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久世:首都圏密着と高付加価値食品で成長を続ける外食向け食材卸プラットフォーマー
配信日時:2025/12/19 09:49
配信元:FISCO
*09:49JST 久世:首都圏密着と高付加価値食品で成長を続ける外食向け食材卸プラットフォーマー
久世<2708>は、外食・中食事業者向けに食材および資材を販売する業務用食材卸であり、食材卸売事業(前期売上高構成比90.0%)と食材製造事業(同9.6%)の2事業が主力となる。食材卸売事業では業務用グロサリー・冷凍食品・チルド食品・生鮮・青果・水産など幅広いカテゴリーを扱い、割りばし・テイクアウト容器・洗剤といったノンフードまで手掛け、取扱アイテムは約40,000点に達する。創業91年を迎えた老舗企業であり、関東に事業基盤を置くことから、国内外食市場の約4割を占める同エリアで強固な取引網を構築している。また、ホテル、外食チェーン、機内食など顧客層は多様で、24時間受注・翌日配送の体制を整え、顧客の「今欲しい」に応える高いオペレーション能力を有する。更に、共同購買組織であるJFSAの関連商品の提案を進めており、独自のPB「メイキット」シリーズを中心に販売を強化している。一方の食材製造事業では、エキス抽出や風味づくりを伴う小ロット・多品種商品の製造を手作りに近い形で行い、大量生産では難しい高付加価値商品の供給をしている。
同社の強みは、第一に総合食材卸としての幅広い品揃えと生鮮対応力である。水産・青果まで自社グループで扱える体制があり、外食チェーンからホテル・レジャー施設まで幅広い顧客のニーズにワンストップで応えることを可能にしている。首都圏の外食市場は多業態・高回転が特長であるため、総合対応力は競争優位となる。第二に、食材製造事業における小ロット・多品種・手作りに近い製造技術である。外食産業では人手不足が深刻であり、店舗調理の負荷軽減を目的とした高加工度商品の需要が拡大している。大手食品メーカーでは再現が難しい風味・食感を強みとする同社の製造技術は、顧客の差別化ニーズに応え、粗利改善にも寄与する。第三に、首都圏集中戦略と高効率物流の構築である。東京に根差した企業としての地理的優位性に加え、新物流センターの整備により、物流ネットワークの最適化を進めている。観光・レジャー・インバウンド需要が活性化する中、機内食やホテル向け需要取り込みに強みがあり、成長余地は大きい。
2026年3月期中間期の業績は、売上高36,139百万円(前年同期比8.1%増)、営業利益986百万円(同33.8%増)で着地した。既存の顧客との取り組み強化、新規開拓、価格適正化により増収を確保し、付加価値商品の販売強化、原価低減、生産性向上により粗利率が改善した。セグメント別では、食材卸売事業は人手不足をカバーする簡便調理品の販売・提案を強化したことが功を奏した。また、食材製造事業は主に連結子会社キスコフーズ株式会社が食材製造を行っており、依然として原材料の高騰や円安の影響で仕入コストは上昇したが、既存顧客との取り組みを優先し、足元の生産性の向上に努めた結果が表れた。今期計画は売上高71,000百万円(前期比3.5%増)、営業利益1,920百万円(同3.9%増)で増収増益を見込む。物流センター費用は引き続き負担となるものの、首都圏での物流キャパシティ拡大とPB・JFSA商品販売強化が利益押し上げの材料となる。
同社は2035年の創業100周年を見据え、「持続可能で質的な成長」を長期テーマに掲げる。長期ビジョンでは、営業利益率2%以上を維持しつつ、売上の拡大と収益性向上を両立する姿勢を示す。重点施策として、関東集中・機能強化・プラスオンを掲げ、組織的な変革を段階的に進める計画だ。外食産業は人手不足が恒常化しつつあり、店舗での調理工程を外部に移管する流れが強まっている。同社の小ロット・多品種製造技術や簡便調理品はこの流れと親和性が高く、加工度の高い商品群が今後の成長ドライバーとなる。また、インバウンド回復により機内食・ホテル・レジャー向け市場の拡大が期待され、首都圏集中戦略により効率的にシェアを獲得できる環境が整っている。コロナ時は自社・外部倉庫を閉鎖したが、コロナ後物流キャパシティを広げ、新規客取り込みに成功。輸出市場についても日本食の世界的普及を背景に強化方針を明示しており、中長期での新たな収益源として期待される。
株主還元については、2025年3月期は普通配当15円に特別配当27円を加え、合計42円を実施した。2026年3月期は普通配当42円に一本化し、配当性向10-15%程度を目標に安定した還元を志向している。また、株主優待として1単元(100株)以上を保有している株主を対象とし、株式保有数に応じて同社ブランドの特選無洗米(山形県天童産・新米)を進呈するなど、ファン株主の拡大にも取り組んでいる。財務面では借入金削減と自己資本比率の改善により、今後は成長投資と株主還元のバランスを取りやすい体制となっている。
総じて、久世は首都圏を基盤とした高効率物流、総合卸としての対応力、小ロット・高付加価値製造という3つの強みを軸に、外食需要回復の恩恵を取り込みつつ構造的な成長を続けている。100周年に向けた長期ビジョンでは収益力向上と事業変革を明確に示しており、加工食品需要の拡大やインバウンド回復といった追い風を背景に、今後の業績成長を期待したい。
<NH>
同社の強みは、第一に総合食材卸としての幅広い品揃えと生鮮対応力である。水産・青果まで自社グループで扱える体制があり、外食チェーンからホテル・レジャー施設まで幅広い顧客のニーズにワンストップで応えることを可能にしている。首都圏の外食市場は多業態・高回転が特長であるため、総合対応力は競争優位となる。第二に、食材製造事業における小ロット・多品種・手作りに近い製造技術である。外食産業では人手不足が深刻であり、店舗調理の負荷軽減を目的とした高加工度商品の需要が拡大している。大手食品メーカーでは再現が難しい風味・食感を強みとする同社の製造技術は、顧客の差別化ニーズに応え、粗利改善にも寄与する。第三に、首都圏集中戦略と高効率物流の構築である。東京に根差した企業としての地理的優位性に加え、新物流センターの整備により、物流ネットワークの最適化を進めている。観光・レジャー・インバウンド需要が活性化する中、機内食やホテル向け需要取り込みに強みがあり、成長余地は大きい。
2026年3月期中間期の業績は、売上高36,139百万円(前年同期比8.1%増)、営業利益986百万円(同33.8%増)で着地した。既存の顧客との取り組み強化、新規開拓、価格適正化により増収を確保し、付加価値商品の販売強化、原価低減、生産性向上により粗利率が改善した。セグメント別では、食材卸売事業は人手不足をカバーする簡便調理品の販売・提案を強化したことが功を奏した。また、食材製造事業は主に連結子会社キスコフーズ株式会社が食材製造を行っており、依然として原材料の高騰や円安の影響で仕入コストは上昇したが、既存顧客との取り組みを優先し、足元の生産性の向上に努めた結果が表れた。今期計画は売上高71,000百万円(前期比3.5%増)、営業利益1,920百万円(同3.9%増)で増収増益を見込む。物流センター費用は引き続き負担となるものの、首都圏での物流キャパシティ拡大とPB・JFSA商品販売強化が利益押し上げの材料となる。
同社は2035年の創業100周年を見据え、「持続可能で質的な成長」を長期テーマに掲げる。長期ビジョンでは、営業利益率2%以上を維持しつつ、売上の拡大と収益性向上を両立する姿勢を示す。重点施策として、関東集中・機能強化・プラスオンを掲げ、組織的な変革を段階的に進める計画だ。外食産業は人手不足が恒常化しつつあり、店舗での調理工程を外部に移管する流れが強まっている。同社の小ロット・多品種製造技術や簡便調理品はこの流れと親和性が高く、加工度の高い商品群が今後の成長ドライバーとなる。また、インバウンド回復により機内食・ホテル・レジャー向け市場の拡大が期待され、首都圏集中戦略により効率的にシェアを獲得できる環境が整っている。コロナ時は自社・外部倉庫を閉鎖したが、コロナ後物流キャパシティを広げ、新規客取り込みに成功。輸出市場についても日本食の世界的普及を背景に強化方針を明示しており、中長期での新たな収益源として期待される。
株主還元については、2025年3月期は普通配当15円に特別配当27円を加え、合計42円を実施した。2026年3月期は普通配当42円に一本化し、配当性向10-15%程度を目標に安定した還元を志向している。また、株主優待として1単元(100株)以上を保有している株主を対象とし、株式保有数に応じて同社ブランドの特選無洗米(山形県天童産・新米)を進呈するなど、ファン株主の拡大にも取り組んでいる。財務面では借入金削減と自己資本比率の改善により、今後は成長投資と株主還元のバランスを取りやすい体制となっている。
総じて、久世は首都圏を基盤とした高効率物流、総合卸としての対応力、小ロット・高付加価値製造という3つの強みを軸に、外食需要回復の恩恵を取り込みつつ構造的な成長を続けている。100周年に向けた長期ビジョンでは収益力向上と事業変革を明確に示しており、加工食品需要の拡大やインバウンド回復といった追い風を背景に、今後の業績成長を期待したい。
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