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ワコム Research Memo(6):次期中期経営方針Wacom Chapter 4に向けた構造改革を推進
配信日時:2024/12/06 13:06
配信元:FISCO
*13:06JST ワコム Research Memo(6):次期中期経営方針Wacom Chapter 4に向けた構造改革を推進
■ワコム<6727>の中期経営方針「Wacom Chapter 3」アップデート(改編)の進捗
1. 基本的な方向性とこれまでの経緯
同社は、4ヶ年の中期経営方針「Wacom Chapter 3」(2022年3月期~2025年3月期)に沿った取り組みを推進してきた。「ライフロング・インク」のビジョン※1を継承しつつも「5つの戦略軸」を設定し、その実行に当たって「6つの主要技術開発軸」を定め、具体的な価値提供と持続的な成長につなげる方針である※2。特に既存技術と親和性の高いAI、XR、セキュリティの3分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルで新しい価値提供を目指すことが戦略の目玉となっている。また、コーポレート・ガバナンス改革等を通じて経営の質の向上や、同社独自のアプローチによる社会・コミュニティへの関わりにも取り組む方針であり、これらの基本的な方向性(ストーリーライン)に見直しはない。
※1 「お客様と社会に対して、同社の技術に基づく『人間にとって意味のある体験』を長期の時間軸で、ご提供し続けていきます」というもの。
※2 「5つの戦略軸」(テクノロジー・リーダーシップ、コミュニティ・エンゲージメント、新しいコア技術/新しい価値創造、持続可能な社会へ貢献する技術革新、人間と社会にとって意味深い成長)や、「6つの主要技術開発軸」(ペンの技術、ペンと紙の技術、デジタルインク技術、AIとデジタルインク技術、XR描画技術、セキュリティ認証技術)を含む、「Wacom Chapter 3」(アップデートプラン)の全体像に関する解説については、本レポートでは説明を省く。
ただ、足元の経済環境の悪化に伴う急激な消費者センチメントの低下などにより「ブランド製品事業」の業績が想定以上に落ち込んだことに加え、商品ポートフォリオや販路マネジメントの強化など同社自身の体制にも改善すべき余地がある。このため後半2年間(2024年3月期~2025年3月期)を次のWacom Chapter 4での事業成長につなげるための「事業構造変革期間」と位置付け、粗利改善や成長基盤の構築に注力する方針(アップデートプラン)を打ち立てた(2023年5月公表)。さらに2024年5月には、「ブランド製品事業」についてはもう一段の追加構造改革が必要であると判断し、アップデートプランの改編を発表した※。
※ 新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)期間に発生した「需要先食い」の解消が見込みよりも遅れていること、2) 特定地域(中国など)では、全体市況として消費者による買い控えが継続していること、3) ペンタブレット製品のエントリーゾーンにおいては、ペンタブレット製品以外の選択肢が多様化しており、ほかのカテゴリーへ需要が若干シフトする傾向が発生していることなどが改編に至った背景である。
2. 「ブランド製品事業」における構造改革プランの概要(2024年5月公表時点)
2024年5月には、「ブランド製品事業」における構造改革プランとして以下の施策を通じてオペレーション費用の最適化(約20億円の費用削減)を図ることで、Wacom Chapter 4 の初年度(2026年3月期)においてセグメント黒字化を実現する考えを公表した。さらに2年目(2027年3月期)以降での売上規模拡大による収益貢献、クリエイティブ・コミュニティにおけるブランド地位/信頼の維持・向上を目指す。
1) 商品ポートフォリオ
新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」の確立、ならびにソリューション提供型への移行(サービス提供によるサブスク型ビジネスモデル)により売上拡大と粗利改善を目指す。
2) 集中事業領域
プロ向け、クリエイティブ専門領域に集中し、K12(小・中・高)市場は「テクノロジーソリューション事業」にてカバーすることで、組織規模の最適化を目指す。
3) 販路/地域オペレーション
e-store/B2B/コミュニティ連携に集中するとともに、抜本的な販社機能統合と機能集約化を図ることで、「オペレーションの軽量化」を実現し、組織規模及び関連費用の最適化を目指す。
4) 組織構造
新リーダーシップの下での構造改革及び「ペンとインクの統合体験」※の一体化開発推進に取り組むとともに、「オペレーションの軽量化」の方針の下、開発/オペレーションの最適化・集約化を図ることで、組織規模の最適化を目指す。
※ Wacom Chapter 4における新しい価値提供。ハードウェア、ソフトウェア、サービス、コミュニティ連携、技術モジュール、新コア技術を一体化した価値創出により、制作ワークフローや学びのユースケースに対して、ペンとインクに関する統合体験を提供するもの。
3. 構造改革プランの進捗と取り組み(2024年10月公表時点)
2024年10月には、Wacom Chapter 4に向かっての全社組織及びブランド製品事業の構造改革に対する具体的な取り組みを公表した。以下の施策を通じて、同社全体の15%~20%に当たる人員ポジションを閉鎖するとともに、社内システムの運営費用の見直しにより、20億円以上の費用削減プランを2025年3月期中に実施する。
1) 新ポートフォリオの立ち上げ
新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」を確立すべく、2024年5月に「Wacom Movink 13」をリリースし、本カテゴリーの拡大を推進する。また、市場環境の変化により苦戦するボリュームゾーン(中低価格モデル)については、アプリケーション及びサービス、アフターサービスを含めたユーザー体験で差別化を図る。
2) 地域組織のビジネスモデルを変更
商品のBuy-Sell機能を日本に集約(一部を除く)し、日本から直接販売する体制とすることで、ロジスティクス、オペレーション、在庫マネジメントといった機能を軽量化する。一方、地域組織はサービス会社としてコミュニティ連携や市場開発に集中する。
3) 全社共通のWacom Platform開発
「ブランド製品事業」「テクノロジーソリューション事業」に関わらず、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、UI(ユーザー・インターフェース)が統合された全社共通のプラットフォーム開発を通じて、開発リソースの大部分をハードウェア拠点(日本)に集約する。
4) 全社オペレーション軽量化
「ブランド製品事業」の構造改革に伴う関連システムの見直し及び資産の軽量化に取り組む。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 基本的な方向性とこれまでの経緯
同社は、4ヶ年の中期経営方針「Wacom Chapter 3」(2022年3月期~2025年3月期)に沿った取り組みを推進してきた。「ライフロング・インク」のビジョン※1を継承しつつも「5つの戦略軸」を設定し、その実行に当たって「6つの主要技術開発軸」を定め、具体的な価値提供と持続的な成長につなげる方針である※2。特に既存技術と親和性の高いAI、XR、セキュリティの3分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルで新しい価値提供を目指すことが戦略の目玉となっている。また、コーポレート・ガバナンス改革等を通じて経営の質の向上や、同社独自のアプローチによる社会・コミュニティへの関わりにも取り組む方針であり、これらの基本的な方向性(ストーリーライン)に見直しはない。
※1 「お客様と社会に対して、同社の技術に基づく『人間にとって意味のある体験』を長期の時間軸で、ご提供し続けていきます」というもの。
※2 「5つの戦略軸」(テクノロジー・リーダーシップ、コミュニティ・エンゲージメント、新しいコア技術/新しい価値創造、持続可能な社会へ貢献する技術革新、人間と社会にとって意味深い成長)や、「6つの主要技術開発軸」(ペンの技術、ペンと紙の技術、デジタルインク技術、AIとデジタルインク技術、XR描画技術、セキュリティ認証技術)を含む、「Wacom Chapter 3」(アップデートプラン)の全体像に関する解説については、本レポートでは説明を省く。
ただ、足元の経済環境の悪化に伴う急激な消費者センチメントの低下などにより「ブランド製品事業」の業績が想定以上に落ち込んだことに加え、商品ポートフォリオや販路マネジメントの強化など同社自身の体制にも改善すべき余地がある。このため後半2年間(2024年3月期~2025年3月期)を次のWacom Chapter 4での事業成長につなげるための「事業構造変革期間」と位置付け、粗利改善や成長基盤の構築に注力する方針(アップデートプラン)を打ち立てた(2023年5月公表)。さらに2024年5月には、「ブランド製品事業」についてはもう一段の追加構造改革が必要であると判断し、アップデートプランの改編を発表した※。
※ 新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)期間に発生した「需要先食い」の解消が見込みよりも遅れていること、2) 特定地域(中国など)では、全体市況として消費者による買い控えが継続していること、3) ペンタブレット製品のエントリーゾーンにおいては、ペンタブレット製品以外の選択肢が多様化しており、ほかのカテゴリーへ需要が若干シフトする傾向が発生していることなどが改編に至った背景である。
2. 「ブランド製品事業」における構造改革プランの概要(2024年5月公表時点)
2024年5月には、「ブランド製品事業」における構造改革プランとして以下の施策を通じてオペレーション費用の最適化(約20億円の費用削減)を図ることで、Wacom Chapter 4 の初年度(2026年3月期)においてセグメント黒字化を実現する考えを公表した。さらに2年目(2027年3月期)以降での売上規模拡大による収益貢献、クリエイティブ・コミュニティにおけるブランド地位/信頼の維持・向上を目指す。
1) 商品ポートフォリオ
新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」の確立、ならびにソリューション提供型への移行(サービス提供によるサブスク型ビジネスモデル)により売上拡大と粗利改善を目指す。
2) 集中事業領域
プロ向け、クリエイティブ専門領域に集中し、K12(小・中・高)市場は「テクノロジーソリューション事業」にてカバーすることで、組織規模の最適化を目指す。
3) 販路/地域オペレーション
e-store/B2B/コミュニティ連携に集中するとともに、抜本的な販社機能統合と機能集約化を図ることで、「オペレーションの軽量化」を実現し、組織規模及び関連費用の最適化を目指す。
4) 組織構造
新リーダーシップの下での構造改革及び「ペンとインクの統合体験」※の一体化開発推進に取り組むとともに、「オペレーションの軽量化」の方針の下、開発/オペレーションの最適化・集約化を図ることで、組織規模の最適化を目指す。
※ Wacom Chapter 4における新しい価値提供。ハードウェア、ソフトウェア、サービス、コミュニティ連携、技術モジュール、新コア技術を一体化した価値創出により、制作ワークフローや学びのユースケースに対して、ペンとインクに関する統合体験を提供するもの。
3. 構造改革プランの進捗と取り組み(2024年10月公表時点)
2024年10月には、Wacom Chapter 4に向かっての全社組織及びブランド製品事業の構造改革に対する具体的な取り組みを公表した。以下の施策を通じて、同社全体の15%~20%に当たる人員ポジションを閉鎖するとともに、社内システムの運営費用の見直しにより、20億円以上の費用削減プランを2025年3月期中に実施する。
1) 新ポートフォリオの立ち上げ
新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」を確立すべく、2024年5月に「Wacom Movink 13」をリリースし、本カテゴリーの拡大を推進する。また、市場環境の変化により苦戦するボリュームゾーン(中低価格モデル)については、アプリケーション及びサービス、アフターサービスを含めたユーザー体験で差別化を図る。
2) 地域組織のビジネスモデルを変更
商品のBuy-Sell機能を日本に集約(一部を除く)し、日本から直接販売する体制とすることで、ロジスティクス、オペレーション、在庫マネジメントといった機能を軽量化する。一方、地域組織はサービス会社としてコミュニティ連携や市場開発に集中する。
3) 全社共通のWacom Platform開発
「ブランド製品事業」「テクノロジーソリューション事業」に関わらず、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、UI(ユーザー・インターフェース)が統合された全社共通のプラットフォーム開発を通じて、開発リソースの大部分をハードウェア拠点(日本)に集約する。
4) 全社オペレーション軽量化
「ブランド製品事業」の構造改革に伴う関連システムの見直し及び資産の軽量化に取り組む。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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