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ファンペップ Research Memo(7):2025年内に片頭痛または脂質異常症を対象とした前臨床試験開始を目指す
配信日時:2025/03/28 16:17
配信元:FISCO
*16:17JST ファンペップ Research Memo(7):2025年内に片頭痛または脂質異常症を対象とした前臨床試験開始を目指す
■主要開発パイプラインの動向
4. そのほかの研究テーマ
そのほかにもファンペップ<4881>では抗体誘導ペプチドに関してアカデミアとの共同研究も幅広く進めている。直近では2023年11月に大阪大学大学院医学系研究科とアルツハイマー病(標的:リン酸化タウ蛋白質)を対象とする共同研究を開始した。また、2024年2月には心不全(標的:IGFBP7)を対象とする研究も開始した。これは、AMEDの支援により行われた東京大学大学院医学系研究科先端循環器医科学講座小室一成特任教授による令和5年度ゲノム研究を、研究開発プログラムの研究開発課題「心不全シングルセルゲノミクス創薬」につなげるもので、同社は独自の抗体誘導ペプチド技術を用いた医薬品開発の知見に基づき、心不全ワクチンの研究開発分担者として参加する。研究期間は2026年3月までとしている。
同社はこれら研究テーマのなかから1品目について新規開発化合物を決定し、2025年内の前臨床試験開始を目指している。有力候補としては、片頭痛または脂質異常症※1が挙げられる。脂質異常症については、2022年4月より熊本大学と共同研究を開始したもので、抗ANGPTL3抗体誘導ペプチドの開発において有望な開発化合物の絞り込みが進んでいるようだ。血中LDLコレステロールに加えて中性脂肪も低下させる作用を持つANGPTL3阻害薬については、Regeneron Pharmaceuticalsの「Evkeeza(R)」※2が、2021年に欧米で家族性高コレステロール血症を適応症として製造販売承認を取得しており、日本でも2019年3月に希少疾病用医薬品に指定されている。
※1 脂質異常症とは血液中の脂質の値が基準値から外れた状態であり、一般的に過食や運動不足などの生活習慣の変容によって生じることが多いが、家族性高コレステロール血症のように遺伝子変異が原因で遺伝的に脂質異常症を有するケースもある。日本の患者数は50万人超で難治性希少疾患として難病指定されている。
※2 2024年の米国での売上高は前年比64%増の126百万米ドル。用法用量は15mg/Kgを4週に1回点滴靜注することとされており、日本の薬価は350mg/瓶で140万円。
家族性コレステロール血症とは、遺伝子変異により生まれつき血液中のLDLコレステロールが顕著に増加してしまう疾患のことで、適切な治療が行われないと幼少期から動脈硬化が進行し、心筋梗塞など命に関わる病気を発症するとされている。治療法としては、肝臓でコレステロール合成を阻害するスタチンが第一選択薬となっているが、スタチンの効果が低い患者にはANGPTL3阻害薬など抗体医薬品が処方されている。同社は抗体誘導ペプチドで抗体医薬品を超える適応症の取得を目指している。
■研究開発強化に向けた取り組み
AI技術や次世代製剤技術等を持つ先進企業との協業で研究開発を促進
同社は抗体誘導ペプチドの候補化合物の早期創出に向けて、先進的な技術を有する企業との協業を積極的に進めている。直近では2024年8月に三井物産<8031>の子会社である(株)ゼウレカとAI創薬支援サービスに関する研究委託契約を締結し、抗体誘導ペプチドのAI創薬研究を開始したことを発表した。抗体誘導ペプチドの候補化合物の設計においては、標的タンパク質の働きを阻害する抗体産生を強力に誘導するエピトープ(抗体が結合する短いペプチド)を迅速かつ高精度に選定することが重要な要素となっている。同社のこれまでの技術ノウハウとゼウレカが持つAIによる高速シミュレーション技術やバーチャルスクリーニング技術を融合させることで、従来よりも迅速に有望な候補化合物の設計が可能となり、開発効率の向上につながるものと期待される。今後は新規パイプラインの創出に向けて、標的を特定したうえで共同研究開発を進める見通しだ。
また、抗体誘導ペプチドの開発において、強力な抗体産生を誘導するための次世代製剤技術の研究も複数の企業と進めている。2024年8月には、POP Biotechnologies,Inc.(以下、POP BIO)の新規リポソーム製剤技術(以下、SNAPプラットフォーム技術※)の研究が進展したことを発表している。具体的には、初期フェーズの研究(マウスを用いた試験)で事前に設定したクライテリアを達成し(抗体価が数倍上昇)、後期フェーズの研究(サル等を用いた試験)に移行した。片頭痛や脂質異常症の候補化合物を使って評価する予定で、2025年内に評価を完了し良好な結果が得られれば、同技術を用いて開発した抗体誘導ペプチドによる臨床試験に進むと予想される。SNAPプラットフォーム技術では、製造プロセスの簡便性が特長の独自のリポソーム技術により作製することが可能であり(=強力な抗体産生が可能)、抗体誘導ペプチドの開発に適した技術として同社でも期待している。
※ SNAP(Spontaneous Nanoliposome Antigen Particleization)プラットフォーム技術は、ペプチドワクチン等に対する強力な抗体産生(免疫応答)を誘導するために設計されたワクチンアジュバントとして機能するPOP BIO独自のリポソームベースのシステムである。同システムは製造プロセスの簡便性にも特長があり、一般的に用いられている免疫原性担体(キャリアタンパク質)やウイルス様粒子で課題となっている手間のかかる製造プロセスの問題、さらに非特異的抗体産生の問題の解決なども期待される。
さらには、2024年12月にアルツハイマー病を対象疾患とする抗体誘導ペプチド(以下、アルツハイマー病ワクチン)の創薬研究において、その投与対象患者への簡便な診断法開発を目指し、アイトラッキング(視線計測)式認知機能評価法による医療機器の製品化を行う大阪大学発ベンチャーである(株)アイ・ブレインサイエンスとの間で協業に関する契約を締結した。今後アルツハイマー病ワクチンで臨床試験を行う際に、有効性の評価手法として同技術を活用できるか検証し、評価技術などを確立することにしている。
そのほか、2024年10月に塩野義製薬と抗体誘導ペプチドの抗体産生力を増強する効果が期待されるアジュバントの共同研究を開始しており、「FPP004X」をはじめとする各パイプラインだけでなく候補化合物でも活用し、開発成功確率を高める考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HN>
4. そのほかの研究テーマ
そのほかにもファンペップ<4881>では抗体誘導ペプチドに関してアカデミアとの共同研究も幅広く進めている。直近では2023年11月に大阪大学大学院医学系研究科とアルツハイマー病(標的:リン酸化タウ蛋白質)を対象とする共同研究を開始した。また、2024年2月には心不全(標的:IGFBP7)を対象とする研究も開始した。これは、AMEDの支援により行われた東京大学大学院医学系研究科先端循環器医科学講座小室一成特任教授による令和5年度ゲノム研究を、研究開発プログラムの研究開発課題「心不全シングルセルゲノミクス創薬」につなげるもので、同社は独自の抗体誘導ペプチド技術を用いた医薬品開発の知見に基づき、心不全ワクチンの研究開発分担者として参加する。研究期間は2026年3月までとしている。
同社はこれら研究テーマのなかから1品目について新規開発化合物を決定し、2025年内の前臨床試験開始を目指している。有力候補としては、片頭痛または脂質異常症※1が挙げられる。脂質異常症については、2022年4月より熊本大学と共同研究を開始したもので、抗ANGPTL3抗体誘導ペプチドの開発において有望な開発化合物の絞り込みが進んでいるようだ。血中LDLコレステロールに加えて中性脂肪も低下させる作用を持つANGPTL3阻害薬については、Regeneron Pharmaceuticalsの「Evkeeza(R)」※2が、2021年に欧米で家族性高コレステロール血症を適応症として製造販売承認を取得しており、日本でも2019年3月に希少疾病用医薬品に指定されている。
※1 脂質異常症とは血液中の脂質の値が基準値から外れた状態であり、一般的に過食や運動不足などの生活習慣の変容によって生じることが多いが、家族性高コレステロール血症のように遺伝子変異が原因で遺伝的に脂質異常症を有するケースもある。日本の患者数は50万人超で難治性希少疾患として難病指定されている。
※2 2024年の米国での売上高は前年比64%増の126百万米ドル。用法用量は15mg/Kgを4週に1回点滴靜注することとされており、日本の薬価は350mg/瓶で140万円。
家族性コレステロール血症とは、遺伝子変異により生まれつき血液中のLDLコレステロールが顕著に増加してしまう疾患のことで、適切な治療が行われないと幼少期から動脈硬化が進行し、心筋梗塞など命に関わる病気を発症するとされている。治療法としては、肝臓でコレステロール合成を阻害するスタチンが第一選択薬となっているが、スタチンの効果が低い患者にはANGPTL3阻害薬など抗体医薬品が処方されている。同社は抗体誘導ペプチドで抗体医薬品を超える適応症の取得を目指している。
■研究開発強化に向けた取り組み
AI技術や次世代製剤技術等を持つ先進企業との協業で研究開発を促進
同社は抗体誘導ペプチドの候補化合物の早期創出に向けて、先進的な技術を有する企業との協業を積極的に進めている。直近では2024年8月に三井物産<8031>の子会社である(株)ゼウレカとAI創薬支援サービスに関する研究委託契約を締結し、抗体誘導ペプチドのAI創薬研究を開始したことを発表した。抗体誘導ペプチドの候補化合物の設計においては、標的タンパク質の働きを阻害する抗体産生を強力に誘導するエピトープ(抗体が結合する短いペプチド)を迅速かつ高精度に選定することが重要な要素となっている。同社のこれまでの技術ノウハウとゼウレカが持つAIによる高速シミュレーション技術やバーチャルスクリーニング技術を融合させることで、従来よりも迅速に有望な候補化合物の設計が可能となり、開発効率の向上につながるものと期待される。今後は新規パイプラインの創出に向けて、標的を特定したうえで共同研究開発を進める見通しだ。
また、抗体誘導ペプチドの開発において、強力な抗体産生を誘導するための次世代製剤技術の研究も複数の企業と進めている。2024年8月には、POP Biotechnologies,Inc.(以下、POP BIO)の新規リポソーム製剤技術(以下、SNAPプラットフォーム技術※)の研究が進展したことを発表している。具体的には、初期フェーズの研究(マウスを用いた試験)で事前に設定したクライテリアを達成し(抗体価が数倍上昇)、後期フェーズの研究(サル等を用いた試験)に移行した。片頭痛や脂質異常症の候補化合物を使って評価する予定で、2025年内に評価を完了し良好な結果が得られれば、同技術を用いて開発した抗体誘導ペプチドによる臨床試験に進むと予想される。SNAPプラットフォーム技術では、製造プロセスの簡便性が特長の独自のリポソーム技術により作製することが可能であり(=強力な抗体産生が可能)、抗体誘導ペプチドの開発に適した技術として同社でも期待している。
※ SNAP(Spontaneous Nanoliposome Antigen Particleization)プラットフォーム技術は、ペプチドワクチン等に対する強力な抗体産生(免疫応答)を誘導するために設計されたワクチンアジュバントとして機能するPOP BIO独自のリポソームベースのシステムである。同システムは製造プロセスの簡便性にも特長があり、一般的に用いられている免疫原性担体(キャリアタンパク質)やウイルス様粒子で課題となっている手間のかかる製造プロセスの問題、さらに非特異的抗体産生の問題の解決なども期待される。
さらには、2024年12月にアルツハイマー病を対象疾患とする抗体誘導ペプチド(以下、アルツハイマー病ワクチン)の創薬研究において、その投与対象患者への簡便な診断法開発を目指し、アイトラッキング(視線計測)式認知機能評価法による医療機器の製品化を行う大阪大学発ベンチャーである(株)アイ・ブレインサイエンスとの間で協業に関する契約を締結した。今後アルツハイマー病ワクチンで臨床試験を行う際に、有効性の評価手法として同技術を活用できるか検証し、評価技術などを確立することにしている。
そのほか、2024年10月に塩野義製薬と抗体誘導ペプチドの抗体産生力を増強する効果が期待されるアジュバントの共同研究を開始しており、「FPP004X」をはじめとする各パイプラインだけでなく候補化合物でも活用し、開発成功確率を高める考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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