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CRI・MW Research Memo(2):「CRIWARE」というブランドで許諾ビジネスを展開
配信日時:2024/12/10 16:32
配信元:FISCO
*16:32JST CRI・MW Research Memo(2):「CRIWARE」というブランドで許諾ビジネスを展開
■会社概要
1. 会社概要
CRI・ミドルウェア<3698>は、主に「CRIWARE」というブランドで、音声・映像に特化したミドルウェア※の許諾ビジネスや技術サポートを行っている。音声・映像のデジタル信号処理技術に強みを持ち、ゲーム事業とエンタープライズ事業を展開、ゲーム事業では、ミドルウェアや画像最適化ソリューションなどを提供、子会社で音響制作を手掛けており、特に音声ミドルウェアは国内ゲーム市場でのシェアが非常に高い。エンタープライズ事業では、ゲーム事業で培った技術を生かし、ゲーム以外のなかでもモビリティ分野や家電・IoT機器などの組込み分野、Web動画や静止画等に係る技術を取り扱うクラウドソリューション分野に注力している。ゲーム向けミドルウェアで創業した同社だが、ゲームから遊技機などエンターテインメント分野へ、さらにモビリティや組込みなどエンタープライズ事業へと領域を拡大し、海外への再進出を果たした。中長期的に国内のゲーム依存の事業構造を変革し、ゲーム、モビリティ、TeleXus関連を3本柱にしていく計画で、5〜10年後に100億円企業となることを目指している。
※ ミドルウェア:ハードウェアやOS(オペレーティングシステム)と、アプリケーションソフトウェアとの中間(ミドル)に位置するソフトウェア。様々なハードウェアやOSの特性を押さえることで、アプリケーションの動作や開発をスムーズに行う。クオリティの向上、開発工数の削減、開発期間の短縮、開発難易度の低減などの効果があり、また、アプリケーションを異なる様々なプラットフォームで展開することも容易になる。
前身はCSK総合研究所のミドルウェア事業
2. 沿革
同社の前身は、(株)CSK(現SCSK<9719>)の子会社で、1983年にソフトウェア技術の研究所として設立された(株)CSK総合研究所である。設立当初はAIなどの研究を行っていたが、音声・映像関連の研究を進める過程で、当時、CSKのグループ会社であった(株)セガ・エンタープライゼス(現(株)セガ)との関係が深まり、セガの家庭用ゲーム機向け基本ソフト(ミドルウェア)やアプリケーションソフト(ゲーム)の開発を手掛けるようになった。その後セガの子会社となったが、2001年1月にセガが家庭用ゲーム機のハードウェア事業から撤退することになったため、同社前身であるCSK総合研究所のミドルウェア事業は、セガ以外の家庭用ゲーム機向けに(マルチプラットフォーム)展開する必要が生じた。このため、2001年8月にCSK総合研究所からミドルウェア部門が独立する形で同社が設立されることとなった。現在でも同社株式を12.25%所有するセガのゲームの多くに同社のミドルウェアが使われているが、経営自体は非常に独立性が高く、マルチプラットフォームとしてスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>や(株)バンダイナムコエンターテインメントなどゲーム業界で顧客数を増やしていった。2011年にはスマートデバイス向け営業プレゼンテーションシステムでゲーム業界以外に進出、2017年には車載組込み用サウンドミドルウェアによってモビリティにも進出、ゲームで培った技術力を背景にゲーム業界以外での顧客数も急拡大している。なお、海外事業については2006年に米国に進出したが、ゲーム機の世代が変わり、海外のタイトルが大型化するタイミングでいったん撤退することになった。しかし2019年に海外進出を再開、映像ミドルウェアのニーズが強かった中国から始めたことが奏功し着実に成長、欧米への再進出も視野に入れたところである。
エンタープライズの成長余地は大きい
3. 業界環境
ゲーム業界では、スマホゲームのブームが落ち着き、スマホからコンソール、PCへと揺り戻しが起きている。タイトルとしては、近年様々な理由で大規模タイトルの低迷が相次いでいるなか、小規模チームによるインディータイトルが活性化している。一方、国内ゲーム市場が圧倒的に伸びる時代はとうに終わったため、もちろんマルチプラットフォームとして国内も大規模タイトルもターゲットだが、インディーにも照準を合わせている。同社にとってはタイトル規模の大小以上に、導入するタイトル数が重要なため、無料製品※を投入するなどインディーの育成も進めている。ゲーム業界以外では、特にモビリティ分野が伸びている。価格と質の面、汎用マイコンを使っているため調達リスク回避の面で同社ミドルウェアの優位性が高く、自動車メーカーは音声ICからシフトしている状況である。また、音声が必要な場所は1台の自動車の中に多数あり、また海外メーカーもほぼ未開拓のため、拡大余地は大きいと見られる。
※ 無料製品:インディーを支援する仕組み。売上規模などが一定以上になると料金が発生する。
ミドルウェアでライバルと目されるのは、音声に特化したカナダのAudiokinetic, Inc.の「Wwise」、映像を得意とするRAD Game Toolsあたりとなる。ゲームエンジンの米国Unity Technologies(Unity Software Inc.)の「Unity」と米国Epic Gamesの「Unreal Engine」はゲーム全体を作成しやすくするゲームエンジンなので、その機能をさらに高めたい場合に同社のミドルウェアを連携することが多く、同社と共存しているということができる。また、RAD Game ToolsはEpic Gamesに買収されて以来、Epic Games向けの開発が中心となっているようだ。そうしたなかで国内では同社がトップシェアと言われるが、海外は撤退していた時期もあり、「Wwise」が欧米で地歩を固めているようだ。このようにターゲットが明確なことから、もちろん海外ゲーム市場でのシェアを奪取することも目標となるが、一方、世界的にも市場として大きく広がりを見せているエンタープライズ事業の成長余地も、同社にとって魅力的と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<HN>
1. 会社概要
CRI・ミドルウェア<3698>は、主に「CRIWARE」というブランドで、音声・映像に特化したミドルウェア※の許諾ビジネスや技術サポートを行っている。音声・映像のデジタル信号処理技術に強みを持ち、ゲーム事業とエンタープライズ事業を展開、ゲーム事業では、ミドルウェアや画像最適化ソリューションなどを提供、子会社で音響制作を手掛けており、特に音声ミドルウェアは国内ゲーム市場でのシェアが非常に高い。エンタープライズ事業では、ゲーム事業で培った技術を生かし、ゲーム以外のなかでもモビリティ分野や家電・IoT機器などの組込み分野、Web動画や静止画等に係る技術を取り扱うクラウドソリューション分野に注力している。ゲーム向けミドルウェアで創業した同社だが、ゲームから遊技機などエンターテインメント分野へ、さらにモビリティや組込みなどエンタープライズ事業へと領域を拡大し、海外への再進出を果たした。中長期的に国内のゲーム依存の事業構造を変革し、ゲーム、モビリティ、TeleXus関連を3本柱にしていく計画で、5〜10年後に100億円企業となることを目指している。
※ ミドルウェア:ハードウェアやOS(オペレーティングシステム)と、アプリケーションソフトウェアとの中間(ミドル)に位置するソフトウェア。様々なハードウェアやOSの特性を押さえることで、アプリケーションの動作や開発をスムーズに行う。クオリティの向上、開発工数の削減、開発期間の短縮、開発難易度の低減などの効果があり、また、アプリケーションを異なる様々なプラットフォームで展開することも容易になる。
前身はCSK総合研究所のミドルウェア事業
2. 沿革
同社の前身は、(株)CSK(現SCSK<9719>)の子会社で、1983年にソフトウェア技術の研究所として設立された(株)CSK総合研究所である。設立当初はAIなどの研究を行っていたが、音声・映像関連の研究を進める過程で、当時、CSKのグループ会社であった(株)セガ・エンタープライゼス(現(株)セガ)との関係が深まり、セガの家庭用ゲーム機向け基本ソフト(ミドルウェア)やアプリケーションソフト(ゲーム)の開発を手掛けるようになった。その後セガの子会社となったが、2001年1月にセガが家庭用ゲーム機のハードウェア事業から撤退することになったため、同社前身であるCSK総合研究所のミドルウェア事業は、セガ以外の家庭用ゲーム機向けに(マルチプラットフォーム)展開する必要が生じた。このため、2001年8月にCSK総合研究所からミドルウェア部門が独立する形で同社が設立されることとなった。現在でも同社株式を12.25%所有するセガのゲームの多くに同社のミドルウェアが使われているが、経営自体は非常に独立性が高く、マルチプラットフォームとしてスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>や(株)バンダイナムコエンターテインメントなどゲーム業界で顧客数を増やしていった。2011年にはスマートデバイス向け営業プレゼンテーションシステムでゲーム業界以外に進出、2017年には車載組込み用サウンドミドルウェアによってモビリティにも進出、ゲームで培った技術力を背景にゲーム業界以外での顧客数も急拡大している。なお、海外事業については2006年に米国に進出したが、ゲーム機の世代が変わり、海外のタイトルが大型化するタイミングでいったん撤退することになった。しかし2019年に海外進出を再開、映像ミドルウェアのニーズが強かった中国から始めたことが奏功し着実に成長、欧米への再進出も視野に入れたところである。
エンタープライズの成長余地は大きい
3. 業界環境
ゲーム業界では、スマホゲームのブームが落ち着き、スマホからコンソール、PCへと揺り戻しが起きている。タイトルとしては、近年様々な理由で大規模タイトルの低迷が相次いでいるなか、小規模チームによるインディータイトルが活性化している。一方、国内ゲーム市場が圧倒的に伸びる時代はとうに終わったため、もちろんマルチプラットフォームとして国内も大規模タイトルもターゲットだが、インディーにも照準を合わせている。同社にとってはタイトル規模の大小以上に、導入するタイトル数が重要なため、無料製品※を投入するなどインディーの育成も進めている。ゲーム業界以外では、特にモビリティ分野が伸びている。価格と質の面、汎用マイコンを使っているため調達リスク回避の面で同社ミドルウェアの優位性が高く、自動車メーカーは音声ICからシフトしている状況である。また、音声が必要な場所は1台の自動車の中に多数あり、また海外メーカーもほぼ未開拓のため、拡大余地は大きいと見られる。
※ 無料製品:インディーを支援する仕組み。売上規模などが一定以上になると料金が発生する。
ミドルウェアでライバルと目されるのは、音声に特化したカナダのAudiokinetic, Inc.の「Wwise」、映像を得意とするRAD Game Toolsあたりとなる。ゲームエンジンの米国Unity Technologies(Unity Software Inc.)の「Unity」と米国Epic Gamesの「Unreal Engine」はゲーム全体を作成しやすくするゲームエンジンなので、その機能をさらに高めたい場合に同社のミドルウェアを連携することが多く、同社と共存しているということができる。また、RAD Game ToolsはEpic Gamesに買収されて以来、Epic Games向けの開発が中心となっているようだ。そうしたなかで国内では同社がトップシェアと言われるが、海外は撤退していた時期もあり、「Wwise」が欧米で地歩を固めているようだ。このようにターゲットが明確なことから、もちろん海外ゲーム市場でのシェアを奪取することも目標となるが、一方、世界的にも市場として大きく広がりを見せているエンタープライズ事業の成長余地も、同社にとって魅力的と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<HN>
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