年2月より「水産練り製品」を「スリミ(SURIMI)製品」と呼称。
2. 同社の強み
同社には、スリミ製品の企画・開発力、全国を網羅するチルド物流、小売との信頼に基づく販売力、紀文ブランド、海外拠点とネットワークという強みがある。同社の製品は、魚肉・大豆・鶏卵・畜肉の4つのタンパク特性に関する長年の研究を基盤に、独創的な技術と柔軟な発想によって様々なシーンに合わせて企画・開発されている。チルド物流では、集荷から配送までの全工程でチルド温度帯管理が可能な物流ネットワークを独自技術で実現、同業も含め多くの食品メーカーに利用されている。スーパーマーケットなど様々な小売と直接取引することによって深い信頼関係も築いた。こうした強みを背景に、認知度の高い「紀文」ブランドを確立する一方、長年にわたる知見を生かして強力な海外拠点とネットワークを構築している。
3. 2026年3月期中間期の業績動向
2026年3月期中間期の業績は、売上高が48,864百万円(前年同期比2.3%増)、営業損失が413百万円(前年同期は546百万円の営業利益)となり、中間期の利益構成比は小さいとはいえやや厳しい決算だった。売上高は、海外食品事業において米国の関税政策への様子見による発注控えや物価高騰の影響はあったが、国内食品事業の商事部門と食品関連事業の物流部門が増収をけん引した。一方、各工場で原価改善や合理化を進めたが、主要原料のすり身など原材料価格の上昇、タイ工場の稼働率低下、国内食品事業商事部門と海外食品事業の売上高構成比変化による採算低下などを背景に、大幅減益・営業損失となった。セグメント別では、食品関連事業は好調だったが、主力の国内食品事業と海外食品事業の苦戦をカバーできなかった。
4. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の業績予想について、同社は売上高115,626百万円(前期比6.2%増)、営業利益5,020百万円(同11.2%増)と見込んでいる。前年同期に比べ原材料価格の上昇や米国の関税政策影響等が見られたが、繁忙期の秋冬〜正月商戦に向けてプロモーションを強化すること、米国の関税政策がいったん落ち着いたこともあり、期初の業績予想を変えていない。同社は第1次中期経営計画(2026)のなかで、「成長戦略の推進と新たな価値創造」などの基本戦略を展開、2027年3月期に売上高1,203億円、営業利益60億円を目指している。第1次中期経営計画(2026)2年目となる2026年3月期は、外部環境が厳しいなかでも基本戦略は順調に進捗しているようだ。このため、2026年3月期が予想どおりに着地できれば、最終年度2027年3月期の目標達成も視野に入ってこよう。
■Key Points
・スリミ製品のトップメーカーで「紀文」ブランドに定評。企画・開発力などに強み
・想定外だった米国の関税政策などの影響により2026年3月期中間期業績は苦戦
・2026年3月期下期はプロモーション強化などで業績回復見込み、中計目標も視野入りへ
■会社概要
健康食として需要拡大中のスリミ製品トップメーカー
1. 会社概要
同社は、蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺん、カニカマ(カニ風味蒲鉾)など、健康志向の食品として国内外で需要が拡大するスリミ製品のトップメーカーである。国内食品事業では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを主販路にスリミ製品を販売しているほか、簡便・即食ニーズに対応した中華惣菜や健康志向の麺状商品「糖質0g麺」なども提供している。海外食品事業では、主にタイで製造したスリミ製品をアジアや欧米で販売している。食品関連事業では、チルド物流サービスを中心に展開しており、スリミ製品の競合企業を含め外部売上高が8割程度にもなる。同社は、魚肉・大豆・鶏卵・畜肉の4つのタンパク特性の研究を基盤とする商品開発力、独自ノウハウを積み上げたチルド物流サービス、小売との信頼関係に基づく販売力などに強みを持つ。
同社の前身は、1938年に保芦邦人(ほあしくにひと)氏が創業した「山形屋米店」である。その後、築地場外に「紀伊国屋果物店」(後に「紀文」に改名)を開店し、1941年に海産物卸売業に進出した。1947年に戦後の再建支援のため山久蒲鉾(株)(後の釜文蒲鉾(株))に出資、また1948年には水産物類の製造・加工及び販売を目的に(株)紀文商店を設立し、スリミ製品の製造を開始した。1957年には製販一体で事業を展開するため(株)紀文を設立、その後は商品バリエーションを拡充する一方、製造拠点や営業拠点の全国展開を進めた。海外事業の拡大にも注力しており、1978年に米国、1982年にアジア(香港)、2018年には欧州(オランダ)に進出し、1993年にはタイに海外市場向け製品の生産拠点を設けている。
健康食として海外でも需要急拡大のスリミ製品
2. 業界環境
スリミ製品とは蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺんなどを総称した食品で、主原料の魚肉をすり潰し、調味料などを加えて練り加熱したものである。アジア各地で古くから作られてきたが、原材料となる魚が各地で異なることから、国内でも様々な種類のスリミ製品が存在する。同社によると、スリミ製品の生産量はピークの100万トン強からは減ったものの、2010年代以降、良質なタンパク質が取れる手軽な惣菜として注目され、40万トン台で安定して推移しているようだ。同社は日本各地のスリミ製品を取り込んでいち早くフルライン化し、さらにチルド物流システムや販売手法を確立したことにより、約3,000億円といわれる国内スリミ製品市場でトップシェアを獲得するに至った。近年、スリミ製品は健康食として海外でも需要が急拡大していることから、海外事業にも力を注いでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 会社概要
紀文食品<2933>は、スリミ(SURIMI)製品※のトップメーカーで、主にスーパーマーケットやコンビニエンスストア向けに販売している。スリミ製品は蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺんなどを総称した食品で、原材料となる魚が各地で異なるため、それぞれの地方で様々な種類の製品が作られてきた。同社は、日本各地のスリミ製品のフルライン化をいち早く進めるとともに、チルド物流や販売手法を独自に確立したことで、約3,000億円といわれる国内スリミ製品市場でトップシェアを獲得するに至った。こうした国内食品事業のノウハウと「紀文」ブランドを生かし、食品関連事業では外部企業にチルド物流サービスを提供、海外食品事業では健康志向を背景に魚食化が進むアジアや欧米でスリミ製品などの販売に力を入れている。
※ 2025年2月より「水産練り製品」を「スリミ(SURIMI)製品」と呼称。
2. 同社の強み
同社には、スリミ製品の企画・開発力、全国を網羅するチルド物流、小売との信頼に基づく販売力、紀文ブランド、海外拠点とネットワークという強みがある。同社の製品は、魚肉・大豆・鶏卵・畜肉の4つのタンパク特性に関する長年の研究を基盤に、独創的な技術と柔軟な発想によって様々なシーンに合わせて企画・開発されている。チルド物流では、集荷から配送までの全工程でチルド温度帯管理が可能な物流ネットワークを独自技術で実現、同業も含め多くの食品メーカーに利用されている。スーパーマーケットなど様々な小売と直接取引することによって深い信頼関係も築いた。こうした強みを背景に、認知度の高い「紀文」ブランドを確立する一方、長年にわたる知見を生かして強力な海外拠点とネットワークを構築している。
3. 2026年3月期中間期の業績動向
2026年3月期中間期の業績は、売上高が48,864百万円(前年同期比2.3%増)、営業損失が413百万円(前年同期は546百万円の営業利益)となり、中間期の利益構成比は小さいとはいえやや厳しい決算だった。売上高は、海外食品事業において米国の関税政策への様子見による発注控えや物価高騰の影響はあったが、国内食品事業の商事部門と食品関連事業の物流部門が増収をけん引した。一方、各工場で原価改善や合理化を進めたが、主要原料のすり身など原材料価格の上昇、タイ工場の稼働率低下、国内食品事業商事部門と海外食品事業の売上高構成比変化による採算低下などを背景に、大幅減益・営業損失となった。セグメント別では、食品関連事業は好調だったが、主力の国内食品事業と海外食品事業の苦戦をカバーできなかった。
4. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の業績予想について、同社は売上高115,626百万円(前期比6.2%増)、営業利益5,020百万円(同11.2%増)と見込んでいる。前年同期に比べ原材料価格の上昇や米国の関税政策影響等が見られたが、繁忙期の秋冬〜正月商戦に向けてプロモーションを強化すること、米国の関税政策がいったん落ち着いたこともあり、期初の業績予想を変えていない。同社は第1次中期経営計画(2026)のなかで、「成長戦略の推進と新たな価値創造」などの基本戦略を展開、2027年3月期に売上高1,203億円、営業利益60億円を目指している。第1次中期経営計画(2026)2年目となる2026年3月期は、外部環境が厳しいなかでも基本戦略は順調に進捗しているようだ。このため、2026年3月期が予想どおりに着地できれば、最終年度2027年3月期の目標達成も視野に入ってこよう。
■Key Points
・スリミ製品のトップメーカーで「紀文」ブランドに定評。企画・開発力などに強み
・想定外だった米国の関税政策などの影響により2026年3月期中間期業績は苦戦
・2026年3月期下期はプロモーション強化などで業績回復見込み、中計目標も視野入りへ
■会社概要
健康食として需要拡大中のスリミ製品トップメーカー
1. 会社概要
同社は、蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺん、カニカマ(カニ風味蒲鉾)など、健康志向の食品として国内外で需要が拡大するスリミ製品のトップメーカーである。国内食品事業では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを主販路にスリミ製品を販売しているほか、簡便・即食ニーズに対応した中華惣菜や健康志向の麺状商品「糖質0g麺」なども提供している。海外食品事業では、主にタイで製造したスリミ製品をアジアや欧米で販売している。食品関連事業では、チルド物流サービスを中心に展開しており、スリミ製品の競合企業を含め外部売上高が8割程度にもなる。同社は、魚肉・大豆・鶏卵・畜肉の4つのタンパク特性の研究を基盤とする商品開発力、独自ノウハウを積み上げたチルド物流サービス、小売との信頼関係に基づく販売力などに強みを持つ。
同社の前身は、1938年に保芦邦人(ほあしくにひと)氏が創業した「山形屋米店」である。その後、築地場外に「紀伊国屋果物店」(後に「紀文」に改名)を開店し、1941年に海産物卸売業に進出した。1947年に戦後の再建支援のため山久蒲鉾(株)(後の釜文蒲鉾(株))に出資、また1948年には水産物類の製造・加工及び販売を目的に(株)紀文商店を設立し、スリミ製品の製造を開始した。1957年には製販一体で事業を展開するため(株)紀文を設立、その後は商品バリエーションを拡充する一方、製造拠点や営業拠点の全国展開を進めた。海外事業の拡大にも注力しており、1978年に米国、1982年にアジア(香港)、2018年には欧州(オランダ)に進出し、1993年にはタイに海外市場向け製品の生産拠点を設けている。
健康食として海外でも需要急拡大のスリミ製品
2. 業界環境
スリミ製品とは蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺんなどを総称した食品で、主原料の魚肉をすり潰し、調味料などを加えて練り加熱したものである。アジア各地で古くから作られてきたが、原材料となる魚が各地で異なることから、国内でも様々な種類のスリミ製品が存在する。同社によると、スリミ製品の生産量はピークの100万トン強からは減ったものの、2010年代以降、良質なタンパク質が取れる手軽な惣菜として注目され、40万トン台で安定して推移しているようだ。同社は日本各地のスリミ製品を取り込んでいち早くフルライン化し、さらにチルド物流システムや販売手法を確立したことにより、約3,000億円といわれる国内スリミ製品市場でトップシェアを獲得するに至った。近年、スリミ製品は健康食として海外でも需要が急拡大していることから、海外事業にも力を注いでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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