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矢作建 Research Memo(6):2030年度の売上高2,000億円規模の達成に向け、加速度的成長フェーズへ
配信日時:2025/12/23 11:36
配信元:FISCO
*11:36JST 矢作建 Research Memo(6):2030年度の売上高2,000億円規模の達成に向け、加速度的成長フェーズへ
■中長期の成長戦略
1. 2030年に目指す姿
矢作建設工業<1870>は、2030年度の目指す姿として「課題解決&価値創造型企業」を掲げ、売上高2,000億円規模の達成を目標とする。顧客や地域の課題解決に加え、建設エンジニアリングの力で新たな価値を創造し、社会の持続的発展に貢献するという意志が込められている。また、リニア中央新幹線開業を見据える「リニア経済圏」への事業拡大や、地場密着型ゼネコンとしてのポジションを生かした社会課題解決型ビジネスの展開を通じて、単なる受注者ではなく価値提供者としての立ち位置を確立する方針だ。
長期ビジョンの実現に向け、2030年度までの10年間を「進化」と「拡大」の2段階で戦略的に構成している。現 中期経営計画では「既存事業の深化・進化」と「新規分野・領域の探索・開拓」を並行して推進し、事業規模の拡大と将来に向けた基盤構築に取り組んだ。次期中期経営計画の後半5ヶ年(2026~2030年度)では、現 中期経営計画で築いた基盤を生かし、加速度的な成長を実現するフェーズと位置付けている。利益追求と持続的成長を両立し、強靭な利益体質の構築とROE改善による企業価値の向上を目指す。また、M&Aについても、目的を明確に定めたうえで、シナジー創出が見込める案件を積極的に検討する。
現 中期経営計画は目標達成を見込む。成長投資も計画を上回る進捗
2. 中期経営計画と進捗状況
2026年3月期の売上高は、中期経営計画で掲げた目標値130,000百万円を大きく上回る168,000百万円を見込む。営業利益も目標の10,000百万円の達成を予想する。建築事業・土木事業・不動産事業のいずれも順調に推移していることから、利益面においても目標を上回る可能性が高いと見られる。
キャッシュ・アロケーションについては、利益創出と財務の健全性を両立し、有利子負債を活用して将来への成長投資と株主還元に適切に配分する方針だ。現 中期経営計画期間中に、累計300億円以上の成長投資と120億円以上の株主還元を実施する計画であったが、成長投資は2025年3月期までに既に約350億円を実行済みであり、当初計画を上回って進捗している。
成長投資の内訳は、不動産・研究開発・人財・情報化・M&Aである。このうち、不動産投資では産業用地開発を中心に236億円を投入し、累計約300億円の売上高を達成した。開発中の用地面積は30万坪を超える規模であり、今後の売上への寄与が見込まれる。産業用地開発は、土地の造成(土木事業)、宅地販売(不動産事業)、設計・施工(建築事業)まで一貫した事業展開が可能であり、投下資金の早期回収に加え、安定的なキャッシュ・フローを創出する好循環につながっている。足元では、基盤である東海圏を中心に複数のプロジェクトが進行しているが、今後は関東や関西地方でも同様の取り組みを展開する方針だ。
M&Aについては、2023年3月に京都を地盤とする北和建設を子会社化した。北和建設はマンション工事を中心に、ホテルや福祉施設などの建築工事を手掛けており、関西圏に強固な営業基盤と施工キャパシティを持つ。これにより、関西圏における事業拡大を目指す。また、今後は「リニア経済圏」への事業エリア拡大、供給力(施工キャパシティ)の増強などに向けて引き続き積極的に検討を進める。
研究開発分野については、RCS構造の改良やPW工法の信頼性向上に向けた技術投資を実施した。また、情報化分野では、ITインフラ整備や情報セキュリティ強化を、人財分野では、従業員の処遇改善やマネジメント研修への投資を積極的に実施した。
次期中期経営計画では、安定的な収益基盤の確立を目指す
3. 次期中期経営計画の方向性
2026年4月から始まる5ヶ年の次期中期経営計画では、最終年度に売上高2,000億円の達成を目指す。計画の詳細は策定中だが、単に売上規模の拡大を追求するのではなく、大型案件の有無に業績が左右されにくい、安定的な収益基盤の確立を目指す方針だ。
「対象分野の拡張」にも継続して取り組み、これまで実績の少なかったデータセンター、高機能オフィス、ホテルなどの施工、大口径トンネル工事への進出も視野に入れる。関東・関西へのエリア拡大にも積極的に取り組むとともに、東海地区においてもこれまで取引がない優良企業の開拓余地があると見ており、顧客層の多様化も推進する。将来のさらなる事業成長に向けた土台作りの期間として位置付け、エリア・顧客・分野の多様化につながる案件を優先的に取り組む考えだ。
また、2024年からサッカーJリーグ「名古屋グランパス」のスポンサーシップを実施している。地域を代表するスポーツチームの支援を通じて、従業員のエンゲージメント向上や地域との連携強化に貢献している。スポンサー活動を今後のビジネス機会の創出にも生かす方針である。
■株主還元策
配当方針を「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」へ転換
同社は、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて、長期的な視点に立ち株主資本の充実に努めるとともに、継続的かつ安定的な株主還元の実施を基本方針としている。この方針を明確化するため、2025年5月に配当方針を従来の「配当性向30%以上」から転換し、2026年3月期以降は「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」とした。利益変動に左右されにくい安定配当の実現を目指す考えである。
2025年3月期の年間配当は1株当たり80.0円となり、前期比で20.0円の増配となった。このうち、60.0円は普通配当、20.0円は創立75周年を記念した特別配当である。結果として、DOEは5.1%、配当性向は61.0%となった。
2026年3月期の年間配当は90.0円を予定しており、普通配当ベースで実質30.0円の増配となる見込みだ。これにより、DOEは5.6%、配当性向は58.7%となる見通しで、株主還元の強化を明確に打ち出したものと評価できる。また、この配当方針変更は、資本効率の改善、企業価値向上、株式市場での評価向上を企図したものである。
2025年2月の株式売り出しによって、同社の株主数は2024年12月比で約3倍に増加した。株主との丁寧な対話を重視し、株主還元についても誠実かつ積極的に取り組む姿勢を示している。2008年に100万株を取得し、以降は大規模な自己株式取得の実績はないが、今後は時価総額向上の観点から、その可能性を排除せず、必要に応じて柔軟に対応を検討する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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1. 2030年に目指す姿
矢作建設工業<1870>は、2030年度の目指す姿として「課題解決&価値創造型企業」を掲げ、売上高2,000億円規模の達成を目標とする。顧客や地域の課題解決に加え、建設エンジニアリングの力で新たな価値を創造し、社会の持続的発展に貢献するという意志が込められている。また、リニア中央新幹線開業を見据える「リニア経済圏」への事業拡大や、地場密着型ゼネコンとしてのポジションを生かした社会課題解決型ビジネスの展開を通じて、単なる受注者ではなく価値提供者としての立ち位置を確立する方針だ。
長期ビジョンの実現に向け、2030年度までの10年間を「進化」と「拡大」の2段階で戦略的に構成している。現 中期経営計画では「既存事業の深化・進化」と「新規分野・領域の探索・開拓」を並行して推進し、事業規模の拡大と将来に向けた基盤構築に取り組んだ。次期中期経営計画の後半5ヶ年(2026~2030年度)では、現 中期経営計画で築いた基盤を生かし、加速度的な成長を実現するフェーズと位置付けている。利益追求と持続的成長を両立し、強靭な利益体質の構築とROE改善による企業価値の向上を目指す。また、M&Aについても、目的を明確に定めたうえで、シナジー創出が見込める案件を積極的に検討する。
現 中期経営計画は目標達成を見込む。成長投資も計画を上回る進捗
2. 中期経営計画と進捗状況
2026年3月期の売上高は、中期経営計画で掲げた目標値130,000百万円を大きく上回る168,000百万円を見込む。営業利益も目標の10,000百万円の達成を予想する。建築事業・土木事業・不動産事業のいずれも順調に推移していることから、利益面においても目標を上回る可能性が高いと見られる。
キャッシュ・アロケーションについては、利益創出と財務の健全性を両立し、有利子負債を活用して将来への成長投資と株主還元に適切に配分する方針だ。現 中期経営計画期間中に、累計300億円以上の成長投資と120億円以上の株主還元を実施する計画であったが、成長投資は2025年3月期までに既に約350億円を実行済みであり、当初計画を上回って進捗している。
成長投資の内訳は、不動産・研究開発・人財・情報化・M&Aである。このうち、不動産投資では産業用地開発を中心に236億円を投入し、累計約300億円の売上高を達成した。開発中の用地面積は30万坪を超える規模であり、今後の売上への寄与が見込まれる。産業用地開発は、土地の造成(土木事業)、宅地販売(不動産事業)、設計・施工(建築事業)まで一貫した事業展開が可能であり、投下資金の早期回収に加え、安定的なキャッシュ・フローを創出する好循環につながっている。足元では、基盤である東海圏を中心に複数のプロジェクトが進行しているが、今後は関東や関西地方でも同様の取り組みを展開する方針だ。
M&Aについては、2023年3月に京都を地盤とする北和建設を子会社化した。北和建設はマンション工事を中心に、ホテルや福祉施設などの建築工事を手掛けており、関西圏に強固な営業基盤と施工キャパシティを持つ。これにより、関西圏における事業拡大を目指す。また、今後は「リニア経済圏」への事業エリア拡大、供給力(施工キャパシティ)の増強などに向けて引き続き積極的に検討を進める。
研究開発分野については、RCS構造の改良やPW工法の信頼性向上に向けた技術投資を実施した。また、情報化分野では、ITインフラ整備や情報セキュリティ強化を、人財分野では、従業員の処遇改善やマネジメント研修への投資を積極的に実施した。
次期中期経営計画では、安定的な収益基盤の確立を目指す
3. 次期中期経営計画の方向性
2026年4月から始まる5ヶ年の次期中期経営計画では、最終年度に売上高2,000億円の達成を目指す。計画の詳細は策定中だが、単に売上規模の拡大を追求するのではなく、大型案件の有無に業績が左右されにくい、安定的な収益基盤の確立を目指す方針だ。
「対象分野の拡張」にも継続して取り組み、これまで実績の少なかったデータセンター、高機能オフィス、ホテルなどの施工、大口径トンネル工事への進出も視野に入れる。関東・関西へのエリア拡大にも積極的に取り組むとともに、東海地区においてもこれまで取引がない優良企業の開拓余地があると見ており、顧客層の多様化も推進する。将来のさらなる事業成長に向けた土台作りの期間として位置付け、エリア・顧客・分野の多様化につながる案件を優先的に取り組む考えだ。
また、2024年からサッカーJリーグ「名古屋グランパス」のスポンサーシップを実施している。地域を代表するスポーツチームの支援を通じて、従業員のエンゲージメント向上や地域との連携強化に貢献している。スポンサー活動を今後のビジネス機会の創出にも生かす方針である。
■株主還元策
配当方針を「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」へ転換
同社は、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて、長期的な視点に立ち株主資本の充実に努めるとともに、継続的かつ安定的な株主還元の実施を基本方針としている。この方針を明確化するため、2025年5月に配当方針を従来の「配当性向30%以上」から転換し、2026年3月期以降は「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」とした。利益変動に左右されにくい安定配当の実現を目指す考えである。
2025年3月期の年間配当は1株当たり80.0円となり、前期比で20.0円の増配となった。このうち、60.0円は普通配当、20.0円は創立75周年を記念した特別配当である。結果として、DOEは5.1%、配当性向は61.0%となった。
2026年3月期の年間配当は90.0円を予定しており、普通配当ベースで実質30.0円の増配となる見込みだ。これにより、DOEは5.6%、配当性向は58.7%となる見通しで、株主還元の強化を明確に打ち出したものと評価できる。また、この配当方針変更は、資本効率の改善、企業価値向上、株式市場での評価向上を企図したものである。
2025年2月の株式売り出しによって、同社の株主数は2024年12月比で約3倍に増加した。株主との丁寧な対話を重視し、株主還元についても誠実かつ積極的に取り組む姿勢を示している。2008年に100万株を取得し、以降は大規模な自己株式取得の実績はないが、今後は時価総額向上の観点から、その可能性を排除せず、必要に応じて柔軟に対応を検討する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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