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JFEホールディングス:足元は減収も中長期成長への布石着々、配当利回り4%越えで再評価余地大

配信日時:2025/10/20 11:19 配信元:FISCO
*11:19JST JFEホールディングス:足元は減収も中長期成長への布石着々、配当利回り4%越えで再評価余地大 【我が国を代表する鉄鋼グループ】
JFEホールディングス<5411>は、2002年に日本鋼管(NKK)と川崎製鉄(川鉄)の経営統合によって誕生した我が国を代表する鉄鋼大手グループである。NKKと川鉄は長年にわたり国内外で鉄鋼業を展開し、統合によって規模の経済と競争力強化を図った。その後もグループ経営体制の整備を進め、持株会社としてグループ各社を統括しながら事業ポートフォリオを発展させてきた。現在、同社は大きく三つの事業セグメントを展開している。第一に、鉄鋼事業ではJFEスチールを中心に、高炉事業を基盤とした幅広い鋼材製品を国内外に供給し、自動車・建設・造船など多様な産業の需要に応えている。第二に、エンジニアリング事業ではJFEエンジニアリングがエネルギー・環境・社会インフラ分野で事業を展開し、再生可能エネルギー設備や都市インフラ整備を通じて社会的課題の解決に貢献している。第三に、商社事業ではJFE商事が鉄鋼製品や原材料のトレーディング、物流、調達機能を担い、グローバルな供給網を通じてグループ全体の事業を支えている。これら三つの事業は相互に補完し合い、収益の多様化と事業基盤の安定化を図っている。加えて、グローバル競争の激化や脱炭素社会への移行といった構造変化に対応するため、研究開発や設備投資にも積極的であり、鉄鋼業にとどまらず幅広い事業領域で持続的成長を目指す企業体である。

【足元の事業環境は楽観視できず減収見込み】
2026年3月期第1四半期(4-6月)の売上収益は11,153億円(前期比7.9%減)と大幅な減収となった。市況軟化や円高の影響が収益を圧迫した。事業利益は162億円(同71.4%減)、税引前利益は103億円(同73.8%減)、四半期利益は71億円(同74.1%減)と大幅減益となった。
セグメント別売上収益は、鉄鋼事業が7,612億円(前期比994億円減)、エンジニアリング事業が1,353億円(同115億円増)、商社事業が3,387億円(同196億円減)となった。鉄鋼事業が全体の減収要因となる一方、エンジニアリング事業は受注増加を背景に増収を確保した。セグメント利益は鉄鋼事業が121億円の赤字(前期は315億円の黒字)と赤字に転落、棚卸資産評価差等を除くと169億円(同196億円減)であった。円高による輸出採算の悪化や棚卸資産評価差が大きく影響した。また、エンジニアリング事業は57億円(同17億円増)、商社事業は126億円(同11億円増)と増益を確保した。調整額を含めた全社ベースのセグメント利益は103億円(同414億円減)、棚卸資産評価差等を除いたベースでは393億円(同174億円減)であった。
同社は既に公表している通期業績予想を据え置いており、売上収益は47,500億円(前期比2.3%減)、事業利益は1,400億円(同3.4%増)、税引前利益は1,100億円(同23.8%減)、当期利益は750億円(同18.4%減)を計画している。足元の事業環境は米国の関税リスクや中国における内需低迷など国内外ともに楽観視できない状況である。原料市況も大幅な上昇は期待できないため、減収計画となっている。一方、鉄鋼事業における棚卸資産評価差については上期に集中しているとのことである。こうした点を踏まえ、計画している利益水準の達成を見込んでいる。
なお、株主還元については年間配当は80円(中間配当40円、期末配当40円)下限、配当性向を30%としている。通期の利益水準次第では配当性向30%を維持したまま一株80円を超える水準となれば増配する方針である。


【中長期的な成長軌道に向けて戦略的に施策を推進】
同社の今後の重点実施事項としては、まず、高付加価値製品の比率を現在より高め、54%まで引き上げる計画を進めている点が挙げられる。あわせて、成長分野である再生可能エネルギー市場への対応として、洋上風力向け製品の商業生産を年内に開始する予定である。さらに、国内の生産体制については効率化を進め、2027年までに高炉1基を休止する方針を打ち出しており、競争力強化と構造改革を両立させていく。海外展開では、インドにおいてJSWとの合弁による電磁鋼板製造事業を推進し、成長市場での事業基盤拡大を図る。加えて、長期的には2035年までにカーボンニュートラルを実現するため、同社は総額4兆円規模の投資が必要と想定し、脱炭素社会に向けた技術革新と設備投資を積極的に進める方針であり、グローバルな事業環境の変化を注視しつつ、戦略的に施策を推進している。
こうした点を踏まえれば、足元の事業環境は決して良好ではないものの、中長期的な成長に向けて大きな懸念は見られない。PBR0.5倍前後、配当利回り4%越えは大幅に割安と言え、再評価余地は大きいと言える。

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