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テノックス Research Memo(7):「未来を拓く、新たな一歩」へ向けて展開する重要戦略(2)
配信日時:2025/01/16 12:07
配信元:FISCO
*12:07JST テノックス Research Memo(7):「未来を拓く、新たな一歩」へ向けて展開する重要戦略(2)
■テノックス<1905>の中期経営計画
(2) 開発戦略
開発戦略では、環境・デジタル戦略にも通じるが、保有技術の高付加価値化、社会・環境問題解決への技術開発、100年企業を目指した新技術の開発を推進する。保有技術の高付加価値化では、保有技術をブラッシュアップして付加価値の高い基礎工法のラインアップを強化するとともに、ICT技術を活用しながら施工品質の向上や工事現場の働き方改革を推進する方針である。具体的には、硬質地盤への掘削性向上や小型機による大径改良施工など掘削施工技術のノウハウを生かして施工性を向上させることで、コストパフォーマンスに優れた基礎工法を提供する。また、施工状況をリアルタイムに監視・共有する「VCCS」については、全工法に展開したのちに、新基幹システムと連携して施工計画や現場管理の精度向上を目指す。社会・環境問題解決への技術開発については、創業以来、環境に配慮した基礎工法を開発してきたが、時代のニーズに応えるため、災害に強い安全な国土形成や脱炭素社会の実現に向けた技術開発に注力する。具体的には、防災拠点などの重要構造物の強靭化に対して格子状地盤改良による液状化対策を適用するほか、循環型社会へ向けて既存杭を引き抜いた後の地盤の安定処理技術や、産業副産物を活用した低環境負荷型の地盤改良技術の開発を推進する。100年企業を目指した新技術の開発では、AIによる施工機の自動運転、ロボティクス技術による現場作業の完全自動化により、担い手不足や働き方の多様化に対応するとともに、施工品質の向上や災害ゼロを目指す。また、建築基礎の品質管理システムの体系化や設計・施工管理データを活用することにより、提案する仕様と施工方法の最適化を図る。このほか、脱炭素・資源循環社会に向けて、施工段階におけるCO2発生ゼロや低炭素地盤改良技術の確立、自然材料を用いた基礎の開発にも挑戦する。
(3) 環境・デジタル戦略
環境・デジタル戦略では、環境経営の実践とDXの推進を実行する。環境経営の実践では、気候変動による地球温暖化への対策を重要な経営課題とし、基礎工事のカーボンニュートラルの実現を目指す。Scope※1・2では、グリーン電力を活用する基礎工事業界初の電動小型杭打機「DHJ-15E」でCO2排出量ネットゼロの実現を目指しており、試作機による試験工事を開始、展示会でも好評のようだ。また、CO2などの排出量を石油由来の軽油と比べて最大90%削減した、廃油を利用した環境配慮型軽油代替燃料RD燃料は、実際の現場で自社施工機による実証実験を開始した。価格や供給面での課題については軽油に40%のRD燃料を混和した「RD40」の使用を検討している。これらの取り組みにより、2031年3月期の目標として、温室効果ガス排出量40%(2,000トン)削減を掲げている。Scope3では、テノコラムやガンテツパイルなど保有工法をブラッシュアップした環境付加価値の高い新工法開発や、CO2の地中固定化、産業副産物や再エネ鋼管の積極的活用、クレジットや証書によるカーボンオフセット、サプライチェーンと連携したCO2削減戦略、調達や物流の省力化などを推進することで、2031年3月期に温室効果ガス20%(60,000トン)削減を目標としている。
※ Scope:サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を示し、Scope1は工事プロセスなど事業者自らが排出する温室効果ガス、Scope2は他社から供給された電気や熱・蒸気の使用に伴う間接的に排出される温室効果ガス、Scope3はScope1・2以外の間接的に排出される温室効果ガスという3つのScopeに分けられる。
DXの推進では、業務の効率化や生産性の向上により省力施工の実現を目指す。建設業界は労働人口の減少や高齢化が進展していることから、新設した「環境・DXグループ」を軸にDX人財の育成や新基幹システムの導入による業務の省力化を目指す。具体的には、AIの活用や、ICT技術の積極的導入によって生産性を向上させる「VCCS」の完全装備による施工品質の見える化、ウェアラブルカメラ導入による遠隔地現場の安全・品質管理の徹底、工事部門の「業務の見える化」を目的とした生産性向上アプリの開発・実用化などを推進する。また、DX推進による働き方改革として、デジタルリテラシーの向上やデジタル人財の育成、デジタルソリューションの活用による新サービスの創出や新基幹システム導入による業務の「省力化」「見える化」の実現を図る。
(4) 経営基盤の強化
経営基盤の強化では、事業基盤の強化、人財戦略、経営管理体制の強化を推進する。事業基盤の強化では、事業の成長と企業価値の向上へ向けて、安全・品質管理の徹底、収益力の強化、施工体制の増強、ガバナンスの強化という4つの強化課題を実践し、多様化・高度化する環境や顧客ニーズに対応することで持続的な成長の実現を目指す。人財戦略では、人財の能力を最大限に引き出す企業ブランディングを実現させる人財育成、エンゲージメントの向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)、心理的安全性により、従業員が夢と希望を抱ける会社を目指す。経営管理体制の強化では、ガバナンス強化とリスク管理の徹底を目的とした5つの委員会に「サステナビリティ委員会」を加え、適切な経営とさらなる持続性を追求する。
(5) 資本効率経営の推進
現状、PBR(株価純資産倍率)は0.4~0.6倍で推移、ROEは2016年3月期より下落傾向にあることを受け、また東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営」の要請もあり、収益性の向上と資本コストを意識した経営を強化する。資本収益性については、収益性向上と財務効率化を通して株主資本コストを上回るROEの実現を目指す。同社は、有利子負債がほとんどないため、資本コスト=株主資本コスト(2.4~4.4%)とするとROEは最低5%以上必要となり、企業価値の源泉であるエクイティスプレッド(ROE−株主資本コスト)を生み出す資本収益性の確保を考慮するとROE8%以上が目標となる。このため中期経営計画期間中に人財育成・DXなど既存事業に30億円程度、M&Aや環境関連、海外事業など成長分野に30億円程度投資し、ROE8%の達成を目指す。Phase2では新型コロナウイルス感染症拡大などもあって投資しきれなかった部分もあるが、Phase3では、海外事業で事業を買収したほか様々な工法開発が順調に進行しており、投資は着実に実行できていると言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<HN>
(2) 開発戦略
開発戦略では、環境・デジタル戦略にも通じるが、保有技術の高付加価値化、社会・環境問題解決への技術開発、100年企業を目指した新技術の開発を推進する。保有技術の高付加価値化では、保有技術をブラッシュアップして付加価値の高い基礎工法のラインアップを強化するとともに、ICT技術を活用しながら施工品質の向上や工事現場の働き方改革を推進する方針である。具体的には、硬質地盤への掘削性向上や小型機による大径改良施工など掘削施工技術のノウハウを生かして施工性を向上させることで、コストパフォーマンスに優れた基礎工法を提供する。また、施工状況をリアルタイムに監視・共有する「VCCS」については、全工法に展開したのちに、新基幹システムと連携して施工計画や現場管理の精度向上を目指す。社会・環境問題解決への技術開発については、創業以来、環境に配慮した基礎工法を開発してきたが、時代のニーズに応えるため、災害に強い安全な国土形成や脱炭素社会の実現に向けた技術開発に注力する。具体的には、防災拠点などの重要構造物の強靭化に対して格子状地盤改良による液状化対策を適用するほか、循環型社会へ向けて既存杭を引き抜いた後の地盤の安定処理技術や、産業副産物を活用した低環境負荷型の地盤改良技術の開発を推進する。100年企業を目指した新技術の開発では、AIによる施工機の自動運転、ロボティクス技術による現場作業の完全自動化により、担い手不足や働き方の多様化に対応するとともに、施工品質の向上や災害ゼロを目指す。また、建築基礎の品質管理システムの体系化や設計・施工管理データを活用することにより、提案する仕様と施工方法の最適化を図る。このほか、脱炭素・資源循環社会に向けて、施工段階におけるCO2発生ゼロや低炭素地盤改良技術の確立、自然材料を用いた基礎の開発にも挑戦する。
(3) 環境・デジタル戦略
環境・デジタル戦略では、環境経営の実践とDXの推進を実行する。環境経営の実践では、気候変動による地球温暖化への対策を重要な経営課題とし、基礎工事のカーボンニュートラルの実現を目指す。Scope※1・2では、グリーン電力を活用する基礎工事業界初の電動小型杭打機「DHJ-15E」でCO2排出量ネットゼロの実現を目指しており、試作機による試験工事を開始、展示会でも好評のようだ。また、CO2などの排出量を石油由来の軽油と比べて最大90%削減した、廃油を利用した環境配慮型軽油代替燃料RD燃料は、実際の現場で自社施工機による実証実験を開始した。価格や供給面での課題については軽油に40%のRD燃料を混和した「RD40」の使用を検討している。これらの取り組みにより、2031年3月期の目標として、温室効果ガス排出量40%(2,000トン)削減を掲げている。Scope3では、テノコラムやガンテツパイルなど保有工法をブラッシュアップした環境付加価値の高い新工法開発や、CO2の地中固定化、産業副産物や再エネ鋼管の積極的活用、クレジットや証書によるカーボンオフセット、サプライチェーンと連携したCO2削減戦略、調達や物流の省力化などを推進することで、2031年3月期に温室効果ガス20%(60,000トン)削減を目標としている。
※ Scope:サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を示し、Scope1は工事プロセスなど事業者自らが排出する温室効果ガス、Scope2は他社から供給された電気や熱・蒸気の使用に伴う間接的に排出される温室効果ガス、Scope3はScope1・2以外の間接的に排出される温室効果ガスという3つのScopeに分けられる。
DXの推進では、業務の効率化や生産性の向上により省力施工の実現を目指す。建設業界は労働人口の減少や高齢化が進展していることから、新設した「環境・DXグループ」を軸にDX人財の育成や新基幹システムの導入による業務の省力化を目指す。具体的には、AIの活用や、ICT技術の積極的導入によって生産性を向上させる「VCCS」の完全装備による施工品質の見える化、ウェアラブルカメラ導入による遠隔地現場の安全・品質管理の徹底、工事部門の「業務の見える化」を目的とした生産性向上アプリの開発・実用化などを推進する。また、DX推進による働き方改革として、デジタルリテラシーの向上やデジタル人財の育成、デジタルソリューションの活用による新サービスの創出や新基幹システム導入による業務の「省力化」「見える化」の実現を図る。
(4) 経営基盤の強化
経営基盤の強化では、事業基盤の強化、人財戦略、経営管理体制の強化を推進する。事業基盤の強化では、事業の成長と企業価値の向上へ向けて、安全・品質管理の徹底、収益力の強化、施工体制の増強、ガバナンスの強化という4つの強化課題を実践し、多様化・高度化する環境や顧客ニーズに対応することで持続的な成長の実現を目指す。人財戦略では、人財の能力を最大限に引き出す企業ブランディングを実現させる人財育成、エンゲージメントの向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)、心理的安全性により、従業員が夢と希望を抱ける会社を目指す。経営管理体制の強化では、ガバナンス強化とリスク管理の徹底を目的とした5つの委員会に「サステナビリティ委員会」を加え、適切な経営とさらなる持続性を追求する。
(5) 資本効率経営の推進
現状、PBR(株価純資産倍率)は0.4~0.6倍で推移、ROEは2016年3月期より下落傾向にあることを受け、また東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営」の要請もあり、収益性の向上と資本コストを意識した経営を強化する。資本収益性については、収益性向上と財務効率化を通して株主資本コストを上回るROEの実現を目指す。同社は、有利子負債がほとんどないため、資本コスト=株主資本コスト(2.4~4.4%)とするとROEは最低5%以上必要となり、企業価値の源泉であるエクイティスプレッド(ROE−株主資本コスト)を生み出す資本収益性の確保を考慮するとROE8%以上が目標となる。このため中期経営計画期間中に人財育成・DXなど既存事業に30億円程度、M&Aや環境関連、海外事業など成長分野に30億円程度投資し、ROE8%の達成を目指す。Phase2では新型コロナウイルス感染症拡大などもあって投資しきれなかった部分もあるが、Phase3では、海外事業で事業を買収したほか様々な工法開発が順調に進行しており、投資は着実に実行できていると言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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