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SMK Research Memo(3):収益力のあるCS事業部と構造改革を加速するSCI事業が両輪
配信日時:2025/01/15 17:03
配信元:FISCO
*17:03JST SMK Research Memo(3):収益力のあるCS事業部と構造改革を加速するSCI事業が両輪
■SMK<6798>の事業概要
1. コネクタ、スイッチなどの接続部品の市場動向
同社の代表的な製品は電子部品の中でも接続部品である。接続部品市場にはスイッチ(電気機器や電子回路の通電状態をオン・オフに切り替えたりする部品)/コネクタ(充電時に差し込むものをはじめ、基板同士の接続やメモリカードの接続も行う部品)/タッチパネル(指先や専用のペンで画面に触れることで入力を行う部品)が含まれる。これらの電子部品は2010年代以降にスマートフォンやタブレット、カーエレクトロニクス等の進化と普及に伴って発展してきた。求められる機能も高度になり小型化・信号の高速化・多機能化・高機能化が進展している。2023年度の接続部品のグローバル出荷額は1兆273億円((一社)電子情報技術産業協会「調査統計ガイドブック2024-2025」)であり、2020年から10.9%増加した。今後も自動運転の高度化、AI・ロボットの普及、6G通信の普及などに伴って、接続部品の需要は拡大が見込まれる。
2. 製品の特徴とコア技術
同社の主な製品は、各種コネクタ/スイッチ/カメラモジュール/無線モジュール/リモコン/タッチセンサーなどの電子部品である。同社の部品が搭載される機器としては、スマートフォン/タブレット/ウェアラブル機器などの電子機器/自動車/電動バイク/家電/住設機器/太陽光発電装置など様々な機器がデジタル化するなかで多様化する傾向にある。標準化された電子部品はコモディティ化し価格競争が激しくなるのが一般的であるが、同社はその競争をできるだけ回避すべく、顧客の要望を取り入れたカスタム品を得意とする。同社のコア技術は、主にコネクタ開発に重要な接続技術、リモコン等の開発に重要な無線技術、タッチパネル等の開発の重要なインプット技術、各種ユニット開発に重要なモジュール化技術である。
3. 顧客の業種、地域展開
同社は約100年の歴史の中で顧客の開拓と製品の提供を積み重ねてきており、自動車業界やエレクトロニクス・家電業界などでは大手企業のほとんどの企業との取引があると言う。2025年3月期中間期の市場分野別の売上構成比では、家電分野が最大で42.5%、車載分野30.3%、情報通信分野17.2%、産機10.0%と続く。地域別では、日本市場が29.4%で最大であり、米国が25.5%、中国が22.8%、その他アジアが17.8%、欧州が4.5%である。海外販売が約7割であるのに対して海外生産の比率も6割~7割に達しており、地産地消の方針の下、現地に根差したグローバル化が進んでいる。
4. CS事業部の特長と業績動向
CS事業部が手掛ける各種コネクタは創業期から続く製品であり、技術的にも業績的にも同社の屋台骨を支える事業である。市場別では車載分野の売上構成比が42.7%、情報通信分野が33.2%であり、2分野で全体の4分の3を占める。車載分野では電動化が進み、BMS(バッテリーマネジメントシステム)の軽量化、薄型化に貢献する製品やADAS(先進運転支援システム)の需要が拡大しており、車載カメラ用コネクタなどが今後の注目分野である。情報通信分野では、スマートフォンやウェアラブル市場向けに小型化・薄型化と高速・高周波対応の製品が求められている。
同事業部の強みは100年で磨き上げてきた技術力であり、具体的には、1) 小型・高速伝送設計(情報通信市場で培った業界最小・最速通信コネクタの開発、高信頼性)、2) カスタム対応(独自構造+Flexibleなカスタム対応、豊富な実績)、3) 自動化(高速・高品質での汎用性の高い設備開発、コスト対応力・納期対応力)の3点が挙げられる。車載カメラ用コネクタでは、同社は高い市場シェアを獲得している。
CS事業部の売上高は2019年3月期以降比較的安定して推移してきた。製品のポートフォリオは、コロナ禍でのリモートワークによる情報端末の需要増や自動車販売台数の減少、中国経済の動向などのマクロ要因から顧客企業の製品のライフサイクルや、売れ行きなどのミクロ要因まで様々な要因で変化してきており、結果として利益の変動も大きい。2025年3月期中間期は主力の車載分野及び情報通信分野が順調に推移し、売上高が11,519百万円(前年同期比11.3%増)、セグメント利益が1,160百万円(同120.5%増)と好調に推移した。
5. SCI事業部の特長と業績動向
SCI事業部が手掛ける製品はリモコン/スイッチ/カメラモジュールなどであり、多様な製品ラインナップがある。市場別では家電分野の売上構成比が70.2%と高く、車載分野が18.5%と続く。住設や家電機器のリモコンにおいては日系の電子部品メーカーの撤退が相次いだ経緯があるが、同社は高機能リモコンに活路を見出し勝ち残ってきた。家電分野では、環境対応製品へのシフトの加速や安全・健康・見守りに対する意識の高まりがトレンドになっており、センシング技術やAIなどを活用して高付加価値な機能・製品が求められている。同社ではオリジナルのミリ波センサー「Milweb(R)」を基盤に、保有する技術やAIとの融合による新製品開発及び新規ビジネスの開拓を進めている。ミリ波センサーは距離・速度・角度を高精度で検知できるため、車載/ヘルスケアなどの様々な製品やアプリケーションの開発に適している。非接触で測定可能な睡眠深度測定デバイスとして「Milweb(R) Sleep」の開発を進めている。精度の高い睡眠の質の解析を可能とし、家電機器との連携による快適で良質な睡眠の実現を目指し得意先との実証実験を開始した。そのほか複数の分野での実証実験が進行中である。
同事業部の強みはこれまで培ってきた重層的な技術力と製品力であり、具体的には、1) 製品の多様性(基礎技術を幅広く保有し、複合・応用対応が可能)、2) ワンストップサービスの提供(営業・開発・生産・販売を完結できる一貫体制を確立)、3) リスク対策(多拠点生産によるBCP対応が可能)が挙げられる。
SCI事業部の売上高は、2019年3月期以降に大きく変動し、ダウントレンドで推移してきた。中国市場の停滞やコロナ禍の影響などのマクロ要因、顧客企業の在庫調整や販売不振などのミクロ要因がある。CS事業部と比較すると多様な技術を活用した複雑な製品が多いため自動化になじまない製品も多く、人件費などの製造コストがかかるため、収益性が相対的に低い傾向にある。2025年3月期中間期は家電用リモコンが順調に拡大した一方で車載用製品の需要が減少し、売上高が11,982百万円(前年同期比4.3%減)、セグメント損失が851百万円(前年同期は608百万円の損失)と、減収減益となった。2025年3月期の第1四半期と中間期を比較すると損失額は減少傾向にあり、業績の底打ちは確認できる。新中期経営計画を通じて構造改革を加速し、収益性を高める計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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1. コネクタ、スイッチなどの接続部品の市場動向
同社の代表的な製品は電子部品の中でも接続部品である。接続部品市場にはスイッチ(電気機器や電子回路の通電状態をオン・オフに切り替えたりする部品)/コネクタ(充電時に差し込むものをはじめ、基板同士の接続やメモリカードの接続も行う部品)/タッチパネル(指先や専用のペンで画面に触れることで入力を行う部品)が含まれる。これらの電子部品は2010年代以降にスマートフォンやタブレット、カーエレクトロニクス等の進化と普及に伴って発展してきた。求められる機能も高度になり小型化・信号の高速化・多機能化・高機能化が進展している。2023年度の接続部品のグローバル出荷額は1兆273億円((一社)電子情報技術産業協会「調査統計ガイドブック2024-2025」)であり、2020年から10.9%増加した。今後も自動運転の高度化、AI・ロボットの普及、6G通信の普及などに伴って、接続部品の需要は拡大が見込まれる。
2. 製品の特徴とコア技術
同社の主な製品は、各種コネクタ/スイッチ/カメラモジュール/無線モジュール/リモコン/タッチセンサーなどの電子部品である。同社の部品が搭載される機器としては、スマートフォン/タブレット/ウェアラブル機器などの電子機器/自動車/電動バイク/家電/住設機器/太陽光発電装置など様々な機器がデジタル化するなかで多様化する傾向にある。標準化された電子部品はコモディティ化し価格競争が激しくなるのが一般的であるが、同社はその競争をできるだけ回避すべく、顧客の要望を取り入れたカスタム品を得意とする。同社のコア技術は、主にコネクタ開発に重要な接続技術、リモコン等の開発に重要な無線技術、タッチパネル等の開発の重要なインプット技術、各種ユニット開発に重要なモジュール化技術である。
3. 顧客の業種、地域展開
同社は約100年の歴史の中で顧客の開拓と製品の提供を積み重ねてきており、自動車業界やエレクトロニクス・家電業界などでは大手企業のほとんどの企業との取引があると言う。2025年3月期中間期の市場分野別の売上構成比では、家電分野が最大で42.5%、車載分野30.3%、情報通信分野17.2%、産機10.0%と続く。地域別では、日本市場が29.4%で最大であり、米国が25.5%、中国が22.8%、その他アジアが17.8%、欧州が4.5%である。海外販売が約7割であるのに対して海外生産の比率も6割~7割に達しており、地産地消の方針の下、現地に根差したグローバル化が進んでいる。
4. CS事業部の特長と業績動向
CS事業部が手掛ける各種コネクタは創業期から続く製品であり、技術的にも業績的にも同社の屋台骨を支える事業である。市場別では車載分野の売上構成比が42.7%、情報通信分野が33.2%であり、2分野で全体の4分の3を占める。車載分野では電動化が進み、BMS(バッテリーマネジメントシステム)の軽量化、薄型化に貢献する製品やADAS(先進運転支援システム)の需要が拡大しており、車載カメラ用コネクタなどが今後の注目分野である。情報通信分野では、スマートフォンやウェアラブル市場向けに小型化・薄型化と高速・高周波対応の製品が求められている。
同事業部の強みは100年で磨き上げてきた技術力であり、具体的には、1) 小型・高速伝送設計(情報通信市場で培った業界最小・最速通信コネクタの開発、高信頼性)、2) カスタム対応(独自構造+Flexibleなカスタム対応、豊富な実績)、3) 自動化(高速・高品質での汎用性の高い設備開発、コスト対応力・納期対応力)の3点が挙げられる。車載カメラ用コネクタでは、同社は高い市場シェアを獲得している。
CS事業部の売上高は2019年3月期以降比較的安定して推移してきた。製品のポートフォリオは、コロナ禍でのリモートワークによる情報端末の需要増や自動車販売台数の減少、中国経済の動向などのマクロ要因から顧客企業の製品のライフサイクルや、売れ行きなどのミクロ要因まで様々な要因で変化してきており、結果として利益の変動も大きい。2025年3月期中間期は主力の車載分野及び情報通信分野が順調に推移し、売上高が11,519百万円(前年同期比11.3%増)、セグメント利益が1,160百万円(同120.5%増)と好調に推移した。
5. SCI事業部の特長と業績動向
SCI事業部が手掛ける製品はリモコン/スイッチ/カメラモジュールなどであり、多様な製品ラインナップがある。市場別では家電分野の売上構成比が70.2%と高く、車載分野が18.5%と続く。住設や家電機器のリモコンにおいては日系の電子部品メーカーの撤退が相次いだ経緯があるが、同社は高機能リモコンに活路を見出し勝ち残ってきた。家電分野では、環境対応製品へのシフトの加速や安全・健康・見守りに対する意識の高まりがトレンドになっており、センシング技術やAIなどを活用して高付加価値な機能・製品が求められている。同社ではオリジナルのミリ波センサー「Milweb(R)」を基盤に、保有する技術やAIとの融合による新製品開発及び新規ビジネスの開拓を進めている。ミリ波センサーは距離・速度・角度を高精度で検知できるため、車載/ヘルスケアなどの様々な製品やアプリケーションの開発に適している。非接触で測定可能な睡眠深度測定デバイスとして「Milweb(R) Sleep」の開発を進めている。精度の高い睡眠の質の解析を可能とし、家電機器との連携による快適で良質な睡眠の実現を目指し得意先との実証実験を開始した。そのほか複数の分野での実証実験が進行中である。
同事業部の強みはこれまで培ってきた重層的な技術力と製品力であり、具体的には、1) 製品の多様性(基礎技術を幅広く保有し、複合・応用対応が可能)、2) ワンストップサービスの提供(営業・開発・生産・販売を完結できる一貫体制を確立)、3) リスク対策(多拠点生産によるBCP対応が可能)が挙げられる。
SCI事業部の売上高は、2019年3月期以降に大きく変動し、ダウントレンドで推移してきた。中国市場の停滞やコロナ禍の影響などのマクロ要因、顧客企業の在庫調整や販売不振などのミクロ要因がある。CS事業部と比較すると多様な技術を活用した複雑な製品が多いため自動化になじまない製品も多く、人件費などの製造コストがかかるため、収益性が相対的に低い傾向にある。2025年3月期中間期は家電用リモコンが順調に拡大した一方で車載用製品の需要が減少し、売上高が11,982百万円(前年同期比4.3%減)、セグメント損失が851百万円(前年同期は608百万円の損失)と、減収減益となった。2025年3月期の第1四半期と中間期を比較すると損失額は減少傾向にあり、業績の底打ちは確認できる。新中期経営計画を通じて構造改革を加速し、収益性を高める計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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