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kubell Research Memo(7):売上は想定レンジを下回るも利益は上振れ(2)

配信日時:2025/12/18 13:27 配信元:FISCO
*13:27JST kubell Research Memo(7):売上は想定レンジを下回るも利益は上振れ(2) ■今後の見通し

2. トピックス

(1) サービスを横断したマーケティング基盤の整備が進展
kubell<4448>は、Chatworkにおいて792.7万IDまで拡大した豊富な顧客基盤をグループ全体のマーケティングエンジンとして活用する体制整備を進めている。これにより、複数サービス間を横断した効率的な顧客獲得とクロスセルの最大化を図ることが期待される。AIを活用したデータ分析に基づき、最適なチャネルを組み合わせることでマーケティング精度が向上し、より効率的な施策展開が可能となる。BPaaSサービス「タクシタ」においても新規顧客の約6割をChatwork経由で獲得しており、ユーザー基盤の規模が有効に活用されている。この成果は同社が持つプラットフォーム価値の高さを示すものであり、今後の競争優位性の確立及び事業拡大に大きく寄与すると弊社は考える。

(2) 社労士向けシェアトップクラスSaaS「社労夢」との連携を開始
同社は、社労士事務所向け業務支援システムとして高いシェアを持つ「社労夢」とChatworkのAPI連携を開始した。これにより、社労夢からChatworkへ各種通知、ファイル送信、タスク登録が可能となり、従来メールや電話に依存していた社労士と顧問先とのコミュニケーション負荷を大幅に減らす効果が期待される。これまで電子申請結果の通知や公文書共有などは情報の見落としや確認の手間が業務負担となっていたが、Chatwork上に業務連絡を集約することで情報管理の精度が高まり、業務全体の効率化につながる。さらに、Chatwork未利用者に対して、Chatworkアカウント登録を促す仕組みも導入予定で、Chatworkユーザー基盤の拡大にもつなげていく。API連携による双方のサービス価値向上に加え、顧客基盤の拡大につながる取り組みでもあり、同社の成長戦略において重要な位置付けにあると弊社では見ている。

(3) プロダクト開発体制が整い、戦略的施策が進む
2025年7月から、主力事業であるChatwork事業において、新たにCPO(Chief Product Officer)、CTO(Chief Technology Officer)を任命し、プロダクト主導の成長をけん引する経営体制の強化を行った。これによりPLGやAI活用といった戦略的に重要な開発テーマを推進する体制が整い、持続的な事業成長を実現する基盤が構築される。開発体制が強化されたことで、Chatworkの改善スピードが大幅に上昇し、直近ではパスワードレス機能や初期登録情報の最小化などが実装された。これらの施策はアカウント登録完了率の有意な上昇につながっており、ユーザー獲得効率の改善が期待される。今後はタスク機能の強化やAI機能の実装なども予定されており、サービス価値の向上と継続利用率の向上が期待される。プロダクト起点の戦略的施策が明確に進展しており、ユーザー体験の底上げを通じて中長期的な収益向上が期待できると弊社は見ている。

(4) BPaaSドメインの新サービス「タクシタ採用」を提供開始
2025年8月より、BPaaSドメインにおける新サービスとして「タクシタ採用」の提供を開始した。同サービスはRPO(採用代行サービス)として、中小企業が抱える採用プロセス全体をワンストップかつ低コストで支援するもので、採用戦略の立案から求人票作成、面接調整、入社後支援までを包含する。中小企業の65.6%が人手不足を感じる※なかで、採用ノウハウ不足やリソース不足といった課題に対して直接的な解決策を提供する「タクシタ採用」は、市場ニーズを的確に捉えているサービスである。さらに、既存の経理や労務領域のユーザー企業に対する拡販効果も見込まれるため、BPaaS事業の裾野拡大に寄与する可能性が高い。事業ポートフォリオの強化と横展開を図る戦略として、中期的な収益成長への貢献が期待できる。RPO(採用代行サービス)は、単純作業だけでなく一定の採用戦略立案までカバーするサービスのため、付加価値の高い領域として高単価が得られる。中小企業のニーズは強く、可能な範囲で定型化・自動化を進めつつ、単価維持とのバランスをとりながらサービス展開を行う方針である。

※ 日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」。決算説明資料より引用

(5) 「ペイトナー請求書」を吸収分割により事業承継
同社は2026年1月1日(予定)に、ペイトナー(株)が運営する「ペイトナー請求書」事業を簡易吸収分割により承継する。本サービスは請求書の回収・管理から振込予約・実行までを一気通貫で自動化する点に特徴があり、特に経理専任者がいない中小企業やスタートアップに適したプロダクトである。同社にとっては、Fintech領域のケイパビリティ獲得により経理業務DXの支援力を強化できるうえ、既存のBPaaSサービス「タクシタ」や「Chatwork 労務管理」との補完性が高く、業務効率向上と利益率改善への寄与が期待される。さらにChatwork既存顧客へのクロスセルによるマーケティング効率の向上も見込まれ、BPaaS戦略の加速に資する施策である。また、譲渡元であるペイトナーが同社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)投資先である点も特筆に値する。CVC投資は、Chatworkの顧客基盤と親和性が高い企業を選定しており、出資先へのユーザー送客を通じたバリューアップ効果もある。そのため、CVC投資を経て事業買収に進むことで、M&Aの確度向上にもつながっている。今後もCVC投資先からの事業譲受を有力な選択肢として視野に入れている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)

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