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一正蒲 Research Memo(4):2025年6月期は主力商品の販売好調で増収となるも、コスト増により減益
配信日時:2025/10/15 12:04
配信元:FISCO
*12:04JST 一正蒲 Research Memo(4):2025年6月期は主力商品の販売好調で増収となるも、コスト増により減益
■一正蒲鉾<2904>の業績動向
1. 2025年6月期の業績概要
2025年6月期の連結業績は、売上高34,579百万円(前期比0.3%増)、営業利益891百万円(同29.9%減)、経常利益907百万円(同27.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益746百万円(同22.0%減)と、増収減益となった。主力商品である「サラダスティック」「小判てんぷら」の販売数量が伸長し、売上高は前期を上回った。損益面では、合理化投資による省人化などによるコスト削減を進めたが、すり身価格の高止まり、副材料・補助材料費、エネルギーコストの上昇により売上総利益率は20.2%と前期を0.5ポイント下回り、売上総利益は同1.9%減少した。販管費は60周年キャンペーンなどの販促費、人件費、物流費、減価償却費の増加により同4.2%増加し、営業利益は2ケタ減益となった。
期初の業績予想に対しては、2025年1~2月の野菜高騰の影響でサラダ需要に対応した「サラダスティック」の販促ができずに販売数量を計画どおり拡販できなかったこと、想定以上のコスト上昇などが影響し、売上高で94.7%、営業利益で68.5%の達成率となった。
また、特別損益では、インドネシアの合弁会社KIFへの出資比率を40%から75%に引き上げ連結子会社化したことに伴い、株式の段階取得に係る差益(過去出資分の時価評価による差益)126百万円を特別利益に計上したほか、2021年に清算した子会社マルス蒲鉾工業(株)の工場解体費用51百万円を特別損失に計上した。
営業利益の増減分析では、カニかまの拡販による販売数量の伸長による増収効果で0.9億円、合理化投資による省人化、工場内の小集団活動である「MYやまびこ活動」を通じた歩留まり改善などの生産性向上によるコストダウンで2.8億円の計3.7億円の利益拡大となった。一方、主原料の北米産スケソウすり身の価格の上昇や、副材料・補助材料費や人件費の上昇によるコストアップにより3.7億円、電力・燃料価格の上昇などエネルギーコスト増加で1.4億円、60周年キャンペーンなどの販促費や人件費の増加、設備投資による減価償却費増加により2.4億円の計7.5億円の減益要因となった。これにより、営業利益は3.8億円の減益となった。
2. 事業セグメント別の動向
(1) 水産練製品・惣菜事業
売上高は30,469百万円(前期比0.5%増)、セグメント利益は1,007百万円(同23.0%減)と、増収・2ケタ減益となった。主力商品の「サラダスティック」は、2025年1~2月の野菜高騰の影響でサラダ需要の販促ができずに一時的に販売数量が減少したものの、野菜相場が落ち着くにつれて販売数量は回復し、通期では販売数量が同3.7%増、売上高も同3.8%増を確保した。
同社は、“コスパ(コストパフォーマンス)”“タイパ(タイムパフォーマンス)”を重視し、健康志向を持つ共働き世帯や単身・高齢者世帯の需要に応じた商品開発に注力している。冷凍保存が可能なお徳用商品「小判てんぷら」は、保存性と利便性を高めたことで、売上が大きく伸長した。また、10枚入りの「小判てんぷら」とセットで並売した使い切りサイズ(5〜6枚入り)の「減塩さつまあげ」も、健康志向の単身・高齢者世帯に受け入れられ、相乗効果で売上を伸ばした。さらに、2025年3月納品分より実施した価格改定や、創業60周年感謝キャンペーンの実施なども増収に寄与した。価格改定は業界全体の動きであり、各社が企業努力のみでは吸収できないコスト上昇を反映して約5〜15%の値上げを実施した。
損益面では、販売数量伸長による工場稼働率の向上、自動化・省人化によりコストダウンを図ったものの、副材料・補助材料費の高騰や、エネルギーコスト、物流・人件費の上昇、設備投資に伴う減価償却費の増加などにより、セグメント利益率は3.3%と前期を1.0ポイント下回り、セグメント利益は同23.0%減となった。
(2) きのこ事業
売上高は3,769百万円(前期比0.6%減)、セグメント損失は251百万円(前期は157百万円の損失)と、減収減益となった。2024年の夏場の高温による生育不良で野菜相場やきのこの販売価格が上昇し、同社も単価上昇につなげることができた。一方、きのこ需要が高まる2024年秋口以降も平年より気温が高い日が続き、販売数量が減少した。加えて、夏場の高温と残暑の影響で、秋口に1株当たりの重量が低下したため適正な生産量を確保できず、販促機会のロスにつながった。損益面では、包装ラインの省人化により生産性は向上したが、エネルギーコスト、培地など原料価格、労務費の上昇を吸収できず、損失が拡大した。
(3) 倉庫・運送事業
売上高は339百万円(前期比13.3%減)、セグメント利益は125百万円(同13.9%増)と減収増益となった。運送部門は、輸入青果物の定期便減便や設備投資関連費用の増加により、減収減益となった。倉庫部門は、取扱構成比の高い水産物の不漁に加え、寄託者の原料調達方法が保管コストを意識した当用買いに変化したため在庫水準が低調に推移し、減収となった。しかし、収益性改善に向けた庫内管理の最適化を進めた結果、増益となり、全体では減収増益となった。
3. 財務状況と経営指標
2025年6月期の営業キャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,066百万円、減価償却費1,834百万円の収入以外に、棚卸資産が425百万円増加したものの売上債権が440百万円減少するなど運転資金はほぼ増減がなく、未払金、未払消費税等の減少、未収消費税等の増加の合計907百万円の支出が生じたため1,615百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、合理化・省人化投資など設備投資による有形固定資産の取得による支出2,553百万円などにより2,591百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出100百万円のほか、長期借入金の返済による支出(純額)516百万円、配当の支払額222百万円などにより1,137百万円の支出となった。その結果、現金及び現金同等物は前期末比2,122百万円減少した。現金及び預金が大きく減少し、流動資産は8,952百万円と同1,899百万円減少したが、固定資産は21,460百万円と同919百万円増加した。設備投資増により有形固定資産が同1,162百万円増加し、政策保有株式の売却により投資その他の資産が同298百万円減少した。負債合計は15,504百万円と同1,383百万円減少した。長短借入金が合計で156百万円減少※し、未払金及び未払費用が979百万円減少した。純資産合計は親会社株主に帰属する当期純利益746百万円から配当金の支払額222百万円を差し引いた524百万円が利益剰余金として増加し、14,908百万円と同403百万円増加した。借入金の返済を進め負債を減らしたため、自己資本比率は48.8%と前期末を2.6ポイント上回った。また、D/Eレシオも0.67倍と同0.04改善し、財務の安全性・健全性は問題なく推移している。
※ 短期借入金の増加360百万円はKIFの連結子会社化によるもので、キャッシュ・フローの借入には含まれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘)
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1. 2025年6月期の業績概要
2025年6月期の連結業績は、売上高34,579百万円(前期比0.3%増)、営業利益891百万円(同29.9%減)、経常利益907百万円(同27.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益746百万円(同22.0%減)と、増収減益となった。主力商品である「サラダスティック」「小判てんぷら」の販売数量が伸長し、売上高は前期を上回った。損益面では、合理化投資による省人化などによるコスト削減を進めたが、すり身価格の高止まり、副材料・補助材料費、エネルギーコストの上昇により売上総利益率は20.2%と前期を0.5ポイント下回り、売上総利益は同1.9%減少した。販管費は60周年キャンペーンなどの販促費、人件費、物流費、減価償却費の増加により同4.2%増加し、営業利益は2ケタ減益となった。
期初の業績予想に対しては、2025年1~2月の野菜高騰の影響でサラダ需要に対応した「サラダスティック」の販促ができずに販売数量を計画どおり拡販できなかったこと、想定以上のコスト上昇などが影響し、売上高で94.7%、営業利益で68.5%の達成率となった。
また、特別損益では、インドネシアの合弁会社KIFへの出資比率を40%から75%に引き上げ連結子会社化したことに伴い、株式の段階取得に係る差益(過去出資分の時価評価による差益)126百万円を特別利益に計上したほか、2021年に清算した子会社マルス蒲鉾工業(株)の工場解体費用51百万円を特別損失に計上した。
営業利益の増減分析では、カニかまの拡販による販売数量の伸長による増収効果で0.9億円、合理化投資による省人化、工場内の小集団活動である「MYやまびこ活動」を通じた歩留まり改善などの生産性向上によるコストダウンで2.8億円の計3.7億円の利益拡大となった。一方、主原料の北米産スケソウすり身の価格の上昇や、副材料・補助材料費や人件費の上昇によるコストアップにより3.7億円、電力・燃料価格の上昇などエネルギーコスト増加で1.4億円、60周年キャンペーンなどの販促費や人件費の増加、設備投資による減価償却費増加により2.4億円の計7.5億円の減益要因となった。これにより、営業利益は3.8億円の減益となった。
2. 事業セグメント別の動向
(1) 水産練製品・惣菜事業
売上高は30,469百万円(前期比0.5%増)、セグメント利益は1,007百万円(同23.0%減)と、増収・2ケタ減益となった。主力商品の「サラダスティック」は、2025年1~2月の野菜高騰の影響でサラダ需要の販促ができずに一時的に販売数量が減少したものの、野菜相場が落ち着くにつれて販売数量は回復し、通期では販売数量が同3.7%増、売上高も同3.8%増を確保した。
同社は、“コスパ(コストパフォーマンス)”“タイパ(タイムパフォーマンス)”を重視し、健康志向を持つ共働き世帯や単身・高齢者世帯の需要に応じた商品開発に注力している。冷凍保存が可能なお徳用商品「小判てんぷら」は、保存性と利便性を高めたことで、売上が大きく伸長した。また、10枚入りの「小判てんぷら」とセットで並売した使い切りサイズ(5〜6枚入り)の「減塩さつまあげ」も、健康志向の単身・高齢者世帯に受け入れられ、相乗効果で売上を伸ばした。さらに、2025年3月納品分より実施した価格改定や、創業60周年感謝キャンペーンの実施なども増収に寄与した。価格改定は業界全体の動きであり、各社が企業努力のみでは吸収できないコスト上昇を反映して約5〜15%の値上げを実施した。
損益面では、販売数量伸長による工場稼働率の向上、自動化・省人化によりコストダウンを図ったものの、副材料・補助材料費の高騰や、エネルギーコスト、物流・人件費の上昇、設備投資に伴う減価償却費の増加などにより、セグメント利益率は3.3%と前期を1.0ポイント下回り、セグメント利益は同23.0%減となった。
(2) きのこ事業
売上高は3,769百万円(前期比0.6%減)、セグメント損失は251百万円(前期は157百万円の損失)と、減収減益となった。2024年の夏場の高温による生育不良で野菜相場やきのこの販売価格が上昇し、同社も単価上昇につなげることができた。一方、きのこ需要が高まる2024年秋口以降も平年より気温が高い日が続き、販売数量が減少した。加えて、夏場の高温と残暑の影響で、秋口に1株当たりの重量が低下したため適正な生産量を確保できず、販促機会のロスにつながった。損益面では、包装ラインの省人化により生産性は向上したが、エネルギーコスト、培地など原料価格、労務費の上昇を吸収できず、損失が拡大した。
(3) 倉庫・運送事業
売上高は339百万円(前期比13.3%減)、セグメント利益は125百万円(同13.9%増)と減収増益となった。運送部門は、輸入青果物の定期便減便や設備投資関連費用の増加により、減収減益となった。倉庫部門は、取扱構成比の高い水産物の不漁に加え、寄託者の原料調達方法が保管コストを意識した当用買いに変化したため在庫水準が低調に推移し、減収となった。しかし、収益性改善に向けた庫内管理の最適化を進めた結果、増益となり、全体では減収増益となった。
3. 財務状況と経営指標
2025年6月期の営業キャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,066百万円、減価償却費1,834百万円の収入以外に、棚卸資産が425百万円増加したものの売上債権が440百万円減少するなど運転資金はほぼ増減がなく、未払金、未払消費税等の減少、未収消費税等の増加の合計907百万円の支出が生じたため1,615百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、合理化・省人化投資など設備投資による有形固定資産の取得による支出2,553百万円などにより2,591百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出100百万円のほか、長期借入金の返済による支出(純額)516百万円、配当の支払額222百万円などにより1,137百万円の支出となった。その結果、現金及び現金同等物は前期末比2,122百万円減少した。現金及び預金が大きく減少し、流動資産は8,952百万円と同1,899百万円減少したが、固定資産は21,460百万円と同919百万円増加した。設備投資増により有形固定資産が同1,162百万円増加し、政策保有株式の売却により投資その他の資産が同298百万円減少した。負債合計は15,504百万円と同1,383百万円減少した。長短借入金が合計で156百万円減少※し、未払金及び未払費用が979百万円減少した。純資産合計は親会社株主に帰属する当期純利益746百万円から配当金の支払額222百万円を差し引いた524百万円が利益剰余金として増加し、14,908百万円と同403百万円増加した。借入金の返済を進め負債を減らしたため、自己資本比率は48.8%と前期末を2.6ポイント上回った。また、D/Eレシオも0.67倍と同0.04改善し、財務の安全性・健全性は問題なく推移している。
※ 短期借入金の増加360百万円はKIFの連結子会社化によるもので、キャッシュ・フローの借入には含まれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘)
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