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ダイヘン:電力インフラの追い風と半導体装置向け需要が収益牽引、構造的強さを備えた総合電機メーカー
配信日時:2025/10/22 14:30
配信元:FISCO
*14:30JST ダイヘン:電力インフラの追い風と半導体装置向け需要が収益牽引、構造的強さを備えた総合電機メーカー
ダイヘン<6622>は1919年に国内唯一の変圧器専門メーカーとして創業、その後技術革新に挑み続けて変圧器・電力機器から産業用ロボット、溶接機、高周波電源、EV充電器まで幅広い製品を展開している。電力の安定供給を支える創業からの主力製品である柱上変圧器は国内シェア61%と国内No.1、工場の自動化と溶接の高品質化に大きく貢献するアーク溶接ロボットで国内シェア39%(国内No.1)・海外シェア20%(海外No.1)のほか、アーク溶接機や半導体製造装置向け高周波電源など複数分野で国内首位級のシェアを確立している。事業セグメントは「エネルギーマネジメント」(2025年3月期売上高構成比53.4%)、「ファクトリーオートメーション(FA)」(同14.5%)、「マテリアルプロセシング(MP)」(同32.1%)の3本柱で構成され、社会インフラ・工場自動化・半導体製造といった異なる景気サイクルの分野に事業を分散させていることが最大の特徴である。
同社の競争優位性について、まずは事業ポートフォリオのバランスが挙げられる。自動車や一般産業向け需要が停滞しても、電力インフラや再生エネルギー投資が拡大する局面では確実に業績を支える。祖業である電力機器は依然として全体の約6割を占め、トップランナー制度対応の省エネ変圧器などで高シェアを維持している。また、高周波電源では半導体製造装置向けで国内40%・世界19%のシェアを持ち、生成AIを背景とした先端半導体投資が追い風となっている。さらに、建機や鉄鋼、エネルギー設備など多業種に販路を持つ点も安定性を高めている。欧州では溶接関連の現地企業を買収し、6社体制でシナジーを構築。米国でもオハイオ州のSIerを通じて自動車以外の分野に展開を進めており、地理的・産業的な分散が競合他社にない強みとなっている。
2026年3月期第1四半期は、売上高49,063百万円(前年同期比13.3%増)、営業利益3,163百万円(同3.5倍)と大幅な増収増益で着地した。主因は電力インフラ需要の拡大とコスト削減効果であり、銅など素材価格上昇を吸収した。セグメント別では、エネルギーマネジメントでは、再生可能エネルギー関連投資や受変電設備の更新投資が増加したことが寄与。FAは国内外での新規顧客開拓の取り組み成果により増加、売上高増加及びコスト削減により利益が改善した。MPは、高周波電源システムが生成AI用途の先端半導体関連投資等で堅調に推移。1Q進捗は順調に推移しており、トランプ関税など外部リスクは精査済みながらも想定より影響が軽微となっている。2026年3月期の通期業績見通しは、売上高230,000百万円(前期比1.6%増)、営業利益17,000百万円(同5.1%増)を据え置いている。
市場環境を見ると、再生可能エネルギーの導入拡大とGX投資を背景に、EMS(エネルギーマネジメントシステム)や蓄電池システムの需要は堅調である。2025年7月にはCATL社と定置用蓄電池の供給契約を締結し、EMS事業拡大の基盤を強化した。需給調整市場や太陽光出力抑制対策で蓄電池併設需要が増しており、低騒音・省スペース設計のパッケージ型製品を武器に拡販を進めている。FA市場は米国関税政策の不透明感が残るが、人手不足・賃金上昇を背景に自動化需要は底堅い。協働ロボット「FD-VC8」や自律搬送台車「AiTran500」など新製品の市場投入を進めており、今後の受注動向が注目される。MP市場では半導体分野が引き続き成長ドライバーであり、生成AI普及による高性能メモリ・ロジック投資が同社の高周波電源・真空ロボット事業を支えている。特に半導体向けの高周波電源は生成AI用途や先端パッケージ工程向けの拡販が続く見込みで、長期的には需要増が想定しやすい。四変テック香川工場では産業用油入変圧器の新工場を建設中(2026年10月完成予定)で、生産能力を従来比1.7倍に拡大。データセンターや半導体工場向けの大容量変圧器需要に対応する方針である。大形変圧器についても2029年納入分(今年度受注分)から段階的に約1.3倍の増産体制を目指していく。
中期経営計画(2026年度)では、「脱炭素社会の実現」「労働力不足の解消」「デジタル化の推進」を3本柱に掲げ、数値目標としては2026年度に売上高2,500億円以上、営業利益率10%以上、ROE12%以上、2030年度には売上高3,000億円、営業利益率12%以上、ROE12%以上。電力需給調整市場の拡大に加え、太陽光発電所の出力抑制対策として当社独自のエネルギーマネジメントシステムや蓄電池パッケージの追加併設ニーズが高まっており、旺盛な需要を取り込んでいく。実際、電力分野は注文が飽和しているようで、生産体制をいかに整えるかが鍵となっており、四国新工場を軸に余剰スペースと人員確保など生産体制の整備を急ぐ姿勢を示している。また、国内初となるマルチ電圧対応の超急速充電器の市場投入が進む予定で、同製品の拡販にも注目が集まろう。そのほか、欧米でのSIer買収によりFA・溶接事業の海外売上倍増を目指しており、米国ではオハイオ州を拠点に自動車・一般産業双方をカバーする布陣を構築している。
株主還元については、2025年3月期に1株当たり165円を実施し、2026年3月期は168円へ増配を予定する。配当性向30%以上を堅持しつつ、営業利益の1%を社会貢献へ、コストダウン成果の50%を社員へ還元するという独自方針を掲げており、従業員・地域・投資家の三方よしの利益循環を目指している。
総じて、ダイヘンは電力インフラ・自動化・半導体という異なる成長領域を一社でカバーできる稀有な企業である。短期的には半導体市況の一服や自動車投資の停滞リスクはあるものの、電力・インフラ投資の底堅さが全社業績を支えており、セグメント間の分散が安定成長をもたらしている。2030年に向けた電力需給逼迫、データセンター新設、AI半導体の拡大といった社会構造変化の波に確実に乗れる事業ポジションを有しており、今後も電力インフラを核に持続的な利益成長が期待できる。堅実なオペレーション体制は同社の伝統的な企業風土を体現しており、景気循環を超えた中長期安定型の成長企業として注目したい。
<FA>
同社の競争優位性について、まずは事業ポートフォリオのバランスが挙げられる。自動車や一般産業向け需要が停滞しても、電力インフラや再生エネルギー投資が拡大する局面では確実に業績を支える。祖業である電力機器は依然として全体の約6割を占め、トップランナー制度対応の省エネ変圧器などで高シェアを維持している。また、高周波電源では半導体製造装置向けで国内40%・世界19%のシェアを持ち、生成AIを背景とした先端半導体投資が追い風となっている。さらに、建機や鉄鋼、エネルギー設備など多業種に販路を持つ点も安定性を高めている。欧州では溶接関連の現地企業を買収し、6社体制でシナジーを構築。米国でもオハイオ州のSIerを通じて自動車以外の分野に展開を進めており、地理的・産業的な分散が競合他社にない強みとなっている。
2026年3月期第1四半期は、売上高49,063百万円(前年同期比13.3%増)、営業利益3,163百万円(同3.5倍)と大幅な増収増益で着地した。主因は電力インフラ需要の拡大とコスト削減効果であり、銅など素材価格上昇を吸収した。セグメント別では、エネルギーマネジメントでは、再生可能エネルギー関連投資や受変電設備の更新投資が増加したことが寄与。FAは国内外での新規顧客開拓の取り組み成果により増加、売上高増加及びコスト削減により利益が改善した。MPは、高周波電源システムが生成AI用途の先端半導体関連投資等で堅調に推移。1Q進捗は順調に推移しており、トランプ関税など外部リスクは精査済みながらも想定より影響が軽微となっている。2026年3月期の通期業績見通しは、売上高230,000百万円(前期比1.6%増)、営業利益17,000百万円(同5.1%増)を据え置いている。
市場環境を見ると、再生可能エネルギーの導入拡大とGX投資を背景に、EMS(エネルギーマネジメントシステム)や蓄電池システムの需要は堅調である。2025年7月にはCATL社と定置用蓄電池の供給契約を締結し、EMS事業拡大の基盤を強化した。需給調整市場や太陽光出力抑制対策で蓄電池併設需要が増しており、低騒音・省スペース設計のパッケージ型製品を武器に拡販を進めている。FA市場は米国関税政策の不透明感が残るが、人手不足・賃金上昇を背景に自動化需要は底堅い。協働ロボット「FD-VC8」や自律搬送台車「AiTran500」など新製品の市場投入を進めており、今後の受注動向が注目される。MP市場では半導体分野が引き続き成長ドライバーであり、生成AI普及による高性能メモリ・ロジック投資が同社の高周波電源・真空ロボット事業を支えている。特に半導体向けの高周波電源は生成AI用途や先端パッケージ工程向けの拡販が続く見込みで、長期的には需要増が想定しやすい。四変テック香川工場では産業用油入変圧器の新工場を建設中(2026年10月完成予定)で、生産能力を従来比1.7倍に拡大。データセンターや半導体工場向けの大容量変圧器需要に対応する方針である。大形変圧器についても2029年納入分(今年度受注分)から段階的に約1.3倍の増産体制を目指していく。
中期経営計画(2026年度)では、「脱炭素社会の実現」「労働力不足の解消」「デジタル化の推進」を3本柱に掲げ、数値目標としては2026年度に売上高2,500億円以上、営業利益率10%以上、ROE12%以上、2030年度には売上高3,000億円、営業利益率12%以上、ROE12%以上。電力需給調整市場の拡大に加え、太陽光発電所の出力抑制対策として当社独自のエネルギーマネジメントシステムや蓄電池パッケージの追加併設ニーズが高まっており、旺盛な需要を取り込んでいく。実際、電力分野は注文が飽和しているようで、生産体制をいかに整えるかが鍵となっており、四国新工場を軸に余剰スペースと人員確保など生産体制の整備を急ぐ姿勢を示している。また、国内初となるマルチ電圧対応の超急速充電器の市場投入が進む予定で、同製品の拡販にも注目が集まろう。そのほか、欧米でのSIer買収によりFA・溶接事業の海外売上倍増を目指しており、米国ではオハイオ州を拠点に自動車・一般産業双方をカバーする布陣を構築している。
株主還元については、2025年3月期に1株当たり165円を実施し、2026年3月期は168円へ増配を予定する。配当性向30%以上を堅持しつつ、営業利益の1%を社会貢献へ、コストダウン成果の50%を社員へ還元するという独自方針を掲げており、従業員・地域・投資家の三方よしの利益循環を目指している。
総じて、ダイヘンは電力インフラ・自動化・半導体という異なる成長領域を一社でカバーできる稀有な企業である。短期的には半導体市況の一服や自動車投資の停滞リスクはあるものの、電力・インフラ投資の底堅さが全社業績を支えており、セグメント間の分散が安定成長をもたらしている。2030年に向けた電力需給逼迫、データセンター新設、AI半導体の拡大といった社会構造変化の波に確実に乗れる事業ポジションを有しており、今後も電力インフラを核に持続的な利益成長が期待できる。堅実なオペレーション体制は同社の伝統的な企業風土を体現しており、景気循環を超えた中長期安定型の成長企業として注目したい。
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