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サイバーセキュリティクラウド:自社開発WAFを強みに高成長を維持、M&Aで周辺領域への展開も

配信日時:2025/12/22 11:29 配信元:FISCO
*11:29JST サイバーセキュリティクラウド:自社開発WAFを強みに高成長を維持、M&Aで周辺領域への展開も サイバーセキュリティクラウド<4493>は、WebサイトやWebアプリケーションをサイバー攻撃から防御するクラウド型セキュリティサービスを提供する企業だ。主力領域はWAF(Web Application Firewall:Webアプリケーションへの不正アクセスを検知・遮断する仕組み)であり、国内では自社開発プロダクトを軸に展開する数少ない専業プレイヤーとしてポジションを確立している。主力サービス「攻撃遮断くん」は、Webトラフィック量に応じた課金型モデルを採用しており、顧客の事業成長とともに同社の売上が拡大する構造を持つ点が特徴だ。

事業面では、「攻撃遮断くん」に加え、クラウドWAFの自動運用を可能にする「WafCharm」、さらに運用まで含めて一括提供するフルマネージドセキュリティサービス「CloudFastener」を展開している。これにより、単なるセキュリティ製品の提供にとどまらず、運用負荷を嫌う企業ニーズを取り込む形で付加価値を高めている。直近では、WafCharmおよびCloudFastenerが好調に推移しており、ストック型収益の積み上がりが進んでいる点が注目される。

WAF自動運用サービス「WafCharm」において、WAFログの保存期間を柔軟に設定できる「WAFログストレージ機能」と、アクセスをユースケースに応じて分類・判別し、不審なアクセスを容易に特定できる「Log Intelligenceオプション」の提供を開始した。運用負荷の軽減に加え、ログ活用の高度化を図ることで、セキュリティ運用の実効性向上と付加価値拡大を狙う。

2025年12月期第3四半期累計業績は、売上高37.2億円(前年同期比33.1%増)、営業利益8.4億円(同21.1%増)と高成長を維持した。第3四半期単体では、営業利益3.6億円と過去最高を更新している。業績拡大の主因は、既存顧客におけるWebトラフィック増加に伴う単価上昇に加え、WafCharmやマネージドサービスの契約拡大によるものだ。加えて、CloudFastenerはARR3.27億円(前年同期比369.3%増)と急拡大しているほか、2024年10月に連結子会社化したジェネレーティブテクノロジー(受託開発)および、2025年2月に連結子会社化したDataSign(個人情報同意管理ツール「webtru」)が売上に寄与し始めている。これらはWebセキュリティ周辺領域への事業拡張として位置付けられ、既存顧客基盤を活用したクロスセル展開の広がりが見込まれる。

通期業績については、売上高50.0億円(前期比29.6%増)、営業利益10.0億円(同29.3%増)を計画している。第3四半期時点での進捗は順調であり、売上・利益ともに高水準で推移している。主力サービスの解約率は1%前後と低水準に抑えられており、ストック型収益を基盤としたビジネスモデルの特性から、売上面のみならず利益面においても通期計画の達成確度は高いとみられる。第4四半期に向けては、前年同様にラスベガスで開催されるAWS最大の年次イベント「AWS re:Invent 2025」への参加を予定しており、これに伴う営業関連費用の発生が見込まれる。ただし、同イベントへの参加は新規顧客開拓やパートナー連携強化を目的とした継続的な取り組みであり、現時点で業績計画に大きな影響を及ぼす水準にはないと考えられる。

市場環境を見ると、企業のクラウド活用が進展する中で、Webアプリケーションを狙った攻撃は増加傾向にあり、WAF需要は中長期的に底堅い。競合には海外製品が多く、国内ではそれらを代理販売・運用する事業者が多い中、同社は自社開発プロダクトを保有している点が差別化要因となっている。特にWafCharmは自動運用という独自性を持ち、競合が限定的な領域とされている。

中期経営計画では、今期が最終年度に当たり、財務目標として掲げる売上高50億円、営業利益10億円の達成が視野に入っている。主軸であるWebセキュリティ事業の拡大を基盤に、現状では売上の1割弱にとどまる海外事業の成長や、アプリケーションセキュリティ、プライバシー管理といった隣接領域への展開、さらにM&Aを通じた事業領域の拡張を中長期的な成長ドライバーとして位置付けている。

株主還元については、2025年12月期に年間配当5円を予定しており、前期比2円の増配となる。現時点では成長投資を優先する段階にあり、配当利回りは高くないものの、将来的には利益成長に応じた還元余地が広がる可能性がある。高い成長率と収益性を兼ね備えたWebセキュリティ企業として、引き続き中長期視点での成長持続性が注目される。

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