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マイクロアド Research Memo(5):2024年9月期はデジタルサイネージサービスの先行投資や人員増強を実施
配信日時:2025/01/06 13:05
配信元:FISCO
*13:05JST マイクロアド Research Memo(5):2024年9月期はデジタルサイネージサービスの先行投資や人員増強を実施
■マイクロアド<9553>の業績動向
1. 2024年9月期の業績概要
2024年9月期の連結業績は、売上高が前期比6.6%増の13,712百万円、営業利益が同63.1%減の307百万円、経常利益が同60.1%減の294百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同50.0%減の282百万円となった。主力の「UNIVERSE」が同19.6%増収と引き続き好調となったことに加えて、メディア向けコンサルティングも同13.7%増と売上を伸ばして全体の売上高を押し上げた。「UNIVERSE」は、GoogleのCookie廃止撤回を受け下期に見込んでいたテスト需要が消滅したものの、業界特化型製品の拡販によって稼働アカウント数を順調に積み上げ、テスト需要消滅のマイナス影響をカバーした。利益面では、「UNIVERSE」の売上総利益が同8.9%増と好調だった一方で、「デジタルサイネージサービス」の先行投資による減益、積極的な人員採用による全社コストが膨らんだことが響いて減益となった。
同社は2024年8月に2024年9月期連結業績予想を修正し、新たに売上高が13,600〜14,000百万円、営業利益が280〜460百万円、経常利益が220〜400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が190〜370百万円となる下方修正を発表していた。レンジでの予想としたのは、「UNIVERSE」において高単価の大型提案が複数進んでおり、その状況が不確定だったためだ。下方修正となったのは、主にデジタルサイネージにおいて美容サロン向け新サービス「OCTAVE」の立ち上げに遅れが生じたこと、Cookie廃止の延期・撤回に伴い規制開始前に見込んでいたテスト需要が消滅したことなどによるものだ。ただGoogleのプライバシー保護を推し進める方針に変わりはなく、今後はユーザー自身がCookieの利用可否を選択できる新しい仕組みが導入される予定だ。Cookie代替技術への開発投資を積極化してきた同社は、ユーザーがCookie利用を制限するようになった場合への備えは既に完了しており、Google Chromeにユーザー選択方式が導入されたタイミングで代替施策への先行投資が業績貢献してくる見通しだ。2024年10月31日に、「OCTAVE」の早期事業化及びMADSの経営の独立性向上を目的にMADSの株式譲渡とそれによる非連結化を実施した。今後は持分法適用範囲内でマイクロアドグループの利益に貢献してくるとともに、先行投資に伴うコスト負担も限定的となる見込みである。
(1) データプロダクト
2024年9月期のデータプロダクトの売上高は前期比13.7%増の6,831百万円、売上総利益は同2.4%減の2,249百万円だった。「UNIVERSE」の売上高は同19.6%増の5,966百万円、売上総利益は同8.9%増の2,083百万円と好調だった。Cookie廃止の撤回によって下期に見込んでいたテスト需要が消滅したものの、業種特化型プロダクトの拡販に注力したことや第3四半期にUNCOVER TRUTHを連結子会社化(損益取り込みは第4四半期から)したことなどが、増収増益に寄与した。「デジタルサイネージ」の売上高は同15.1%減の865百万円、売上総利益は同57.5%減の167百万円だった。売上面では、好調な「UNIVERSE」が「デジタルサイネージ」の減収を補ったが、利益面では「デジタルサイネージ」における減益が響いた。「デジタルサイネージ」は、美容サロンへのタブレットの設置が難航したことを受け、収益化が想定よりも遅れた。
「UNIVERSE」のKPIである稼働アカウント数は順調に拡大し、2024年第4四半期累積の稼働アカウント数は前年同期比8.4%増の1,720件となった。顧客の属性ごとに最適化した営業体制の下、顧客の業務形態に合わせてオンラインでのセミナー開催やマーケティング活動を行うなどの営業活動に注力したほか、顧客ニーズを的確に反映する形で業種別プロダクトの性能強化を継続したことなどが稼働アカウント数の増加に寄与した。また、同社は業績の安定化と顧客基盤の強化を図るという観点から、景況感の影響を受けづらい中小顧客と大手顧客への直販に注力し、同社の戦略どおり大手顧客直販と中小顧客が伸びたことも業績の拡大に寄与した。第4四半期単独の顧客属性ごとの売上は、大手顧客直販の売上高が2024年9月期第3四半期比11%増、中小顧客が同8%増と成長した。各種営業戦略が順調に進捗し大手顧客直販の売上が伸びるなか、平均顧客単価も高水準を維持した。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高は前期比0.3%増の6,882百万円、売上総利益は同0.3%増の1,830百万円となった。「メディア向けコンサルティング」の売上高は同13.7%増の2,566百万円、売上総利益は同1.7%減の691百万円、「海外コンサルティングサービス」の売上高は同10.3%減の2,680百万円、売上総利益は同5.1%増の722百万円だった。売上面はインバウンド需要の回復が想定よりも遅れたことなどを受け「海外コンサルティングサービス」が減収となったものの、メディア向けコンサルティングの増収がカバーした。利益面では、「海外コンサルティングサービス」の増益が寄与した。収益性の高いサービスの提供に注力したことにより利益の積み上げに成功したと言える。2024年9月期においてはインバウンドの回復が想定よりも低調だったものの、足元では中国人観光客の回復を中心にインバウンド需要が盛り上がりを見せている。インバウンド関連の各種新規サービスは順調に市場に投入されてきており、今後は盛り上がりを見せるインバウンド需要を取り込み、業績拡大スピードを高める方針だ。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2024年9月期には49.8%まで高まっている。今後も同社は「データプロダクト」に注力する方針であり、収益性が高まるものと弊社は予想している。
2. 財務状況と経営指標
2024年9月期末時点の財務状況は、総資産は前期末比1,549百万円増加の8,394百万円となった。この内、流動資産は現金及び預金の減少506百万円などにより、94百万円減少した。固定資産は、株式会社UNCOVER TRUTH社を連結子会社化したことなどによるのれんの増加1,052百万円などにより、1,644百万円増加した。
負債合計は前期末比1,382百万円増加の4,497百万円となった。この内、流動負債は短期借入金の増加1,000百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加19百万円などにより、1,134百万円増加した。固定負債は長期借入金の増加205百万円、リース債務の増加35百万円などにより、247百万円増加した。純資産合計は同167百万円増加の3,897百万円となった。これは主に、利益剰余金が282百万円増加したことなどによる。
経営指標は、流動比率が前期末比47.3ポイント減の118.2%、固定比率が同40.1ポイント増の89.0%となった。流動比率、固定比率ともに依然として健全な数値であり、長短の支払い能力に問題はないと弊社は考える。また、自己資本比率は39.0%となり、前期末比6.4ポイント低下した。ただ、中長期的には自己資本比率は高まると弊社は推察する。利益率の高いデータプロダクトに注力するなかで当期純利益を積み上げることによって、純資産の厚みが増すためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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1. 2024年9月期の業績概要
2024年9月期の連結業績は、売上高が前期比6.6%増の13,712百万円、営業利益が同63.1%減の307百万円、経常利益が同60.1%減の294百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同50.0%減の282百万円となった。主力の「UNIVERSE」が同19.6%増収と引き続き好調となったことに加えて、メディア向けコンサルティングも同13.7%増と売上を伸ばして全体の売上高を押し上げた。「UNIVERSE」は、GoogleのCookie廃止撤回を受け下期に見込んでいたテスト需要が消滅したものの、業界特化型製品の拡販によって稼働アカウント数を順調に積み上げ、テスト需要消滅のマイナス影響をカバーした。利益面では、「UNIVERSE」の売上総利益が同8.9%増と好調だった一方で、「デジタルサイネージサービス」の先行投資による減益、積極的な人員採用による全社コストが膨らんだことが響いて減益となった。
同社は2024年8月に2024年9月期連結業績予想を修正し、新たに売上高が13,600〜14,000百万円、営業利益が280〜460百万円、経常利益が220〜400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が190〜370百万円となる下方修正を発表していた。レンジでの予想としたのは、「UNIVERSE」において高単価の大型提案が複数進んでおり、その状況が不確定だったためだ。下方修正となったのは、主にデジタルサイネージにおいて美容サロン向け新サービス「OCTAVE」の立ち上げに遅れが生じたこと、Cookie廃止の延期・撤回に伴い規制開始前に見込んでいたテスト需要が消滅したことなどによるものだ。ただGoogleのプライバシー保護を推し進める方針に変わりはなく、今後はユーザー自身がCookieの利用可否を選択できる新しい仕組みが導入される予定だ。Cookie代替技術への開発投資を積極化してきた同社は、ユーザーがCookie利用を制限するようになった場合への備えは既に完了しており、Google Chromeにユーザー選択方式が導入されたタイミングで代替施策への先行投資が業績貢献してくる見通しだ。2024年10月31日に、「OCTAVE」の早期事業化及びMADSの経営の独立性向上を目的にMADSの株式譲渡とそれによる非連結化を実施した。今後は持分法適用範囲内でマイクロアドグループの利益に貢献してくるとともに、先行投資に伴うコスト負担も限定的となる見込みである。
(1) データプロダクト
2024年9月期のデータプロダクトの売上高は前期比13.7%増の6,831百万円、売上総利益は同2.4%減の2,249百万円だった。「UNIVERSE」の売上高は同19.6%増の5,966百万円、売上総利益は同8.9%増の2,083百万円と好調だった。Cookie廃止の撤回によって下期に見込んでいたテスト需要が消滅したものの、業種特化型プロダクトの拡販に注力したことや第3四半期にUNCOVER TRUTHを連結子会社化(損益取り込みは第4四半期から)したことなどが、増収増益に寄与した。「デジタルサイネージ」の売上高は同15.1%減の865百万円、売上総利益は同57.5%減の167百万円だった。売上面では、好調な「UNIVERSE」が「デジタルサイネージ」の減収を補ったが、利益面では「デジタルサイネージ」における減益が響いた。「デジタルサイネージ」は、美容サロンへのタブレットの設置が難航したことを受け、収益化が想定よりも遅れた。
「UNIVERSE」のKPIである稼働アカウント数は順調に拡大し、2024年第4四半期累積の稼働アカウント数は前年同期比8.4%増の1,720件となった。顧客の属性ごとに最適化した営業体制の下、顧客の業務形態に合わせてオンラインでのセミナー開催やマーケティング活動を行うなどの営業活動に注力したほか、顧客ニーズを的確に反映する形で業種別プロダクトの性能強化を継続したことなどが稼働アカウント数の増加に寄与した。また、同社は業績の安定化と顧客基盤の強化を図るという観点から、景況感の影響を受けづらい中小顧客と大手顧客への直販に注力し、同社の戦略どおり大手顧客直販と中小顧客が伸びたことも業績の拡大に寄与した。第4四半期単独の顧客属性ごとの売上は、大手顧客直販の売上高が2024年9月期第3四半期比11%増、中小顧客が同8%増と成長した。各種営業戦略が順調に進捗し大手顧客直販の売上が伸びるなか、平均顧客単価も高水準を維持した。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高は前期比0.3%増の6,882百万円、売上総利益は同0.3%増の1,830百万円となった。「メディア向けコンサルティング」の売上高は同13.7%増の2,566百万円、売上総利益は同1.7%減の691百万円、「海外コンサルティングサービス」の売上高は同10.3%減の2,680百万円、売上総利益は同5.1%増の722百万円だった。売上面はインバウンド需要の回復が想定よりも遅れたことなどを受け「海外コンサルティングサービス」が減収となったものの、メディア向けコンサルティングの増収がカバーした。利益面では、「海外コンサルティングサービス」の増益が寄与した。収益性の高いサービスの提供に注力したことにより利益の積み上げに成功したと言える。2024年9月期においてはインバウンドの回復が想定よりも低調だったものの、足元では中国人観光客の回復を中心にインバウンド需要が盛り上がりを見せている。インバウンド関連の各種新規サービスは順調に市場に投入されてきており、今後は盛り上がりを見せるインバウンド需要を取り込み、業績拡大スピードを高める方針だ。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2024年9月期には49.8%まで高まっている。今後も同社は「データプロダクト」に注力する方針であり、収益性が高まるものと弊社は予想している。
2. 財務状況と経営指標
2024年9月期末時点の財務状況は、総資産は前期末比1,549百万円増加の8,394百万円となった。この内、流動資産は現金及び預金の減少506百万円などにより、94百万円減少した。固定資産は、株式会社UNCOVER TRUTH社を連結子会社化したことなどによるのれんの増加1,052百万円などにより、1,644百万円増加した。
負債合計は前期末比1,382百万円増加の4,497百万円となった。この内、流動負債は短期借入金の増加1,000百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加19百万円などにより、1,134百万円増加した。固定負債は長期借入金の増加205百万円、リース債務の増加35百万円などにより、247百万円増加した。純資産合計は同167百万円増加の3,897百万円となった。これは主に、利益剰余金が282百万円増加したことなどによる。
経営指標は、流動比率が前期末比47.3ポイント減の118.2%、固定比率が同40.1ポイント増の89.0%となった。流動比率、固定比率ともに依然として健全な数値であり、長短の支払い能力に問題はないと弊社は考える。また、自己資本比率は39.0%となり、前期末比6.4ポイント低下した。ただ、中長期的には自己資本比率は高まると弊社は推察する。利益率の高いデータプロダクトに注力するなかで当期純利益を積み上げることによって、純資産の厚みが増すためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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