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クエスト Research Memo(5):2026年3月期中間期は20%超えの大幅増収、減益は想定内
配信日時:2025/12/23 12:15
配信元:FISCO
*12:15JST クエスト Research Memo(5):2026年3月期中間期は20%超えの大幅増収、減益は想定内
■クエスト<2332>の業績動向
1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期(2025年4月から9月)の業績は、セプトの連結化を主な要因として売上高は8,785百万円となり、前年同期比21.4%増と大幅な増収となった。一方で、営業利益は486百万円(同2.1%減)、経常利益は511百万円(同4.5%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は335百万円(同5.8%減)と、増収ながら減益の結果となった。ただし、利益面の減少は一時的な戦略投資が主因である。具体的には、従業員の処遇改善や教育を含む人的資本への投資拡充、営業力強化に向けた事業所の新設や拡張、創立60周年記念施策、そして新たに連結子会社となったセプトの経営統合プロセスに伴うコスト発生などが挙げられる。これらの施策はすべて期初に織り込み済みで、通期業績予想に影響を及ぼすものではない。
顧客産業別売上高はおおむね想定どおり
2. 顧客産業別売上高の動向
顧客産業別の売上構成を見ると、M&Aによるセプトの連結効果を除いた2社ベースでは、重点強化領域(半導体・製造)の比率が前年同期比で3ポイント上昇し48%となった。半導体市場の回復を背景に、特にメモリ関連顧客からの新規案件が増加したことが主因である。
一方、セプトを含めた3社連結ベースでは、セプトが主に金融および情報通信分野の案件を手掛けていることから、全体の構成比は前年同期とほぼ同水準となった。すなわち、既存領域では重点強化分野が伸長しつつも、新たに連結された安定成長領域(金融・情報通信)の比率がバランスを保つ結果となったといえる。なお、セプトに関しては買収後のハンズオンに注力し社内のオペレーション改善が進むなど、PMIはおおむね順調のようである。
売上拡大の主要因は、重点強化領域におけるメモリを中心とした半導体関連案件の増加であり、この領域が成長ドライバーとして機能している。安定成長領域については、既存顧客との安定取引により前年同期並みの売上高を確保した。社会課題解決領域の売上はまだ小規模ながら、電力関連顧客からインフラサービス案件を受注しており、将来的な成長余地を有している。
全体として、同社の顧客ポートフォリオは「重点強化領域による成長」と「安定成長領域による下支え」がバランス良く機能しており、事業構造の多層化が着実に進展していると評価できる。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期の資産合計は10,140百万円(前期末比322百万円の増加)となり、資産規模は引き続き拡大した。内訳を見ると、流動資産は6,995百万円(126百万円の減少)とやや減少したが、固定資産は3,144百万円(同448百万円の増加)と大幅に増加している。特に固定資産の伸長は、M&Aを含む成長投資や新拠点整備、人的資本投資など、長期的な事業基盤強化の進展を反映したものとみられる。一方、現金及び預金は2,813百万円(同518百万円の減少)となったが、現預金回転期間は1.9ヶ月となり、資金運用効率は改善傾向にある。負債合計は2,832百万円(同266百万円の増加)と微増、純資産合計は7,308百万円(同54百万円の増加)で推移し、自己資本比率は72.1%と引き続き高水準を維持している。無借金経営による強固な財務体質が継続している点が特徴である。
収益面では、売上高営業利益率が5.5%となり、成長投資負担やPMI関連費用の影響が表れた。同社は資本効率を一定程度確保しつつ、堅実な財務構造を背景に積極的な投資を継続しており、今後は財務レバレッジの適度な活用や高付加価値ソリューションビジネスの拡大による収益性向上が焦点となる。
4. 事業トピックス
(1) コアサービスの強化
a) セプトとの統合シナジーの状況
2025年4月に子会社セプトをM&Aによりグループに加えた。これにより連結社員数は2025年9月時点で1,242名となり、エンジニアリソースの拡充が実現した。
セプトは従来、二次請け・三次請けの案件を中心に活動してきたが、同社本体の一次請け案件にセプトのリソースを組み込むことで、機会損失の削減と利益率改善を見込む構造転換を狙っている。現在、両社間で人材交流やローテーションを実施し、共有するビジネス戦略のもと、体制整備を進めている。また、経理システム・勤怠管理システムなどのバックオフィス統合を進め、間接業務の効率化と統一運用による管理コスト抑制を図る。2026年4月までに3社の制度統一を完了させる計画である。これにより、将来的なスケールメリットとコスト効率の向上が見込まれている。
b) 半導体拠点の新設・拡張
半導体関連の重点顧客への対応強化を目的として、岩手県北上市に事業所を新設した。これは地理的に近い大手半導体顧客との関係強化や開発/運用支援の拡充を狙った戦略的拠点展開である。
また、既存の拠点では、四日市事業所を駅近の新築物件へ移転・拡張し、従業員の快適性や業務効率の向上を図る。顧客先からの戻りやすさ、働きやすい環境整備によって、エンジニア稼働効率と定着性の改善を目指している。
(2) ソリューションサービスの育成
a) 顧客・パートナーとの共創案件
ソリューションサービス拡大を狙い、既存の保守・運用サービスにとどまらず、「共創」による付加価値の高い案件獲得を強化している。現在、重点強化領域の顧客に対して生成AI環境整備、コードのリファクタリング、在庫コントロールの可視化支援などの取り組みを進めており、実績を少しずつ積み上げている。ただし、まだスピード面では顧客の期待に完全には応えきれておらず、ソリューションメニューの整理・ブラッシュアップを進めた上で、準備が整ったところから順次発表する計画である。
b) インフラ・セキュリティサービスのリニューアル
セキュリティを軸とした「伴走型支援サービス」を展開している。外部パートナー(例:Cybereason)と提携して紹介イベントを開催し、引き合いを増やす取り組みを行っている。これにより、インフラ/セキュリティ分野におけるソリューション需要の取り込みを狙っている。このサービス強化は、単発の開発受託型ビジネスから、ストック型あるいは継続型のソリューションビジネスへの転換を見据えたもので、安定収益基盤の拡充と長期的な顧客関係の構築を意図している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期(2025年4月から9月)の業績は、セプトの連結化を主な要因として売上高は8,785百万円となり、前年同期比21.4%増と大幅な増収となった。一方で、営業利益は486百万円(同2.1%減)、経常利益は511百万円(同4.5%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は335百万円(同5.8%減)と、増収ながら減益の結果となった。ただし、利益面の減少は一時的な戦略投資が主因である。具体的には、従業員の処遇改善や教育を含む人的資本への投資拡充、営業力強化に向けた事業所の新設や拡張、創立60周年記念施策、そして新たに連結子会社となったセプトの経営統合プロセスに伴うコスト発生などが挙げられる。これらの施策はすべて期初に織り込み済みで、通期業績予想に影響を及ぼすものではない。
顧客産業別売上高はおおむね想定どおり
2. 顧客産業別売上高の動向
顧客産業別の売上構成を見ると、M&Aによるセプトの連結効果を除いた2社ベースでは、重点強化領域(半導体・製造)の比率が前年同期比で3ポイント上昇し48%となった。半導体市場の回復を背景に、特にメモリ関連顧客からの新規案件が増加したことが主因である。
一方、セプトを含めた3社連結ベースでは、セプトが主に金融および情報通信分野の案件を手掛けていることから、全体の構成比は前年同期とほぼ同水準となった。すなわち、既存領域では重点強化分野が伸長しつつも、新たに連結された安定成長領域(金融・情報通信)の比率がバランスを保つ結果となったといえる。なお、セプトに関しては買収後のハンズオンに注力し社内のオペレーション改善が進むなど、PMIはおおむね順調のようである。
売上拡大の主要因は、重点強化領域におけるメモリを中心とした半導体関連案件の増加であり、この領域が成長ドライバーとして機能している。安定成長領域については、既存顧客との安定取引により前年同期並みの売上高を確保した。社会課題解決領域の売上はまだ小規模ながら、電力関連顧客からインフラサービス案件を受注しており、将来的な成長余地を有している。
全体として、同社の顧客ポートフォリオは「重点強化領域による成長」と「安定成長領域による下支え」がバランス良く機能しており、事業構造の多層化が着実に進展していると評価できる。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期の資産合計は10,140百万円(前期末比322百万円の増加)となり、資産規模は引き続き拡大した。内訳を見ると、流動資産は6,995百万円(126百万円の減少)とやや減少したが、固定資産は3,144百万円(同448百万円の増加)と大幅に増加している。特に固定資産の伸長は、M&Aを含む成長投資や新拠点整備、人的資本投資など、長期的な事業基盤強化の進展を反映したものとみられる。一方、現金及び預金は2,813百万円(同518百万円の減少)となったが、現預金回転期間は1.9ヶ月となり、資金運用効率は改善傾向にある。負債合計は2,832百万円(同266百万円の増加)と微増、純資産合計は7,308百万円(同54百万円の増加)で推移し、自己資本比率は72.1%と引き続き高水準を維持している。無借金経営による強固な財務体質が継続している点が特徴である。
収益面では、売上高営業利益率が5.5%となり、成長投資負担やPMI関連費用の影響が表れた。同社は資本効率を一定程度確保しつつ、堅実な財務構造を背景に積極的な投資を継続しており、今後は財務レバレッジの適度な活用や高付加価値ソリューションビジネスの拡大による収益性向上が焦点となる。
4. 事業トピックス
(1) コアサービスの強化
a) セプトとの統合シナジーの状況
2025年4月に子会社セプトをM&Aによりグループに加えた。これにより連結社員数は2025年9月時点で1,242名となり、エンジニアリソースの拡充が実現した。
セプトは従来、二次請け・三次請けの案件を中心に活動してきたが、同社本体の一次請け案件にセプトのリソースを組み込むことで、機会損失の削減と利益率改善を見込む構造転換を狙っている。現在、両社間で人材交流やローテーションを実施し、共有するビジネス戦略のもと、体制整備を進めている。また、経理システム・勤怠管理システムなどのバックオフィス統合を進め、間接業務の効率化と統一運用による管理コスト抑制を図る。2026年4月までに3社の制度統一を完了させる計画である。これにより、将来的なスケールメリットとコスト効率の向上が見込まれている。
b) 半導体拠点の新設・拡張
半導体関連の重点顧客への対応強化を目的として、岩手県北上市に事業所を新設した。これは地理的に近い大手半導体顧客との関係強化や開発/運用支援の拡充を狙った戦略的拠点展開である。
また、既存の拠点では、四日市事業所を駅近の新築物件へ移転・拡張し、従業員の快適性や業務効率の向上を図る。顧客先からの戻りやすさ、働きやすい環境整備によって、エンジニア稼働効率と定着性の改善を目指している。
(2) ソリューションサービスの育成
a) 顧客・パートナーとの共創案件
ソリューションサービス拡大を狙い、既存の保守・運用サービスにとどまらず、「共創」による付加価値の高い案件獲得を強化している。現在、重点強化領域の顧客に対して生成AI環境整備、コードのリファクタリング、在庫コントロールの可視化支援などの取り組みを進めており、実績を少しずつ積み上げている。ただし、まだスピード面では顧客の期待に完全には応えきれておらず、ソリューションメニューの整理・ブラッシュアップを進めた上で、準備が整ったところから順次発表する計画である。
b) インフラ・セキュリティサービスのリニューアル
セキュリティを軸とした「伴走型支援サービス」を展開している。外部パートナー(例:Cybereason)と提携して紹介イベントを開催し、引き合いを増やす取り組みを行っている。これにより、インフラ/セキュリティ分野におけるソリューション需要の取り込みを狙っている。このサービス強化は、単発の開発受託型ビジネスから、ストック型あるいは継続型のソリューションビジネスへの転換を見据えたもので、安定収益基盤の拡充と長期的な顧客関係の構築を意図している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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