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大井電気:電力DX時代の通信インフラを支える企業、PBR0.7倍台で推移
配信日時:2025/10/22 18:00
配信元:FISCO
*18:00JST 大井電気:電力DX時代の通信インフラを支える企業、PBR0.7倍台で推移
大井電気<6822>は、電力・通信インフラを支える情報通信機器メーカーとして、長年にわたり社会基盤を下支えしてきた。事業は「情報通信機器製造販売」と「ネットワーク工事保守」の2本柱で構成され、前者では光伝送装置やスマートメーター関連通信機器、監視・制御機器などを自社開発・生産し、後者ではそれらの設置・保守をグループ会社が担う。特に近年は第2世代スマートメーターの導入開始を追い風に、スマートメーター向け通信機器の量産体制を確立し、成長の中核事業に位置づけている。
情報通信機器製造販売事業の顧客は電力会社、通信キャリア、自治体などの社会インフラ事業者が中心である。光伝送装置は通信事業者や電力向けバックボーン網、監視制御機器は鉄道・官公庁・自治体向け通信設備で採用され、IoT関連装置は電気・ガス・水道検針を自動化するスマートメーター内の通信端末として納入される。ネットワーク工事保守事業はこれら機器の据付や基地局工事、通信線路工事を担う補完的機能を果たしており、グループとして一気通貫の提供体制を形成。発電所・変電所の通信設備の設置や保守案件を含む工事全般を手掛けている。
同社の競争優位性は、第一に高い参入障壁を持つニッチ領域にあることだ。大手電機メーカーである富士通やNECなどが一定シェアを有する一方で、同社は小回りの利く開発対応力と顧客との信頼関係を武器に確固たる地位を築く。スマートメーター向け通信装置市場は、参入にあたり電波特性や通信規格の適合、電力会社との厳格な検証プロセスが必要であり、容易に新規参入できない。第二に、30年以上にわたり電力会社や通信キャリアと築いてきた継続的な取引関係がある。電力会社の入札案件は利益率に幅があり、採算確保が課題となるが、同社は長年の実績と技術信頼を背景に継続的な受注を得ており、顧客密着型モデルが安定収益を支えている。第三に、開発から保守まで一貫提供できる体制だ。工事部門をグループ内に持つことで、製造・施工・保守のフィードバックループを構築し、品質改善と信頼性向上を両立させている。
2026年3月期第1四半期業績は、売上高5,251百万円(前年同期比7.3%増)、営業損益24百万円の黒字(前年247百万円の赤字)に転換しており、順調な滑り出しとなった。情報通信機器製造販売及びネットワーク工事保守が増加したほか、商品ミックスが改善し利益率に濃淡が出ているが全体としておおむね順調、開発費の減少、コストが改善したことも寄与した。特に、情報通信機器製造販売で、第2世代スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業の売上が増加したことがポジティブに働いた。通期計画では、売上高32,100百万円(前期比10.5%増)、営業利益1,180百万円(同20.5%減)を見込んでいる。
市場環境面では、第2世代スマートメーターの全国導入(2025年度開始)が最大の追い風である。8000万台規模の入札市場が想定されており、通信装置需要が本格化する。競合は一部大手に限られ、入札参画を通じてシェア拡大を狙う。加えて、データトラフィック増加やデータセンター新設、5G基地局整備といった通信需要拡大も光伝送装置事業に好影響を与えている。データセンター向けの大型案件は未参入であるが、通信トラフィックの増大が確実に追い風となっていくようだ。一方、懸念材料としては部材コスト上昇や採用人材の固定費増などが挙げられ、価格転嫁や効率化の進展が今後の鍵となる。
中期経営計画では、「第2世代スマートメーター関連機器の事業基盤強化」「光伝送装置の開発拡充」「工事保守の収益力向上」を三本柱とし、選択と集中を進めてきた。具体的には、スマートメーター通信機器専用の生産ラインを設計・複数化し、調達リスク軽減のため部材マルチソース化を推進。工場IoT化とリモート保守運用も進め、生産効率と安定供給体制を整備している。今後は、光伝送装置とスマートメーターを両輪とし、売り切り型からストック収益型への事業転換を視野に入れている。スマートメーターを軸に周辺領域(セキュリティ・監視・エネルギー制御)への拡張も進める方針であり、既存顧客との関係性を土台に技術提案を強化する構えだ。
株主還元方針としては、株主資本コストを4%と認識し、ROE8%以上の持続を目標に掲げる。PBR0.7倍台で推移する中、まずは1倍割れ改善を意識し、利益率改善による企業価値向上と流動性向上の両立を重視している。
総じて、大井電気は電力・通信インフラという社会の基盤を支える専門企業であり、第2世代スマートメーター導入を契機に「つながるモノ」から「賢く動くモノ」へ拡大するIoT技術でのポジションの確立を目指している。短期的には入札構造上の利益率制約やコスト上昇が重石となるが、長年培った顧客信頼と技術対応力、そして製造・工事・保守を一体で提供する体制は容易に模倣できない競争優位を形成している。次期中計では黒字基調を維持しつつ光伝送装置とスマートメーター通信機器の拡販を両輪とすることで、トップラインと利益率の両面で着実な成長を期待しておきたい。電力DXの進展とともに、同社の存在感はこれからさらに高まっていきそうだ。
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情報通信機器製造販売事業の顧客は電力会社、通信キャリア、自治体などの社会インフラ事業者が中心である。光伝送装置は通信事業者や電力向けバックボーン網、監視制御機器は鉄道・官公庁・自治体向け通信設備で採用され、IoT関連装置は電気・ガス・水道検針を自動化するスマートメーター内の通信端末として納入される。ネットワーク工事保守事業はこれら機器の据付や基地局工事、通信線路工事を担う補完的機能を果たしており、グループとして一気通貫の提供体制を形成。発電所・変電所の通信設備の設置や保守案件を含む工事全般を手掛けている。
同社の競争優位性は、第一に高い参入障壁を持つニッチ領域にあることだ。大手電機メーカーである富士通やNECなどが一定シェアを有する一方で、同社は小回りの利く開発対応力と顧客との信頼関係を武器に確固たる地位を築く。スマートメーター向け通信装置市場は、参入にあたり電波特性や通信規格の適合、電力会社との厳格な検証プロセスが必要であり、容易に新規参入できない。第二に、30年以上にわたり電力会社や通信キャリアと築いてきた継続的な取引関係がある。電力会社の入札案件は利益率に幅があり、採算確保が課題となるが、同社は長年の実績と技術信頼を背景に継続的な受注を得ており、顧客密着型モデルが安定収益を支えている。第三に、開発から保守まで一貫提供できる体制だ。工事部門をグループ内に持つことで、製造・施工・保守のフィードバックループを構築し、品質改善と信頼性向上を両立させている。
2026年3月期第1四半期業績は、売上高5,251百万円(前年同期比7.3%増)、営業損益24百万円の黒字(前年247百万円の赤字)に転換しており、順調な滑り出しとなった。情報通信機器製造販売及びネットワーク工事保守が増加したほか、商品ミックスが改善し利益率に濃淡が出ているが全体としておおむね順調、開発費の減少、コストが改善したことも寄与した。特に、情報通信機器製造販売で、第2世代スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業の売上が増加したことがポジティブに働いた。通期計画では、売上高32,100百万円(前期比10.5%増)、営業利益1,180百万円(同20.5%減)を見込んでいる。
市場環境面では、第2世代スマートメーターの全国導入(2025年度開始)が最大の追い風である。8000万台規模の入札市場が想定されており、通信装置需要が本格化する。競合は一部大手に限られ、入札参画を通じてシェア拡大を狙う。加えて、データトラフィック増加やデータセンター新設、5G基地局整備といった通信需要拡大も光伝送装置事業に好影響を与えている。データセンター向けの大型案件は未参入であるが、通信トラフィックの増大が確実に追い風となっていくようだ。一方、懸念材料としては部材コスト上昇や採用人材の固定費増などが挙げられ、価格転嫁や効率化の進展が今後の鍵となる。
中期経営計画では、「第2世代スマートメーター関連機器の事業基盤強化」「光伝送装置の開発拡充」「工事保守の収益力向上」を三本柱とし、選択と集中を進めてきた。具体的には、スマートメーター通信機器専用の生産ラインを設計・複数化し、調達リスク軽減のため部材マルチソース化を推進。工場IoT化とリモート保守運用も進め、生産効率と安定供給体制を整備している。今後は、光伝送装置とスマートメーターを両輪とし、売り切り型からストック収益型への事業転換を視野に入れている。スマートメーターを軸に周辺領域(セキュリティ・監視・エネルギー制御)への拡張も進める方針であり、既存顧客との関係性を土台に技術提案を強化する構えだ。
株主還元方針としては、株主資本コストを4%と認識し、ROE8%以上の持続を目標に掲げる。PBR0.7倍台で推移する中、まずは1倍割れ改善を意識し、利益率改善による企業価値向上と流動性向上の両立を重視している。
総じて、大井電気は電力・通信インフラという社会の基盤を支える専門企業であり、第2世代スマートメーター導入を契機に「つながるモノ」から「賢く動くモノ」へ拡大するIoT技術でのポジションの確立を目指している。短期的には入札構造上の利益率制約やコスト上昇が重石となるが、長年培った顧客信頼と技術対応力、そして製造・工事・保守を一体で提供する体制は容易に模倣できない競争優位を形成している。次期中計では黒字基調を維持しつつ光伝送装置とスマートメーター通信機器の拡販を両輪とすることで、トップラインと利益率の両面で着実な成長を期待しておきたい。電力DXの進展とともに、同社の存在感はこれからさらに高まっていきそうだ。
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