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一正蒲 Research Memo(4):「ICHIMASA30ビジョン」の実現に向けESG経営を制定
配信日時:2024/11/18 15:04
配信元:FISCO
*15:04JST 一正蒲 Research Memo(4):「ICHIMASA30ビジョン」の実現に向けESG経営を制定
■一正蒲鉾<2904>の事業概要
3. ESG経営
同社は「ICHIMASA30ビジョン」を実現するための基礎となる経営基盤としてESG経営を標榜しており、2021年7月に「ESG経営宣言」を制定した。「食の安全・安心、新たな食の価値の提供」「資源の有効活用」「ES(従業員満足)向上、人財育成」「地球温暖化抑制対応」「社内外との協働」を重要課題として取り組んでいる。
1) 「食の安全・安心、新たな食の価値の提供」
食品の衛生管理システムHACCPに基づいて製造工程の管理を行っており、食品安全のマネジメントシステムとしての国際認証規格ISO22000の認証を2013年1月に全社で取得した。さらなる食品安全の取り組みを進めるべく、ISO22000をベースにより確実な食品安全管理を実践するために作られた食品安全マネジメントシステムに関する国際規格FSSC22000の認証を、本社・本社工場・本社第二工場・聖籠工場・東港工場・北海道工場で取得した。また、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格ISO45001の認証は2024年6月に全生産拠点で取得終了し、環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO14001の認証も2024年6月に全生産拠点で取得終了した。
加えて、同社がチャレンジしてきた「モノづくり」を生かしながら新たな食の価値を提供する取り組みを進めている。たとえば、プロテインブームのなかで魚肉たんぱくを「フィッシュプロテイン」に改め、業界としてプロテイン含有量の基準(8.1g/100g以上または4.1g/100kcal以上)やフィッシュプロテインマークを制定し、業界の価値を上げる取り組みを推進している。同社商品も、カニかまを中心に基準に合致するものにはフィッシュプロテインマークを表記している。また、消費者の健康志向から減塩商品、低脂肪・脂肪ゼロ商品のラインナップも拡充している。さらに、まいたけに多く含有するビタミンDに着目し、同社はまいたけのビタミンDの含有量を安定的にコントロールする栽培方法を確立し、まいたけ商品の表記をすべて「ビタミンD 舞茸」に切り替えた。
2) 「資源の有効活用」
食品ロス削減に向けて、賞味期限を延長した商品を拡充し、さつま揚げの徳用として開発した「小判てんぷら」は冷凍保存を可能にした。「小判てんぷら」は店頭での食品廃棄ロスも削減できると販売先から好評を得ていると言う。さらに、枯渇する海洋資源保全を目的とした代替食品の開発に注力している。“うなぎフリー”の商品化に成功した「うなる美味しさ うな次郎」を皮切りに、魚のすり身を使用した代替水産製品の総称として“ネクストシーフード”を提唱し、「ネクストシーフード うに風味」と「ネクストシーフード 明太子風味」を発売した。そのほか、食品リサイクル率の向上や廃プラスチック排出量削減に向けて、循環型のECOトレーの商品ラインナップ拡充や内容量をライフスタイルに合わせたトレーレス包装の商品拡充に取り組んでいる。
3) 「ES向上、人財育成」
同社は、従業員にIWS(いちまさワークスタイル)を推奨している。IWSとは、働きがい向上やライフ・ワーク・バランスの実現、多様な生き方への対応に寄与することを目的とした就業時間内で能力開発や知的創造活動に取り組む働き方である。最大で就業時間の10%(年間約200時間)を従業員自らが自身の能力開発・知的創造活動に充てることができ、自発的な計画・実施を推奨している。そのための自己啓発制度の拡充、研修チャネル・プログラムの充実にも取り組んでいる。
また、女性の積極的な採用をはじめ、職場環境の整備、福利厚生制度の充実を図り「働きやすい・働きがいのある」会社を目指している。2023年6月には、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業を厚生労働省が認定する「えるぼし認定」の“3つ星”を取得した。採用/継続就業/労働時間などの働き方/女性の管理職比率/多様なキャリアコースの評価項目について要件が設定されており、同社はこの5要件すべてを満たした。また、2015年に次世代育成支援対策推進法に基づき、特に高い水準の子育て支援を実施している企業に与えられる「プラチナくるみん」を取得し、家庭と仕事の両立支援の取り組みを推進してきたが、2023年7月より従来3歳に達する日まで利用可能であった育児短時間勤務制度を小学校3年生終了時まで延長し、従業員のライフステージに合わせた多様な生き方の拡充、女性の就業継続支援を進めている。
4) 「地球温暖化抑制対応」
小樽市にある北海道工場は、販売シェアが首位の北海道エリアへの商品供給を行う拠点で、北海道限定商品の開発・生産や「made in 北海道」を訴求できる海外輸出用商品の生産を担っている。2024年4月に使用電力を実質100%再生可能エネルギー由来の電力(以下、再エネ電力)に切り替えた。これは、海外輸出用商品においては訴求力にもつながるだろう。また、新潟県聖籠工場はおせちの主力工場であり、主原料から副原料まで国産原料100%にこだわった「国産原料100%『純』シリーズ」、第75回全国蒲鉾品評会にて農林水産大臣賞を受賞した「国産甘鯛入り御蒲鉾 京禄」をはじめとした「禄シリーズ」などを製造している。環境に配慮した工場として、こちらも2023年7月に使用電力を再エネ電力に100%切り替え、さらに太陽光発電を設置予定である。また「カリッこシリーズ」や「胡麻とうふ シリーズ」などを生産する新潟県山木戸工場においても2023年7月に再エネ電力に100%切り替えた。
新潟県阿賀野市のまいたけ栽培センターは7棟の栽培施設があり、全国にまいたけを供給している。まいたけは温度、湿度管理に大きなエネルギーを消費するため、同センターでは太陽光発電設備を設置し、日中消費電力(夏季)の約24%を発電している。太陽光発電は本社第二工場にも設置されており、本社第二工場と栽培センターに導入されている太陽光発電設備と北海道工場、聖籠工場、山木戸工場の再エネ電力とを合わせると、同社使用電力の約26%が再生可能エネルギー由来となり、約5,700トン分のCO2排出量の削減が見込まれる。
5) 「社内外との協働」
サプライチェーン全体で法令遵守、環境保全、労働環境への配慮などに責任をもって取り組むことが求められている環境下で、150社を超えるサプライチェーン取引先との交流会「一正やまびこ会」の活動を通して取り組みを推進している。HACCP導入をはじめとした食品安全に関する法令改正への対応については、合同勉強会などを実施してパートナーシップを強化した。サステナブルな課題についても同様に、サプライチェーン全体で認識を共有しアプローチしている。2023年7月に「一正蒲鉾人権方針」を制定した際には、併せて「一正蒲鉾サプライヤー行動規範」も制定した。また、研究分野においても産官学の協働に取り組んでいる。2022年8月にはマルハニチロ<1333>、インテグリカルチャー(株)と魚類の筋肉細胞培養技術の確立に向けた共同研究開発を進めることを公表した。また、山形大学と“未来の食卓”で有効利用が期待される3Dフードプリンターの研究を協働で開始した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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3. ESG経営
同社は「ICHIMASA30ビジョン」を実現するための基礎となる経営基盤としてESG経営を標榜しており、2021年7月に「ESG経営宣言」を制定した。「食の安全・安心、新たな食の価値の提供」「資源の有効活用」「ES(従業員満足)向上、人財育成」「地球温暖化抑制対応」「社内外との協働」を重要課題として取り組んでいる。
1) 「食の安全・安心、新たな食の価値の提供」
食品の衛生管理システムHACCPに基づいて製造工程の管理を行っており、食品安全のマネジメントシステムとしての国際認証規格ISO22000の認証を2013年1月に全社で取得した。さらなる食品安全の取り組みを進めるべく、ISO22000をベースにより確実な食品安全管理を実践するために作られた食品安全マネジメントシステムに関する国際規格FSSC22000の認証を、本社・本社工場・本社第二工場・聖籠工場・東港工場・北海道工場で取得した。また、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格ISO45001の認証は2024年6月に全生産拠点で取得終了し、環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO14001の認証も2024年6月に全生産拠点で取得終了した。
加えて、同社がチャレンジしてきた「モノづくり」を生かしながら新たな食の価値を提供する取り組みを進めている。たとえば、プロテインブームのなかで魚肉たんぱくを「フィッシュプロテイン」に改め、業界としてプロテイン含有量の基準(8.1g/100g以上または4.1g/100kcal以上)やフィッシュプロテインマークを制定し、業界の価値を上げる取り組みを推進している。同社商品も、カニかまを中心に基準に合致するものにはフィッシュプロテインマークを表記している。また、消費者の健康志向から減塩商品、低脂肪・脂肪ゼロ商品のラインナップも拡充している。さらに、まいたけに多く含有するビタミンDに着目し、同社はまいたけのビタミンDの含有量を安定的にコントロールする栽培方法を確立し、まいたけ商品の表記をすべて「ビタミンD 舞茸」に切り替えた。
2) 「資源の有効活用」
食品ロス削減に向けて、賞味期限を延長した商品を拡充し、さつま揚げの徳用として開発した「小判てんぷら」は冷凍保存を可能にした。「小判てんぷら」は店頭での食品廃棄ロスも削減できると販売先から好評を得ていると言う。さらに、枯渇する海洋資源保全を目的とした代替食品の開発に注力している。“うなぎフリー”の商品化に成功した「うなる美味しさ うな次郎」を皮切りに、魚のすり身を使用した代替水産製品の総称として“ネクストシーフード”を提唱し、「ネクストシーフード うに風味」と「ネクストシーフード 明太子風味」を発売した。そのほか、食品リサイクル率の向上や廃プラスチック排出量削減に向けて、循環型のECOトレーの商品ラインナップ拡充や内容量をライフスタイルに合わせたトレーレス包装の商品拡充に取り組んでいる。
3) 「ES向上、人財育成」
同社は、従業員にIWS(いちまさワークスタイル)を推奨している。IWSとは、働きがい向上やライフ・ワーク・バランスの実現、多様な生き方への対応に寄与することを目的とした就業時間内で能力開発や知的創造活動に取り組む働き方である。最大で就業時間の10%(年間約200時間)を従業員自らが自身の能力開発・知的創造活動に充てることができ、自発的な計画・実施を推奨している。そのための自己啓発制度の拡充、研修チャネル・プログラムの充実にも取り組んでいる。
また、女性の積極的な採用をはじめ、職場環境の整備、福利厚生制度の充実を図り「働きやすい・働きがいのある」会社を目指している。2023年6月には、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業を厚生労働省が認定する「えるぼし認定」の“3つ星”を取得した。採用/継続就業/労働時間などの働き方/女性の管理職比率/多様なキャリアコースの評価項目について要件が設定されており、同社はこの5要件すべてを満たした。また、2015年に次世代育成支援対策推進法に基づき、特に高い水準の子育て支援を実施している企業に与えられる「プラチナくるみん」を取得し、家庭と仕事の両立支援の取り組みを推進してきたが、2023年7月より従来3歳に達する日まで利用可能であった育児短時間勤務制度を小学校3年生終了時まで延長し、従業員のライフステージに合わせた多様な生き方の拡充、女性の就業継続支援を進めている。
4) 「地球温暖化抑制対応」
小樽市にある北海道工場は、販売シェアが首位の北海道エリアへの商品供給を行う拠点で、北海道限定商品の開発・生産や「made in 北海道」を訴求できる海外輸出用商品の生産を担っている。2024年4月に使用電力を実質100%再生可能エネルギー由来の電力(以下、再エネ電力)に切り替えた。これは、海外輸出用商品においては訴求力にもつながるだろう。また、新潟県聖籠工場はおせちの主力工場であり、主原料から副原料まで国産原料100%にこだわった「国産原料100%『純』シリーズ」、第75回全国蒲鉾品評会にて農林水産大臣賞を受賞した「国産甘鯛入り御蒲鉾 京禄」をはじめとした「禄シリーズ」などを製造している。環境に配慮した工場として、こちらも2023年7月に使用電力を再エネ電力に100%切り替え、さらに太陽光発電を設置予定である。また「カリッこシリーズ」や「胡麻とうふ シリーズ」などを生産する新潟県山木戸工場においても2023年7月に再エネ電力に100%切り替えた。
新潟県阿賀野市のまいたけ栽培センターは7棟の栽培施設があり、全国にまいたけを供給している。まいたけは温度、湿度管理に大きなエネルギーを消費するため、同センターでは太陽光発電設備を設置し、日中消費電力(夏季)の約24%を発電している。太陽光発電は本社第二工場にも設置されており、本社第二工場と栽培センターに導入されている太陽光発電設備と北海道工場、聖籠工場、山木戸工場の再エネ電力とを合わせると、同社使用電力の約26%が再生可能エネルギー由来となり、約5,700トン分のCO2排出量の削減が見込まれる。
5) 「社内外との協働」
サプライチェーン全体で法令遵守、環境保全、労働環境への配慮などに責任をもって取り組むことが求められている環境下で、150社を超えるサプライチェーン取引先との交流会「一正やまびこ会」の活動を通して取り組みを推進している。HACCP導入をはじめとした食品安全に関する法令改正への対応については、合同勉強会などを実施してパートナーシップを強化した。サステナブルな課題についても同様に、サプライチェーン全体で認識を共有しアプローチしている。2023年7月に「一正蒲鉾人権方針」を制定した際には、併せて「一正蒲鉾サプライヤー行動規範」も制定した。また、研究分野においても産官学の協働に取り組んでいる。2022年8月にはマルハニチロ<1333>、インテグリカルチャー(株)と魚類の筋肉細胞培養技術の確立に向けた共同研究開発を進めることを公表した。また、山形大学と“未来の食卓”で有効利用が期待される3Dフードプリンターの研究を協働で開始した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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