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ワコム Research Memo(4):2025年3月期上期は円安効果やOEM需要増により増収・営業増益
配信日時:2024/12/06 13:04
配信元:FISCO
*13:04JST ワコム Research Memo(4):2025年3月期上期は円安効果やOEM需要増により増収・営業増益
■ワコム<6727>の決算概要
1. 2025年3月期上期の業績概要
2025年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比3.1%増の57,315百万円、営業利益が同122.9%増の5,475百万円、経常利益が同4.1%減の4,785百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同8.8%減の3,470百万円と増収及び大幅な営業増益となった。なお、経常利益以下が減益となったのは、営業外損益の為替差損の計上が主因である。
売上高は、円安効果※や好調なOEM需要を背景とする「テクノロジーソリューション事業」の伸びが増収に寄与した。ただ、「ブランド製品事業」については、商品ポートフォリオのアップデートを進めるなか、プロ向けモデルが新商品の貢献により伸長したものの、プロ向け以外の中低価格帯モデルにおいて苦戦が続いている。
※ 売上高全体を約39億円押し上げる要因となった。
損益面では積極的な研究開発投資※1を継続しながらも、円安効果※2を含む「テクノロジーソリューション事業」の伸びや「ブランド製品事業」における損益改善(損失幅の縮小)により、大幅な営業増益を実現した。経常利益以下については、為替差損7億円を営業外損益に計上したことで減益となった(前年同期は為替差益25億円の計上)。
※1 中期経営方針に基づき、同社グループが持つデジタルペンの技術価値や各要素を「ペンとインクの統合体験」として市場実装すべく、次世代の成長エンジンとなる技術開発を推進している。
※2 営業利益全体を約8億円押し上げる要因となった(テクノロジーソリューション事業によるもの)。
財政状態については在庫マネジメント(適正化)が前期末までにおおむね完結し、特筆すべき変動はなかったものの、一時的に輸送在庫(棚卸資産)が増加した一方、現金及び預金が自己株式の取得※等により減少したことにより、総資産は前期末比2.7%減の77,466百万円に縮小した。また、自己資本についても、配当や自己株式の取得に伴い同7.1%減の33,431百万円に減少したことから、自己資本比率は43.2%(前期末は45.2%)とわずかに低下した。
※ 2024年5月9月付取締役会決議に基づき、総額約30億円(4,032,500株)を取得した。
2. 事業別の業績概要
(1) ブランド製品事業
売上高は前年同期比13.2%減の14,824百万円、セグメント損失は1,106百万円(前年同期は2,017百万円の損失)と、減収ながらセグメント損失が縮小した。売上高は円安効果(約8億円の増収要因)があったものの、主力の「クリエイティブソリューション」が消費者センチメントの悪化等に伴う市場環境の変化により、ディスプレイ製品・ペンタブレット製品ともに低調に推移した。「ビジネスソリューション」についても流動的な市況の変化や案件進捗の影響により、わずかに減収となった。損益面では、構造改革の初期効果(人件費や減価償却費の減少等)に伴って損失幅が縮小した。活動面では、構造改革の1つに掲げる新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」を確立すべく、2024年5月に「Wacom Movink 13」※をリリースした。
※ 同社史上最薄・最軽量、そして初の有機ELディスプレイを搭載したペンタブレット。
a) クリエイティブソリューションの売上高
前年同期比15.0%減の12,664百万円と低調に推移した。製品別に見ると、「ディスプレイ製品」ではプロ向けモデルが新商品※の貢献等により伸長したものの、プロ向け以外は需要減等により中低価格帯が減少した。「ペンタブレット製品」についてはプロ向けモデルがわずかに減収となったほか、プロ向け以外では低価格帯が増収となったものの、中価格帯が需要減等により減収となった。
※ 2023年10月にリリースしたフラグシップモデル「Wacom Cintiq Proシリーズ」及び2024年5月にリリースした新ユースケース「Wacom Movink 13」。
b) ビジネスソリューションの売上高
前年同期比0.9%減の2,160百万円とわずかに減収となった。流動的な市況の変化や案件進捗による影響を受けて伸び悩んだ。
(2) テクノロジーソリューション事業
売上高は前年同期比10.3%増の42,491百万円、セグメント利益は同34.8%増の9,325百万円と増収増益となった。売上高は円安効果(約30億円の増収要因)に加え、「EMRテクノロジーソリューション」におけるOEM提供先の需要増が増収に寄与した。スマートフォン向けに実装している技術だけでなく、電子ペーパー(Eペーパー)向けの需要についても、中国で増えているリモート教育の専用端末等で伸びているようだ。「AESテクノロジーソリューション」についても、市場環境の変化を受けながらも前年同期並みを確保した。損益面でも増収による収益の押し上げや円安効果(約10億円の増益要因)等により大幅な増益となった。
3. 2025年3月期上期の総括
円安効果や好調なOEM需要を背景とする「テクノロジーソリューション事業」の伸びが業績のプラス要因となる一方、「ブランド製品事業」の回復の遅れがマイナス要因となっており、2024年3月期からの基調に変化はないとの見方ができる。特に「ブランド製品事業」においては市場構造が変化するなかで、2024年3月期にリリースした新製品の市場浸透は依然スローであり、厳しい状況が続いている。Wacom Chapter 4に向けた事業構造改革については着実に進めており、とりわけ「ブランド製品事業」のコスト最適化には一定の成果を示した。新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」の確立に向けても新商品をリリースし、今後に向けて最初の一歩を踏み出すことができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2025年3月期上期の業績概要
2025年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比3.1%増の57,315百万円、営業利益が同122.9%増の5,475百万円、経常利益が同4.1%減の4,785百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同8.8%減の3,470百万円と増収及び大幅な営業増益となった。なお、経常利益以下が減益となったのは、営業外損益の為替差損の計上が主因である。
売上高は、円安効果※や好調なOEM需要を背景とする「テクノロジーソリューション事業」の伸びが増収に寄与した。ただ、「ブランド製品事業」については、商品ポートフォリオのアップデートを進めるなか、プロ向けモデルが新商品の貢献により伸長したものの、プロ向け以外の中低価格帯モデルにおいて苦戦が続いている。
※ 売上高全体を約39億円押し上げる要因となった。
損益面では積極的な研究開発投資※1を継続しながらも、円安効果※2を含む「テクノロジーソリューション事業」の伸びや「ブランド製品事業」における損益改善(損失幅の縮小)により、大幅な営業増益を実現した。経常利益以下については、為替差損7億円を営業外損益に計上したことで減益となった(前年同期は為替差益25億円の計上)。
※1 中期経営方針に基づき、同社グループが持つデジタルペンの技術価値や各要素を「ペンとインクの統合体験」として市場実装すべく、次世代の成長エンジンとなる技術開発を推進している。
※2 営業利益全体を約8億円押し上げる要因となった(テクノロジーソリューション事業によるもの)。
財政状態については在庫マネジメント(適正化)が前期末までにおおむね完結し、特筆すべき変動はなかったものの、一時的に輸送在庫(棚卸資産)が増加した一方、現金及び預金が自己株式の取得※等により減少したことにより、総資産は前期末比2.7%減の77,466百万円に縮小した。また、自己資本についても、配当や自己株式の取得に伴い同7.1%減の33,431百万円に減少したことから、自己資本比率は43.2%(前期末は45.2%)とわずかに低下した。
※ 2024年5月9月付取締役会決議に基づき、総額約30億円(4,032,500株)を取得した。
2. 事業別の業績概要
(1) ブランド製品事業
売上高は前年同期比13.2%減の14,824百万円、セグメント損失は1,106百万円(前年同期は2,017百万円の損失)と、減収ながらセグメント損失が縮小した。売上高は円安効果(約8億円の増収要因)があったものの、主力の「クリエイティブソリューション」が消費者センチメントの悪化等に伴う市場環境の変化により、ディスプレイ製品・ペンタブレット製品ともに低調に推移した。「ビジネスソリューション」についても流動的な市況の変化や案件進捗の影響により、わずかに減収となった。損益面では、構造改革の初期効果(人件費や減価償却費の減少等)に伴って損失幅が縮小した。活動面では、構造改革の1つに掲げる新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」を確立すべく、2024年5月に「Wacom Movink 13」※をリリースした。
※ 同社史上最薄・最軽量、そして初の有機ELディスプレイを搭載したペンタブレット。
a) クリエイティブソリューションの売上高
前年同期比15.0%減の12,664百万円と低調に推移した。製品別に見ると、「ディスプレイ製品」ではプロ向けモデルが新商品※の貢献等により伸長したものの、プロ向け以外は需要減等により中低価格帯が減少した。「ペンタブレット製品」についてはプロ向けモデルがわずかに減収となったほか、プロ向け以外では低価格帯が増収となったものの、中価格帯が需要減等により減収となった。
※ 2023年10月にリリースしたフラグシップモデル「Wacom Cintiq Proシリーズ」及び2024年5月にリリースした新ユースケース「Wacom Movink 13」。
b) ビジネスソリューションの売上高
前年同期比0.9%減の2,160百万円とわずかに減収となった。流動的な市況の変化や案件進捗による影響を受けて伸び悩んだ。
(2) テクノロジーソリューション事業
売上高は前年同期比10.3%増の42,491百万円、セグメント利益は同34.8%増の9,325百万円と増収増益となった。売上高は円安効果(約30億円の増収要因)に加え、「EMRテクノロジーソリューション」におけるOEM提供先の需要増が増収に寄与した。スマートフォン向けに実装している技術だけでなく、電子ペーパー(Eペーパー)向けの需要についても、中国で増えているリモート教育の専用端末等で伸びているようだ。「AESテクノロジーソリューション」についても、市場環境の変化を受けながらも前年同期並みを確保した。損益面でも増収による収益の押し上げや円安効果(約10億円の増益要因)等により大幅な増益となった。
3. 2025年3月期上期の総括
円安効果や好調なOEM需要を背景とする「テクノロジーソリューション事業」の伸びが業績のプラス要因となる一方、「ブランド製品事業」の回復の遅れがマイナス要因となっており、2024年3月期からの基調に変化はないとの見方ができる。特に「ブランド製品事業」においては市場構造が変化するなかで、2024年3月期にリリースした新製品の市場浸透は依然スローであり、厳しい状況が続いている。Wacom Chapter 4に向けた事業構造改革については着実に進めており、とりわけ「ブランド製品事業」のコスト最適化には一定の成果を示した。新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」の確立に向けても新商品をリリースし、今後に向けて最初の一歩を踏み出すことができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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